有価証券報告書-第26期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)

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2018/06/29 12:29
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(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概況は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
国内の情報通信分野においては、インターネット利用率は 83.5%(※1)と緩やかではありますが10年以上上昇を続け、スマートフォンを保有する世帯の割合も71.8%と増加しております。一方、29歳以下の単身世帯におけるテレビ普及率は87.2%と全世帯平均の普及率95.2%と比較し8ポイント低く(※2)、また、1日当たりのテレビ利用時間につきましても10代、20代は、全世代平均を大幅に下回るなど、若年層を中心としたテレビ離れの動きが進んでおります。今後ともインターネット利用率の上昇とスマートフォンの普及拡大を背景に、デジタル化時代に沿ったサービスへの移行が加速していくものと見込まれます。この様な状況の中で、当社は時代に即したユーザーニーズに機敏に対応していくことがますます重要となっています。
※1 出所:総務省「平成28年通信利用動向調査」
※2 出所:内閣府「平成30年3月消費動向調査」
また、エンタテインメント市場においては、世界の音楽市場は定額制配信サービス(サブスクリプション)を中心に前年比8.1%増加し173億ドルとなり(※3)、平成11年以降初めて3年連続の売上高の伸びを記録しています。日本においては、音楽ビデオを含む音楽ソフトの生産実績は前年比6%減少し2,320億円となり(※4)、依然としてパッケージ商品の縮小傾向が続いておりますが、この反面、有料音楽配信の売上実績は573億円と前年比8%増加しており、特に定額制配信サービス(サブスクリプション)は前年比22%上昇するなど躍進しています。一方、ライブ・エンタテインメントの市場規模はコト消費の拡大を元に3,324億円と前年比7.2%増加しております。(※5)
※3 出所:IFPI「Global Music Report 2018」
※4 出所:一般社団法人日本レコード協会「日本のレコード産業2017」
※5 出所:一般社団法人コンサートプロモーターズ協会「平成29年基礎調査報告書」
このような環境の下、当社グループは創業以来コンテンツのデジタル流通に注力してきた取組みを活かし、引き続き『マルチコンテンツ&マルチデバイス戦略(様々なコンテンツを、必要なときに、必要な場所で楽しむことができる環境の創造)』を推進し、インターネット上に溢れる情報を収集、整理し、付加価値を高めてユーザーに提供するプラットフォームの開発など、市場環境の変化に応じた新規サービス展開に取り組んでまいりました。
当社グループの当連結会計年度の経営成績については、主要な売上である既存配信サービスの売上は引き続き減少しているものの、市場環境に応じた新たなサービスの投入のほか、新たに株式会社ドリーミュージックを連結子会社に加えたことにより、当社グループの当連結会計年度の業績については、売上高は前期比2.0%増の21,210百万円、営業利益は前期比35.7%減の1,130百万円、経常利益は前期比33.1%減の1,029百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比11.8%減の504百万円となりました。
一方、当社グループの当連結会計年度末における財政状態については、次のとおりであります。
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ1,193百万円減少し、25,765百万円となりました。主として現金及び預金、受取手形及び売掛金がそれぞれ減少したこと等によるものであります。
負債は、前連結会計年度末に比べて1,798百万円減少し、7,093百万円となりました。主として支払手形及び買掛金、未払金、長期借入金が減少したこと等によるものであります。
純資産は、前連結会計年度末に比べて605百万円増加し、18,671百万円となりました。主として日本コロムビア株式会社との株式交換(後述)によるものであります。自己資本比率は72.4%となりました。
当社においては平成29年6月29日、日本コロムビア株式会社においては同年6月23日にそれぞれ開催されました定時株主総会において株式交換契約が承認され、平成29年8月1日を効力発生日とする株式交換により、当社は、日本コロムビア株式会社の全株式を取得し、完全子会社化が完了しました。これに伴い事業戦略の一元化と意思決定のスピードアップ、ノウハウ・人材等の効率的な活用をより一層進めるとともに、音楽業界の変革期に対応する創造力を強化し、更なる企業価値の向上に努めてまいります。
セグメントの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。
