有価証券報告書-第142期(2023/04/01-2024/03/31)

【提出】
2024/06/26 14:34
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【項目】
168項目
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
(1)経営成績等の状況の概要
①経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウィルス感染症による影響の縮小に伴い、民間設備投資やインバウンド消費をはじめとした経済活動が回復へ向かう一方、人手不足による建設事業の着工遅れや円安の進行に伴う資材価格等の上昇、欧州・中東における地政学リスクの長期化、中国経済減速の影響など不安定な状況が続きました。
ステンレス特殊鋼業界におきましては、自動車等輸送機器の生産回復による需要増は見られたものの、半導体製造装置向けの在庫調整継続や建築事業の着工遅れにより、全体として需要は低調に推移しました。
当社グループの戦略分野である高機能材につきましては、インドでの火力発電所排煙脱硫装置向けをはじめとする環境・エネルギー分野では堅調に推移しました。家電製品向けシーズヒーター材やバイメタル材等の耐久消費財分野でも在庫調整からの進展が見られましたが、下半期にかけてニッケル価格相場の下落に伴う先安感や中国経済の停滞によりプロジェクトの延期が相次ぐ状況となり、全体として需要は低調に推移しました。
当社グループではこのような外部環境に対応して、需要に応じた生産体制にシフトしつつ、「中期経営計画2023」で掲げた施策を着実に遂行し、適正なロールマージンの確保および徹底したコストダウンを実施してまいりました。その結果、当連結会計年度の販売数量につきましては前年度比23.3%減(高機能材15.1%減、一般材25.2%減)となり、連結売上高は180,341百万円(前年度比18,983百万円減)となりました。また、利益面につきましては、連結営業利益20,010百万円(前年度比9,245百万円減)、連結経常利益19,128百万円(前年度比8,610百万円減)、親会社株主に帰属する当期純利益13,565百万円(前年度比6,138百万円減)となりました。
②財政状態の状況
当連結会計年度末における総資産は219,988百万円となり、前連結会計年度末比2,306百万円減少しております。これは主として棚卸資産の減少(8,723百万円)、現金及び預金の増加(5,123百万円)、及び建設仮勘定の増加(3,318百万円)によるものであります。
当連結会計年度末における負債の額は130,250百万円となり、前連結会計年度末比12,425百万円減少しております。これは主として未払法人税等の減少(7,192百万円)及び借入金の減少(8,269百万円)によるものであります。
当連結会計年度末における純資産の額は89,738百万円となり、前連結会計年度比10,119百万円増加しております。これにより自己資本比率は40.7%となりました。
③キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益(19,161百万円)等により、26,824百万円の収入(前連結会計年度比23,174百万円の収入増加)となりました。
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、有形・無形固定資産の取得(8,064百万円)等により、7,919百万円の支出(前連結会計年度比5,116百万円の支出減少)となりました。
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金の返済(10,494百万円)等により、14,318百万円の支出(前連結会計年度比22,847百万円の支出増加)となりました。
以上の結果、当連結会計年度における現金及び現金同等物残高は、換算差額を含めて16,918百万円となり、前連結会計年度比5,120百万円増加いたしました。
④生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと以下のとおりであります。
セグメントの名称金額(百万円)前年同期比増減(%)
ステンレス鋼板及びその加工品事業128,814△7.9

(注)1.金額は製品製造原価によっております。
b.受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと以下のとおりであります。
セグメントの名称受注高受注残高
金額(百万円)前年同期比増減
(%)
金額(百万円)前年同期比増減
(%)
ステンレス鋼板及びその加工品事業177,318△8.825,698△10.5

c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと以下のとおりであります。
セグメントの名称金額(百万円)前年同期比増減(%)
ステンレス鋼板及びその加工品事業180,341△9.5

