有価証券報告書-第139期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

【提出】
2021/06/25 14:49
【資料】
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【項目】
146項目
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
(1)経営成績等の状況の概要
①経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウィルス感染症(以下、「感染症」とする)の拡大により、期間を通じて低調に推移しました。国内では、二度にわたる緊急事態宣言発出に伴い経済活動は深刻な影響を受け、国内民間企業の設備投資や個人消費が大きく落ち込みました。
ステンレス特殊鋼業界におきましては、上半期に民生用・産業分野向けともに大きく需要が落ち込みましたが、下半期に向けて自動車関連や産業用機械等の設備投資が持ち直し、需要は緩やかに回復に向かいました。また当社グループの戦略分野である高機能材につきましては、いち早く感染症影響から立ち直った中国において太陽光発電向け等一部の需要が急回復したほか、欧州中心に水素エネルギー関連など脱炭素関連の新たな需要の動きが見られました。しかし感染症の拡大に伴う欧米を中心とした各国のロックダウン長期化により、当社が注力していた排煙脱硫装置や船舶向けSOxスクラバー向け材料、石油・ガス関連材料等の海外の大型案件向け需要が低調に推移いたしました。
当社グループではこうした一部の需要回復の動きを逃さず捕捉しつつ、原料価格に見合ったロールマージンの確保及び徹底したコストダウンを実施し、全体的な需要レベルに見合った生産水準の維持及び高機能材の生産性向上やリードタイム短縮に取り組んだ結果、当社グループの当連結会計年度の販売数量につきましては前年同期比18.0%減(高機能材16.8%減、一般材17.9%減)となり、売上高は112,482百万円(前年同期比23,891百万円減)となりました。また、利益面につきましては、営業利益6,145百万円(前年同期比1,693百万円減)、経常利益4,990百万円(前年同期比1,352百万円減)、親会社株主に帰属する当期純利益3,764百万円(前年同期比1,561百万円減)となりました。
②財政状態の状況
当連結会計年度末における総資産は161,230百万円となり、前連結会計年度末比2,662百万円増加しております。これは主として建設仮勘定の増加(5,321百万円)、現金及び預金の減少(3,557百万円)によるものであります。
当連結会計年度末における負債の額は106,103百万円となり、前連結会計年度末比1,334百万円減少しております。これは主として借入金及び社債の減少(6,370百万円)、設備関連支払手形の増加(4,882百万円)によるものであります。
当連結会計年度末における純資産の額は55,127百万円となり、前連結会計年度比3,996百万円増加しております。これにより自己資本比率は34.2%となりました。
③キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益(4,740百万円)、減価償却費の計上(3,975百万円)、たな卸資産の減少(2,804百万円)等により、11,182百万円の収入(前連結会計年度比3,203百万円の収入増加)となりました。
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、有形・無形固定資産の取得(6,652百万円)等により、6,776百万円の支出(前連結会計年度比1,265百万円の支出増加)となりました。
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の減少(4,324百万円)、長期借入金の調達(4,317百万円)及び返済(6,213百万円)等により、7,995百万円の支出(前連結会計年度比16,687百万円の支出増加)となりました。
以上の結果、当連結会計年度における現金及び現金同等物残高は、換算差額を含めて13,828百万円となり、前連結会計年度比3,570百万円減少いたしました。
④生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと以下のとおりであります。
セグメントの名称金額(百万円)前年同期比増減(%)
ステンレス鋼板及びその加工品事業80,741△20.5

(注)1.金額は製品製造原価によっております。
2.上記金額には消費税等は含まれておりません。
b.受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと以下のとおりであります。
セグメントの名称受注高受注残高
金額(百万円)前年同期比増減
(%)
金額(百万円)前年同期比増減
(%)
ステンレス鋼板及びその加工品事業134,592△0.515,123△3.9

(注)上記金額には消費税等は含まれておりません。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと以下のとおりであります。
セグメントの名称金額(百万円)前年同期比増減(%)
ステンレス鋼板及びその加工品事業112,482△17.5

