有価証券報告書-第88期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)

【提出】
2019/06/20 15:22
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当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
なお、「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」(企業会計基準第28号 2018年2月16日)等を当連結会計年度の期首から適用しており、財政状態については遡及処理後の前連結会計年度末の数値で比較を行っております。
(1)経営成績等の概要並びにそれらに関する認識及び分析・検討内容
① 事業全体
当連結会計年度における連結業績は、売上高43,648百万円(前期比17.2%増)、営業利益5,274百万円(同34.2%増)、経常利益5,269百万円(同50.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益6,494百万円(同91.3%増)となりました。
売上高については、当社製品の最終需要先での業況が好調であったことから、各製品の販売は総じて堅調に推移し、前連結会計年度比増収となりました。原材料価格及びユーティリティコストの上昇があったものの、販売量の増加に伴い営業利益は、前連結会計年度比増益となりました。
また経常利益については、当連結会計年度末にかけての円安により為替換算益を計上したことなどから、前連結会計年度比増益となりました。なお、親会社株主に帰属する当期純利益が、前連結会計年度比91.3%増と大きく増加しておりますが、これは近年の業績動向および今後の業績見通しを踏まえ、繰延税金資産の回収可能性について検討した結果、繰延税金資産額が増加し、法人税等調整額を大きくマイナス計上したことによるものであります。
当社グループが中長期経営戦略で数値目標として掲げている「売上高経常利益率(ROS)10%以上」について当連結会計年度の実績は12.1%、同じく「売上高成長率 年平均10%以上」について実績は17.2%となりました。
なお、当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因の一つとして、為替変動が挙げられます。これは、輸出比率が高く、その多くがUSドルなどの外貨建ての取引であることによるものであります。当社グループは、短期的な為替変動に関し、必要に応じ為替予約取引によるヘッジを行っております。
② 各セグメント
金属チタン事業
当連結会計年度の金属チタン事業は、売上高27,120百万円(前期比22.7%増)、営業利益2,460百万円(同81.6%増)となりました。
スポンジチタンの主な最終用途である民間航空機向けの需要が増加したほか、一般工業用ではプレート式熱交換器向け等の需要があり、スポンジチタンを中心に販売量が拡大し、売上高は前連結会計年度に比べ増加いたしました。
損益面では、鉱石代をはじめとする原材料価格の上昇や、原油価格の上昇による電力コストアップ等のコスト悪化要因があったものの、スポンジチタンの増販を主因に営業利益は前連結会計年度に比べ増加いたしました。
なお、当事業の経営成績に重要な影響を与える要因の一つとして、航空機向けチタン需要の変動が挙げられます。主力製品の一つであるスポンジチタンは、航空機向け用途が需要の中心となっており、世界の経済情勢や航空旅客数の動向、航空会社による航空機の更新やメンテナンス需要の動向等は、当事業の業績に大きな影響を及ぼします。また、金属チタンの製造コストのうち原料代及び電力代は、相対的に重要な割合を占め、かつ、様々な要因により価格が変動するため、これらの価格の動向も当事業の業績に重要な影響を与える要因となっております。
そのため、当事業では、有力顧客との連携強化によるシェア拡大や新規顧客の開拓、徹底的なコスト削減、さらにはIT化等による効率化・生産性向上策等、強靭な黒字体質の構築に取り組んでおります。
機能化学品事業
当連結会計年度の機能化学品事業は、売上高16,528百万円(前期比9.0%増)、営業利益5,254百万円(同6.3%増)となりました。
当事業の各製品の需要は、電子部品材料の一部に減速傾向が出てきたものの、総体として堅調に推移いたしました。プロピレン重合用触媒及び電子部品材料(超微粉ニッケル等)の増収により、前連結会計年度比増収増益となりました。
