訂正有価証券報告書-第120期(令和2年1月1日-令和2年12月31日)
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャ
ッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度の世界経済は、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大が続き、世界各地で感染対策と経済活動の両立が図られたものの、収束に向かう兆しは見えず、大幅な減速となりました。米国では、外出制限により消費の記録的な落ち込みが上半期に見られましたが、経済活動規制の緩和や強化を繰り返しながら、下半期に景気の緩やかな回復が進みました。欧州では、3月から各国で実施された大規模なロックダウンや夜間外出禁止令がその後緩和され、消費が回復に向かったものの、感染の再拡大を受けて経済活動制限が再強化された影響により、景気の減速が続きました。中国では、世界に先駆け経済活動を再開した結果、内需や輸出を中心に景気の回復が進みました。また、その他の新興国については、一部の国では外出や経済活動の制限が行われましたが、感染拡大が続く中で経済活動の再開が徐々に進み、景気は回復の兆しが見られました。わが国では、11月に感染が再拡大しましたが、緊急事態宣言が解除された後の経済活動再開と外出自粛の緩和により、景気持ち直しの動きが続きました。
このような状況の中、当社関連市場においては、新型コロナウイルスの感染が拡大した影響を大きく受けました。オフィス向け複合機とレーザープリンターは、新型コロナウイルスの感染が続く中で、企業活動の回復が十分でないため、モノクロ機とカラー機の需要がともに減少しました。カメラ市場は新型コロナウイルスの影響により需要が減退しましたが、期後半には消費の持ち直しにより改善へと向かいました。インクジェットプリンターは、在宅勤務や在宅学習の需要が堅調な先進国と中国に加え、期後半には一部の新興国において回復のペースが徐々に上がりました。一方、医療機器は、新型コロナウイルスの影響により、上半期は医療機関向け営業活動が制限され、その制限は下半期に緩和されたものの、新型コロナウイルスの影響が長期化した結果、販売活動に影響を受けました。産業機器においては、半導体露光装置、FPD露光装置ともに堅調に推移しました。
当連結会計年度の平均為替レートにつきましては、米ドルが前期比で約2円円高の106.68円、ユーロが前期並みの122.07円となりました。
当連結会計年度は、複合機は、期後半にかけて回復の兆しを示したものの、オフィス向け、プロダクション市場向けの販売がともに減少しました。レーザープリンターもモノクロ機、カラー機ともに販売台数は前期を下回りました。また、新型コロナウイルスの影響により続いたオフィス閉鎖が解除され、企業活動が再開した後のプリントボリュームが緩やかな回復にとどまり、サービスと消耗品の売上が減少しました。レンズ交換式デジタルカメラは、販売台数は前期を下回りましたが、下半期にはフルサイズミラーレスカメラのEOS R5とEOS R6がけん引役となり、販売が上振れしました。インクジェットプリンターは、先進国と中国における在宅勤務や在宅学習の需要に加え、一部の新興国において回復した需要を捉え、大容量インクモデルを含め、販売台数は前期を大きく上回りました。医療機器は、設置の延期や営業活動の制限がありましたが、各国政府による医療機関への機器納入支援などの機会を捉え、需要を取り込んだ結果、前期に対して若干の減収にとどめました。産業機器では、半導体露光装置におけるメモリー向け投資と有機ELディスプレイ製造装置は堅調に推移しましたが、新型コロナウイルスの影響により設置が遅延した結果、FPD露光装置は前期を下回りました。一方で、多様な用途への展開が進み市場が拡大していたネットワークカメラは、販売活動の回復が緩やかな水準にとどまり、微増収となりました。これらを合計した当期の売上高は、前期比12.1%減の3兆1,602億円となりました。売上総利益率は、前期を1.3ポイント下回る43.5%となり、売上総利益は前期比14.5%減の1兆3,759億円となりました。営業費用は、グループを挙げた効率化を一層推し進めた結果、前期比11.9%減の1兆2,653億円となりました。その結果、営業利益は前期比36.6%減の1,105億円となりましたが、上方修正した直近の連結業績予想をさらに上回りました。営業外収益及び費用は受取利息及び配当金の減少などにより前期比で13億円悪化し、197億円の収益となり、税引前当期純利益は前期比33.4%減の1,303億円、当社株主に帰属する当期純利益は前期比33.3%減の833億円となりました。
基本的1株当たり当社株主に帰属する当期純利益は、前期に比べ37円42銭減の79円37銭となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
オフィスビジネスユニットでは、新製品であるimageRUNNER ADVANCE DXシリーズの販売が好調に推移しましたが、オフィス向け及びプロダクション市場向け複合機は、オフィス再開後の商談が緩やかな回復にとどまり、販売台数は前期から減少しました。レーザープリンターは、新型コロナウイルスによる景気の減速が続いた結果、モノクロ機、カラー機ともに販売台数は前期を下回りました。また、サービスと消耗品についても企業活動再開後のプリントボリュームが緩やかな回復で推移し、減収となりました。これらの結果、当ユニットの売上高は、前期比17.8%減の1兆4,402億円となり、税引前当期純利益は前期比49.3%減の865億円となりました。
イメージングシステムビジネスユニットでは、レンズ交換式デジタルカメラは市場の縮小傾向が継続したことに加え、新型コロナウイルスの影響による需要の減退があり、販売台数は前期を下回りましたが、新製品EOS R5とEOS R6の拡販によりフルサイズモデルを中心にミラーレスへのシフトが進みました。インクジェットプリンターは、先進国と中国における在宅勤務や在宅学習の需要に加え、一部の新興国において回復した需要を取り込んだ結果、本体、消耗品ともに販売は前期を大きく上回りました。これらの結果、当ユニットの売上高は、前期比11.8%減の7,122億円となりましたが、新製品効果などにより収益性を改善し、税引前当期純利益は前期比43.1%増の711億円となりました。
メディカルシステムビジネスユニットでは、新型コロナウイルスの感染拡大により大型機器の商談・据付の延期がありましたが、各国政府による緊急医療体制整備や医療機関に対する財政支援などを背景に、肺炎検査向けCT装置やX線診断装置の需要を取り込んだ結果、当ユニットの売上高は前期比0.6%減の4,361億円となり、税引前当期純利益は前期比6.4%減の255億円となりました。
産業機器その他ビジネスユニットでは、半導体露光装置は、メモリー向け投資が堅調に推移し、販売台数は前期を大きく上回りました。有機ELディスプレイ製造装置は、新型コロナウイルスの影響により渡航制限が続きましたが、渡航の再開後に設置を順調に進め、増収となりました。一方、FPD露光装置についても、渡航制限が解除された後に、設置活動を順次進めましたが、販売台数は前期を下回りました。ネットワークカメラは、新型コロナウイルスの影響を受けたものの、防犯や災害監視など従来のニーズに加え、遠隔モニタリングや人の密集具合の把握など、映像解析による用途の多様化を背景に販売活動を強化し、微増収となりました。これらの結果、当ユニットの売上高は、前期比4.9%減の6,548億円となり、税引前当期純利益は前期比26.3%減の143億円となりました。
当連結会計年度末における総資産は、有形及び無形固定資産や売上債権が減少したことなどにより、前連結会計年度末から1,463億円減少して4兆6,256億円となりました。負債は、年金負債並びに未払費用等などが減少したことにより、前連結会計年度末から464億円減少して1兆8,416億円となりました。純資産は、当社株主への配当及び自己株式の取得や円高によるその他の包括損失累計額の増加などにより、前連結会計年度末から999億円減少して2兆7,840億円となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、為替変動の影響分を合わせて、前連結会計年度末から51億円減少し、4,077億円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
前連結会計年度より大幅な減益となったものの運転資金の改善により、前連結会計年度末比で247億円の減少に
とどめ、3,338億円の収入となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
生産設備への投資が減少したことなどにより、前連結会計年度末から731億円抑制し、1,554億円の支出となり
ました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
配当金の支払いや自己株式の取得などの支出があった結果、1,834億円の支出となりました。
また、営業活動によるキャッシュ・フローから投資活動によるキャッシュ・フローを控除した、いわゆるフリーキャッシュ・フローは、前連結会計年度から485億円増加し、1,784億円の収入となりました。
③生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)1. 金額は、販売価格によって算定しております。
2. 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
b. 受注実績
当グループの生産は、当社と販売各社との間で行う需要予測を考慮した見込み生産を主体としておりますので、販売高のうち受注生産高が占める割合はきわめて僅少であります。従って受注実績の記載は行っておりません。
c. 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)1. 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2. 最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとお
りであります。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2021年3月30日)現在において判断しております。
はじめに
当社は、複写機、複合機、レーザープリンター、カメラ、インクジェットプリンター、診断機器、半導体露光装置及びFPD露光装置を世界的に事業展開する企業グループであります。また、企業の成長と発展を果たすことにより、世界の繁栄と人類の幸福に貢献することを、経営指針としております。
①主要業績評価指標
当社の事業経営に用いられる主要業績評価指標(Key Performance Indicators。以下「KPI」という。)は以下のとおりであります。
(収益及び利益率)
当社は、真のグローバル・エクセレント・カンパニーを目指し邁進しておりますが、経営において重点を置いている指標の1つに収益が挙げられます。以下は経営者が重要だと捉えている収益に関連したKPIであります。
売上高はKPIの1つと考えております。当社は主に製品、またそれに関連したサービスから売上を計上しています。売上高は、当社製品への需要、会計期間内における取引の数量や規模、新製品の評判、また販売価格の変動といった要因によって変化し、その他にも市場でのシェア、市場環境等も売上高を変化させる要因です。さらに製品グループ別の売上高は売上の中でも重要な指標の1つであり、市場のトレンドに当社の経営が対応しているかというような内容を測定するための目安となります。
売上高総利益率は収益性を測るもう1つのKPIです。当社は開発革新活動を通して、より早く新製品を投入することで、値崩れせず価格面での競争力を保持できるよう、製品開発におけるリードタイムの短縮を図ってきました。さらに、生産革新活動を通して、コストダウンの成果も挙げてきました。こうした成果が当社の売上高総利益率の改善に繋がってきており、今後も開発革新、生産革新といった活動を推進してまいります。
営業利益率、税引前当期純利益率及び売上高研究開発費比率も当社のKPIとして考えており、これらについて当社は2つの面からの方策をとっております。1つは、販売費及び一般管理費そのものを統制し低減に努めていること、もう1つは将来の利益を生み出す技術に対する研究開発費を一定の水準に維持していくことです。現在の市場における優位性を保持しつつ、他市場における可能性も開拓していくために必要なことであり、そうした投資が将来の事業の成功の基盤となります。
(キャッシュ・フロー経営)
当社はキャッシュ・フロー経営にも重点を置いております。以下の指標は、経営者が重要だと捉えているキャッシュ・フロー経営に関連したKPIです。
たな卸資産回転日数はKPIの1つであり、サプライチェーン・マネジメントの成果を測る目安となります。たな卸資産は陳腐化及び劣化する等のリスクを内在しており、その資産価値が著しく下がることで、当社の業績に悪影響を及ぼすこともありえます。こうしたリスクを軽減するためには、サプライチェーン・マネジメントの強化により、たな卸資産の圧縮及び製品コスト等の回収を早期化させるために生産リードタイムを短縮させ、一方で販売の機会損失を防ぐため適正水準の製品在庫を保持していく活動の継続が重要であると考えられます。
また有利子負債依存度も当社のKPIの1つであります。当社のような製造業では、開発、生産、販売等のプロセスを経て、事業が実を結ぶまでには、一般に長い期間を要するため、堅固な財務体質を構築することは重要なことであると考えます。今後も当社は主に通常の営業活動からのキャッシュ・フローで、流動性や設備投資に対応してまいります。
総資産に占める株主資本の割合を示す株主資本比率も、当社におけるKPIの1つとしております。株主資本を潤沢に持つことは、長期的な視点に立って高水準の投資を継続することにつながり、短期的な業績悪化にも揺るがない事業運営を可能にします。特に、研究開発に重点を置く当社にとっては、財務の安全性を確保することは、非常に重要なことであると考えられます。
②重要な会計方針及び見積り
当社の連結財務諸表は、米国会計基準に基づいて作成されております。また当社は、連結財務諸表を作成するために、種々の見積りと仮定を行っております。これらの見積り及び仮定は将来の市場状況、売上増加率、利益率、割引率等の見積り及び仮定を含んでおります。当社は、これらの見積り及び仮定は合理的であると考えておりますが、実際の業績は異なる可能性があります。また、新型コロナウイルス感染再拡大がみられている地域もあり、依然として収束の時期は見通せない状況ですが、各国・地域は引き続き感染対策と経済活動の両立を目指しております。2021年の経済活動は回復に向かうものの、新型コロナウイルスの影響を継続して受ける可能性があると想定しています。キヤノンは、現在当社の財政状態及び経営成績に影響を与えている会計方針を適用するにあたり、以下の事項がより重要な判断事項であると考えています。
