有価証券報告書-第70期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/23 13:07
【資料】
PDFをみる
【項目】
139項目
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財務状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財務状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、企業収益や雇用情勢の改善を背景に緩やかな回復基調で推移しておりましたが、米中貿易摩擦や英国のEU離脱などの世界情勢における地政学的リスクの高まりや、国内各地で相次いだ自然災害の影響に加え、直近での新型コロナウイルス感染症の拡大が国内外の経済活動への甚大な影響を及ぼしており、先行き不透明な状況は一段と高まっております。食品流通業界におきましても、2019年10月に実施された消費税増税による消費マインドへの影響や業種・業態の垣根を越えた競争激化、物流関連コストの上昇など厳しい経営環境が続いており、加えて新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、今後の見通しが困難な状況となっております。
このような状況下、当社グループは当期を最終年度とする中期経営計画「変革2019 ~日本の中のマルイチを目指して~」の目標達成に向け、「成長戦略」「事業構造改革」「人の成長」をキーワードに戦略課題を推進いたしました。なかでも「事業構造改革」につきましては、基幹システムの刷新に向けたプロジェクトを推進するなど経営基盤の再整備と、それによる生産性の向上を目標に全社を挙げて取り組みました。
この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
a.財政状態
(資産合計)
当連結会計年度末における総資産は512億82百万円となり、前連結会計年度末と比較して61億10百万円の減少となりました。主な要因は、現金及び預金が12億59百万円、受取手形及び売掛金が41億10百万円減少したことによります。
(負債合計)
負債は292億81百万円となり、前連結会計年度末と比較して67億60百万円の減少となりました。主な要因は、支払手形及び買掛金が58億49百万円減少したことによります。
(純資産合計)
純資産合計は220億1百万円となり、前連結会計年度末と比較して6億49百万円の増加となりました。
以上の結果、自己資本比率は42.0%となりました。
b.経営成績
(売上高)
当連結会計年度における売上高は漁業生産者との協業による養殖ブリや、畜産品の販売が好調に推移したことなどから、売上高は2,307億22百万円(前期比2.3%増)となりました。2019年5月14日に開示しております連結業績予想における売上高目標2,340億円に対しては1.4%の未達となりました。なお、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う売上高への影響は、内食需要の拡大により小売店への販売が増加し、一方で外食及び観光等の業務用顧客への販売が苦戦しましたが、当社グループ全体に与えた影響は軽微であります。
中期経営計画「変革2019」に対しては、2017年4月に実施した㈱丸水長野県水への資本参加が増収に寄与しましたが、計画策定段階で想定した事業エリア拡大等の施策について、事業環境等を鑑みて実施時期を見直し、また事業構造改革の推進を優先したこともあり、目標の2,600億円には未達となりました。
(利益面)
売上高の拡大に伴う売上総利益の増加に加え、構内物流の効率化による生産性向上を進めたことなどにより、営業利益は18億80百万円(前期比6.0%増)、経常利益は23億77百万円(同1.7%増)となりました。連結業績予想に対しては売上高が目標未達となったことから、営業利益目標19億円に対して1.0%の未達、経常利益目標24億円に対して0.9%の未達となりました。
親会社株主に帰属する当期純利益につきましては、基盤商圏であります長野県の水産流通の中長期的な発展を視野に資産の見直しを実施し、固定資産の減損損失を計上したことから13億3百万円(前期比9.8%増)となり、連結業績予想15億円に対しては13.1%の未達となりました。なお、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う利益面への影響は、売上高同様に軽微であります。
中期経営計画「変革2019」に対しては、経常利益目標26億円以上、親会社株主に帰属する当期純利益目標14億円以上に対し、売上高の未達による影響はあるものの、当社グループ内でのシナジー効果や、生産性の向上等により当初の目標を概ね達成したと評価しております。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
※ 各セグメントの売上高については、セグメント間の内部売上高を除いて記載しております。
(水産事業)
水産事業につきましては、サンマをはじめとする国内天然魚の水揚げ量減少や仕入価格の上昇傾向が継続する中、水産部門では国産天然魚、養殖魚、マグロ、鮭鱒を中心に調達・販売機能のさらなる強化と、漁業生産者との協業を軸とした全国への販売体制構築を図りました。具体的には、稚魚・飼料供給から販売までの過程に一貫して関与する養殖魚インテグレーションの規模拡大による養殖ブリの販売拡大などを進めた結果、養殖ブリの売上拡大へ繋がりました。デイリー部門では自社開発商品の販路拡大と主要取組み先向けの商品開発を基軸に販売エリアの拡大と物流基盤の強化等を進め、売上を拡大しました。フードサービス部門では「素材から惣菜化」の具現化を担うべく当社グループの原料調達力を活かした惣菜マーケット向け商品開発を推進し、様々な業種・業態へ販売を拡大しました。
