有価証券報告書-第20期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)

【提出】
2018/06/28 15:00
【資料】
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【項目】
61項目
(1)経営成績等の状況の概要
当期における当企業グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当期における我が国経済は、企業収益や雇用・所得環境が改善するなど緩やかな回復基調で推移し、個人消費において総じて持ち直しの兆しが見られた一方で、米国長期金利の上昇や国際的に深刻化する貿易摩擦への懸念などから、株価や為替に不安定な動きが見られるなど、景気の先行きに不透明感が残る状況となりました。
投資・証券関連事業に大きな影響を与える国内外の株式市場について、国内においては、仏大統領選を経て欧州での政治・経済の先行き不透明感が和らいだことを追い風に上昇したのち、一時は北朝鮮を巡る地政学リスクの影響を受け、円安・株安の展開となり、リスク回避姿勢が強まりましたが、10月には衆院選後の政権基盤が安定するとの期待から、日経平均株価は過去最高となる16日連続の上昇を記録したほか、米国の減税法案などに刺激され、11月には日経平均株価は約26年振りに23,000円台を付けました。その後、米国連邦準備理事会による利上げが加速したことや、米国と中国との貿易摩擦が激化するという懸念から不安定な値動きが続きましたが、年度末にかけて貿易摩擦の激化回避に向けて米国と中国が水面下で交渉を開始したと伝わったこと等を受け株式相場は下げ止まり、日経平均株価は2018年3月末に21,454円と、2017年3月末に比べ13.5%上昇して取引を終えました。また、国内における株式の新規上場社数(TOKYO PRO Market上場社数を除く。)は79社となりました。一方海外においては、米国政権の政策動向や金融政策を取り巻く不確実性のほか、中国経済の緩やかな減速や中近東における政治的な緊張などがあったものの、欧州での堅調な景気推移やアジア新興国経済の持ち直しにより、株式の新規上場社数は増加に転じました。このように世界経済には一部に未だ不確実性が見られるものの、世界経済は税制改革を通じて消費・投資を刺激している米国を中心として景気の拡大が見込まれ、全体として緩やかな回復傾向にあると考えております。
また、インターネット金融サービス事業を取り巻く事業環境については、生活防衛のため、金融取引において少しでも有利な条件を求める消費者が増える傾向にあり、モバイル端末を含むインターネット金融サービスを活用するメリットに対する認知も拡大し、対面での金融取引からの移行も進んでまいりました。同事業での競争の激化は予想されるものの、今後も引き続き成長が見込まれる市場と認識しております。
当期の経営成績につきましては、収益が337,017百万円(前期比28.7%増加)、税引前利益は71,810百万円(同66.5%増加)、親会社の所有者に帰属する当期利益は46,684百万円(同43.8%増加)となりました。
報告セグメントごとの業績は次のとおりであります。
なお、前期まで「アセットマネジメント事業」に含めていた株式会社ブロードバンドセキュリティについては、当期から「金融サービス事業」に含めております。このため、前期についても当期のセグメント構成に合わせて組み替えております。
収益税引前利益
前期当期前期当期
百万円百万円%百万円百万円%
金融サービス事業179,941217,27220.748,93263,88830.6
アセットマネジメント事業77,441117,57251.813,86156,491307.6
バイオ関連事業5,5304,199(24.1)(9,574)(37,252)-
262,912339,04329.053,21983,12756.2
その他8831,21337.4(830)(1,328)-
消去又は全社(1,856)(3,239)-(9,250)(9,989)-
連結261,939337,01728.743,13971,81066.5

(%表示は対前期増減率)
(金融サービス事業)
証券関連事業、銀行業、保険事業を中核とした多様な金融関連事業を行っております。
当期における収益は217,272百万円(同20.7%増加)、税引前利益は63,888百万円(同30.6%増加)となりました。
(アセットマネジメント事業)
国内外のIT、バイオ及び金融関連のベンチャー企業等への投資に関する事業、海外における金融サービス事業及び金融商品の情報提供等を行う資産運用サービス事業を行っております。
当期における収益は117,572百万円(同51.8%増加)、税引前利益は56,491百万円(同307.6%増加)となりました。
(バイオ関連事業)
生体内に存在するアミノ酸の一種である5-アミノレブリン酸(ALA)(※)を活用した医薬品・健康食品・化粧品の開発・販売や、がん及び免疫分野等における抗体医薬・核酸医薬の研究開発に関する事業を行っております。
当期における収益は4,199百万円(同24.1%減少)、税引前利益は37,252百万円の損失(前期は9,574百万円の損失)となりました。
(※)5-アミノレブリン酸(ALA)とは、体内のミトコンドリアで作られるアミノ酸で、ヘムやシトクロムと呼ばれるエネルギー生産に関与するたんぱく質の原料となる重要な物質ですが、加齢に伴い生産性が低下することが知られています。ALAは、焼酎粕や赤ワイン、高麗人参等の食品にも含まれるほか、植物の葉緑体原料としても知られています。
なお、当期末の総資産は4,535,964百万円となり、前期末の3,850,001百万円から685,963百万円の増加となりました。また、資本は前期末に比べ78,300百万円増加し、493,824百万円となりました。
② キャッシュ・フロー
