有価証券報告書-第16期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社および持分法適用会社)の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要については次のとおりであります。なお、経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容については、各項目に含めて記載しております。
連結財務諸表の作成に際しての重要な会計方針および見積りについては、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいており、決算日における資産・負債の報告数値および報告期間における収益・費用の報告数値に影響を与える事項について、過去の実績や状況に応じ合理的と考えられる様々な要因に基づき見積りおよび判断を行い、それらについて継続して評価を行っております。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 経営成績
当連結会計年度(2018年4月1日~2019年3月31日)におけるわが国の経済は、第4四半期に入り輸出や生産の一部に弱さがみられるものの、年間を通しては、個人消費の持ち直しや設備投資の増加により景気は緩やかに回復しております。
当社グループは、当連結会計年度を最終年度とする3か年の中期経営計画「16-18中期経営計画 明日への躍進」(以下、「16-18 中計」という。)におけるグループ経営方針(Challenge 3)に掲げた「グループ一体となった事業強化」「健康・医療関連領域の拡充」「環境変化に先駆けた事業モデルの変革」の実現に向けて取り組んでまいりました。
当連結会計年度における当社グループの業績は、売上高2兆6,405億11百万円(前期比1.4%増)、営業利益447億70百万円(同7.2%増)、経常利益551億25百万円(同6.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益416億99百万円(同17.2%増)となりました。
また、2018年5月14日から8月14日までの間に株主還元および資本効率の向上を目的に、自己株式5百万株を133億34百万円で取得いたしました。
① セグメント別の業績
(A) 医療用医薬品等卸売事業
医療用医薬品等卸売事業におきましては、厚生労働省より公表され2018年4月からスタートした「医療用医薬品の流通改善に向けて流通関係者が遵守すべきガイドライン」の遵守を最重要課題として、「経済合理性に立った取引の推進」「単品単価契約の推進」「早期妥結の推進」に取り組みました。
また、当社グループは医療用医薬品NO.1卸として「16-18中計」の重点施策として掲げた「営業機能の改革・物流機能の改革」の推進や「グループ全体最適」の追求により、事業基盤のさらなる強化を進めました。
「営業機能の改革」としては、今後の地域包括ケアシステムへの対応やお得意先における様々な課題・ニーズの解決に向けて、MS(マーケティング・スペシャリスト)が提案型営業活動を実践していくために医療経営士の認定資格取得に取り組みました。当社グループでは、医療経営士を医療と介護、生活者を繋ぎ地域の連携を推進する重要な人財と位置付けております。
また、スペシャリティ医薬品の販売・流通の拡大に向け、グループ会社であるエス・エム・ディ株式会社(本社:東京都千代田区)を活用して一元流通の積極的な展開を図りました。
「物流機能の改革」への取り組みとしては、当社の連結子会社であるアルフレッサ株式会社(本社:東京都千代田区、以下「アルフレッサ」という。)が、九州各地への医薬品の安定供給体制構築のため、福岡県久留米市にPIC/S GDP※1を想定した設備やRFID※2を活用した高機能な物流センター「福岡物流センター」を2018年10月に竣工しました。同社は、厳格な温度管理が求められるPIC/S GDPに対応した保冷品の輸配送ツールである専用保冷庫、専用コンテナの開発も行いました。
再生医療等製品への取り組みでは、アルフレッサが2018年8月、再生医療等製品の保管・輸送拠点として、産官学参加の国家的な戦略特区の一部である神奈川県川崎市川崎区殿町の「ライフイノベーションセンター」に入居する、三菱倉庫株式会社(本社:東京都中央区)の敷地内に「殿町再生医療流通ステーション」を設置しました。両社は、メーカー物流等の物流インフラの共同化・効率化や、今後の市場拡大が見込まれる再生医療等製品の物流等、次世代の流通を検討するための研究会も立ち上げました。
アルフレッサは、2019年3月にPHC株式会社(本社:東京都港区)および富士通エフ・アイ・ピー株式会社(本社:東京都港区)と特殊医薬品の流通管理のためのRFIDやクラウド等のIoT技術を活用した新たなプラットフォームの構築検討についての基本合意契約を締結いたしました。
