有価証券報告書-第54期(令和2年3月1日-令和3年2月28日)

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2021/05/21 9:18
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155項目
(1)経営成績の概況
当連結会計年度(2020年3月1日~2021年2月28日)におけるわが国の経済は、4月に発令された緊急事態宣言下において個人消費や輸出の下押しを受け、非常に厳しい状況となりました。その後は、経済活動に持ち直しの動きが見られたものの再び感染が拡大し、1月に11都府県に緊急事態宣言が再発令されるなど、新型コロナウイルスの影響は長期化し、先行き不透明な状況が続きました。
小売業においては、コロナ禍で消費者の行動が大きく制限され、急激に需要と消費行動が変化したことで、不要不急商品が買い控えられ、衣料品等は売上高が大幅に減少しました。一方で、外出自粛による巣ごもり需要が急激に高まったことで、食料品を中心とした生活必需品は、堅調に推移しました。
このような環境のなか、当社グループは、お客様及び従業員の安全・安心の確保を最優先の課題と位置づけ、新型コロナウイルス感染症拡大の防止に取り組みました。同時に、コロナ禍で変化したお客様の消費行動や生活様式に対し、商品の調達や品ぞろえの拡充に注力したことで、スーパーマーケット事業の業績が堅調に推移し、連結営業収益は増収となりました。
一方で、連結利益項目は、在庫やロスの削減に取り組むことで売上総利益を確保するとともに、販売促進やイベントの縮小・中止、移動制限による出張自粛、会議や研修のWebへの移行、設備投資等の計画的な削減・抑制等により、販売費及び一般管理費を節減しましたが、コロナ禍での需要減に直面した子会社の損失が大きく影響し、減益となりました。
以上の結果、当連結会計年度の営業収益は3,153億83百万円(前年同期比0.6%増)、営業利益は59億80百万円(前年同期比7.9%減)、経常利益は80億12百万円(前年同期比3.0%減)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、41億79百万円(前年同期比20.3%減)となりました。
なお、同期間において「固定資産の減損に係る会計基準」に基づき、保有する固定資産についての将来の回収可能性を検討した結果、店舗等に係る減損損失として、5億65百万円計上しました。
セグメント別の状況は、次のとおりです。
(小売事業)
当社グループは、地域社会との深いかかわりを持ち、環境への配慮を行いながら、お客様視点で考え行動できる企業文化の構築を目指しています。また、より健全で楽しく働きがいのある職場環境を整え、自律的に考え行動できる人材の育成と組織力の向上にも取り組んでいます。営業面においては、お客様ニーズに応えるマーチャンダイジングの深耕、「お客様の声」のさらなる活用、コスト構造の見直しによる利益改善により、強い店頭を追求することで、お客様からの支持を高めることを目指しています。さらに、コロナ禍における消費行動や生活様式の変化に対し、商品の調達や品ぞろえの拡充に注力しました。店頭においては、感染拡大防止対策の徹底、精算時の非接触対応による利便性向上等、お客様が安心かつ快適にお買物できる環境整備に取り組みました。
店舗においては、3月にフジ小網店(広島市中区)を新設、11月にフジ松前店(愛媛県伊予郡松前町)を移転新設しました。また、3月にフジ砥部原町店(愛媛県伊予郡砥部町)、フジグラン山口(山口県山口市)、4月にフジグラン宇部(山口県宇部市)、9月にフジ宿毛店(高知県宿毛市)、ピュアークック青葉台店(広島県廿日市市)、11月にピュアークック観音店(広島市西区)、2021年1月にフジ西宇部店(山口県宇部市)、2月にフジ夏目店(愛媛県松山市)の改装を実施しました。また、エミフルMASAKI(愛媛県伊予郡松前町)においては、2020年夏から1年をかけて大規模なリニューアルを実施しており、ファーストオープンとして11月に新規出店18店舗を含む32店舗、セカンドオープンとして12月に新規出店8店舗を含む17店舗のテナントがオープンしました。
また、3月に株式会社ニチエー(広島県福山市、11店舗)、4月に株式会社サニーTSUBAKI(愛媛県松山市、3店舗)が連結子会社として当社グループに加わりました。