以上の結果、業績につきましては、売上高は1,351億4百万円(前期比1.2%増)、営業利益は構内物流業務の改善等に継続して取り組んだものの、国産天然魚の水揚げ量減少の影響と物流関連コストの上昇により6億10百万円(同29.5%減)となりました。
財政状態につきましては、セグメント資産は227億94百万円となり、前連結会計年度末に比べ27億3百万円の減少となりました。セグメント負債は126億65百万円となり、前連結会計年度末に比べ36億74百万円の減少となりました。
(一般食品事業)
一般食品事業につきましては、原材料費の高騰や物流コストの増加等を背景とした商品の値上げや、小売店頭での価格競争が激化する中、販促提案機能を活かした長野県内マーケットの深耕化と、隣接県への事業エリア拡大を進めました。また、当社の水産品の調達力を活かしたオリジナル商品の開発を強化するなど、付加価値のある自社商品を基軸に全国への販路拡大を図りました。コスト競争力の強化に向けましては、長野支店物流センターの移転を契機に調達・配荷物流体制の再構築による事業基盤強化に取り組み、物流効率と生産性の向上を図りました。
以上の結果、業績につきましては、売上高は294億6百万円(前期比0.2%増)、営業利益は仕入先との取組み強化による収益力の向上や、構内物流業務の生産性向上に向けた改善活動により2億10百万円(同0.5%増)となりました。
財政状態につきましては、セグメント資産は78億21百万円となり、前連結会計年度末に比べ7億62百万円の減少となりました。セグメント負債は51億1百万円となり、前連結会計年度末に比べ13億9百万円の減少となりました。
(畜産事業)
畜産事業につきましては、国産牛肉の枝肉価格が総じて高値推移し、国産豚肉がCSF(豚熱)発生による調達及び販売面への影響が懸念される中、調達面における国産牛肉・国産豚肉の収益安定化と国産鶏肉の集荷強化や、「りんご和牛信州牛」「信州白樺若牛」「信州米豚」等の長野県産オリジナル商品の生産と販売の強化を推進しました。商品加工面では長野県内と首都圏の流通加工機能の強化を図りました。販売面では商品調達力と加工機能を活かし、関東・東海・中京エリアへの販売拡大などを進めました。
以上の結果、業績につきましては、売上高は346億17百万円(前期比6.1%増)となりました。営業利益は販売拡大に伴う販売運賃等が増加したものの、売上拡大により売上総利益が増加したことから5億3百万円(同6.7%増)となりました。
財政状態につきましては、セグメント資産は68億8百万円となり、前連結会計年度末に比べ2億70百万円の減少となりました。セグメント負債は38億5百万円となり、前連結会計年度末に比べ4億95百万円の減少となりました。
(丸水長野県水グループ)
丸水長野県水グループセグメントにつきましては、事業エリアであります長野県内において、水産事業では商物分離による営業力強化と惣菜・業務用マーケットへの販路拡大、畜産事業では主要顧客との取組み強化による安定した収益構造の構築、冷食事業ではグループシナジーの追求による県内市販用冷食マーケットのシェア拡大などを推進しました。
以上の結果、業績につきましては、売上高は303億79百万円(前期比5.2%増)、営業利益は売上高の増加に伴う売上総利益の増加等により5億6百万円(同219.0%増)となりました。
財政状態につきましては、セグメント資産は56億43百万円となり、前連結会計年度末に比べ7億62百万円の減少となりました。セグメント負債は44億80百万円となり、前連結会計年度末に比べ11億26百万円の減少となりました。
(その他(物流・冷蔵倉庫事業、OA機器・通信機器販売及び保険代理店事業))
子会社マルイチ・ロジスティクス・サービス㈱は、当社グループの物流業務・冷蔵倉庫事業の品質向上とローコスト体制の構築をグループ内の各事業と連携しながら推進いたしました。
以上の結果、業績につきましては、売上高は12億14百万円(前期比8.2%減)、営業利益は47百万円(同28.2%減)となりました。
財政状態につきましては、セグメント資産は11億71百万円となり、前連結会計年度末に比べ3億36百万円の減少となりました。セグメント負債は5億24百万円となり、前連結会計年度末に比べ63百万円の減少となりました。
c.経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標
当社グループの経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、「1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載しております。また、売上高、営業利益及び経常利益については「b.経営成績」に記載しております。
ROEについては、親会社株主に帰属する当期純利益が前期比で9.8%増となったことから6.1%(前期は5.6%)となりました。