a.長期性資産の減損
基準書360「有形固定資産」に準拠し、有形固定資産や償却対象の無形固定資産などの長期性資産は、帳簿価額が回収できないという事象や状況の変化が生じた場合に、減損に関する検討を実施しております。帳簿価額が割引前将来見積キャッシュ・フローを上回っていた場合には、帳簿価額が公正価値を超過する金額について減損を認識しております。公正価値の決定は、見積り及び仮定に基づいて行っております。
b.有形固定資産
有形固定資産は取得原価により計上しております。減価償却方法は、定額法で償却している一部の資産を除き、定率法を適用しております。
c.リース
当社は、貸手のリースでは主にオフィス製品の販売においてリース取引を提供しております。販売型リースでの機器の販売による収益は、リース開始時に認識しております。販売型リース及び直接金融リースによる利息収益は、それぞれのリース期間にわたり利息法で認識しております。これら以外のリース取引はオペレーティングリースとして会計処理し、収益はリース期間にわたり均等に認識しております。機器のリースとメンテナンス契約が一体となっている場合は、リース要素と非リース要素の独立販売価格の比率に基づいて収益を按分しております。通常、リース要素は、機器及びファイナンス費用を含んでおり、非リース要素はメンテナンス契約及び消耗品を含んでおります。一部の契約ではリースの延長又は解約オプションが含まれております。当社は、これらのオプション行使が合理的に確実である場合、オプションの対象期間を考慮し、リース期間を決定しております。当社のリース契約の大部分は、顧客の割安購入選択権を含んでおりません。
借手のリースでは建物、倉庫、従業員社宅、及び車輛等に係るオペレーティングリース及びファイナンスリースを有しております。当社は、契約開始時に契約にリースが含まれるか決定しております。一部のリース契約では、リース期間の延長又は解約オプションが含まれております。当社は、これらのオプション行使が合理的に確実である場合、オプションの対象期間を考慮し、リース期間を決定しております。当社のリース契約には、重要な残価保証または重要な財務制限条項はありません。当社のリースの大部分はリースの計算利子率が明示されておらず、当社はリース料総額の現在価値を算定する際、リース開始時に入手可能な情報を基にした追加借入利子率を使用しております。当社のリース契約の一部には、リース要素及び非リース要素を含むものがあり、それぞれを区分して会計処理しております。当社はリース要素と非リース要素の見積独立価格の比率に基づいて、契約の対価を按分しております。オペレーティングリースに係る費用は、そのリース期間にわたり定額法で計上されております。
d.企業結合
企業買収は取得法で処理しております。取得法では、取得した全ての有形及び無形資産並びに引き継いだ全ての負債を、支配獲得日における公正価値に基づき認識及び測定します。公正価値の決定には、将来キャッシュ・フローの予測、割引率、資本収益率、及びその他の利用可能な市場データに基づく見積りなどの、重要な判断や見積りを伴います。また、将来キャッシュ・フローの予測は、被買収会社の実績や、過去及び将来に想定される趨勢、市場や経済状況などの多くの要素に基づいております。
e.のれん及びその他の無形固定資産
のれん及び耐用年数が確定できないその他の無形固定資産は償却を行わず、代わりに毎年第4四半期に、または潜在的な減損の兆候があればより頻繁に減損テストを行っております。全てののれんは、企業結合のシナジー効果から便益を享受する報告単位に配分されます。報告単位の公正価値が、当該報告単位に割り当てられた帳簿価額を下回る場合には、当該差額をその報告単位に配分されたのれんの帳簿価額を限度とし、のれんの減損損失として認識しております。報告単位の公正価値は、主として割引キャッシュ・フロー分析に基づいて決定されており、将来キャッシュ・フロー及び割引率等の見積りを伴います。将来キャッシュ・フローの見積りは、主として将来の成長率に関する当社の予測に基づいております。割引率の見積りは、主として関連する市場及び産業データ並びに特定のリスク要因を考慮した、加重平均資本コストに基づいて決定しております。2019年第4四半期及び2020年第4四半期に行った減損テストの結果、個々の報告単位の公正価値は帳簿価額を十分に超過しており、減損が見込まれる報告単位はありません。しかし、メディカルシステムビジネスユニットに帰属するのれんについては、公正価値が帳簿価格を超過する割合が他の報告単位と比べて低くなっており、将来キャッシュ・フローが想定よりも減少した場合、減損損失を認識する可能性があります。なお、当該事業に帰属するのれんの帳簿価額は506,513百万円となっております。
耐用年数の見積りが可能な無形固定資産は、主としてソフトウェア、商標、特許権及び技術資産、ライセンス料、顧客関係であります。なお、ソフトウェアは主として3年から8年で、商標は15年で、特許権及び技術資産は5年から18年で、ライセンス料は8年で、顧客関係は15年で定額償却しております。
f.法人税等の不確実性
当社は、法人税等の不確実性の評価及び見積りにおいて多くの要素を考慮しており、それらの要素には、税務当局との解決の金額及び可能性、並びに税法上の技術的な解釈を含んでおります。不確実性に関する実際の解決が見積りと異なるのは不可避的であり、そのような差異が連結財務諸表に重要な影響を与える可能性があります。
g.繰延税金資産の評価
当社は、繰延税金資産に対して定期的に実現可能性の評価を行っております。繰延税金資産の実現は、主に将来の課税所得の予測によるところが大きく、課税所得の予測は将来の市場動向や当社の事業活動が順調に継続すること、その他の要因により変化します。課税所得の予測に影響を与える要因が変化した場合には評価性引当金の設定が必要な場合があり、当社では繰延税金資産の実現可能性がないと判断した際には、繰延税金資産を修正し、損益計算書上の法人税等に繰り入れ、当期純利益が減少いたします。
h.未払退職及び年金費用
未払退職及び年金費用は数理計算によって認識しており、その計算には前提条件として基礎率を用いています。割引率、期待運用収益率といった基礎率については、市場金利などの実際の経済状況を踏まえて設定しております。その他の基礎率としては、昇給率、死亡率などがあります。これらの基礎率の変更により、将来の退職及び年金費用が影響を受ける可能性があります。
基礎率と実際の結果が異なる場合は、その差異が累積され将来期間にわたって償却されます。これにより実際の結果は、通常、将来の年金費用に影響を与えます。当社はこれらの基礎率が適切であると考えておりますが、実際の結果との差異は将来の年金費用に影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度の連結財務諸表の作成においては、給付債務の計算に使用する割引率には国内制度、海外制度ではそれぞれ加重平均後で0.5%、1.5%を、長期期待収益率には国内制度、海外制度ではそれぞれ加重平均後で3.0%、4.8%を使用しております。割引率を設定するにあたっては、現在利用可能で、かつ、年金受給が満期となる間に利用可能と予想される高格付けで確定利付の公社債の収益率に関し利用可能な情報を参考に決定しております。また長期期待収益率の設定にあたっては、年金資産が構成される資産カテゴリー別の過去の実績及び将来の期待に基づいて収益率を決定しております。
割引率の低下(上昇)は、勤務費用及び数理計算上の差異の償却額を増加(減少)させるとともに、利息費用を減少(増加)させます。割引率が0.5%低下した場合、予測給付債務は約978億円増加します。
長期期待収益率の低下(上昇)は、期待運用収益を減少(増加)させ、かつ数理計算上の差異の償却額を増加(減少)させるため、期間純年金費用を増加(減少)させます。長期期待収益率が0.5%低下した場合、翌連結会計年度の期間純年金費用は約52億円増加します。
これにより年金制度の積立状況(すなわち、年金資産の公正価値と退職給付債務の差額)を連結貸借対照表で認識しており、対応する調整を税効果調整後で、その他の包括利益(損失)累計額に計上しております。
i.収益認識
当社は、主にオフィス、イメージングシステム及びメディカルシステム製品、産業機器、消耗品並びに関連サービス等の売上を収益源としており、それらを顧客との個別契約に基づき提供しております。当社は、約束した財またはサービスの支配が顧客に移転した時点、もしくは移転するにつれて、移転により獲得が見込まれる対価を反映した金額により、収益を認識しております。
オフィス製品(オフィス向け複合機、レーザープリンター等)及びイメージングシステム製品(デジタルカメラ、インクジェットプリンター等)の収益は、製品の支配を顧客がいつ獲得するかにより、出荷または引渡時点で認識しております。
半導体露光装置やFPD露光装置等の光学機器及びCT装置やMRI装置等の医療機器等の販売にあたり、機器の性能に関して顧客検収条件を要する場合は、機器が顧客の場所に据え付けられ、合意された仕様が客観的な基準により達成された時点で、収益を認識しております。
当社のサービス売上の大部分は、オフィス製品及びメディカルシステム製品のメンテナンスサービスに関連するものであり、一定期間に渡り認識しております。オフィス製品のサービス契約は、通常、顧客は、機器の使用量に応じた従量料金、固定料金、または、基本料金に加えて使用量に応じた従量料金を支払う契約であり、通常、修理作業及び消耗品の提供を含んでおります。オフィス製品のサービス契約による収益の大部分は、顧客への請求金額が、履行義務の充足に伴い顧客に移転した価値と直接対応していることから、顧客への請求金額により収益を計上しております。メディカルシステム製品のサービス契約は、通常、顧客は、当社が提供する待機サービスの対価として、固定料金を支払っており、当社は契約期間に渡り均等に収益を認識しております。
オフィス製品に関するサービス契約の多くは、関連する製品販売契約と一体で実行されます。製品及びサービスの取引価格は、独立販売価格の比率に基づいて各履行義務に配分される必要があり、その配分には判断が伴います。独立販売価格は、市場の状況及びその他観察可能なインプットを含む合理的に入手可能なすべての情報に基づき、配分の目的に合致するように設定された価格のレンジを用いて見積もられています。製品またはメンテナンスサービスの取引価格が設定されたレンジを外れる場合は、見積独立販売価格に基づき取引価格は配分されることになります。契約獲得の追加コストは、関連するオフィス製品が販売された時に、費用として認識しております。
転用可能性がなく、かつ完了した成果に対して顧客から支払いを受ける強制力のある権利を有している一部の産業機器の販売契約(以下「長期契約」)に関する収益は一定期間に渡り認識しており、コストを基礎とする進捗度に基づき、完成時の見積り利益の当期進捗分を含む収益が当期に認識されます。未完成の長期契約に関する損失は、損失が発生することが明らかになった期に認識されます。長期契約に関する作業実績や作業状況、想定される収益性の変化や最終的な契約条項がコストや収益の見積りに与える影響は、それらが合理的に見積り可能になった期に認識されます。将来コストや完成時の利益に影響を与える要素は生産効率、労働力や資材の利用可能性とコストを含み、これらの要素は将来の収益と売上原価に重要な影響を与えることがあります。
財またはサービスの移転と交換に当社が受け取る取引価格は、値引き、顧客特典、売上に応じた割戻し等の変動対価を含んでおります。変動対価は、主として、販売代理店や小売店が主要顧客であるイメージングシステム製品の販売に関連しております。当社は、変動対価に関する不確実性が解消された時点で収益認識累計額の重要な戻し入れが生じない可能性が高い範囲で、変動対価を取引価格に含めております。変動対価は、過去の傾向や売上時点におけるその他の既知の要素に基づいて見積もっており、直近の情報に基づき定期的に見直しております。また、当社は、販売後の短期間、顧客に製品の返品権を付与することがあり、当該返品権により予想される返品を考慮し決定された取引価格に基づき収益認識をしております。
当社は、連結損益計算書の収益について、顧客から徴収し政府機関へ納付される税金を除いて表示しております。
j.新会計基準
「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 注1 (24)新会計基準」に記載のとおりであります。
③当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.売上高
当連結会計年度は、世界経済は総じて景気減速が続きました。こうした中、新製品の拡販に努めたものの、市場縮小及び為替レートの変動の影響を受け、売上高は前連結会計年度比12.1%減の3兆1,602億円となりました。製品売上高及びサービス売上高は前連結会計年度比でそれぞれ、12.2%減の2兆4,898億円、11.5%減の6,704億円となりました。
当連結会計年度の海外での売上高は、連結売上高の74.5%を占めます。海外での売上高の計算は、円と外貨の為替レートの変動に影響されます。製品の現地生産及び海外からの部品や材料調達等によりその影響を抑えておりますが、為替レートの変動は当社の経営成績に大きな影響を与える可能性があります。
当連結会計年度の米ドル及びユーロの平均為替レートはそれぞれ106.68円及び122.07円と、前連結会計年度に比べて米ドルは約2円円高、ユーロは前期並みで推移しました。米ドルとの為替レートの変動により約224億円の売上高減少、ユーロとの変動で約20億円の売上高増加、その他の通貨との変動で約68億円の売上高減少影響がありました。その結果、当連結会計年度の為替による売上高の減少影響は約272億円となりました。
b.売上原価
売上原価は、主として原材料費、購入部品費、工場の人件費から構成されます。原材料費のうち海外調達される原材料については、海外の市場価格や為替レートの変動による影響を受け、当社の売上原価に影響を与えます。売上原価にはこれらの他に有形固定資産の減価償却費、修繕費、光熱費、賃借料などが含まれております。売上高に対する売上原価の比率は、当連結会計年度56.5%、前連結会計年度55.2%となりました。
c.売上総利益
当連結会計年度の売上総利益は、前連結会計年度と比べ14.5%減少の1兆3,759億円となりました。また売上総利益率は、前連結会計年度より1.3ポイント悪化し43.5%となりました。売上総利益及び売上総利益率の減少は、売上の減少、プロダクトミックス影響及びドルの円高影響などによるものです。
