訂正有価証券報告書-第82期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/09/11 14:15
【資料】
PDFをみる
【項目】
147項目
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、年度後半を中心に減速の動きが見られました。米中貿易摩擦を発端とした世界経済の減速により、輸出は前年同月比でマイナスが続いたほか、秋の大型台風による被害も生産活動に影響を与えました。また10月以降も、消費税増税による個人消費の鈍化に加え、新型コロナウイルス感染症の拡大による観光業や外食産業などを中心とした企業景況感の悪化など、経済の減速感は一段と強まりました。他方、失業率は概ね2%台前半で推移しましたが、消費者物価指数の上昇率はほぼ横ばいでの推移となり、物価上昇の勢いはさらに鈍化しました。
こうした環境のなか日経平均株価は、米中通商協議の動向や先進国の金融政策を意識しながら、秋口にかけて概ね20,000円~22,000円を中心としたレンジで推移しました。10月以降、消費税増税による個人消費の落ち込みが懸念されたものの、米中摩擦の緩和期待から連日史上最高値を更新し続ける米国株式市場の動きなどを好感し、日経平均株価も年末年始にかけて約1年2か月ぶりとなる24,000円台を回復しました。また外国為替市場でも、対ドルでは夏場にかけて円高含みの展開となったものの、夏場以降は米中協議の進展などを受けて緩やかな円安ドル高基調となりました。
しかし、年度末にかけては、世界的な新型コロナウイルス感染症の拡大による混乱が各方面に広がり、金融市場にもリスク回避の動きとして波及しました。為替市場では値幅が急拡大し、不安定な推移となりました。対ドルでは、3月上旬に一時1ドル=101円近辺まで円が急騰した一方、世界的にリスク回避を目的としたドルの手元流動性を確保する動きが強まると一転、3月下旬には1ドル=111円台まで円安ドル高が進行しました。
株式市場においても景気や企業業績の悪化懸念が広がり、特に2月後半以降は売り圧力が急速に強まりました。米国では3月にニューヨークダウ平均株価が過去最大の下落幅を記録したほか、日経平均株価も一時、約3年4か月ぶりとなる16,000円台をつけるなど、株式市場は世界的に急落の動きとなりました。ただし、日本を始めとする各国政府と中央銀行が大規模な経済対策と金融緩和策を矢継ぎ早に打ち出し、一定の安心感につながったことから株式市場は値を戻し、日経平均株価は18,917円1銭で年度末の取引を終えました。
このような事業環境のもと、中核子会社の岡三証券株式会社においては、市況に即した投資情報と多様な商品ラインアップを活用した地域密着型の営業活動を引き続き展開しました。一方、インターネット取引を主体とする岡三オンライン証券株式会社においては、新規口座開設の拡大に注力するとともに、マーケティング技術を用いたサービスの提供や10月に開始した取引所FX・CFDの対面サポートコースの訴求などにより、営業収益の拡大に努めました。また、岡三アセットマネジメント株式会社においては、経済環境分析やリサーチ強化で運用パフォーマンス向上を図るとともに、販売会社を通じてお客さまへ分かりやすくタイムリーな情報提供を行い、運用資産の拡大に努めました。商品としては、「ワールド・リート・セレクション(アジア)」や「ワールド・ソブリンインカム(愛称:十二単衣)」などの公募投信において純資産残高が増加しました。
a.財政状態
当連結会計年度末の資産合計は前連結会計年度末に比べ147億52百万円増加し4,404億53百万円、負債合計は前連結会計年度末に比べ254億88百万円増加し2,760億5百万円、純資産合計は前連結会計年度末に比べ107億36百万円減少し1,644億47百万円となりました。
b.経営成績
当連結会計年度における当社グループの営業収益は650億38百万円(前年度比95.8%)、純営業収益は640億52百万円(同95.9%)となりました。販売費・一般管理費は619億79百万円(同95.4%)となり、経常利益は54億88百万円(同189.1%)、親会社株主に帰属する当期純利益は36億26百万円(同425.1%)となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
証券ビジネスの営業収益は575億95百万円(前年度比96.2%)、セグメント利益は7億66百万円(同102.7%)となりました。
アセットマネジメントビジネスの営業収益は102億85百万円(前年度比92.8%)、セグメント利益は8億18百万円(同86.4%)となりました。
サポートビジネスの営業収益は126億10百万円(前年度比102.0%)、セグメント利益は11億79百万円(同120.9%)となりました。
