有価証券報告書-第81期(2023/04/01-2024/03/31)

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2024/06/20 10:00
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(経営成績等の状況の概要)
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
(1) 経営成績の状況
当連結会計年度における日本経済は、世界的な金融引き締めや海外景気の下振れリスクがあるものの、コロナ禍からの社会経済活動の正常化が進行し、企業収益が改善すると共に設備投資も堅調に推移したことで、緩やかな回復が続きました。
このような状況のもと、当社グループは2024年3月期を初年度とする5ヵ年に亘る中期経営計画「PLAN
27」に基づき、基本方針である「社会課題解決」と「持続的成長」に向けた事業拡大に取り組みました。
水素エネルギー社会の実現に向けては、福島県南相馬市で一般住宅を対象に水素混合LPガスを既存の導管で供給する実証事業が国立研究開発法人「新エネルギー・産業技術総合開発機構」(NEDO)の助成事業に採択されました。また、港湾ターミナルの脱炭素化に向けては、燃料となる水素を供給することで、阪神港コンテナターミナルで使用される荷役機械を水素エンジン発電機で動かす実証事業に参画します。
総合エネルギー事業では、LPガス直売顧客数の拡大や配送拠点の統廃合等による配送合理化に継続して取り組みました。カートリッジガス事業は、当社では最高級モデルとなるカセットこんろを発売し、新たな顧客層を開拓しました。
産業ガス・機械事業では、東南アジアでの需要が高まる冷媒について、タイ、インドネシアに充填工場の増設を行うと共に、回収・再生事業もあわせて開始し、事業規模の拡大を図りました。
マテリアル事業では、兵庫県を中心にステンレスの加工・販売を手掛ける太平工材株式会社と太平金属株式会社の株式を100%取得したことにより、国内でのステンレスの調達・販売に加え、加工事業を強化することで、顧客への提案力の向上を図りました。
当連結会計年度の経営成績については、売上高8,478億88百万円(前年度比583億72百万円の減収)、営業利益506億35百万円(同106億円の増益)、経常利益662億2百万円(同191億90百万円の増益)、親会社株主に帰属する当期純利益473億63百万円(同153億41百万円の増益)となりました。
セグメント別の経営成績は次のとおりです。
なお、当連結会計年度より、会社組織の変更に伴い、事業セグメントの区分方法の変更を行っており、当連結会計年度の比較・分析は、変更後の区分に基づいております。
①総合エネルギー事業
総合エネルギー事業は、LPガス輸入価格が前年度を下回り販売価格が低下したことに加え、大口顧客向けを中心にLPガスの販売が減少し、減収となりました。一方、利益面においては、LPガス小売部門での収益性改善や市況要因がプラス(前年度比38億94百万円の増益)となり、またカセットガスやガス保安機器の販売が堅調に推移したことで、増益となりました。
この結果、当事業分野の売上高は3,571億33百万円(前年度比360億85百万円の減収)、営業利益は201億73百万円(同58億71百万円の増益)となりました。
②産業ガス・機械事業
産業ガス・機械事業は、エアセパレートガス及び水素ガスについては、半導体、電子部品業界向けを中心に販売数量が減少しましたが、製造コストの圧縮に努めたことにより収益性は改善しました。特殊ガスについては、ヘリウムガス及び炭酸ガスの安定供給に努めました。機械設備は、パワー半導体向け設備やガス供給設備の販売が好調に推移しました。
この結果、当事業分野の売上高は2,621億69百万円(前年度比217億66百万円の増収)、営業利益は217億5百万円(同51億44百万円の増益)となりました。

