有価証券報告書-第22期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)
(1)経営成績等の状況の概要
当期における当企業グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当期における我が国経済は、第3四半期末までは好調な企業収益を背景に、雇用・所得環境の改善が続き、景気は引き続き緩やかな回復基調を維持していました。しかし、第4四半期に米中貿易摩擦の激化など海外経済の不確実性に加え、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、国内経済は急速に悪化し、国内株式市況は不安定な値動きが続く展開となり、2市場合計※の個人株式委託売買代金は前期比10.5%減少しました。
このような経済環境下において、当社の当期における連結業績は、収益(売上高)が前期比4.7%増の368,055百万円となり、創業以来の過去最高を更新しました。また、税引前利益は同20.7%減の65,819百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益は同28.7%減の37,487百万円となりました。
事業別では、金融サービス事業は当第4四半期における新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、ボラティリティが上昇した株式・為替市場に牽引され、証券事業やFX事業が好調に推移しました。アセットマネジメント事業は韓国の株式会社SBI貯蓄銀行の利益が伸長し、セグメント業績を引き続き下支えした一方で、国内外の株式市場の急変や円高の進行により、保有上場銘柄の公正価値評価額が大きく下落しました。バイオ関連事業も同様に、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う医師不足や外出規制から、欧米を中心に進行中の臨床試験に遅れが生じていますが、徹底したコスト削減を進め、来期はさらなる業績改善を見込むなど着実に進展しています。
※東京・名古屋証券取引所に上場している内国証券(マザーズ、JASDAQ、セントレックス含む)
報告セグメントごとの業績は次のとおりであります。
なお、前期まで「その他」に含めていたSBI VCトレード株式会社(2019年7月1日付でSBIバーチャル・カレンシーズ株式会社より商号変更)及びSBIアルファ・トレーディング株式会社については、当期から「金融サービス事業」に含めております。このため、前期についても当期のセグメント構成にあわせて組み替えております。
(%表示は対前期増減率)
(金融サービス事業)
証券関連事業、銀行業、保険事業を中核とした多様な金融関連事業を行っております。
当期における収益は246,753百万円(同7.1%増加)、税引前利益は53,379百万円(同20.2%減少)となりました。
(アセットマネジメント事業)
国内外のIT、フィンテック、ブロックチェーン、金融及びバイオ関連のベンチャー企業等への投資に関する事業、海外における金融サービス事業及び金融商品の情報提供等を行う資産運用サービス事業を行っております。
当期における収益は115,767百万円(同2.4%減少)、税引前利益は35,165百万円(同31.2%減少)となりました。
(バイオ関連事業)
生体内に存在するアミノ酸の一種である5-アミノレブリン酸(ALA)(※)を活用した医薬品・健康食品・化粧品の開発・販売や、がん及び免疫分野等における抗体医薬・核酸医薬の研究開発に関する事業を行っております。
当期における収益は3,920百万円(同5.1%増加)、税引前利益は11,431百万円の損失(前年は19,179百万円の損失)となりました。
(※)5-アミノレブリン酸(ALA)とは、体内のミトコンドリアで作られるアミノ酸で、ヘムやシトクロムと呼ばれるエネルギー生産に関与するたんぱく質の原料となる重要な物質ですが、加齢に伴い生産性が低下することが知られています。ALAは、焼酎粕や赤ワイン、高麗人参等の食品にも含まれるほか、植物の葉緑体原料としても知られています。
なお、当期末の総資産は5,513,227百万円となり、前期末の5,034,124百万円から479,103百万円の増加となりました。また、資本は前期末に比べ31,142百万円増加し、593,699百万円となりました。
② キャッシュ・フロー
当期末の現金及び現金同等物残高は843,755百万円となり、前期末の713,974百万円から129,781百万円の増加となりました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、26,849百万円の収入(前期は71,665百万円の支出)となりました。これは主に、「営業債権及びその他の債権の増減」が146,427百万円の支出及び「営業投資有価証券の増減」が114,172百万円の支出となった一方で、「顧客預金の増減」が139,580百万円の収入、「証券業関連資産及び負債の増減」が78,095百万円の収入及び「税引前利益」が65,819百万円となったこと等の要因によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、70,887百万円の支出(前期は54,731百万円の支出)となりました。これは主に、「投資有価証券の売却及び償還による収入」が39,404百万円となった一方で、「貸付による支出」が50,303百万円及び「投資有価証券の取得による支出」が36,885百万円となったこと等の要因によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、181,626百万円の収入(前期は407,746百万円の収入)となりました。これは主に、「社債の償還による支出」が46,626百万円となった一方で、「社債の発行による収入」が179,889百万円及び「長期借入による収入」が58,043百万円の収入となったこと等の要因によるものであります。
