有価証券報告書-第21期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)
(1)経営成績等の状況の概要
当期における当企業グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当期における我が国経済は、輸出や生産の一部で弱さを見せつつも、堅調な内需に支えられた企業収益や雇用・所得環境が改善傾向にあり、政府支出による下支えと極めて緩和的な金融環境のもと、景気は緩やかに回復しました。その一方で、米国の金融政策に対する不確実性や国際的に深刻化する通商問題への懸念などから、先行きに不透明感が残る状況となっています。
投資・証券関連事業に大きな影響を与える国内外の株式市場は、米国の通商政策を巡る根強い警戒感や新興国通貨の急落による為替市場のボラティリティ上昇など、海外情勢を材料とした動きが目立ちました。国内においては、9月末には米国と中国との貿易摩擦が激化することへの過度の警戒感が後退したこと等を受け、日経平均株価は大幅に上昇し、前場で24,202円をつけ、26年10ヶ月ぶりの日中高値となりましたが、12月には再び米中貿易摩擦の激化、米国の政権運営に対する不透明感の高まりによる景気後退懸念から下げ基調となり、日経平均株価は20,000円を割って年初来安値を更新しました。その後は、米国金融政策がより慎重に進められるとの見方や米中通商交渉の進展期待が広がった一方で、世界経済の減速懸念が意識されたことから一進一退の展開となり、日経平均株価は2019年3月末に21,205円と、2018年3月末に比べ1.2%減少して取引を終えました。また、国内における株式の新規上場社数(TOKYO PRO Market上場社数を除く。)は95社となりました。一方海外においては、税制改革を通じて消費・投資を刺激している米国経済が拡大し底堅さを示しつつも、中国経済の緩やかな減速や中近東における政治的な緊張、幅広い業種で生産が停滞したことによる欧州経済の失速などから、株式の新規上場社数は減少に転じました。このように世界経済は、全体として緩やかな減速局面に陥る可能性があると考えております。
また、インターネット金融サービス事業を取り巻く事業環境については、生活防衛のため、金融取引において少しでも有利な条件を求める消費者が増える傾向にあり、モバイル端末を含むインターネット金融サービスを活用するメリットに対する認知も拡大し、対面での金融取引からの移行も進んでまいりました。同事業への異業種からの参入も増えており、競争の激化は予想されるものの、今後も引き続き成長が見込まれる市場と認識しております。
当期の経営成績につきましては、収益が351,411百万円(前年度比4.3%増加)、税引前利益は83,037百万円(同15.6%増加)、親会社の所有者に帰属する当期利益は52,548百万円(同12.6%増加)となりました。
報告セグメントごとの業績は次のとおりであります。
(%表示は対前期増減率)
(金融サービス事業)
証券関連事業、銀行業、保険事業を中核とした多様な金融関連事業を行っております。
当期における収益は229,239百万円(同5.5%増加)、税引前利益は66,568百万円(同4.2%増加)となりました。
(アセットマネジメント事業)
国内外のIT、フィンテック、ブロックチェーン、金融及びバイオ関連のベンチャー企業等への投資に関する事業、海外における金融サービス事業及び金融商品の情報提供等を行う資産運用サービス事業を行っております。
当期における収益は118,631百万円(同0.9%増加)、税引前利益は51,107百万円(同9.5%減少)となりました。
(バイオ関連事業)
生体内に存在するアミノ酸の一種である5-アミノレブリン酸(ALA)(※)を活用した医薬品・健康食品・化粧品の開発・販売や、がん及び免疫分野等における抗体医薬・核酸医薬の研究開発に関する事業を行っております。
当期における収益は3,729百万円(同11.2%減少)、税引前利益は19,179百万円の損失(前年は37,252百万円の損失)となりました。
(※)5-アミノレブリン酸(ALA)とは、体内のミトコンドリアで作られるアミノ酸で、ヘムやシトクロムと呼ばれるエネルギー生産に関与するたんぱく質の原料となる重要な物質ですが、加齢に伴い生産性が低下することが知られています。ALAは、焼酎粕や赤ワイン、高麗人参等の食品にも含まれるほか、植物の葉緑体原料としても知られています。
なお、当期末の総資産は5,034,124百万円となり、前期末の4,535,964百万円から498,160百万円の増加となりました。また、資本は前期末に比べ68,733百万円増加し、562,557百万円となりました。
② キャッシュ・フロー