③マテリアル事業
マテリアル事業は、飲料ボトル向けPET樹脂やバイオマス燃料、スマートフォン向け機能性フィルムが好調に推移したことに加え、ステンレスが堅調に推移しました。ミネラルサンドは、海外の自社鉱区での生産・販売は好調に推移しましたが、国内では需要低下に伴い販売が減少しました。また、次世代自動車向け二次電池材料は、市況下落や販売先での在庫調整の影響等により販売が低迷しました。
この結果、当事業分野の売上高は1,982億43百万円(前年度比441億86百万円の減収)、営業利益は123億5百万円(同2億98百万円の減益)となりました。
④その他
売上高は303億41百万円(前年度比1億32百万円の増収)、営業利益は27億76百万円(同7億81百万円の増益)となりました。
(2) 財政状態の状況
①総資産
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末と比べ1,783億87百万円増加の8,343億91百万円となりました。これは、コスモエネルギーホールディングス株式の追加取得等により投資有価証券が1,397億37百万円、設備投資等の拡大により有形固定資産が179億69百万円それぞれ増加したこと等によるものです。
②負債
当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末と比べ1,176億87百万円増加の4,614億61百万円となりました。これは、コスモエネルギーホールディングス株式の追加取得等に伴い短期借入金が1,034億14百万円、サステナビリティボンドの発行により社債が100億円それぞれ増加したこと等によるものです。
なお、当連結会計年度末のリース債務等を含めた有利子負債額は、前連結会計年度末と比べ1,150億67百万円増加の2,545億21百万円となりました。
③純資産
当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末と比べ606億99百万円増加の3,729億30百万円となりました。これは、利益剰余金が418億93百万円、その他有価証券評価差額金が132億27百万円、為替換算調整勘定が24億37百万円それぞれ増加したこと等によるものです。
(3) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末と比べ3億58百万円増加の336億14百万円となりました。
①営業活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度と比べ収入が33億83百万円増加したことにより548億54百万円の収入となりました。
これは主に、税金等調整前当期純利益672億10百万円、減価償却費260億32百万円等による資金の増加と、法人税等の支払額147億45百万円、仕入債務の減少額137億55百万円、持分法による投資損益101億5百万円等による資金の減少によるものです。
②投資活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度と比べ支出が1,009億80百万円増加したことにより1,612億66百万円の支出となりました。
これは主に、投資有価証券の取得1,122億88百万円、有形固定資産の取得344億53百万円等による資金の減少によるものです。
③財務活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度と比べ収入が944億円増加したことにより1,054億33百万円の収入となりました。
これは主に、借入金の純増加額1,035億33百万円、社債の発行による収入100億円等による資金の増加と、配当金の支払額54億58百万円等による資金の減少によるものです。
(4) 生産、受注及び販売の実績
当社グループの事業形態は主に商品の仕入による販売を主要業務としているため、生産実績及び受注状況に代えて仕入実績を記載しております。
①仕入実績
当連結会計年度における外部からのセグメントごとの仕入実績(役務原価等を含む)は次のとおりであります。
セグメントの名称金額(百万円)前年度比(%)
総合エネルギー事業236,240△15.4
産業ガス・機械事業183,4106.0
マテリアル事業166,397△23.4
その他37,217△0.2
合計623,266△11.8

②販売実績
当連結会計年度における外部顧客へのセグメントごとの販売実績(役務収益等を含む)は次のとおりであります。
セグメントの名称金額(百万円)前年度比(%)
総合エネルギー事業357,133△9.2
産業ガス・機械事業262,1699.1
マテリアル事業198,243△18.2
その他30,3410.4
合計847,888△6.4

(注) 販売実績が総販売実績の100分の10以上を占める相手先はありません。
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いております。なお、見積り及び判断・評価については、過去の実績や状況に応じて合理的と考えられる要因等に基づいて行っておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は異なる場合があります。連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
(2) 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
①経営成績の分析
(a) 売上高及び売上総利益
売上高は、前連結会計年度と比べ6.4%減収の8,478億88百万円となりました。これは主に、LPガス輸入価格が低位に推移したことや二次電池材料の市況下落や販売低調等の影響によるもので、詳細は「(経営成績等の状況の概要) (1)経営成績の状況」のセグメント別の経営成績をご参照ください。
売上総利益は、LPガス市況要因がプラスに転じたことや、LPガスの小売分野における収益性改善に加え、産業ガス・機械事業が製造コスト上昇への対応を進めたこと等により、前連結会計年度と比べ7.8%増益の2,294億75百万円となりました。
(b) 営業利益
販売費及び一般管理費は、前連結会計年度と比べ3.4%増加の1,788億39百万円となりました。これは主に、人件費や投資拡大による減価償却費等の増加によるものです。この結果、営業利益は、前連結会計年度と比べ26.5%増益の506億35百万円となりました。
(c) 経常利益
営業外損益は、155億67百万円の収益(純額)となり、前連結会計年度の69億76百万円の収益(純額)と比べ85億90百万円増加しました。これは主に、コスモエネルギーホールディングス株式会社の持分法適用に伴う負ののれん相当額の発生により持分法による投資利益が増加したこと等によるものです。
この結果、経常利益は、前連結会計年度と比べ40.8%増益の662億2百万円となりました。
(d) 親会社株主に帰属する当期純利益
特別損益は、10億8百万円の収益(純額)となり、前連結会計年度の3億10百万円の収益(純額)と比べ 6億97百万円の増益要因となりました。これは主に、投資有価証券売却益が増加したこと等によるものです。
以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度と比べ47.9%増益の473億63百万円となり、 1株当たりの当期純利益は、前連結会計年度の556.69円に対し823.31円となりました。
当社は、中期経営計画「PLAN27」において、最終年度の2028年3月期に、営業利益650億円、ROE10%以上、ROIC6%以上を目標としております。前連結会計年度及び当連結会計年度、PLAN27最終年度目標の営業利益、ROE、ROICは次のとおりであります。
(PLAN27との比較)
項目第80期実績第81期実績PLAN27
最終年度目標
営業利益(億円)400506650
ROE11.2%14.3%10%以上
ROIC6.8%6.7%6%以上

