有価証券報告書-第81期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)

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2019/06/28 9:07
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(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、景気拡大基調を維持したものの、年度後半にかけては減速の動きがみられました。労働市場では改善が続きましたが、世界経済の減速懸念や相次ぐ自然災害が消費者マインドの重しとなり、個人消費は鈍い動きに終始し、消費者物価の上昇率も前年同月比1%前後での推移が続きました。また、米中貿易摩擦や中国経済減速の影響は、わが国の輸出や生産活動にも影響を及ぼしました。他方、訪日外国人の増加によるホテル建設需要等で全国基準地価が27年ぶりに上昇するなど、明るい動きもみられました。
国内の景気指標が斑模様となり、力強さに欠ける状況が続いたことから、日本銀行は金融緩和姿勢を維持しました。日本銀行が7月の金融政策決定会合で10年国債利回りの変動幅拡大を容認したことから、10年国債利回りは一時0.155%まで上昇する場面もありましたが、年度末にかけては再びマイナス圏へと沈み、年度を通しては概ね日本銀行が操作目標とするゼロ%近辺での横ばい推移となりました。
このような環境のなか、日経平均株価は、年度当初は22,000~23,000円を中心としたレンジ相場が続きましたが、夏場以降は良好な米国経済を背景にドル円相場が1ドル=114円台まで円安ドル高が進行したことや、自民党総裁選を控えた政策期待などを受けて、10月初旬には24,448円と約27年ぶりの高値を付けました。しかし秋口以降、米中貿易摩擦の長期化などによる世界景気の減速懸念が意識されるなかで米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げ継続姿勢を示したことが発端となり、米国市場が先導する形で主要国の株式市場は大きく下落し、日経平均株価も年末には一時19,000円を割り込む場面までありました。また、こうした株式市場の波乱を受けて、為替市場でもリスク回避の動きが強まり、年始の取引では一時1ドル=104円台、1ユーロ=118円台をつけるなど急激な円高進行に見舞われました。その後は年度末にかけて、3月末の交渉期限を控え混迷を深める英国のEU離脱問題への懸念がくすぶる反面、米国の利上げ停止観測や米中貿易交渉の進展期待などを受けて、主要国の株式市場は徐々に落ち着きを取り戻し、値を戻す展開となりました。日経平均株価も早々に2万円台を回復し、21,205円81銭まで上昇して年度末の取引を終えました。また為替市場でも、過度な円高水準を修正する動きとなり、年度末は1ドル=110円台後半、1ユーロ=124円台半ばで取引を終えました。
こうした事業環境において、中核子会社の岡三証券株式会社では、店舗の移転リニューアルなど営業機能の強化による地域密着型の営業活動を展開したほか、ウェブサイトで投資セミナーの動画配信を開始するなど市況に即した投資情報の迅速な提供に努めました。一方、インターネット取引専業の岡三オンライン証券株式会社においては、AI技術を用いたご案内サービスや、取引データを基にしたお客さまごとのおすすめ銘柄情報の配信を開始するなど、お客さま向けサービスの向上を通じた営業基盤の拡大に努めました。また、岡三アセットマネジメント株式会社においては、運用パフォーマンス向上のため、経済環境分析や企業調査等に注力したほか、投資先企業の企業価値向上に資するため投資先との対話(エンゲージメント)や議決権行使に取り組む一方、業界初となるボンドコネクトを利用した「中国人民元ソブリンオープン」を設定するなど、お客さまの資産形成に資する商品の強化を図るとともに、機関投資家向けに私募投資信託、投資一任契約の提案を行い、運用資産の拡大に努めました。
a.財政状態
当連結会計年度末の資産合計は前連結会計年度末に比べ494億63百万円減少し4,257億円、負債合計は前連結会計年度末に比べ445億97百万円減少し2,505億16百万円、純資産合計は前連結会計年度末に比べ48億65百万円減少し1,751億83百万円となりました。
なお、「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」(企業会計基準第28号 平成30年2月16日)等を当連結会計年度の期首から適用しており、財政状態については遡及処理後の前連結会計年度末の数値で比較を行っております。
b.経営成績
当連結会計年度における当社グループの営業収益は678億75百万円(前年度比82.9%)、純営業収益は668億4百万円(同82.7%)となりました。販売費・一般管理費は649億63百万円(同94.1%)となり、経常利益は29億1百万円(同22.7%)、親会社株主に帰属する当期純利益は8億53百万円(同14.6%)となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
