有価証券報告書-第44期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)

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2018/06/28 14:46
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(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における我が国経済は、好調な企業業績を背景に雇用や所得環境の改善が続く中、政府の各種政策の効果もあり景気は緩やかな回復基調で推移いたしました。一方、海外では地政学的リスクの高まりや、中国をはじめとするアジア新興国等の経済動向や欧米の政策動向により世界経済の不確実性が高まるなど、景気の先行きは不透明な状況が続いております。
当社グループの属する情報サービス産業界におきましては、第4次産業革命に向けてIoT技術によるビッグデータの収集や、AIを使ったその分析や活用などといった新たなビジネスチャンスが生まれています。企業のシステム投資が増加することにより対応する技術者への需要は拡大していますが、一方で供給が追い付かず人件費や採用コストが上昇する状況となっております。
このような環境の中、当社グループでは拡大する市場の需要へ対応すべく、新卒採用を技術者増強の柱として強化するとともに、引き続き人材育成にも注力してまいりました。また、自社開発の住宅建設業者向けパッケージソフトウェアの全面改良といった投資を行いつつ、採用や教育といった将来に向けての投資を実施することで経費は増加しましたが、稼働率の向上や受注単価改善などに努めた結果、経費増加分を吸収し増益となりました。
この結果、当連結会計年度の財政状態および経営成績は以下のとおりとなりました。
a.財政状態
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ930百万円増加し、14,311百万円となりました。
当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ151百万円増加し、3,981百万円となりました。
当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ778百万円増加し、10,330百万円となりました。
b.経営成績
当連結会計年度の経営成績は、売上高は15,351百万円(前連結会計年度比5.6%増)、経常利益は1,389百万円(同8.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は941百万円(同5.1%増)となりました。
セグメント別の業績は次のとおりであります。
(イ)システムコア事業
売上高は3,135百万円(前連結会計年度比10.7%増)、セグメント利益は834百万円(同17.6%増)となりました。
(ロ)ITソリューション事業
売上高は3,986百万円(前連結会計年度比1.7%減)、セグメント利益は564百万円(同5.6%減)となりました。
(ハ)ネットワークサービス事業
売上高は8,229百万円(前連結会計年度比7.5%増)、セグメント利益は1,563百万円(同9.6%増)となりました。
(注) 記載金額には消費税等は含まれておりません。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度より220百万円増加し、当連結会計年度末には4,383百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は966百万円(前連結会計年度比6.6%減)となりましたが、これは主に税金等調整前当期純利益の計上(1,397百万円)や減価償却費(99百万円)、賞与引当金の増加(33百万円)、退職給付に係る負債の増加(90百万円)、利息及び配当金の受取額(35百万円)といった増加要因があった一方で、売上債権の増加(239百万円)、仕入債務の減少(21百万円)や、法人税等の支払(501百万円)などといった減少要因があったことなどによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は479百万円(前連結会計年度比34.7%増)となりましたが、これは主に有価証券の償還による収入(3,000百万円)といった増加要因があった一方で、有価証券の取得による支出(2,800百万円)や無形固定資産の取得による支出(254百万円)及び投資有価証券の取得による支出(411百万円)といった減少要因があったことなどによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は267百万円(前連結会計年度比31.9%減)となりましたが、これは主に短期借入れによる収入(200百万円)といった増加要因があった一方で、短期借入金の返済による支出(180百万円)や自己株式の取得による支出(20百万円)、配当金の支払による支出(264百万円)といった減少要因があったことなどによるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 平成29年4月1日
至 平成30年3月31日)
前連結会計年度比(%)
システムコア事業(百万円)3,140110.7
ITソリューション事業(百万円)4,344102.1
ネットワークサービス事業(百万円)8,121106.2
合計(百万円)15,606105.9

(注)1.金額は販売価格で表示しており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
b.受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称受注高(百万円)前連結会計
年度比(%)
受注残高(百万円)前連結会計
年度比(%)
システムコア事業3,212110.7469119.7
ITソリューション事業4,03797.5918105.8
ネットワークサービス事業8,395107.71,334114.2
合計15,644105.42,722112.1