当期末の現金及び現金同等物残高は437,148百万円となり、前期末の391,572百万円から45,576百万円の増加となりました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、33,235百万円の支出(前期は17,952百万円の支出)となりました。これは主に、「税引前利益」が71,810百万円の収入及び「顧客預金の増減」が49,015百万円の収入となった一方で、「営業債権及びその他の債権の増減」が93,182百万円の支出及び「営業投資有価証券の増減」が79,465百万円の支出となったこと等の要因によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、7,881百万円の収入(前期は2,437百万円の収入)となりました。これは主に、「投資有価証券の取得による支出」が35,555百万円となった一方で、「投資有価証券の売却及び償還による収入」が48,514百万円となったこと等の要因によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、74,575百万円の収入(前期は159,467百万円の収入)となりました。これは主に、「社債の償還による支出」が37,039百万円、「短期借入金の純増減額」が31,180百万円の支出及び「長期借入金の返済による支出」が28,261百万円となった一方で、「社債の発行による収入」が140,025百万円及び「長期借入による収入」が40,336百万円となったこと等の要因によるものであります。
③ 生産、受注及び販売の実績
生産及び受注の実績については、該当する情報がないため記載しておりません。また、販売の実績については、「① 財政状態及び経営成績の状況」に各セグメントの収益として記載しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当企業グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2018年6月28日)現在において当社が判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積もり
当企業グループの連結財務諸表はIFRSに準拠して作成しております。IFRSに準拠した連結財務諸表の作成において、経営者は、他の情報源から直ちに明らかにならない資産及び負債の帳簿価額について、見積もり、判断及び仮定の設定を行う必要があります。見積もり及びそれに関する仮定は、関係が深いと思われる過去の経験及びその他の要素に基づいております。実績はこれらの見積もりと異なる場合があります。
当企業グループの会計方針については、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等」の「(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3 重要な会計方針」に記載のとおりであります。また、当該会計方針のうち、将来に関する仮定及び報告期間末における見積もりの不確実性の要因となる事項で、特に重要性があるものについては、「(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 2 作成の基礎 (4) 見積もり及び判断の利用」に記載しております。これらは、当期及び来期以降に資産や負債の帳簿価額に対して重大な調整をもたらすリスクを含んでおります。
② 当期の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当期における当企業グループを取り巻く事業環境は、国内において、企業収益や雇用・所得環境が改善し、個人消費において総じて持ち直しの兆しが見られる中、米国の減税法案等に刺激され、11月には約26年振りに日経平均株価が23,000円台を付けるなど株式市況は好調に推移しました。しかし、その後米国の長期金利の上昇や国際的に深刻化する貿易摩擦への懸念などから、株価や為替に不安定な動きが見られ、景気の先行きに不透明感が残る状況となり、値動きの激しい相場展開となりました。海外においては、米国政権の政策動向や金融政策を取り巻く不確実性のほか、中国経済の緩やかな減速や中近東における政治的な緊張が生じている一方で、大規模な税制改革を通じ、消費・投資を刺激している米国を中心に景気の拡大が見込まれます。このような環境下において、当期の経営成績は、収益が前期比28.7%増加の337,017百万円、税引前利益が前期比66.5%増加の71,810百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益が前期比43.8%増加の46,684百万円となりました。
(金融サービス事業)
金融サービス事業の収益は、前期比20.7%増加の217,272百万円、税引前利益は前期比30.6%増加の63,888百万円となりました。
株式会社SBI証券においては、当期末における総合口座数が前期末に比べ約42万2千口座増加の約426万口座となるなど、引き続き堅調に顧客基盤を拡大しております。業績面では、二市場(東京、名古屋)合計の個人株式委託売買代金が前期比22.4%増加と好調に推移したことを受け、同社における委託手数料が前期比21.3%増加したほか、信用取引建玉残高や投資信託残高が順調に拡大したことにより、金融収益や投資信託の信託報酬額が大幅に増加し、当期の税引前利益(IFRS)は、前期比39.7%増加の46,169百万円となりました。
SBI損害保険株式会社においては、引き続き自動車保険の保有契約件数が大きく増加していることやコスト削減等から、税引前利益(IFRS)は、前期比50.8%増加の199百万円となりました。
持分法適用会社である住信SBIネット銀行株式会社においては、2018年3月末の口座数は321万口座と順調に拡大したほか、預金総残高が4兆4,252億円となっており、同社の持分法による投資利益は、前期比18.4%増加の3,770百万円となりました。なお、同社の連結業績(日本基準)は、経常収益は前期比5.6%増加の61,158百万円、経常利益は前期比5.2%増加の15,474百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比5.8%増加の10,447百万円とそれぞれ過去最高を達成しました。