<コンテンツ事業>コンテンツ事業においては、スマートフォンなどの普及や音楽視聴スタイルの変化など市場環境に応じた新たな商品開発を積極的に進めているほか、多様化する収益源の獲得に向けてプラットフォーム化などを行うとともに、既存の事業を含めたサービス内容や市場性の結果検証を行い、機能の改善や各サービスの連動など、より付加価値を高める施策を推進しております。
「FaRao PRO」は、業務用BGMの提供のみならず、店舗のブランディングを提案するソリューションやアナウンス機能など、店舗運営に必要な機能拡充、営業活動を積極的に展開しております。日本でのサービスを基盤として、フランス、インドネシアにおいて「FaRao PRO」事業を開始しており、今後とも、国内外において新たなBGM市場の創造と活性化を目指してまいります。
アーティスト向けプラットフォーム「Fans'」は、オフィシャルサイトの構築、楽曲・映像配信、アーティストグッズの販売、ファンクラブ運営などアーティスト活動に必要な機能の拡充を行っております。より多くのアーティストが作品や情報を自由に発信できるサービスとして、利用者の獲得、拡大を目指すとともに、使いやすさの追及等サービス品質の向上に努めてまいります。
この結果、コンテンツ事業の売上高は、市場環境の変化に合わせた新たなサービス展開を積極的に進めたものの、フィーチャーフォン向けサービスの売上減少や、新規事業の立ち上がりの遅れに伴い、前期比1.0%減の4,361百万円となり、営業損失は194百万円(前期は営業損失56百万円)となりました。一方、セグメント資産は前期比8.4%減の12,672百万円となりました。
<ポイント事業>ポイント事業においては、ポイント倍セール等の施策もあり、既存加盟店でのポイント発行が引き続き堅調に推移しました。また、セルフリキデーション(※6)事業も堅調であったことから、売上高は、前期比6.2%増の2,562百万円となりました。営業利益に関しましては、人員増やオフィス増設等によりコストが増加いたしましたが、売上増加により、前期比3.6%増の89百万円となりました。一方、セグメント資産は7.1%増の1,133百万円となりました。
※6 シールなどのポイントを貯めて、様々な商品を割引価格で購入できるキャンペーン
<レーベル事業>レーベル事業においては、音楽市場の縮小に伴う音楽・映像関連業界の厳しい環境の下、パッケージ商品に依存している状況からの脱却を図るため、将来を見すえた新規事業の強化を進めております。
業績につきましては、新たに株式会社ドリーミュージックを連結し、日本コロムビア株式会社におけるゲーム作品も好調に推移したため、売上高は前期比2.2%増の14,286百万円となりました。損益につきましては、前期の売上に貢献いたしましたJ-POP作品、教育作品およびアニメ作品の売上が減少したため、営業利益は前期比28.8%減の1,231百万円となりました。一方、セグメント資産は1.1%減の11,973百万円となりました。
※本文書に記載されている商品・サービス名は株式会社フェイスの日本またはその他の国における商標または登録商標です。
② キャッシュ・フロー
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ858百万円減少し、前期比6.2%減の12,910百万円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益928百万円にのれん償却額144百万円、減価償却費358百万円を加算したこと、売上債権の減少587百万円、仕入債務の減少401百万円、法人税等の支払い429百万円があったこと等により前期比67.2%減の809百万円の収入となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、定期預金の払戻による収入が500百万円、投資有価証券売却による収入が149百万円および連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による収入が40百万円あったものの、定期預金の預入による支出が550百万円、関係会社株式の取得による支出509百万円、ソフトウエアの取得による支出が200百万円、投資有価証券の取得による支出が94百万円があったこと等により、1,070百万円の支出(前期は839百万円の収入)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済による支出が418百万円、配当金の支払額が117百万円あったこと等により、597百万円の支出(前期は512百万円の支出)となりました。
③生産、受注及び販売の実績
当社グループは、生産活動を行っておりません。仕入実績については、サーバー管理費及び労務費が売上原価の大半を占めるため、記載を省略しております。当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 平成29年4月1日
至 平成30年3月31日)
前年同期比(%)
コンテンツ(千円)4,361,273△1.0
ポイント(千円)2,562,6976.2
レーベル(千円)14,286,0992.2
合計(千円)21,210,0702.0

