有価証券報告書-第83期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

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2021/06/30 11:03
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(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
わが国経済は、当初は新型コロナウイルス感染症拡大の影響により大きく落ち込みましたが、その後は金融・財政政策の効果もあって総じて持ち直しの動きとなりました。ただ、生産や輸出では、前年比のマイナス幅を縮小したものの世界的な半導体不足の影響などもあり力強さに欠ける状況となりました。また、個人消費も、スーパー販売額は在宅時間の増加を受けて好調となったものの、百貨店販売は不振が続くなど、回復の強弱はまちまちの様相となりました。
こうした環境のなか株式相場は、年度を通じて上昇基調となりました。新型コロナウイルス感染症拡大による先行き不透明感から4月上旬に18,000円前後で推移していた日経平均株価は、各国政府による財政出動や主要中央銀行による大規模な金融緩和策などに支えられ、4月末には2万円台を回復しました。その後、夏場を挟んで膠着状態が続いたものの、一部主要国における経済活動再開や菅新政権への期待、11月の米大統領選挙通過などを受けて一段高の展開となりました。また、年明けには米国で議会勢力が確定し、大規模な財政出動への期待が高まったことを受けて、世界各国の株式市場で高値更新が相次ぎました。日経平均株価も2月に約30年ぶりの高値となる30,714円52銭を記録し、29,178円80銭で当年度の取引を終えました。
一方、為替市場では、米国で強力な金融緩和政策が実施され、日米の金利差の縮小が進んだことで円高ドル安基調となり、年明けには一時1ドル=102円台をつけました。ただし、その後は米国におけるワクチン接種の進展や大規模なインフラ投資計画の発表を受けて景気の急回復期待が高まり、米長期金利の上昇により日米の金利差が拡大したため円安ドル高が一気に進み、1ドル=110円台で当年度の取引を終えました。
このような状況のもと当社グループ各社においては、新型コロナウイルス感染症の拡大が続くなか、お客さまならびに社員の健康・安全を確保しつつ営業活動を行いました。
中核子会社の岡三証券株式会社では、2020年4月にスタートした新中期経営計画に基づき「お客さま本位のサービス提供」に努めました。お客さまとの接点拡充のための店舗戦略やチーム制営業、スマホ・タブレットなどのデジタルツール活用、オンライントレードの刷新、コンタクトセンター機能の拡充などの施策により、お客さまの体験価値(カスタマー・エクスペリエンス=CX)向上に取り組みました。一方、インターネット取引を主体とする岡三オンライン証券株式会社では、11月に日本株手数料を大幅に改定し、日本株の1日の約定代金合計200万円までを無料としたほか、取引所FX・CFDの営業基盤拡充に努めた結果、個人投資家の取引の活発化などを背景に、稼働口座数は過去最高を記録しました。なお、同社については、本年10月をめどに岡三証券株式会社との経営統合を行うことを決定いたしました。また、岡三アセットマネジメント株式会社においては、経済環境分析やリサーチ強化で運用パフォーマンス向上を図るとともに、販売会社を通じてお客さまへ分かりやすくタイムリーな情報提供を行い、運用資産の拡大に努めました。商品としては、新規設定した「PIMCOダイナミック・マルチアセット戦略ファンド(資産成長型)/(年2回決算型)(愛称:世界のマイスター)」や「ワールド・リート・セレクション(アジア)」などの公募投信において純資産残高が増加しました。
さらに、アライアンス拡大などにも注力いたしました。3月には株式会社証券ジャパンの株式を追加取得し、同社を子会社化いたしました。また、岡三にいがた証券株式会社において日産証券株式会社の新潟県内店舗に係る一部事業譲受を実施したほか、岡三オンライン証券株式会社においても同業他社からの取引所CFD口座の承継を実施いたしました。
a.財政状態
当連結会計年度末の資産合計は前連結会計年度末に比べ3,429億86百万円増加し7,834億40百万円、負債合計は前連結会計年度末に比べ3,171億30百万円増加し5,931億36百万円、純資産合計は前連結会計年度末に比べ258億56百万円増加し1,903億4百万円となりました。
b.経営成績
当連結会計年度における当社グループの営業収益は672億59百万円(前年度比103.4%)、純営業収益は661億9百万円(同103.2%)となりました。販売費・一般管理費は610億2百万円(同98.4%)となり、経常利益は74億26百万円(同135.3%)、親会社株主に帰属する当期純利益は60億17百万円(同165.9%)となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
証券ビジネスの営業収益は607億72百万円(前年度比105.5%)、セグメント利益は43億27百万円(同564.5%)となりました。
アセットマネジメントビジネスの営業収益は91億12百万円(前年度比88.6%)、セグメント利益は4億73百万円(同57.8%)となりました。
サポートビジネスの営業収益は128億55百万円(前年度比101.9%)、セグメント利益は13億97百万円(同118.5%)となりました。