③ 生産、受注及び販売の実績
生産及び受注の実績については、該当する情報がないため記載しておりません。また、販売の実績については、「① 財政状態及び経営成績の状況」に各セグメントの収益として記載しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当企業グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2020年6月26日)現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積もり
当企業グループの連結財務諸表はIFRSに準拠して作成しております。IFRSに準拠した連結財務諸表の作成において、経営者は、他の情報源から直ちに明らかにならない資産及び負債の帳簿価額について、見積もり、判断及び仮定の設定を行う必要があります。見積もり及びそれに関する仮定は、関係が深いと思われる過去の経験及びその他の要素に基づいております。実績はこれらの見積もりと異なる場合があります。
当企業グループの会計方針については、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等」の「(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3 重要な会計方針」に記載のとおりであります。また、当該会計方針のうち、将来に関する仮定及び報告期間末における見積もりの不確実性の要因となる事項で、特に重要性があるものについては、「(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 2 作成の基礎 (4) 見積もり及び判断の利用」に記載しております。これらは、当期及び来期以降に資産や負債の帳簿価額に対して重大な調整をもたらすリスクを含んでおります。
② 当期の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当期における当企業グループを取り巻く事業環境は、第3四半期末までは好調な企業収益を背景に、雇用・所得環境の改善が続き、景気は引き続き緩やかな回復基調を維持しておりました。しかし、第4四半期に米中貿易摩擦の激化など海外経済の不確実性に加え、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、国内経済は急速に悪化し、当企業グループの投資・証券関連事業に大きな影響を与える国内株式市況は不安定な値動きが続く展開となり、2市場合計(東京・名古屋証券取引所に上場している内国証券(マザーズ、JASDAQ、セントレックス含む))の個人株式委託売買代金は前期比10.5%減少いたしました。
他方、インターネット金融サービス事業を取り巻く事業環境については、金融取引において少しでも有利な条件を求める消費者が増える傾向にあり、モバイル端末を含むインターネット金融サービスを活用するメリットに対する認知も引き続き拡大しているとともに、感染症対策という観点からも対面での金融取引からの移行も進んできました。同事業への異業者からの参入も増えており、競争の激化は予想されるものの、今後も引き続き成長が見込まれる市場と認識しております。
(金融サービス事業)
金融サービス事業の収益は、前期比7.1%増加の246,753百万円、税引前利益は前期比20.2%減少の53,379百万円となりました。
グループ最大の収益源である株式会社SBI証券では、当期末における総合口座数が前期末に比べ、約49万4千口座増加の約512万口座となるなど、引き続き堅調に顧客基盤を拡大しております。業績面では、当第4四半期における新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、株式・為替市場のボラティリティが上昇したこと等が寄与し、外国株式や先物・オプションの取引拡大に伴う委託手数料やFX関連収益等のトレーディング収益が伸長し、堅調な業績を収めました。
SBIインシュアランスグループ株式会社や持分法適用関連会社の住信SBIネット銀行株式会社は、それぞれ前期末に比べ、保険契約件数や口座数、預金残高等の顧客基盤が順調に増加したこと等を背景に、日本会計基準では順調に業容が拡大しました。一方で、IFRSでは同第4四半期での市場の急変に伴い、保有有価証券の公正価値評価損失を計上いたしました。
(アセットマネジメント事業)
アセットマネジメント事業の収益は、前期比2.4%減少の115,767百万円、税引前利益は前期比31.2%減少の35,165百万円となりました。
2013年3月に連結子会社化した韓国の株式会社SBI貯蓄銀行は、正常債権が順調に拡大し債権全体の延滞率も2.3%と低位で推移しており、引き続き当セグメント業績を下支えする安定的な利益源として貢献いたしました。一方、投資事業に係るIFRSに基づく保有銘柄の各期末における公正価値の変動による損益および売却損益は、当第4四半期における新型コロナウイルスの感染拡大に伴う株式市況の急変により、上場銘柄の公正価値評価額が大幅に下落したことで、前期比で大きく減少したものの、通期で約198億円 を計上しました。なお、当事業に係る投資先企業のIPO、M&Aの実績は、国内10社・海外14社(IPO 23社・M&A 1社)の計24社となりました。
(バイオ関連事業)
バイオ関連事業の収益は、前期比5.1%増加の3,920百万円、税引前利益は11,431百万円の損失(前期は19,179百万円の損失)となりました。