当期末の現金及び現金同等物残高は713,974百万円となり、前期末の437,148百万円から276,826百万円の増加となりました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、71,665百万円の支出(前期は33,235百万円の支出)となりました。これは主に、「顧客預金の増減」が136,284百万円の収入となった一方で、「営業債権及びその他の債権の増減」が127,521百万円の支出及び「営業投資有価証券の増減」が88,404百万円の支出となったこと等の要因によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、54,731百万円の支出(前期は7,881百万円の収入)となりました。これは主に、「投資有価証券の売却及び償還による収入」が107,157百万円となった一方で、「投資有価証券の取得による支出」が125,359百万円及び「貸付による支出」が21,396百万円となったこと等の要因によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、407,746百万円の収入(前期は74,575百万円の収入)となりました。これは主に、「社債の償還による支出」が102,268百万円となった一方で、「短期借入金の純増減額」が373,059百万円の収入及び「社債の発行による収入」が168,187百万円となったこと等の要因によるものであります。
③ 生産、受注及び販売の実績
生産及び受注の実績については、該当する情報がないため記載しておりません。また、販売の実績については、「① 財政状態及び経営成績の状況」に各セグメントの収益として記載しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当企業グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2019年6月27日)現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積もり
当企業グループの連結財務諸表はIFRSに準拠して作成しております。IFRSに準拠した連結財務諸表の作成において、経営者は、他の情報源から直ちに明らかにならない資産及び負債の帳簿価額について、見積もり、判断及び仮定の設定を行う必要があります。見積もり及びそれに関する仮定は、関係が深いと思われる過去の経験及びその他の要素に基づいております。実績はこれらの見積もりと異なる場合があります。
当企業グループの会計方針については、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等」の「(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3 重要な会計方針」に記載のとおりであります。また、当該会計方針のうち、将来に関する仮定及び報告期間末における見積もりの不確実性の要因となる事項で、特に重要性があるものについては、「(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 2 作成の基礎 (4) 見積もり及び判断の利用」に記載しております。これらは、当期及び来期以降に資産や負債の帳簿価額に対して重大な調整をもたらすリスクを含んでおります。
② 当期の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当期における当企業グループを取り巻く事業環境は、国内において、政府支出による下支えと極めて緩和的な金融環境のもと、景気は緩やかに回復した一方で、米国の金融政策に対する不確実性や国際的に深刻化する通商問題への懸念などから、先行きに不透明感が残る状況となり、株式市況は一進一退の相場展開となりました。主に、米国の通商政策を巡る根強い警戒感や米国の政権運営に対する不透明感の高まり、新興国通貨の急落による為替市場のボラティリティ上昇など、海外情勢を材料とした動きが目立ちました。海外においては、税制改革を通じて消費・投資を刺激している米国経済が拡大し底堅さを示しつつも、中国経済の緩やかな減速や中近東における政治的な緊張、幅広い業種で生産が停滞したことによる欧州経済の失速などから、全体として世界経済は緩やかな減速局面に陥る可能性があると考えております。このような環境下において、当期の経営成績は、収益が前期比4.3%増加の351,411百万円、税引前利益が前期比15.6%増加の83,037百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益が前期比12.6%増加の52,548百万円となりました。
(金融サービス事業)