上記のセグメント別営業収益には、セグメント間の内部営業収益又は振替高が含まれており、セグメント利益は連結財務諸表の営業利益と調整を行っております。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前年度末に比べ12億49百万円減少し、625億17百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果使用した資金は、409億41百万円となりました。これは主に、トレーディング商品の増減890億15百万円、預り金の増減169億31百万円による資金の獲得と、有価証券担保貸付金及び有価証券担保借入金の増減1,450億円による資金の使用の差し引きによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、37億17百万円となりました。これは主に、投資有価証券の取得による支出20億88百万円、無形固定資産の取得による支出20億50百万円による資金の使用によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果獲得した資金は、426億4百万円となりました。これは主に、短期借入金の純増減による449億69百万円の資金の獲得と、配当金の支払額19億75百万円による資金の使用の差し引きによるものであります。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
1)財政状態
(資産合計)
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ3,429億86百万円増加し7,834億40百万円となりました。これは主に、有価証券担保貸付金が1,911億39百万円、トレーディング商品が890億45百万円、信用取引資産が314億96百万円増加したことによるものであります。
(負債合計)
当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ3,171億30百万円増加し5,931億36百万円となりました。これは主に、トレーディング商品が902億51百万円、約定見返勘定が877億69百万円、有価証券担保借入金が468億21百万円、短期借入金が463億82百万円、預り金が274億14百万円増加したことによるものであります。
(純資産合計)
当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ258億56百万円増加し1,903億4百万円となりました。これは主に、非支配株主持分が136億74百万円、その他有価証券評価差額金が67億47百万円、利益剰余金が40億40百万円増加したことによるものであります。
(トレーディング業務の概要)
当連結会計年度の年度末日時点のトレーディング商品の残高は以下のとおりであります。
2020年3月31日現在
(百万円)
2021年3月31日現在
(百万円)
資産の部のトレーディング商品123,273212,318
商品有価証券等123,057212,312
株式・ワラント6943,343
債券99,381208,969
CP及びCD22,981-
その他--
デリバティブ取引2156
オプション取引1655
先物取引490
負債の部のトレーディング商品67,341157,593
商品有価証券等67,184157,560
株式・ワラント8481,417
債券43,354156,143
CP及びCD22,981-
その他--
デリバティブ取引15732
オプション取引1545
先物取引227

2)経営成績
当連結会計年度における当社グループの営業収益は672億59百万円(前年度比103.4%)、純営業収益は661億9百万円(同103.2%)となりました。販売費・一般管理費は610億2百万円(同98.4%)となり、経常利益は74億26百万円(同135.3%)、親会社株主に帰属する当期純利益は60億17百万円(同165.9%)となりました。
受入手数料
受入手数料の合計は438億50百万円(前年度比110.4%)となりました。主な内訳は次のとおりです。
前連結会計年度
(自 2019年4月1日
至 2020年3月31日)
(百万円)
当連結会計年度
(自 2020年4月1日
至 2021年3月31日)
(百万円)
入手数料39,73243,850
委託手数料14,93322,576
引受け・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の手数料384434
募集・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の取扱手数料9,7386,937
その他の受入手数料14,67613,902

委託手数料
当連結会計年度における東証の1日平均売買高(内国普通株式)は18億97百万株(前年度比110.9%)、売買代金は3兆1,293億円(同112.4%)となりました。こうしたなか、中核子会社である岡三証券株式会社においては、国内株式、外国株式ともに委託売買代金が前年度比で増加しました。
これらの結果、株式委託手数料は218億94百万円(同152.7%)となりました。また、債券委託手数料は11百万円(同77.5倍)、その他の委託手数料は6億70百万円(同112.4%)となり、委託手数料の合計は225億76百万円(同151.2%)となりました。
引受け・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の手数料
当連結会計年度における株式の引受けは、主幹事案件や大型案件の引受けにより前年度比で引受金額が増加しました。一方、債券の引受けは、個人投資家向け社債の大型案件の引受けが減少したことなどから、事業債の引受金額が減少しました。
これらの結果、株式の手数料は2億74百万円(前年度比181.1%)、債券の手数料は1億59百万円(同68.5%)となり、株式・債券を合わせた引受け・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の手数料の合計は4億34百万円(同112.9%)となりました。
募集・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の取扱手数料、その他の受入手数料
募集・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の取扱手数料、その他の受入手数料につきましては、投資信託関連収益がその大半を占めています。
当連結会計年度における公募投資信託の販売額は、年度後半は好調な市況を追い風に回復基調となったものの、前年度との比較では新型コロナウイルス感染症拡大による先行き不透明感などから減少となりました。Withコロナ下において成長期待が高まったテクノロジーやヘルスケアに投資するファンドや、リスクの抑制・分散が期待できるバランス型ファンドなどの販売額が増加した一方、高配当株式や外国債券など相対的に高いインカムが期待できる商品を投資対象とするファンドを中心に販売額が減少しました。