なお、当事業の経営成績に重要な影響を与える要因の一つとして、当社の主力製品の用途先業界の業況が挙げられます。触媒製品の「THC」はプロピレン重合用にほぼ特化した触媒であり、超微粉ニッケル及び高純度酸化チタンは、積層セラミックコンデンサなどの電子部品向けの用途が需要の大部分を占めております。いずれも特定用途向けの需要が大きな割合を占めているため、当社製品の販売量は、これらの用途先業界の好不調により大きな影響を受けます。2018年度においても、超微粉ニッケル及び高純度酸化チタンについては、中国経済の減速によるスマートフォンや自動車の販売停滞の影響を受けた電子部品メーカー業界の需要減により、年度後半からは受注量に減少傾向が見られる等、影響を受け始めております。
そのため、こういったマイナス影響をできるだけ補うため、当事業では、差別化製品の提供(環境対応型触媒の高性能化等)や顧客ニーズへの迅速かつ的確な対応などにより競争力強化を図るほか、次世代製品の探索・製品開発に取り組んでおります。
③ 財政状態の状況
資産の部は、未収入金、減価償却による固定資産の減少等があったものの、売掛債権、たな卸資産の増加等により、前連結会計年度末比3,699百万円増の87,645百万円となりました。
負債の部は、借入金の返済を主因に、前連結会計年度末比1,993百万円減の39,915百万円となりました。
純資産の部は、利益剰余金の増加等により前連結会計年度末比5,693百万円増の47,730百万円となりました。
金属チタン事業のセグメント資産は、維持保全等による固定資産の取得による増加があったものの減価償却による固定資産の減少を主因に、前連結会計年度末比944百万円減の67,505百万円となりました。
機能化学品事業のセグメント資産は、固定資産の取得を主因に、前連結会計年度末比2,046百万円増の14,323百万円となりました。
これらの結果、自己資本比率は前連結会計年度末比4.4ポイント上昇し54.3%となりました。また借入金の返済が進み、中長期経営戦略において財務基盤強化の目安として掲げる「D/Eレシオ1.0倍未満」について当連結会計年度末の実績は0.69倍となりました。
④ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物は1,600百万円と期首に比べ415百万円の増加となりました。キャッシュ・フローの状況は以下のとおりであります。
営業活動によるキャッシュ・フローは、8,316百万円の収入となりました。これは、税金等調整前当期純利益5,306百万円、減価償却費4,977百万円等の資金増加要因の一方で、売上増に伴う売上債権の増加2,366百万円等の資金減少要因があったことによるものです。
投資活動によるキャッシュ・フローは、4,114百万円の支出となりました。これは、維持保全等の有形固定資産の取得による支出4,060百万円等によるものです。
財務活動によるキャッシュ・フローは、3,787百万円の支出となりました。これは、長期借入金の約定弁済や配当金の支払い等によるものです。
当社グループの主要な資金需要は、製品製造のための原材料費、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用並びに設備新設、維持改修等に係る投資であります。
これらの資金需要について、短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本として、設備投資や長期運転資金は金融機関からの長期借入を基本として、それぞれ調達しております。
手許の運転資金につきましては、当社及び一部の国内連結子会社においてCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)により、余剰資金を当社へ集中し、一元管理を行うことで、資金効率の向上を図っております。

(2)生産、受注及び販売の実績
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称金額(百万円)前年同期比(%)
金属チタン事業25,020114.2
機能化学品事業17,507114.4
合計42,527114.3

(注)1.金額は売価基準で算出しております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
② 受注実績
受注生産は行っておりません。
③ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称金額(百万円)前年同期比(%)
金属チタン事業27,120122.7
機能化学品事業16,528109.0
合計43,648117.2

(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先前連結会計年度当連結会計年度
金額(百万円)割合(%)金額(百万円)割合(%)
日本製鉄㈱10,68528.711,40826.1
TITANIUM METALS CORPORATION5,48114.76,27914.4
㈱村田製作所3,86310.44,44010.2

3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。