有価証券報告書-第15期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)

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2018/06/26 12:50
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113項目
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社および持分法適用会社)の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要については次のとおりであります。なお、経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容については、各項目に含めて記載しております。
連結財務諸表の作成に際しての重要な会計方針および見積りについては、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいており、決算日における資産・負債の報告数値および報告期間における収益・費用の報告数値に影響を与える事項について、過去の実績や状況に応じ合理的と考えられる様々な要因に基づき見積りおよび判断を行い、それらについて継続して評価を行っております。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 経営成績
当連結会計年度の国内景気は、海外経済や金融資本市場の変動リスクはあるものの、企業収益や所得環境等の着実な改善と消費者物価の上昇が続くなか、緩やかな回復が続きました。当社グループは平成28年5月に「16-18中期経営計画 明日への躍進」を発表し、グループ経営方針(Challenge 3)として掲げた「グループ一体となった事業強化」「健康・医療関連領域の拡充」「環境変化に先駆けた事業モデルの変革」に取り組み、企業価値の持続的な成長に注力してまいりました。
当連結会計年度の業績は、売上高2兆6,029億17百万円(前期比2.0%増)、営業利益417億56百万円(同25.7%増)、経常利益518億61百万円(同18.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益355億89百万円(同15.2%増)、営業利益率1.6%、親会社株主に帰属する当期純利益率1.4%、ROE(自己資本利益率)8.6%となりました。
16-18中期経営計画の2年目にあたる平成30年3月期は、すべてのセグメントが前期比で増収、営業利益ベースで増益を記録しました。中期経営計画の経営指標である「売上高2兆7,000億円」「営業利益率1.5%以上」「親会社株主に帰属する当期純利益率1.2%以上」「ROE8%水準」の達成に向けて一定の進捗をいたしました。
① セグメントの業績
(A) 医療用医薬品等卸売事業
医療用医薬品市場におきましては、C型肝炎治療薬需要の減少や、後発医薬品への切り替えに伴う長期収載品減少の一方で、抗悪性腫瘍剤の販売拡大の影響等により、全体としては前期比0.2%増とほぼ前年度並みとなりました(クレコンリサーチ&コンサルティング株式会社推定)。このようななか、医療用医薬品等卸売事業につきましては、業界共通の最重要課題である「流通改革の推進」の取り組みを徹底し、医療用医薬品No.1卸として環境変化に先駆けた事業基盤のさらなる強化を進めました。
成長分野のスペシャリティ医薬品流通においては、希少疾病用医薬品・希少疾病用医療機器等の流通事業を行うエス・エム・ディ株式会社(本社:東京都千代田区)を起点とし、富田薬品株式会社(本社:熊本市中央区)ならびに株式会社モロオ(本社:札幌市中央区)と連携したスペシャリティ医薬品流通ネットワークが、新たな医薬品の取り扱い実績を着実に増やしております。
人や動物の細胞を培養・加工して生産される再生医療等製品は、これまで有効な治療法のなかった疾患を治療する可能性を持った新しい医療として期待を集めており、製薬各社等により多くの製品開発が進められています。平成29年12月、当社連結子会社のアルフレッサ株式会社(本社:東京都千代田区)はテラファーマ株式会社(本社:東京都新宿区)との間で、同社が開発する再生医療に用いられる治験製品の輸送管理業務を受託いたしました。当社グループとして初めて再生医療に携わる取り組みであり、輸送実績とノウハウを蓄積し、再生医療等製品を必要としている全国の患者様や医療機関へ安心・安全にお届けしてまいります。
