有価証券報告書-第94期(2023/04/01-2024/03/31)

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2024/06/19 15:47
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(経営成績等の状況の概要)
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
(1) 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度の世界経済は、米国経済は金融引き締めの影響を受けながらも、良好な雇用情勢や個人消費に支えられて底堅く推移しましたが、中国経済は不動産市場の悪化や設備投資の低迷など、力強さを欠く状況が継続しました。
わが国においては、景気の緩やかな回復が継続しましたが、個人消費や生産活動の停滞から期後半には足踏み状態となりました。為替については、期中に一部円安基調の修正が見られましたが、期末にかけては再び円安方向に推移しました。
当社グループの関連するエレクトロニクス市場においては、自動車市場は半導体供給不足の解消により堅調に推移しましたが、携帯機器市場では中国スマートフォン向けで需要低迷が継続したほか、産業機器市場も、前年度後半から続く一般産機市場での受注調整に加えて、中国での設備投資減少の影響を受けたFA機器を中心に一段と減速しました。
このような状況のもと、当社グループは、主力のコネクタ事業を中心に、積極的なグローバル・マーケティングと新製品開発活動のスピードアップによる受注・売上の拡大を図るとともに、内製化の更なる強化による工場稼働率改善、設備効率化によるコストダウン、諸費用抑制など経営全般にわたる効率化を推進し、業績向上に努めました。
しかしながら、産機市場での需要低迷による影響を想定以上に受けたことなどから、当連結会計年度の業績は、売上高2,257億81百万円(前連結会計年度比96%)、利益面においては、営業利益144億23百万円(前連結会計年度比82%)、経常利益147億62百万円(前連結会計年度比77%)となり、親会社株主に帰属する当期純利益はJAE Oregon, Inc.(米国連結子会社)が保有していた土地の一部売却による特別利益計上により、122億45百万円(前連結会計年度比84%)となりました。
セグメントの業績は、次のとおりであります。
① コネクタ事業
自動車分野においては、昨年生じた顧客の半導体供給不足解消に加えADAS関連製品が伸長しましたが、携帯機器分野において、一部製品の生産終了に加え市場の需要低迷が継続したほか、産機・インフラ分野において、FA・工作機械向け製品を中心に市場が一段と低迷したことから、当連結会計年度の売上高は1,948億3百万円(前連結会計年度比95%)となりました。利益面においては、携帯機器分野及び産機・インフラ分野の減収による工場稼働低下に加え、自動車分野におけるプロダクトミックスの悪化などにより、セグメント利益は153億53百万円(前連結会計年度比87%)となりました。
② インターフェース・ソリューション事業
産機・インフラ分野において、半導体製造装置向け製品や操作パネルの市場が低迷したことに加え、自動車分野において、ガラスセンサの一部製品が生産終了したことから、当連結会計年度の売上高は101億26百万円(前連結会計年度比87%)、セグメント利益は4億25百万円(前連結会計年度比79%)となりました。
③ 航機事業
産機・インフラ分野において、半導体製造装置向け製品が市場低迷により需要減となりましたが、油田掘削向けセンサの需要が堅調に推移したことに加え、防衛・宇宙向け製品で納入が増加したことから、当連結会計年度の売上高は201億30百万円(前連結会計年度比105%)となりました。利益面においては、防衛・宇宙分野における開発プロジェクト遅延により、セグメント利益は36億32百万円(前連結会計年度比89%)となりました。
財政状態の状況は、次のとおりであります。
① 資 産
当連結会計年度末の総資産は、現金及び預金の増加や退職給付に係る資産の増加に加え、主力のコネクタ事業において、今後拡大が見込まれるEV自動車向け製品の生産増強を目的に実施した国内生産子会社(山形航空電子株式会社)の工場増設による有形固定資産の増加等により、前連結会計年度末に比べ94億16百万円増加の2,360億42百万円となりました。
② 負 債
負債は、自己株式の取得を目的とした借入の実行により、前連結会計年度末に比べ538億90百万円増加の1,092億32百万円となりました。
③ 純資産
純資産は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上及び在外子会社の個別財務諸表の換算において円安の影響を受け為替換算調整勘定が増加しましたが、自己株式の増加により、前連結会計年度末に比べ444億73百万円減少の1,268億10百万円となりました。
(2) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、子会社が保有していた土地の一部売却による固定資産売却益の計上や仕入債務の減少に加え、法人税等の支払いによるマイナス要因はありましたが、税金等調整前当期純利益及び減価償却費の計上により、348億59百万円のプラス(前連結会計年度は324億51百万円のプラス)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、主として新製品生産用設備を中心とする有形固定資産取得による支出などから、203億13百万円のマイナス(前連結会計年度は234億32百万円のマイナス)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式取得に伴う一部借入によるプラス要因はありましたが、自己株式取得による支払い及び株主配当金の支払いにより、118億96百万円のマイナス(前連結会計年度は116億45百万円のマイナス)となりました。
この結果、現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末に比べ52億72百万円増加の682億98百万円となりました。
(生産、受注及び販売の実績)
当連結会計年度におけるセグメントごとの生産実績、受注実績及び販売実績は、次のとおりであります。
(1) 生産実績
セグメントの名称生産高(百万円)前期比(%)
コネクタ事業195,04095.9
インターフェース・ソリューション事業10,37890.2
航機事業19,705101.8
その他62981.5
225,75396.0

