有価証券報告書-第23期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

【提出】
2021/06/29 14:00
【資料】
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【項目】
133項目
(1)経営成績等の状況の概要
当期における当企業グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当期における我が国経済は、国内外における新型コロナウイルス感染症の影響から雇用・所得環境は弱い動きが続きましたが、企業収益は徐々に改善が見られました。国内株式市況も感染症への警戒が続く中で国内景気の回復基調と堅調なアメリカの株式市場に支えられて上昇し、2市場合計※の個人株式委託売買代金は前期比52.2%増加しました。
このような経済環境下において、当社の当期における連結業績は収益(売上高)が前期比47.0%増加の5,411億円、税引前利益は同113.3%増加の1,404億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は同116.3%増加の811億円となり、各項目で創業以来の過去最高を更新しました。
事業別では、デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展により消費者・投資家のオンライン選好が進む中、金融サービス事業は株式市況が好調に推移し、証券事業が好業績を達成しました。アセットマネジメント事業は既存ファンド等の投資先の評価益及び売却益が寄与し、過去最高益を達成するとともに、韓国の株式会社SBI貯蓄銀行も過去最高の通期業績となりました。
バイオ・ヘルスケア&メディカルインフォマティクス事業は米国Quark Pharmaceuticals, Inc.に関して約27億円の減損損失を計上しましたが、同社での臨床試験の終了に伴い同事業セグメントの赤字は前期比で約28億円改善しました。
なお、当期連結業績には、SBIソーシャルレンディング株式会社の取り扱う一部ファンドにおける未償還元本相当額の償還に向けた取り組みを開始することに伴い計上した約145億円の損失が含まれています。
※東京・名古屋証券取引所に上場している内国証券(マザーズ、JASDAQ、セントレックス含む)
報告セグメントごとの業績は次のとおりであります。
なお、当期より、従来のバイオ関連事業のセグメント名称を、バイオ・ヘルスケア&メディカルインフォマティクス事業に変更しております。
また、前期まで「金融サービス事業」に含めていたSBIリーシングサービス株式会社及び「その他」に含めていたSBIクリプトインベストメント株式会社については、当期から「アセットマネジメント事業」に含めております。また、前期まで「その他」に含めていたSBI CapitalBase株式会社(2020年7月1日付でSBIエクイティクラウド株式会社へ商号変更)については、当期から「金融サービス事業」に含めております。このため、前期についても当期のセグメント構成に合わせて組み替えております。
収益税引前利益
前期当期前期当期
百万円百万円%百万円百万円%
金融サービス事業236,751311,72431.751,27585,75567.2
アセットマネジメント事業126,585208,33264.637,23084,853127.9
バイオ・ヘルスケア&メディカルインフォマティクス事業3,9205,62743.5(11,431)(8,630)-
367,256525,68343.177,074161,978110.2
その他5,22621,740316.0(1,733)(10,595)-
消去又は全社(4,427)(6,278)-(9,522)(11,003)-
連結368,055541,14547.065,819140,380113.3

(%表示は対前期増減率)
(金融サービス事業)
証券関連事業、銀行業、保険事業を中核とした多様な金融関連事業を行っております。
当期における収益は311,724百万円(同31.7%増加)、税引前利益は85,755百万円(同67.2%増加)となりました。これは主に、株式市況が前期と比較し好調に推移し、証券事業において増収増益となったこと等の要因によるものであります。
(アセットマネジメント事業)
国内外のIT、フィンテック、ブロックチェーン、金融及びバイオ関連のベンチャー企業等への投資に関する事業、海外における金融サービス事業及び金融商品の情報提供等を行う資産運用サービス事業を行っております。
当期における収益は208,332百万円(同64.6%増加)、税引前利益は84,853百万円(同127.9%増加)となりました。これは主に、企業への投資において認識される「FVTPLで測定する金融資産から生じる収益」の増加等の要因によるものであります。
(バイオ・ヘルスケア&メディカルインフォマティクス事業)