当期において、SBIバイオテック株式会社が新たに自己免疫疾患治療薬を旭化成ファーマ株式会社に導出し、通期黒字化を達成したほか、様々な機能性表示食品など5-アミノレブリン酸(ALA)配合の商品ラインナップを拡充するSBIアラプロモ株式会社は順調に進展いたしました。一方、米国Quark Pharmaceuticals, Inc.では、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う医師不足や外出規制から、欧米を中心に進行中の急性腎不全(AKI)予防薬の臨床試験の進捗に遅れが生じるなど影響を受けていますが、徹底したコスト削減を進め来期はさらなる業績改善を見込んでおります。
事業の選択と集中の観点から、期中に持分法適用関連会社であった窪田製薬ホールディングス株式会社を完全売却したほか、米国Quark Pharmaceuticals, Inc.についても事業売却等を検討する予定であり、今後はSBIバイオテック株式会社及びSBIファーマ株式会社を中核とするALA関連事業以外には、当セグメントにおける追加投資は最小限に留める予定です。
③ 経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因は、「第2 事業の状況 2.事業等のリスク」に記載しております。
④ 戦略的事業展開について
戦略的事業展開については、「第2 事業の状況 1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。
⑤ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
(a) 資金需要及び資金の調達源
当企業グループの事業活動における主な資金需要としては、証券関連事業における信用取引に係る顧客への貸付資金、海外金融サービス事業における貸付資金、投資事業における投資資金等があります。これらの資金需要に対して、市場環境や長短のバランスを考慮し、銀行借入による間接金融、社債やエクイティファイナンス等の直接金融、証券会社や証券金融会社との取引、コールマネー、及び顧客預金の受入等により資金を調達しております。
(b) キャッシュ・フローの状況の分析
キャッシュ・フローの状況の分析については、「第2 事業の状況 3.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フロー」に記載しております。
当期における当企業グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当期における我が国経済は、第3四半期末までは好調な企業収益を背景に、雇用・所得環境の改善が続き、景気は引き続き緩やかな回復基調を維持していました。しかし、第4四半期に米中貿易摩擦の激化など海外経済の不確実性に加え、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、国内経済は急速に悪化し、国内株式市況は不安定な値動きが続く展開となり、2市場合計※の個人株式委託売買代金は前期比10.5%減少しました。
このような経済環境下において、当社の当期における連結業績は、収益(売上高)が前期比4.7%増の368,055百万円となり、創業以来の過去最高を更新しました。また、税引前利益は同20.7%減の65,819百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益は同28.7%減の37,487百万円となりました。
事業別では、金融サービス事業は当第4四半期における新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、ボラティリティが上昇した株式・為替市場に牽引され、証券事業やFX事業が好調に推移しました。アセットマネジメント事業は韓国の株式会社SBI貯蓄銀行の利益が伸長し、セグメント業績を引き続き下支えした一方で、国内外の株式市場の急変や円高の進行により、保有上場銘柄の公正価値評価額が大きく下落しました。バイオ関連事業も同様に、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う医師不足や外出規制から、欧米を中心に進行中の臨床試験に遅れが生じていますが、徹底したコスト削減を進め、来期はさらなる業績改善を見込むなど着実に進展しています。
※東京・名古屋証券取引所に上場している内国証券(マザーズ、JASDAQ、セントレックス含む)
報告セグメントごとの業績は次のとおりであります。
なお、前期まで「その他」に含めていたSBI VCトレード株式会社(2019年7月1日付でSBIバーチャル・カレンシーズ株式会社より商号変更)及びSBIアルファ・トレーディング株式会社については、当期から「金融サービス事業」に含めております。このため、前期についても当期のセグメント構成にあわせて組み替えております。
収益 | 税引前利益 | ||||||||
前期 | 当期 | 前期 | 当期 | ||||||
百万円 | 百万円 | % | 百万円 | 百万円 | % | ||||
金融サービス事業 | 230,458 | 246,753 | 7.1 | 66,864 | 53,379 | (20.2) | |||
アセットマネジメント事業 | 118,631 | 115,767 | (2.4) | 51,107 | 35,165 | (31.2) | |||
バイオ関連事業 | 3,729 | 3,920 | 5.1 | (19,179) | (11,431) | - | |||
計 | 352,818 | 366,440 | 3.9 | 98,792 | 77,113 | (21.9) | |||
その他 | 1,189 | 5,512 | 363.9 | (7,208) | (1,771) | - | |||