(注) 1. セグメント間の取引については相殺消去しております。
2. 上記の金額に消費税等は含まれておりません。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及ぶ分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。これらの作成にあたり、以下の事項が当社グループの重要な判断および見積りに大きな影響を及ぼすと考えております。
a. 収益の認識
コンテンツ事業につきましては、数多くのコンテンツを所有するカラオケメーカー、ゲームメーカーなどのコンテンツプロバイダに対し、当社グループのコンテンツ配信ソリューションを提供することにより、当該サービスに加入する会員数またはコンテンツのダウンロード数に応じてユーザーより回収した金額をもとに所定のロイヤリティをコンテンツプロバイダからの報告書をもとに売上計上しております。また、当社グループ自らがコンテンツプロバイダとして行っているサービスについては、会員数の推移等を総合的に勘案しつつ、合理的な方法で売上高を発生基準により見積り計上しております。
ポイント事業につきましては、原則として出荷基準にて加盟店(代理店を含む)へのポイント登録カード販売額(契約に基づく掛率による)を計上しております。
レーベル事業につきましては、市販事業における製品に係る売上高は、製品がレコード特約店等に出荷された時点で認識し、総売上高から返品高を控除した純売上高を計上しております。
b. 売上原価
コンテンツ事業につきましては、サービスをするにあたって必要なサーバー保守費用やシステム構築費用、楽曲等を制作するための費用及び著作権料等並びにそれらに係る労務費や諸経費を売上原価としております。
ポイント事業につきましては、加盟店から返却されるフルマークカード(交換済ポイント)ならびにポイント交換のための仕入商品、加盟店に販売する販促ツールの制作費等を販売原価としております。また、売上高と売上原価を期間対応させるため出荷ポイントのうち未交換ポイント残高を一定の計算方式により見積原価として計上しております。見積原価は、総未交換ポイント残高のうち4年(統計的分析結果に基づく最終的な未使用状態の固定化に要する年数)を経過した未交換ポイントは使用される可能性が低いことから当該見積原価より控除して計上しております。
レーベル事業につきまして、録音費、アーティスト印税、他社所有原盤権使用料などの原盤制作費は、関連作品に係る売上高を認識するまで資産計上し、同時点で原価に計上しております。関連作品の売上予定が無くなったと判断した場合、資産計上されていた原盤制作費は、その事由が判明した時点で全額原価として処理しております。前払費用にはアーティストに支払う契約金や前払印税が含まれております。契約金は契約期間に対応して償却を行っており、前払印税は売上高に対応して原価計上し、また個々のアーティストの過去の作品の販売実績等に基づく販売見込み額を勘案し、予想される将来の売上高に対応して原価計上しております。
c. 投資の減損
売買目的有価証券以外の有価証券のうち時価のあるものについて、時価が著しく下落したときは、回復する見込みがあると認められる場合を除き、投資の減損を行います。この場合における「時価が著しく下落したとき」とは、個々の銘柄の有価証券の時価が取得原価に比べ50%以上下落した場合をいいます。また、下落率が30%以上50%未満の銘柄については、過去の株価の推移や発行会社の業績等を勘案し、減損処理の要否を検討しております。市場価格のない株式については、当該株式の発行会社の財政状態の悪化により実質価額が著しく低下したときは、投資の減損を行います。この場合における「実質価額が著しく低下したとき」とは、株式の実質価額が取得原価に比べ50%以上低下した場合をいいます。ただし、当該発行会社の財政状態及び経営成績、将来の事業計画等により回復可能性が認められる場合には、投資の減損を行わない場合もあります。
d. 返品制度と返品調整引当金
著作権保護の観点から著作物であるCD等に関しては、レコード会社が市場での販売価格を定め、小売店が決められた定価で販売する再販売価格維持制度が定められております。これを背景として、一般にレコード会社と特約店等との販売契約において、レコード会社に製品を返品することができる旨約定されております。このため当社グループは将来の返品に備えて、過去の返品実績に基づく合理的な見積りにより算出した返品調整引当金を計上しております。
e. 貸倒引当金
当社グループは、債権の貸倒れによる損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を勘案し、回収不能見込額を計上しております。なお、取引先の財政状態が悪化し、その支払能力が低下した場合、追加引当が必要となる場合があります。
f. 退職給付に係る会計処理
従業員の退職給付に備えるため、当連結会計年度末における退職給付債務から年金資産の額を控除した額を退職給付に係る負債として計上し、未認識数理計算上の差異を退職給付に係る調整累計額として計上しております。
日本コロムビア㈱及び一部の子会社においては、受給者向けには確定給付企業年金制度を、従業員向けには退職慰労金支給規定に基づく退職一時金制度と確定拠出年金制度を併用した年金制度を採用しております。