(アセットマネジメント事業)
アセットマネジメント事業の収益は、前期比51.8%増加の117,572百万円、税引前利益は前期比307.6%増加の56,491百万円となりました。当期において、世界的に新規上場社数は緩やかな回復基調にあり、国内の新規上場社数(TOKYO PRO Market上場社数を除く。)が79社となった中で、当事業に係るIPO、M&Aの実績は、国内5社、海外8社の計13社となりました。FinTechビジネスイノベーション投資事業有限責任組合(FinTechファンド)を通じたFinTech関連の保有銘柄を中心に公正価値評価の変動による大幅な利益計上のほか、2013年3月に連結子会社化した韓国の株式会社SBI貯蓄銀行において、正常債権の残高が順調に増加し安定的な収益基盤が確立されたことが、当事業全体の好業績に寄与しました。
(バイオ関連事業)
バイオ関連事業の収益は、前期比24.1%減少の4,199百万円、税引前利益は37,252百万円の損失(前期は9,574百万円の損失)となりました。当期において損失が拡大した要因は、SBIバイオテック株式会社の子会社で米国NASDAQ市場での新規株式公開に向けて準備中の米国Quark Pharmaceuticals, Inc.において、新規株式公開を見据えた事業計画の見直し等を行ったことや、持分法適用会社である窪田製薬ホールディングス株式会社から発表された創薬パイプラインに関する臨床試験の結果等を踏まえ、合計270億円の減損損失を計上したことにあります。
他方、5-アミノレブリン酸(ALA)関連事業の中核を担うSBIファーマ株式会社においては、中外製薬株式会社に国内独占販売権を提供した膀胱がんの術中診断薬「アラグリオ® 顆粒剤分包1.5g」の販売が開始されたことや、MENAやインドにおけるALAを配合した医薬品の販売に向けてアラブ首長国連邦(UAE)の医薬品製造販売会社であるNeopharma LLCへ技術導出したことで、2期連続で通期黒字化を達成しました。さらに、SBIアラプロモ株式会社では、ALAを含有した初の機能性表示食品「アラプラス 糖ダウン」を2015年12月に発売したことを機に、ALA関連商品の取扱い店舗数が急増するとともに、ALA以外の成分を配合した機能性表示食品の発売やALAを配合したサプリメント商品のラインナップをさらに充実させたことなどから、創業以来初の通期黒字化を達成しました。
③ 経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因は、「第2 事業の状況 2.事業等のリスク」に記載しております。
④ 戦略的事業展開について
戦略的事業展開については、「第2 事業の状況 1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。
⑤ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
(a) 資金需要及び資金の調達源
当企業グループの事業活動における主な資金需要としては、証券関連事業における信用取引に係る顧客への貸付資金、海外金融サービス事業における貸付資金、投資事業における投資資金等があります。これらの資金需要に対して、市場環境や長短のバランスを考慮し、銀行借入による間接金融、社債やエクイティファイナンス等の直接金融、証券会社や証券金融会社との取引、及び顧客預金の受入等により資金を調達しております。
(b) キャッシュ・フローの状況の分析
キャッシュ・フローの状況の分析については、「第2 事業の状況 3.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フロー」に記載しております。
(3)経営成績等の状況の概要に係る主要な項目における差異に関する情報
IFRSにより作成した連結財務諸表における主要な項目と、日本基準により作成した連結財務諸表におけるこれらに相当する項目との差異の概要は次のとおりであります。なお、当企業グループは日本基準に基づく連結財務諸表を作成していないため、記載した概算額は一定の仮定の下、把握できる範囲で算出したものであります。
当期(自2017年4月1日 至2018年3月31日)
① 金融商品の評価に係る損益
日本基準では、「その他有価証券」に分類される有価証券で、時価のあるものは、決算日の市場価格等に基づく時価法(評価差額は全部純資産直入法により処理)によって評価され、時価のないものは、移動平均法による原価法で評価されており、時価が著しく下落した場合または実質価格が著しく下落した場合を除き、評価にかかる損益は計上されません。ただし、当企業グループにおいては、営業投資有価証券に関する損失に備えるため、投資先会社の実情を勘案の上、その損失見積額を引当計上することにより、実質的に下落サイドのみの時価算定を行い、評価に係る損失を計上しておりました。
一方、IFRSでは、当初認識時にその他の包括利益を通じて公正価値で測定することを指定したものを除いて、純損益を通じて毎期、公正価値で測定しており、未上場株式を含む有価証券の評価損益を収益に計上しております。
この結果、IFRSの収益は日本基準の収益に比べて31,482百万円増加しております。
② のれん償却
日本基準では、のれんは一般的に20年を上限とした見積耐用年数にわたり償却され、その償却費は「販売費及び一般管理費」に計上されます。一方、IFRSではのれんは償却されず、毎期減損テストが求められています。仮に各期末ののれんを日本基準に従い償却していた場合、8,231百万円の償却費になります。
③ 表示の組替
日本基準により作成した連結損益計算書の「売上高」、「営業外収益」、「特別利益」として開示していた収益のうち、持分法による投資利益を除き、IFRSにより作成した連結損益計算書の収益に組替えております。
また、日本基準では「売上原価」、「販売費及び一般管理費」、「営業外費用」、「特別損失」として開示していた費用のうち、持分法による投資損失を除き、IFRSにより作成した連結損益計算書の費用に組替えております。