d.営業費用
営業費用は、主に人件費、研究開発費、広告宣伝費であります。営業費用は、経費の効率的な運用を全社的に推進した結果、前連結会計年度比11.9%減少し1兆2,653億円となりました。
e.営業利益
当連結会計年度の営業利益は、前連結会計年度比36.6%減少の1,105億円でありました。営業利益率は1.4ポイント悪化して3.5%となりました。
f.営業外収益及び費用
当連結会計年度の営業外収益及び費用は、受取利息の減少などにより、前連結会計年度から13億円悪化し、197億円の収益となりました。
g.税引前当期純利益
当連結会計年度の税引前当期純利益は1,303億円で、前連結会計年度比33.4%の減益となりました。また、売上高に対する比率は4.1%でした。
h.法人税等
当連結会計年度の法人税等は218億円減少し、実効税率は26.4%でした。実効税率が日本の法定実効税率を下回っているのは、主に海外子会社で適用される税率が日本の法定実効税率より低いためです。
i.当社株主に帰属する当期純利益
当連結会計年度の当社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度比33.3%の減益である833億円となりました。また、売上高当期純利益率は2.6%となりました。
④海外事業と外国通貨による取引
当社の販売活動は様々な地域で現地通貨により行っている一方、売上原価は円の占める割合が比較的高くなっております。当社の現在の事業構造を鑑みると、円高影響は売上高や売上高総利益率に対してマイナス要因となります。こうした為替相場の変動による財務リスクを軽減することを目的に、当社は為替先物契約を主とした金融派生商品を利用した取引を実施しております。
海外における売上高利益率は、主に販売活動を中心としているため、国内の売上高利益率と比較すると低くなっております。一般的に販売活動は、当社が行っている生産活動ほど収益性は高くありません。
⑤流動性と資金源泉
a.現金及び現金同等物
当連結会計年度における現金及び現金同等物は、前連結会計年度から51億円減少して、4,077億円となりました。
当社の現金及び現金同等物は主に円と米ドルを中心としておりますが、その他の外貨でも保有しております。当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度より大幅な減益となったものの、運転資金の改善に努め、前連結会計年度に比べて247億円の減少にとどめ、3,338億円の収入となりました。営業活動によるキャッシュ・フローは、主に顧客からの現金受取によるキャッシュ・イン・フローと、部品や材料、販売費及び一般管理費、研究開発費、法人税の支払いによるキャッシュ・アウト・フローとなっております。
当連結会計年度におけるキャッシュ・イン・フローの減少は、主に売上高の減少に伴い、顧客からの現金回収が減少したことによるものです。当社の回収率に重要な変化はありません。また部品や材料の支払いといったキャッシュ・アウト・フローの減少は、在庫水準の低減に努めたことなどによるものです。法人税の支払いによるキャッシュ・アウト・フローの減少は、前連結会計年度の課税所得の減少によるものです。
当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは、固定資産取得額が減少したこと等により、前連結会計年度より731億円減少し1,554億円の支出となりました。
当社は、営業活動によるキャッシュ・フローから投資活動によるキャッシュ・フローを控除した純額をフリーキャッシュ・フローと定義しており、当連結会計年度のフリーキャッシュ・フローは、前連結会計年度の1,299億円から、485億円増加し、1,784億円の収入となりました。
当社は、キャッシュ・フロー経営に重点を置いているため、フリーキャッシュ・フローを常時モニタリングしております。フリーキャッシュ・フローは当社の現在の流動性や財務活動の使途を理解する上で重要であり、また投資家の理解のためにも有用であると考えております。当社は資金の調達源泉を明らかにするために、米国会計基準による連結キャッシュ・フロー計算書や連結貸借対照表と併せて、米国会計基準以外の財務諸表(Non-GAAP財務諸表)である、フリーキャッシュ・フローを分析しております。なお、最も直接的に比較可能な米国会計基準に基づき作成された指標とフリーキャッシュ・フローの照合調整表は以下のとおりです。
当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは、1,269億円の配当金支払いと500億円の自己株式の購入により1,834億円の支出となりました。なお、当連結会計年度の1株当たりの配当は、120.00円の配当を実施しました。
当社は、流動性や必要資本を満たすため、増資、社債発行、借入といった外部からの様々な資金調達方法をとることが可能です。当社は、これまでどおりの資金調達や資本市場からの資金調達が可能であり、また将来においても可能であり続けると認識しておりますが、経済情勢の急激な悪化やその他状況によっては、当社の流動性や将来における長期の資金調達に影響を与える可能性があります。
当社は、2021年12月を返済期日とする借入につき、返済期日まで1年以内となったことから、長期債務から1年以内に返済する長期債務へ3,440億円の振り替えを実施しております。その影響から短期借入金(1年以内に返済する長期債務を含む)は前連結会計年度末の420億円から3,502億円増加し、当連結会計年度末には3,922億円となりました。長期債務(1年以内に返済する長期債務は除く)は前連結会計年度末の3,573億円から3,525億円減少し、当連結会計年度末には48億円となりました。
当社の固定債務は、主に銀行借入とリース債務によって構成されています。
当社は、グローバルな資本市場から資金調達をするために、ムーディーズ・インベスターズ・サービスとスタンダード&プアーズの2つの格付機関から信用格付を得ております。それに加えて、当社は日本の資本市場からも資金調達するために、日本の格付会社である格付投資情報センターからも信用格付を得ております。2021年3月15日現在、当社の負債格付は、ムーディーズ・インべスターズ・サービス:Baa1(長期);スタンダード&プアーズ:A(長期)、A-1(短期);格付投資情報センター:AA(長期)であります。当社では、現時点で負債の返済を早めるような格付低下の要因は発生しておりません。当社の信用格付が下がる場合は、借入れコストの増加につながります。
b.在庫の適正化
当社の最新の在庫水準の最適化の方針は、運転資金を最小化し、在庫の陳腐化のリスクを避け、一方で予期せぬ天災発生時でも販売活動を継続できるようにするため、適切なバランスを維持していくことであります。当社の在庫回転日数は、当連結会計年度、前連結会計年度末時点でそれぞれ、60日、59日となりました。当連結会計年度は、売上が大きく減少する中で、在庫を前連結会計年度末から219億円削減したことで在庫回転日数は同水準となりました。
c.設備投資
当連結会計年度における設備投資は、前連結会計年度の1,781億円から458億円減少し、1,323億円になりました。翌連結会計年度につきましては、当社の設備投資は1,600億円の見込みであります。
d.退職給付債務への事業主拠出
当社の確定給付型年金への拠出額は、当連結会計年度270億円、前連結会計年度304億円であり、確定拠出型年金への拠出額は、当連結会計年度163億円、前連結会計年度174億円であります。また、一部の子会社が加入している複数事業主制度への拠出額は、当連結会計年度42億円、前連結会計年度43億円であります。
e.運転資本
当連結会計年度における運転資本(流動資産から流動負債を控除した額)は、前連結会計年度の8,740億円から4,110億円減少し、4,630億円になりました。当社の運転資本は、予測できる将来需要に対して十分であると認識しております。当社の必要資本は、設備投資に関わる支出の水準及び時期といった全社的な事業計画に基づいております。流動比率(流動負債に対する流動資産の割合)は当連結会計年度は1.35、前連結会計年度は1.90であります。
f.総資本当社株主に帰属する当期純利益率
総資本利益率(当社株主に帰属する当期純利益を前年度末及び当年度末の総資産平均で除した割合)は、当連結会計年度では1.8%、前連結会計年度は2.6%であります。
g.株主資本当社株主に帰属する当期純利益率
株主資本利益率(当社株主に帰属する当期純利益を前年度末及び当年度末の株主資本平均で除した割合)は、当連結会計年度は3.2%となり、前連結会計年度の4.5%から減少いたしました。
h.有利子負債依存度
当連結会計年度における短期借入金、短期オペレーティングリース負債、長期借入金、及び長期オペレーティングリース負債は、前連結会計年度末の5,149億円より87億円減少し5,062億円となり、有利子負債依存度(総資産に対する有利子負債の割合)で表すと10.9%になります。前連結会計年度の有利子負債依存度は10.8%でした。
i.株主資本比率
株主資本比率(株主資本を総資産で除した割合)は、当連結会計年度は55.7%となり、前連結会計年度の56.3%から減少いたしました。
⑥研究開発及び特許
当社は創業当時より、業界をリードするコア製品を生み出す「コアコンピタンス技術(以下、コア技術)」と、技術蓄積のベースとなる「基盤要素技術」を多様に組み合わせた「コアコンピタンスマネジメント」を展開して事業の多角化を行ってきました。また、成長の中で蓄えられてきたキヤノンブランドを支える技術・ノウハウ―品質、コスト、納期を支える技術―を価値創造基盤技術としてコアコンピタンスマネジメントに組み込んでいます。
研究開発における主要戦略としては、1.「基盤要素技術と価値創造基盤技術のさらなる強化」、2.「強いコア技術と基盤要素技術に基づく次なる事業の芽の創出」、及び3.「時代の要請に応じたイノベーション型の技術開発の強化」を掲げ、その取組みを進めています。
1.では、価値創造基盤技術をさらに進化させることによって、既存事業の高効率化に貢献します。並行して事業グループがもつ幅広いコア技術のエッセンスを抽出し、基盤要素技術を深化させ、新規事業のコア技術に注入します。これにより、既存事業の強化と新事業グループの成長に向けたコアコンピタンスマネジメントを推進します。
2.では、その一例として、インク・トナー材料の基礎となる機能材料技術を生かした新機能材料、特徴ある材料を生かした装置を開発し、事業の芽につながる次世代技術の育成に新たに取り組むなど、技術多角化を通して、新事業領域の開拓を進めます。
3.では、DXやカーボンニュートラルなどのトレンドを捉え、企業価値の向上につながる技術開発を推進します。特に、多様なサービスの結合を可能とするサイバー(仮想)空間と人との接点であるフィジカル(現実)空間、これらを高度に融合するサイバー&フィジカルシステムに注目しています。フィジカル領域において世界トップレベルのコア技術に、高度なサイバー技術をアライアンスなども活用しながら取り込み、一歩先を行くサイバー&フィジカル技術を開発します。
研究開発費は、当連結会計年度2,723億円、前連結会計年度2,985億円でした。売上高研究開発費比率は、当連結会計年度8.6%、前連結会計年度8.3%でした。
当社は、強い特許ポートフォリオに守られた製品は他社の追随を容易に許さず、市場や業界における標準化活動などでも中心的な役割を果たせるとの認識をもっております。IFI CLAIMS® Patent Servicesが発表した2020年の米国特許取得件数ランキングにおいて、当社は第3位となりました。
⑦トレンド情報
当社は、オフィス、イメージングシステム、メディカルシステム、産業機器その他の分野において、開発、生産から販売、サービスにわたる事業活動を営んでおります。
オフィスビジネスユニット
当社は、パーソナル向け、オフィス向け、さらにプロダクションプリント向けのプリンター、複写機、複合機の、開発・製造・販売及びメンテナンス、アフターサービスを行っております。また、ソフトウェア及びサービス、ソリューションビジネスを通して顧客に付加価値を提供しております。当社の製品はSOHO、中堅・中小企業から大企業及びプロダクションプリントのプロフェッショナルに至るまで、幅広い分野を網羅しております。近年の複写機業界では、ユーザーの志向がモノクロからカラー製品に、またハードウェアからサービスとソリューションにシフトしてきております。特にプロダクション印刷市場では、短納期、オンデマンド印刷やバリアブルデータ印刷への需要がますます強まっております。またコネクティビティ、セキュリティ、モバイル対応、システム・インテグレーション、ビジネスワークフロー、クラウドを利用したウェブサービスなどの高い付加価値の提供が重要となっております。これらの付加価値要素を複合機などのハードウェアと合わせて、お客様にソリューションとして提供することが求められております。2020年に当社は、オフィス向け複合機「imageRUNNER ADVANCE DXシリーズ」を発売いたしました。また、クラウドにつながることで複合機の機能を拡張するサービスとして、「uniFLOW Online」を提供しております。クラウドサービス連携とセキュリティの強化に加え、紙文書を効率的に電子化するアドバンスドスキャンを実現するために、スキャン機能を向上させ、主力製品を一新しました。市場動向に沿って、今後も更なる競争力の維持及び向上に向けて、ますます高度化する顧客の需要に応えるべく、製品群の更なる充実とソリューション対応力の強化を図るとともに、販売力の強化に努めてまいります。
レーザープリンターについては、より付加価値の高い中高速機、特に複合機の拡販に注力していますが、今年はコロナ影響によるオフィスの稼働率低下の影響を受けました。一方、在宅ニーズが高まる中、低中速機の需要は回復しつつあります。スマートフォン、クラウド環境の普及等でユーザーのプリントスタイルが変化する中、プリント需要の減少による市場全体の成長鈍化が懸念されているのに加え、競合メーカー各社の攻勢による競争の激化とそれに伴うプリンタ本体/消耗品CRGの著しい価格下落は大きな脅威となっております。そのような環境下において、当社は各種の技術的イノベーションにより、顧客との一定期間にわたる契約型ビジネスを推進するなどの競争力強化をはかり、数量・シェア拡大モメンタムの加速を図っていきます。加えて、一層のコストダウン、サプライチェーンの最適化を通じた事業効率の最大化を目指してまいります。
イメージングシステムビジネスユニット
