有価証券報告書-第125期(2025/01/01-2025/12/31)
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①経営成績及び財政状態の状況
(経営を取り巻く経済環境)
当連結会計年度の世界経済は、米国の追加関税による影響が見られる中でも、総じて緩やかな回復が続きました。地域別にみますと、米国では追加関税等の影響によりインフレが進行したものの、個人消費は年間を通じて底堅く推移しました。欧州では、雇用・所得環境が個人消費を下支えしましたが、景気回復は緩やかなものに留まりました。中国では、不動産投資の停滞が継続し、消費刺激策の効果の剥落により個人消費は減速しました。その他の新興国では、各国の財政政策により内需が底堅く、輸出も高水準を維持するなど全体として堅調に推移しました。わが国では、安定した雇用環境を背景に、個人消費の緩やかな回復が続きました。
当社関連市場においては、オフィス向け複合機や商業印刷は、関税影響による市況の低迷が継続する米国を中心に投資の先送りなどが見られ需要が弱含みました。レーザープリンターは欧州や中国を中心に市場の縮小が続きました。医療機器は、米国や新興国では堅調に推移しましたが、わが国では病院経営の悪化による市場縮小が継続しました。カメラ市場は、ミラーレスカメラの需要拡大が続き、ネットワークカメラ市場も各地域で好調に推移しました。半導体製造装置市場は、スマホやPC向けメモリの需要の回復が遅れており、パワー半導体向けでも投資先送り傾向が見られましたが、AI向け需要は拡大しました。FPD製造装置市場は、ITパネル向けの大型投資に加え、高機能化に伴うスマホ向けパネルへの追加投資などにより需要は増加しました。
平均為替レートにつきましては、米ドルが前期比で約2円円高の149.71円、ユーロが前期比で約5円円安の169.41円となりました。
(経営成績)
当連結会計年度は、プリンティングは欧米で投資先送り傾向が続き前年を下回ったものの、メディカルは米国や新興国で堅調に推移し、市場成長が続くネットワークカメラや動画撮影需要などを捉えたカメラの販売も好調でした。その結果、グローバル優良企業グループ構想フェーズVI最終年度である当期の売上高は、前期から2.5%増の4兆6,247億円となり、2期連続で過去最高売上を更新しました。
売上総利益率は、前期を0.8ポイント下回る46.7%となったものの、売上総利益は、売上増に伴い前期比0.9%増の2兆1,620億円となりました。
営業費用は、前期にメディカルビジネスユニットでのれんの減損損失を認識していることに加え、当期は海外での構造改革効果が出ていることや徹底した経費管理などにより、前期比8.4%減の1兆7,066億円となりました。
これらの結果、営業利益は前期比62.8%増の4,554億円、税引前当期純利益は前期比で60.1%増の4,821億円、当社株主に帰属する当期純利益は前期比107.5%増の3,321億円となり、のれんの減損損失を除いた前期の調整後利益と比較しても各段階利益は増益となりました。
基本的1株当たり当社株主に帰属する当期純利益は、前期に比べ201円95銭増の367円48銭となりました。
(セグメント別の経営成績)
以下の情報はセグメント情報に基づきます。セグメント情報に関する詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 注23 セグメント情報」を参照ください。
プリンティングビジネスユニット
プリンティングビジネスユニットでは、プロダクション市場向け機器の販売は、米国での投資先送りの影響により減収となりました。オフィス向け複合機については、下期に発売を開始した新シリーズimageFORCEの主力機の販売は伸びておりますが、全体では欧米を中心に台数が減少しました。インクジェットプリンターは、大容量インクタンクモデルの販売が堅調であったことから、販売台数は前年を上回りました。レーザープリンターは、市場縮小が続く欧州や中国地域を中心に減収となりました。
これらの結果、当ユニットの売上高は、前期比1.1%減の2兆4,944億円、税引前当期純利益は、前期比10.0%減の2,736億円となりました。
メディカルビジネスユニット
メディカルビジネスユニットでは、わが国や欧州での販売は低調でしたが、米国では下期より新規に契約した代理店を通じた販売が本格化しており、注力している中近東・南米などの新興国でも販売が増加するなど堅調に推移しました。
この結果、当ユニットの売上高は、前期比2.1%増の5,806億円、のれんの減損損失を除く調整後税引前当期純利益は、メディカル事業革新委員会による活動の効果もあり前期比33.1%増の341億円となりました。
イメージングビジネスユニット
イメージングビジネスユニットでは、EOS R50 VやPowershot V1など動画クリエーター向けの製品が若年層需要などを捉えて好調に推移したことに加え、当期末に発売したフルサイズモデルのEOS R6 Mark IIIなどの販売増も寄与し、増収となりました。ネットワークカメラは、新開発のチップを搭載し機能を大きく向上させた新製品の投入もあり、当期も堅調に売上を伸ばしました。
これらの結果、当ユニットの売上高は、前期比12.5%増の1兆549億円、税引前当期純利益は、前期比14.5%増の1,768億円となりました。
インダストリアルビジネスユニット
インダストリアルビジネスユニットでは、半導体露光装置はメモリやパワー半導体向けの需要は弱含む中で、AI向け需要は高水準を維持し、業界標準となっている当社の先端後工程向け露光装置の販売台数は前期を上回りました。FPD露光装置もスマホ向けパネルの高機能化に伴う追加投資の需要を取り込み、販売台数は前期を上回りました。
これらの結果、当ユニットの売上高は、前期比2.7%増の3,611億円となりましたが、税引前当期純利益は、プロダクトミックスの影響などもあり前期比7.9%減の648億円となりました。
(財政状態)
当連結会計年度末における総資産は、円安に伴い外貨建資産が増加したことや、現金及び現金同等物などが増加
したことなどにより、前連結会計年度末から3,688億円増の6兆1,350億円となりました。
負債は必要な運転資本の増加に伴う借入の実行などにより、前連結会計年度末から2,397億円増の2兆3,609億円となりました。
純資産は、当社株主への配当や3度の自己株式の取得を実施したことなどにより減少した一方で、当社株主に帰属する当期純利益の積み増しや円安に伴い為替換算調整額が増加したことにより、前連結会計年度末から1,291億円増の3兆7,741億円となりました。
これらの結果、当連結会計年度末の株主資本比率は前連結会計年度末より1.7ポイント減少して56.9%となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、為替変動の影響分を合わせて、前連結会計年度末から844億円増加し、5,860億円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
仕掛品の適正化を図ったことで棚卸資産は減少しましたが、取引先への支払い条件見直しによる買入債務の減少などもあり、前連結会計年度と比較して1,309億円減少し、4,759億円の収入となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
宇都宮事業所に新設した半導体製造装置の新工場への投資などにより固定資産購入額は増加しましたが、前期にプリマジェスト社の買収を実施したことや固定資産の売却などもあり、前連結会計年度と比較して599億円減少し、2,374億円の支出となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
増配や3度の自己株式の取得など積極的な株主還元を実施した一方で、必要な運転資本の増加に伴い借入金が増加したことにより、前連結会計年度と比較して468億円支出が減少し、1,792億円の支出となりました。
また、営業活動によるキャッシュ・フローから投資活動によるキャッシュ・フローを控除した、いわゆるフリーキャッシュ・フローは、前連結会計年度と比較して710億円減少し、2,385億円の収入となりました。
詳細については、「(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ⑤流動性と資金源泉 b.現金及び現金同等物」に記載のとおりであります。
③生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)1. 金額は、販売価格によって算定しております。
2. 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
b. 受注実績
当社グループの生産は、当社と販売各社との間で行う需要予測を考慮した見込み生産を主体としておりますので、販売高のうち受注生産高が占める割合は僅少であります。従って受注実績の記載は行っておりません。
c. 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)1. 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2. 最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する
割合は、次のとおりであります。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2026年3月25日)現在において判断しております。
はじめに
当社は、プリンティング、メディカル、イメージング、インダストリアル、その他の製品を世界的に事業展開する企業グループであります。また、企業の成長と発展を果たすことにより、世界の繁栄と人類の幸福に貢献することを、経営理念としております。
①主要業績評価指標
当社は真のグローバル・エクセレント・カンパニーを目指しており、その実現に向けた事業経営において設定している主要業績評価指標(以下「KPI(Key Performance Indicatorsの略)」という。)は以下のとおりであります。
(収益及び利益率)
当社が経営において重点を置いている指標の1つに収益が挙げられます。以下は経営者が重要だと捉えている収益に関連したKPIであります。
売上高はKPIの1つと考えております。当社は主に製品、またそれに関連したサービスから売上を計上しています。売上高は、当社製品への需要、会計期間内における取引の数量や規模、新製品の評判、また販売価格の変動といった要因によって変化し、その他にも市場でのシェア、市場環境等も売上高を変化させる要因です。さらに製品別の売上高は売上の中でも重要な指標の1つであり、市場のトレンドに当社の経営が対応しているかというような内容を測定するための目安となります。
売上総利益率は、当社の事業活動における付加価値創出力および収益構造の健全性を示す重要なKPIとして位置付けています。売上高の成長のみならず、価格戦略や原価構造を含めた事業の収益性を直接的に反映する指標であり、成長の質を評価する上で有効と考えております。
営業利益率、税引前当期純利益率及び売上高研究開発費比率も当社のKPIとして考えており、これらについて当社は2つの面からの方策をとっております。1つは、販売費及び一般管理費そのものを統制し低減に努めていること、もう1つは将来の利益を生み出す技術に対する研究開発費を一定の水準に維持していくことです。現在の市場における優位性を保持しつつ、他市場における可能性も開拓していくために必要なことであり、そうした投資が将来の事業の成功の基盤となります。
(キャッシュ・フロー経営)
当社はキャッシュ・フロー経営にも重点を置いております。以下の指標は、経営者が重要だと捉えているキャッシュ・フロー経営に関連したKPIです。
在庫回転日数はKPIの1つであり、サプライチェーン・マネジメントの成果を測る目安となります。棚卸資産は陳腐化及び劣化する等のリスクを内在しており、その資産価値が著しく下がることで、当社の業績に悪影響を及ぼすこともありえます。こうしたリスクを軽減するためには、サプライチェーン・マネジメントの強化により、棚卸資産の圧縮及び製品コスト等の回収を早期化させるために生産リードタイムを短縮させ、一方で販売の機会損失を防ぐため適正水準の製品在庫を保持していく活動の継続が重要であると考えております。
また有利子負債依存度も当社のKPIの1つであります。当社のような製造業では、開発、生産、販売等のプロセスを経て、事業が実を結ぶまでには、一般に長い期間を要するため、堅固な財務体質を構築することは重要なことであると考えます。今後も当社は主に通常の営業活動からのキャッシュ・フローで、流動性の維持や設備投資に対応してまいりますが、大きな成長投資を決断した際には借入金を活用することも想定しております。
総資産に占める株主資本の割合を示す株主資本比率も、当社におけるKPIの1つとしております。株主資本を潤沢に持つことは、長期的な視点に立って高水準の投資を継続することにつながり、短期的な業績悪化にも揺るがない事業運営を可能にします。特に、研究開発に重点を置く当社にとっては、財務の安全性を確保することは、非常に重要なことであると考えております。一方で、成長投資のため負債を有効活用するなど、資本構成の最適化にも留意してまいります。
(株主資本収益性)
株主資本に対する当期純利益の割合を示す株主資本利益率も、当社におけるKPIの1つとしております。事業構造の見直しや経費の効率化を通じて収益性の向上に取り組む一方で、在庫水準の適正化や生産拠点の集約化により、資産効率の向上も図ってまいります。また、財務の健全性を維持しながらも成長投資を実行する過程では、負債も有効活用するなど適正な資本構成を構築し、株主資本の収益性を向上させてまいります。
②重要な会計方針及び見積り
当社の連結財務諸表は、米国会計基準に基づいて作成されております。また当社は、連結財務諸表を作成するために、種々の見積りと仮定を行っております。これらの見積り及び仮定は将来の市場状況、売上増加率、利益率、割引率等の見積り及び仮定を含んでおります。当社は、これらの見積り及び仮定は合理的であると考えておりますが、実際の業績は異なる可能性があります。また、パンデミックや地政学的リスク、さらにはインフレに伴う景気減速のリスク等により、当社の業績が経営者の仮定及び見積りとは異なる可能性があります。当社は、現在当社の財政状態及び経営成績に影響を与えている会計方針を適用するにあたり、以下の事項がより重要な判断事項であると考えています。
a.長期性資産の減損