(第81期業績予想との比較)
項目第80期実績第81期実績第81期業績予想(注)
売上高(億円)9,0628,4789,070
営業利益(億円)400506450
経常利益(億円)470662503
親会社株主に帰属する
当期純利益(億円)
320473335

(LPガス輸入価格変動要因(市況要因)を除いた営業利益)
項目第80期実績第81期実績第81期業績予想(注)
営業利益(億円)400506450
市況要因(億円)△317-
市況要因を除く
営業利益(億円)
431498450

(注) 第81期業績予想は、2023年5月15日に公表した数値を表示しております。
第81期(2024年3月期)実績は、LPガスの小売分野における収益性改善に加え、産業ガス・機械事業が前期から製造コスト上昇への対応を進めたこと等により、営業利益は506億円、ROEは14.3%、ROICは6.7%となりました。
今後につきましては、引き続き重点施策に基づいた戦略を実行し、PLAN27の経営数値目標である営業利益650億円、ROE10%以上、ROIC6%以上の達成を図ります。
②資本の財源及び資金の流動性についての分析
キャッシュ・フローの状況については、「(経営成績等の状況の概要) (3)キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
(a) 資金需要
当社グループの事業活動における運転資金の主なものは、商品の仕入、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資、M&Aによる株式取得のためのものであります。当社グループにおいては、安心・安全を支えるインフラ整備については事業全体の収益を考慮して、将来の成長投資については資本コスト等を考慮して多角的かつ慎重に投資判断を行う方針であります。
(b) 財務政策
当社グループは、財務の健全性を保ちつつ、安定的に営業活動によるキャッシュ・フローを生み出すことで、事業運営上必要な資本の財源及び資金の流動性を確保することを基本方針としております。短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入、コマーシャル・ペーパー(CP)により調達を行っております。設備投資や長期運転資金は、自己資金並びに金融機関からの長期借入、社債の発行等により調達を行っております。また、グループ内資金の効率化を目的として、グループ会社間で貸付等を行っております。
社債については、2021年12月のグリーンボンド、2022年9月の普通社債に引き続き、2024年1月に「CO2フリー水素サプライチェーン構築」、「地域社会を支えるインフラ・サービスの提供」に係る設備投資資金、投融資資金及び当該資金の調達のために借り入れた借入金の返済資金への充当を資金使途とする、サステナビリティボンド100億円(期間7年・10年、各50億円)を発行いたしました。株式会社日本格付研究所(JCR)より、債券格付「A+」を取得しており、CP発行に必要な国内CP格付についても、「A+」に対応する「J-1」を取得しております。引き続き、水素エネルギー社会並びに脱炭素社会の実現に取り組むとともに、地域社会を支えるインフラ・サービスの提供を進めてまいります。
なお、当連結会計年度末のリース債務等を含めた有利子負債額は、前連結会計年度末と比べ1,150億67百万円増加の2,545億21百万円となりました。これは主に、コスモエネルギーホールディングス株式の追加取得に伴い短期借入金が増加したこと等によるものです。