また、アルフレッサは、株式会社ナビタイムジャパン(本社:東京都港区)と医薬品配送の生産性向上のためのシステム「saios(サイオス)」を共同開発し本格的な展開を始めました。アルフレッサの全配送専門職が携帯するスマートフォンをセンサー端末として活用し、最適な配送ルート構築や効率的な運行管理が可能となりました。
さらに、アルフレッサはヤマト運輸株式会社(本社:東京都中央区、以下「ヤマト運輸」という。)と、今後の医療提供体制への対応や労働力不足等の社会課題への対応を共同で検討するための「医薬品流通研究会」を立ち上げました。この共同研究では、アルフレッサが持つ医薬品流通ネットワークと、ヤマト運輸の宅急便ネットワークを結集するだけでなく、両社の経営リソースやノウハウを徹底活用することで、安心・安全で確実な新しい流通ネットワークをいち早く確立することを目指しています。
「グループ全体最適」への取り組みとしては、連結子会社間の事業譲渡、事業統合を進めました。2018年7月に株式会社恒和薬品(本社:福島県郡山市)は、北海道エリアにおける同社の医療用医薬品等卸売事業をアルフレッサへ事業譲渡したことに続き、2018年10月1日付けで株式会社小田島(本社:岩手県花巻市)との合併により事業を統合し、東北アルフレッサ株式会社(本社:福島県郡山市)が誕生いたしました。
また、当連結会計年度から四国エリアを営業基盤とする子会社アルフレッサ篠原化学株式会社(本社:高知県高知市)が連結子会社に加わりました。
当連結会計年度における医療用医薬品市場は、2018年4月に平均7.5%の薬価引き下げがあったものの、C型肝炎治療薬や抗悪性腫瘍薬の需要拡大等により、全体として市場は前年同期比ゼロ成長となりました(クレコンリサーチ&コンサルティング株式会社推定)。
当セグメントの業績は、これらにより、売上高2兆3,271億99百万円(前期比1.5%増)、営業利益402億68百万円(同14.1%増)となりました。なお、売上高には、セグメント間の内部売上高158億86百万円(同11.6%増)を含んでおります。
※1 PIC/S GDP(The Pharmaceutical Inspection Convention and Pharmaceutical Inspection Co-operation Scheme Good Distribution Practice)とは、医薬品の流通過程における温度管理、衛生管理、各種手順書等の作成等に関する国際基準をいう。
※2 RFID(Radio Frequency IDentification)とは、無線を利用して非接触で電子タグのデータを読み書きする自動認識技術をいう。
(B) セルフメディケーション卸売事業
セルフメディケーション卸売事業におきましては、「16-18中計」の重点施策として掲げた「さらなる事業基盤の強化」「付加価値営業の強化」に引き続き取り組みました。
当社の連結子会社であるアルフレッサ ヘルスケア株式会社(本社:東京都中央区)は、2018年11月に中華民国(台湾)において小売店舗を展開するお得意様の販促活動のサポート、同社の専売商品・専売メーカー商品の販売促進活動を行うため、台北市に駐在事務所を開設いたしました。
当セグメントの業績は、専売商品・専売メーカー商品の販売強化やサプリメント・健康食品および一般用医薬品等の販売増加により売上高2,650億72百万円(前期比1.6%増)、営業利益27億12百万円(同3.3%増)となりました。なお、売上高には、セグメント間の内部売上高15億78百万円(同3.1%増)を含んでおります。
(C) 医薬品等製造事業
医薬品等製造事業におきましては、「16-18中計」の重点施策として掲げた「安心・安全・誠実なモノづくりの推進」「製造受託・医薬品原薬事業の推進」「製品ラインアップの拡充と販売力強化」「海外事業の拡充」に引き続き取り組みました。
「製品ラインアップの拡充と販売力強化」への取り組みとして、連結子会社であるアルフレッサ ファーマ株式会社(本社:大阪市中央区)は、第一三共株式会社(本社:東京都中央区)および同社の子会社である第一三共エスファ株式会社(本社:東京都中央区)が日本において製造販売を行っている長期収載品41製品の製造販売承認および資産等を譲り受ける契約を2018年7月に締結し、2019年3月より一部製品について製造販売を開始いたしました。
また、「海外事業の拡充」への取り組みとして、2019年3月にアルフレッサ ファーマ株式会社は上海復星長征医学科学有限公司(本社:中華人民共和国上海市)と中国における便検査装置および試薬製品の供給契約を締結いたしました。