さらに、当社グループでは、店舗における品揃えの拡充や生産性向上を目的に、サプライチェーンの整備に取り組んでいます。2019年7月に本格稼働した鮮魚プロセスセンターにおいては、出荷金額が計画を上回り伸長しています(鮮魚プロセスセンター出荷金額計画比22.6%増)。また、5月には、さらなる品質の向上とチルドカテゴリーの強化を目的とし、フジ松山チルドセンターとフジ香川チルドセンターを移転新設しました。
加えて、6月には、今後のキャッシュレス決済利用拡大への備えと、お客様の利便性向上を目的に、各種バーコード決済(8種類)を導入しました。また、現金以外の電子マネーやバーコード決済のみでお支払い可能な「キャッシュレスレジ」を8月にフジグラン高陽(広島市安佐北区)、10月にフジグラン三原(広島県三原市)とフジグラン安芸(広島県安芸郡坂町)に導入しました。コロナ禍において、非接触化へのニーズが高まったことが追い風となり、キャッシュレス利用率(お買い上げ金額)が前年同期比で4.0%上昇しました(2019年度43.9%→2020年度47.9%)。
以上の取り組みにより、中核事業と位置付けるスーパーマーケット事業は堅調に推移しました(フジスーパーマーケット事業売上高前年同期比7.6%増、フジマート売上高前年同期比13.4%増、フジマート四国売上高前年同期比13.9%増)。
一方で、直営で取り扱う衣料品及び、アパレルや飲食業を中心とするテナントは、下期(9月~2月)に入り持ち直しの動きが見られたものの、不要不急商品に対する需要減が続いたことによる影響が残りました。また、コロナ禍による店舗での密集や長時間滞在を避けるお客様の動きに加え、各種イベントの中止等が大型店への集客に影響したこともあり、売上高が減少しました(衣料品売上高前年同期比18.7%減、テナント売上高前年同期比11.1%減)。
ノンストアリテイル事業では、3月に愛媛県南宇和郡愛南町と広島県安芸郡海田町で、4月には広島県安芸郡熊野町で、7月には広島県竹原市で、移動スーパー「おまかせくん」のサービスを新たに開始し、また、既に展開中の愛媛県西予市においてサービスエリアを拡大しました。現在、合計17店舗を拠点に、28台84ルートで営業を行っており、移動販売は計画どおり売上伸長しております(売上高前年同期比69.9%増)。また、ネットスーパーにおいても、コロナ禍において利用者数が増加したことで、売上高が増加しました(売上高前年同期比14.6%増)。
DVD・CD・書籍の小売及びレンタル業では、お客様にとって魅力ある店舗づくりを行うため、品揃えの強化・拡充及び売場環境の整備に取り組み、外出自粛による需要の高まりもあり、業績は堅調に推移しました。書籍や雑貨の拡大による収益の改善を目的とし、3月にTSUTAYA宇和店(愛媛県西予市)、11月にTSUTAYA南岩国店(山口県岩国市)、12月にTSUTAYA BOOKSTOREエミフルMASAKI(愛媛県伊予郡松前町)の改装を行いました。
これらの結果、小売事業の営業収益は3,108億38百万円(前年同期比1.3%増)、営業利益は62億73百万円(前年同期比17.4%増)となりました。
(小売周辺事業)
食品製造・加工販売業では、既存店の活性化、MD力の向上、自社製品の販路拡大と生産性向上、品質管理力の向上に取り組んでいます。新たにグループに加わった連結子会社への商品供給を開始したことも寄与し、業績は堅調に推移しました。
青果卸売業では、8月に本社流通センターの建て替えが完了したことにより、コールドチェーンの確立による鮮度の向上、プロセスセンター機能の併設によるオペレーションの効率化への取り組みを進めています。加えて、堅調に推移するスーパーマーケット事業への供給が増加するなか、10月には、販路拡大を目的に今治営業所の新設を行い、業績は堅調に推移しました。
飲食業では、新メニューや新業態への開発に取り組み、品質とサービス向上に努めました。3月には、初のローコストオペレーション型店舗となる「EX!焼肉じゃんじゃか庚午店」(広島市西区)を既存店から業態変更し、8月には「同 高松レインボー通り店」(香川県高松市)を新規出店、11月には「同 エミフルMASAKI店」(愛媛県伊予郡松前町)を既存店から業態変更しました。しかし、コロナ禍において、店内飲食を避ける動きが顕著となり客数が減少しました。下期には、国や自治体の需要喚起策による外食利用促進に期待が持たれましたが、再び感染が拡大し、大幅な減収となりました(営業収益前年同期比15.6%減)。
クレジットカード事業では、ファイナンス事業の強化、グループ外収益の拡大、キャッシュレスの推進に取り組んでいます。コロナ禍において、非接触へのニーズへの高まりを受け、キャッシュレス利用の促進に積極的に取り組み、業績は堅調に推移しました。
