四半期報告書-第32期第1四半期(2023/04/01-2023/06/30)

【提出】
2023/08/14 16:00
【資料】
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【項目】
35項目
文中の将来に関する事項は、当四半期報告書提出日現在において判断したものであります。
(1) 財政状態及び経営成績の状況
国内の情報通信分野においては、2022年においてもインターネット普及率は84.9%と高水準で推移しており、その中でもスマートフォンを保有している世帯割合は90.1%と、パソコンを保有する世帯割合69.0%を大きく上回る状況となっています(※1)。また、2000年以降、若年層を中心にテレビ離れの動きが継続して進んでいるなか、2022年の日本の広告費はインターネット向け広告費が前年比14.3%増の3兆912億円となり、マスコミ4媒体広告費(新聞、雑誌、ラジオ、テレビメディア広告費の合算)の2兆3,985億円を大きく上回り、日本の総広告費の43.5%に達しました(※2)。世界においてもその傾向は顕著であり、2023年の世界のデジタル広告費は前年比7.8%増の約59兆円(4,243億ドル)となり、デジタル広告費が構成比で58.3%を超える見通しです(※3)。
※1 出所: 総務省 「令和4年通信利用動向調査の結果」
※2 出所: 株式会社電通 「2022年 日本の広告費」
※3 出所: 株式会社電通 グループ「世界の広告費成長率予測(2023~2025)」
また、エンタテインメント市場においては、2022年の世界の音楽市場の売上高は約3兆5,234億円(262億ドル)と前年比9.0%増加し、8年連続で拡大、今世紀に入ってから最高の売上高を記録しています。特に有料サブスクリプションのストリーミングは全体の67%のシェアを占め2兆3,450億円(175億ドル)まで増加しています(※4)。日本においては、音楽ビデオを含む音楽ソフトの生産実績は2,023億円と前年比104%で推移し2019年以来3年ぶりの2,000億円超えとなりました。有料音楽配信の売上実績は1,050億円と前年比117%、ストリーミングの売上は928億円と前年比25%増加し、有料配信売上全体の9割に迫るシェアまで伸長しています(※5)。
2022年のライブ・エンタテインメント市場は、感染拡大抑制と経済活動の両立が図られる中で経済の正常化が進み、市場規模は5,652億円とコロナ禍前2019年比10.2%減(前年は51.2%減)まで急速なペースで回復の兆しをみせています(※6)。一方でオンラインライブはリアルライブの代替としてではなく、新しいライブ・エンタテインメントの楽しみ方として定着し、2022年の有料型オンラインライブ市場規模は推計466億円と推計され(※7)、リアルとオンラインライブ市場の合算が6,118億円となり、過去最高を記録した2019年のリアルライブ市場6,295億円とほぼ同規模な水準になると予測されています。
※4 出所: IFPI「Global Music Report 2023」
※5 出所: 一般社団法人日本レコード協会「日本のレコード産業2023」
※6 出所: ぴあ総研「2022年のライブ・エンタテインメント市場規模速報値
(2023年5月26日公表)」
※7 出所: ぴあ総研「国内オンラインライブ市場に関する調査(2023年5月26日公表)」
当社は1992年に創業され着信メロディを世界で初めて事業化するなど、携帯電話の普及とともに音楽配信事業を中核として順調に成長してまいりました。現在の音楽市場はスマートフォンの普及に伴い、ストリーミング、一般ユーザーが社会へ容易に情報発信できるユーザー生成コンテンツ(UGC)(※8)やソーシャルメディアといったメディアが多様化するなか、コンテンツの流通方法をはじめ、消費スタイルや、コンテンツの制作方法等、音楽業界のあらゆる活動が変化している状況にあります。
※8 インターネット上にユーザー自身が生成し投稿した画像や動画。ユーザー・ジェネレーテッド・
コンテンツ。