当セグメントの業績は、2018年4月の薬価改定や医薬品原薬の販売減少、季節性疾患の減少等の影響により、売上高407億44百万円(前期比2.6%減)、営業利益15億59百万円(同44.9%減)となりました。なお、売上高には、セグメント間の内部売上高98億50百万円(同0.4%増)を含んでおります。
(D) 医療関連事業
医療関連事業におきましては、「16-18中計」の重点施策として掲げた「収益力の向上」「業態変化への取り組み」に引き続き取り組みました。
当セグメントの業績は、調剤報酬の加算獲得への積極的な取り組みや当社の連結子会社である株式会社日本アポック(本社:埼玉県川越市)が株式会社ユースケア(本社:東京都千代田区)を2017年10月に合併したことなどによる増収効果はあったものの、2018年4月の診療報酬改定等の影響により、売上高348億11百万円(前期比2.6%増)、営業利益2億95百万円(同66.4%減)となりました。
また、当社は「海外事業の拡充」への取り組みとして、2019年3月に中国の医薬品卸売大手である華潤医薬商業集団有限公司(本社:中華人民共和国北京市)との間で、包括的な戦略的業務提携に関する合意書を締結し、中国の医薬品流通市場における院内サプライチェーン管理や新たな薬局ビジネスモデルの構築、日中の商品輸出入業務などについて、共同で事業の開発・実現に向けた協議を開始いたしました。
2019年3月期を最終年度とする中期経営計画「16-18中期経営計画 明日への躍進」で発表した経営指標目標の達成状況については次のとおりであります。
② 生産、受注及び販売の実績
(A) 生産実績及び受注実績
当社グループの生産実績および受注実績は、金額的重要性が乏しいため、記載を省略しております。
(B) 仕入実績
(注)1.金額は実際の仕入額によっており、消費税抜きで表示しております。
2.セグメント間の内部仕入高は271億27百万円(前期比106.8%)であり、上記金額に含めております。
(C) 販売実績
仕入実績と販売実績の差額は僅少であるため、記載を省略しております。
(2) 財政状態
当連結会計年度末における当社グループの総資産は、前期末比44億88百万円増加し、1兆3,419億39百万円となりました。
流動資産は、162億36百万円増加し、1兆367億84百万円となりました。これは主として、増収増益に伴い「現金及び預金」が144億25百万円増加ならびに「未収入金」が38億22百万円増加したことによるものです。
固定資産は、117億47百万円減少し、3,051億54百万円となりました。これは主として、アルフレッサ株式会社の福岡物流センター等の設備投資などに伴い「建物及び構築物(純額)」等の有形固定資産が46億41百万円増加およびアルフレッサ ファーマ株式会社の長期収載品41製品の製造販売承認等の取得などに伴い「のれん」等の無形固定資産が52億88百万円増加した一方で、株式の売却および株式時価の下落に伴い「投資有価証券」等の投資その他の資産が216億77百万円減少したことによるものです。なお、のれんの増加額には「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 企業結合等関係」に記載のとおり、暫定的に算定された金額を含んでおります。
セグメント別の総資産は、以下のとおりであります。
医療用医薬品等卸売事業のセグメント資産は、当連結会計年度からアルフレッサ篠原化学株式会社を連結子会社としたこともあり、前期末比143億16百万円増加し、1兆1,550億6百万円となりました。これは主として、増収増益に伴い「現金及び預金」および「受取手形及び売掛金」等の金銭債権が増加ならびに福岡物流センター等の設備投資に伴い有形固定資産が増加した一方で、株式の売却および株式時価の下落に伴い「投資有価証券」が減少したことによるものです。
セルフメディケーション卸売事業のセグメント資産は、21億64百万円減少し、926億64百万円となりました。これは主として、増収に伴い「受取手形及び売掛金」が増加および設備更新に伴い有形固定資産が増加した一方で、株式の売却および株式時価の下落に伴い「投資有価証券」が減少したことによるものです。
医薬品等製造事業のセグメント資産は、111億26百万円増加し、628億54百万円となりました。これは主として、機械装置等の製造設備を取得したことに伴い有形固定資産が増加および長期収載品41製品の製造販売承認等の取得に伴い「のれん」が増加したことによるものです。なお、「のれん」の増加額は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 企業結合等関係」に記載のとおり、暫定的に算定された金額であります。