16-18中期経営計画のセグメント別重点施策である「営業機能の改革」の一環として、グループをあげてMS(マーケティング・スペシャリスト)の専門資格取得に取り組んでおります。平成30年4月末現在、対象とする専門資格である医療経営士の認定資格取得者が1,153名になり1,000名を突破いたしました。当社グループでは医療経営士を、医療、介護および生活者を繋ぎ、地域の連携を推進する重要な人財と位置付けております。今後の地域包括ケアシステムへの対応や、お得意様における様々な課題・ニーズの解決に積極的に関与することによって、日本の医療の発展へ貢献してまいります。
「グループ全体最適」への取り組みとして、当社連結子会社である株式会社恒和薬品(本社:福島県郡山市)と株式会社小田島(本社:岩手県花巻市)は、平成30年10月に合併してすべての事業を統合し、東北アルフレッサ株式会社(本社:福島県郡山市)として発足する予定です。また、平成30年7月、株式会社恒和薬品は、同社の北海道エリアにおける医療用医薬品等卸売事業を当社連結子会社であるアルフレッサ株式会社へ事業譲渡する予定です。
当連結会計年度の業績は、売上高2兆2,917億80百万円(前期比1.8%増)、営業利益352億82百万円(同26.3%増)、営業利益率1.5%となりました。なお、売上高には、セグメント間の内部売上高142億35百万円(同19.2%増)を含んでおります。
医療用医薬品市場がほぼ前年度並みと伸び悩むなか、当社グループは前期比1.8%の増収となりました。売上総利益は増収効果や薬価改定に伴う仕切価変更により売差が改善したこと等により増益となったほか、販売管理費の抑制等により、営業利益も同26.3%の増益となりました。中期経営計画で掲げた医療用医薬品等卸売事業セグメントの経営目標である「売上高2兆4,000億円」「営業利益率1.5%」の達成に向けて、成長のための努力をさらに徹底してまいります。
(B) セルフメディケーション卸売事業
セルフメディケーション卸売事業におきましては、16-18中期経営計画のセグメント別重点施策として掲げた「さらなる事業基盤の強化」「付加価値営業の強化」に引き続き取り組みました。全社で推進している物流改革によるコスト削減や、お得意様に新たな付加価値を提案するソリューション型商談会を開催し、利益率の高い専売メーカー・専売商品を拡充することにより安定的な利益の確保に努めました。
当連結会計年度の業績は、売上高2,609億32百万円(前期比3.8%増)、営業利益26億26百万円(同23.5%増)、営業利益率1.0%となりました。なお、売上高には、セグメント間の内部売上高15億30百万円(同8.8%増)を含んでおります。
主な得意先であるドラッグストア等に対して、主力である一般用医薬品が堅調だったこと等により、売上高は前期比3.8%の増収と堅調に推移しました。増収効果に加えて、当社グループが進めるコスト削減や利益率の高い専売商品のラインナップ拡充等の効果により、営業利益は同23.5%の増益となりました。中期経営計画で掲げたセルフメディケーション卸売事業セグメントの経営目標である「売上高2,450億円」「営業利益率0.4%」はすでに達成いたしました。今後も「質の高い成長」を追求し、安定的な収益基盤を構築してまいります。
(C) 医薬品等製造事業
医薬品等製造事業におきましては、16-18中期経営計画のセグメント別重点施策として掲げた「製造受託・医薬品原薬事業の推進」「製品ラインナップの拡充と販売力強化」等に引き続き取り組みました。
アルフレッサ ファーマ株式会社(本社:大阪市中央区)において、医療用医薬品は長期収載品の減収影響がありましたが、重点品のモディオダール®、サブリル®が伸長しました。体外診断用医薬品は、インフルエンザウィルスキット「アルソニック®Flu」および「プライムチェック®Flu」の販売増が業績に寄与いたしました。メディカルディバイスにおいては、ナーブリッジ®等の導入製品の販売に注力するとともに、手術用縫合糸の売上が堅調に推移しました。受託製造におきましても、新たな受託品目を獲得し、順調に推移しております。
