有価証券報告書-第25期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
ⅰ.財政状態
当連結会計年度末におきましては、主に、現金及び現金同等物が減少した一方で、有形固定資産や営業投資有価証券が増加した結果、資産合計は162,296百万円となり、営業債務及びその他の債務が減少した一方で、リース取引によるその他の金融負債や借入金が増加した結果、負債合計は109,501百万円となりました。
また、主に配当金による減少と親会社の所有者に帰属する当期利益の計上で利益剰余金が増加した結果、資本合計は52,795百万円となりました。
ⅱ.経営成績
当連結会計年度におきましては、フィナンシャルテクノロジー事業、マーケティングテクノロジー事業及びロングタームインキュベーション事業は好調に推移し増収増益となるも、インキュベーションテクノロジー事業は、為替相場変動の影響額等により減収減益となりました。その結果、収益は36,936百万円、税引前利益は10,008百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益は7,420百万円となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末におきましては、税引前利益から主に営業債権及びその他の債権の増加、営業投資有価証券の増加、営業債務及びその他の債務の減少及び法人所得税の支払の結果、営業活動によるキャッシュ・フローは12,322百万円の使用となりました。
投資活動としましては、主に持分法で会計処理されている投資の売却による収入があった一方、有形固定資産や無形資産の取得による支出の結果、投資活動によるキャッシュ・フローは5,473百万円の使用となりました。
財務活動としましては、主にリース負債の返済による支出、配当金の支払があった一方、長期借入れによる収入の結果、財務活動によるキャッシュ・フローは2,363百万円の獲得となりました。
これらにより当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、32,702百万円となりました。
③ 生産、受注及び販売の実績
ⅰ.生産実績
当社グループの事業は、提供する主要なサービスの性格上、当該記載が馴染まないことから、記載を省略しております。
ⅱ.受注実績
当社グループの提供する主要なサービスは、受注から売上までの期間が短期間であり、期中の受注高と販売実績がほぼ対応するため、記載を省略しております。
ⅲ.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
※1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
※2 金額には消費税等は含まれておりません。
※3 調整額は、セグメントに配分していない主に本社機能から生ずる金融収益等の全社収益であります。
※4 前連結会計年度及び当連結会計年度における主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、当該割合が100分の10未満であるため、記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
ⅰ.財政状態
(単位:百万円)
(資産)
当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末に比べて15,406百万円増加し、162,296百万円となりました。この主な要因は、現金及び現金同等物が15,452百万円減少した一方、本社増床に係る新規取得及びリース取引による使用権資産の認識等により有形固定資産が11,946百万円、投資事業に係る新規投資及び投資先の公正価値評価等により営業投資有価証券が9,851百万円、決済事業等に係る営業債権及びその他の債権が3,403百万円、持分法で会計処理されている投資が2,336百万円増加したことによるものであります。
(負債)
当連結会計年度末における負債合計は、前連結会計年度末に比べて9,956百万円増加し、109,501百万円となりました。この主な要因は、決済事業等に係り営業債務及びその他の債務が4,595百万円減少した一方、本社増床に係るリース負債の認識等によりその他の金融負債(非流動負債)が8,123百万円、本社増床等に係り社債及び借入金(流動負債及び非流動負債)が5,005百万円増加したことによるものであります。
(資本)
当連結会計年度末における資本合計は、前連結会計年度末に比べて5,450百万円増加し、52,795百万円となりました。この主な要因は、その他の包括利益を通じて測定する金融資産の公正価値の純変動が874百万円減少した一方、利益剰余金が配当金により1,287百万円減少と親会社の所有者に帰属する当期利益の計上により7,420百万円増加したことによるものであります。