基準書360「有形固定資産」に準拠し、有形固定資産や償却対象の無形固定資産などの長期性資産は、帳簿価額が回収できないという事象や状況の変化が生じた場合に、減損に関する検討を実施しております。帳簿価額が割引前将来見積キャッシュ・フローの総額を上回っていた場合には、帳簿価額が公正価値を超過する金額について減損を認識しております。公正価値の決定は、見積り及び仮定に基づいて行っております。
b.有形固定資産
有形固定資産は取得原価により計上しております。減価償却方法は、定額法で償却している一部の資産を除き、定率法を適用しております。
c.棚卸資産
棚卸資産は、低価法により評価しております。原価は、国内では平均法、海外では主として先入先出法により算出しております。
d.リース
当社は、貸手のリースでは主にオフィス製品の販売においてリース取引を提供しております。販売型リースでの機器の販売による収益は、リース開始時に認識しております。販売型リース及び直接金融リースによる利息収益は、それぞれのリース期間にわたり利息法で認識しております。これら以外のリース取引はオペレーティングリースとして会計処理し、収益はリース期間にわたり均等に認識しております。機器のリースとメンテナンス契約が一体となっている場合は、リース要素と非リース要素の独立販売価格の比率に基づいて収益を按分しております。通常、リース要素は、機器及びファイナンス費用を含んでおり、非リース要素はメンテナンス契約及び消耗品を含んでおります。一部の契約ではリースの延長又は解約オプションが含まれております。当社は、これらのオプション行使が合理的に確実である場合、オプションの対象期間を考慮し、リース期間を決定しております。当社のリース契約の大部分は、顧客の割安購入選択権を含んでおりません。
借手のリースでは建物、倉庫、従業員社宅、及び車輛等に係るオペレーティングリース及びファイナンスリースを有しております。当社は、契約開始時に契約にリースが含まれるか決定しております。一部のリース契約では、リース期間の延長又は解約オプションが含まれております。当社は、これらのオプション行使が合理的に確実である場合、オプションの対象期間を考慮し、リース期間を決定しております。当社のリース契約には、重要な残価保証または重要な財務制限条項はありません。当社のリースの大部分はリースの計算利子率が明示されておらず、当社はリース料総額の現在価値を算定する際、リース開始時に入手可能な情報を基にした追加借入利子率を使用しております。当社のリース契約の一部には、リース要素及び非リース要素を含むものがあり、それぞれを区分して会計処理しております。当社はリース要素と非リース要素の見積独立価格の比率に基づいて、契約の対価を按分しております。オペレーティングリースに係る費用は、そのリース期間にわたり定額法で計上されております。
e.企業結合
企業買収は取得法で処理しております。取得法では、取得した契約資産及び契約負債を除く、全ての有形及び無形資産並びに引き継いだ全ての負債を、支配獲得日における公正価値に基づき認識及び測定します。公正価値の決定には、将来キャッシュ・フローの予測、割引率、資本収益率、及びその他の利用可能な市場データに基づく見積りなどの、重要な判断や見積りを伴います。また、将来キャッシュ・フローの予測は、被買収会社の実績や、過去及び将来に想定される趨勢、市場や経済状況などの多くの要素に基づいております。取得した契約資産及び契約負債は、基準書606「顧客との契約からの収益」に準拠し認識及び測定しております。
f.のれん及びその他の無形固定資産
のれん及び耐用年数が確定できないその他の無形固定資産は償却を行わず、代わりに毎年第4四半期に、または潜在的な減損の兆候があればより頻繁に減損テストを行っております。全てののれんは、企業結合のシナジー効果から便益を享受する報告単位に配分されます。報告単位の公正価値が、当該報告単位に割り当てられた帳簿価額を下回る場合には、当該差額をその報告単位に配分されたのれんの帳簿価額を限度とし、のれんの減損損失として認識しております。報告単位の公正価値は、主として割引キャッシュ・フロー分析に基づいて決定されており、将来キャッシュ・フロー及び割引率等の見積りを伴います。将来キャッシュ・フローの見積りは、主として将来の成長率に関する当社の予測に基づいております。割引率の見積りは、主として関連する市場及び産業データ並びに特定のリスク要因を考慮した、加重平均資本コストに基づいて決定しております。当社は、2024年第4四半期に行った減損テストの結果、メディカルビジネスユニットの公正価値が帳簿価額を下回っていたことから、当該差額をのれんの減損損失として認識しましたが、2025年第4四半期に行った減損テストでは、個々の報告単位の公正価値は帳簿価額を超過しており、減損が見込まれる報告単位はありませんでした。詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 注8 のれん及びその他の無形固定資産」及び「注22 公正価値の開示」に記載のとおりであります。重要なのれんが配分されている報告単位は、メディカル報告単位であり、405,882百万円が配分されております。当該報告単位の将来キャッシュ・フローの見積りは、今後の医療機器市場の成長や事業活動地域の経済成長を考慮した上で立案された中期経営計画に基づいております。
耐用年数の見積りが可能な無形固定資産は、主としてソフトウェア、商標、特許権及び技術資産、ライセンス料、顧客関係であります。なお、ソフトウェアは主として3年から9年、商標は15年、特許権及び技術資産は5年から21年、ライセンス料は7年、顧客関係は10年から19年でそれぞれ定額償却しております。
g.法人税等の不確実性
当社は、法人税等の不確実性の評価及び見積りにおいて多くの要素を考慮しており、それらの要素には、税務当局との解決の金額及び可能性、並びに税法上の技術的な解釈を含んでおります。不確実性に関する実際の解決が見積りと異なるのは不可避的であり、そのような差異が連結財務諸表に重要な影響を与える可能性があります。
h.繰延税金資産の評価
当社は、繰延税金資産に対して定期的に実現可能性の評価を行っております。繰延税金資産の実現は、主に将来の課税所得の予測によるところが大きく、課税所得の予測は将来の市場動向や当社の事業活動が順調に継続すること、その他の要因により変化します。課税所得の予測に影響を与える要因が変化した場合には評価性引当金の設定が必要な場合があり、当社では繰延税金資産の実現可能性がないと判断した際には、繰延税金資産を修正し、損益計算書上の法人税等に繰り入れ、当期純利益が減少いたします。
i.未払退職及び年金費用
未払退職及び年金費用は数理計算によって認識しており、その計算には前提条件として基礎率を用いています。割引率、期待運用収益率といった基礎率については、市場金利などの実際の経済状況を踏まえて設定しております。その他の基礎率としては、昇給率、死亡率などがあります。これらの基礎率の変更により、将来の退職及び年金費用が影響を受ける可能性があります。
基礎率と実際の結果が異なる場合は、その差異が累積され将来期間にわたって償却されます。これにより実際の結果は、通常、将来の年金費用に影響を与えます。当社はこれらの基礎率が適切であると考えておりますが、実際の結果との差異は将来の年金費用に影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度の連結財務諸表の作成においては、給付債務の計算に使用する割引率には国内制度、海外制度ではそれぞれ加重平均後で2.9%、4.3%を、長期期待収益率には国内制度、海外制度ではそれぞれ加重平均後で3.2%、5.3%を使用しております。割引率を設定するにあたっては、現在利用可能で、かつ、年金受給が満期となる間に利用可能と予想される高格付けで確定利付の公社債の収益率に関し利用可能な情報を参考に決定しております。また長期期待収益率の設定にあたっては、年金資産が構成される資産カテゴリー別の過去の実績及び将来の期待に基づいて収益率を決定しております。
割引率の低下(上昇)は、勤務費用及び数理計算上の差異の償却額を増加(減少)させるとともに、利息費用を減少(増加)させます。割引率が0.5%低下した場合、予測給付債務は約662億円増加します。割引率の低下(上昇)による影響は、数理計算上の他の前提条件の変更による影響と同様に、翌期以降に繰り延べられます。
長期期待収益率の低下(上昇)は、期待運用収益を減少(増加)させ、かつ数理計算上の差異の償却額を増加(減少)させるため、期間純年金費用を増加(減少)させます。長期期待収益率が0.5%低下した場合、期間純年金費用は約63億円増加します。
これにより年金制度の積立状況(すなわち、年金資産の公正価値と退職給付債務の差額)を連結貸借対照表で認識しており、対応する調整を税効果調整後で、その他の包括利益(損失)累計額に計上しております。
j.収益認識
当社は、主にプリンティング、メディカル、イメージング、インダストリアルの各ビジネスユニットの製品、消耗品並びに関連サービス等の売上を収益源としており、それらを顧客との個別契約に基づき提供しております。当社は、約束した財またはサービスの支配が顧客に移転した時点、もしくは移転するにつれて、移転により獲得が見込まれる対価を反映した金額により、収益を認識しております。
プリンティングビジネスユニットの製品(オフィス向け複合機、レーザープリンター、インクジェットプリンター等)及びイメージングビジネスユニットの製品(デジタルカメラ等)の販売による収益は、製品の支配を顧客がいつ獲得するかにより、主に出荷または引渡時点で認識しております。
また、メディカルビジネスユニットの製品(CT装置やMRI装置等)及びインダストリアルビジネスユニットの製品(半導体露光装置やFPD露光装置等)の販売にあたり、機器の性能に関して顧客検収を要する場合は、機器が顧客の場所に据え付けられ、合意された仕様が客観的な基準により達成されたことを確認した時点で、収益を認識しております。
当社のサービス売上の大部分は、プリンティングの製品及びメディカルの製品のメンテナンスサービスに関連するものであり、一定期間にわたり認識しております。プリンティングの製品のサービス契約は、通常、顧客は、機器の使用量に応じた従量料金、固定料金、または、基本料金に加えて使用量に応じた従量料金を支払う契約であり、修理作業及び消耗品の提供を含んでおります。プリンティングの製品のサービス契約による収益の大部分は、顧客への請求金額が、履行義務の充足に伴い顧客に移転した価値と直接対応していることから、顧客への請求金額により収益を計上しております。メディカルの製品のサービス契約は、通常、顧客は、当社が提供する待機サービスの対価として、固定料金を支払っており、当社は契約期間にわたり均等に収益を認識しております。
プリンティングの製品に関するサービス契約の多くは、関連する製品販売契約と一体で実行されます。製品及びサービスの取引価格は、独立販売価格の比率に基づいて各履行義務に配分される必要があり、その配分には判断が伴います。独立販売価格は、市場の状況及びその他観察可能なインプットを含む合理的に入手可能な全ての情報に基づき、配分の目的に合致するように設定された価格のレンジを用いて見積もられています。製品またはメンテナンスサービスの取引価格が設定されたレンジを外れる場合は、見積独立販売価格に基づき取引価格は配分されることになります。契約獲得の追加コストは、関連するプリンティングの製品が販売された時に、費用として認識しております。
転用可能性がなく、かつ完了した成果に対して顧客から支払いを受ける強制力のある権利を有している一部のインダストリアルの製品の販売契約(以下「長期契約」)に関する収益は一定期間にわたり認識しており、コストを基礎とする進捗度に基づき、完成時の見積り利益の当期進捗分を含む収益が当期に認識されます。未完成の長期契約に関する損失は、損失が発生することが明らかになった期に認識されます。長期契約に関する作業実績や作業状況、想定される収益性の変化や最終的な契約条項がコストや収益の見積りに与える影響は、それらが識別され合理的に見積り可能になった期に認識されます。将来コストや完成時の利益に影響を与える要素は生産効率、労働力や資材の利用可能性とコストを含み、これらの要素は見積りの正確性に影響し、将来の収益と売上原価に重要な影響を与えることがあります。
財またはサービスの移転と交換に当社が受け取る取引価格は、値引き、顧客特典、売上に応じた割戻し等の変動対価を含んでおります。変動対価は、主として、販売代理店や小売店が主要顧客であるイメージングの製品の販売に関連しております。当社は、変動対価に関する不確実性が解消された時点で収益認識累計額の重要な戻し入れが生じない可能性が高い範囲で、変動対価を取引価格に含めております。変動対価は、過去の傾向や売上時点におけるその他の既知の要素に基づいて見積もっており、直近の情報に基づき定期的に見直しております。また、当社は、販売後の短期間、顧客に製品の返品権を付与することがあり、当該返品権により予想される返品を考慮し決定された取引価格に基づき収益認識をしております。
当社は、連結損益計算書の収益について、顧客から徴収し政府機関へ納付される税金を除いて表示しております。
k.信用損失引当金
信用損失引当金は、過去の信用損失の経験と合理的かつ裏付け可能な予測を踏まえつつ、基準書326(「金融商品-信用損失」)に基づいて、全ての債権計上先を対象として計上しております。また当社は、破産申請など顧客の債務返済能力がなくなったと認識した時点において、顧客ごとに信用損失引当金を積み増しております。債権計上先をとりまく状況に変化が生じた場合は、債権の回収可能性に関する評価はさらに調整されます。法的な償還請求を含め、全ての債権回収のための権利を行使してもなお回収不能な場合に、債権の全部または一部を回収不能とみなし、信用損失引当金に対する償却を実施しております。
l.環境負債
環境浄化及びその他の環境関連費用に係る負債は、環境アセスメントあるいは浄化努力が要求される可能性が高く、その費用を合理的に見積ることができる場合に認識しており、連結貸借対照表のその他の固定負債に含めております。環境負債は、事態の詳細が明らかになる過程で、あるいは状況の変化の結果によりその計上額を調整しております。その将来義務に係る費用は現在価値に割引いておりません。
m.新会計基準
「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 注1 (24)新会計基準」に記載のとおりであります。
③当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.売上高