金融サービス事業の収益は、前期比5.5%増加の229,239百万円、税引前利益は前期比4.2%増加の66,568百万円となりました。 株式会社SBI証券においては、当期末における総合口座数が前期末に比べ約36万9千口座増加の約463万口座となるなど、引き続き堅調に顧客基盤を拡大しております。業績面では、ホールセール事業の拡充による引受・売出し等の手数料が利益貢献した一方で、二市場(東京、名古屋)合計の個人株式委託売買代金が前期比16.3%減少したことを受け、同社における委託手数料が前期比11.4%減少し、当期の税引前利益(IFRS)は、前期比1.2%減少の45,597百万円となりました。 SBI損害保険株式会社においては、引き続き自動車保険の保有契約件数が大きく増加している一方で、自然災害等に伴い保険金支払いおよび将来の保険金支払いに備える支払備金繰入額が増加したことから、税引前利益(IFRS)は、342百万円の損失となりました。 持分法適用会社である住信SBIネット銀行株式会社においては、当期末の口座数は354万口座と順調に拡大したほか、預金総残高が4兆8,571億円となっており、同社の持分法による投資利益は、前期比92.3%増加の7,249百万円となりました。なお、同社の連結業績(日本基準)は、経常収益は前期比11.3%増加の68,104百万円、経常利益は前期比15.1%増加の17,817百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比14.6%増加の11,975百万円とそれぞれ過去最高を達成しました。
(アセットマネジメント事業)
アセットマネジメント事業の収益は、前期比0.9%増加の118,631百万円、税引前利益は前期比9.5%減少の51,107百万円となりました。当期において、世界的に新規上場社数が減少に転じた中、国内の新規上場社数(TOKYO PRO Market上場社数を除く。)は95社となり、当事業に係るIPO、M&Aの実績は、国内9社、海外11社の計20社となりました。FinTechビジネスイノベーション投資事業有限責任組合(Fintechファンド)等を通じたフィンテック関連の保有銘柄を中心に公正価値評価の変動による大幅な利益計上のほか、2013年3月に連結子会社化した韓国の株式会社SBI貯蓄銀行において、正常債権の残高が順調に増加し安定的な収益基盤が確立されたことが、当事業全体の好業績に寄与しました。
(バイオ関連事業)
バイオ関連事業の収益は、前期比11.2%減少の3,729百万円、税引前利益は19,179百万円の損失(前期は37,252百万円の損失)となりました。当期においても、SBIバイオテック株式会社の子会社で複数の有望なフェーズⅢ段階の創薬パイプラインを保有する米国Quark Pharmaceuticals, Inc.と持分法適用会社の窪田製薬ホールディングス株式会社において、保有する創薬パイプラインの開発計画の見直し等を行ったため、合計74億円の減損損失を計上しており、将来の潜在的リスクの低減が図られました。また、5-アミノレブリン酸(ALA)関連事業の中核を担うSBIファーマ株式会社においては、研究開発パイプラインの進行に伴う後期開発費用の増加により、税引前損失を計上しました。 他方、SBIアラプロモ株式会社およびドイツに拠点を持つphonotonamic GmbH & Co. KGでは、ALAを含有した機能性表示食品のほかそれぞれが自社開発したALA関連商品の販売拡大により、税引前利益が大幅に増加し、黒字基調を維持したことで、将来の当セグメント全体の収益化に向けて大きく前進したと考えています。
③ 経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因は、「第2 事業の状況 2.事業等のリスク」に記載しております。
④ 戦略的事業展開について
戦略的事業展開については、「第2 事業の状況 1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。
⑤ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
(a) 資金需要及び資金の調達源
当企業グループの事業活動における主な資金需要としては、証券関連事業における信用取引に係る顧客への貸付資金、海外金融サービス事業における貸付資金、投資事業における投資資金等があります。これらの資金需要に対して、市場環境や長短のバランスを考慮し、銀行借入による間接金融、社債やエクイティファイナンス等の直接金融、証券会社や証券金融会社との取引、コールマネー、及び顧客預金の受入等により資金を調達しております。
(b) キャッシュ・フローの状況の分析
キャッシュ・フローの状況の分析については、「第2 事業の状況 3.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フロー」に記載しております。
(3)経営成績等の状況の概要に係る主要な項目における差異に関する情報
IFRSにより作成した連結財務諸表における主要な項目と、日本基準により作成した連結財務諸表におけるこれらに相当する項目との差異の概要は次のとおりであります。なお、当企業グループは日本基準に基づく連結財務諸表を作成していないため、記載した概算額は一定の仮定の下、把握できる範囲で算出したものであります。