医療関連事業のセグメント資産は、3億76百万円減少し、195億83百万円となりました。これは主として、店舗の増加および業務効率化のための調剤設備の取得ならびにシステム機器の更新により「工具器具及び備品」等の有形固定資産が増加した一方で、「現金及び預金」および「受取手形及び売掛金」が減少したことによるものです。
当連結会計年度末における当社グループの負債は、前期末比16億33百万円減少し、8,998億83百万円となりました。
流動負債は、56億76百万円増加し、8,599億11百万円となりました。これは主として、仕入高の増加に伴い「支払手形及び買掛金」が28億57百万円増加および増益に伴い「未払法人税等」が21億84百万円増加したことによるものです。
固定負債は、73億9百万円減少し、399億71百万円となりました。これは主として、売却による保有株式の減少および株式時価が下落したことでその他有価証券評価差額金が減少したこと等により「繰延税金負債」が63億61百万円減少および年金資産の増加に伴い「退職給付に係る負債」が11億51百万円減少したことによるものです。
結果として、当連結会計年度末における当社グループの純資産は、61億22百万円増加し、4,420億56百万円となりました。これは主として、「利益剰余金」が311億12百万円増加した一方で、株主還元の一環とした自己株式の取得に伴い「自己株式」が133億40百万円増加および保有株式の減少および株式時価の下落に伴い「その他有価証券評価差額金」が125億57百万円減少したことによるものです。
(3) キャッシュ・フロー
当連結会計年度末における当社グループの現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前期末比94億91百万円増加し、2,050億85百万円となりました。当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況は、前連結会計年度と比較して以下のとおりであります。
営業活動によるキャッシュ・フローは、468億80百万円の増加(前期は475億75百万円の増加)となりました。これは主として、増益により「法人税等の支払額」が増加したため、前期に比べてキャッシュ・イン・フローは6億95百万円減少しております。
投資活動によるキャッシュ・フローは、129億47百万円の減少(前期は101億54百万円の減少)となりました。これは主として、物流センター建設等の物流設備投資および受託製造事業強化のための製造設備投資などの有形固定資産の取得支出112億2百万円や製品ラインアップの拡充となる長期収載品41製品の製造販売承認等を譲り受けたことに伴う支出104億1百万円があった一方で、保有株式の縮減を目的とした投資有価証券の売却収入85億24百万円があったことにより、前期に比べてキャッシュ・アウト・フローは27億93百万円増加しております。
財務活動によるキャッシュ・フローは、248億60百万円の減少(前期は98億65百万円の減少)となりました。これは主として、利益還元の充実を図るため、前期に比べ11億79百万円(1株当たり6円)増配となる94億13百万円の剰余金の配当を実施、また株主還元の一環として自己株式133億40百万円を取得したことにより前期に比べてキャッシュ・アウト・フローは149億94百万円増加しております。
当社グループの資本の財源および資金の流動性は次のとおりであります。
<資本の財源>アルフレッサグループは、日本の社会インフラである医薬品サプライチェーンを製造、卸売、調剤薬局等の各事業領域で支え、必要な時に、必要な医薬品を、必要な場所へ、安定的に供給することに貢献しております。
社会的責任の遂行と持続的な企業価値の向上には、財務の健全性、資本効率の向上、安定的・継続的な株主還元の最適バランスを追及し、さらなる企業価値を追求することが当社グループの財務戦略の基本となっております。
当連結会計年度末における純資産のうち当社の持分は、親会社株主に帰属する当期純利益の積み上がり、配当金の支払いや自己株式の取得、その他の包括利益額の増減により、前期末比61億30百万円増加し、4,408億98百万円となり、この結果、自己資本比率32.9%となりました。
また、株式会社格付投資情報センターの発行体格付は昨年から1ランクアップし「A+」を維持しております。
<資金の流動性>当連結会計年度末における「現金及び預金」残高2,063億円は、総資産の15.4%であります。ここには主力の医療用医薬品等卸売事業における売上債権回転期間と仕入債務回転期間の期間差から生じる現預金も含まれております。一方、有利子負債残高は67億55百万円となっております。
また、連結ベースの流動比率は120.6%となり、十分な流動性を確保しています。