当社は、デジタルカメラと同様に、レンズや様々な関連アクセサリーを製造、販売しております。レンズ交換式デジタルカメラでは、フルサイズミラーレスカメラの新製品として、「EOS R5」と「EOS R6」の2機種を第3四半期に一度に投入しました。この2機種は、動画撮影機能やAF性能、手振れ補正機構が大きな反響を呼び、販売開始直後から好調な売上を記録しました。また、市場から高い評価を得たエントリーミラーレスカメラ「EOS KissM」の第2世代モデルとなる「EOS KissM2」を第4四半期に発売し、成長領域であるミラーレスカメラのラインアップの更なる強化/拡充を図って参りました。その結果、ミラーレスカメラ市場では確実に販売シェアは上昇しており、レンズ交換式デジタルカメラ全体でも、米国、欧州、中国、日本といった主要地域において引き続き1位を獲得しております。
レンズ交換式デジタルカメラにおいては、撮影領域のより一層の拡大を目指し、更なる高画質化、小型・軽量化、動画機能/ネットワーク機能の充実など、最先端の技術をベースとした新しい製品を提供することにより、今後も成長を目指してまいります。
レンズ交換式デジタルカメラ用交換レンズでは、フルサイズミラーレス用の専用レンズであるRFレンズを8機種投入し、ラインアップを拡充いたしました。EOSRシリーズカメラ本体との相乗効果もあり、RFレンズの販売が伸長しました。RFレンズは、大口径マウントを採用し、バックフォーカスを短くすることで、レンズ設計の自由度が格段に上がり、光学性能が大幅に向上しております。当社は、優れた光学技術力、新規要素技術開発を基に開発された高性能、高品質のレンズを市場に投入することで、お客様の期待に応えてまいります。
コンパクトデジタルカメラ市場は全体としては縮小傾向にあるものの、引き続きプレミアムラインを強化し、収益性の向上に努めてまいります。
コンパクトフォトプリンターでは、コロナ禍という厳しい環境においても家中需要を取り込むなど、販売促進に努めてまいりました。「SELPHY」は、簡単な操作性・優れた携帯性・高画質プリントという強みを持ち合わせ、各地域で高いプレゼンスを維持しております。第2四半期にはSNSで慣れ親しまれているスクエアフォーマットのプリントを手軽に楽しめるミニフォトプリンター「SELPHY SQUARE QX10」を投入しご好評を頂いています。今後更に新規需要を開拓し、市場を牽引してまいります。
インクジェットプリンターは、技術の進化とともに、家庭用のみならず、ポスター印刷などの商業用、オフィスのビジネスプリンター、さらにはプロフェッショナルが求める高画質な写真印刷まで、幅広い分野で使われるようになってきております。
当社は高画質と高速印刷を同時に実現できる高密度プリントヘッド技術「FINE」(Full-photolithography Inkjet Nozzle Engineering )をコア技術として、これらのニーズ全てに応える幅広いラインアップを揃えております。家庭用では、本体の小型化、高級感のあるデザイン、クラウドやスマートフォン、タブレットPCとの連携を強める「Canon PRINT Inkjet」といったソリューションの提供、便利な前面・背面双方からの給紙機構の採用、QRコードをスマホで読み取るだけでプリンターと接続できるといった機能やサービスの充実により、ユーザーの使いやすさと満足度の向上を図っております。
また、内蔵インクタンクにより高生産性と低ランニングコストを実現した大容量インクタンクモデルを、新興国市場のビジネスユース向けに投入開始し、徐々に先進国にも展開を広げております。
大判インクジェットプリンターは、プロフェッショナルのあらゆる高度な写真及びグラフィック印刷ニーズに応えるべく、新顔料インクとクロマオプティマイザーによる12色「LUCIA PROインク」や新画像処理エンジン「L-COA PRO」を搭載し、色の再現性や暗部領域での表現力を大幅に向上させました。グラフィック製品ラインアップも、A2サイズ対応「imagePROGRAF PRO-1000」から、プロのニーズに応えるべく機能性と生産性でも改良を加えた60インチフラッグシップモデル「imagePROGRAF PRO-6100」まで、全ての顧客ニーズに応えられるよう取り揃えております。また、企業で高まっているCAD・ポスターなど大判サイズの低価格による内製出力ニーズにお応えすべく、専用紙を必要としない普通紙での高画質プリントを実現する全5色顔料インク「LUCIA TD」を新開発し、高速プリントを実現する「imagePROGRAF TX/TMシリーズ」に加え、上位機種の高画質・静音化を継承したエントリーモデル「imagePROGRAF TAシリーズ」をラインアップしました。
フラットベッドスキャナに関しても、当社はCIS(Contact Image Sensor)搭載の「CanoScan LiDEシリーズ」の堅調な販売により高いシェアを堅持しております。
メディカルシステムビジネスユニット
当社は、疾病の早期発見、早期診断のためCT、MRI、超音波診断装置、X線診断装置などの画像診断装置や検査機器、ヘルスケアICTソリューションを開発、製造し、世界150以上の国や地域に提供しております。病院経営に貢献し、患者さんに優しい医療システム・サービスをお届けし、これからも変わらず医療に貢献してまいります。
当社は、COVID-19診断に必要なトータルなソリューションを提供することで、新型コロナウイルスの感染拡大防止に取り組まれているすべての医療従事者、関係の皆さまの支援をしております。例えば、藤田医科大学(愛知県豊明市)と産学協同研究で開発した肺炎診断支援に関する臨床への適用評価の開始、国内初となるどこにでも移動可能な感染症対策医療コンテナCTの製品化などを開始しております。
また、新型コロナウイルス抗原定性検査キット「Rapiim SARS-CoV-2-N」を公立大学法人 横浜市立大学(神奈川県横浜市)との共同研究をもとに開発し販売を開始しました。横浜市立大学が開発したSARS-CoV-2に特異性の高い抗体と、当社が培ったRapiimの高感度検出技術プラットフォームを組み合わせることにより、A型・B型インフルエンザウイルスなど他のウイルスと交差反応することなくSARS-CoV-2を的確に検出するとともに、6.64pg/mL程度の微量なウイルス抗原をわずか15分で検出することができます。また、多量のウイルスの場合は4分で検出が可能です。
当ビジネスユニットは、主力のCTはわが国でトップシェアを堅持しています。ディープラーニングを用いて設計された画像再構成技術を搭載した80/160列CTの「Aquilion Lightning / Helios I Edition」、大開口径80列マルチスライスCT 「Aquilion Exceed LB」を販売開始しました。
「Advanced intelligent Clear-IQ Engine(以下、AiCE)」については2019年7月に販売開始したハイエンドクラスの3テスラMRI「Vantage Centurian」でMRIに初めて搭載されましたが、今年度は1.5テスラMRI「Vantage Orian / S Grade」、「Vantage Gracian」へと搭載機種を展開しております。
今後も、精密加工技術、生産技術、センサー技術や画像処理技術など様々なグループ総合力を医療機器の製品開発や製造・サービスに活用することで新たな付加価値を産み出し、更なる医療貢献を果たしてまいります。
コンポーネント事業においては、新興国需要拡大及びコンピューテッド・ラジオグラフィー(CR)からデジタル・ラジオグラフィー(DR)への移行に伴い、X線撮影機器市場は堅調に伸びています。一方、ハイエンド製品では欧米コンポーネントメーカーとの技術競争、またコモディティ化が進行する普及装置では中国・韓国メーカーとの価格競争が激しくなっております。そうした市場環境の中、DR製品ビジネスにおいては、価格競争力を強化した普及機新製品を一部地域向けに販売し、ワールドワイドに順次展開していく予定です。今後の成長分野である動画分野では、透視撮影装置、血管造影装置市場への販売を積極的に展開しております。X線管及びX線イメージングデバイス他においては、当社の高信頼性コア技術(高電圧真空技術、液体金属軸受及び、ヨウ化セシウム(CsI)蒸着技術等)を基に、製品競争力を向上させ、好調に販売を展開しております。医療機器向けを含む業務用カメラでは、カメラの小型化や高画質化など市場ニーズを早期に実現させることで、競争力のある商品を開発し、販売を展開しております。
眼科診断機器においては、今後も成長が見込まれるOCT(光干渉断層計)の分野で、造影剤を使用しない検査で網膜血管描出を実現するOCT アンギオグラフィーソフトウェアの機能を継続的に強化し、激化する市場競争に対応しております。
産業機器その他ビジネスユニット
半導体露光装置市場では、新型コロナウイルスの影響による長期的な景気回復時期の不透明感に加え、米中貿易摩擦激化による投資への影響等が懸念されてきましたがその影響は軽微に留まり、メモリやセンサー向け露光装置の設備投資は堅調に推移しました。また、IoT・5G関連の進展を背景に、CMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor field-effect transistor)センサー、通信デバイスなどの設備投資も堅調に推移しました。後工程露光装置の市場では、半導体チップの高集積化・薄型化への要求の高まりを受け、TSV(Through-Silicon Via)技術等によるメモリーの大容量化やウェハレベルパッケージング化などへの設備投資が伸長しました。
当社では、多様化する半導体アプリケーションに柔軟に対応するため、顧客要望を製品開発の初期段階から反映させる「デザインイン」型のビジネススタイルが定着しております。高付加価値製品の開発も順調に進んでおり、急速に普及が進むIoTや車載向けなど幅広い分野に向けた製品を展開しております。メモリ向けでは、業界最高水準の生産性と重ね合わせ精度を実現したKrFスキャナー「FPA-6300ES6a」、ならびにi線ステッパー「FPA-5550iZ2」の継続的なアップグレードで、更なる市場シェアの拡大を目指してまいります。後工程露光装置では、大型四角基盤への対応と高い解像力を両立した「FPA-8000iW」をラインアップに加え、データセンター向けCPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)などの低消費電力化を実現する有機基盤を使用したPLP(Panel Level Packaging)において、高い生産性を求めるユーザーのニーズに応えてまいります。また、ナノインプリント半導体製造装置は、量産展開に向け準備を進めております。
FPD露光装置市場は、新型コロナウイルスの影響により主要パネルメーカーが集中する中国への渡航制限が続き、計画していた設置の先送りを余儀なくされました。しかし、フォルダブルディスプレイなどアプリケーションの拡大に向けた動きの加速や、大型TV向けの設備投資意欲は継続しております。TV市場のニーズは薄型TVの普及が進む中、今後は大型化、4K/8Kの高精細化に加え、有機ELに代表される高品位なディスプレイを用いたTVに移行していくと予想されています。当社は第8世代ガラス基板で、高品位な65型パネルを一括露光することにより高い生産性を実現したFPD露光装置「MPAsp-H1003T」で市場のニーズに応えてまいります。また、次世代ディスプレイ製造に不可欠な更なる高精細化のニーズに応えるべく中小型向け露光装置「MPAsp-E903T」をラインアップに加え、多種多様なパネル生産に貢献し、更なるシェア拡大を目指してまいります。
ネットワークカメラと映像解析ソフトウェアを組み合わせたソリューションは、社会インフラとしてセキュリティ用途以外にも広がり、その市場はクラウドビジネスの成長と共に拡大基調にあります。顧客の多様な要望に応えられるネットワークカメラのラインアップとAIを活用した映像解析ソフトウェアを組み合わせた当社のソリューション提案は、国内外のチャネル展開とともに着実に浸透しつつあります。特に今年はCOVID-19により、混雑状況把握に対する社会的ニーズが急速に高まった年でした。その中で、当社では遠隔においてリアルタイムで状況を把握できる、人数カウント、群衆カウント、通過検知や動体のシルエット化などを組み合わせたソリューションを迅速に市場に対して提案しました。
今後も、アクシス社、マイルストーン社、ブリーフカム社を始めとするグループ会社間の連携強化、技術の融合を加速し、最適なソリューションを提供することで、ネットワーク映像ソリューションにおけるグローバルリーダーを目指してまいります。
放送用レンズ市場は、コロナ禍での大型イベントの延期を受け一時的な停滞がみられるものの、中長期的には先進国におけるスポーツ中継需要や新興国における4K化の需要が堅調に推移する見込みです。その中でも、スポーツ中継や各種番組制作ロケに最適なポータブルズームレンズ「CJ20e×5B」の発売により需要を喚起すると共に4K放送用レンズの更なるラインアップの拡充を進め制作現場の多様なニーズに応えていきます。
デジタルビデオカメラ市場において、当社は高精細な映像表現を求める制作現場の多様なニーズに応えてきました。デジタルシネマカメラの分野では「EOS C300MKⅢ」及び「EOS C70」を発売しラインアップの強化と拡充をはかりました。また、4K業務用ビデオカメラの分野では、コロナ禍におけるストリーミング需要が急速に高まっております。今後も市況の変化を捉えた商品群を投入することで、映像制作現場におけるプロの幅広いニーズに応え、映像文化の発展に貢献していきます。
新しい映像ソリューションとして、カメラを用いて自己位置推定と環境地図作成を同時に行う「Visual SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)技術」を含む映像解析ソフトウエア「Vision-based Navigation Software」を開発し、商品化を実現しました。この商品を「移動ロボットの眼」として協業メーカーに提供することで、物流業務の生産性向上や自動化に貢献するとともに、今後清掃、運搬、警備、点検、探査などさまざまな用途で活用されるサービスロボットやドローンに搭載することを目指します。
当連結会計年度における当グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャ
ッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度の世界経済は、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大が続き、世界各地で感染対策と経済活動の両立が図られたものの、収束に向かう兆しは見えず、大幅な減速となりました。米国では、外出制限により消費の記録的な落ち込みが上半期に見られましたが、経済活動規制の緩和や強化を繰り返しながら、下半期に景気の緩やかな回復が進みました。欧州では、3月から各国で実施された大規模なロックダウンや夜間外出禁止令がその後緩和され、消費が回復に向かったものの、感染の再拡大を受けて経済活動制限が再強化された影響により、景気の減速が続きました。中国では、世界に先駆け経済活動を再開した結果、内需や輸出を中心に景気の回復が進みました。また、その他の新興国については、一部の国では外出や経済活動の制限が行われましたが、感染拡大が続く中で経済活動の再開が徐々に進み、景気は回復の兆しが見られました。わが国では、11月に感染が再拡大しましたが、緊急事態宣言が解除された後の経済活動再開と外出自粛の緩和により、景気持ち直しの動きが続きました。