証券ビジネスの営業収益は598億72百万円(前年度比82.0%)、セグメント利益は7億46百万円(同6.2%)となりました。
アセットマネジメントビジネスの営業収益は110億79百万円(前年度比89.5%)、セグメント利益は9億47百万円(同67.8%)となりました。
サポートビジネスの営業収益は123億60百万円(前年度比100.5%)、セグメント利益は9億75百万円(前年度は8億46百万円の損失)となりました。
上記のセグメント別営業収益には、セグメント間の内部営業収益又は振替高が含まれており、セグメント利益は連結財務諸表の営業利益と調整を行っております。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前年度末に比べ100億43百万円増加し、641億83百万円となりました。
営業活動の結果獲得した資金は398億69百万円、投資活動の結果使用した資金は51億41百万円、財務活動の結果使用した資金は248億80百万円となりました。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成に際しては、連結決算日における資産・負債及び連結会計年度における収益・費用の報告数値に影響を与える会計上の見積り及び仮定設定を行う必要があり、過去の実績やそれぞれの状況に応じて合理的と考えられる仮定設定に基づいて、継続して判断・評価及び見積りを行っております。
なお、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。特に以下の重要な会計方針については、当社の連結財務諸表の作成において使用される当社の重要な見積りに大きな影響を及ぼすことがあります。
a.貸倒引当金
当社グループは、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別の回収可能性を検討し、回収不能見込額を計上しております。従って、債務者の財政状態が悪化し、その支払能力が低下した場合には、追加の引当が必要となることがあります。
b.投資有価証券(その他有価証券)の減損
当社グループは、その他有価証券で時価のある株式については、連結決算日の時価が取得原価に比べ50%以上下落した場合には、原則として減損処理を行い、30%以上50%未満下落した場合には、回復可能性があると認められるものを除き、減損処理を行っております。従って、将来の市況悪化又は投資先の業績不振により、当連結会計年度末現在の簿価に反映されていない損失又は簿価の回収不能が生じた場合、評価損の計上が必要となる可能性があります。
c.退職給付債務
退職給付債務及び退職給付費用の計算に用いる、割引率、退職率、死亡率、昇給率、長期期待運用収益率などは合理的に見積ることとされているため、見積数値と実績には差異が生じることとなります。この数理計算上の差異については、当社グループでは5年の定額法により処理することとしているため、翌期以降の業績に影響を与えることとなります。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績等
1)財政状態
(資産合計)
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ494億63百万円減少し4,257億円となりました。これは主に、現金・預金が113億79百万円増加した一方で、有価証券担保貸付金が249億7百万円、信用取引資産が190億48百万円、トレーディング商品が185億23百万円減少したことによるものであります。
(負債合計)
当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ445億97百万円減少し2,505億16百万円となりました。これは主に、預り金が19億79百万円増加した一方で、有価証券担保借入金が192億81百万円、短期借入金が163億1百万円、受入保証金が64億28百万円減少したことによるものであります。
(純資産合計)
当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ48億65百万円減少し1,751億83百万円となりました。これは主に、非支配株主持分が8億円増加した一方で、利益剰余金が40億58百万円、その他有価証券評価差額金が17億94百万円減少したことによるものです。
(トレーディング業務の概要)
当連結会計年度の年度末日時点のトレーディング商品の残高は以下のとおりであります。
2018年3月31日現在
(百万円)
2019年3月31日現在
(百万円)
資産の部のトレーディング商品112,13793,614
商品有価証券等112,11793,598
株式・ワラント3,2101,587
債券105,85688,011
CP及びCD1,9994,000
その他1,051-
デリバティブ取引2016
オプション取引815
先物取引120
負債の部のトレーディング商品63,01164,668