連結財務諸表の作成に際しての重要な会計方針および見積りについては、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいており、決算日における資産・負債の報告数値および報告期間における収益・費用の報告数値に影響を与える事項について、過去の実績や状況に応じ合理的と考えられる様々な要因に基づき見積りおよび判断を行い、それらについて継続して評価を行っております。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 経営成績
当連結会計年度(2018年4月1日~2019年3月31日)におけるわが国の経済は、第4四半期に入り輸出や生産の一部に弱さがみられるものの、年間を通しては、個人消費の持ち直しや設備投資の増加により景気は緩やかに回復しております。
当社グループは、当連結会計年度を最終年度とする3か年の中期経営計画「16-18中期経営計画 明日への躍進」(以下、「16-18 中計」という。)におけるグループ経営方針(Challenge 3)に掲げた「グループ一体となった事業強化」「健康・医療関連領域の拡充」「環境変化に先駆けた事業モデルの変革」の実現に向けて取り組んでまいりました。
当連結会計年度における当社グループの業績は、売上高2兆6,405億11百万円(前期比1.4%増)、営業利益447億70百万円(同7.2%増)、経常利益551億25百万円(同6.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益416億99百万円(同17.2%増)となりました。
また、2018年5月14日から8月14日までの間に株主還元および資本効率の向上を目的に、自己株式5百万株を133億34百万円で取得いたしました。
① セグメント別の業績
(A) 医療用医薬品等卸売事業
医療用医薬品等卸売事業におきましては、厚生労働省より公表され2018年4月からスタートした「医療用医薬品の流通改善に向けて流通関係者が遵守すべきガイドライン」の遵守を最重要課題として、「経済合理性に立った取引の推進」「単品単価契約の推進」「早期妥結の推進」に取り組みました。
また、当社グループは医療用医薬品NO.1卸として「16-18中計」の重点施策として掲げた「営業機能の改革・物流機能の改革」の推進や「グループ全体最適」の追求により、事業基盤のさらなる強化を進めました。
「営業機能の改革」としては、今後の地域包括ケアシステムへの対応やお得意先における様々な課題・ニーズの解決に向けて、MS(マーケティング・スペシャリスト)が提案型営業活動を実践していくために医療経営士の認定資格取得に取り組みました。当社グループでは、医療経営士を医療と介護、生活者を繋ぎ地域の連携を推進する重要な人財と位置付けております。
また、スペシャリティ医薬品の販売・流通の拡大に向け、グループ会社であるエス・エム・ディ株式会社(本社:東京都千代田区)を活用して一元流通の積極的な展開を図りました。
「物流機能の改革」への取り組みとしては、当社の連結子会社であるアルフレッサ株式会社(本社:東京都千代田区、以下「アルフレッサ」という。)が、九州各地への医薬品の安定供給体制構築のため、福岡県久留米市にPIC/S GDP※1を想定した設備やRFID※2を活用した高機能な物流センター「福岡物流センター」を2018年10月に竣工しました。同社は、厳格な温度管理が求められるPIC/S GDPに対応した保冷品の輸配送ツールである専用保冷庫、専用コンテナの開発も行いました。
再生医療等製品への取り組みでは、アルフレッサが2018年8月、再生医療等製品の保管・輸送拠点として、産官学参加の国家的な戦略特区の一部である神奈川県川崎市川崎区殿町の「ライフイノベーションセンター」に入居する、三菱倉庫株式会社(本社:東京都中央区)の敷地内に「殿町再生医療流通ステーション」を設置しました。両社は、メーカー物流等の物流インフラの共同化・効率化や、今後の市場拡大が見込まれる再生医療等製品の物流等、次世代の流通を検討するための研究会も立ち上げました。
アルフレッサは、2019年3月にPHC株式会社(本社:東京都港区)および富士通エフ・アイ・ピー株式会社(本社:東京都港区)と特殊医薬品の流通管理のためのRFIDやクラウド等のIoT技術を活用した新たなプラットフォームの構築検討についての基本合意契約を締結いたしました。
また、アルフレッサは、株式会社ナビタイムジャパン(本社:東京都港区)と医薬品配送の生産性向上のためのシステム「saios(サイオス)」を共同開発し本格的な展開を始めました。アルフレッサの全配送専門職が携帯するスマートフォンをセンサー端末として活用し、最適な配送ルート構築や効率的な運行管理が可能となりました。