当連結会計年度は、米国の追加関税による影響が見られる中でも、総じて緩やかな回復が続きました。このような状況の中、プリンティングは欧米で投資先送り傾向が続き前年を下回ったものの、メディカルは米国や新興国で堅調に推移し、市場成長が続くネットワークカメラや動画撮影需要などを捉えたカメラの販売も好調でした。その結果、グローバル優良企業グループ構想フェーズVI最終年度である当期の売上高は、前連結会計年度比2.5%増の4兆6,247億円となり、2年連続で過去最高売上を更新しました。製品売上高及びサービス売上高は前連結会計年度比でそれぞれ、2.2%増の3兆6,732億円、3.9%増の9,515億円となりました。
当連結会計年度の海外での売上高は、連結売上高の79.2%を占めます。海外での売上高の計算は、円と外貨の為替レートの変動に影響されます。製品の現地生産及び海外からの部品や材料調達等によりその影響を抑えておりますが、為替レートの変動は当社の経営成績に大きな影響を与える可能性があります。
当連結会計年度の米ドル及びユーロの平均為替レートはそれぞれ149.71円及び169.41円と、前連結会計年度に比べて米ドルは約2円円高、ユーロは約5円円安で推移しました。米ドルとの為替レートの変動により約231億円の売上高減少、ユーロとの変動で約358億円の売上高増加、その他の通貨との変動で約58億円の売上高減少影響がありました。その結果、当連結会計年度の為替による売上高の増加影響は約69億円となりました。
b.売上原価
売上原価は、主として原材料費、購入部品費、工場の人件費から構成されます。原材料費のうち海外調達される原材料については、海外の市場価格や為替レートの変動による影響を受け、当社の売上原価に影響を与えます。売上原価にはこれらの他に有形固定資産の減価償却費、修繕費、光熱費、賃借料などが含まれております。当連結会計年度は米国関税影響によるコスト増加がある一方で、部品のコストダウンは年間を通じて進展しました。売上高に対する売上原価の比率は、当連結会計年度は53.3%となり、前連結会計年度52.5%より0.8ポイント増加しました。
c.売上総利益
当連結会計年度の売上総利益は、前連結会計年度と比べ0.9%増加の2兆1,620億円となりました。また売上総利益率は、前連結会計年度より0.8ポイント減少し46.7%となりました。売上総利益の増加は、主には売上増加によるものです。
d.営業費用
営業費用は、主に人件費、研究開発費、広告宣伝費であります。営業費用は、前期にメディカルビジネスユニットでのれんの減損損失を認識していることに加え、当期は海外での構造改革効果が出ていることや徹底した経費管理などにより、前期比8.4%減の1兆7,066億円となり、当連結会計年度売上高に対する経費率は前連結会計年度より4.4ポイント好転し、36.9%となりました。
e.営業利益
当連結会計年度の営業利益は、前連結会計年度比62.8%増加の4,554億円でありました。営業利益率は3.6ポイント好転して9.8%となりました。
f.営業外収益及び費用
当連結会計年度の営業外収益及び費用は、外貨建て債権から生じた為替差損益や有価証券評価損益が好転したことにより、前連結会計年度から53億円好転し、267億円の収益となりました。
g.税引前当期純利益
当連結会計年度の税引前当期純利益は4,821億円で、前連結会計年度比60.1%の増益となりました。また、売上高に対する比率は10.4%でした。
h.法人税等
当連結会計年度の法人税等は56億円増加し、実効税率は25.7%でした。実効税率が日本の法定実効税率を下回っているのは、主に試験研究費の税額控除や海外子会社で適用される税率が日本の法定実効税率より低いためです。
i.当社株主に帰属する当期純利益
当連結会計年度の当社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度比107.5%の増益である3,321億円となりました。また、売上高当期純利益率は7.2%となりました。
④海外事業と外国通貨による取引
当社の販売活動は様々な地域で現地通貨により行っている一方、売上原価は円の占める割合が比較的高くなっております。当社の現在の事業構造を鑑みると、円高影響は売上高や売上総利益率に対してマイナス要因となりま
す。こうした為替相場の変動による財務リスクを軽減することを目的に、当社は為替先物契約を主とした金融派生商品を利用した取引を実施しております。
海外における売上高利益率は、主に販売活動を中心としているため、国内の売上高利益率と比較すると低くなっております。一般的に販売活動は、当社が行っている生産活動ほど収益性は高くありません。地域別セグメント情報に関する詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 注23 セグメント情報」を参照ください。
⑤流動性と資金源泉
a.財務活動の基本方針
当社はキャッシュ創出力を更に伸ばし、成長領域への積極的な投資によって企業価値を向上させることを財務活動の基本方針としております。
売上拡大による利益の向上と資産効率の改善によりキャッシュ・フローを最大化し、成長の原資となるキャッシュ創出力の向上に努めていきます。また、財務規律を維持しながらも多様な資金調達手段を確保し、各事業の成長戦略のコアとなる成長領域への積極的な投資を支えていきます。
資金の源泉(Cash-In)
営業活動によるキャッシュ・フローと現金及び現金同等物を内部的な資金の源泉としております。また、資金需要に応じて、金融機関からの借入や社債等による資金調達を実施しております。借入による資金調達を行う場合には、多様な選択肢から最適な手段を選定すると共に、D/EレシオやNet Debt/EBITDA倍率等の財務規律も考慮して、健全な財務体質を維持することを方針としています。
資金の使途(Cash-Out)
資金の主な使途は以下の優先順位に則り決定しております。
1.成長領域への投資
既存事業での設備投資や研究開発投資等により成長領域へ積極的に投資を行います。また、M&Aも活用しながら、既存事業の事業領域拡大を目指していきます。
2.株主還元
中長期的な業績の見通しに加え、将来の投資計画やキャッシュ・フローなどを総合的に勘案し、安定的な株主還元を実施します。配当は累進配当を基本方針として現状の配当金額を下げることなく、配当性向40%を目途に実施します。自社株式の取得は、キャッシュ・フローなどの財務状況や当社株式の株価水準等に応じて機動的に実施します。
3.戦略投資
機動的なキャッシュアロケーション枠として、状況に応じたM&A、成長領域への追加投資および追加的な株主還元に活用していきます。
b.現金及び現金同等物
キャッシュ・フローの推移

当連結会計年度における現金及び現金同等物は、前連結会計年度から844億円増加して、5,860億円となりました。当社の現金及び現金同等物は主に円と米ドルを中心としておりますが、その他の外貨でも保有しております。
営業活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、仕掛品の適正化を図ったことで棚卸資産は減少しましたが、取引先への支払い条件見直しによる買入債務の減少などもあり、前連結会計年度末から1,309億円減少し、4,759億円の収入となりました。営業活動によるキャッシュ・フローは、主に顧客からの現金受取によるキャッシュ・イン・フローと、部品や材料、販売費及び一般管理費、研究開発費、法人税の支払いによるキャッシュ・アウト・フローとなっております。当連結会計年度におけるキャッシュ・イン・フローの増加は、主に売上高の増加に伴い、顧客からの現金回収が増加したことによります。当社の回収率に重要な変化はありません。キャッシュ・アウト・フローの増加は、主に売上増や支払い条件見直しによる支払いの増加などによるものです。法人税の支払いによるキャッシュ・アウト・フローの増加は、課税所得の増加によるものです。
投資活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローのうち、固定資産購入額は、宇都宮事業所に新設した半導体製造装置の新工場への投資などにより前連結会計年度から252億円増加し2,622億円となりました。一方で、前期にプリマジェスト社の買収を実施したことや固定資産の売却などもあったため、全体では前連結会計年度より599億円減少し、2,374億円の支出となりました。
フリーキャッシュ・フロー
当社は、営業活動によるキャッシュ・フローから投資活動によるキャッシュ・フローを控除した純額をフリーキャッシュ・フローと定義しており、当連結会計年度のフリーキャッシュ・フローは、前連結会計年度の3,095億円から、710億円減少し、2,385億円の収入となりました。
当社は、キャッシュ・フロー経営に重点を置き、フリーキャッシュ・フローを常時モニタリングしております。フリーキャッシュ・フローは当社の現在の流動性や財務活動の使途を理解する上で重要であり、また投資家にも有用であると考えております。当社は資金の調達源泉を明らかにするために、米国会計基準による連結キャッシュ・フロー計算書や連結貸借対照表と併せて、米国会計基準以外の財務指標(Non-GAAP財務指標)である、フリーキャッシュ・フローを分析しております。なお、最も直接的に比較可能な米国会計基準に基づき作成された指標とフリーキャッシュ・フローの照合調整表は以下のとおりです。
財務活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは、増配や3度の自己株式の取得など積極的な株主還元を実施した一方で、必要な運転資本の増加に伴い借入金が増加したことにより、前期比で468億円減少し、1,792億円の支出となりました。なお、当連結会計年度の配当金は、1株当たり前年比15円増配となる160円にて支払いを実施しました。
当社は、流動性や必要資本を満たすため、増資、社債発行、借入といった外部からの様々な資金調達方法をとることが可能です。当社は、これまでどおりの資金調達や資本市場からの資金調達が可能であり、また将来においても可能であり続けると認識しておりますが、経済情勢の急激な悪化やその他状況によっては、当社の流動性や将来における長期の資金調達に影響を与える可能性があります。
当社の長期債務は、主に銀行借入とリース債務によって構成されています。
格付け
当社は、グローバルな資本市場から資金調達をするために、格付機関であるS&Pグローバル・レーティングから信用格付を得ております。それに加えて、当社は日本の資本市場からも資金調達するために、日本の格付会社である格付投資情報センターからも信用格付を得ております。2026年2月28日現在、当社の負債格付は、S&Pグローバル・レーティング:A(長期)/A-1(短期)、格付投資情報センター:AA(長期)であります。当社では、現時点で負債の返済を早めるような格付低下の要因は発生しておりません。当社の信用格付が下がる場合は、借入コストの増加につながります。
c.在庫の適正化
当社の最新の在庫水準の最適化の方針は、運転資金を最小化し、在庫の陳腐化のリスクを避け、一方で予期せぬ天災発生時でも販売活動を継続できるようにするため、適切なバランスを維持していくことであります。当社の在庫回転日数は、当連結会計年度、前連結会計年度末時点でそれぞれ、63日、65日となりました。円安による外貨建て資産の増加影響があったものの、在庫管理強化の徹底により在庫金額は減少し、売上高も前年比で増収となったことで在庫回転日数は減少しました。
d.設備投資
当社は積極的な業績拡大に資する投資を行う一方、総額は減価償却費の範囲内に収めることでフリーキャッシュ・フローを安定的に創出するなど、財務基盤を強固にするキャッシュ・フロー経営を徹底しています。当連結会計年度における設備投資は、前連結会計年度の2,192億円から75億円減少し、2,117億円になりました。翌連結会計年度につきましては、引き続き成長のための設備投資を行うことにより、当社の設備投資は2,300億円の見込みであります。
e.退職給付債務への事業主拠出
当社の確定給付型年金への拠出額は、当連結会計年度179億円、前連結会計年度289億円であり、確定拠出型年金への拠出額は、当連結会計年度327億円、前連結会計年度293億円であります。また、一部の子会社が加入している複数事業主制度への拠出額は、当連結会計年度68億円、前連結会計年度64億円であります。
f.運転資本
当連結会計年度における運転資本(流動資産から流動負債を控除した額)は、前連結会計年度の9,038億円から92億円増加し、9,130億円になりました。増加の主な要因は、流動負債である買入債務の減少によるものです。当社の運転資本は、予測できる将来需要に対して十分であると認識しております。当社の必要資本は、設備投資に関わる支出の水準及び時期といった全社的な事業計画に基づいております。流動比率(流動負債に対する流動資産の割合)は、当連結会計年度は1.54、前連結会計年度は1.58であります。
g.総資本当社株主に帰属する当期純利益率
総資本利益率(当社株主に帰属する当期純利益を前年度末及び当年度末の総資産平均で除した割合)は、当連結会計年度では5.6%、前連結会計年度は2.9%であります。
h.株主資本当社株主に帰属する当期純利益率
株主資本利益率(当社株主に帰属する当期純利益を前年度末及び当年度末の株主資本平均で除した割合)は、当連結会計年度では9.7%、前連結会計年度4.8%であります。
i.有利子負債依存度
当連結会計年度では、運転資金の増加に伴い長期借入金が増加しました。その結果、当連結会計年度における短期借入金、短期オペレーティングリース負債、長期借入金、及び長期オペレーティングリース負債の総額は、前連結会計年度末の6,635億円から2,827億円増加し9,462億円となり、有利子負債依存度(総資産に対する有利子負債の割合)は15.4%と前連結会計年度の11.5%から3.9%増加しました。
j.株主資本比率
当連結会計年度の株主資本比率(株主資本を総資産で除した割合)は56.9%となりました。増配や自己株式取得などに伴う株主資本の減少により、前連結会計年度の58.6%から1.7%減少しましたが、総じて高い水準は維持しており、財務の健全性は保たれています。
⑥知的財産戦略
<ガバナンス>当社では知的財産部門がCEO直轄の組織であることに加え、知的財産法務本部長が専任役員を務めているため、知的財産法務本部長から、中期計画等の知的財産に関する戦略や考えを直接CEOに報告したり、役員間の日々の会議で他の役員へ知的財産に関する重要情報を伝達し、共有したりすることが可能です。このような体制により、知的財産に関する経営上の意思決定が迅速に行われています。