このような状況の中、当社関連市場においては、新型コロナウイルスの感染が拡大した影響を大きく受けました。オフィス向け複合機とレーザープリンターは、新型コロナウイルスの感染が続く中で、企業活動の回復が十分でないため、モノクロ機とカラー機の需要がともに減少しました。カメラ市場は新型コロナウイルスの影響により需要が減退しましたが、期後半には消費の持ち直しにより改善へと向かいました。インクジェットプリンターは、在宅勤務や在宅学習の需要が堅調な先進国と中国に加え、期後半には一部の新興国において回復のペースが徐々に上がりました。一方、医療機器は、新型コロナウイルスの影響により、上半期は医療機関向け営業活動が制限され、その制限は下半期に緩和されたものの、新型コロナウイルスの影響が長期化した結果、販売活動に影響を受けました。産業機器においては、半導体露光装置、FPD露光装置ともに堅調に推移しました。
当連結会計年度の平均為替レートにつきましては、米ドルが前期比で約2円円高の106.68円、ユーロが前期並みの122.07円となりました。
当連結会計年度は、複合機は、期後半にかけて回復の兆しを示したものの、オフィス向け、プロダクション市場向けの販売がともに減少しました。レーザープリンターもモノクロ機、カラー機ともに販売台数は前期を下回りました。また、新型コロナウイルスの影響により続いたオフィス閉鎖が解除され、企業活動が再開した後のプリントボリュームが緩やかな回復にとどまり、サービスと消耗品の売上が減少しました。レンズ交換式デジタルカメラは、販売台数は前期を下回りましたが、下半期にはフルサイズミラーレスカメラのEOS R5とEOS R6がけん引役となり、販売が上振れしました。インクジェットプリンターは、先進国と中国における在宅勤務や在宅学習の需要に加え、一部の新興国において回復した需要を捉え、大容量インクモデルを含め、販売台数は前期を大きく上回りました。医療機器は、設置の延期や営業活動の制限がありましたが、各国政府による医療機関への機器納入支援などの機会を捉え、需要を取り込んだ結果、前期に対して若干の減収にとどめました。産業機器では、半導体露光装置におけるメモリー向け投資と有機ELディスプレイ製造装置は堅調に推移しましたが、新型コロナウイルスの影響により設置が遅延した結果、FPD露光装置は前期を下回りました。一方で、多様な用途への展開が進み市場が拡大していたネットワークカメラは、販売活動の回復が緩やかな水準にとどまり、微増収となりました。これらを合計した当期の売上高は、前期比12.1%減の3兆1,602億円となりました。売上総利益率は、前期を1.3ポイント下回る43.5%となり、売上総利益は前期比14.5%減の1兆3,759億円となりました。営業費用は、グループを挙げた効率化を一層推し進めた結果、前期比11.9%減の1兆2,653億円となりました。その結果、営業利益は前期比36.6%減の1,105億円となりましたが、上方修正した直近の連結業績予想をさらに上回りました。営業外収益及び費用は受取利息及び配当金の減少などにより前期比で13億円悪化し、197億円の収益となり、税引前当期純利益は前期比33.4%減の1,303億円、当社株主に帰属する当期純利益は前期比33.3%減の833億円となりました。
基本的1株当たり当社株主に帰属する当期純利益は、前期に比べ37円42銭減の79円37銭となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
オフィスビジネスユニットでは、新製品であるimageRUNNER ADVANCE DXシリーズの販売が好調に推移しましたが、オフィス向け及びプロダクション市場向け複合機は、オフィス再開後の商談が緩やかな回復にとどまり、販売台数は前期から減少しました。レーザープリンターは、新型コロナウイルスによる景気の減速が続いた結果、モノクロ機、カラー機ともに販売台数は前期を下回りました。また、サービスと消耗品についても企業活動再開後のプリントボリュームが緩やかな回復で推移し、減収となりました。これらの結果、当ユニットの売上高は、前期比17.8%減の1兆4,402億円となり、税引前当期純利益は前期比49.3%減の865億円となりました。
イメージングシステムビジネスユニットでは、レンズ交換式デジタルカメラは市場の縮小傾向が継続したことに加え、新型コロナウイルスの影響による需要の減退があり、販売台数は前期を下回りましたが、新製品EOS R5とEOS R6の拡販によりフルサイズモデルを中心にミラーレスへのシフトが進みました。インクジェットプリンターは、先進国と中国における在宅勤務や在宅学習の需要に加え、一部の新興国において回復した需要を取り込んだ結果、本体、消耗品ともに販売は前期を大きく上回りました。これらの結果、当ユニットの売上高は、前期比11.8%減の7,122億円となりましたが、新製品効果などにより収益性を改善し、税引前当期純利益は前期比43.1%増の711億円となりました。
メディカルシステムビジネスユニットでは、新型コロナウイルスの感染拡大により大型機器の商談・据付の延期がありましたが、各国政府による緊急医療体制整備や医療機関に対する財政支援などを背景に、肺炎検査向けCT装置やX線診断装置の需要を取り込んだ結果、当ユニットの売上高は前期比0.6%減の4,361億円となり、税引前当期純利益は前期比6.4%減の255億円となりました。
産業機器その他ビジネスユニットでは、半導体露光装置は、メモリー向け投資が堅調に推移し、販売台数は前期を大きく上回りました。有機ELディスプレイ製造装置は、新型コロナウイルスの影響により渡航制限が続きましたが、渡航の再開後に設置を順調に進め、増収となりました。一方、FPD露光装置についても、渡航制限が解除された後に、設置活動を順次進めましたが、販売台数は前期を下回りました。ネットワークカメラは、新型コロナウイルスの影響を受けたものの、防犯や災害監視など従来のニーズに加え、遠隔モニタリングや人の密集具合の把握など、映像解析による用途の多様化を背景に販売活動を強化し、微増収となりました。これらの結果、当ユニットの売上高は、前期比4.9%減の6,548億円となり、税引前当期純利益は前期比26.3%減の143億円となりました。
当連結会計年度末における総資産は、有形及び無形固定資産や売上債権が減少したことなどにより、前連結会計年度末から1,463億円減少して4兆6,256億円となりました。負債は、年金負債並びに未払費用等などが減少したことにより、前連結会計年度末から464億円減少して1兆8,416億円となりました。純資産は、当社株主への配当及び自己株式の取得や円高によるその他の包括損失累計額の増加などにより、前連結会計年度末から999億円減少して2兆7,840億円となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、為替変動の影響分を合わせて、前連結会計年度末から51億円減少し、4,077億円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
前連結会計年度より大幅な減益となったものの運転資金の改善により、前連結会計年度末比で247億円の減少に
とどめ、3,338億円の収入となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
生産設備への投資が減少したことなどにより、前連結会計年度末から731億円抑制し、1,554億円の支出となり
ました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
配当金の支払いや自己株式の取得などの支出があった結果、1,834億円の支出となりました。
また、営業活動によるキャッシュ・フローから投資活動によるキャッシュ・フローを控除した、いわゆるフリーキャッシュ・フローは、前連結会計年度から485億円増加し、1,784億円の収入となりました。
③生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
| セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前連結会計年度比(%) |
| オフィス | 1,072,912 | 80.3 |
| イメージングシステム | 661,910 | 84.3 |
| メディカルシステム | 445,011 | 98.8 |
| 産業機器その他 | 467,755 | 114.2 |
| 合計 | 2,647,588 | 88.8 |
(注)1. 金額は、販売価格によって算定しております。
2. 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
b. 受注実績
当グループの生産は、当社と販売各社との間で行う需要予測を考慮した見込み生産を主体としておりますので、販売高のうち受注生産高が占める割合はきわめて僅少であります。従って受注実績の記載は行っておりません。
c. 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
| セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前連結会計年度比(%) |
| オフィス | 1,440,212 | 82.2 |
| イメージングシステム | 712,238 | 88.2 |
| メディカルシステム | 436,074 | 99.4 |
| 産業機器その他 | 654,813 | 95.1 |
| 消去 | △83,094 | - |
| 合計 | 3,160,243 | 87.9 |
(注)1. 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2. 最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとお
りであります。
| 相手先 | 第119期 (2019年1月1日から 2019年12月31日まで) | 第120期 (2020年1月1日から 2020年12月31日まで) | ||
| 販売高 (百万円) | 割合(%) | 販売高 (百万円) | 割合(%) | |
| HP Inc. | 466,576 | 13.0 | 358,784 | 11.4 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2021年3月30日)現在において判断しております。
はじめに
当社は、複写機、複合機、レーザープリンター、カメラ、インクジェットプリンター、診断機器、半導体露光装置及びFPD露光装置を世界的に事業展開する企業グループであります。また、企業の成長と発展を果たすことにより、世界の繁栄と人類の幸福に貢献することを、経営指針としております。
①主要業績評価指標
当社の事業経営に用いられる主要業績評価指標(Key Performance Indicators。以下「KPI」という。)は以下のとおりであります。
(収益及び利益率)
当社は、真のグローバル・エクセレント・カンパニーを目指し邁進しておりますが、経営において重点を置いている指標の1つに収益が挙げられます。以下は経営者が重要だと捉えている収益に関連したKPIであります。
売上高はKPIの1つと考えております。当社は主に製品、またそれに関連したサービスから売上を計上しています。売上高は、当社製品への需要、会計期間内における取引の数量や規模、新製品の評判、また販売価格の変動といった要因によって変化し、その他にも市場でのシェア、市場環境等も売上高を変化させる要因です。さらに製品グループ別の売上高は売上の中でも重要な指標の1つであり、市場のトレンドに当社の経営が対応しているかというような内容を測定するための目安となります。
売上高総利益率は収益性を測るもう1つのKPIです。当社は開発革新活動を通して、より早く新製品を投入することで、値崩れせず価格面での競争力を保持できるよう、製品開発におけるリードタイムの短縮を図ってきました。さらに、生産革新活動を通して、コストダウンの成果も挙げてきました。こうした成果が当社の売上高総利益率の改善に繋がってきており、今後も開発革新、生産革新といった活動を推進してまいります。
営業利益率、税引前当期純利益率及び売上高研究開発費比率も当社のKPIとして考えており、これらについて当社は2つの面からの方策をとっております。1つは、販売費及び一般管理費そのものを統制し低減に努めていること、もう1つは将来の利益を生み出す技術に対する研究開発費を一定の水準に維持していくことです。現在の市場における優位性を保持しつつ、他市場における可能性も開拓していくために必要なことであり、そうした投資が将来の事業の成功の基盤となります。
(キャッシュ・フロー経営)
当社はキャッシュ・フロー経営にも重点を置いております。以下の指標は、経営者が重要だと捉えているキャッシュ・フロー経営に関連したKPIです。
たな卸資産回転日数はKPIの1つであり、サプライチェーン・マネジメントの成果を測る目安となります。たな卸資産は陳腐化及び劣化する等のリスクを内在しており、その資産価値が著しく下がることで、当社の業績に悪影響を及ぼすこともありえます。こうしたリスクを軽減するためには、サプライチェーン・マネジメントの強化により、たな卸資産の圧縮及び製品コスト等の回収を早期化させるために生産リードタイムを短縮させ、一方で販売の機会損失を防ぐため適正水準の製品在庫を保持していく活動の継続が重要であると考えられます。
また有利子負債依存度も当社のKPIの1つであります。当社のような製造業では、開発、生産、販売等のプロセスを経て、事業が実を結ぶまでには、一般に長い期間を要するため、堅固な財務体質を構築することは重要なことであると考えます。今後も当社は主に通常の営業活動からのキャッシュ・フローで、流動性や設備投資に対応してまいります。
総資産に占める株主資本の割合を示す株主資本比率も、当社におけるKPIの1つとしております。株主資本を潤沢に持つことは、長期的な視点に立って高水準の投資を継続することにつながり、短期的な業績悪化にも揺るがない事業運営を可能にします。特に、研究開発に重点を置く当社にとっては、財務の安全性を確保することは、非常に重要なことであると考えられます。
②重要な会計方針及び見積り