このような環境の下、当社グループは、創業以来コンテンツのデジタル流通に注力してきた取組みを活かし、引き続き『マルチコンテンツ&マルチデバイス戦略(様々なコンテンツを、必要なときに、必要な場所で楽しむことができる環境の創造)』を推進し、インターネット上に溢れる情報を収集、整理し、付加価値を高めてユーザーに提供するプラットフォームの開発など市場環境の変化に応じた新規サービス展開に取り組んでまいりました。
新たなプラットフォーム「sprayer®(スプレーヤー)」は、アーティストがオリジナル楽曲を登録するだけで、世界中で配信・収益化できるだけでなく、独自の「spray LINK」機能を通しミュージックビデオやライブなど様々な活動をダイレクトに届けることができる新たな音楽ディストリビューションサービスです。「spray LINK」はサポーターを募集できる機能(楽曲の配信収益の一部をリワードとして還元できるクラウドファンディング)を搭載し、アーティストは活動資金を集められるだけでなく、サポーターと利益を共有することで楽曲をより多くのリスナーに届けることが可能です。今後もアーティスト自身がダイレクトに作品の情報をリスナー・ファンに届けることで、より深いエンゲージを構築しマネタイズできるプラットフォームを提供し、あらゆる層のアーティストエコノミーの拡充と「アーティストがファンと一緒に成長できる」仕組み作りに取り組んでまいります。
当社グループは時代に即した組織を目指し、2023年4月1日付でコンテンツ事業における組織再編を実施いたしました。各社が今までに培ってきた機能を分解しそれぞれのコアコンピタンスを明確化することで、より事業展開をしやすい組織体制とし、利益構造の差別化と一層の効率化を目的としています。目まぐるしく嗜好・流行が変わる音楽市場に対し迅速に対応する体制を構築することで、魅力的なコンテンツの創出力および競争力の向上を図ります。主要レーベルの集約、管理機能や営業機能の一層の強化および効率化、レーベルの保有する資産と当社が保有するテクノロジーの融合など、より一層のグループシナジーの発現を目指してまいります。
また、オフィス機能を南青山オフィスに集約し、行動様式の変化や新たな価値観の定着を見据え、テレワーク勤務体制を恒常化しております。横断的なコミュニケーションを再構築し活発化させることで、積極的に全社的な取組みを行っています。今後もよりフレキシブルな「ワークスタイル」を追求し、多様で効率的な新しい働き方を実現してまいります。
当社グループの当第1四半期連結累計期間の業績については、売上高は前年同期比0.7%減の3,499百万円、営業損失につきましては40百万円(前年同期は営業損失90百万円)、経常損失は47百万円(前年同期は経常損失46百万円)、親会社株主に帰属する四半期純損失は80百万円(前年同期は親会社株主に帰属する四半期純損失87百万円)となりました。
セグメントの業績は、次のとおりであります。
<プラットフォーム事業>プラットフォーム事業においては、既存配信事業の売上が減少を続けているため、新規性ある商品開発、多様化する収益機会の獲得に向けて各サービスの連動やプラットフォーム化を行い、今後も新たな成長分野への投資を行ってまいります。
「FaRao PRO」は、業務用BGMの提供のみならず、店舗のブランディングを提案するソリューションやアナウンス機能など、店舗運営に必要な機能拡充を中心とした営業活動を積極的に展開しております。今後とも、新たなBGM市場の創造と活性化を目指してまいります。
今後拡大が期待される「D2C」(※9)のビジネスモデルによるアーティスト向けプラットフォーム「Fans'」は、オフィシャルサイトの構築、楽曲・映像配信、アーティストグッズの販売、ファンクラブ運営などアーティスト活動に必要な機能の拡充を行っております。SNSとの連携強化によりファンがクリエイターの発信する情報を拡散することでコミュニティの創出に貢献できるシステムを導入しており、より多くのアーティストが作品や情報を自由に発信できるサービスとして、利用者の獲得、拡大を目指すとともに、利便性の追求等サービス品質の向上に努めてまいります。
※9 自社で企画・製造したサービス・商品を直接ユーザーに届けるビジネス形態。Direct to Consumerの略称。