グラクソ・スミスクライン・コンシューマー・ヘルスケア・ジャパン株式会社(本社:東京都港区)が製造販売承認を持つ、禁煙補助薬「ニコチネル®TTS®」の販売を平成29年12月より開始いたしました。体外診断用医薬品では、平成29年4月にアークレイ株式会社(本社:京都市上京区)と小型自動分析装置「全自動便尿分析装置AA01」および便潜血検査試薬、尿検査試薬の共同販売を開始し、平成29年6月には、コンパニオン診断薬であるROS1融合遺伝子検出キット「OncoGuide®AmoyDx®ROS1融合遺伝子検出キット」を発売いたしました。
当連結会計年度の業績は、売上高418億44百万円(前期比1.0%増)、営業利益28億32百万円(同9.1%増)、営業利益率6.8%となりました。なお、売上高には、セグメント間の内部売上高98億7百万円(同5.1%増)を含んでおります。
診断薬や医療機器等を中心に売上高は堅調に推移し前期比1.0%の増収となりました。また、増収効果等により営業利益は同9.1%の増益となりました。中期経営計画で掲げた医薬品等製造事業セグメントの経営目標である「売上高440億円」「営業利益率7.7%」の達成に向け、重点製品の販売ならびに医薬品および医薬品原薬受託製造事業等を強化してまいります。
(D) 医療関連事業
医療関連事業の調剤薬局事業におきましては、16-18中期経営計画のセグメント別重点施策として掲げた「収益力の向上」「業態変化への取り組み」を引き続き推進いたしました。
平成29年10月、当社連結子会社である株式会社日本アポック(本社:埼玉県川越市)は、当社非連結子会社である株式会社ユースケア(本社:東京都千代田区)を合併いたしました。経営資源を有効かつ効率的に活用することによって、調剤薬局事業のさらなる基盤強化を図ってまいります。
当連結会計年度の業績は、売上高339億34百万円(前期比12.1%増)、営業利益8億81百万円(同65.2%増)、営業利益率2.6%となりました。
株式会社ユースケアの統合による店舗数の増加等により、売上高は前期比12.1%の増収となりました。また、かかりつけ薬剤師・薬局の推進などの取り組み強化で調剤報酬が改善したこと等により、営業利益は同65.2%の増益となりました。平成30年4月の診療報酬改定および薬価改定によって経営環境は厳しさを増していますが、中期経営計画で掲げた医療関連事業セグメントの経営目標である「売上高360億円」「営業利益率2.5%」の達成に向けた取り組みを強化してまいります。
② 生産、受注及び販売の実績
(A) 生産実績及び受注実績
当社グループの生産実績および受注実績は、金額的重要性が乏しいため、記載を省略しております。
(B) 仕入実績
セグメントの名称金額(百万円)前期比(%)
医療用医薬品等卸売事業2,147,493101.5
セルフメディケーション卸売事業236,620104.1
医薬品等製造事業10,64289.3
医療関連事業21,638106.9
合計2,416,395101.8

(注)1.金額は実際の仕入額によっており、消費税抜きで表示しております。
2.セグメント間の内部仕入高は254億円(前期比112.6%)であり、上記金額に含めております。
(C) 販売実績
仕入実績と販売実績の差額は僅少であるため、記載を省略しております。
(2) 財政状態
当連結会計年度末における当社グループの総資産は、前期末比873億61百万円増加し、1兆3,432億84百万円となりました。
流動資産は、同641億43百万円増加し、1兆270億15百万円となりました。これは主として、「現金及び預金」が同274億44百万円増加ならびに「未収入金」が同236億80百万円増加したことによるものです。
固定資産は、同232億18百万円増加し、3,162億68百万円となりました。これは主として、「建設仮勘定」が同35億57百万円増加ならびに「投資有価証券」が同195億40百万円増加した一方で、「建物及び構築物(純額)」が同10億13百万円減少ならびに「のれん」が同12億26百万円減少したことによるものです。
セグメントの総資産は、以下の通りであります。
医療用医薬品等卸売事業のセグメント資産は、同615億15百万円増加し、1兆1,455億30百万円となりました。これは主として、「現金及び預金」が増加ならびに株式時価の上昇に伴い「投資有価証券」が増加したことによるものです。