上記のセグメント別営業収益には、セグメント間の内部営業収益又は振替高が含まれており、セグメント利益は連結財務諸表の営業利益と調整を行っております。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前年度末に比べ4億16百万円減少し、637億67百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果獲得した資金は、84億53百万円となりました。これは主に、有価証券担保貸付金及び有価証券担保借入金の増減335億9百万円による資金の獲得と、顧客分別金信託の増減196億50百万円、トレーディング商品の増減137億31百万円による資金の使用の差し引きによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、28億87百万円となりました。これは主に、投資有価証券の売却による収入24億44百万円による資金の獲得と、投資有価証券の取得による支出34億25百万円、無形固定資産の取得による支出17億97百万円による資金の使用の差し引きによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、59億55百万円となりました。これは主に、長期借入れによる収入60億円の資金の獲得と、子会社の自己株式の取得による支出46億95百万円、連結の範囲の変更を伴わない子会社株式の取得による支出43億円、長期借入金の返済による支出40億49百万円による資金の使用の差し引きによるものであります。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
1)財政状態
(資産合計)
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ147億52百万円増加し4,404億53百万円となりました。これは主に、トレーディング商品が296億58百万円、預託金が188億81百万円増加した一方で、有価証券担保貸付金が304億19百万円減少したことによるものであります。
(負債合計)
当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ254億88百万円増加し2,760億5百万円となりました。これは主に、約定見返勘定が49億7百万円、有価証券等受入未了勘定が41億77百万円、短期借入金が38億32百万円、有価証券担保借入金が30億90百万円増加した一方で、その他固定負債が14億38百万円減少したことによるものであります。
(純資産合計)
当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ107億36百万円減少し1,644億47百万円となりました。これは主に、資本剰余金が71億56百万円増加した一方で、非支配株主持分が156億26百万円、その他有価証券評価差額金が28億42百万円減少したことによるものです。
(トレーディング業務の概要)
当連結会計年度の年度末日時点のトレーディング商品の残高は以下のとおりであります。
2019年3月31日現在
(百万円)
2020年3月31日現在
(百万円)
資産の部のトレーディング商品93,614123,273
商品有価証券等93,598123,057
株式・ワラント1,587694
債券88,01199,381
CP及びCD4,00022,981
その他--
デリバティブ取引16215
オプション取引15165
先物取引049
負債の部のトレーディング商品64,66867,341
商品有価証券等64.66167,184
株式・ワラント922848
債券59,73043,354
CP及びCD4,00022,981
その他8-
デリバティブ取引6157
オプション取引4154
先物取引22

2)経営成績
当連結会計年度における当社グループの営業収益は650億38百万円(前年度比95.8%)、純営業収益は640億52百万円(同95.9%)となりました。販売費・一般管理費は619億79百万円(同95.4%)となり、経常利益は54億88百万円(同189.1%)、親会社株主に帰属する当期純利益は36億26百万円(同425.1%)となりました。
受入手数料
受入手数料の合計は397億32百万円(前年度比92.4%)となりました。主な内訳は次のとおりです。
前連結会計年度
(自 2018年4月1日
至 2019年3月31日)
(百万円)
当連結会計年度
(自 2019年4月1日
至 2020年3月31日)
(百万円)
入手数料42,99539,732
委託手数料14,31414,933
引受け・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の手数料677384
募集・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の取扱手数料11,7769,738
その他の受入手数料16,22714,676

委託手数料
当連結会計年度における東証の1日平均売買高(内国普通株式)は17億10百万株(前年度比92.5%)、売買代金は2兆7,835億円(同91.2%)となりました。こうしたなか、株式委託手数料は143億36百万円(同103.1%)となりました。また、債券委託手数料は0百万円(同7.3%)、その他の委託手数料は5億96百万円(同146.0%)となり、委託手数料の合計は149億33百万円(同104.3%)となりました。