さらに、アルフレッサはヤマト運輸株式会社(本社:東京都中央区、以下「ヤマト運輸」という。)と、今後の医療提供体制への対応や労働力不足等の社会課題への対応を共同で検討するための「医薬品流通研究会」を立ち上げました。この共同研究では、アルフレッサが持つ医薬品流通ネットワークと、ヤマト運輸の宅急便ネットワークを結集するだけでなく、両社の経営リソースやノウハウを徹底活用することで、安心・安全で確実な新しい流通ネットワークをいち早く確立することを目指しています。
「グループ全体最適」への取り組みとしては、連結子会社間の事業譲渡、事業統合を進めました。2018年7月に株式会社恒和薬品(本社:福島県郡山市)は、北海道エリアにおける同社の医療用医薬品等卸売事業をアルフレッサへ事業譲渡したことに続き、2018年10月1日付けで株式会社小田島(本社:岩手県花巻市)との合併により事業を統合し、東北アルフレッサ株式会社(本社:福島県郡山市)が誕生いたしました。
また、当連結会計年度から四国エリアを営業基盤とする子会社アルフレッサ篠原化学株式会社(本社:高知県高知市)が連結子会社に加わりました。
当連結会計年度における医療用医薬品市場は、2018年4月に平均7.5%の薬価引き下げがあったものの、C型肝炎治療薬や抗悪性腫瘍薬の需要拡大等により、全体として市場は前年同期比ゼロ成長となりました(クレコンリサーチ&コンサルティング株式会社推定)。
当セグメントの業績は、これらにより、売上高2兆3,271億99百万円(前期比1.5%増)、営業利益402億68百万円(同14.1%増)となりました。なお、売上高には、セグメント間の内部売上高158億86百万円(同11.6%増)を含んでおります。
※1 PIC/S GDP(The Pharmaceutical Inspection Convention and Pharmaceutical Inspection Co-operation Scheme Good Distribution Practice)とは、医薬品の流通過程における温度管理、衛生管理、各種手順書等の作成等に関する国際基準をいう。
※2 RFID(Radio Frequency IDentification)とは、無線を利用して非接触で電子タグのデータを読み書きする自動認識技術をいう。
(B) セルフメディケーション卸売事業
セルフメディケーション卸売事業におきましては、「16-18中計」の重点施策として掲げた「さらなる事業基盤の強化」「付加価値営業の強化」に引き続き取り組みました。
当社の連結子会社であるアルフレッサ ヘルスケア株式会社(本社:東京都中央区)は、2018年11月に中華民国(台湾)において小売店舗を展開するお得意様の販促活動のサポート、同社の専売商品・専売メーカー商品の販売促進活動を行うため、台北市に駐在事務所を開設いたしました。
当セグメントの業績は、専売商品・専売メーカー商品の販売強化やサプリメント・健康食品および一般用医薬品等の販売増加により売上高2,650億72百万円(前期比1.6%増)、営業利益27億12百万円(同3.3%増)となりました。なお、売上高には、セグメント間の内部売上高15億78百万円(同3.1%増)を含んでおります。
(C) 医薬品等製造事業
医薬品等製造事業におきましては、「16-18中計」の重点施策として掲げた「安心・安全・誠実なモノづくりの推進」「製造受託・医薬品原薬事業の推進」「製品ラインアップの拡充と販売力強化」「海外事業の拡充」に引き続き取り組みました。
「製品ラインアップの拡充と販売力強化」への取り組みとして、連結子会社であるアルフレッサ ファーマ株式会社(本社:大阪市中央区)は、第一三共株式会社(本社:東京都中央区)および同社の子会社である第一三共エスファ株式会社(本社:東京都中央区)が日本において製造販売を行っている長期収載品41製品の製造販売承認および資産等を譲り受ける契約を2018年7月に締結し、2019年3月より一部製品について製造販売を開始いたしました。
また、「海外事業の拡充」への取り組みとして、2019年3月にアルフレッサ ファーマ株式会社は上海復星長征医学科学有限公司(本社:中華人民共和国上海市)と中国における便検査装置および試薬製品の供給契約を締結いたしました。
当セグメントの業績は、2018年4月の薬価改定や医薬品原薬の販売減少、季節性疾患の減少等の影響により、売上高407億44百万円(前期比2.6%減)、営業利益15億59百万円(同44.9%減)となりました。なお、売上高には、セグメント間の内部売上高98億50百万円(同0.4%増)を含んでおります。
(D) 医療関連事業
医療関連事業におきましては、「16-18中計」の重点施策として掲げた「収益力の向上」「業態変化への取り組み」に引き続き取り組みました。
当セグメントの業績は、調剤報酬の加算獲得への積極的な取り組みや当社の連結子会社である株式会社日本アポック(本社:埼玉県川越市)が株式会社ユースケア(本社:東京都千代田区)を2017年10月に合併したことなどによる増収効果はあったものの、2018年4月の診療報酬改定等の影響により、売上高348億11百万円(前期比2.6%増)、営業利益2億95百万円(同66.4%減)となりました。