当期(自2018年4月1日 至2019年3月31日)
① 金融商品の評価に係る損益
日本基準では、「その他有価証券」に分類される有価証券で、時価のあるものは、決算日の市場価格等に基づく時価法(評価差額は全部純資産直入法により処理)によって評価され、時価のないものは、移動平均法による原価法で評価されており、時価が著しく下落した場合または実質価格が著しく下落した場合を除き、評価にかかる損益は計上されません。ただし、当企業グループにおいては、営業投資有価証券に関する損失に備えるため、投資先会社の実情を勘案の上、その損失見積額を引当計上することにより、実質的に下落サイドのみの時価算定を行い、評価に係る損失を計上しておりました。
一方、IFRSでは、当初認識時にその他の包括利益を通じて公正価値で測定することを指定したものを除いて、純損益を通じて毎期、公正価値で測定しており、未上場株式を含む有価証券の評価損益を収益に計上しております。
この結果、IFRSの収益は日本基準の収益に比べて23,515百万円増加しております。
② のれん償却
日本基準では、のれんは一般的に20年を上限とした見積耐用年数にわたり償却され、その償却費は「販売費及び一般管理費」に計上されます。一方、IFRSではのれんは償却されず、毎期減損テストが求められています。仮に各期末ののれんを日本基準に従い償却していた場合、8,260百万円の償却費になります。
③ 表示の組替
日本基準により作成した連結損益計算書の「売上高」、「営業外収益」、「特別利益」として開示していた収益のうち、持分法による投資利益を除き、IFRSにより作成した連結損益計算書の収益に組替えております。
また、日本基準では「売上原価」、「販売費及び一般管理費」、「営業外費用」、「特別損失」として開示していた費用のうち、持分法による投資損失を除き、IFRSにより作成した連結損益計算書の費用に組替えております。
当期における当企業グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当期における我が国経済は、輸出や生産の一部で弱さを見せつつも、堅調な内需に支えられた企業収益や雇用・所得環境が改善傾向にあり、政府支出による下支えと極めて緩和的な金融環境のもと、景気は緩やかに回復しました。その一方で、米国の金融政策に対する不確実性や国際的に深刻化する通商問題への懸念などから、先行きに不透明感が残る状況となっています。
投資・証券関連事業に大きな影響を与える国内外の株式市場は、米国の通商政策を巡る根強い警戒感や新興国通貨の急落による為替市場のボラティリティ上昇など、海外情勢を材料とした動きが目立ちました。国内においては、9月末には米国と中国との貿易摩擦が激化することへの過度の警戒感が後退したこと等を受け、日経平均株価は大幅に上昇し、前場で24,202円をつけ、26年10ヶ月ぶりの日中高値となりましたが、12月には再び米中貿易摩擦の激化、米国の政権運営に対する不透明感の高まりによる景気後退懸念から下げ基調となり、日経平均株価は20,000円を割って年初来安値を更新しました。その後は、米国金融政策がより慎重に進められるとの見方や米中通商交渉の進展期待が広がった一方で、世界経済の減速懸念が意識されたことから一進一退の展開となり、日経平均株価は2019年3月末に21,205円と、2018年3月末に比べ1.2%減少して取引を終えました。また、国内における株式の新規上場社数(TOKYO PRO Market上場社数を除く。)は95社となりました。一方海外においては、税制改革を通じて消費・投資を刺激している米国経済が拡大し底堅さを示しつつも、中国経済の緩やかな減速や中近東における政治的な緊張、幅広い業種で生産が停滞したことによる欧州経済の失速などから、株式の新規上場社数は減少に転じました。このように世界経済は、全体として緩やかな減速局面に陥る可能性があると考えております。
また、インターネット金融サービス事業を取り巻く事業環境については、生活防衛のため、金融取引において少しでも有利な条件を求める消費者が増える傾向にあり、モバイル端末を含むインターネット金融サービスを活用するメリットに対する認知も拡大し、対面での金融取引からの移行も進んでまいりました。同事業への異業種からの参入も増えており、競争の激化は予想されるものの、今後も引き続き成長が見込まれる市場と認識しております。
当期の経営成績につきましては、収益が351,411百万円(前年度比4.3%増加)、税引前利益は83,037百万円(同15.6%増加)、親会社の所有者に帰属する当期利益は52,548百万円(同12.6%増加)となりました。
報告セグメントごとの業績は次のとおりであります。
収益 | 税引前利益 | ||||||||
前期 | 当期 | 前期 | 当期 | ||||||
百万円 | 百万円 | % | 百万円 | 百万円 | % | ||||