消去又は全社 | (2,596) | (3,897) | - | (8,547) | (9,523) | - | |||
連結 | 351,411 | 368,055 | 4.7 | 83,037 | 65,819 | (20.7) |
(%表示は対前期増減率)
(金融サービス事業)
証券関連事業、銀行業、保険事業を中核とした多様な金融関連事業を行っております。
当期における収益は246,753百万円(同7.1%増加)、税引前利益は53,379百万円(同20.2%減少)となりました。
(アセットマネジメント事業)
国内外のIT、フィンテック、ブロックチェーン、金融及びバイオ関連のベンチャー企業等への投資に関する事業、海外における金融サービス事業及び金融商品の情報提供等を行う資産運用サービス事業を行っております。
当期における収益は115,767百万円(同2.4%減少)、税引前利益は35,165百万円(同31.2%減少)となりました。
(バイオ関連事業)
生体内に存在するアミノ酸の一種である5-アミノレブリン酸(ALA)(※)を活用した医薬品・健康食品・化粧品の開発・販売や、がん及び免疫分野等における抗体医薬・核酸医薬の研究開発に関する事業を行っております。
当期における収益は3,920百万円(同5.1%増加)、税引前利益は11,431百万円の損失(前年は19,179百万円の損失)となりました。
(※)5-アミノレブリン酸(ALA)とは、体内のミトコンドリアで作られるアミノ酸で、ヘムやシトクロムと呼ばれるエネルギー生産に関与するたんぱく質の原料となる重要な物質ですが、加齢に伴い生産性が低下することが知られています。ALAは、焼酎粕や赤ワイン、高麗人参等の食品にも含まれるほか、植物の葉緑体原料としても知られています。
なお、当期末の総資産は5,513,227百万円となり、前期末の5,034,124百万円から479,103百万円の増加となりました。また、資本は前期末に比べ31,142百万円増加し、593,699百万円となりました。
② キャッシュ・フロー
当期末の現金及び現金同等物残高は843,755百万円となり、前期末の713,974百万円から129,781百万円の増加となりました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、26,849百万円の収入(前期は71,665百万円の支出)となりました。これは主に、「営業債権及びその他の債権の増減」が146,427百万円の支出及び「営業投資有価証券の増減」が114,172百万円の支出となった一方で、「顧客預金の増減」が139,580百万円の収入、「証券業関連資産及び負債の増減」が78,095百万円の収入及び「税引前利益」が65,819百万円となったこと等の要因によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、70,887百万円の支出(前期は54,731百万円の支出)となりました。これは主に、「投資有価証券の売却及び償還による収入」が39,404百万円となった一方で、「貸付による支出」が50,303百万円及び「投資有価証券の取得による支出」が36,885百万円となったこと等の要因によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、181,626百万円の収入(前期は407,746百万円の収入)となりました。これは主に、「社債の償還による支出」が46,626百万円となった一方で、「社債の発行による収入」が179,889百万円及び「長期借入による収入」が58,043百万円の収入となったこと等の要因によるものであります。
③ 生産、受注及び販売の実績
生産及び受注の実績については、該当する情報がないため記載しておりません。また、販売の実績については、「① 財政状態及び経営成績の状況」に各セグメントの収益として記載しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当企業グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2020年6月26日)現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積もり
当企業グループの連結財務諸表はIFRSに準拠して作成しております。IFRSに準拠した連結財務諸表の作成において、経営者は、他の情報源から直ちに明らかにならない資産及び負債の帳簿価額について、見積もり、判断及び仮定の設定を行う必要があります。見積もり及びそれに関する仮定は、関係が深いと思われる過去の経験及びその他の要素に基づいております。実績はこれらの見積もりと異なる場合があります。
当企業グループの会計方針については、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等」の「(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3 重要な会計方針」に記載のとおりであります。また、当該会計方針のうち、将来に関する仮定及び報告期間末における見積もりの不確実性の要因となる事項で、特に重要性があるものについては、「(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 2 作成の基礎 (4) 見積もり及び判断の利用」に記載しております。これらは、当期及び来期以降に資産や負債の帳簿価額に対して重大な調整をもたらすリスクを含んでおります。