さらに、会社の役員でもある知的財産法務本部および事業部門、研究開発部門のトップをはじめとする幹部が集まる本部間トップミーティングを定期的に設け、知的財産戦略を議論するとともに、事業および研究開発部門における実際の知的財産活動を決定することで、事業および研究開発部門と一体化したタイムリーな知的財産活動を実現しています。このようにして技術中計、事業中計にリンクした知的財産戦略を策定し、知的財産部門の考えや知的財産への投資を技術および事業中計に組み込むというサイクルが機能しています。

また、当社では、当社の知的財産法務本部と各グループ会社の知的財産部門との間で、知的財産の取り扱いに関する役割と責任、活動方針の策定プロセスなどを取り決めたグローバルマネジメントルールを策定しています。
これにより、グループ全体の知的財産活動を統制し、知的財産ポートフォリオの最適化を図りつつ、必要に応じて知的財産法務本部と各グループ会社が協働で訴訟やライセンス活動を行い、利益の最大化を図っています。

<戦略>1.基本方針
当社は、独自技術で差別化した魅力的で質の高い製品とサービスにより、新市場や新規顧客を開拓する研究開発型企業として発展してきました。知的財産部門は、事業発展の支援を最も重視しており、これに資することをミッションとして、これからの時代を先読みし、知的財産戦略を策定、実行しています。
当社の知的財産戦略の基本戦略は下記4つとしております。
(1)コアコンピタンス技術に関わる特許は、競争領域において事業を守る特許としてライセンスせず、競争優位性の確保に活用する。
(2)通信、AI、IoTなどの共通技術(標準技術を含む)に関わる協調領域の特許をクロスライセンスなどに利用することで、研究開発や事業の自由度を確保する。
(3)他社の知的財産権を尊重する。一方でキヤノンの知的財産権の侵害に対しては毅然と対応する。
(4)他社が容易に到達できない検証困難な発明は、ノウハウとして秘匿し守ることで、他社の追従を許さず、競争優位性を確保する。
2.知的財産ポートフォリオの基本的な考え方
当社は、さまざまな環境変化から次の時代の社会や経済の流れを読み取り、知的財産戦略を策定、実行しています。知的財産ポートフォリオは、変化する経営と事業を支援し企業価値を向上させるために最大限活用するものと位置付けており、その構成は、さまざまな環境変化(サプライチェーン、経済安全保障、環境配慮要請、AI/IoTによる技術革新、デジタルサービスの拡大等)から次の時代を見据え、経営戦略、事業戦略と連動させながら、常に変化させています。近年では、これからの成長が見込まれる新規事業を支援する技術や、各事業分野に共通して活用が見込まれ、他社とのライセンス交渉においても重要な役割を担う共通技術に関する出願を特に増やし、将来のビジネスを支える特許ポートフォリオの強化を進めています。
事業のコアコンピタンスに関わる知的財産権の取得はもちろん、時代を先取りした知的財産権(例えば、AI/IoT技術や共通技術、環境関連技術に関わる知的財産権、パートナー創りのための知的財産権)の取得にも大きなリソースを投入し、新たな事業の創出のために様々な業界の企業との交渉にも備えています。このようにして構築した知的財産ポートフォリオを活用することにより、競争優位性の確保と将来事業の自由度の確保を両立させています。
当社は、全世界で約8万件にも及ぶ特許と実用新案を保有しています(2025年12月現在)。日本国内はもとより、海外での特許取得も重視しており、地域ごとの事業戦略や技術動向、製品動向を踏まえた上で特許の権利化を推進しています。特に米国は、世界最先端の技術をもつ企業が多く市場規模も大きいことから、特許出願については、事業拡大、技術提携の双方の視点から注力しており、米国の特許登録件数ランキングは42年連続で10位以内を維持しています。
また、知的財産ポートフォリオは、活用することでその価値が顕在化するものであり、保有する知的財産ポートフォリオの積極的な活用により事業の発展を最大限支援するとともに、企業価値の向上に貢献するものです。活用の具体例としては他社とのクロスライセンスがあります。これにより他社の保有する知的財産へのアクセスを可能としています。当社は、全世界で約100万件もの他社特許が利用可能であり、研究開発や事業における高い自由度を確保しています。また、他社にも有用な協調領域の特許を数多く保有していることで、コアコンピタンス特許の利用を許諾しない有利なクロスライセンスが可能となり、ビジネスの競争優位性を保っています。さらに、徹底した特許クリアランスと積極的なポートフォリオ活用を行うことで、ライセンス料の支払いを抑制しています。
3.事業の発展を支える知的財産ポートフォリオ
当社は、2021年~2025年のグローバル優良企業グループ構想フェーズⅥにおいて、プリンティング、メディカル、イメージング、インダストリアルの各グループの事業競争力の強化を掲げ、商業印刷、産業印刷、次世代ヘルスケア、高度監視、次世代半導体製造、デジタルソリューションサービスといった将来のビジネス創出にも力を入れてきました。知的財産部門は、これらの事業が発展し、成長するために、光学技術、映像処理、解析技術などのコアコンピタンス技術、AI/IoTを組み入れたサイバー&フィジカルシステムの技術、標準技術、環境配慮技術などに関する知的財産の創出・権利化に力を入れています。さらに、知的財産部門は、時代を先読みし、将来有望と期待される技術分野における知的財産の創出・権利化にも取り組んでおり、知的財産の面から会社の継続的な発展を支援しています。
2026年~2030年のグローバル優良企業グループ構想フェーズⅦのもとでは、事業領域の拡大を支援するための知的財産活動を計画的に実行していきます。
Ⅰ.プリンティンググループ
商業印刷、産業印刷分野のほか、オフィス向け機器を始めとする様々な機器と連携するサイバー&フィジカルシステムを支える知的財産を創出しています。様々な機種のプリンターに共通して搭載されるコントローラ/エンジンの基盤技術やプリンターに付加価値を提供するクラウドの基盤技術に加え、プリンターの環境配慮技術や、AIを利活用した新たなプリンティングソリューションなどこれからの時代に対応する技術に関する特許ポートフォリオを構築しています。
Ⅱ.メディカルグループ
プレシジョン・メディシン(個別化医療)の実現をサポートするAIソリューション、診断精度の向上及び従来装置よりも被ばく線量低減が期待されるフォトンカウンティングCTなど、医療現場に次々と提供される新たな価値を創造する技術を保護する知的財産ポートフォリオを構築しています。加えて、グループ会社間連携を通じて、光学技術や画像処理技術などこれまでに培ってきた技術に、メディカル領域特有の画像診断技術、ソリューションを融合し、画像診断を核としてヘルスケアITやバイオサイエンスなどの新たな領域への事業拡大を支える知的財産ポートフォリオを強化しています。
Ⅲ.イメージンググループ
ミラーレスカメラ、映像制作用カメラ、監視用カメラなどの領域において、高度な光学技術だけではなく、動画対応技術、ネットワーク技術、そして機械学習を用いて被写体やその動きを認識するAI応用技術に注力して知的財産を創出しています。さらにボリュメトリックビデオやXRなどの3Dイメージング技術や、暗闇でも数km先の被写体を鮮明に捉えられるSPADセンサー等、次世代のエンターテインメントや社会の安全と安心を支える領域でも特許ポートフォリオを強化しています。
Ⅳ.インダストリアルグループ
露光装置、ダイボンダー、有機ELディスプレイ製造装置、スパッタリング装置などの製造装置に加え、Lithography Plusなどの製造ソリューションサービスに関する知的財産の創出にも注力しています。
さらに、黒色プラスチックのリサイクルを可能にするラマン分光解析技術、低消費電力を実現するナノインプリントリソグラフィ技術の特許ポートフォリオを強化し、新規事業の拡大を支援しています。
Ⅴ. 未来を切り拓く技術
本社研究開発部門等で研究が進む、3Dプリンター用セラミックス、鉛フリー圧電体、全固体電池用材料などのサステナビリティ実現のための新素材、デバイス技術、超大型望遠鏡用のイマージョン回折素子、人工衛星などの宇宙科学技術の分野で、世界初/最先端のコア技術の特許ポートフォリオ形成に注力しています。
Ⅵ. 標準化への取組み
海外研究所の標準化エキスパートと協働し、標準化団体への積極的な参画を通して世界の技術発展に貢献。移動体通信(5Gなど)、無線LAN(Wi-Fiなど)、動画圧縮(HEVC,VVCなど)、無線電力伝送(Qiなど)、ファイルフォーマット(HEIF,OMAFなど)など次世代の技術標準を構成する特許ポートフォリオを拡大し、キヤノンの知財競争力を強化しています。
4. オピニオンリーダーとしての活動
当社は、日本の産業の振興、ひいては世界の産業の振興への貢献をめざし、知的財産の業界をリードする活動を積極的に行っています。2014年には、LOT(License on Transfer)ネットワークを他社とともに設立し、自らは事業を行わず特許訴訟を脅しに利益を得るPAE(Patent Assertion Entity)による不当な特許訴訟から会員企業を守る仕組みを構築しました。2026年1月時点で5,800社以上が会員企業になっています。また、2019年より、世界知的所有権機関(WIPO)が運営する、環境技術の活用を促進するためのプラットフォームであるWIPO GREENにパートナーとして参加し、WIPOと協力して環境技術の普及を行っています。
当社は、パートナーづくりにも注力しており、2023年には国立研究開発法人 産業技術総合研究所(AIST)が民間企業と共同で実施するAIST Innovation Ecosystem Programに設立メンバーとして参画しました。新たな技術の社会実装化を支援するとともに、プログラムから生まれた技術へのアクセスを得て更なるイノベーションの推進につなげています。
このような活動により、他社特許侵害のリスク低減、保有特許の活用機会創出、アクセス可能な技術及び特許の拡大を実現し、知財面からの事業支援を行うとともに、世界の知財エコシステムの構築に貢献しています。
<リスク管理>知的財産に関するリスクとその対応については、3 事業等のリスク をご参照ください。
<目標>当社では、事業に稼がせる知財を標榜し、事業発展に貢献することを目的として知財活動を行っております。活用を考慮に入れた知的財産ポートフォリオの構築を進め、構築されたポートフォリオを活用することで、事業の収益性を向上させています。保有する8万件超のポートフォリオは時代に合わせて新陳代謝を図っており、新規事業を支える技術分野の出願比率を戦略的に増やし、新規事業のビジネス拡大・収益向上に貢献することを目指します。また、世界最先端の技術をもつ企業が多く市場規模も大きい米国においては、事業拡大や他社とのライセンス交渉などの観点から、米国特許取得件数ランキングでトップ10以内の継続を目指します。
当社の知的財産活動に関するその他の情報は、当社ウェブサイト(https://global.canon/ja/intellectual-property/)に掲載しております。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①経営成績及び財政状態の状況
(経営を取り巻く経済環境)
当連結会計年度の世界経済は、米国の追加関税による影響が見られる中でも、総じて緩やかな回復が続きました。地域別にみますと、米国では追加関税等の影響によりインフレが進行したものの、個人消費は年間を通じて底堅く推移しました。欧州では、雇用・所得環境が個人消費を下支えしましたが、景気回復は緩やかなものに留まりました。中国では、不動産投資の停滞が継続し、消費刺激策の効果の剥落により個人消費は減速しました。その他の新興国では、各国の財政政策により内需が底堅く、輸出も高水準を維持するなど全体として堅調に推移しました。わが国では、安定した雇用環境を背景に、個人消費の緩やかな回復が続きました。
当社関連市場においては、オフィス向け複合機や商業印刷は、関税影響による市況の低迷が継続する米国を中心に投資の先送りなどが見られ需要が弱含みました。レーザープリンターは欧州や中国を中心に市場の縮小が続きました。医療機器は、米国や新興国では堅調に推移しましたが、わが国では病院経営の悪化による市場縮小が継続しました。カメラ市場は、ミラーレスカメラの需要拡大が続き、ネットワークカメラ市場も各地域で好調に推移しました。半導体製造装置市場は、スマホやPC向けメモリの需要の回復が遅れており、パワー半導体向けでも投資先送り傾向が見られましたが、AI向け需要は拡大しました。FPD製造装置市場は、ITパネル向けの大型投資に加え、高機能化に伴うスマホ向けパネルへの追加投資などにより需要は増加しました。
平均為替レートにつきましては、米ドルが前期比で約2円円高の149.71円、ユーロが前期比で約5円円安の169.41円となりました。
(経営成績)
| 経営指標 | (億円) | ||
| 第124期 | 第125期 | 増減率(%) | |
| 売上高 | 45,098 | 46,247 | 2.5% |
| 売上総利益 | 21,431 | 21,620 | 0.9% |
| 営業費用 | 18,633 | 17,066 | △8.4% |
| 営業利益 | 2,798 | 4,554 | 62.8% |
| 営業外収益及び費用 | 214 | 267 | 24.6% |
| 税引前当期純利益 | 3,012 | 4,821 | 60.1% |
| 当社株主に帰属する当期純利益 | 1,600 | 3,321 | 107.5% |
| 1株当たり当社株主に帰属する当期純利益 | |||
| 基本的 | 165.53 | 367.48 | 122.0% |
| 希薄化後 | 165.44 | 367.25 | 122.0% |
当連結会計年度は、プリンティングは欧米で投資先送り傾向が続き前年を下回ったものの、メディカルは米国や新興国で堅調に推移し、市場成長が続くネットワークカメラや動画撮影需要などを捉えたカメラの販売も好調でした。その結果、グローバル優良企業グループ構想フェーズVI最終年度である当期の売上高は、前期から2.5%増の4兆6,247億円となり、2期連続で過去最高売上を更新しました。
売上総利益率は、前期を0.8ポイント下回る46.7%となったものの、売上総利益は、売上増に伴い前期比0.9%増の2兆1,620億円となりました。
営業費用は、前期にメディカルビジネスユニットでのれんの減損損失を認識していることに加え、当期は海外での構造改革効果が出ていることや徹底した経費管理などにより、前期比8.4%減の1兆7,066億円となりました。