また、当社は「海外事業の拡充」への取り組みとして、2019年3月に中国の医薬品卸売大手である華潤医薬商業集団有限公司(本社:中華人民共和国北京市)との間で、包括的な戦略的業務提携に関する合意書を締結し、中国の医薬品流通市場における院内サプライチェーン管理や新たな薬局ビジネスモデルの構築、日中の商品輸出入業務などについて、共同で事業の開発・実現に向けた協議を開始いたしました。
2019年3月期を最終年度とする中期経営計画「16-18中期経営計画 明日への躍進」で発表した経営指標目標の達成状況については次のとおりであります。
2019年3月期 | 売上高(連結) | 営業利益率 (連結) | 親会社株主に 帰属する 当期純利益率 | ROE | 株主還元 |
16-18中期経営計画目標 | 2兆7,000億円 | 1.5%以上 | 1.2%以上 | 8%水準 | DOE 2.0%以上 |
当期実績 | 2兆6,405億円 | 1.7% | 1.6% | 9.5% | DOE 2.3% |
② 生産、受注及び販売の実績
(A) 生産実績及び受注実績
当社グループの生産実績および受注実績は、金額的重要性が乏しいため、記載を省略しております。
(B) 仕入実績
セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前期比(%) |
医療用医薬品等卸売事業 | 2,178,380 | 101.4 |
セルフメディケーション卸売事業 | 238,271 | 100.7 |
医薬品等製造事業 | 9,919 | 93.2 |
医療関連事業 | 22,945 | 106.0 |
合計 | 2,449,516 | 101.4 |
(注)1.金額は実際の仕入額によっており、消費税抜きで表示しております。
2.セグメント間の内部仕入高は271億27百万円(前期比106.8%)であり、上記金額に含めております。
(C) 販売実績
仕入実績と販売実績の差額は僅少であるため、記載を省略しております。
(2) 財政状態
当連結会計年度末における当社グループの総資産は、前期末比44億88百万円増加し、1兆3,419億39百万円となりました。
流動資産は、162億36百万円増加し、1兆367億84百万円となりました。これは主として、増収増益に伴い「現金及び預金」が144億25百万円増加ならびに「未収入金」が38億22百万円増加したことによるものです。
固定資産は、117億47百万円減少し、3,051億54百万円となりました。これは主として、アルフレッサ株式会社の福岡物流センター等の設備投資などに伴い「建物及び構築物(純額)」等の有形固定資産が46億41百万円増加およびアルフレッサ ファーマ株式会社の長期収載品41製品の製造販売承認等の取得などに伴い「のれん」等の無形固定資産が52億88百万円増加した一方で、株式の売却および株式時価の下落に伴い「投資有価証券」等の投資その他の資産が216億77百万円減少したことによるものです。なお、のれんの増加額には「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 企業結合等関係」に記載のとおり、暫定的に算定された金額を含んでおります。
セグメント別の総資産は、以下のとおりであります。
医療用医薬品等卸売事業のセグメント資産は、当連結会計年度からアルフレッサ篠原化学株式会社を連結子会社としたこともあり、前期末比143億16百万円増加し、1兆1,550億6百万円となりました。これは主として、増収増益に伴い「現金及び預金」および「受取手形及び売掛金」等の金銭債権が増加ならびに福岡物流センター等の設備投資に伴い有形固定資産が増加した一方で、株式の売却および株式時価の下落に伴い「投資有価証券」が減少したことによるものです。
セルフメディケーション卸売事業のセグメント資産は、21億64百万円減少し、926億64百万円となりました。これは主として、増収に伴い「受取手形及び売掛金」が増加および設備更新に伴い有形固定資産が増加した一方で、株式の売却および株式時価の下落に伴い「投資有価証券」が減少したことによるものです。
医薬品等製造事業のセグメント資産は、111億26百万円増加し、628億54百万円となりました。これは主として、機械装置等の製造設備を取得したことに伴い有形固定資産が増加および長期収載品41製品の製造販売承認等の取得に伴い「のれん」が増加したことによるものです。なお、「のれん」の増加額は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 企業結合等関係」に記載のとおり、暫定的に算定された金額であります。