(注)1.上記金額には消費税等は含まれておりません。
2.主要な販売先はいずれも総販売実績に対する販売実績の割合が10%未満のため、記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
①経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績
当連結会計年度の経営成績に関する分析・検討内容につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」に記載の通りであります。
※連結損益計算書概要単位:百万円、%
当連結会計年度
(2021年3月期)
前連結会計年度
(2020年3月期)
前年度対比増減率
売上高112,482136,373△23,891△17.5
営業利益6,1457,838△1,693△21.6
経常利益4,9906,342△1,352△21.3
親会社株主に帰属する当期純利益3,7645,325△1,561△29.3


b.財政状態
当連結会計年度末時点の資産の状況は、当社川崎製造所において建設中の高効率電気炉設備に関する工事が進捗したことにより建設仮勘定が5,320百万円増加したこと、その他の設備投資により機械装置及び運搬具が1,728百万円増加したこと、社債及び借入金残高の減少が主因となって現預金残高が3,557百万円減少したこと、たな卸資産が2,804百万円減少したこと等により、総資産の金額は前年同期比2,662百万円増加の161,230百万円となりました。
負債につきましては、将来の設備投資に必要な資金は手元に残しつつ、実際の資金需要の動向に見合った借入金残高とした結果、借入金及び社債の合計残高が6,370百万円減少しました。一方、上述の設備投資の結果として設備関係支払手形の残高が4,882百万円増加し、負債の総額は前年同期比1,334百万円減少の106,103百万円となりました。
以上により当連結会計年度末時点における純資産の金額は前年同期比3,996百万円増加の55,127百万円となりました。その結果、当連結会計年度末時点における自己資本比率は34.2%となり、前年同期比で1.9%上昇しました。
※連結貸借対照表概要単位:百万円、%
当連結会計年度
(2021年3月期)
前連結会計年度
(2020年3月期)
前年度対比増減率
現金及び預金13,93517,491△3,557△20.3
受取手形及び売掛金19,59220,404△812△4.0
たな卸資産32,93835,742△2,804△7.8
固定資産93,46383,9429,52111.3
その他資産1,30298931431.7
資産合計161,230158,5682,6621.7
支払手形及び買掛金16,45016,853△403△2.4
借入金及び社債57,50463,874△6,370△10.0
その他負債32,14926,7105,43920.4
負債合計106,103107,437△1,334△1.2
純資産合計55,12751,1313,9967.8
自己資本比率34.232.21.9-

c.キャッシュ・フロー
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益(4,740百万円)、減価償却費の計上(3,975百万円)、たな卸資産の減少(2,804百万円)による収入等により、11,182百万円の収入となり、前年同期比で3,203百万円の収入増加となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形・無形固定資産の取得による支出(6,652百万円)等により6,776百万円の支出となり、前年同期比で1,265百万円の支出増加となりました。
以上により営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合計したフリー・キャッシュ・フローは、4,406百万円となり、前年同期比で1,938百万円減少しました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金及び社債の減少による支出(6,374百万円)の他、当期中に支払った1株当たり合計45円の配当金の支払による支出(682百万円)等により、7,995百万円の支出となり、前年同期比で16,687百万円の支出増加となりました。
※連結キャッシュ・フロー計算書概要単位:百万円
当連結会計年度
(2021年3月期)
前連結会計年度
(2020年3月期)
前年度対比
営業活動によるキャッシュ・フロー11,1827,9793,203
税金等調整前当期純利益4,7406,144△1,404
減価償却費3,9753,89283
売上債権の増減額(△は増加)8121,384△572
たな卸資産の増減額(△は増加)2,8041,931873
仕入債務の増減額(△は減少)△403△3,3412,938
その他△746△2,0301,284
投資活動によるキャッシュ・フロー△6,776△5,511△1,265
有形・無形固定資産の取得による支出△6,652△5,505△1,147
その他△124△6△118
フリー・キャッシュ・フロー4,4062,4691,938
財務活動によるキャッシュ・フロー△7,9958,692△16,687
借入金及び社債の純増減額(△は減少)△6,37410,731△17,105
配当金の支払額△682△916234
その他△939△1,123184
現金及び現金同等物の増減額(△は減少)△3,57011,141△14,711