金融サービス事業 | 217,272 | 229,239 | 5.5 | 63,888 | 66,568 | 4.2 | |||
アセットマネジメント事業 | 117,572 | 118,631 | 0.9 | 56,491 | 51,107 | (9.5) | |||
バイオ関連事業 | 4,199 | 3,729 | (11.2) | (37,252) | (19,179) | - | |||
計 | 339,043 | 351,599 | 3.7 | 83,127 | 98,496 | 18.5 | |||
その他 | 1,213 | 3,677 | 203.3 | (1,328) | (6,912) | - | |||
消去又は全社 | (3,239) | (3,865) | - | (9,989) | (8,547) | - | |||
連結 | 337,017 | 351,411 | 4.3 | 71,810 | 83,037 | 15.6 |
(%表示は対前期増減率)
(金融サービス事業)
証券関連事業、銀行業、保険事業を中核とした多様な金融関連事業を行っております。
当期における収益は229,239百万円(同5.5%増加)、税引前利益は66,568百万円(同4.2%増加)となりました。
(アセットマネジメント事業)
国内外のIT、フィンテック、ブロックチェーン、金融及びバイオ関連のベンチャー企業等への投資に関する事業、海外における金融サービス事業及び金融商品の情報提供等を行う資産運用サービス事業を行っております。
当期における収益は118,631百万円(同0.9%増加)、税引前利益は51,107百万円(同9.5%減少)となりました。
(バイオ関連事業)
生体内に存在するアミノ酸の一種である5-アミノレブリン酸(ALA)(※)を活用した医薬品・健康食品・化粧品の開発・販売や、がん及び免疫分野等における抗体医薬・核酸医薬の研究開発に関する事業を行っております。
当期における収益は3,729百万円(同11.2%減少)、税引前利益は19,179百万円の損失(前年は37,252百万円の損失)となりました。
(※)5-アミノレブリン酸(ALA)とは、体内のミトコンドリアで作られるアミノ酸で、ヘムやシトクロムと呼ばれるエネルギー生産に関与するたんぱく質の原料となる重要な物質ですが、加齢に伴い生産性が低下することが知られています。ALAは、焼酎粕や赤ワイン、高麗人参等の食品にも含まれるほか、植物の葉緑体原料としても知られています。
なお、当期末の総資産は5,034,124百万円となり、前期末の4,535,964百万円から498,160百万円の増加となりました。また、資本は前期末に比べ68,733百万円増加し、562,557百万円となりました。
② キャッシュ・フロー
当期末の現金及び現金同等物残高は713,974百万円となり、前期末の437,148百万円から276,826百万円の増加となりました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、71,665百万円の支出(前期は33,235百万円の支出)となりました。これは主に、「顧客預金の増減」が136,284百万円の収入となった一方で、「営業債権及びその他の債権の増減」が127,521百万円の支出及び「営業投資有価証券の増減」が88,404百万円の支出となったこと等の要因によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、54,731百万円の支出(前期は7,881百万円の収入)となりました。これは主に、「投資有価証券の売却及び償還による収入」が107,157百万円となった一方で、「投資有価証券の取得による支出」が125,359百万円及び「貸付による支出」が21,396百万円となったこと等の要因によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、407,746百万円の収入(前期は74,575百万円の収入)となりました。これは主に、「社債の償還による支出」が102,268百万円となった一方で、「短期借入金の純増減額」が373,059百万円の収入及び「社債の発行による収入」が168,187百万円となったこと等の要因によるものであります。
③ 生産、受注及び販売の実績
生産及び受注の実績については、該当する情報がないため記載しておりません。また、販売の実績については、「① 財政状態及び経営成績の状況」に各セグメントの収益として記載しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当企業グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2019年6月27日)現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積もり