なお、セグメント資産及び負債については、経営資源の配分の決定及び業績を評価するための検討対象とはなっておりません。
ⅱ.経営成績
(単位:百万円)
当連結会計年度の経営成績につきましては、収益は36,936百万円(前期比1,249百万円増、同3.5%増)、税引前利益は10,008百万円(前期比3,416百万円減、同25.4%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益は7,420百万円(前期比2,351百万円減、同24.1%減)となりました。
リカーリング事業であるフィナンシャルテクノロジー事業及びマーケティングテクノロジー事業は、安定した増収に加え収益性が改善していることから、両事業共に増収増益となりました。ロングタームインキュベーション事業においては、持分法適用会社である㈱カカクコムの業績が貢献し、持分法による投資利益3,702百万円(前期比9.3%増)を計上致しました。一方、インキュベーションテクノロジー事業においては、営業投資有価証券の売却に際して再評価される公正価値の評価差額が前期実績を下回ったほか、外国為替相場が円高傾向で推移し、為替相場変動の影響額が前期比約12億円となったことで、減収減益となりました。加えて本社増床に係る設備費用等により販売費及び一般管理費が一時的に増加したこと等により、減益決算となりました。
セグメントの経営成績は、次のとおりであります。
なお、ナビプラス㈱のソリューションが決済サービスと共に提供される機会が増加している背景から、同社ビジネスに関する業績評価及び経営資源の配分を決済事業に含めて管理することが企業価値向上に資すると判断したため、当連結会計年度より同社をマーケティングテクノロジー事業からフィナンシャルテクノロジー事業へセグメント変更しております。前連結会計年度は、当セグメント変更後のセグメント区分に基づき作成したものを開示しております。また、当セグメント変更による影響額は軽微であります。
(単位:百万円)
[フィナンシャルテクノロジー事業]
フィナンシャルテクノロジー事業では、Eコマース(EC)をはじめとするBtoCの商取引に必要不可欠なクレジットカード決済やコンビニ決済等の電子決済ソリューションの提供を行っております。決済事業を展開するベリトランス㈱及び㈱イーコンテクストが、多様な決済ソリューションを提供しEC市場で高成長を継続致しました。足元では、新型コロナウイルス感染症の影響で、訪日外国人のインバウンド消費に対応した対面決済の取扱は減少したものの、既存加盟店の取扱は堅調に推移致しました。加えて、政府のキャッシュレス還元施策による取扱の増加等もあり、決済取扱高は前期比24%増の約2.6兆円、決済取扱件数は同24%増の約4.9億件まで伸長致しました。
これらの結果、当連結会計年度における収益は8,609百万円(前期比1,162百万円増、同15.6%増)、税引前利益は4,049百万円(前期比700百万円増、同20.9%増)となりました。
[マーケティングテクノロジー事業]
マーケティングテクノロジー事業では、インターネットとリアルを融合した総合的なデジタルマーケティングや様々なデータを活用したデータマーケティングビジネスを行っております。インターネット広告を手掛ける当社マーケティングテクノロジーカンパニーにおいて、フィナンシャルテクノロジー事業と連動した決済アプリ開発事業が好調に推移致しました。加えて、政府のキャッシュレス還元施策を背景に、クレジットカード関連広告の取扱高も伸長致しました。マーケティングテクノロジー事業では、主力のデジタルアド事業において収益性向上を企図した戦略を継続しております。また、持分法適用会社である㈱サイバー・バズ(2019年9月東証マザーズ上場)の独自のインフルエンサーマーケティング事業の成長も当セグメント利益に貢献しました。
これらの結果、当連結会計年度における収益は15,375百万円(前期比2,454百万円増、同19.0%増)、税引前利益は1,853百万円(前期比637百万円増、同52.4%増)となりました。
[インキュベーションテクノロジー事業]
インキュベーションテクノロジー事業では、国内外のスタートアップ企業等への投資・育成及び当社グループ内の事業との連携による投資先の育成等を行っております。当連結会計年度は、営業投資有価証券の売却に際して再評価される公正価値の評価差額が前期比で下回ったほか、外国為替相場が円高傾向で推移し、為替相場変動の影響額が前期比約12億円となったことで、減収減益となりました。一方、アジア地域の投資先を中心に為替相場の変動を除いた公正価値が前連結会計年度末に比べて約45億円増加し、加えて国内外における新規投資も進捗したことから、営業投資有価証券の残高は36,546百万円(前期比9,851百万円増)となりました。
これらの結果、収益は4,868百万円(前期比3,154百万円減、同39.3%減)、税引前利益は3,563百万円(前期比3,326百万円減、同48.3%減)となりました。
[ロングタームインキュベーション事業]