総合フィットネスクラブ事業では、会員様に安心してご利用いただける環境を整えるために、感染拡大防止対策の徹底に取り組んでいます。しかしながら、新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、休会や退会を選択する会員様が増えたことに加え、新規入会が減少したことで、業績の回復が遅れている状況です(営業収益前年同期比30.5%減)。
これらの結果、小売周辺事業の営業収益は347億18百万円(前年同期比3.2%減)、営業利益は64百万円(前年同期比93.3%減)となりました。
(その他)
総合ビルメンテナンス業では、お客様視点の徹底、企画提案型営業力の強化、サービス品質の向上に取り組み、収益力の向上と事業領域の拡大を図っています。しかしながら、コロナ禍における企業の設備投資減少の影響もあり、売上高が減少しました(前年同期比8.6%減)。
一般旅行業では、国内外の移動制限により、旅行需要が急激に減少しました。7月以降の「Go Toトラベルキャンペーン」による需要喚起策への対応として、国内旅行の販売強化に取り組みましたが、感染再拡大による同事業の停止等もあり、厳しい業績が続いています(営業収益前年同期比80.7%減)。
なお、一般旅行業では、事業の集約を目的に、2月に10店舗を閉店いたしました。
これらの結果、その他事業の営業収益は76億78百万円(前年同期比16.7%減)、営業損失1億77百万円(前年同期は営業利益3億90百万円)となりました。
(注) セグメント別の営業収益には、売上高及び営業収入を含め、セグメント間の取引も含めています。また、記載金額には、消費税等を含めていません。
(売上及び仕入れの状況)
(1) セグメント別売上高
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2020年3月1日
至 2021年2月28日)
金額(百万円)前年同期比(%)
小売事業288,5482.1
小売周辺事業9,963△14.0
その他1,519△9.5
合計300,0311.4

(注) 1 上記金額には、消費税等を含めていません。
2 上記金額は、セグメント間の取引を消去しています。
(2) 商品部門別売上高
商品部門別当連結会計年度
(自 2020年3月1日
至 2021年2月28日)
金額(百万円)前年同期比(%)
食料品159,63015.5
衣料品16,023△18.7
日用雑貨品その他26,376△4.7
外食9,299△15.7
テナント88,702△10.7
合計300,0311.4

(注) 上記金額には、消費税等を含めていません。
(3) セグメント別仕入高
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2020年3月1日
至 2021年2月28日)
金額(百万円)前年同期比(%)
小売事業208,910△0.1
小売周辺事業16,2372.5
その他924△13.8
合計226,0720.0

(注) 1 上記金額には、消費税等を含めていません。
2 上記金額は、セグメント間の取引を消去しています。
(2)財政状態の状況の分析
当連結会計年度における資産の残高は、前連結会計年度末から93億9百万円増加し、1,810億67百万円となりました。前連結会計年度末からの増加の主な原因は、当連結会計年度末日が金融機関休業日の影響で現金及び預金が24億74百万円、受取手形及び売掛金が9億25百万円増加し、有形固定資産は株式会社ニチエーと株式会社サニーTSUBAKIの新規連結等に伴い29億84百万円増加しました。また保有株式の時価評価等で投資有価証券が42億4百万円増加した一方で、繰延税金負債も増加したため、繰延税金資産との相殺額が増加し、繰延税金資産が8億56百万円減少しました。
負債の残高は、前連結会計年度末から37億77百万円増加し、871億44百万円となりました。前連結会計年度末からの増加の主な原因は、大規模改装中のエミフルMASAKIの工事代金と「Go TO Eat」食事券の販売代行機関として販売した食事券の代金等で未払金が21億99百万円増加し、リース債務は新設店舗と株式会社ニチエーの新規連結に伴い13億40百万円増加した一方で、長期借入金(1年内返済長期借入金含む)が15億77百万円減少しました。
純資産の残高は、利益剰余金が34億14百万円、その他有価証券評価差額金が23億54百万円増加し、前連結会計年度末から55億32百万円増加し、939億22百万円となりました。