医療関連事業のセグメント資産は、3億76百万円減少し、195億83百万円となりました。これは主として、店舗の増加および業務効率化のための調剤設備の取得ならびにシステム機器の更新により「工具器具及び備品」等の有形固定資産が増加した一方で、「現金及び預金」および「受取手形及び売掛金」が減少したことによるものです。
当連結会計年度末における当社グループの負債は、前期末比16億33百万円減少し、8,998億83百万円となりました。
流動負債は、56億76百万円増加し、8,599億11百万円となりました。これは主として、仕入高の増加に伴い「支払手形及び買掛金」が28億57百万円増加および増益に伴い「未払法人税等」が21億84百万円増加したことによるものです。
固定負債は、73億9百万円減少し、399億71百万円となりました。これは主として、売却による保有株式の減少および株式時価が下落したことでその他有価証券評価差額金が減少したこと等により「繰延税金負債」が63億61百万円減少および年金資産の増加に伴い「退職給付に係る負債」が11億51百万円減少したことによるものです。
結果として、当連結会計年度末における当社グループの純資産は、61億22百万円増加し、4,420億56百万円となりました。これは主として、「利益剰余金」が311億12百万円増加した一方で、株主還元の一環とした自己株式の取得に伴い「自己株式」が133億40百万円増加および保有株式の減少および株式時価の下落に伴い「その他有価証券評価差額金」が125億57百万円減少したことによるものです。
(3) キャッシュ・フロー
当連結会計年度末における当社グループの現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前期末比94億91百万円増加し、2,050億85百万円となりました。当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況は、前連結会計年度と比較して以下のとおりであります。
営業活動によるキャッシュ・フローは、468億80百万円の増加(前期は475億75百万円の増加)となりました。これは主として、増益により「法人税等の支払額」が増加したため、前期に比べてキャッシュ・イン・フローは6億95百万円減少しております。
投資活動によるキャッシュ・フローは、129億47百万円の減少(前期は101億54百万円の減少)となりました。これは主として、物流センター建設等の物流設備投資および受託製造事業強化のための製造設備投資などの有形固定資産の取得支出112億2百万円や製品ラインアップの拡充となる長期収載品41製品の製造販売承認等を譲り受けたことに伴う支出104億1百万円があった一方で、保有株式の縮減を目的とした投資有価証券の売却収入85億24百万円があったことにより、前期に比べてキャッシュ・アウト・フローは27億93百万円増加しております。
財務活動によるキャッシュ・フローは、248億60百万円の減少(前期は98億65百万円の減少)となりました。これは主として、利益還元の充実を図るため、前期に比べ11億79百万円(1株当たり6円)増配となる94億13百万円の剰余金の配当を実施、また株主還元の一環として自己株式133億40百万円を取得したことにより前期に比べてキャッシュ・アウト・フローは149億94百万円増加しております。
当社グループの資本の財源および資金の流動性は次のとおりであります。
<資本の財源>アルフレッサグループは、日本の社会インフラである医薬品サプライチェーンを製造、卸売、調剤薬局等の各事業領域で支え、必要な時に、必要な医薬品を、必要な場所へ、安定的に供給することに貢献しております。
社会的責任の遂行と持続的な企業価値の向上には、財務の健全性、資本効率の向上、安定的・継続的な株主還元の最適バランスを追及し、さらなる企業価値を追求することが当社グループの財務戦略の基本となっております。
当連結会計年度末における純資産のうち当社の持分は、親会社株主に帰属する当期純利益の積み上がり、配当金の支払いや自己株式の取得、その他の包括利益額の増減により、前期末比61億30百万円増加し、4,408億98百万円となり、この結果、自己資本比率32.9%となりました。
また、株式会社格付投資情報センターの発行体格付は昨年から1ランクアップし「A+」を維持しております。
<資金の流動性>当連結会計年度末における「現金及び預金」残高2,063億円は、総資産の15.4%であります。ここには主力の医療用医薬品等卸売事業における売上債権回転期間と仕入債務回転期間の期間差から生じる現預金も含まれております。一方、有利子負債残高は67億55百万円となっております。
また、連結ベースの流動比率は120.6%となり、十分な流動性を確保しています。