ロングタームインキュベーション事業では、当社グループがこれまで培ってきた投資育成や事業開発のノウハウを活かし、中長期的かつ継続的な事業利益の創出に取り組んでおります。そのなかで、連結子会社㈱Crypto Garageではブロックチェーン技術に関わるアプリケーション開発を推進しており、高度な金融サービスの社会実装実現を目指しております。
当連結会計年度は、投資育成中の事業に対する先行費用は発生したものの、持分法適用会社である㈱カカクコムの業績が引き続き堅調に推移したこと等が、業績に貢献致しました。
これらの結果、収益は7,929百万円(前期比796百万円増、同11.2%増)、税引前利益は4,701百万円(前期比323百万円増、同7.4%増)となりました。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
(単位:百万円)
ⅰ.キャッシュ・フロー
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、32,702百万円(前期比15,452百万円減、同32.1%減)となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動の結果、使用した資金は12,322百万円となりました。収入の主な内訳は、税引前利益10,008百万円であり、支出の主な内訳は、営業投資有価証券の増加額9,810百万円、決済事業等に係る営業債務及びその他の債務の減少額5,715百万円、決済事業等に係る営業債権及びその他の債権の増加額3,195百万円、法人所得税の支払額2,532百万円であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動の結果、使用した資金は5,473百万円となりました。収入の主な内訳は、持分法で会計処理されている投資の売却による収入1,462百万円であり、支出の主な内訳は、本社増床等に係る有形固定資産の取得による支出3,494百万円、無形資産の取得による支出1,749百万円、子会社の取得による支出1,043百万円であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動の結果、獲得した資金は2,363百万円となりました。収入の主な内訳は、本社増床等に係る長期借入れによる収入5,300百万円であり、支出の主な内訳は、オフィスビルの賃貸借契約等に係り認識したリース負債の返済による支出1,435百万円、配当金の支払額1,289百万円であります。
ⅱ.資本の財源及び資金の流動性に係る情報
(資金調達)
当社グループは、事業の維持拡大に必要なレベルの流動性確保と財務の健全性・安全性維持を資金調達の基本方針としております。資金調達手段の多様化と資本効率の向上を企図し、金融機関からの借入や転換社債型新株予約権付社債の発行等、一部有利子負債を活用しております。
当連結会計年度末における有利子負債(リース負債除く)の残高は、43,174百万円であります。
当社グループでは、年度事業計画に基づく資金調達計画を策定するとともに、定期的に手元流動性及び有利子負債の状況等を把握・管理しております。また、安定的な外部資金調達能力の維持向上は重要な経営課題と認識しており、主要な取引先金融機関と良好な取引関係を維持し、加えて財務体質の強化にも努めております。
なお、当社グループでは、長期かつ安定的な資金調達を行うべく、短期借入金に依存した資金調達は実施しておりません。その結果として、当連結会計年度末における有利子負債(リース負債除く)に占める短期借入金(1年以内返済予定の長期借入金は除く)の比率は4.3%となりました。
(資金需要の主な内容)
当社グループの事業資金需要の主なものは、各事業セグメントにおける事業資金及び販売費及び一般管理費等の営業費用等のほか、フィナンシャルテクノロジー事業における収納代行業務の一時的な立替資金によるものであります。また、投資資金需要の主なものは、フィナンシャルテクノロジー事業のシステム機能拡充・強化等によるものに加え、インキュベーションテクノロジー事業を中心とした株式等の投資によるものであります。将来の成長に向けた戦略的な資金需要に対しては、財務健全性の維持と資本効率性の向上を両立させながら対応していく方針であります。
なお、当連結会計年度においては、本社増床に係る設備資金として、金融機関から50億円調達しております。
③ 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の達成・進捗状況
当社は、「IT/MT/FT×Open Innovation」の基本方針のもと、2018年3月期に「Open Incubation toward 2020」をスローガンとした中期経営計画を策定し、当連結会計年度で最終年度を迎えました。様々な企業と協力しながら技術革新を進める「Open Innovation」を更に一歩進め、将来性のある事業の萌芽をグループ会社や他社との連携によるオープンなエコシステムのなかで育成する「Open Incubation」を推進して参りました。