当社及び一部の国内連結子会社は、退職一時金制度又は確定拠出年金制度を採用しており、退職給付に係る期末自己都合要支給額を退職給付債務とする方法を適用しております。
退職給付費用及び退職給付債務は数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されております。これらの前提条件には、割引率、将来の報酬水準、退職率、死亡率及び年金資産の期待収益率などが含まれております。割引率は日本証券業協会の「格付けマトリクス表」によるダブルA格相当以上を得ている社債の利回りを勘案して算出しており、年金資産の期待収益率は年金資産が投資されている資産の種類毎の長期期待収益率に基づいて算出しております。将来、年金資産の運用利回りが低下した場合や、退職給付債務を計算する前提となる数理上の前提・仮定に変更があった場合には、退職給付債務や退職給付費用が増加し、影響を及ぼす可能性があります。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の売上高は21,210百万円(前期比2.0%増)売上原価は13,212百万円(同5.5%増)、販売費及び一般管理費は6,866百万円(同5.5%増)、営業利益は1,130百万円(同35.7%減)、経常利益は1,029百万円(同33.1%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は504百万円(同11.8%減)となりました。
a. 売上高
売上高は前期比414百万円増の21,210百万円となりました。これは、主として、レーベル事業の業績が好調に推移したことよるものであります。
b. 売上原価、販売費及び一般管理費
売上原価は前期比684百万円増の13,212百万円、販売費及び一般管理費は前期比357百万円増の6,866百万円となりました。
c. 営業利益
営業利益は、前期比627百万円減の1,130百万円となりました。これは、コンテンツ事業における売上減に伴う営業利益減、ポイント事業における人材投資等による販売費及び一般管理費増に伴う営業利益減やレーベル事業において前期の売上に貢献いたしましたJ-POP作品、教育作品およびアニメ作品の売上が減少したためであります。
d. 経常利益
経常利益は、前期比509百万円減の1,029百万円となりました。これは主として営業利益を1,130百万円、投資事業組合運用益26百万円、企業結合による交換費用50百万円及び持分法による投資損失99百万円を計上したことによるものであります。
e. 税金等調整前当期純利益
税金等調整前当期純利益は、前期比780百万円減の928百万円となりました。これは主として、経常利益1,029百万円、投資有価証券売却益116百万円及び新株予約権戻入益15百万円を計上した一方、のれん減損損失84百万円及び減損損失145百万円を計上したことによるものであります。
f. 親会社株主に帰属する当期純利益
親会社株主に帰属する当期純利益は、前期比67百万円減の504百万円となりました。これは主として税金等調整前当期純利益928百万円計上したことおよび法人税、住民税及び事業税並びに法人税等調整額を211百万円計上したこと、非支配株主に帰属する当期純利益を212百万円計上したことなどによるものであります。
経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
当社グループの当連結会計年度における資本の財源および資金の流動性は、営業活動並びに投資活動においては、手元資金で賄っており、外部からの資金調達は実施しておりません。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ858百万円減少し、前期比6.2%減の12,910百万円となりました。
当連結会計年度末における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益928百万円にのれん償却額144百万円、減価償却費358百万円を加算したこと、売上債権の減少587百万円、仕入債務の減少401百万円、法人税等の支払い429百万円があったこと等により前期比67.2%減の809百万円の収入となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、定期預金の払戻による収入が500百万円、投資有価証券売却による収入が149百万円および連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による収入が40百万円あったものの、定期預金の預入による支出が550百万円、関係会社株式の取得による支出509百万円、ソフトウエアの取得による支出が200百万円、投資有価証券の取得による支出が94百万円があったこと等により、1,070百万円の支出(前期は839百万円の収入)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済による支出が418百万円、配当金の支払額が117百万円あったこと等により、597百万円の支出(前期は512百万円の支出)となりました。