これらの結果、営業利益は前期比62.8%増の4,554億円、税引前当期純利益は前期比で60.1%増の4,821億円、当社株主に帰属する当期純利益は前期比107.5%増の3,321億円となり、のれんの減損損失を除いた前期の調整後利益と比較しても各段階利益は増益となりました。
基本的1株当たり当社株主に帰属する当期純利益は、前期に比べ201円95銭増の367円48銭となりました。
(セグメント別の経営成績)
以下の情報はセグメント情報に基づきます。セグメント情報に関する詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 注23 セグメント情報」を参照ください。
プリンティングビジネスユニット
| 経営指標 | (億円) | ||
| 第124期 | 第125期 | 増減率(%) | |
| プロダクション | 4,407 | 4,363 | △1.0% |
| オフィス | 10,525 | 10,613 | 0.8% |
| プロシューマー | 10,223 | 9,903 | △3.1% |
| 外部顧客向け売上高合計 | 25,155 | 24,879 | △1.1% |
| セグメント間取引 | 72 | 65 | △9.3% |
| 売上高合計 | 25,227 | 24,944 | △1.1% |
| 売上原価及び営業費用 | 22,328 | 22,386 | 0.3% |
| 営業利益 | 2,899 | 2,558 | △11.8% |
| 税引前当期純利益 | 3,041 | 2,736 | △10.0% |
プリンティングビジネスユニットでは、プロダクション市場向け機器の販売は、米国での投資先送りの影響により減収となりました。オフィス向け複合機については、下期に発売を開始した新シリーズimageFORCEの主力機の販売は伸びておりますが、全体では欧米を中心に台数が減少しました。インクジェットプリンターは、大容量インクタンクモデルの販売が堅調であったことから、販売台数は前年を上回りました。レーザープリンターは、市場縮小が続く欧州や中国地域を中心に減収となりました。
これらの結果、当ユニットの売上高は、前期比1.1%減の2兆4,944億円、税引前当期純利益は、前期比10.0%減の2,736億円となりました。
メディカルビジネスユニット
| 経営指標 | (億円) | ||
| 第124期 | 第125期 | 増減率(%) | |
| 外部顧客向け売上高合計 | 5,683 | 5,797 | 2.0% |
| セグメント間取引 | 5 | 9 | 64.1% |
| 売上高合計 | 5,688 | 5,806 | 2.1% |
| 売上原価及び営業費用 | 7,092 | 5,478 | △22.8% |
| 営業利益 | △1,404 | 328 | - |
| 税引前当期純利益 | △1,395 | 341 | - |
メディカルビジネスユニットでは、わが国や欧州での販売は低調でしたが、米国では下期より新規に契約した代理店を通じた販売が本格化しており、注力している中近東・南米などの新興国でも販売が増加するなど堅調に推移しました。
この結果、当ユニットの売上高は、前期比2.1%増の5,806億円、のれんの減損損失を除く調整後税引前当期純利益は、メディカル事業革新委員会による活動の効果もあり前期比33.1%増の341億円となりました。
イメージングビジネスユニット
| 経営指標 | (億円) | ||
| 第124期 | 第125期 | 増減率(%) | |
| カメラ | 5,796 | 6,254 | 7.9% |
| ネットワークカメラ他 | 3,574 | 4,291 | 20.1% |
| 外部顧客向け売上高合計 | 9,370 | 10,545 | 12.5% |
| セグメント間取引 | 4 | 4 | 6.6% |
| 売上高合計 | 9,374 | 10,549 | 12.5% |
| 売上原価及び営業費用 | 7,861 | 8,820 | 12.2% |
| 営業利益 | 1,513 | 1,729 | 14.3% |
| 税引前当期純利益 | 1,543 | 1,768 | 14.5% |
イメージングビジネスユニットでは、EOS R50 VやPowershot V1など動画クリエーター向けの製品が若年層需要などを捉えて好調に推移したことに加え、当期末に発売したフルサイズモデルのEOS R6 Mark IIIなどの販売増も寄与し、増収となりました。ネットワークカメラは、新開発のチップを搭載し機能を大きく向上させた新製品の投入もあり、当期も堅調に売上を伸ばしました。
これらの結果、当ユニットの売上高は、前期比12.5%増の1兆549億円、税引前当期純利益は、前期比14.5%増の1,768億円となりました。
インダストリアルビジネスユニット
| 経営指標 | (億円) | ||
| 第124期 | 第125期 | 増減率(%) | |
| 光学機器 | 2,532 | 2,563 | 1.2% |
| 産業機器 | 927 | 1,016 | 9.7% |
| 外部顧客向け売上高合計 | 3,459 | 3,579 | 3.5% |
| セグメント間取引 | 58 | 32 | △45.4% |
| 売上高合計 | 3,517 | 3,611 | 2.7% |
| 売上原価及び営業費用 | 2,828 | 2,986 | 5.6% |
| 営業利益 | 689 | 625 | △9.3% |
| 税引前当期純利益 | 704 | 648 | △7.9% |
インダストリアルビジネスユニットでは、半導体露光装置はメモリやパワー半導体向けの需要は弱含む中で、AI向け需要は高水準を維持し、業界標準となっている当社の先端後工程向け露光装置の販売台数は前期を上回りました。FPD露光装置もスマホ向けパネルの高機能化に伴う追加投資の需要を取り込み、販売台数は前期を上回りました。
これらの結果、当ユニットの売上高は、前期比2.7%増の3,611億円となりましたが、税引前当期純利益は、プロダクトミックスの影響などもあり前期比7.9%減の648億円となりました。
(財政状態)
| (億円) | |||
| 第124期 (2024年12月31日) | 第125期 (2025年12月31日) | 増減 | |
| 資産合計 | 57,662 | 61,350 | 3,688 |
| 負債合計 | 21,212 | 23,609 | 2,397 |
| 株主資本合計 | 33,803 | 34,918 | 1,115 |
| 非支配持分 | 2,648 | 2,823 | 175 |
| 純資産合計 | 36,451 | 37,741 | 1,291 |
| 負債及び純資産合計 | 57,662 | 61,350 | 3,688 |
| 株主資本比率(%) | 58.6% | 56.9% | △1.7% |
当連結会計年度末における総資産は、円安に伴い外貨建資産が増加したことや、現金及び現金同等物などが増加
したことなどにより、前連結会計年度末から3,688億円増の6兆1,350億円となりました。
負債は必要な運転資本の増加に伴う借入の実行などにより、前連結会計年度末から2,397億円増の2兆3,609億円となりました。
純資産は、当社株主への配当や3度の自己株式の取得を実施したことなどにより減少した一方で、当社株主に帰属する当期純利益の積み増しや円安に伴い為替換算調整額が増加したことにより、前連結会計年度末から1,291億円増の3兆7,741億円となりました。
これらの結果、当連結会計年度末の株主資本比率は前連結会計年度末より1.7ポイント減少して56.9%となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、為替変動の影響分を合わせて、前連結会計年度末から844億円増加し、5,860億円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
仕掛品の適正化を図ったことで棚卸資産は減少しましたが、取引先への支払い条件見直しによる買入債務の減少などもあり、前連結会計年度と比較して1,309億円減少し、4,759億円の収入となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
宇都宮事業所に新設した半導体製造装置の新工場への投資などにより固定資産購入額は増加しましたが、前期にプリマジェスト社の買収を実施したことや固定資産の売却などもあり、前連結会計年度と比較して599億円減少し、2,374億円の支出となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
増配や3度の自己株式の取得など積極的な株主還元を実施した一方で、必要な運転資本の増加に伴い借入金が増加したことにより、前連結会計年度と比較して468億円支出が減少し、1,792億円の支出となりました。
また、営業活動によるキャッシュ・フローから投資活動によるキャッシュ・フローを控除した、いわゆるフリーキャッシュ・フローは、前連結会計年度と比較して710億円減少し、2,385億円の収入となりました。
詳細については、「(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ⑤流動性と資金源泉 b.現金及び現金同等物」に記載のとおりであります。
③生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
| セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前連結会計年度比(%) |
| プリンティング | 2,049,770 | 95.6 |
| メディカル | 611,374 | 102.4 |
| イメージング | 1,032,494 | 117.9 |
| インダストリアル | 346,610 | 94.1 |
| その他及び全社 | 62,044 | 97.2 |
| 消去 | △102,044 | ‐ |
| 合計 | 4,000,248 | 101.5 |
(注)1. 金額は、販売価格によって算定しております。
2. 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
b. 受注実績
当社グループの生産は、当社と販売各社との間で行う需要予測を考慮した見込み生産を主体としておりますので、販売高のうち受注生産高が占める割合は僅少であります。従って受注実績の記載は行っておりません。
c. 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
| セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前連結会計年度比(%) |
| プリンティング | 2,494,398 | 98.9 |
| メディカル | 580,622 | 102.1 |
| イメージング | 1,054,900 | 112.5 |
| インダストリアル | 361,128 | 102.7 |
| その他及び全社 | 237,116 | 101.4 |
| 消去 | △103,437 | ‐ |
| 合計 | 4,624,727 | 102.5 |
(注)1. 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2. 最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する
割合は、次のとおりであります。
| 相手先 | 第124期 (2024年1月1日から 2024年12月31日まで) | 第125期 (2025年1月1日から 2025年12月31日まで) | ||
| 販売高 (百万円) | 割合(%) | 販売高 (百万円) | 割合(%) | |
| HP Inc. | 471,604 | 10.5 | 444,740 | 9.6 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2026年3月25日)現在において判断しております。
はじめに
当社は、プリンティング、メディカル、イメージング、インダストリアル、その他の製品を世界的に事業展開する企業グループであります。また、企業の成長と発展を果たすことにより、世界の繁栄と人類の幸福に貢献することを、経営理念としております。
①主要業績評価指標
当社は真のグローバル・エクセレント・カンパニーを目指しており、その実現に向けた事業経営において設定している主要業績評価指標(以下「KPI(Key Performance Indicatorsの略)」という。)は以下のとおりであります。
(収益及び利益率)
当社が経営において重点を置いている指標の1つに収益が挙げられます。以下は経営者が重要だと捉えている収益に関連したKPIであります。
売上高はKPIの1つと考えております。当社は主に製品、またそれに関連したサービスから売上を計上しています。売上高は、当社製品への需要、会計期間内における取引の数量や規模、新製品の評判、また販売価格の変動といった要因によって変化し、その他にも市場でのシェア、市場環境等も売上高を変化させる要因です。さらに製品別の売上高は売上の中でも重要な指標の1つであり、市場のトレンドに当社の経営が対応しているかというような内容を測定するための目安となります。
売上総利益率は、当社の事業活動における付加価値創出力および収益構造の健全性を示す重要なKPIとして位置付けています。売上高の成長のみならず、価格戦略や原価構造を含めた事業の収益性を直接的に反映する指標であり、成長の質を評価する上で有効と考えております。
営業利益率、税引前当期純利益率及び売上高研究開発費比率も当社のKPIとして考えており、これらについて当社は2つの面からの方策をとっております。1つは、販売費及び一般管理費そのものを統制し低減に努めていること、もう1つは将来の利益を生み出す技術に対する研究開発費を一定の水準に維持していくことです。現在の市場における優位性を保持しつつ、他市場における可能性も開拓していくために必要なことであり、そうした投資が将来の事業の成功の基盤となります。
(キャッシュ・フロー経営)
当社はキャッシュ・フロー経営にも重点を置いております。以下の指標は、経営者が重要だと捉えているキャッシュ・フロー経営に関連したKPIです。