(注)上記の記載金額及びこれ以降に記載しております売上高、仕入高等には消費税等は含まれておりません。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という)の残高は88億4百万円となり、前連結会計年度末と比較して12億48百万円の減少となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況と、それらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果減少した資金は2億12百万円となりました(前連結会計年度に増加した資金は14億40百万円)。これは主に、税金等調整前当期純利益が22億24百万円、減価償却費が6億14百万円となり、売上債権・たな卸資産・仕入債務からなる運転資金が18億88百万円減少したことによります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果減少した資金は8百万円となりました(前連結会計年度に減少した資金は2億26百万円)。これは主に、有形固定資産の売却による収入が7億58百万円となる一方で、有形固定資産の取得による支出が4億40百万円、無形固定資産の取得による支出が2億93百万円となったことによります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果減少した資金は10億27百万円となりました(前連結会計年度に減少した資金は24億14百万円)。これは主に、短期借入金の減少額が58百万円、長期借入金の返済による支出が3億70百万円、リース債務の返済による支出が2億12百万円、配当金の支払額が3億31百万円となったことによります。
③生産、受注及び販売の実績
当社グループは、食品卸売事業の補完機能として製造加工業務を行っており、生産実績は仕入実績に含めて記載しております。なお、受注生産は行っておりません。
(1) 仕入実績
当連結会計年度の仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2019年4月1日
至 2020年3月31日)
前年同期比(%)
水産事業(百万円)119,510101.4
一般食品事業(百万円)25,85099.1
畜産事業(百万円)32,341106.4
丸水長野県水グループ(百万円)23,894105.0
報告セグメント計(百万円)201,596102.3
その他(百万円)4,31999.5
合計(百万円)205,916102.2

(2) 販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2019年4月1日
至 2020年3月31日)
前年同期比(%)
水産事業(百万円)135,104101.2
一般食品事業(百万円)29,406100.2
畜産事業(百万円)34,617106.1
丸水長野県水グループ(百万円)30,379105.2
報告セグメント計(百万円)229,507102.3
その他(百万円)1,21491.8
合計(百万円)230,722102.3

(注)1.販売実績に対して10%以上に該当する販売先はありません。
2.セグメント間の取引については相殺消去しております。
3.各事業の主な内容
水産事業…水産物、水産加工品、日配品及び冷凍食品の販売事業
一般食品事業…一般のドライ食品、一般加工食品及び菓子の販売事業
畜産事業…畜産物及び畜産加工品の販売事業
丸水長野県水グループ…長野県内エリアを中心とする食品卸売事業
その他…物流・冷蔵倉庫事業、OA機器・通信機器販売・保険の代理店事業
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容につきましては「(1) 経営成績等の状況の概要 ①財務状態及び経営成績の状況」に記載しております。
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては「2 事業等のリスク」に記載しております。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容及び資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、以下のとおりであります。
(資金需要)
当社グループの事業活動における資金需要の主なものは、商品・原材料の購入費、及び販売運賃・人件費等の営業費用によるものであります。なお、設備の新設等の計画に関する内容につきましては、「3 設備の新説、除却等の計画」に記載しております。
(財務政策)
当社グループでは、事業活動の維持拡大に必要な資金を安定的に確保するため、営業キャッシュ・フローで獲得した内部資金の活用及び金融機関からの借入等により資金調達を行っております。
長期借入金等の長期資金の調達については、事業計画に基づく資金需要、金利動向等の調達環境、既存借入金の償還時期等を考慮の上、調達規模、調達手段を適宜判断して実施していくこととしております。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されており、その作成過程においては経営者による会計上の見積り及び仮定を含んでおります。これらの見積り及び仮定は、過去の実績及び決算日において合理的であると考えられる様々な要因等を勘案した経営者の最善の判断に基づいております。しかし、その性質上、将来において、これらの見積り及び仮定とは異なる結果となる可能性があります。会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、当社グループの経営成績に重要な影響を与える項目は、以下のとおりです。
なお、現時点で新型コロナウイルス感染症の収束時期などを想定することは困難であるものの、当社グループの売上高に影響を及ぼす一般消費者の食品の消費量、物流の状況及び商品の仕入状況等の情報に基づき検討した結果、同感染症による今後の当社グループの業績には大きな影響を及ぼさないとの仮定により当連結会計年度(2020年3月期)の会計上の見積りを行っております。
(固定資産の減損処理)
当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定に当たっては慎重に検討しておりますが、事業計画や市場環境の変化により、その見積り額の前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、減損処理が必要となる可能性があります。