(注)1.主要な販売先はいずれも総販売実績に対する販売実績の割合が10%未満のため、記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
①経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績
当連結会計年度の経営成績に関する分析・検討内容につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」に記載の通りであります。
※連結損益計算書概要単位:百万円、%
当連結会計年度
(2024年3月期)
前連結会計年度
(2023年3月期)
前年度対比増減率
売上高180,341199,324△18,983△9.5
営業利益20,01029,256△9,245△31.6
経常利益19,12827,738△8,610△31.0
親会社株主に帰属する当期純利益13,56519,703△6,138△31.2


b.財政状態
当連結会計年度末時点の資産の状況は、棚卸資産が8,723百万円減少したこと及び現金及び預金が5,123百万円増加したこと等により、総資産の金額は前年同期比2,306百万円減少の219,988百万円となりました。
負債につきましては、未払法人税等が7,192百万円減少したこと及び借入金が8,269百万円減少したことにより、負債の総額は前年同期比12,425百万円減少の130,250百万円となりました。
以上により当連結会計年度末時点における純資産の金額は前年同期比10,119百万円増加の89,738百万円となりました。その結果、当連結会計年度末時点における自己資本比率は40.7%となり、前年同期比で4.9%上昇しました。
※連結貸借対照表概要単位:百万円、%
当連結会計年度
(2024年3月期)
前連結会計年度
(2023年3月期)
前年度対比増減率
現金及び預金17,03411,9105,12343.0
受取手形及び売掛金26,88829,829△2,941△9.9
棚卸資産64,10572,828△8,723△12.0
固定資産108,146104,7413,4053.3
その他資産3,8172,98683027.8
資産合計219,988222,294△2,306△1.0
支払手形及び買掛金22,88321,6271,2565.8
借入金及び社債77,85686,124△8,269△9.6
その他負債29,51134,924△5,413△15.5
負債合計130,250142,675△12,425△8.7
純資産合計89,73879,61910,11912.7
自己資本比率40.735.84.9-

c.キャッシュ・フロー
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益(19,161百万円)等により、26,824百万円の収入となり、前年同期比で23,174百万円の収入増加となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形・無形固定資産の取得による支出(8,064百万円)等により7,919百万円の支出となり、前年同期比で5,116百万円の支出減少となりました。
以上により営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合計したフリー・キャッシュ・フローは、18,904百万円となり、前年同期比で28,291百万円増加しました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金の返済(10,494百万円)、自己株式の取得による支出(2,005百万円)の他、当期中に支払った1株当たり合計230円の配当金の支払による支出(3,385百万円)等により、14,318百万円の支出となり、前年同期比で22,847百万円の支出増加となりました。
※連結キャッシュ・フロー計算書概要単位:百万円
当連結会計年度
(2024年3月期)
前連結会計年度
(2023年3月期)
前年度対比
営業活動によるキャッシュ・フロー26,8243,64923,174
税金等調整前当期純利益19,16127,831△8,670
減価償却費5,5955,029566
売上債権の増減額(△は増加)△64△2,8332,769
棚卸資産の増減額(△は増加)10,047△23,17933,226
仕入債務の増減額(△は減少)2,334△2,2874,620
その他△10,249△912△9,337
投資活動によるキャッシュ・フロー△7,919△13,0355,116
有形・無形固定資産の取得による支出△8,064△13,1315,067
その他1449649
フリー・キャッシュ・フロー18,904△9,38628,291
財務活動によるキャッシュ・フロー△14,3188,530△22,847
借入金及び社債の純増減額(△は減少)△8,31411,649△19,963
配当金の支払額△3,385△2,255△1,130
その他△2,619△865△1,754
現金及び現金同等物の増減額(△は減少)4,721△7485,468