在庫回転日数はKPIの1つであり、サプライチェーン・マネジメントの成果を測る目安となります。棚卸資産は陳腐化及び劣化する等のリスクを内在しており、その資産価値が著しく下がることで、当社の業績に悪影響を及ぼすこともありえます。こうしたリスクを軽減するためには、サプライチェーン・マネジメントの強化により、棚卸資産の圧縮及び製品コスト等の回収を早期化させるために生産リードタイムを短縮させ、一方で販売の機会損失を防ぐため適正水準の製品在庫を保持していく活動の継続が重要であると考えております。
また有利子負債依存度も当社のKPIの1つであります。当社のような製造業では、開発、生産、販売等のプロセスを経て、事業が実を結ぶまでには、一般に長い期間を要するため、堅固な財務体質を構築することは重要なことであると考えます。今後も当社は主に通常の営業活動からのキャッシュ・フローで、流動性の維持や設備投資に対応してまいりますが、大きな成長投資を決断した際には借入金を活用することも想定しております。
総資産に占める株主資本の割合を示す株主資本比率も、当社におけるKPIの1つとしております。株主資本を潤沢に持つことは、長期的な視点に立って高水準の投資を継続することにつながり、短期的な業績悪化にも揺るがない事業運営を可能にします。特に、研究開発に重点を置く当社にとっては、財務の安全性を確保することは、非常に重要なことであると考えております。一方で、成長投資のため負債を有効活用するなど、資本構成の最適化にも留意してまいります。
(株主資本収益性)
株主資本に対する当期純利益の割合を示す株主資本利益率も、当社におけるKPIの1つとしております。事業構造の見直しや経費の効率化を通じて収益性の向上に取り組む一方で、在庫水準の適正化や生産拠点の集約化により、資産効率の向上も図ってまいります。また、財務の健全性を維持しながらも成長投資を実行する過程では、負債も有効活用するなど適正な資本構成を構築し、株主資本の収益性を向上させてまいります。
②重要な会計方針及び見積り
当社の連結財務諸表は、米国会計基準に基づいて作成されております。また当社は、連結財務諸表を作成するために、種々の見積りと仮定を行っております。これらの見積り及び仮定は将来の市場状況、売上増加率、利益率、割引率等の見積り及び仮定を含んでおります。当社は、これらの見積り及び仮定は合理的であると考えておりますが、実際の業績は異なる可能性があります。また、パンデミックや地政学的リスク、さらにはインフレに伴う景気減速のリスク等により、当社の業績が経営者の仮定及び見積りとは異なる可能性があります。当社は、現在当社の財政状態及び経営成績に影響を与えている会計方針を適用するにあたり、以下の事項がより重要な判断事項であると考えています。
a.長期性資産の減損
基準書360「有形固定資産」に準拠し、有形固定資産や償却対象の無形固定資産などの長期性資産は、帳簿価額が回収できないという事象や状況の変化が生じた場合に、減損に関する検討を実施しております。帳簿価額が割引前将来見積キャッシュ・フローの総額を上回っていた場合には、帳簿価額が公正価値を超過する金額について減損を認識しております。公正価値の決定は、見積り及び仮定に基づいて行っております。
b.有形固定資産
有形固定資産は取得原価により計上しております。減価償却方法は、定額法で償却している一部の資産を除き、定率法を適用しております。
c.棚卸資産
棚卸資産は、低価法により評価しております。原価は、国内では平均法、海外では主として先入先出法により算出しております。
d.リース
当社は、貸手のリースでは主にオフィス製品の販売においてリース取引を提供しております。販売型リースでの機器の販売による収益は、リース開始時に認識しております。販売型リース及び直接金融リースによる利息収益は、それぞれのリース期間にわたり利息法で認識しております。これら以外のリース取引はオペレーティングリースとして会計処理し、収益はリース期間にわたり均等に認識しております。機器のリースとメンテナンス契約が一体となっている場合は、リース要素と非リース要素の独立販売価格の比率に基づいて収益を按分しております。通常、リース要素は、機器及びファイナンス費用を含んでおり、非リース要素はメンテナンス契約及び消耗品を含んでおります。一部の契約ではリースの延長又は解約オプションが含まれております。当社は、これらのオプション行使が合理的に確実である場合、オプションの対象期間を考慮し、リース期間を決定しております。当社のリース契約の大部分は、顧客の割安購入選択権を含んでおりません。
借手のリースでは建物、倉庫、従業員社宅、及び車輛等に係るオペレーティングリース及びファイナンスリースを有しております。当社は、契約開始時に契約にリースが含まれるか決定しております。一部のリース契約では、リース期間の延長又は解約オプションが含まれております。当社は、これらのオプション行使が合理的に確実である場合、オプションの対象期間を考慮し、リース期間を決定しております。当社のリース契約には、重要な残価保証または重要な財務制限条項はありません。当社のリースの大部分はリースの計算利子率が明示されておらず、当社はリース料総額の現在価値を算定する際、リース開始時に入手可能な情報を基にした追加借入利子率を使用しております。当社のリース契約の一部には、リース要素及び非リース要素を含むものがあり、それぞれを区分して会計処理しております。当社はリース要素と非リース要素の見積独立価格の比率に基づいて、契約の対価を按分しております。オペレーティングリースに係る費用は、そのリース期間にわたり定額法で計上されております。
e.企業結合
企業買収は取得法で処理しております。取得法では、取得した契約資産及び契約負債を除く、全ての有形及び無形資産並びに引き継いだ全ての負債を、支配獲得日における公正価値に基づき認識及び測定します。公正価値の決定には、将来キャッシュ・フローの予測、割引率、資本収益率、及びその他の利用可能な市場データに基づく見積りなどの、重要な判断や見積りを伴います。また、将来キャッシュ・フローの予測は、被買収会社の実績や、過去及び将来に想定される趨勢、市場や経済状況などの多くの要素に基づいております。取得した契約資産及び契約負債は、基準書606「顧客との契約からの収益」に準拠し認識及び測定しております。
f.のれん及びその他の無形固定資産
のれん及び耐用年数が確定できないその他の無形固定資産は償却を行わず、代わりに毎年第4四半期に、または潜在的な減損の兆候があればより頻繁に減損テストを行っております。全てののれんは、企業結合のシナジー効果から便益を享受する報告単位に配分されます。報告単位の公正価値が、当該報告単位に割り当てられた帳簿価額を下回る場合には、当該差額をその報告単位に配分されたのれんの帳簿価額を限度とし、のれんの減損損失として認識しております。報告単位の公正価値は、主として割引キャッシュ・フロー分析に基づいて決定されており、将来キャッシュ・フロー及び割引率等の見積りを伴います。将来キャッシュ・フローの見積りは、主として将来の成長率に関する当社の予測に基づいております。割引率の見積りは、主として関連する市場及び産業データ並びに特定のリスク要因を考慮した、加重平均資本コストに基づいて決定しております。当社は、2024年第4四半期に行った減損テストの結果、メディカルビジネスユニットの公正価値が帳簿価額を下回っていたことから、当該差額をのれんの減損損失として認識しましたが、2025年第4四半期に行った減損テストでは、個々の報告単位の公正価値は帳簿価額を超過しており、減損が見込まれる報告単位はありませんでした。詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 注8 のれん及びその他の無形固定資産」及び「注22 公正価値の開示」に記載のとおりであります。重要なのれんが配分されている報告単位は、メディカル報告単位であり、405,882百万円が配分されております。当該報告単位の将来キャッシュ・フローの見積りは、今後の医療機器市場の成長や事業活動地域の経済成長を考慮した上で立案された中期経営計画に基づいております。
耐用年数の見積りが可能な無形固定資産は、主としてソフトウェア、商標、特許権及び技術資産、ライセンス料、顧客関係であります。なお、ソフトウェアは主として3年から9年、商標は15年、特許権及び技術資産は5年から21年、ライセンス料は7年、顧客関係は10年から19年でそれぞれ定額償却しております。
g.法人税等の不確実性
当社は、法人税等の不確実性の評価及び見積りにおいて多くの要素を考慮しており、それらの要素には、税務当局との解決の金額及び可能性、並びに税法上の技術的な解釈を含んでおります。不確実性に関する実際の解決が見積りと異なるのは不可避的であり、そのような差異が連結財務諸表に重要な影響を与える可能性があります。
h.繰延税金資産の評価
当社は、繰延税金資産に対して定期的に実現可能性の評価を行っております。繰延税金資産の実現は、主に将来の課税所得の予測によるところが大きく、課税所得の予測は将来の市場動向や当社の事業活動が順調に継続すること、その他の要因により変化します。課税所得の予測に影響を与える要因が変化した場合には評価性引当金の設定が必要な場合があり、当社では繰延税金資産の実現可能性がないと判断した際には、繰延税金資産を修正し、損益計算書上の法人税等に繰り入れ、当期純利益が減少いたします。
i.未払退職及び年金費用
未払退職及び年金費用は数理計算によって認識しており、その計算には前提条件として基礎率を用いています。割引率、期待運用収益率といった基礎率については、市場金利などの実際の経済状況を踏まえて設定しております。その他の基礎率としては、昇給率、死亡率などがあります。これらの基礎率の変更により、将来の退職及び年金費用が影響を受ける可能性があります。
基礎率と実際の結果が異なる場合は、その差異が累積され将来期間にわたって償却されます。これにより実際の結果は、通常、将来の年金費用に影響を与えます。当社はこれらの基礎率が適切であると考えておりますが、実際の結果との差異は将来の年金費用に影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度の連結財務諸表の作成においては、給付債務の計算に使用する割引率には国内制度、海外制度ではそれぞれ加重平均後で2.9%、4.3%を、長期期待収益率には国内制度、海外制度ではそれぞれ加重平均後で3.2%、5.3%を使用しております。割引率を設定するにあたっては、現在利用可能で、かつ、年金受給が満期となる間に利用可能と予想される高格付けで確定利付の公社債の収益率に関し利用可能な情報を参考に決定しております。また長期期待収益率の設定にあたっては、年金資産が構成される資産カテゴリー別の過去の実績及び将来の期待に基づいて収益率を決定しております。
割引率の低下(上昇)は、勤務費用及び数理計算上の差異の償却額を増加(減少)させるとともに、利息費用を減少(増加)させます。割引率が0.5%低下した場合、予測給付債務は約662億円増加します。割引率の低下(上昇)による影響は、数理計算上の他の前提条件の変更による影響と同様に、翌期以降に繰り延べられます。
長期期待収益率の低下(上昇)は、期待運用収益を減少(増加)させ、かつ数理計算上の差異の償却額を増加(減少)させるため、期間純年金費用を増加(減少)させます。長期期待収益率が0.5%低下した場合、期間純年金費用は約63億円増加します。
これにより年金制度の積立状況(すなわち、年金資産の公正価値と退職給付債務の差額)を連結貸借対照表で認識しており、対応する調整を税効果調整後で、その他の包括利益(損失)累計額に計上しております。
j.収益認識
当社は、主にプリンティング、メディカル、イメージング、インダストリアルの各ビジネスユニットの製品、消耗品並びに関連サービス等の売上を収益源としており、それらを顧客との個別契約に基づき提供しております。当社は、約束した財またはサービスの支配が顧客に移転した時点、もしくは移転するにつれて、移転により獲得が見込まれる対価を反映した金額により、収益を認識しております。
プリンティングビジネスユニットの製品(オフィス向け複合機、レーザープリンター、インクジェットプリンター等)及びイメージングビジネスユニットの製品(デジタルカメラ等)の販売による収益は、製品の支配を顧客がいつ獲得するかにより、主に出荷または引渡時点で認識しております。
また、メディカルビジネスユニットの製品(CT装置やMRI装置等)及びインダストリアルビジネスユニットの製品(半導体露光装置やFPD露光装置等)の販売にあたり、機器の性能に関して顧客検収を要する場合は、機器が顧客の場所に据え付けられ、合意された仕様が客観的な基準により達成されたことを確認した時点で、収益を認識しております。
当社のサービス売上の大部分は、プリンティングの製品及びメディカルの製品のメンテナンスサービスに関連するものであり、一定期間にわたり認識しております。プリンティングの製品のサービス契約は、通常、顧客は、機器の使用量に応じた従量料金、固定料金、または、基本料金に加えて使用量に応じた従量料金を支払う契約であり、修理作業及び消耗品の提供を含んでおります。プリンティングの製品のサービス契約による収益の大部分は、顧客への請求金額が、履行義務の充足に伴い顧客に移転した価値と直接対応していることから、顧客への請求金額により収益を計上しております。メディカルの製品のサービス契約は、通常、顧客は、当社が提供する待機サービスの対価として、固定料金を支払っており、当社は契約期間にわたり均等に収益を認識しております。
プリンティングの製品に関するサービス契約の多くは、関連する製品販売契約と一体で実行されます。製品及びサービスの取引価格は、独立販売価格の比率に基づいて各履行義務に配分される必要があり、その配分には判断が伴います。独立販売価格は、市場の状況及びその他観察可能なインプットを含む合理的に入手可能な全ての情報に基づき、配分の目的に合致するように設定された価格のレンジを用いて見積もられています。製品またはメンテナンスサービスの取引価格が設定されたレンジを外れる場合は、見積独立販売価格に基づき取引価格は配分されることになります。契約獲得の追加コストは、関連するプリンティングの製品が販売された時に、費用として認識しております。
転用可能性がなく、かつ完了した成果に対して顧客から支払いを受ける強制力のある権利を有している一部のインダストリアルの製品の販売契約(以下「長期契約」)に関する収益は一定期間にわたり認識しており、コストを基礎とする進捗度に基づき、完成時の見積り利益の当期進捗分を含む収益が当期に認識されます。未完成の長期契約に関する損失は、損失が発生することが明らかになった期に認識されます。長期契約に関する作業実績や作業状況、想定される収益性の変化や最終的な契約条項がコストや収益の見積りに与える影響は、それらが識別され合理的に見積り可能になった期に認識されます。将来コストや完成時の利益に影響を与える要素は生産効率、労働力や資材の利用可能性とコストを含み、これらの要素は見積りの正確性に影響し、将来の収益と売上原価に重要な影響を与えることがあります。