フィナンシャルテクノロジー事業では、多様な決済ソリューションを提供しEC市場で高成長を継続、加えてマーケティングテクノロジー事業では主力のデジタルアド事業において収益性向上を企図した戦略が功を奏したこと等により、リカーリング事業においては年平均成長率16.2%と目標を超過達成し順調に当社グループ利益に貢献致しました。また、インキュベーションテクノロジー事業及びロングタームインキュベーション事業では、投資ハードルレート(ROI)2.5倍を意識した国内外における投資・回収を着実に遂行致しました。その結果、アジア地域の投資先を中心に為替相場の変動を除いた公正価値が順調に増加し、営業投資有価証券残高は36,546百万円と伸長しました。
定量目標に対する実績は以下のとおりであります。
中期経営計画の定量目標に対する実績(2018年3月期~2020年3月期)
※ 各期の実績は、2018年3月期は日本基準、2019年3月期以降は国際財務報告基準(IFRS)に基づき算出しております。また、年平均成長率及び投資ハードルレートは、当中期経営計画策定時において採用していた日本基準をベースとした利益実績を基に当計画期間における指標を算出しております。
④ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」第93条の規定によりIFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成に当たって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。
なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針 4.重要な会計上の判断、見積り及び仮定」に記載しております。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
ⅰ.財政状態
当連結会計年度末におきましては、主に、現金及び現金同等物が減少した一方で、有形固定資産や営業投資有価証券が増加した結果、資産合計は162,296百万円となり、営業債務及びその他の債務が減少した一方で、リース取引によるその他の金融負債や借入金が増加した結果、負債合計は109,501百万円となりました。
また、主に配当金による減少と親会社の所有者に帰属する当期利益の計上で利益剰余金が増加した結果、資本合計は52,795百万円となりました。
ⅱ.経営成績
当連結会計年度におきましては、フィナンシャルテクノロジー事業、マーケティングテクノロジー事業及びロングタームインキュベーション事業は好調に推移し増収増益となるも、インキュベーションテクノロジー事業は、為替相場変動の影響額等により減収減益となりました。その結果、収益は36,936百万円、税引前利益は10,008百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益は7,420百万円となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末におきましては、税引前利益から主に営業債権及びその他の債権の増加、営業投資有価証券の増加、営業債務及びその他の債務の減少及び法人所得税の支払の結果、営業活動によるキャッシュ・フローは12,322百万円の使用となりました。
投資活動としましては、主に持分法で会計処理されている投資の売却による収入があった一方、有形固定資産や無形資産の取得による支出の結果、投資活動によるキャッシュ・フローは5,473百万円の使用となりました。
財務活動としましては、主にリース負債の返済による支出、配当金の支払があった一方、長期借入れによる収入の結果、財務活動によるキャッシュ・フローは2,363百万円の獲得となりました。
これらにより当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、32,702百万円となりました。
③ 生産、受注及び販売の実績
ⅰ.生産実績
当社グループの事業は、提供する主要なサービスの性格上、当該記載が馴染まないことから、記載を省略しております。
ⅱ.受注実績
当社グループの提供する主要なサービスは、受注から売上までの期間が短期間であり、期中の受注高と販売実績がほぼ対応するため、記載を省略しております。
ⅲ.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 当連結会計年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | 前年同期比(%) | |
フィナンシャルテクノロジー事業 | (百万円) | 8,609 | 115.6 |
マーケティングテクノロジー事業 | (百万円) | 15,375 | 119.0 |