当社の連結財務諸表は、米国会計基準に基づいて作成されております。また当社は、連結財務諸表を作成するために、種々の見積りと仮定を行っております。これらの見積り及び仮定は将来の市場状況、売上増加率、利益率、割引率等の見積り及び仮定を含んでおります。当社は、これらの見積り及び仮定は合理的であると考えておりますが、実際の業績は異なる可能性があります。また、新型コロナウイルス感染再拡大がみられている地域もあり、依然として収束の時期は見通せない状況ですが、各国・地域は引き続き感染対策と経済活動の両立を目指しております。2021年の経済活動は回復に向かうものの、新型コロナウイルスの影響を継続して受ける可能性があると想定しています。キヤノンは、現在当社の財政状態及び経営成績に影響を与えている会計方針を適用するにあたり、以下の事項がより重要な判断事項であると考えています。
a.長期性資産の減損
基準書360「有形固定資産」に準拠し、有形固定資産や償却対象の無形固定資産などの長期性資産は、帳簿価額が回収できないという事象や状況の変化が生じた場合に、減損に関する検討を実施しております。帳簿価額が割引前将来見積キャッシュ・フローを上回っていた場合には、帳簿価額が公正価値を超過する金額について減損を認識しております。公正価値の決定は、見積り及び仮定に基づいて行っております。
b.有形固定資産
有形固定資産は取得原価により計上しております。減価償却方法は、定額法で償却している一部の資産を除き、定率法を適用しております。
c.リース
当社は、貸手のリースでは主にオフィス製品の販売においてリース取引を提供しております。販売型リースでの機器の販売による収益は、リース開始時に認識しております。販売型リース及び直接金融リースによる利息収益は、それぞれのリース期間にわたり利息法で認識しております。これら以外のリース取引はオペレーティングリースとして会計処理し、収益はリース期間にわたり均等に認識しております。機器のリースとメンテナンス契約が一体となっている場合は、リース要素と非リース要素の独立販売価格の比率に基づいて収益を按分しております。通常、リース要素は、機器及びファイナンス費用を含んでおり、非リース要素はメンテナンス契約及び消耗品を含んでおります。一部の契約ではリースの延長又は解約オプションが含まれております。当社は、これらのオプション行使が合理的に確実である場合、オプションの対象期間を考慮し、リース期間を決定しております。当社のリース契約の大部分は、顧客の割安購入選択権を含んでおりません。
借手のリースでは建物、倉庫、従業員社宅、及び車輛等に係るオペレーティングリース及びファイナンスリースを有しております。当社は、契約開始時に契約にリースが含まれるか決定しております。一部のリース契約では、リース期間の延長又は解約オプションが含まれております。当社は、これらのオプション行使が合理的に確実である場合、オプションの対象期間を考慮し、リース期間を決定しております。当社のリース契約には、重要な残価保証または重要な財務制限条項はありません。当社のリースの大部分はリースの計算利子率が明示されておらず、当社はリース料総額の現在価値を算定する際、リース開始時に入手可能な情報を基にした追加借入利子率を使用しております。当社のリース契約の一部には、リース要素及び非リース要素を含むものがあり、それぞれを区分して会計処理しております。当社はリース要素と非リース要素の見積独立価格の比率に基づいて、契約の対価を按分しております。オペレーティングリースに係る費用は、そのリース期間にわたり定額法で計上されております。
d.企業結合
企業買収は取得法で処理しております。取得法では、取得した全ての有形及び無形資産並びに引き継いだ全ての負債を、支配獲得日における公正価値に基づき認識及び測定します。公正価値の決定には、将来キャッシュ・フローの予測、割引率、資本収益率、及びその他の利用可能な市場データに基づく見積りなどの、重要な判断や見積りを伴います。また、将来キャッシュ・フローの予測は、被買収会社の実績や、過去及び将来に想定される趨勢、市場や経済状況などの多くの要素に基づいております。
e.のれん及びその他の無形固定資産
のれん及び耐用年数が確定できないその他の無形固定資産は償却を行わず、代わりに毎年第4四半期に、または潜在的な減損の兆候があればより頻繁に減損テストを行っております。全てののれんは、企業結合のシナジー効果から便益を享受する報告単位に配分されます。報告単位の公正価値が、当該報告単位に割り当てられた帳簿価額を下回る場合には、当該差額をその報告単位に配分されたのれんの帳簿価額を限度とし、のれんの減損損失として認識しております。報告単位の公正価値は、主として割引キャッシュ・フロー分析に基づいて決定されており、将来キャッシュ・フロー及び割引率等の見積りを伴います。将来キャッシュ・フローの見積りは、主として将来の成長率に関する当社の予測に基づいております。割引率の見積りは、主として関連する市場及び産業データ並びに特定のリスク要因を考慮した、加重平均資本コストに基づいて決定しております。2019年第4四半期及び2020年第4四半期に行った減損テストの結果、個々の報告単位の公正価値は帳簿価額を十分に超過しており、減損が見込まれる報告単位はありません。しかし、メディカルシステムビジネスユニットに帰属するのれんについては、公正価値が帳簿価格を超過する割合が他の報告単位と比べて低くなっており、将来キャッシュ・フローが想定よりも減少した場合、減損損失を認識する可能性があります。なお、当該事業に帰属するのれんの帳簿価額は506,513百万円となっております。
耐用年数の見積りが可能な無形固定資産は、主としてソフトウェア、商標、特許権及び技術資産、ライセンス料、顧客関係であります。なお、ソフトウェアは主として3年から8年で、商標は15年で、特許権及び技術資産は5年から18年で、ライセンス料は8年で、顧客関係は15年で定額償却しております。
f.法人税等の不確実性
当社は、法人税等の不確実性の評価及び見積りにおいて多くの要素を考慮しており、それらの要素には、税務当局との解決の金額及び可能性、並びに税法上の技術的な解釈を含んでおります。不確実性に関する実際の解決が見積りと異なるのは不可避的であり、そのような差異が連結財務諸表に重要な影響を与える可能性があります。
g.繰延税金資産の評価
当社は、繰延税金資産に対して定期的に実現可能性の評価を行っております。繰延税金資産の実現は、主に将来の課税所得の予測によるところが大きく、課税所得の予測は将来の市場動向や当社の事業活動が順調に継続すること、その他の要因により変化します。課税所得の予測に影響を与える要因が変化した場合には評価性引当金の設定が必要な場合があり、当社では繰延税金資産の実現可能性がないと判断した際には、繰延税金資産を修正し、損益計算書上の法人税等に繰り入れ、当期純利益が減少いたします。
h.未払退職及び年金費用
未払退職及び年金費用は数理計算によって認識しており、その計算には前提条件として基礎率を用いています。割引率、期待運用収益率といった基礎率については、市場金利などの実際の経済状況を踏まえて設定しております。その他の基礎率としては、昇給率、死亡率などがあります。これらの基礎率の変更により、将来の退職及び年金費用が影響を受ける可能性があります。
基礎率と実際の結果が異なる場合は、その差異が累積され将来期間にわたって償却されます。これにより実際の結果は、通常、将来の年金費用に影響を与えます。当社はこれらの基礎率が適切であると考えておりますが、実際の結果との差異は将来の年金費用に影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度の連結財務諸表の作成においては、給付債務の計算に使用する割引率には国内制度、海外制度ではそれぞれ加重平均後で0.5%、1.5%を、長期期待収益率には国内制度、海外制度ではそれぞれ加重平均後で3.0%、4.8%を使用しております。割引率を設定するにあたっては、現在利用可能で、かつ、年金受給が満期となる間に利用可能と予想される高格付けで確定利付の公社債の収益率に関し利用可能な情報を参考に決定しております。また長期期待収益率の設定にあたっては、年金資産が構成される資産カテゴリー別の過去の実績及び将来の期待に基づいて収益率を決定しております。
割引率の低下(上昇)は、勤務費用及び数理計算上の差異の償却額を増加(減少)させるとともに、利息費用を減少(増加)させます。割引率が0.5%低下した場合、予測給付債務は約978億円増加します。
長期期待収益率の低下(上昇)は、期待運用収益を減少(増加)させ、かつ数理計算上の差異の償却額を増加(減少)させるため、期間純年金費用を増加(減少)させます。長期期待収益率が0.5%低下した場合、翌連結会計年度の期間純年金費用は約52億円増加します。
これにより年金制度の積立状況(すなわち、年金資産の公正価値と退職給付債務の差額)を連結貸借対照表で認識しており、対応する調整を税効果調整後で、その他の包括利益(損失)累計額に計上しております。
i.収益認識
当社は、主にオフィス、イメージングシステム及びメディカルシステム製品、産業機器、消耗品並びに関連サービス等の売上を収益源としており、それらを顧客との個別契約に基づき提供しております。当社は、約束した財またはサービスの支配が顧客に移転した時点、もしくは移転するにつれて、移転により獲得が見込まれる対価を反映した金額により、収益を認識しております。
オフィス製品(オフィス向け複合機、レーザープリンター等)及びイメージングシステム製品(デジタルカメラ、インクジェットプリンター等)の収益は、製品の支配を顧客がいつ獲得するかにより、出荷または引渡時点で認識しております。
半導体露光装置やFPD露光装置等の光学機器及びCT装置やMRI装置等の医療機器等の販売にあたり、機器の性能に関して顧客検収条件を要する場合は、機器が顧客の場所に据え付けられ、合意された仕様が客観的な基準により達成された時点で、収益を認識しております。
当社のサービス売上の大部分は、オフィス製品及びメディカルシステム製品のメンテナンスサービスに関連するものであり、一定期間に渡り認識しております。オフィス製品のサービス契約は、通常、顧客は、機器の使用量に応じた従量料金、固定料金、または、基本料金に加えて使用量に応じた従量料金を支払う契約であり、通常、修理作業及び消耗品の提供を含んでおります。オフィス製品のサービス契約による収益の大部分は、顧客への請求金額が、履行義務の充足に伴い顧客に移転した価値と直接対応していることから、顧客への請求金額により収益を計上しております。メディカルシステム製品のサービス契約は、通常、顧客は、当社が提供する待機サービスの対価として、固定料金を支払っており、当社は契約期間に渡り均等に収益を認識しております。
オフィス製品に関するサービス契約の多くは、関連する製品販売契約と一体で実行されます。製品及びサービスの取引価格は、独立販売価格の比率に基づいて各履行義務に配分される必要があり、その配分には判断が伴います。独立販売価格は、市場の状況及びその他観察可能なインプットを含む合理的に入手可能なすべての情報に基づき、配分の目的に合致するように設定された価格のレンジを用いて見積もられています。製品またはメンテナンスサービスの取引価格が設定されたレンジを外れる場合は、見積独立販売価格に基づき取引価格は配分されることになります。契約獲得の追加コストは、関連するオフィス製品が販売された時に、費用として認識しております。
転用可能性がなく、かつ完了した成果に対して顧客から支払いを受ける強制力のある権利を有している一部の産業機器の販売契約(以下「長期契約」)に関する収益は一定期間に渡り認識しており、コストを基礎とする進捗度に基づき、完成時の見積り利益の当期進捗分を含む収益が当期に認識されます。未完成の長期契約に関する損失は、損失が発生することが明らかになった期に認識されます。長期契約に関する作業実績や作業状況、想定される収益性の変化や最終的な契約条項がコストや収益の見積りに与える影響は、それらが合理的に見積り可能になった期に認識されます。将来コストや完成時の利益に影響を与える要素は生産効率、労働力や資材の利用可能性とコストを含み、これらの要素は将来の収益と売上原価に重要な影響を与えることがあります。
財またはサービスの移転と交換に当社が受け取る取引価格は、値引き、顧客特典、売上に応じた割戻し等の変動対価を含んでおります。変動対価は、主として、販売代理店や小売店が主要顧客であるイメージングシステム製品の販売に関連しております。当社は、変動対価に関する不確実性が解消された時点で収益認識累計額の重要な戻し入れが生じない可能性が高い範囲で、変動対価を取引価格に含めております。変動対価は、過去の傾向や売上時点におけるその他の既知の要素に基づいて見積もっており、直近の情報に基づき定期的に見直しております。また、当社は、販売後の短期間、顧客に製品の返品権を付与することがあり、当該返品権により予想される返品を考慮し決定された取引価格に基づき収益認識をしております。
当社は、連結損益計算書の収益について、顧客から徴収し政府機関へ納付される税金を除いて表示しております。
j.新会計基準
「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 注1 (24)新会計基準」に記載のとおりであります。
③当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.売上高
当連結会計年度は、世界経済は総じて景気減速が続きました。こうした中、新製品の拡販に努めたものの、市場縮小及び為替レートの変動の影響を受け、売上高は前連結会計年度比12.1%減の3兆1,602億円となりました。製品売上高及びサービス売上高は前連結会計年度比でそれぞれ、12.2%減の2兆4,898億円、11.5%減の6,704億円となりました。
当連結会計年度の海外での売上高は、連結売上高の74.5%を占めます。海外での売上高の計算は、円と外貨の為替レートの変動に影響されます。製品の現地生産及び海外からの部品や材料調達等によりその影響を抑えておりますが、為替レートの変動は当社の経営成績に大きな影響を与える可能性があります。
当連結会計年度の米ドル及びユーロの平均為替レートはそれぞれ106.68円及び122.07円と、前連結会計年度に比べて米ドルは約2円円高、ユーロは前期並みで推移しました。米ドルとの為替レートの変動により約224億円の売上高減少、ユーロとの変動で約20億円の売上高増加、その他の通貨との変動で約68億円の売上高減少影響がありました。その結果、当連結会計年度の為替による売上高の減少影響は約272億円となりました。
b.売上原価