(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称当連結会計年度
(平成29年4月1日から
平成30年3月31日まで)
前連結会計年度比(%)
システムコア事業(百万円)3,135110.7
ITソリューション事業(百万円)3,98698.3
ネットワークサービス事業(百万円)8,229107.5
合計(百万円)15,351105.6

(注)1.金額は販売価格で表示しており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末日現在において判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たりまして、債権の回収可能性、法人税等、退職金などに関する見積り及び判断に対して評価を行っております。
経営者は、過去の実績や状況に応じ合理的と考えられる根拠・要因に基づいて、資産・負債の簿価及び収益・費用の報告数字について判断を行っております。なお、見積りは特有の不確実性を有しているため、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表の作成時に、以下の項目において使用される重要な判断と見積りが大きな影響を及ぼすと考えております。
(貸倒引当金)
当社グループは、顧客から債権が回収できない時に発生する損失の見積額について、貸倒引当金を計上しております。顧客の財務状態が悪化しその支払い能力が低下したことにより貸倒の懸念が発生した場合、回収不能見込額を追加引当する可能性があります。
(固定資産の減損)
当社グループは、管理会計上の区分であり、独立したキャッシュ・フローを生み出す最小の単位でもあるビジネスユニットごとに固定資産のグルーピングを行っております。
当該固定資産のグルーピングの方法による資産グループに減損の兆候が見られた場合、当該資産グループから得られる割引前キャッシュ・フロー等をもとに減損損失の認識の必要性を検討しております。
その結果、減損損失の認識が必要と判断された場合、固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで減額し、減損損失の計上を行うこととしておりますが、将来の経済的環境により新たに減損損失の計上が必要となる可能性があります。
(投資の減損)
当社グループは、長期的な取引関係維持のため、特定のお客様及び金融機関の株式を所有しております。これらの株式には変動する時価がある上場株式と時価のない未上場株式が含まれます。
当社グループでは時価が著しく下落したと判断した場合、投資の減損を計上しております。未上場会社の投資の場合は、それらの会社の純資産額が簿価に比べ著しく下落し回復の可能性がないと判断した場合に減損を計上しております。
なお、当連結会計年度末における保有株式については、将来の株式市況悪化又は投資先の業績不振等により評価損の計上が必要となる可能性があります。
(繰延税金資産)
当社グループは、繰延税金資産の計上に当たっては、将来の課税所得及び実現性の高い税務計画を基に検討し、繰延税金資産の全部又は一部を将来実現できないと判断した場合、当該判断を行った期間に繰延税金資産を取崩し、費用として計上する可能性があります。
(退職給付に係る負債)
従業員退職給付費用及び債務は、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されております。これらの前提条件には、割引率、退職率、統計数値に基づいて算出される死亡率などが含まれます。
割引率は日本の国債の市場利回りを在籍従業員の平均残存勤務年数で調整して算出しております。実際の結果が前提条件と異なる場合又は前提条件が変更された場合、その影響は累積され、将来にわたって規則的に認識されるため、一般的には将来期間において認識される費用及び計上される債務に影響を及ぼします。
(工事進行基準)
当社グループは、進捗部分について成果の確実性が認められる契約については、売上高及び売上原価について工事進行基準を採用し、工事の進捗率の見積りは原価比例法を採用しておりますが、工事収益総額、工事原価総額及び決算日における工事進捗について、当初の見積りに反して信頼性のある見積りができなくなった結果、成果の確実性が失われたと判断した場合、認識された収益額に影響を及ぼす可能性があります。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績等
(イ)財政状態
(資産合計)
当連結会計年度末の資産は、総資産が14,311百万円で前連結会計年度末比930百万円の増加(前連結会計年度末比7.0%増)となりましたが、これは主に現金及び預金が220百万円、受取手形及び売掛金が239百万円、有価証券が498百万円、無形固定資産その他に含まれているソフトウェア仮勘定が218百万円、それぞれ増加した一方で、投資有価証券が206百万円減少したことなどによるものであります。
(負債合計)
当連結会計年度末の負債は3,981百万円で前連結会計年度末比151百万円の増加(前連結会計年度末比4.0%増)となりましたが、これは主に、賞与引当金が33百万円、流動負債その他に含まれる未払費用が107百万円、同預り金が87百万円、退職給付に係る負債が63百万円、それぞれ増加した一方で、買掛金が21百万円、流動負債その他に含まれる未払金が107百万円減少したことなどによるものであります。
(純資産合計)
当連結会計年度末の純資産は10,330百万円で前連結会計年度末比778百万円の増加(前連結会計年度末比8.1%増)となりましたが、これは主に利益剰余金が675百万円、その他有価証券評価差額金が79百万円、退職給付に係る調整累計額が18百万円、新株予約権が14百万円増加した一方で、自己株式の取得により12百万円減少したことなどによるものであります。
(ロ)経営成績
(売上高)
当連結会計年度の売上高は、事業規模の拡大などにより、前連結会計年度に比べ5.6%増の15,351百万円となりました。その内、システムコア事業は車載関連業務を中心に受注を拡大させ、優良な外部ビジネスパートナーを積極活用することで技術者不足を解消したことなどから、売上高は前連結会計年度に比べ10.7%増の3,135百万円に、ITソリューション事業はパッケージソフトウェア開発の長期化や大口開発案件の開発遅延の発生により開発要員が不足し、計画していた新規受注の一部が実現できなかったことなどから、売上高は前連結会計年度に比べ1.7%減の3,986百万円に、ネットワークサービス事業は新卒採用者や中途採用者の積極投入を続けたことなどから、前連結会計年度に比べ7.5%増の8,229百万円となりました。