これらの結果、募集・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の取扱手数料は69億37百万円(前年度比71.2%)となりました。また、その他の受入手数料については、主に投資信託の信託報酬等により139億2百万円(同94.7%)となりました。
トレーディング損益
前連結会計年度
(自 2019年4月1日
至 2020年3月31日)
(百万円)
当連結会計年度
(自 2020年4月1日
至 2021年3月31日)
(百万円)
レーディング損益22,69620,767
株券等トレーディング損益10,50713,125
債券等トレーディング損益12,0067,882
その他のトレーディング損益182△240

株券等トレーディング損益は主に米国株式を中心とした外国株式の国内店頭取引、債券等トレーディング損益は外国債券の顧客向け取扱いに伴う収益がその大半を占めています。
当連結会計年度においては、外国株式は国内店頭取引の売買が前年度比で増加した一方、外国債券は個人向けESG債の販売が好調だった前年度と比較して販売額は減少しました。
これらの結果、株券等トレーディング損益は131億25百万円(前年度比124.9%)、債券等トレーディング損益は78億82百万円(同65.7%)となり、その他のトレーディング損益2億40百万円の損失(前年度は1億82百万円の利益)を含めたトレーディング損益の合計は207億67百万円(前年度比91.5%)となりました。
金融収支
金融収益は17億23百万円(前年度比101.2%)、金融費用は11億50百万円(同116.7%)となり、差引の金融収支は5億72百万円(同79.9%)となりました。
その他の営業収益
金融商品取引業及び同付随業務に係るもの以外の営業収益は、9億18百万円(前年度比101.2%)となりました。
販売費・一般管理費
販売費・一般管理費は、取引関係費や人件費の減少等により、610億2百万円(前年度比98.4%)となりました。
営業外損益及び特別損益
営業外収益は受取配当金や持分法による投資利益の計上等により24億99百万円、営業外費用は1億78百万円となりました。また、特別利益は負ののれん発生益の計上等により72億20百万円、特別損失は段階取得に係る差損や減損損失の計上等により64億73百万円となりました。
3)経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループのコア事業であります証券ビジネスの営業収益は、株式、債券、金利、為替等の市況環境変動の影響を受けるため、当社グループの経営成績は連結会計年度毎に大きく変動する傾向にあります。
このため、当社といたしましては、グループ企業それぞれの事業の強みを全体で共有・活用し、多様化する資産運用ニーズに迅速かつ的確に対応できる体制の確立を目指すことにより、安定した成長を実現できる経営体質の構築に努めております。
4)経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、株主資本の効率的な活用が全てのステークホルダーの利益につながるものと考え、ROE(株主資本利益率)を、重要な指標と位置づけております。当連結会計年度におけるROEは、営業収益が増加したことに加え、販売費・一般管理費の減少や営業外収益、特別利益の計上等により親会社株主に帰属する当期純利益が前年度比で増加したことから、3.7%(前年度比1.3ポイント上昇)となりました。
当社グループでは、会社成長とともに、長期安定的な目標としてROE10%を目指し、取り組みを続けてまいります。
5)セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
証券ビジネス
証券ビジネスにおいては、株式委託手数料や株券等トレーディング損益が増加した一方、主に外国債券に係るトレーディング損益や投資信託販売に係る収益が減少し、当年度における証券ビジネスの営業収益は607億72百万円(前年度比105.5%)、セグメント利益は43億27百万円(同564.5%)となりました。
アセットマネジメントビジネス
アセットマネジメントビジネスにおいては、運用資産の拡大に努めましたが、運用資産平均残高の減少により、当年度におけるアセットマネジメントビジネスの営業収益は91億12百万円(前年度比88.6%)、セグメント利益は4億73百万円(同57.8%)となりました。
サポートビジネス
当年度におけるサポートビジネスの営業収益は128億55百万円(前年度比101.9%)、セグメント利益は13億97百万円(同118.5%)となりました。
上記のセグメント別営業収益には、セグメント間の内部営業収益又は振替高が含まれており、セグメント利益は連結財務諸表の営業利益と調整を行っております。
なお、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」に記載の消費税等の課税取引額については、消費税等を含んでおりません。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
キャッシュ・フローの状況の分析につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社グループの資本の財源及び資本の流動性につきましては、次の通りです。
当社グループのコア事業であります証券ビジネスの資金需要の主なものは、信用取引買付代金の顧客への貸付及びトレーディングのロングポジションであり、逆に資金調達の主なものは金融機関借入、コールマネー、信用取引売却代金の顧客からの借入及びトレーディングのショートポジションであります。これらは、市況環境の変動の影響を受け、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与えることとなります。なお、岡三証券株式会社では、安定的かつ機動的な財務運営のため、株式会社みずほ銀行をアレンジャーとしたコミットメントラインを総額210億円として更新いたしました。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。