(3)キャッシュフローの状況の分析
当連結会計年度における「営業活動によるキャッシュ・フロー」につきましては、税金等調整前当期純利益68億43百万円に含まれる非資金項目の減価償却費64億円、減損損失5億65百万円の調整、また法人税等の支払が21億36百万円あったこと等により、125億98百万円の収入(前年同期は120億53百万円の収入)となりました。
「投資活動によるキャッシュ・フロー」につきましては、有形及び無形固定資産の取得(設備関係支払手形決済等を含む)による支出57億98百万円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出が25億円あったこと等により82億80百万円の支出(前年同期は157億78百万円の支出)となりました。
「財務活動によるキャッシュ・フロー」につきましては、長期借入金の返済による支出が75億77百万円、配当金の支払額が7億65百万円、また長期借入金による収入が60億円あったこと等により18億43百万円の支出(前年同期は48億20百万円の収入)となりました。
以上の結果、現金及び現金同等物の期末残高は130億60百万円となり、期首から24億74百万円増加しました。
(参考) キャッシュ・フロー関連指標の推移
2017年2月期2018年2月期2019年2月期2020年2月期2021年2月期
自己資本比率(%)44.452.453.351.351.7
時価ベースの自己資本比率(%)53.353.346.435.738.2
キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年)3.82.12.42.42.4
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)23.941.243.363.752.7

(注) 1 各指標の算出方法は以下のとおりです。
自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い
2 いずれも連結ベースの財務数値により計算しています。
3 株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しています。
4 有利子負債は連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象
としています。
(4)資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループの資金の源泉は、主に自己資金と営業活動によるキャッシュ・フローであり、主要な運転資金需要は、商品仕入代金や人件費等の販売費及び一般管理費です。また、投資を目的とした資金需要は、店舗の新規出店、既存店の改装、システム入替や新規導入等に伴うものであり、自己資金や営業活動によるキャッシュ・フローで不足した資金については、計画に基づき金融機関からの長期借入金により調達しています。
(5)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しています。この連結財務諸表作成に当たっては、会計上の見積りを行う必要があり、特に以下の事項は、経営者の会計上の見積りの判断が財政状態及び経営成績に重要な影響を及ぼすと考えています。
(固定資産の減損処理)
当社グループは、固定資産のうち減損の兆候のある資産または資産グループについては、当該資産または資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失額として計上しています。減損処理に使用する将来キャッシュ・フローの見積り額については、当該店舗等に係る需要予測、競争環境の変化、施策方針の変更、人員配置の見直し等による販売費及び一般管理費の改善策を織り込み算定しています。なお、減損損失の兆候の把握、減損損失の認識及び測定に当たっては慎重に検討していますが、事業計画の変更や市場環境の変化により、その見積り額の前提とした条件や仮定に変更が生じ、見積り額が減少した場合、減損処理が必要となる可能性があります。
(繰延税金資産)
当社グループは、繰延税金資産の回収可能性の評価については、決算時点で入手可能な情報やタックス・プランニングに基づき合理的に判断していますが、繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存しているため、その見積り額が減少した場合、繰延税金資産は減額され税金費用が計上される可能性があります。