商品有価証券等62,96164.661
株式・ワラント866922
債券60,09459,730
CP及びCD1,9994,000
その他-8
デリバティブ取引506
オプション取引64
先物取引432

2)経営成績
当連結会計年度における当社グループの営業収益は678億75百万円(前年度比82.9%)、純営業収益は668億4百万円(同82.7%)となりました。販売費・一般管理費は649億63百万円(同94.1%)となり、経常利益は29億1百万円(同22.7%)、親会社株主に帰属する当期純利益は8億53百万円(同14.6%)となりました。
受入手数料
受入手数料の合計は429億95百万円(前年度比81.5%)となりました。主な内訳は次のとおりです。
前連結会計年度
(自 2017年4月1日
至 2018年3月31日)
(百万円)
当連結会計年度
(自 2018年4月1日
至 2019年3月31日)
(百万円)
入手数料52,77642,995
委託手数料20,16314,314
引受け・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の手数料629677
募集・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の取扱手数料14,67111,776
その他の受入手数料17,31216,227

委託手数料
当連結会計年度における東証の1日平均売買高(内国普通株式)は18億49百万株(前年度比80.1%)、売買代金は3兆512億円(同95.0%)となりました。こうしたなか、株式委託手数料は139億4百万円(同70.4%)となりました。また、債券委託手数料は2百万円(同80.7%)、その他の委託手数料は4億8百万円(同100.3%)となり、委託手数料の合計は143億14百万円(同71.0%)となりました。
引受け・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の手数料
当連結会計年度における株式の引受けは、主幹事案件や大型の新規上場案件が手数料の増加に寄与しました。一方、債券の引受けは、事業債や地方債の主幹事を務めたほか、個人投資家向けの事業債などの引受けを積極的に行なったことにより、引受金額は増加しましたが手数料は減少しました。
これらの結果、株式の手数料は5億68百万円(前年度比110.9%)、債券の手数料は1億9百万円(同93.3%)となり、株式・債券を合わせた引受け・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の手数料の合計は6億77百万円(同107.7%)となりました。
募集・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の取扱手数料、その他の受入手数料
募集・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の取扱手数料、その他の受入手数料につきましては、投資信託関連収益がその大半を占めています。
当連結会計年度における公募投資信託の販売は、年度後半にかけて市場に不透明感が広がるなか、配当や金利等のインカムを意識したファンドや、相対的に成長期待が強い中小型株式ファンドなど、不安定な相場への耐性がある商品の販売が増加しました。しかし全体では市況の影響は避けられず、販売額は前年度比で減少となり、募集・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の取扱手数料は117億76百万円(前年度比80.3%)となりました。また、その他の受入手数料については、主に投資信託の信託報酬等により162億27百万円(同93.7%)となりました。
トレーディング損益
前連結会計年度
(自 2017年4月1日
至 2018年3月31日)
(百万円)
当連結会計年度
(自 2018年4月1日
至 2019年3月31日)
(百万円)
レーディング損益26,54122,305
株券等トレーディング損益18,52912,880
債券等トレーディング損益8,0789,478
その他のトレーディング損益△66△53

株券等トレーディング損益は主に米国株式を中心とした外国株式の国内店頭取引、債券等トレーディング損益は外国債券の顧客向け取扱いに伴う収益がその大半を占めています。
当連結会計年度における外国株式は、秋口以降の不安定な市況環境を受け、国内店頭取引の売買が前年度比で減少した一方、外国債券は社会貢献債の取扱いなどが寄与し、販売額は増加しました。
これらの結果、株券等トレーディング損益は128億80百万円(前年度比69.5%)、債券等トレーディング損益は94億78百万円(同117.3%)となり、その他のトレーディング損益53百万円の損失(前年度は66百万円の損失)を含めたトレーディング損益の合計は223億5百万円(前年度比84.0%)となりました。
金融収支
金融収益は16億96百万円(前年度比97.2%)、金融費用は10億71百万円(同92.2%)となり、差引の金融収支は6億24百万円(同107.1%)となりました。