当企業グループの連結財務諸表はIFRSに準拠して作成しております。IFRSに準拠した連結財務諸表の作成において、経営者は、他の情報源から直ちに明らかにならない資産及び負債の帳簿価額について、見積もり、判断及び仮定の設定を行う必要があります。見積もり及びそれに関する仮定は、関係が深いと思われる過去の経験及びその他の要素に基づいております。実績はこれらの見積もりと異なる場合があります。
当企業グループの会計方針については、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等」の「(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3 重要な会計方針」に記載のとおりであります。また、当該会計方針のうち、将来に関する仮定及び報告期間末における見積もりの不確実性の要因となる事項で、特に重要性があるものについては、「(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 2 作成の基礎 (4) 見積もり及び判断の利用」に記載しております。これらは、当期及び来期以降に資産や負債の帳簿価額に対して重大な調整をもたらすリスクを含んでおります。
② 当期の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当期における当企業グループを取り巻く事業環境は、国内において、政府支出による下支えと極めて緩和的な金融環境のもと、景気は緩やかに回復した一方で、米国の金融政策に対する不確実性や国際的に深刻化する通商問題への懸念などから、先行きに不透明感が残る状況となり、株式市況は一進一退の相場展開となりました。主に、米国の通商政策を巡る根強い警戒感や米国の政権運営に対する不透明感の高まり、新興国通貨の急落による為替市場のボラティリティ上昇など、海外情勢を材料とした動きが目立ちました。海外においては、税制改革を通じて消費・投資を刺激している米国経済が拡大し底堅さを示しつつも、中国経済の緩やかな減速や中近東における政治的な緊張、幅広い業種で生産が停滞したことによる欧州経済の失速などから、全体として世界経済は緩やかな減速局面に陥る可能性があると考えております。このような環境下において、当期の経営成績は、収益が前期比4.3%増加の351,411百万円、税引前利益が前期比15.6%増加の83,037百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益が前期比12.6%増加の52,548百万円となりました。
(金融サービス事業)
金融サービス事業の収益は、前期比5.5%増加の229,239百万円、税引前利益は前期比4.2%増加の66,568百万円となりました。 株式会社SBI証券においては、当期末における総合口座数が前期末に比べ約36万9千口座増加の約463万口座となるなど、引き続き堅調に顧客基盤を拡大しております。業績面では、ホールセール事業の拡充による引受・売出し等の手数料が利益貢献した一方で、二市場(東京、名古屋)合計の個人株式委託売買代金が前期比16.3%減少したことを受け、同社における委託手数料が前期比11.4%減少し、当期の税引前利益(IFRS)は、前期比1.2%減少の45,597百万円となりました。 SBI損害保険株式会社においては、引き続き自動車保険の保有契約件数が大きく増加している一方で、自然災害等に伴い保険金支払いおよび将来の保険金支払いに備える支払備金繰入額が増加したことから、税引前利益(IFRS)は、342百万円の損失となりました。 持分法適用会社である住信SBIネット銀行株式会社においては、当期末の口座数は354万口座と順調に拡大したほか、預金総残高が4兆8,571億円となっており、同社の持分法による投資利益は、前期比92.3%増加の7,249百万円となりました。なお、同社の連結業績(日本基準)は、経常収益は前期比11.3%増加の68,104百万円、経常利益は前期比15.1%増加の17,817百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比14.6%増加の11,975百万円とそれぞれ過去最高を達成しました。
(アセットマネジメント事業)
アセットマネジメント事業の収益は、前期比0.9%増加の118,631百万円、税引前利益は前期比9.5%減少の51,107百万円となりました。当期において、世界的に新規上場社数が減少に転じた中、国内の新規上場社数(TOKYO PRO Market上場社数を除く。)は95社となり、当事業に係るIPO、M&Aの実績は、国内9社、海外11社の計20社となりました。FinTechビジネスイノベーション投資事業有限責任組合(Fintechファンド)等を通じたフィンテック関連の保有銘柄を中心に公正価値評価の変動による大幅な利益計上のほか、2013年3月に連結子会社化した韓国の株式会社SBI貯蓄銀行において、正常債権の残高が順調に増加し安定的な収益基盤が確立されたことが、当事業全体の好業績に寄与しました。