インキュベーションテクノロジー事業 | (百万円) | 4,868 | 60.7 |
ロングタームインキュベーション事業 | (百万円) | 7,929 | 111.2 |
調整額 | (百万円) | 155 | 94.8 |
合計 | (百万円) | 36,936 | 103.5 |
※1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
※2 金額には消費税等は含まれておりません。
※3 調整額は、セグメントに配分していない主に本社機能から生ずる金融収益等の全社収益であります。
※4 前連結会計年度及び当連結会計年度における主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、当該割合が100分の10未満であるため、記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
ⅰ.財政状態
(単位:百万円)
前連結会計年度 (2019年3月31日) | 当連結会計年度 (2020年3月31日) | 前年同期比 | |||
増減額 | 増減率 (%) | ||||
流動資産 | 99,186 | 98,852 | △334 | △0.3 | |
非流動資産 | 47,704 | 63,444 | 15,740 | 33.0 | |
資産合計 | 146,890 | 162,296 | 15,406 | 10.5 | |
流動負債 | 52,420 | 50,838 | △1,582 | △3.0 | |
非流動負債 | 47,125 | 58,663 | 11,538 | 24.5 | |
負債合計 | 99,545 | 109,501 | 9,956 | 10.0 | |
資本合計 | 47,345 | 52,795 | 5,450 | 11.5 |
(資産)
当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末に比べて15,406百万円増加し、162,296百万円となりました。この主な要因は、現金及び現金同等物が15,452百万円減少した一方、本社増床に係る新規取得及びリース取引による使用権資産の認識等により有形固定資産が11,946百万円、投資事業に係る新規投資及び投資先の公正価値評価等により営業投資有価証券が9,851百万円、決済事業等に係る営業債権及びその他の債権が3,403百万円、持分法で会計処理されている投資が2,336百万円増加したことによるものであります。
(負債)
当連結会計年度末における負債合計は、前連結会計年度末に比べて9,956百万円増加し、109,501百万円となりました。この主な要因は、決済事業等に係り営業債務及びその他の債務が4,595百万円減少した一方、本社増床に係るリース負債の認識等によりその他の金融負債(非流動負債)が8,123百万円、本社増床等に係り社債及び借入金(流動負債及び非流動負債)が5,005百万円増加したことによるものであります。
(資本)
当連結会計年度末における資本合計は、前連結会計年度末に比べて5,450百万円増加し、52,795百万円となりました。この主な要因は、その他の包括利益を通じて測定する金融資産の公正価値の純変動が874百万円減少した一方、利益剰余金が配当金により1,287百万円減少と親会社の所有者に帰属する当期利益の計上により7,420百万円増加したことによるものであります。
なお、セグメント資産及び負債については、経営資源の配分の決定及び業績を評価するための検討対象とはなっておりません。
ⅱ.経営成績
(単位:百万円)
前連結会計年度 (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | 前年同期比 | |||
増減額 | 増減率 (%) | ||||
収益 | 35,687 | 36,936 | 1,249 | 3.5 | |
税引前利益 | 13,424 | 10,008 | △3,416 | △25.4 | |
当期利益 | 9,790 | 7,331 | △2,459 | △25.1 | |
親会社の所有者に帰属する 当期利益 | 9,771 | 7,420 | △2,351 | △24.1 | |
当期包括利益 | 9,515 | 6,345 | △3,170 | △33.3 |
当連結会計年度の経営成績につきましては、収益は36,936百万円(前期比1,249百万円増、同3.5%増)、税引前利益は10,008百万円(前期比3,416百万円減、同25.4%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益は7,420百万円(前期比2,351百万円減、同24.1%減)となりました。