引受け・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の手数料
当連結会計年度における株式の引受けは、主幹事案件が3件あったものの前年度に大型の新規公開案件があった反動から引受金額が減少しました。一方、債券の引受けは、主幹事獲得や個人投資家向け債券の引受けなどにより、主に事業債の引受金額が増加しました。
これらの結果、株式の手数料は1億51百万円(前年度比26.7%)、債券の手数料は2億33百万円(同213.6%)となり、株式・債券を合わせた引受け・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の手数料の合計は3億84百万円(同56.8%)となりました。
募集・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の取扱手数料、その他の受入手数料
募集・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の取扱手数料、その他の受入手数料につきましては、投資信託関連収益がその大半を占めています。
当連結会計年度における公募投資信託の販売額は、米中貿易問題に起因した投資家心理の悪化や世界的な新型コロナウイルス感染症流行に伴う経済の収縮懸念から、前年度比で減少しました。米国の高利回り資産に投資するファンドや、リスクの抑制・分散が期待できるソブリン債ファンドやバランス型ファンドの販売額は増加した一方、国内外の株式型ファンドを中心に販売額が減少しました。
これらの結果、募集・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の取扱手数料は97億38百万円(前年度比82.7%)となりました。また、その他の受入手数料については、主に投資信託の信託報酬等により146億76百万円(同90.4%)となりました。
トレーディング損益
前連結会計年度
(自 2018年4月1日
至 2019年3月31日)
(百万円)
当連結会計年度
(自 2019年4月1日
至 2020年3月31日)
(百万円)
レーディング損益22,30522,696
株券等トレーディング損益12,88010,507
債券等トレーディング損益9,47812,006
その他のトレーディング損益△53182

株券等トレーディング損益は主に米国株式を中心とした外国株式の国内店頭取引、債券等トレーディング損益は外国債券の顧客向け取扱いに伴う収益がその大半を占めています。
当連結会計年度においては、米中摩擦や新型コロナウイルス感染症の世界的流行など世界経済の先行き不安が意識される状況が続いたことから、外国株式の国内店頭取引にかかる個人の売買は前年度比で減少しました。一方で、外国債券はESG債の取扱いなども寄与し、販売額が前年度比で増加しました。
これらの結果、株券等トレーディング損益は105億7百万円(前年度比81.6%)、債券等トレーディング損益は120億6百万円(同126.7%)となり、その他のトレーディング損益1億82百万円(前年度は53百万円の損失)を含めたトレーディング損益の合計は226億96百万円(前年度比101.8%)となりました。
金融収支
金融収益は17億2百万円(前年度比100.4%)、金融費用は9億86百万円(同92.0%)となり、差引の金融収支は7億16百万円(同114.7%)となりました。
その他の営業収益
金融商品取引業及び同付随業務に係るもの以外の営業収益は、9億7百万円(前年度比103.3%)となりました。
販売費・一般管理費
販売費・一般管理費は、人件費や取引関係費の減少等により、619億79百万円(前年度比95.4%)となりました。
営業外損益及び特別損益
営業外収益は持分法による投資利益の計上等により35億64百万円、営業外費用は1億48百万円となりました。また、特別利益は投資有価証券売却益の計上等により16億62百万円、特別損失は減損損失の計上等により8億96百万円となりました。
3)経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループのコア事業であります証券ビジネスの営業収益は、株式、債券、金利、為替等の市況環境変動の影響を受けるため、当社グループの経営成績は連結会計年度毎に大きく変動する傾向にあります。
このため、当社といたしましては、グループ企業それぞれの事業の強みを全体で共有・活用し、多様化する資産運用ニーズに迅速かつ的確に対応できる体制の確立を目指すことにより、安定した成長を実現できる経営体質の構築に努めております。
4)経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、株主資本の効率的な活用が全てのステークホルダーの利益につながるものと考え、ROE(株主資本利益率)を、重要な指標と位置づけております。当連結会計年度におけるROEは、営業収益は減少した一方、販売費・一般管理費の減少や営業外収益、特別利益の計上等により親会社株主に帰属する当期純利益が前年度比で増加したことから、2.4%(前年度比1.8ポイント上昇)となりました。