その他の営業収益
金融商品取引業及び同付随業務に係るもの以外の営業収益は、8億78百万円(前年度比102.5%)となりました。
販売費・一般管理費
販売費・一般管理費は、人件費や取引関係費等の減少により、649億63百万円(前年度比94.1%)となりました。
営業外損益及び特別損益
営業外収益は12億34百万円、営業外費用は1億73百万円となりました。また、特別利益は1億42百万円、特別損失は1億38百万円となりました。
3)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前年度末に比べ100億43百万円増加し、641億83百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果獲得した資金は、398億69百万円となりました。これは主に、トレーディング商品の増減215億22百万円、信用取引資産及び信用取引負債の増減198億60百万円による資金の獲得と、受入保証金の増減64億28百万円による資金の使用の差し引きによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、51億41百万円となりました。これは主に、無形固定資産の取得による支出24億2百万円、有価証券の取得による支出10億円、投資有価証券の取得による支出8億8百万円による資金の使用と投資有価証券の売却による収入6億22百万円による資金の獲得の差し引きによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、248億80百万円となりました。これは主に、短期借入金の純増減175億22百万円、配当金の支払額49億11百万円、長期借入金の返済による支出22億60百万円による資金の使用によるものであります。
b.経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループのコア事業であります証券ビジネスの営業収益は、株式、債券、金利、為替等の市況環境変動の影響を受けるため、当社グループの経営成績は連結会計年度毎に大きく変動する傾向にあります。
このため、当社といたしましては、グループ企業それぞれの事業の強みを全体で共有・活用し、多様化する資産運用ニーズに迅速かつ的確に対応できる体制の確立を目指すことにより、安定した成長を実現できる経営体質の構築に努めております。
c.資金の財源及び資金の流動性
当社グループのコア事業であります証券ビジネスの資金需要の主なものは、信用取引買付代金の顧客への貸付及びトレーディングのロングポジションであり、逆に資金調達の主なものは信用取引売却代金の顧客からの借入及びトレーディングのショートポジションであります。これらは、市況環境の変動の影響を受け、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与えることとなります。なお、岡三証券株式会社では、安定的かつ機動的な財務運営のため、株式会社みずほ銀行をアレンジャーとしたコミットメントラインを総額210億円として更新いたしました。
d.経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、株主資本の効率的な活用が全てのステークホルダーの利益につながるものと考え、ROE(株主資本利益率)を、重要な指標と位置づけております。当連結会計年度におけるROEは、営業収益の減少により親会社株主に帰属する当期純利益が前年度比で減少したことから、0.6%(前年度比3.1ポイント低下)となりました。
当社グループでは、会社成長とともに、長期安定的な目標としてROE 10%を目指し、取り組みを続けてまいります。
e.セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
証券ビジネス
証券ビジネスにおいては、株式委託手数料や株券等トレーディング損益が減少し、当連結会計年度における証券ビジネスの営業収益は598億72百万円(前年度比82.0%)、セグメント利益は7億46百万円(同6.2%)となりました。
アセットマネジメントビジネス
アセットマネジメントビジネスにおいては、運用資産の拡大に努めましたが、公募株式投資信託の運用資産平均残高の減少により、当連結会計年度におけるアセットマネジメントビジネスの営業収益は110億79百万円(前年度比89.5%)、セグメント利益は9億47百万円(同67.8%)となりました。
サポートビジネス
当連結会計年度におけるサポートビジネスの営業収益は123億60百万円(前年度比100.5%)、セグメント利益は9億75百万円(前年度は8億46百万円の損失)となりました。
上記のセグメント別営業収益には、セグメント間の内部営業収益又は振替高が含まれており、セグメント利益は連結財務諸表の営業利益と調整を行っております。
なお、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」に記載の消費税等の課税取引額については、消費税等を含んでおりません。