売上原価は、主として原材料費、購入部品費、工場の人件費から構成されます。原材料費のうち海外調達される原材料については、海外の市場価格や為替レートの変動による影響を受け、当社の売上原価に影響を与えます。売上原価にはこれらの他に有形固定資産の減価償却費、修繕費、光熱費、賃借料などが含まれております。売上高に対する売上原価の比率は、当連結会計年度56.5%、前連結会計年度55.2%となりました。
c.売上総利益
当連結会計年度の売上総利益は、前連結会計年度と比べ14.5%減少の1兆3,759億円となりました。また売上総利益率は、前連結会計年度より1.3ポイント悪化し43.5%となりました。売上総利益及び売上総利益率の減少は、売上の減少、プロダクトミックス影響及びドルの円高影響などによるものです。
d.営業費用
営業費用は、主に人件費、研究開発費、広告宣伝費であります。営業費用は、経費の効率的な運用を全社的に推進した結果、前連結会計年度比11.9%減少し1兆2,653億円となりました。
e.営業利益
当連結会計年度の営業利益は、前連結会計年度比36.6%減少の1,105億円でありました。営業利益率は1.4ポイント悪化して3.5%となりました。
f.営業外収益及び費用
当連結会計年度の営業外収益及び費用は、受取利息の減少などにより、前連結会計年度から13億円悪化し、197億円の収益となりました。
g.税引前当期純利益
当連結会計年度の税引前当期純利益は1,303億円で、前連結会計年度比33.4%の減益となりました。また、売上高に対する比率は4.1%でした。
h.法人税等
当連結会計年度の法人税等は218億円減少し、実効税率は26.4%でした。実効税率が日本の法定実効税率を下回っているのは、主に海外子会社で適用される税率が日本の法定実効税率より低いためです。
i.当社株主に帰属する当期純利益
当連結会計年度の当社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度比33.3%の減益である833億円となりました。また、売上高当期純利益率は2.6%となりました。
④海外事業と外国通貨による取引
当社の販売活動は様々な地域で現地通貨により行っている一方、売上原価は円の占める割合が比較的高くなっております。当社の現在の事業構造を鑑みると、円高影響は売上高や売上高総利益率に対してマイナス要因となります。こうした為替相場の変動による財務リスクを軽減することを目的に、当社は為替先物契約を主とした金融派生商品を利用した取引を実施しております。
海外における売上高利益率は、主に販売活動を中心としているため、国内の売上高利益率と比較すると低くなっております。一般的に販売活動は、当社が行っている生産活動ほど収益性は高くありません。
⑤流動性と資金源泉
a.現金及び現金同等物
当連結会計年度における現金及び現金同等物は、前連結会計年度から51億円減少して、4,077億円となりました。
当社の現金及び現金同等物は主に円と米ドルを中心としておりますが、その他の外貨でも保有しております。当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度より大幅な減益となったものの、運転資金の改善に努め、前連結会計年度に比べて247億円の減少にとどめ、3,338億円の収入となりました。営業活動によるキャッシュ・フローは、主に顧客からの現金受取によるキャッシュ・イン・フローと、部品や材料、販売費及び一般管理費、研究開発費、法人税の支払いによるキャッシュ・アウト・フローとなっております。
当連結会計年度におけるキャッシュ・イン・フローの減少は、主に売上高の減少に伴い、顧客からの現金回収が減少したことによるものです。当社の回収率に重要な変化はありません。また部品や材料の支払いといったキャッシュ・アウト・フローの減少は、在庫水準の低減に努めたことなどによるものです。法人税の支払いによるキャッシュ・アウト・フローの減少は、前連結会計年度の課税所得の減少によるものです。
当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは、固定資産取得額が減少したこと等により、前連結会計年度より731億円減少し1,554億円の支出となりました。
当社は、営業活動によるキャッシュ・フローから投資活動によるキャッシュ・フローを控除した純額をフリーキャッシュ・フローと定義しており、当連結会計年度のフリーキャッシュ・フローは、前連結会計年度の1,299億円から、485億円増加し、1,784億円の収入となりました。
当社は、キャッシュ・フロー経営に重点を置いているため、フリーキャッシュ・フローを常時モニタリングしております。フリーキャッシュ・フローは当社の現在の流動性や財務活動の使途を理解する上で重要であり、また投資家の理解のためにも有用であると考えております。当社は資金の調達源泉を明らかにするために、米国会計基準による連結キャッシュ・フロー計算書や連結貸借対照表と併せて、米国会計基準以外の財務諸表(Non-GAAP財務諸表)である、フリーキャッシュ・フローを分析しております。なお、最も直接的に比較可能な米国会計基準に基づき作成された指標とフリーキャッシュ・フローの照合調整表は以下のとおりです。
| (単位 億円) |
| 第120期 | ||
| 営業活動によるキャッシュ・フロー | 3,338 | |
| 投資活動によるキャッシュ・フロー | △1,554 | |
| フリーキャッシュ・フロー | 1,784 |
当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは、1,269億円の配当金支払いと500億円の自己株式の購入により1,834億円の支出となりました。なお、当連結会計年度の1株当たりの配当は、120.00円の配当を実施しました。
当社は、流動性や必要資本を満たすため、増資、社債発行、借入といった外部からの様々な資金調達方法をとることが可能です。当社は、これまでどおりの資金調達や資本市場からの資金調達が可能であり、また将来においても可能であり続けると認識しておりますが、経済情勢の急激な悪化やその他状況によっては、当社の流動性や将来における長期の資金調達に影響を与える可能性があります。
当社は、2021年12月を返済期日とする借入につき、返済期日まで1年以内となったことから、長期債務から1年以内に返済する長期債務へ3,440億円の振り替えを実施しております。その影響から短期借入金(1年以内に返済する長期債務を含む)は前連結会計年度末の420億円から3,502億円増加し、当連結会計年度末には3,922億円となりました。長期債務(1年以内に返済する長期債務は除く)は前連結会計年度末の3,573億円から3,525億円減少し、当連結会計年度末には48億円となりました。
当社の固定債務は、主に銀行借入とリース債務によって構成されています。
当社は、グローバルな資本市場から資金調達をするために、ムーディーズ・インベスターズ・サービスとスタンダード&プアーズの2つの格付機関から信用格付を得ております。それに加えて、当社は日本の資本市場からも資金調達するために、日本の格付会社である格付投資情報センターからも信用格付を得ております。2021年3月15日現在、当社の負債格付は、ムーディーズ・インべスターズ・サービス:Baa1(長期);スタンダード&プアーズ:A(長期)、A-1(短期);格付投資情報センター:AA(長期)であります。当社では、現時点で負債の返済を早めるような格付低下の要因は発生しておりません。当社の信用格付が下がる場合は、借入れコストの増加につながります。
b.在庫の適正化
当社の最新の在庫水準の最適化の方針は、運転資金を最小化し、在庫の陳腐化のリスクを避け、一方で予期せぬ天災発生時でも販売活動を継続できるようにするため、適切なバランスを維持していくことであります。当社の在庫回転日数は、当連結会計年度、前連結会計年度末時点でそれぞれ、60日、59日となりました。当連結会計年度は、売上が大きく減少する中で、在庫を前連結会計年度末から219億円削減したことで在庫回転日数は同水準となりました。
c.設備投資
当連結会計年度における設備投資は、前連結会計年度の1,781億円から458億円減少し、1,323億円になりました。翌連結会計年度につきましては、当社の設備投資は1,600億円の見込みであります。
d.退職給付債務への事業主拠出
当社の確定給付型年金への拠出額は、当連結会計年度270億円、前連結会計年度304億円であり、確定拠出型年金への拠出額は、当連結会計年度163億円、前連結会計年度174億円であります。また、一部の子会社が加入している複数事業主制度への拠出額は、当連結会計年度42億円、前連結会計年度43億円であります。
e.運転資本
当連結会計年度における運転資本(流動資産から流動負債を控除した額)は、前連結会計年度の8,740億円から4,110億円減少し、4,630億円になりました。当社の運転資本は、予測できる将来需要に対して十分であると認識しております。当社の必要資本は、設備投資に関わる支出の水準及び時期といった全社的な事業計画に基づいております。流動比率(流動負債に対する流動資産の割合)は当連結会計年度は1.35、前連結会計年度は1.90であります。
f.総資本当社株主に帰属する当期純利益率
総資本利益率(当社株主に帰属する当期純利益を前年度末及び当年度末の総資産平均で除した割合)は、当連結会計年度では1.8%、前連結会計年度は2.6%であります。
g.株主資本当社株主に帰属する当期純利益率
株主資本利益率(当社株主に帰属する当期純利益を前年度末及び当年度末の株主資本平均で除した割合)は、当連結会計年度は3.2%となり、前連結会計年度の4.5%から減少いたしました。
h.有利子負債依存度
当連結会計年度における短期借入金、短期オペレーティングリース負債、長期借入金、及び長期オペレーティングリース負債は、前連結会計年度末の5,149億円より87億円減少し5,062億円となり、有利子負債依存度(総資産に対する有利子負債の割合)で表すと10.9%になります。前連結会計年度の有利子負債依存度は10.8%でした。
i.株主資本比率
株主資本比率(株主資本を総資産で除した割合)は、当連結会計年度は55.7%となり、前連結会計年度の56.3%から減少いたしました。
⑥研究開発及び特許
当社は創業当時より、業界をリードするコア製品を生み出す「コアコンピタンス技術(以下、コア技術)」と、技術蓄積のベースとなる「基盤要素技術」を多様に組み合わせた「コアコンピタンスマネジメント」を展開して事業の多角化を行ってきました。また、成長の中で蓄えられてきたキヤノンブランドを支える技術・ノウハウ―品質、コスト、納期を支える技術―を価値創造基盤技術としてコアコンピタンスマネジメントに組み込んでいます。
研究開発における主要戦略としては、1.「基盤要素技術と価値創造基盤技術のさらなる強化」、2.「強いコア技術と基盤要素技術に基づく次なる事業の芽の創出」、及び3.「時代の要請に応じたイノベーション型の技術開発の強化」を掲げ、その取組みを進めています。
1.では、価値創造基盤技術をさらに進化させることによって、既存事業の高効率化に貢献します。並行して事業グループがもつ幅広いコア技術のエッセンスを抽出し、基盤要素技術を深化させ、新規事業のコア技術に注入します。これにより、既存事業の強化と新事業グループの成長に向けたコアコンピタンスマネジメントを推進します。
2.では、その一例として、インク・トナー材料の基礎となる機能材料技術を生かした新機能材料、特徴ある材料を生かした装置を開発し、事業の芽につながる次世代技術の育成に新たに取り組むなど、技術多角化を通して、新事業領域の開拓を進めます。
3.では、DXやカーボンニュートラルなどのトレンドを捉え、企業価値の向上につながる技術開発を推進します。特に、多様なサービスの結合を可能とするサイバー(仮想)空間と人との接点であるフィジカル(現実)空間、これらを高度に融合するサイバー&フィジカルシステムに注目しています。フィジカル領域において世界トップレベルのコア技術に、高度なサイバー技術をアライアンスなども活用しながら取り込み、一歩先を行くサイバー&フィジカル技術を開発します。
研究開発費は、当連結会計年度2,723億円、前連結会計年度2,985億円でした。売上高研究開発費比率は、当連結会計年度8.6%、前連結会計年度8.3%でした。
当社は、強い特許ポートフォリオに守られた製品は他社の追随を容易に許さず、市場や業界における標準化活動などでも中心的な役割を果たせるとの認識をもっております。IFI CLAIMS® Patent Servicesが発表した2020年の米国特許取得件数ランキングにおいて、当社は第3位となりました。
⑦トレンド情報
当社は、オフィス、イメージングシステム、メディカルシステム、産業機器その他の分野において、開発、生産から販売、サービスにわたる事業活動を営んでおります。
オフィスビジネスユニット
当社は、パーソナル向け、オフィス向け、さらにプロダクションプリント向けのプリンター、複写機、複合機の、開発・製造・販売及びメンテナンス、アフターサービスを行っております。また、ソフトウェア及びサービス、ソリューションビジネスを通して顧客に付加価値を提供しております。当社の製品はSOHO、中堅・中小企業から大企業及びプロダクションプリントのプロフェッショナルに至るまで、幅広い分野を網羅しております。近年の複写機業界では、ユーザーの志向がモノクロからカラー製品に、またハードウェアからサービスとソリューションにシフトしてきております。特にプロダクション印刷市場では、短納期、オンデマンド印刷やバリアブルデータ印刷への需要がますます強まっております。またコネクティビティ、セキュリティ、モバイル対応、システム・インテグレーション、ビジネスワークフロー、クラウドを利用したウェブサービスなどの高い付加価値の提供が重要となっております。これらの付加価値要素を複合機などのハードウェアと合わせて、お客様にソリューションとして提供することが求められております。2020年に当社は、オフィス向け複合機「imageRUNNER ADVANCE DXシリーズ」を発売いたしました。また、クラウドにつながることで複合機の機能を拡張するサービスとして、「uniFLOW Online」を提供しております。クラウドサービス連携とセキュリティの強化に加え、紙文書を効率的に電子化するアドバンスドスキャンを実現するために、スキャン機能を向上させ、主力製品を一新しました。市場動向に沿って、今後も更なる競争力の維持及び向上に向けて、ますます高度化する顧客の需要に応えるべく、製品群の更なる充実とソリューション対応力の強化を図るとともに、販売力の強化に努めてまいります。