当社グループでは、会社成長とともに、長期安定的な目標としてROE 10%を目指し、取り組みを続けてまいります。
5)セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
証券ビジネス
証券ビジネスにおいては、株券等トレーディング損益や投資信託関連収益の減少等が影響し、当年度における証券ビジネスの営業収益は575億95百万円(前年度比96.2%)、セグメント利益は7億66百万円(同102.7%)となりました。
アセットマネジメントビジネス
アセットマネジメントビジネスにおいては、運用資産の拡大に努めましたが、公募株式投資信託の運用資産平均残高の減少により、当年度におけるアセットマネジメントビジネスの営業収益は102億85百万円(前年度比92.8%)、セグメント利益は8億18百万円(同86.4%)となりました。
サポートビジネス
当年度におけるサポートビジネスの営業収益は126億10百万円(前年度比102.0%)、セグメント利益は11億79百万円(同120.9%)となりました。
上記のセグメント別営業収益には、セグメント間の内部営業収益又は振替高が含まれており、セグメント利益は連結財務諸表の営業利益と調整を行っております。
なお、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」に記載の消費税等の課税取引額については、消費税等を含んでおりません。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
キャッシュ・フローの状況の分析につきましては、「第2 事業の状況 3経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社グループの資本の財源及び資本の流動性につきましては、次の通りです。
当社グループのコア事業であります証券ビジネスの資金需要の主なものは、信用取引買付代金の顧客への貸付及びトレーディングのロングポジションであり、逆に資金調達の主なものは金融機関借入、コールマネー、信用取引売却代金の顧客からの借入及びトレーディングのショートポジションであります。これらは、市況環境の変動の影響を受け、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与えることとなります。なお、岡三証券株式会社では、安定的かつ機動的な財務運営のため、株式会社みずほ銀行をアレンジャーとしたコミットメントラインを総額210億円として更新いたしました。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成に際しては、連結決算日における資産・負債及び連結会計年度における収益・費用の報告数値に影響を与える会計上の見積り及び仮定設定を行う必要があり、過去の実績やそれぞれの状況に応じて合理的と考えられる仮定設定に基づいて、継続して判断・評価及び見積りを行っております。
なお、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。特に以下の重要な会計方針については、当社の連結財務諸表の作成において使用される当社の重要な見積りに大きな影響を及ぼすことがあります。
a.投資有価証券(その他有価証券)の減損
当社グループは、その他有価証券で時価のある株式については、連結決算日の時価が取得原価に比べ50%以上下落した場合には、原則として減損処理を行い、30%以上50%未満下落した場合には、回復可能性があると認められるものを除き、減損処理を行っております。 従って、将来の市況悪化又は投資先の業績不振により、当連結会計年度末現在の簿価に反映されていない損失又は簿価の回収不能が生じた場合、評価損の計上が必要となる可能性があります。また、一部の子会社は、発行会社の財政状態等を総合的に勘案して回復する見込みを検討し、回復する見込みがないと判断したものについては、減損処理を行っております。
b.退職給付債務
退職給付債務及び退職給付費用の計算に用いる、割引率、退職率、死亡率、昇給率、長期期待運用収益率などは合理的に見積ることとされているため、見積数値と実績には差異が生じることとなります。この数理計算上の差異については、当社グループでは5年の定額法により処理することとしているため、翌期以降の業績に影響を与えることとなります。
c.固定資産の減損
当社グループでは、各資産グループにおいて、収益性が著しく低下した資産については、当該資産の帳簿価額を回収可能額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しています。
d.繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産について、将来の利益計画に基づいた課税所得が十分に確保できることや、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。