② 当期の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当期における当企業グループを取り巻く事業環境は、第3四半期末までは好調な企業収益を背景に、雇用・所得環境の改善が続き、景気は引き続き緩やかな回復基調を維持しておりました。しかし、第4四半期に米中貿易摩擦の激化など海外経済の不確実性に加え、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、国内経済は急速に悪化し、当企業グループの投資・証券関連事業に大きな影響を与える国内株式市況は不安定な値動きが続く展開となり、2市場合計(東京・名古屋証券取引所に上場している内国証券(マザーズ、JASDAQ、セントレックス含む))の個人株式委託売買代金は前期比10.5%減少いたしました。
他方、インターネット金融サービス事業を取り巻く事業環境については、金融取引において少しでも有利な条件を求める消費者が増える傾向にあり、モバイル端末を含むインターネット金融サービスを活用するメリットに対する認知も引き続き拡大しているとともに、感染症対策という観点からも対面での金融取引からの移行も進んできました。同事業への異業者からの参入も増えており、競争の激化は予想されるものの、今後も引き続き成長が見込まれる市場と認識しております。
(金融サービス事業)
金融サービス事業の収益は、前期比7.1%増加の246,753百万円、税引前利益は前期比20.2%減少の53,379百万円となりました。
グループ最大の収益源である株式会社SBI証券では、当期末における総合口座数が前期末に比べ、約49万4千口座増加の約512万口座となるなど、引き続き堅調に顧客基盤を拡大しております。業績面では、当第4四半期における新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、株式・為替市場のボラティリティが上昇したこと等が寄与し、外国株式や先物・オプションの取引拡大に伴う委託手数料やFX関連収益等のトレーディング収益が伸長し、堅調な業績を収めました。
SBIインシュアランスグループ株式会社や持分法適用関連会社の住信SBIネット銀行株式会社は、それぞれ前期末に比べ、保険契約件数や口座数、預金残高等の顧客基盤が順調に増加したこと等を背景に、日本会計基準では順調に業容が拡大しました。一方で、IFRSでは同第4四半期での市場の急変に伴い、保有有価証券の公正価値評価損失を計上いたしました。
(アセットマネジメント事業)
アセットマネジメント事業の収益は、前期比2.4%減少の115,767百万円、税引前利益は前期比31.2%減少の35,165百万円となりました。
2013年3月に連結子会社化した韓国の株式会社SBI貯蓄銀行は、正常債権が順調に拡大し債権全体の延滞率も2.3%と低位で推移しており、引き続き当セグメント業績を下支えする安定的な利益源として貢献いたしました。一方、投資事業に係るIFRSに基づく保有銘柄の各期末における公正価値の変動による損益および売却損益は、当第4四半期における新型コロナウイルスの感染拡大に伴う株式市況の急変により、上場銘柄の公正価値評価額が大幅に下落したことで、前期比で大きく減少したものの、通期で約198億円 を計上しました。なお、当事業に係る投資先企業のIPO、M&Aの実績は、国内10社・海外14社(IPO 23社・M&A 1社)の計24社となりました。
(バイオ関連事業)
バイオ関連事業の収益は、前期比5.1%増加の3,920百万円、税引前利益は11,431百万円の損失(前期は19,179百万円の損失)となりました。
当期において、SBIバイオテック株式会社が新たに自己免疫疾患治療薬を旭化成ファーマ株式会社に導出し、通期黒字化を達成したほか、様々な機能性表示食品など5-アミノレブリン酸(ALA)配合の商品ラインナップを拡充するSBIアラプロモ株式会社は順調に進展いたしました。一方、米国Quark Pharmaceuticals, Inc.では、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う医師不足や外出規制から、欧米を中心に進行中の急性腎不全(AKI)予防薬の臨床試験の進捗に遅れが生じるなど影響を受けていますが、徹底したコスト削減を進め来期はさらなる業績改善を見込んでおります。
事業の選択と集中の観点から、期中に持分法適用関連会社であった窪田製薬ホールディングス株式会社を完全売却したほか、米国Quark Pharmaceuticals, Inc.についても事業売却等を検討する予定であり、今後はSBIバイオテック株式会社及びSBIファーマ株式会社を中核とするALA関連事業以外には、当セグメントにおける追加投資は最小限に留める予定です。
③ 経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因は、「第2 事業の状況 2.事業等のリスク」に記載しております。
④ 戦略的事業展開について
戦略的事業展開については、「第2 事業の状況 1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。
⑤ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
(a) 資金需要及び資金の調達源
当企業グループの事業活動における主な資金需要としては、証券関連事業における信用取引に係る顧客への貸付資金、海外金融サービス事業における貸付資金、投資事業における投資資金等があります。これらの資金需要に対して、市場環境や長短のバランスを考慮し、銀行借入による間接金融、社債やエクイティファイナンス等の直接金融、証券会社や証券金融会社との取引、コールマネー、及び顧客預金の受入等により資金を調達しております。
(b) キャッシュ・フローの状況の分析
キャッシュ・フローの状況の分析については、「第2 事業の状況 3.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フロー」に記載しております。