生体内に存在するアミノ酸の一種である5-アミノレブリン酸(ALA)(※)を活用した医薬品・健康食品・化粧品の開発・販売や、がん及び免疫分野等における抗体医薬・核酸医薬の研究開発に関する事業、医療・健康情報のデジタル化や医療ビッグデータの活用を推進するソリューション・サービスの提供及び医療金融に関する事業等を行っております。
当期における収益は5,627百万円(同43.5%増加)、税引前利益は8,630百万円の損失(前年は11,431百万円の損失)となりました。
(※)5-アミノレブリン酸(ALA)とは、体内のミトコンドリアで作られるアミノ酸で、ヘムやシトクロムと呼ばれるエネルギー生産に関与するたんぱく質の原料となる重要な物質ですが、加齢に伴い生産性が低下することが知られています。ALAは、焼酎粕や赤ワイン、高麗人参等の食品にも含まれるほか、植物の葉緑体原料としても知られています。
なお、当期末の総資産は7,208,572百万円となり、前期末の5,513,227百万円から1,695,345百万円の増加となりました。また、資本は前期末に比べ123,396百万円増加し、717,095百万円となりました。
② キャッシュ・フロー
当期末の現金及び現金同等物残高は802,702百万円となり、前期末の843,755百万円から41,053百万円の減少となりました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、178,403百万円の支出(前期は26,849百万円の収入)となりました。これは主に、「顧客預金の増減」が220,081百万円の収入及び「税引前利益」が140,380百万円となった一方で、「営業債権及びその他の債権の増減」が246,508百万円の支出、「証券業関連資産及び負債の増減」が221,904百万円の支出及び「営業投資有価証券の増減」が131,448百万円の支出となったこと等の要因によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、82,071百万円の支出(前期は70,887百万円の支出)となりました。これは主に、「貸付金の回収による収入」が49,860百万円となった一方で、「投資有価証券の取得による支出」が77,392百万円及び「貸付による支出」が70,172百万円となったこと等の要因によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、210,822百万円の収入(前期は181,626百万円の収入)となりました。これは主に、「社債の償還による支出」が112,576百万円となった一方で、「社債の発行による収入」が228,124百万円及び「短期借入金の純増減額」が69,808百万円の収入となったこと等の要因によるものであります。
③ 生産、受注及び販売の実績
生産及び受注の実績については、該当する情報がないため記載しておりません。また、販売の実績については、「① 財政状態及び経営成績の状況」に各セグメントの収益として記載しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当企業グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当期末現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積もり
当企業グループの連結財務諸表はIFRSに準拠して作成しております。IFRSに準拠した連結財務諸表の作成において、経営者は、他の情報源から直ちに明らかにならない資産及び負債の帳簿価額について、見積もり、判断及び仮定の設定を行う必要があります。見積もり及びそれに関する仮定は、関係が深いと思われる過去の経験及びその他の要素に基づいております。実績はこれらの見積もりと異なる場合があります。
当企業グループの会計方針については、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等」の「(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3 重要な会計方針」に記載のとおりであります。また、当該会計方針のうち、将来に関する仮定及び報告期間末における見積もりの不確実性の要因となる事項で、特に重要性があるものについては、「(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 2 作成の基礎 (4) 見積もり及び判断の利用」に記載しております。これらは、当期及び来期以降に資産や負債の帳簿価額に対して重大な調整をもたらすリスクを含んでおります。
② 当期の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当期における当企業グループを取り巻く事業環境は、国内外における新型コロナウイルス感染症の影響から雇用・所得環境は弱い動きが続きましたが、企業収益は徐々に改善が見られました。国内株式市況も感染症への警戒が続く中で国内景気の回復基調と堅調なアメリカの株式市場に支えられて上昇し、2市場合計(東京・名古屋証券取引所に上場している内国証券(マザーズ、JASDAQ、セントレックス含む))の個人株式委託売買代金は前期比52.2%増加しました。