リカーリング事業であるフィナンシャルテクノロジー事業及びマーケティングテクノロジー事業は、安定した増収に加え収益性が改善していることから、両事業共に増収増益となりました。ロングタームインキュベーション事業においては、持分法適用会社である㈱カカクコムの業績が貢献し、持分法による投資利益3,702百万円(前期比9.3%増)を計上致しました。一方、インキュベーションテクノロジー事業においては、営業投資有価証券の売却に際して再評価される公正価値の評価差額が前期実績を下回ったほか、外国為替相場が円高傾向で推移し、為替相場変動の影響額が前期比約12億円となったことで、減収減益となりました。加えて本社増床に係る設備費用等により販売費及び一般管理費が一時的に増加したこと等により、減益決算となりました。
セグメントの経営成績は、次のとおりであります。
なお、ナビプラス㈱のソリューションが決済サービスと共に提供される機会が増加している背景から、同社ビジネスに関する業績評価及び経営資源の配分を決済事業に含めて管理することが企業価値向上に資すると判断したため、当連結会計年度より同社をマーケティングテクノロジー事業からフィナンシャルテクノロジー事業へセグメント変更しております。前連結会計年度は、当セグメント変更後のセグメント区分に基づき作成したものを開示しております。また、当セグメント変更による影響額は軽微であります。
(単位:百万円)
前連結会計年度 (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | 前年同期比 | |||
増減額 | 増減率 (%) | ||||
フィナンシャル テクノロジー事業 | 収益 | 7,447 | 8,609 | 1,162 | 15.6 |
税引前利益 | 3,349 | 4,049 | 700 | 20.9 | |
マーケティング テクノロジー事業 | 収益 | 12,922 | 15,375 | 2,454 | 19.0 |
税引前利益 | 1,215 | 1,853 | 637 | 52.4 | |
インキュベーション テクノロジー事業 | 収益 | 8,022 | 4,868 | △3,154 | △39.3 |
税引前利益 | 6,889 | 3,563 | △3,326 | △48.3 | |
ロングタームインキュベーション事業 | 収益 | 7,133 | 7,929 | 796 | 11.2 |
税引前利益 | 4,378 | 4,701 | 323 | 7.4 | |
調整額 | 収益 | 164 | 155 | △8 | △5.2 |
税引前利益 | △2,408 | △4,158 | △1,750 | - | |
合計 | 収益 | 35,687 | 36,936 | 1,249 | 3.5 |
税引前利益 | 13,424 | 10,008 | △3,416 | △25.4 |
[フィナンシャルテクノロジー事業]
フィナンシャルテクノロジー事業では、Eコマース(EC)をはじめとするBtoCの商取引に必要不可欠なクレジットカード決済やコンビニ決済等の電子決済ソリューションの提供を行っております。決済事業を展開するベリトランス㈱及び㈱イーコンテクストが、多様な決済ソリューションを提供しEC市場で高成長を継続致しました。足元では、新型コロナウイルス感染症の影響で、訪日外国人のインバウンド消費に対応した対面決済の取扱は減少したものの、既存加盟店の取扱は堅調に推移致しました。加えて、政府のキャッシュレス還元施策による取扱の増加等もあり、決済取扱高は前期比24%増の約2.6兆円、決済取扱件数は同24%増の約4.9億件まで伸長致しました。
これらの結果、当連結会計年度における収益は8,609百万円(前期比1,162百万円増、同15.6%増)、税引前利益は4,049百万円(前期比700百万円増、同20.9%増)となりました。
[マーケティングテクノロジー事業]
マーケティングテクノロジー事業では、インターネットとリアルを融合した総合的なデジタルマーケティングや様々なデータを活用したデータマーケティングビジネスを行っております。インターネット広告を手掛ける当社マーケティングテクノロジーカンパニーにおいて、フィナンシャルテクノロジー事業と連動した決済アプリ開発事業が好調に推移致しました。加えて、政府のキャッシュレス還元施策を背景に、クレジットカード関連広告の取扱高も伸長致しました。マーケティングテクノロジー事業では、主力のデジタルアド事業において収益性向上を企図した戦略を継続しております。また、持分法適用会社である㈱サイバー・バズ(2019年9月東証マザーズ上場)の独自のインフルエンサーマーケティング事業の成長も当セグメント利益に貢献しました。
これらの結果、当連結会計年度における収益は15,375百万円(前期比2,454百万円増、同19.0%増)、税引前利益は1,853百万円(前期比637百万円増、同52.4%増)となりました。
[インキュベーションテクノロジー事業]