財またはサービスの移転と交換に当社が受け取る取引価格は、値引き、顧客特典、売上に応じた割戻し等の変動対価を含んでおります。変動対価は、主として、販売代理店や小売店が主要顧客であるイメージングの製品の販売に関連しております。当社は、変動対価に関する不確実性が解消された時点で収益認識累計額の重要な戻し入れが生じない可能性が高い範囲で、変動対価を取引価格に含めております。変動対価は、過去の傾向や売上時点におけるその他の既知の要素に基づいて見積もっており、直近の情報に基づき定期的に見直しております。また、当社は、販売後の短期間、顧客に製品の返品権を付与することがあり、当該返品権により予想される返品を考慮し決定された取引価格に基づき収益認識をしております。
当社は、連結損益計算書の収益について、顧客から徴収し政府機関へ納付される税金を除いて表示しております。
k.信用損失引当金
信用損失引当金は、過去の信用損失の経験と合理的かつ裏付け可能な予測を踏まえつつ、基準書326(「金融商品-信用損失」)に基づいて、全ての債権計上先を対象として計上しております。また当社は、破産申請など顧客の債務返済能力がなくなったと認識した時点において、顧客ごとに信用損失引当金を積み増しております。債権計上先をとりまく状況に変化が生じた場合は、債権の回収可能性に関する評価はさらに調整されます。法的な償還請求を含め、全ての債権回収のための権利を行使してもなお回収不能な場合に、債権の全部または一部を回収不能とみなし、信用損失引当金に対する償却を実施しております。
l.環境負債
環境浄化及びその他の環境関連費用に係る負債は、環境アセスメントあるいは浄化努力が要求される可能性が高く、その費用を合理的に見積ることができる場合に認識しており、連結貸借対照表のその他の固定負債に含めております。環境負債は、事態の詳細が明らかになる過程で、あるいは状況の変化の結果によりその計上額を調整しております。その将来義務に係る費用は現在価値に割引いておりません。
m.新会計基準
「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 注1 (24)新会計基準」に記載のとおりであります。
③当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.売上高
当連結会計年度は、米国の追加関税による影響が見られる中でも、総じて緩やかな回復が続きました。このような状況の中、プリンティングは欧米で投資先送り傾向が続き前年を下回ったものの、メディカルは米国や新興国で堅調に推移し、市場成長が続くネットワークカメラや動画撮影需要などを捉えたカメラの販売も好調でした。その結果、グローバル優良企業グループ構想フェーズVI最終年度である当期の売上高は、前連結会計年度比2.5%増の4兆6,247億円となり、2年連続で過去最高売上を更新しました。製品売上高及びサービス売上高は前連結会計年度比でそれぞれ、2.2%増の3兆6,732億円、3.9%増の9,515億円となりました。
当連結会計年度の海外での売上高は、連結売上高の79.2%を占めます。海外での売上高の計算は、円と外貨の為替レートの変動に影響されます。製品の現地生産及び海外からの部品や材料調達等によりその影響を抑えておりますが、為替レートの変動は当社の経営成績に大きな影響を与える可能性があります。
当連結会計年度の米ドル及びユーロの平均為替レートはそれぞれ149.71円及び169.41円と、前連結会計年度に比べて米ドルは約2円円高、ユーロは約5円円安で推移しました。米ドルとの為替レートの変動により約231億円の売上高減少、ユーロとの変動で約358億円の売上高増加、その他の通貨との変動で約58億円の売上高減少影響がありました。その結果、当連結会計年度の為替による売上高の増加影響は約69億円となりました。
b.売上原価
売上原価は、主として原材料費、購入部品費、工場の人件費から構成されます。原材料費のうち海外調達される原材料については、海外の市場価格や為替レートの変動による影響を受け、当社の売上原価に影響を与えます。売上原価にはこれらの他に有形固定資産の減価償却費、修繕費、光熱費、賃借料などが含まれております。当連結会計年度は米国関税影響によるコスト増加がある一方で、部品のコストダウンは年間を通じて進展しました。売上高に対する売上原価の比率は、当連結会計年度は53.3%となり、前連結会計年度52.5%より0.8ポイント増加しました。
c.売上総利益
当連結会計年度の売上総利益は、前連結会計年度と比べ0.9%増加の2兆1,620億円となりました。また売上総利益率は、前連結会計年度より0.8ポイント減少し46.7%となりました。売上総利益の増加は、主には売上増加によるものです。
d.営業費用
営業費用は、主に人件費、研究開発費、広告宣伝費であります。営業費用は、前期にメディカルビジネスユニットでのれんの減損損失を認識していることに加え、当期は海外での構造改革効果が出ていることや徹底した経費管理などにより、前期比8.4%減の1兆7,066億円となり、当連結会計年度売上高に対する経費率は前連結会計年度より4.4ポイント好転し、36.9%となりました。
e.営業利益
当連結会計年度の営業利益は、前連結会計年度比62.8%増加の4,554億円でありました。営業利益率は3.6ポイント好転して9.8%となりました。
f.営業外収益及び費用
当連結会計年度の営業外収益及び費用は、外貨建て債権から生じた為替差損益や有価証券評価損益が好転したことにより、前連結会計年度から53億円好転し、267億円の収益となりました。
g.税引前当期純利益
当連結会計年度の税引前当期純利益は4,821億円で、前連結会計年度比60.1%の増益となりました。また、売上高に対する比率は10.4%でした。
h.法人税等
当連結会計年度の法人税等は56億円増加し、実効税率は25.7%でした。実効税率が日本の法定実効税率を下回っているのは、主に試験研究費の税額控除や海外子会社で適用される税率が日本の法定実効税率より低いためです。
i.当社株主に帰属する当期純利益
当連結会計年度の当社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度比107.5%の増益である3,321億円となりました。また、売上高当期純利益率は7.2%となりました。
④海外事業と外国通貨による取引
当社の販売活動は様々な地域で現地通貨により行っている一方、売上原価は円の占める割合が比較的高くなっております。当社の現在の事業構造を鑑みると、円高影響は売上高や売上総利益率に対してマイナス要因となりま
す。こうした為替相場の変動による財務リスクを軽減することを目的に、当社は為替先物契約を主とした金融派生商品を利用した取引を実施しております。
海外における売上高利益率は、主に販売活動を中心としているため、国内の売上高利益率と比較すると低くなっております。一般的に販売活動は、当社が行っている生産活動ほど収益性は高くありません。地域別セグメント情報に関する詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 注23 セグメント情報」を参照ください。
⑤流動性と資金源泉
a.財務活動の基本方針
当社はキャッシュ創出力を更に伸ばし、成長領域への積極的な投資によって企業価値を向上させることを財務活動の基本方針としております。
売上拡大による利益の向上と資産効率の改善によりキャッシュ・フローを最大化し、成長の原資となるキャッシュ創出力の向上に努めていきます。また、財務規律を維持しながらも多様な資金調達手段を確保し、各事業の成長戦略のコアとなる成長領域への積極的な投資を支えていきます。
資金の源泉(Cash-In)
営業活動によるキャッシュ・フローと現金及び現金同等物を内部的な資金の源泉としております。また、資金需要に応じて、金融機関からの借入や社債等による資金調達を実施しております。借入による資金調達を行う場合には、多様な選択肢から最適な手段を選定すると共に、D/EレシオやNet Debt/EBITDA倍率等の財務規律も考慮して、健全な財務体質を維持することを方針としています。
資金の使途(Cash-Out)
資金の主な使途は以下の優先順位に則り決定しております。
1.成長領域への投資
既存事業での設備投資や研究開発投資等により成長領域へ積極的に投資を行います。また、M&Aも活用しながら、既存事業の事業領域拡大を目指していきます。
2.株主還元
中長期的な業績の見通しに加え、将来の投資計画やキャッシュ・フローなどを総合的に勘案し、安定的な株主還元を実施します。配当は累進配当を基本方針として現状の配当金額を下げることなく、配当性向40%を目途に実施します。自社株式の取得は、キャッシュ・フローなどの財務状況や当社株式の株価水準等に応じて機動的に実施します。
3.戦略投資
機動的なキャッシュアロケーション枠として、状況に応じたM&A、成長領域への追加投資および追加的な株主還元に活用していきます。
b.現金及び現金同等物
キャッシュ・フローの推移

当連結会計年度における現金及び現金同等物は、前連結会計年度から844億円増加して、5,860億円となりました。当社の現金及び現金同等物は主に円と米ドルを中心としておりますが、その他の外貨でも保有しております。
営業活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、仕掛品の適正化を図ったことで棚卸資産は減少しましたが、取引先への支払い条件見直しによる買入債務の減少などもあり、前連結会計年度末から1,309億円減少し、4,759億円の収入となりました。営業活動によるキャッシュ・フローは、主に顧客からの現金受取によるキャッシュ・イン・フローと、部品や材料、販売費及び一般管理費、研究開発費、法人税の支払いによるキャッシュ・アウト・フローとなっております。当連結会計年度におけるキャッシュ・イン・フローの増加は、主に売上高の増加に伴い、顧客からの現金回収が増加したことによります。当社の回収率に重要な変化はありません。キャッシュ・アウト・フローの増加は、主に売上増や支払い条件見直しによる支払いの増加などによるものです。法人税の支払いによるキャッシュ・アウト・フローの増加は、課税所得の増加によるものです。
投資活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローのうち、固定資産購入額は、宇都宮事業所に新設した半導体製造装置の新工場への投資などにより前連結会計年度から252億円増加し2,622億円となりました。一方で、前期にプリマジェスト社の買収を実施したことや固定資産の売却などもあったため、全体では前連結会計年度より599億円減少し、2,374億円の支出となりました。
フリーキャッシュ・フロー
当社は、営業活動によるキャッシュ・フローから投資活動によるキャッシュ・フローを控除した純額をフリーキャッシュ・フローと定義しており、当連結会計年度のフリーキャッシュ・フローは、前連結会計年度の3,095億円から、710億円減少し、2,385億円の収入となりました。
当社は、キャッシュ・フロー経営に重点を置き、フリーキャッシュ・フローを常時モニタリングしております。フリーキャッシュ・フローは当社の現在の流動性や財務活動の使途を理解する上で重要であり、また投資家にも有用であると考えております。当社は資金の調達源泉を明らかにするために、米国会計基準による連結キャッシュ・フロー計算書や連結貸借対照表と併せて、米国会計基準以外の財務指標(Non-GAAP財務指標)である、フリーキャッシュ・フローを分析しております。なお、最も直接的に比較可能な米国会計基準に基づき作成された指標とフリーキャッシュ・フローの照合調整表は以下のとおりです。
| (億円) | |||
| 第124期 | 第125期 | 増減 | |
| 営業活動によるキャッシュ・フロー | 6,068 | 4,759 | △1,309 |
| 投資活動によるキャッシュ・フロー | △2,973 | △2,374 | +599 |
| フリーキャッシュ・フロー | 3,095 | 2,385 | △710 |
| 財務活動によるキャッシュ・フロー | △2,260 | △1,792 | +468 |
| 為替変動の現金及び現金同等物への影響額 | 167 | 252 | +85 |
| 現金及び現金同等物の増減 | 1,002 | 844 | △158 |
| 現金及び現金同等物の期首残高 | 4,013 | 5,016 | +1,003 |
| 現金及び現金同等物の期末残高 | 5,016 | 5,860 | +844 |
財務活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは、増配や3度の自己株式の取得など積極的な株主還元を実施した一方で、必要な運転資本の増加に伴い借入金が増加したことにより、前期比で468億円減少し、1,792億円の支出となりました。なお、当連結会計年度の配当金は、1株当たり前年比15円増配となる160円にて支払いを実施しました。
当社は、流動性や必要資本を満たすため、増資、社債発行、借入といった外部からの様々な資金調達方法をとることが可能です。当社は、これまでどおりの資金調達や資本市場からの資金調達が可能であり、また将来においても可能であり続けると認識しておりますが、経済情勢の急激な悪化やその他状況によっては、当社の流動性や将来における長期の資金調達に影響を与える可能性があります。
当社の長期債務は、主に銀行借入とリース債務によって構成されています。
格付け
当社は、グローバルな資本市場から資金調達をするために、格付機関であるS&Pグローバル・レーティングから信用格付を得ております。それに加えて、当社は日本の資本市場からも資金調達するために、日本の格付会社である格付投資情報センターからも信用格付を得ております。2026年2月28日現在、当社の負債格付は、S&Pグローバル・レーティング:A(長期)/A-1(短期)、格付投資情報センター:AA(長期)であります。当社では、現時点で負債の返済を早めるような格付低下の要因は発生しておりません。当社の信用格付が下がる場合は、借入コストの増加につながります。
c.在庫の適正化