ライブ配信プラットフォーム「Thumva」(サムバ)は、グループ視聴やコメント投稿、ギフティング機能を有し、ライブ会場に参加しているような高揚感、一体感を共有することが可能です。「Thumva」のリソースを活用した新たな店舗向けサービス「Thumva BIZ」(サムバビズ)は、Web上で問い合わせや相談を希望する顧客に対し、ワンクリックで商談を開始できるオンラインサービスです。
また、ポイントサービスは小売業向けポイントシステム運営等のプラットフォームを提供するだけでなく、ポイント発行データ取得・分析・販促活用を一連のサイクルとして企画から運用までトータルでサポートし、小売業の販促効率を最大限に高めるアウトソーシングサービスを提供しております。
業績につきましては、ファンクラブ受託事業において売上が増加したこと等により、売上高は前年同期比2.1%増の529百万円となり、セグメント損失は49百万円(前年同期はセグメント損失96百万円)となりました。
<コンテンツ事業>コンテンツ事業は、音楽市場の変化に伴う音楽・映像関連業界の厳しい環境の下、パッケージ商品に依存している状況からの脱却を図るため、将来を見据えた新規事業の強化を進めております。日本コロムビア、ドリーミュージック、KSRのレーベル3社においては、新たなヒットを創出すべく、次世代音楽ビジネスに適合するコンテンツの開発と育成を進めております。また、豊富なカタログ資産を新たなスキームで積極的に活用し、国内だけでないグローバルなIP領域の展開を目指しております。
また、当社グループが培ってきたロケーションビジネスの運営ノウハウを生かし、様々な施設、イベントの運営受託を行っております。2023年4月から、東急歌舞伎町タワー内にオープンした「ZEROTOKYO」(エリア最大級のライブホール「Zepp Shinjuku(TOKYO)」の夜間時間帯を活用する新たな施設)における運営を受託いたしました。様々なジャンルのイベントが開催され、訪日外国人数の増加に伴うインバウンド市場の回復を受け、国内外から多くの方にご利用いただいています。本事業はアセットライトな事業構造により堅実な収益が期待できるとともに、既存事業とのシナジーを発揮し、一層の拡大に向け取り組んでまいります。
セグメント業績につきましては、売上高は前年同期比1.2%減の2,969百万円、セグメント利益は期間内に発売した作品の販売数の増加や、音源使用に関わる収入等が堅調に推移したこと等により前年同期比29.8%増の122百万円となりました。
※本文書に記載されている会社名、製品名は、各社および各団体の商標または登録商標です。
当第1四半期連結会計期間末における総資産は、前連結会計年度末に比べて1,088百万円減少し、23,137百万円となりました。主として、売掛金の減少444百万円、投資有価証券の減少514百万円によるものであります。
負債は、前連結会計年度末に比べて598百万円減少し、8,242百万円となりました。主として未払金の減少168百万円、賞与引当金の減少168百万円、長期借入金の減少108百万円並びに繰延税金負債の減少221百万円によるものであります。
純資産は、前連結会計年度末に比べて489百万円減少し、14,895百万円となりました。主として四半期純損失並びに配当金の支払によるものであります。
自己資本比率は0.9ポイント増加して、64.4%となりました。
(2) 経営方針・経営戦略等
当第1四半期連結累計期間において、当社グループが定めている経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。
(3) 事業上及び財務上の対処すべき課題
当第1四半期連結累計期間において、当社グループの事業上及び財務上の対処すべき課題に重要な変更及び新たに生じた課題はありません。
(4) 研究開発活動
当第1四半期連結累計期間におけるグループ全体の研究開発活動の金額は、10百万円であります。
なお、当第1四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。