インキュベーションテクノロジー事業では、国内外のスタートアップ企業等への投資・育成及び当社グループ内の事業との連携による投資先の育成等を行っております。当連結会計年度は、営業投資有価証券の売却に際して再評価される公正価値の評価差額が前期比で下回ったほか、外国為替相場が円高傾向で推移し、為替相場変動の影響額が前期比約12億円となったことで、減収減益となりました。一方、アジア地域の投資先を中心に為替相場の変動を除いた公正価値が前連結会計年度末に比べて約45億円増加し、加えて国内外における新規投資も進捗したことから、営業投資有価証券の残高は36,546百万円(前期比9,851百万円増)となりました。
これらの結果、収益は4,868百万円(前期比3,154百万円減、同39.3%減)、税引前利益は3,563百万円(前期比3,326百万円減、同48.3%減)となりました。
[ロングタームインキュベーション事業]
ロングタームインキュベーション事業では、当社グループがこれまで培ってきた投資育成や事業開発のノウハウを活かし、中長期的かつ継続的な事業利益の創出に取り組んでおります。そのなかで、連結子会社㈱Crypto Garageではブロックチェーン技術に関わるアプリケーション開発を推進しており、高度な金融サービスの社会実装実現を目指しております。
当連結会計年度は、投資育成中の事業に対する先行費用は発生したものの、持分法適用会社である㈱カカクコムの業績が引き続き堅調に推移したこと等が、業績に貢献致しました。
これらの結果、収益は7,929百万円(前期比796百万円増、同11.2%増)、税引前利益は4,701百万円(前期比323百万円増、同7.4%増)となりました。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
(単位:百万円)
前連結会計年度 (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | 前年同期比 増減額 | ||
営業活動によるキャッシュ・フロー | 2,580 | △12,322 | △14,903 | |
投資活動によるキャッシュ・フロー | △2,397 | △5,473 | △3,076 | |
財務活動によるキャッシュ・フロー | 8,509 | 2,363 | △6,146 | |
現金及び現金同等物の期末残高 | 48,154 | 32,702 | △15,452 | |
有利子負債(リース負債除く) | 38,169 | 43,174 | 5,005 | |
短期 (1年以内返済予定の長期有利子負債は除く) | 1,764 | 1,848 | 83 | |
長期 | 36,405 | 41,327 | 4,922 |
ⅰ.キャッシュ・フロー
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、32,702百万円(前期比15,452百万円減、同32.1%減)となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動の結果、使用した資金は12,322百万円となりました。収入の主な内訳は、税引前利益10,008百万円であり、支出の主な内訳は、営業投資有価証券の増加額9,810百万円、決済事業等に係る営業債務及びその他の債務の減少額5,715百万円、決済事業等に係る営業債権及びその他の債権の増加額3,195百万円、法人所得税の支払額2,532百万円であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動の結果、使用した資金は5,473百万円となりました。収入の主な内訳は、持分法で会計処理されている投資の売却による収入1,462百万円であり、支出の主な内訳は、本社増床等に係る有形固定資産の取得による支出3,494百万円、無形資産の取得による支出1,749百万円、子会社の取得による支出1,043百万円であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動の結果、獲得した資金は2,363百万円となりました。収入の主な内訳は、本社増床等に係る長期借入れによる収入5,300百万円であり、支出の主な内訳は、オフィスビルの賃貸借契約等に係り認識したリース負債の返済による支出1,435百万円、配当金の支払額1,289百万円であります。
ⅱ.資本の財源及び資金の流動性に係る情報
(資金調達)
当社グループは、事業の維持拡大に必要なレベルの流動性確保と財務の健全性・安全性維持を資金調達の基本方針としております。資金調達手段の多様化と資本効率の向上を企図し、金融機関からの借入や転換社債型新株予約権付社債の発行等、一部有利子負債を活用しております。
当連結会計年度末における有利子負債(リース負債除く)の残高は、43,174百万円であります。
当社グループでは、年度事業計画に基づく資金調達計画を策定するとともに、定期的に手元流動性及び有利子負債の状況等を把握・管理しております。また、安定的な外部資金調達能力の維持向上は重要な経営課題と認識しており、主要な取引先金融機関と良好な取引関係を維持し、加えて財務体質の強化にも努めております。