レーザープリンターについては、より付加価値の高い中高速機、特に複合機の拡販に注力していますが、今年はコロナ影響によるオフィスの稼働率低下の影響を受けました。一方、在宅ニーズが高まる中、低中速機の需要は回復しつつあります。スマートフォン、クラウド環境の普及等でユーザーのプリントスタイルが変化する中、プリント需要の減少による市場全体の成長鈍化が懸念されているのに加え、競合メーカー各社の攻勢による競争の激化とそれに伴うプリンタ本体/消耗品CRGの著しい価格下落は大きな脅威となっております。そのような環境下において、当社は各種の技術的イノベーションにより、顧客との一定期間にわたる契約型ビジネスを推進するなどの競争力強化をはかり、数量・シェア拡大モメンタムの加速を図っていきます。加えて、一層のコストダウン、サプライチェーンの最適化を通じた事業効率の最大化を目指してまいります。
イメージングシステムビジネスユニット
当社は、デジタルカメラと同様に、レンズや様々な関連アクセサリーを製造、販売しております。レンズ交換式デジタルカメラでは、フルサイズミラーレスカメラの新製品として、「EOS R5」と「EOS R6」の2機種を第3四半期に一度に投入しました。この2機種は、動画撮影機能やAF性能、手振れ補正機構が大きな反響を呼び、販売開始直後から好調な売上を記録しました。また、市場から高い評価を得たエントリーミラーレスカメラ「EOS KissM」の第2世代モデルとなる「EOS KissM2」を第4四半期に発売し、成長領域であるミラーレスカメラのラインアップの更なる強化/拡充を図って参りました。その結果、ミラーレスカメラ市場では確実に販売シェアは上昇しており、レンズ交換式デジタルカメラ全体でも、米国、欧州、中国、日本といった主要地域において引き続き1位を獲得しております。
レンズ交換式デジタルカメラにおいては、撮影領域のより一層の拡大を目指し、更なる高画質化、小型・軽量化、動画機能/ネットワーク機能の充実など、最先端の技術をベースとした新しい製品を提供することにより、今後も成長を目指してまいります。
レンズ交換式デジタルカメラ用交換レンズでは、フルサイズミラーレス用の専用レンズであるRFレンズを8機種投入し、ラインアップを拡充いたしました。EOSRシリーズカメラ本体との相乗効果もあり、RFレンズの販売が伸長しました。RFレンズは、大口径マウントを採用し、バックフォーカスを短くすることで、レンズ設計の自由度が格段に上がり、光学性能が大幅に向上しております。当社は、優れた光学技術力、新規要素技術開発を基に開発された高性能、高品質のレンズを市場に投入することで、お客様の期待に応えてまいります。
コンパクトデジタルカメラ市場は全体としては縮小傾向にあるものの、引き続きプレミアムラインを強化し、収益性の向上に努めてまいります。
コンパクトフォトプリンターでは、コロナ禍という厳しい環境においても家中需要を取り込むなど、販売促進に努めてまいりました。「SELPHY」は、簡単な操作性・優れた携帯性・高画質プリントという強みを持ち合わせ、各地域で高いプレゼンスを維持しております。第2四半期にはSNSで慣れ親しまれているスクエアフォーマットのプリントを手軽に楽しめるミニフォトプリンター「SELPHY SQUARE QX10」を投入しご好評を頂いています。今後更に新規需要を開拓し、市場を牽引してまいります。
インクジェットプリンターは、技術の進化とともに、家庭用のみならず、ポスター印刷などの商業用、オフィスのビジネスプリンター、さらにはプロフェッショナルが求める高画質な写真印刷まで、幅広い分野で使われるようになってきております。
当社は高画質と高速印刷を同時に実現できる高密度プリントヘッド技術「FINE」(Full-photolithography Inkjet Nozzle Engineering )をコア技術として、これらのニーズ全てに応える幅広いラインアップを揃えております。家庭用では、本体の小型化、高級感のあるデザイン、クラウドやスマートフォン、タブレットPCとの連携を強める「Canon PRINT Inkjet」といったソリューションの提供、便利な前面・背面双方からの給紙機構の採用、QRコードをスマホで読み取るだけでプリンターと接続できるといった機能やサービスの充実により、ユーザーの使いやすさと満足度の向上を図っております。
また、内蔵インクタンクにより高生産性と低ランニングコストを実現した大容量インクタンクモデルを、新興国市場のビジネスユース向けに投入開始し、徐々に先進国にも展開を広げております。
大判インクジェットプリンターは、プロフェッショナルのあらゆる高度な写真及びグラフィック印刷ニーズに応えるべく、新顔料インクとクロマオプティマイザーによる12色「LUCIA PROインク」や新画像処理エンジン「L-COA PRO」を搭載し、色の再現性や暗部領域での表現力を大幅に向上させました。グラフィック製品ラインアップも、A2サイズ対応「imagePROGRAF PRO-1000」から、プロのニーズに応えるべく機能性と生産性でも改良を加えた60インチフラッグシップモデル「imagePROGRAF PRO-6100」まで、全ての顧客ニーズに応えられるよう取り揃えております。また、企業で高まっているCAD・ポスターなど大判サイズの低価格による内製出力ニーズにお応えすべく、専用紙を必要としない普通紙での高画質プリントを実現する全5色顔料インク「LUCIA TD」を新開発し、高速プリントを実現する「imagePROGRAF TX/TMシリーズ」に加え、上位機種の高画質・静音化を継承したエントリーモデル「imagePROGRAF TAシリーズ」をラインアップしました。
フラットベッドスキャナに関しても、当社はCIS(Contact Image Sensor)搭載の「CanoScan LiDEシリーズ」の堅調な販売により高いシェアを堅持しております。
メディカルシステムビジネスユニット
当社は、疾病の早期発見、早期診断のためCT、MRI、超音波診断装置、X線診断装置などの画像診断装置や検査機器、ヘルスケアICTソリューションを開発、製造し、世界150以上の国や地域に提供しております。病院経営に貢献し、患者さんに優しい医療システム・サービスをお届けし、これからも変わらず医療に貢献してまいります。
当社は、COVID-19診断に必要なトータルなソリューションを提供することで、新型コロナウイルスの感染拡大防止に取り組まれているすべての医療従事者、関係の皆さまの支援をしております。例えば、藤田医科大学(愛知県豊明市)と産学協同研究で開発した肺炎診断支援に関する臨床への適用評価の開始、国内初となるどこにでも移動可能な感染症対策医療コンテナCTの製品化などを開始しております。
また、新型コロナウイルス抗原定性検査キット「Rapiim SARS-CoV-2-N」を公立大学法人 横浜市立大学(神奈川県横浜市)との共同研究をもとに開発し販売を開始しました。横浜市立大学が開発したSARS-CoV-2に特異性の高い抗体と、当社が培ったRapiimの高感度検出技術プラットフォームを組み合わせることにより、A型・B型インフルエンザウイルスなど他のウイルスと交差反応することなくSARS-CoV-2を的確に検出するとともに、6.64pg/mL程度の微量なウイルス抗原をわずか15分で検出することができます。また、多量のウイルスの場合は4分で検出が可能です。
当ビジネスユニットは、主力のCTはわが国でトップシェアを堅持しています。ディープラーニングを用いて設計された画像再構成技術を搭載した80/160列CTの「Aquilion Lightning / Helios I Edition」、大開口径80列マルチスライスCT 「Aquilion Exceed LB」を販売開始しました。
「Advanced intelligent Clear-IQ Engine(以下、AiCE)」については2019年7月に販売開始したハイエンドクラスの3テスラMRI「Vantage Centurian」でMRIに初めて搭載されましたが、今年度は1.5テスラMRI「Vantage Orian / S Grade」、「Vantage Gracian」へと搭載機種を展開しております。
今後も、精密加工技術、生産技術、センサー技術や画像処理技術など様々なグループ総合力を医療機器の製品開発や製造・サービスに活用することで新たな付加価値を産み出し、更なる医療貢献を果たしてまいります。
コンポーネント事業においては、新興国需要拡大及びコンピューテッド・ラジオグラフィー(CR)からデジタル・ラジオグラフィー(DR)への移行に伴い、X線撮影機器市場は堅調に伸びています。一方、ハイエンド製品では欧米コンポーネントメーカーとの技術競争、またコモディティ化が進行する普及装置では中国・韓国メーカーとの価格競争が激しくなっております。そうした市場環境の中、DR製品ビジネスにおいては、価格競争力を強化した普及機新製品を一部地域向けに販売し、ワールドワイドに順次展開していく予定です。今後の成長分野である動画分野では、透視撮影装置、血管造影装置市場への販売を積極的に展開しております。X線管及びX線イメージングデバイス他においては、当社の高信頼性コア技術(高電圧真空技術、液体金属軸受及び、ヨウ化セシウム(CsI)蒸着技術等)を基に、製品競争力を向上させ、好調に販売を展開しております。医療機器向けを含む業務用カメラでは、カメラの小型化や高画質化など市場ニーズを早期に実現させることで、競争力のある商品を開発し、販売を展開しております。
眼科診断機器においては、今後も成長が見込まれるOCT(光干渉断層計)の分野で、造影剤を使用しない検査で網膜血管描出を実現するOCT アンギオグラフィーソフトウェアの機能を継続的に強化し、激化する市場競争に対応しております。
産業機器その他ビジネスユニット
半導体露光装置市場では、新型コロナウイルスの影響による長期的な景気回復時期の不透明感に加え、米中貿易摩擦激化による投資への影響等が懸念されてきましたがその影響は軽微に留まり、メモリやセンサー向け露光装置の設備投資は堅調に推移しました。また、IoT・5G関連の進展を背景に、CMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor field-effect transistor)センサー、通信デバイスなどの設備投資も堅調に推移しました。後工程露光装置の市場では、半導体チップの高集積化・薄型化への要求の高まりを受け、TSV(Through-Silicon Via)技術等によるメモリーの大容量化やウェハレベルパッケージング化などへの設備投資が伸長しました。
当社では、多様化する半導体アプリケーションに柔軟に対応するため、顧客要望を製品開発の初期段階から反映させる「デザインイン」型のビジネススタイルが定着しております。高付加価値製品の開発も順調に進んでおり、急速に普及が進むIoTや車載向けなど幅広い分野に向けた製品を展開しております。メモリ向けでは、業界最高水準の生産性と重ね合わせ精度を実現したKrFスキャナー「FPA-6300ES6a」、ならびにi線ステッパー「FPA-5550iZ2」の継続的なアップグレードで、更なる市場シェアの拡大を目指してまいります。後工程露光装置では、大型四角基盤への対応と高い解像力を両立した「FPA-8000iW」をラインアップに加え、データセンター向けCPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)などの低消費電力化を実現する有機基盤を使用したPLP(Panel Level Packaging)において、高い生産性を求めるユーザーのニーズに応えてまいります。また、ナノインプリント半導体製造装置は、量産展開に向け準備を進めております。
FPD露光装置市場は、新型コロナウイルスの影響により主要パネルメーカーが集中する中国への渡航制限が続き、計画していた設置の先送りを余儀なくされました。しかし、フォルダブルディスプレイなどアプリケーションの拡大に向けた動きの加速や、大型TV向けの設備投資意欲は継続しております。TV市場のニーズは薄型TVの普及が進む中、今後は大型化、4K/8Kの高精細化に加え、有機ELに代表される高品位なディスプレイを用いたTVに移行していくと予想されています。当社は第8世代ガラス基板で、高品位な65型パネルを一括露光することにより高い生産性を実現したFPD露光装置「MPAsp-H1003T」で市場のニーズに応えてまいります。また、次世代ディスプレイ製造に不可欠な更なる高精細化のニーズに応えるべく中小型向け露光装置「MPAsp-E903T」をラインアップに加え、多種多様なパネル生産に貢献し、更なるシェア拡大を目指してまいります。
ネットワークカメラと映像解析ソフトウェアを組み合わせたソリューションは、社会インフラとしてセキュリティ用途以外にも広がり、その市場はクラウドビジネスの成長と共に拡大基調にあります。顧客の多様な要望に応えられるネットワークカメラのラインアップとAIを活用した映像解析ソフトウェアを組み合わせた当社のソリューション提案は、国内外のチャネル展開とともに着実に浸透しつつあります。特に今年はCOVID-19により、混雑状況把握に対する社会的ニーズが急速に高まった年でした。その中で、当社では遠隔においてリアルタイムで状況を把握できる、人数カウント、群衆カウント、通過検知や動体のシルエット化などを組み合わせたソリューションを迅速に市場に対して提案しました。
今後も、アクシス社、マイルストーン社、ブリーフカム社を始めとするグループ会社間の連携強化、技術の融合を加速し、最適なソリューションを提供することで、ネットワーク映像ソリューションにおけるグローバルリーダーを目指してまいります。
放送用レンズ市場は、コロナ禍での大型イベントの延期を受け一時的な停滞がみられるものの、中長期的には先進国におけるスポーツ中継需要や新興国における4K化の需要が堅調に推移する見込みです。その中でも、スポーツ中継や各種番組制作ロケに最適なポータブルズームレンズ「CJ20e×5B」の発売により需要を喚起すると共に4K放送用レンズの更なるラインアップの拡充を進め制作現場の多様なニーズに応えていきます。
デジタルビデオカメラ市場において、当社は高精細な映像表現を求める制作現場の多様なニーズに応えてきました。デジタルシネマカメラの分野では「EOS C300MKⅢ」及び「EOS C70」を発売しラインアップの強化と拡充をはかりました。また、4K業務用ビデオカメラの分野では、コロナ禍におけるストリーミング需要が急速に高まっております。今後も市況の変化を捉えた商品群を投入することで、映像制作現場におけるプロの幅広いニーズに応え、映像文化の発展に貢献していきます。
新しい映像ソリューションとして、カメラを用いて自己位置推定と環境地図作成を同時に行う「Visual SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)技術」を含む映像解析ソフトウエア「Vision-based Navigation Software」を開発し、商品化を実現しました。この商品を「移動ロボットの眼」として協業メーカーに提供することで、物流業務の生産性向上や自動化に貢献するとともに、今後清掃、運搬、警備、点検、探査などさまざまな用途で活用されるサービスロボットやドローンに搭載することを目指します。