当社の最新の在庫水準の最適化の方針は、運転資金を最小化し、在庫の陳腐化のリスクを避け、一方で予期せぬ天災発生時でも販売活動を継続できるようにするため、適切なバランスを維持していくことであります。当社の在庫回転日数は、当連結会計年度、前連結会計年度末時点でそれぞれ、63日、65日となりました。円安による外貨建て資産の増加影響があったものの、在庫管理強化の徹底により在庫金額は減少し、売上高も前年比で増収となったことで在庫回転日数は減少しました。
d.設備投資
当社は積極的な業績拡大に資する投資を行う一方、総額は減価償却費の範囲内に収めることでフリーキャッシュ・フローを安定的に創出するなど、財務基盤を強固にするキャッシュ・フロー経営を徹底しています。当連結会計年度における設備投資は、前連結会計年度の2,192億円から75億円減少し、2,117億円になりました。翌連結会計年度につきましては、引き続き成長のための設備投資を行うことにより、当社の設備投資は2,300億円の見込みであります。
e.退職給付債務への事業主拠出
当社の確定給付型年金への拠出額は、当連結会計年度179億円、前連結会計年度289億円であり、確定拠出型年金への拠出額は、当連結会計年度327億円、前連結会計年度293億円であります。また、一部の子会社が加入している複数事業主制度への拠出額は、当連結会計年度68億円、前連結会計年度64億円であります。
f.運転資本
当連結会計年度における運転資本(流動資産から流動負債を控除した額)は、前連結会計年度の9,038億円から92億円増加し、9,130億円になりました。増加の主な要因は、流動負債である買入債務の減少によるものです。当社の運転資本は、予測できる将来需要に対して十分であると認識しております。当社の必要資本は、設備投資に関わる支出の水準及び時期といった全社的な事業計画に基づいております。流動比率(流動負債に対する流動資産の割合)は、当連結会計年度は1.54、前連結会計年度は1.58であります。
g.総資本当社株主に帰属する当期純利益率
総資本利益率(当社株主に帰属する当期純利益を前年度末及び当年度末の総資産平均で除した割合)は、当連結会計年度では5.6%、前連結会計年度は2.9%であります。
h.株主資本当社株主に帰属する当期純利益率
株主資本利益率(当社株主に帰属する当期純利益を前年度末及び当年度末の株主資本平均で除した割合)は、当連結会計年度では9.7%、前連結会計年度4.8%であります。
i.有利子負債依存度
当連結会計年度では、運転資金の増加に伴い長期借入金が増加しました。その結果、当連結会計年度における短期借入金、短期オペレーティングリース負債、長期借入金、及び長期オペレーティングリース負債の総額は、前連結会計年度末の6,635億円から2,827億円増加し9,462億円となり、有利子負債依存度(総資産に対する有利子負債の割合)は15.4%と前連結会計年度の11.5%から3.9%増加しました。
j.株主資本比率
当連結会計年度の株主資本比率(株主資本を総資産で除した割合)は56.9%となりました。増配や自己株式取得などに伴う株主資本の減少により、前連結会計年度の58.6%から1.7%減少しましたが、総じて高い水準は維持しており、財務の健全性は保たれています。
⑥知的財産戦略
<ガバナンス>当社では知的財産部門がCEO直轄の組織であることに加え、知的財産法務本部長が専任役員を務めているため、知的財産法務本部長から、中期計画等の知的財産に関する戦略や考えを直接CEOに報告したり、役員間の日々の会議で他の役員へ知的財産に関する重要情報を伝達し、共有したりすることが可能です。このような体制により、知的財産に関する経営上の意思決定が迅速に行われています。
さらに、会社の役員でもある知的財産法務本部および事業部門、研究開発部門のトップをはじめとする幹部が集まる本部間トップミーティングを定期的に設け、知的財産戦略を議論するとともに、事業および研究開発部門における実際の知的財産活動を決定することで、事業および研究開発部門と一体化したタイムリーな知的財産活動を実現しています。このようにして技術中計、事業中計にリンクした知的財産戦略を策定し、知的財産部門の考えや知的財産への投資を技術および事業中計に組み込むというサイクルが機能しています。

また、当社では、当社の知的財産法務本部と各グループ会社の知的財産部門との間で、知的財産の取り扱いに関する役割と責任、活動方針の策定プロセスなどを取り決めたグローバルマネジメントルールを策定しています。
これにより、グループ全体の知的財産活動を統制し、知的財産ポートフォリオの最適化を図りつつ、必要に応じて知的財産法務本部と各グループ会社が協働で訴訟やライセンス活動を行い、利益の最大化を図っています。

<戦略>1.基本方針
当社は、独自技術で差別化した魅力的で質の高い製品とサービスにより、新市場や新規顧客を開拓する研究開発型企業として発展してきました。知的財産部門は、事業発展の支援を最も重視しており、これに資することをミッションとして、これからの時代を先読みし、知的財産戦略を策定、実行しています。
当社の知的財産戦略の基本戦略は下記4つとしております。
(1)コアコンピタンス技術に関わる特許は、競争領域において事業を守る特許としてライセンスせず、競争優位性の確保に活用する。
(2)通信、AI、IoTなどの共通技術(標準技術を含む)に関わる協調領域の特許をクロスライセンスなどに利用することで、研究開発や事業の自由度を確保する。
(3)他社の知的財産権を尊重する。一方でキヤノンの知的財産権の侵害に対しては毅然と対応する。
(4)他社が容易に到達できない検証困難な発明は、ノウハウとして秘匿し守ることで、他社の追従を許さず、競争優位性を確保する。
2.知的財産ポートフォリオの基本的な考え方
当社は、さまざまな環境変化から次の時代の社会や経済の流れを読み取り、知的財産戦略を策定、実行しています。知的財産ポートフォリオは、変化する経営と事業を支援し企業価値を向上させるために最大限活用するものと位置付けており、その構成は、さまざまな環境変化(サプライチェーン、経済安全保障、環境配慮要請、AI/IoTによる技術革新、デジタルサービスの拡大等)から次の時代を見据え、経営戦略、事業戦略と連動させながら、常に変化させています。近年では、これからの成長が見込まれる新規事業を支援する技術や、各事業分野に共通して活用が見込まれ、他社とのライセンス交渉においても重要な役割を担う共通技術に関する出願を特に増やし、将来のビジネスを支える特許ポートフォリオの強化を進めています。
事業のコアコンピタンスに関わる知的財産権の取得はもちろん、時代を先取りした知的財産権(例えば、AI/IoT技術や共通技術、環境関連技術に関わる知的財産権、パートナー創りのための知的財産権)の取得にも大きなリソースを投入し、新たな事業の創出のために様々な業界の企業との交渉にも備えています。このようにして構築した知的財産ポートフォリオを活用することにより、競争優位性の確保と将来事業の自由度の確保を両立させています。
当社は、全世界で約8万件にも及ぶ特許と実用新案を保有しています(2025年12月現在)。日本国内はもとより、海外での特許取得も重視しており、地域ごとの事業戦略や技術動向、製品動向を踏まえた上で特許の権利化を推進しています。特に米国は、世界最先端の技術をもつ企業が多く市場規模も大きいことから、特許出願については、事業拡大、技術提携の双方の視点から注力しており、米国の特許登録件数ランキングは42年連続で10位以内を維持しています。
また、知的財産ポートフォリオは、活用することでその価値が顕在化するものであり、保有する知的財産ポートフォリオの積極的な活用により事業の発展を最大限支援するとともに、企業価値の向上に貢献するものです。活用の具体例としては他社とのクロスライセンスがあります。これにより他社の保有する知的財産へのアクセスを可能としています。当社は、全世界で約100万件もの他社特許が利用可能であり、研究開発や事業における高い自由度を確保しています。また、他社にも有用な協調領域の特許を数多く保有していることで、コアコンピタンス特許の利用を許諾しない有利なクロスライセンスが可能となり、ビジネスの競争優位性を保っています。さらに、徹底した特許クリアランスと積極的なポートフォリオ活用を行うことで、ライセンス料の支払いを抑制しています。
3.事業の発展を支える知的財産ポートフォリオ
当社は、2021年~2025年のグローバル優良企業グループ構想フェーズⅥにおいて、プリンティング、メディカル、イメージング、インダストリアルの各グループの事業競争力の強化を掲げ、商業印刷、産業印刷、次世代ヘルスケア、高度監視、次世代半導体製造、デジタルソリューションサービスといった将来のビジネス創出にも力を入れてきました。知的財産部門は、これらの事業が発展し、成長するために、光学技術、映像処理、解析技術などのコアコンピタンス技術、AI/IoTを組み入れたサイバー&フィジカルシステムの技術、標準技術、環境配慮技術などに関する知的財産の創出・権利化に力を入れています。さらに、知的財産部門は、時代を先読みし、将来有望と期待される技術分野における知的財産の創出・権利化にも取り組んでおり、知的財産の面から会社の継続的な発展を支援しています。
2026年~2030年のグローバル優良企業グループ構想フェーズⅦのもとでは、事業領域の拡大を支援するための知的財産活動を計画的に実行していきます。
Ⅰ.プリンティンググループ
商業印刷、産業印刷分野のほか、オフィス向け機器を始めとする様々な機器と連携するサイバー&フィジカルシステムを支える知的財産を創出しています。様々な機種のプリンターに共通して搭載されるコントローラ/エンジンの基盤技術やプリンターに付加価値を提供するクラウドの基盤技術に加え、プリンターの環境配慮技術や、AIを利活用した新たなプリンティングソリューションなどこれからの時代に対応する技術に関する特許ポートフォリオを構築しています。
Ⅱ.メディカルグループ
プレシジョン・メディシン(個別化医療)の実現をサポートするAIソリューション、診断精度の向上及び従来装置よりも被ばく線量低減が期待されるフォトンカウンティングCTなど、医療現場に次々と提供される新たな価値を創造する技術を保護する知的財産ポートフォリオを構築しています。加えて、グループ会社間連携を通じて、光学技術や画像処理技術などこれまでに培ってきた技術に、メディカル領域特有の画像診断技術、ソリューションを融合し、画像診断を核としてヘルスケアITやバイオサイエンスなどの新たな領域への事業拡大を支える知的財産ポートフォリオを強化しています。
Ⅲ.イメージンググループ
ミラーレスカメラ、映像制作用カメラ、監視用カメラなどの領域において、高度な光学技術だけではなく、動画対応技術、ネットワーク技術、そして機械学習を用いて被写体やその動きを認識するAI応用技術に注力して知的財産を創出しています。さらにボリュメトリックビデオやXRなどの3Dイメージング技術や、暗闇でも数km先の被写体を鮮明に捉えられるSPADセンサー等、次世代のエンターテインメントや社会の安全と安心を支える領域でも特許ポートフォリオを強化しています。
Ⅳ.インダストリアルグループ
露光装置、ダイボンダー、有機ELディスプレイ製造装置、スパッタリング装置などの製造装置に加え、Lithography Plusなどの製造ソリューションサービスに関する知的財産の創出にも注力しています。
さらに、黒色プラスチックのリサイクルを可能にするラマン分光解析技術、低消費電力を実現するナノインプリントリソグラフィ技術の特許ポートフォリオを強化し、新規事業の拡大を支援しています。
Ⅴ. 未来を切り拓く技術
本社研究開発部門等で研究が進む、3Dプリンター用セラミックス、鉛フリー圧電体、全固体電池用材料などのサステナビリティ実現のための新素材、デバイス技術、超大型望遠鏡用のイマージョン回折素子、人工衛星などの宇宙科学技術の分野で、世界初/最先端のコア技術の特許ポートフォリオ形成に注力しています。
Ⅵ. 標準化への取組み
海外研究所の標準化エキスパートと協働し、標準化団体への積極的な参画を通して世界の技術発展に貢献。移動体通信(5Gなど)、無線LAN(Wi-Fiなど)、動画圧縮(HEVC,VVCなど)、無線電力伝送(Qiなど)、ファイルフォーマット(HEIF,OMAFなど)など次世代の技術標準を構成する特許ポートフォリオを拡大し、キヤノンの知財競争力を強化しています。
4. オピニオンリーダーとしての活動
当社は、日本の産業の振興、ひいては世界の産業の振興への貢献をめざし、知的財産の業界をリードする活動を積極的に行っています。2014年には、LOT(License on Transfer)ネットワークを他社とともに設立し、自らは事業を行わず特許訴訟を脅しに利益を得るPAE(Patent Assertion Entity)による不当な特許訴訟から会員企業を守る仕組みを構築しました。2026年1月時点で5,800社以上が会員企業になっています。また、2019年より、世界知的所有権機関(WIPO)が運営する、環境技術の活用を促進するためのプラットフォームであるWIPO GREENにパートナーとして参加し、WIPOと協力して環境技術の普及を行っています。
当社は、パートナーづくりにも注力しており、2023年には国立研究開発法人 産業技術総合研究所(AIST)が民間企業と共同で実施するAIST Innovation Ecosystem Programに設立メンバーとして参画しました。新たな技術の社会実装化を支援するとともに、プログラムから生まれた技術へのアクセスを得て更なるイノベーションの推進につなげています。
このような活動により、他社特許侵害のリスク低減、保有特許の活用機会創出、アクセス可能な技術及び特許の拡大を実現し、知財面からの事業支援を行うとともに、世界の知財エコシステムの構築に貢献しています。
<リスク管理>知的財産に関するリスクとその対応については、3 事業等のリスク をご参照ください。
<目標>当社では、事業に稼がせる知財を標榜し、事業発展に貢献することを目的として知財活動を行っております。活用を考慮に入れた知的財産ポートフォリオの構築を進め、構築されたポートフォリオを活用することで、事業の収益性を向上させています。保有する8万件超のポートフォリオは時代に合わせて新陳代謝を図っており、新規事業を支える技術分野の出願比率を戦略的に増やし、新規事業のビジネス拡大・収益向上に貢献することを目指します。また、世界最先端の技術をもつ企業が多く市場規模も大きい米国においては、事業拡大や他社とのライセンス交渉などの観点から、米国特許取得件数ランキングでトップ10以内の継続を目指します。
当社の知的財産活動に関するその他の情報は、当社ウェブサイト(https://global.canon/ja/intellectual-property/)に掲載しております。