他方、インターネット金融サービス事業を取り巻く事業環境については、金融取引において少しでも有利な条件を求める消費者が増える傾向にあり、モバイル端末を含むインターネット金融サービスを活用するメリットに対する認知も引き続き拡大しているとともに、感染症対策という観点からも対面での金融取引からの移行も進んできました。同事業への異業種からの参入も増えており、競争の激化は予想されるものの、今後も引き続き成長が見込まれる市場と認識しております。
(金融サービス事業)
金融サービス事業の収益は、前期比31.7%増加の311,724百万円、税引前利益は前期比67.2%増加の85,755百万円となりました。
デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展により消費者・投資家のオンライン選好が進む中、グループ最大の収益源である株式会社SBI証券では、国内外の株式市況の活況に伴い委託手数料が増加するとともに、FX、暗号資産取引や外債販売に係るトレーディング収益が伸長し、全ての利益項目において過去最高を達成しました。収益源の多様化が進んだことでオンライン取引による国内株式委託手数料収入への依存度は低下し、今後の同手数料ゼロ化に対応できる利益の確保に一定の目途がつきました。
また、SBIインシュアランスグループ株式会社では保有契約件数が堅調に増加しており、持分法適用会社の住信SBIネット銀行株式会社でも順調に業容を拡大しているため、それぞれ増収増益を達成しました。
(アセットマネジメント事業)
アセットマネジメント事業の収益は、前期比64.6%増加の208,332百万円、税引前利益は前期比127.9%増加の84,853百万円となりました。
IFRSに基づく保有銘柄の各期末における公正価値の変動による損益及び売却損益は、資金回収フェーズに移行しているFintechファンドやSBI A&Bファンド等の投資先の評価益及び売却益が寄与しました。また、韓国の株式会社SBI貯蓄銀行も、正常債権が順調に拡大し債権全体の延滞率も1.6%と低位で推移したことで過去最高の通期業績を達成し、引き続き当セグメント業績を下支えする安定的な利益源として貢献しています。なお、当事業に係る投資先企業のIPO、M&Aの実績は、国内11社・海外11社(IPO 19社・M&A 3社)の計22社となりました。
(バイオ・ヘルスケア&メディカルインフォマティクス事業)
バイオ・ヘルスケア&メディカルインフォマティクス事業の収益は、前期比43.5%増加の5,627百万円、税引前利益は8,630百万円の損失(前期は11,431百万円の損失)となりました。
コロナ禍における健康志向の高まりを受けて、機能性表示食品や健康食品などで5-アミノレブリン酸(5-ALA)配合の商品ラインナップを拡充するSBIアラプロモ株式会社では売り上げが順調に拡大しました。一方、米国Quark Pharmaceuticals, Inc.に関して約27億円の減損損失を計上しましたが、同社での臨床試験の終了に伴い同事業セグメントの赤字は前期比で約28億円改善しました。
米国Quark Pharmaceuticals, Inc.については株式売却を優先して複数の候補先と交渉を開始し、同社が保有する知的財産権等の売却についても平行して進めています。同社の税引前損失は、当期は約42億円となりましたが、来期は10億円程度への縮小を見込んでいます。また、当期中にメディカル・データ・ビジョン株式会社を持分法適用会社化し、メディカルインフォマティクス事業を新たな収益源として育成してまいります。
③ 経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因は、「第2 事業の状況 2.事業等のリスク」に記載しております。
④ 戦略的事業展開について
戦略的事業展開については、「第2 事業の状況 1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。
⑤ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
(a) 資金需要及び資金の調達源
当企業グループの事業活動における主な資金需要としては、証券関連事業における信用取引に係る顧客への貸付資金、海外金融サービス事業における貸付資金、投資事業における投資資金等があります。これらの資金需要に対して、市場環境や長短のバランスを考慮し、銀行借入による間接金融、社債やエクイティファイナンス等の直接金融、証券会社や証券金融会社との取引、コールマネー、及び顧客預金の受入等により資金を調達しております。
(b) キャッシュ・フローの状況の分析
キャッシュ・フローの状況の分析については、「第2 事業の状況 3.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フロー」に記載しております。