なお、当社グループでは、長期かつ安定的な資金調達を行うべく、短期借入金に依存した資金調達は実施しておりません。その結果として、当連結会計年度末における有利子負債(リース負債除く)に占める短期借入金(1年以内返済予定の長期借入金は除く)の比率は4.3%となりました。
(資金需要の主な内容)
当社グループの事業資金需要の主なものは、各事業セグメントにおける事業資金及び販売費及び一般管理費等の営業費用等のほか、フィナンシャルテクノロジー事業における収納代行業務の一時的な立替資金によるものであります。また、投資資金需要の主なものは、フィナンシャルテクノロジー事業のシステム機能拡充・強化等によるものに加え、インキュベーションテクノロジー事業を中心とした株式等の投資によるものであります。将来の成長に向けた戦略的な資金需要に対しては、財務健全性の維持と資本効率性の向上を両立させながら対応していく方針であります。
なお、当連結会計年度においては、本社増床に係る設備資金として、金融機関から50億円調達しております。
③ 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の達成・進捗状況
当社は、「IT/MT/FT×Open Innovation」の基本方針のもと、2018年3月期に「Open Incubation toward 2020」をスローガンとした中期経営計画を策定し、当連結会計年度で最終年度を迎えました。様々な企業と協力しながら技術革新を進める「Open Innovation」を更に一歩進め、将来性のある事業の萌芽をグループ会社や他社との連携によるオープンなエコシステムのなかで育成する「Open Incubation」を推進して参りました。
フィナンシャルテクノロジー事業では、多様な決済ソリューションを提供しEC市場で高成長を継続、加えてマーケティングテクノロジー事業では主力のデジタルアド事業において収益性向上を企図した戦略が功を奏したこと等により、リカーリング事業においては年平均成長率16.2%と目標を超過達成し順調に当社グループ利益に貢献致しました。また、インキュベーションテクノロジー事業及びロングタームインキュベーション事業では、投資ハードルレート(ROI)2.5倍を意識した国内外における投資・回収を着実に遂行致しました。その結果、アジア地域の投資先を中心に為替相場の変動を除いた公正価値が順調に増加し、営業投資有価証券残高は36,546百万円と伸長しました。
定量目標に対する実績は以下のとおりであります。
中期経営計画の定量目標に対する実績(2018年3月期~2020年3月期)
成長性指標(税引前利益 成長率) | 目標 | 実績(対前期比) | 当計画期間 年平均成長率 | ||||
2018年3月期 | 2019年3月期 | 2020年3月期 | |||||
フィナンシャルテクノロジー事業 | 15%以上 | +27.0% | +19.2% | +20.9% | +20.3% | ||
マーケティングテクノロジー事業 | 15%以上 | +37.3% | △34.5% | +52.4% | +9.3% | ||
(ご参考)リカーリング事業 合計 | +31.1% | △2.2% | +29.3% | +16.2% | |||
投資ハードルレート(ROI) | 目標 | 実績 | |||||
2018年3月期~2020年3月期 | |||||||
インキュベーションテクノロジー事業 | 2.5倍 | 2.2倍 | |||||
ロングタームインキュベーション事業 | |||||||
資本収益性指標 | 目標 | 実績 | |||||
2018年3月期 | 2019年3月期 | 2020年3月期 | |||||
ROE | 20%以上 | 15.3% | 21.9% | 15.0% | |||
株主還元指標 | 目標 | 実績 | |||||
2018年3月期 | 2019年3月期 | 2020年3月期 | |||||
配当性向 | 20%以上 | 20.7% | 13.3% | 23.5% |
※ 各期の実績は、2018年3月期は日本基準、2019年3月期以降は国際財務報告基準(IFRS)に基づき算出しております。また、年平均成長率及び投資ハードルレートは、当中期経営計画策定時において採用していた日本基準をベースとした利益実績を基に当計画期間における指標を算出しております。
④ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」第93条の規定によりIFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成に当たって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。
なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針 4.重要な会計上の判断、見積り及び仮定」に記載しております。