(バイオ関連事業)
バイオ関連事業の収益は、前期比11.2%減少の3,729百万円、税引前利益は19,179百万円の損失(前期は37,252百万円の損失)となりました。当期においても、SBIバイオテック株式会社の子会社で複数の有望なフェーズⅢ段階の創薬パイプラインを保有する米国Quark Pharmaceuticals, Inc.と持分法適用会社の窪田製薬ホールディングス株式会社において、保有する創薬パイプラインの開発計画の見直し等を行ったため、合計74億円の減損損失を計上しており、将来の潜在的リスクの低減が図られました。また、5-アミノレブリン酸(ALA)関連事業の中核を担うSBIファーマ株式会社においては、研究開発パイプラインの進行に伴う後期開発費用の増加により、税引前損失を計上しました。 他方、SBIアラプロモ株式会社およびドイツに拠点を持つphonotonamic GmbH & Co. KGでは、ALAを含有した機能性表示食品のほかそれぞれが自社開発したALA関連商品の販売拡大により、税引前利益が大幅に増加し、黒字基調を維持したことで、将来の当セグメント全体の収益化に向けて大きく前進したと考えています。
③ 経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因は、「第2 事業の状況 2.事業等のリスク」に記載しております。
④ 戦略的事業展開について
戦略的事業展開については、「第2 事業の状況 1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。
⑤ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
(a) 資金需要及び資金の調達源
当企業グループの事業活動における主な資金需要としては、証券関連事業における信用取引に係る顧客への貸付資金、海外金融サービス事業における貸付資金、投資事業における投資資金等があります。これらの資金需要に対して、市場環境や長短のバランスを考慮し、銀行借入による間接金融、社債やエクイティファイナンス等の直接金融、証券会社や証券金融会社との取引、コールマネー、及び顧客預金の受入等により資金を調達しております。
(b) キャッシュ・フローの状況の分析
キャッシュ・フローの状況の分析については、「第2 事業の状況 3.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フロー」に記載しております。
(3)経営成績等の状況の概要に係る主要な項目における差異に関する情報
IFRSにより作成した連結財務諸表における主要な項目と、日本基準により作成した連結財務諸表におけるこれらに相当する項目との差異の概要は次のとおりであります。なお、当企業グループは日本基準に基づく連結財務諸表を作成していないため、記載した概算額は一定の仮定の下、把握できる範囲で算出したものであります。
当期(自2018年4月1日 至2019年3月31日)
① 金融商品の評価に係る損益
日本基準では、「その他有価証券」に分類される有価証券で、時価のあるものは、決算日の市場価格等に基づく時価法(評価差額は全部純資産直入法により処理)によって評価され、時価のないものは、移動平均法による原価法で評価されており、時価が著しく下落した場合または実質価格が著しく下落した場合を除き、評価にかかる損益は計上されません。ただし、当企業グループにおいては、営業投資有価証券に関する損失に備えるため、投資先会社の実情を勘案の上、その損失見積額を引当計上することにより、実質的に下落サイドのみの時価算定を行い、評価に係る損失を計上しておりました。
一方、IFRSでは、当初認識時にその他の包括利益を通じて公正価値で測定することを指定したものを除いて、純損益を通じて毎期、公正価値で測定しており、未上場株式を含む有価証券の評価損益を収益に計上しております。
この結果、IFRSの収益は日本基準の収益に比べて23,515百万円増加しております。
② のれん償却
日本基準では、のれんは一般的に20年を上限とした見積耐用年数にわたり償却され、その償却費は「販売費及び一般管理費」に計上されます。一方、IFRSではのれんは償却されず、毎期減損テストが求められています。仮に各期末ののれんを日本基準に従い償却していた場合、8,260百万円の償却費になります。
③ 表示の組替
日本基準により作成した連結損益計算書の「売上高」、「営業外収益」、「特別利益」として開示していた収益のうち、持分法による投資利益を除き、IFRSにより作成した連結損益計算書の収益に組替えております。
また、日本基準では「売上原価」、「販売費及び一般管理費」、「営業外費用」、「特別損失」として開示していた費用のうち、持分法による投資損失を除き、IFRSにより作成した連結損益計算書の費用に組替えております。