②資本の財源及び資金の流動性の状況
当社は「中期経営計画2020」の基本戦略の1つである「戦略設備投資の実行と技術力の更なる向上による競争力強化」に向けて、高効率電気炉設備をはじめとした戦略的設備投資を実行してまいります。
この他、経常的な事業活動の継続にあたり一定の運転資金を必要としておりますが、これらの財源は自己資金・借入金及び社債にて充当する方針です。
資金の流動性については、担当部署にて定期的にモニタリングされた資金需要の状況に応じて受取手形の譲渡・割引等による売掛債権の流動化を適宜実施していることに加え、一部の連結子会社との間で構築しているCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を利用することによりグループ全体の資金活用の効率化が図られており、一定の流動性が確保されているものと認識しております。
③経営方針・経営戦略・経営上の目標の達成状況に関する分析・検討内容
当社グループは、成長分野である高機能材事業を拡大しつつ、高付加価値材、一般材を含めてお客様のニーズ(品質・コスト・納期:QCD)に沿った製品提供が求められているなか、今後2025年に迎える創立100周年、さらにその先も持続可能な企業であるために、製造現場の安全・安定を大前提に、業界トップレベルの品質、納期、対応力でお客様から信頼され続けることを目指します。
上記の「目指すべき姿」の実現のため、当社は2020年度を初年度とする3ヶ年計画である「中期経営計画2020」を策定しております。「中期経営計画2020」の詳細につきましては、1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 [中長期的な会社の経営戦略]に記載の通りであります。
「中期経営計画2020」で掲げている数値目標と実績は下表の通りです。
高機能材売上高比率(%)営業利益(連結)
(百万円)
ROE(連結)(%)ネットD/Eレシオ(連結)(倍)総還元性向
(連結)(%)
中計目標
(注1)
45.09,000以上10.0以上1.0未満25.0程度
2020年度実績40.56,1457.10.79(注2)24.8
2019年度実績41.57,83810.80.9117.1

(注1)中計目標は「中期経営計画2020」の最終年度である2022年度における達成目標であります。
(注2)2020年度の総還元性向は、2020年度に実施した合計45円の配当に加え、2021年5月10日~2021年5月31日に実施した自己株式取得を加味した数値であります。自己株式取得の詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な後発事象)」に記載があります。
2020年度実績を踏まえた「中期経営計画2020」の進捗状況についての認識(評価)は以下の通りです。
・高機能材売上高比率につきましては、前年とほぼ横ばいの実績となりました。今後も引き続き「中期経営計画2020」に則り、販売力の強化・コストダウン施策を着実に推進していくほか、世界的な需要構造の変化等についても注視しながら、高機能材の拡販を進めてまいります。
・連結の営業利益につきましては、新型コロナウイルス感染による影響もあり前年対比では減益となりましたが、収益状況は2020年度第2四半期を底に回復傾向にあります。直近に公表している2022年3月期の連結業績予想では営業利益9,300百万円と予想としており、中計の収益目標を1年前倒しで達成する見込みとしております。また、ROEにつきましても収益の回復見合いで改善に向かうものと見込まれます。
・ネットD/Eレシオにつきましては、順調に改善が進捗し、中計で掲げた目標数値を下回る水準を維持しております。
・総還元性向のつきましては、剰余金の配当と自己株式取得により目標数値並みの実績となりました。
・設備投資計画につきましては、中計の施策に従い、競争力の強化・事業基盤の強化・ESG課題への対応に資する案件を順次実行しております。
④重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。なお、新型コロナウイルス感染症の影響については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り) 及び 2 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載があります。
a.繰延税金資産の回収可能性
繰延税金資産の回収可能性の判断にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
b.退職給付債務の算定
当社グループには、確定給付制度を採用している会社が存在します。確定給付制度の退職給付債務及び関連する勤務費用は、数理計算上の仮定を用いて退職給付見込額を見積り、割り引くことにより算定しております。数理計算上の仮定には、割引率、予想昇給率等の様々な計算基礎があります。
当該見積り及び当該仮定について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において認識する退職給付に係る負債及び退職給付費用の金額に重要な影響を与える可能性があります。
なお、当連結会計年度末の退職給付債務の算定に用いた主要な数理計算上の仮定は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (退職給付関係) 2.確定給付制度 (5)数理計算上の計算基礎に関する事項」に記載のとおりであります。