(注) 金額は販売価額によっております。
(2) 受注実績
セグメントの名称受注高
(百万円)
前期比
(%)
受注残高
(百万円)
前期比
(%)
コネクタ事業196,06997.624,549105.4
インターフェース・ソリューション事業8,61267.82,92165.9
航機事業21,99082.621,578109.4
その他49254.816241.7
227,16494.249,211102.9

(注) セグメント間取引については、相殺消去しております。
(3) 販売実績
セグメントの名称販売高(百万円)前期比(%)
コネクタ事業194,80395.4
インターフェース・ソリューション事業10,12686.6
航機事業20,130105.3
その他71982.0
225,78195.7

(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
相手先前連結会計年度当連結会計年度
販売高(百万円)割合(%)販売高(百万円)割合(%)
三信電気㈱49,21620.945,41220.1
Apple Inc.24,97910.6

(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 経営成績の分析
「(経営成績等の状況の概要) (1) 財政状態及び経営成績の状況」に記載しております。
(2) キャッシュ・フローの状況の分析並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
① キャッシュ・フローの状況の分析
「(経営成績等の状況の概要) (2)キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
② 資本の財源及び資金の流動性、財務政策
当社グループの運転資金需要(営業活動による資金需要)の主な内訳は、グループ製品の新製品開発及び製造のための材料及び部品の購入のほか、労務費、製造経費、販売費及び一般管理費等であります。また、設備資金需要(投資活動による資金需要)の主な内訳は、新製品開発、生産性向上及び品質向上のための設備投資と当社グループの永続的な発展のためのインフラ投資等であります。
こうした資金需要に対し当社グループは、グローバルマーケティングと技術開発力の強化による受注・売上の拡大と環境・品質を重視した競合に負けないものづくりを積極的に推進し、キャッシュ・フローの創出に努めております。
当連結会計年度におきましては、当社の親会社であった日本電気株式会社との資本関係の見直しを目的とした自己株式の公開買付けに要する資金として2024年3月29日付で金融機関からの借り入れにより600億円の資金調達を実施しております。
この状況を踏まえ、中期経営計画に掲げた企業価値向上に向けた取り組みを通じて資金を確保し、成長投資への活用に加え、借入金の早期返済など財務体質の強化及び株主還元のバランスを図ってまいります。
なお、グループ資金調達リスクの回避及び資金コストの低減を図るため、コミットメントライン契約による資金調達枠の確保、キャッシュ・マネジメント・システム(CMS)によるグループ内資金の効率化などの対策を講じております。
(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2) 中長期的な会社の経営戦略」に記載したとおり、中期経営計画の最終年度である2025年度の目標値を売上高2,600億円、経常利益240億円に見直しております。
中期経営計画3年目となる当連結会計年度の実績値及び達成率は、以下のとおりであります。
指標実績中期経営計画中期目標
(億円)
2021年度
(億円)
2022年度
(億円)
2023年度
(億円)
達成率2025年度目標
(億円)
売上高2,2502,3582,25787%2,6003,000
経常利益18519114762%240300

当連結会計年度は、「(経営成績等の状況の概要) (1) 財政状態及び経営成績の状況」に記載したとおり、自動車分野で伸長しましたが、携帯機器分野及び産機・インフラ分野で需要低迷による影響を受けたことなどから、減収減益の結果となりました。
中期経営計画4年目となる翌連結会計年度は、自動車分野の売上拡大、産機・インフラ分野の回復、及び新たな注力市場となる航空・宇宙分野の売上拡大により、増収増益を目指してまいります。
(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。