セルフメディケーション卸売事業のセグメント資産は、同126億55百万円増加し、953億44百万円となりました。これは主として、売上増加に伴い「受取手形及び売掛金」が増加ならびに株式時価の上昇に伴い「投資有価証券」が増加したことによるものです。
医薬品等製造事業のセグメント資産は、同12億25百万円増加し、521億64百万円となりました。これは主として、製造設備を取得したことによるものです。
医療関連事業のセグメント資産は、同25億23百万円増加し、199億59百万円となりました。これは主として、「現金及び預金」が増加ならびに売上増加に伴い「受取手形及び売掛金」が増加したことによるものです。
当連結会計年度末における当社グループの負債は、同449億77百万円増加し、9,073億49百万円となりました。
流動負債は、同396億58百万円増加し、8,542億35百万円となりました。これは主として、「支払手形及び買掛金」が同300億50百万円増加ならびに「未払法人税等」が同58億6百万円増加したことによるものです。
固定負債は、同53億19百万円増加し、531億14百万円となりました。これは主として、「繰延税金負債」が同61億87百万円増加した一方で、「退職給付に係る負債」が同6億90百万円減少したことによるものです。
結果として、当連結会計年度末における当社グループの純資産は、同423億83百万円増加し、4,359億34百万円となりました。これは主として、「利益剰余金」が同279億円増加ならびに株式時価の上昇に伴い「その他有価証券評価差額金」が同132億46百万円増加したことによるものです。
(3) キャッシュ・フロー
当連結会計年度末における当社グループの現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前期末比280億39百万円増加し、1,955億93百万円となりました。当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況は、前連結会計年度と比較して以下のとおりであります。
営業活動によるキャッシュ・フローは、475億75百万円の増加(前期は343億42百万円の増加)となりました。これは主として、「税金等調整前当期純利益」515億67百万円ならびに「減価償却費」92億58百万円の計上に加えて、「仕入債務の増加」293億62百万円があった一方で、「売上債権の増加」111億65百万円、「未収入金の増加」249億79百万円、ならびに「法人税等の支払額」103億59百万円があったことによるものです。
投資活動によるキャッシュ・フローは、101億54百万円の減少(前期は134億9百万円の減少)となりました。これは主として、「有形固定資産の取得による支出」98億円ならびに「無形固定資産の取得による支出」25億68百万円があった一方で、「投資有価証券の売却による収入」18億81百万円があったことによるものです。
財務活動によるキャッシュ・フローは、98億65百万円の減少(前期は118億7百万円の減少)となりました。これは主として、「リース債務の返済による支出」16億円ならびに「配当金の支払額」82億33百万円があったことによるものです。
当社グループの資本の財源および資金の流動性は次のとおりであります。
<資本の財源>アルフレッサグループは、日本の社会インフラである医薬品サプライチェーンを製造、卸売、調剤薬局等の各事業領域で支え、必要な時に、必要な医薬品を、必要な場所へ、安定的に供給することに貢献しております。社会的責任の遂行と持続的な企業価値の創造の両立には財務の健全性の確保や柔軟性をもった対応が必要であり、これが当社グループの財務戦略の基本となっております。
当連結会計年度末における純資産のうち当社の持分は、親会社株主に帰属する当期純利益の積み上がりにより、前期末比424億34百万円増加し、4,347億68百万円となり、この結果、自己資本比率32.4%となりました。
また、株式会社格付投資情報センターの発行体格付は「A」を維持しております。
<資金の流動性>当連結会計年度末における「現金及び預金」残高1,918億74百万円は、総資産の14.3%であります。ここには主力の医療用医薬品等卸売事業における売上債権回転期間と仕入債務回転期間の期間差から生じる現預金も含まれております。一方、有利子負債残高は66億54百万円となっております。
また、連結ベースの流動比率は120.2%となり、十分な流動性を確保しています。