(売上原価、販売費及び一般管理費)
当連結会計年度の売上原価は、新入社員や中途採用者が加わったことや、案件受注拡大のために外部ビジネスパートナーを積極的に活用したことなどから、前連結会計年度に比べ5.5%増の12,067百万円となりました。
当連結会計年度の販売費及び一般管理費は、厳しい採用環境下の新卒採用者数の増加や新入社員教育の実施に伴う費用の増加や、ソフトウェアのバージョンアップによる一時的な費用の増加があったことなどから、前連結会計年度に比べ3.8%増の1,928百万円となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
親会社株主に帰属する当期純利益は、新卒採用や新入社員教育に対するコスト増はあったものの、新入社員の早期戦力化による稼働率の向上や外部ビジネスパートナーを使った受注促進などによる事業規模拡大と、低採算案件から高採算案件へのシフトや生産性の向上による利益率の改善に努めてきたことなどから、前連結会計年度に比べ5.1%増の941百万円となりました。
(ハ)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
b.経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループは、企業価値向上と競争力強化のため、単なる量の追求から質の向上を重視する成長を志向し、筋肉質で効率的な企業体質づくりを推進しております。そのため具体的な経営指標としては、売上高目標や成長率といったものではなく利益率に注目し、売上高営業利益率8%を目標として掲げてまいりました。直近の3期ではその水準を維持出来ております。
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因としては、人材の確保と育成が挙げられます。より多くの案件を受注することで業績を向上させることは可能ですが、そのためには必要な能力を備えた技術者をどれだけ確保できるかがポイントとなります。不足分を外部のビジネスパートナーに依存した場合、その経験や技術ノウハウが当社グループ内に残らないことや情報セキュリティ面でのリスクもあり、当社グループでは、新卒や中途採用を問わず人材の確保とその育成を戦略的に進めるため、採用部門と育成部門を統合し「HR本部(Human Resources)を新設しております。育成面では、高い技術力を身に付けるための資格取得を推奨するとともに、社内教育機関であるKSKカレッジを中心に全面的に従業員をバックアップする体制を整えております。
また、別の要因として同業他社との差別化が挙げられます。圧倒的な競争力を得るためには、高品質なサービスを提供し続けることでお客様満足度を向上させる必要があります。そのため、より高い品質レベルを目指した全社レベルの品質向上プロジェクトをスタートさせております。
各事業セグメントの業績については、異なる3つの事業セグメントをバランスよく成長させることを目指してまいりましたが、近年はそのバランスが変わってきております。
システムコア事業セグメントは、半導体不況に伴う国内半導体メーカーの再編、携帯電話からスマートフォンへの移行に伴う国内市場の縮小などの影響を受け近年縮小傾向でありましたが、IoTを背景に半導体需要が伸び、車載機器等の組込技術への技術者転換の効果がでてきたことで業績が回復してきております。
ただし、専門的な技術が必要なことから技術者の確保が厳しく、需要はありながらも対応する技術者を確保できない状況が続いておりました。当連結会計年度は外部の優良なビジネスパートナーを確保できたことで、需要を取り込みことが出来、業績の向上に大きく貢献しました。
ITソリューション事業セグメントは、独自開発のパッケージソフトウェアが、機能面や技術面で陳腐化してきたことなどから、市場競争力を回復する為に全面改良することを決定しました。開発過程で更なる改良などを行ったため、開発期間が予定より大幅に伸延したことで、当初予定していた新規案件の受注の一部を断念せざるを得ず業績悪化要因となりましたが、来期以降パッケージソフトウェア販売が業績向上に寄与するものと考えております。なお、大口開発案件で納期が遅延したことについては、品質向上を目指したプロジェクトを発足させ、同様の問題が再発しない仕組みを整えることで、顧客満足度を向上させ業績の回復に努めてまいります。
ネットワークサービス事業セグメントは、売上、利益ともに成長著しいセグメントで、その比率は全体の50%を超えております。インターネットの高速化、企業内ネットワークからクラウド環境へと、市場の発展に伴い関連する需要が急拡大しておりますが、当社グループでは将来需要が増加することを予想しネットワークに特化したグループ会社を設立するなど、これまで拡大する需要に対応してまいりました。ネットワーク設計や施工だけではなく、運用・保守といった安定受注につながる分野までカバーしており、今後は更に先進分野や高採算案件に人的資源を重点的に投入し当社グループ業績の牽引役としてまいります。
c.資本の財源及び資金の流動性
(資金需要)
当社グループの事業活動における運転資金需要の主なものは、各事業で必要な人件費、不動産賃借料、開発に使用するPCやサーバーの購入費用等があります。また、採用活動に伴う費用や従業員の教育費用、全社的な規模で使用する基幹システムの導入・保守などの一般管理費や、新規事業や新たなサービスや製品を生み出すための研究開発費用があります。
(資金運用)
当社グループの事業活動に必要な運転資金を確保した後に残る資金を有効利用するため、資金運用を行っております。運用対象とする金融商品の選定に当たっては、換金性の高さと安全性を優先しております。
(財務政策)
当社グループの事業活動に必要な運転資金は、主として内部資金を活用し金融機関からの借入に依存しておりません。また、事業活動に必要の無い資産は極力保有しないことにしております。