②資本の財源及び資金の流動性の状況
当社は「中期経営計画2023」の基本戦略の1つである「技術の優位性を高め市場環境の変化に対応する効率的な生産体制の構築」に向けて、戦略的設備投資を実行してまいります。
この他、経常的な事業活動の継続にあたり一定の運転資金を必要としておりますが、これらの財源は自己資金・借入金及び社債にて充当する方針です。
資金の流動性については、担当部署にて定期的にモニタリングされた資金需要の状況に応じて受取手形の譲渡・割引等による売掛債権の流動化を適宜実施していることに加え、一部の連結子会社との間で構築しているCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を利用することによりグループ全体の資金活用の効率化が図られており、一定の流動性が確保されているものと認識しております。
③経営方針・経営戦略・経営上の目標の達成状況に関する分析・検討内容
経営方針・経営戦略・経営上の目標については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
「中期経営計画2023」で掲げている数値目標と実績は下表の通りです。
高機能材売上高比率(%)EBITDA
(連結)(億円)
ROE(連結)(%)総還元性向
(連結)(%)
CO2削減率
(2013年度対比単体)(%)
中計目標
(注1)
50200億円以上10.035▲46%以上
2023年度実績4925416.0(注2)28.5(注3)-
2022年度実績42-27.825.3▲49.2

(注) 1.中計目標は「中期経営計画2023」の最終年度である2025年度における達成目標であります。
2.2023年度の総還元性向は、2023年度に実施した合計200円の配当に加え、2024年5月10日~2024年5月31日に実施した自己株式取得を加味した数値であります。自己株式取得の詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な後発事象)」に記載があります。
3.2023年度のCO2削減率は集計中のため記載しておりません。
2023年度実績を踏まえた「中期経営計画2023」の進捗状況についての認識(評価)は以下の通りです。
・高機能材売上高比率につきましては、最終年度目標に近い実績となりました。今後も引き続き「中期経営計画2023」に則り、販売力の強化・コストダウン施策を着実に推進していくほか、世界的な需要構造の変化等についても注視しながら、高機能材の拡販を進めてまいります。
・財務指標の達成目標(EBITDA・ROE)につきましては、上述の通り一定の成果をあげることができたと評価しております。
・総還元性向につきましては、剰余金の配当と自己株式取得により、最終年度における目標達成は可能な状況であると認識しております。
・設備投資計画につきましては、中計の施策に従い、高機能材増産対応、カーボンニュートラル関連の課題への対応に資する案件を中心に順次実行しております。
今後につきましては、昨年策定された「中期経営計画2023」において掲げた諸施策を着実に実行し、「『製品と原料の多様化』を追求し、ニッケル高合金・ステンレス市場におけるトップサプライヤーとして地球の未来に貢献」を目指してまいります。
④重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
a.繰延税金資産の回収可能性
繰延税金資産の回収可能性の判断にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
b.退職給付債務の算定
当社グループには、確定給付制度を採用している会社が存在します。確定給付制度の退職給付債務及び関連する勤務費用は、数理計算上の仮定を用いて退職給付見込額を見積り、割り引くことにより算定しております。数理計算上の仮定には、割引率、予想昇給率等の様々な計算基礎があります。
当該見積り及び当該仮定について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において認識する退職給付に係る負債及び退職給付費用の金額に重要な影響を与える可能性があります。
なお、当連結会計年度末の退職給付債務の算定に用いた主要な数理計算上の仮定は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (退職給付関係) 2.確定給付制度 (5)数理計算上の計算基礎に関する事項」に記載のとおりであります。
c.固定資産の減損処理
当社グループは事業用資産については各事業単位、遊休資産については個別物件単位に資産のグルーピングを行っております。収益性の低下等により、投資額の回収が見込めなくなった固定資産については、帳簿価額を回収可能価額まで減額しております。事業用資産の回収可能価額につきましては正味売却価額と使用価値のいずれか高い方の金額となりますが、正味売却価額につきましては主として不動産鑑定評価額、使用価値につきましては割引前将来キャッシュ・フローに基づき算定しております。遊休資産の回収可能価額につきましては、正味売却価額により測定しており、固定資産税評価額を基に算定しております。