有価証券報告書-第31期(2025/04/01-2026/03/31)
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度(2025年4月1日~2026年3月31日)におけるセキュリティ業界では、ランサムウェア攻撃や標的型攻撃、フィッシング詐欺に加え、情報窃取型マルウェアにより窃取された認証情報・認可情報を起点とする不正アクセスなど、攻撃手法の巧妙化・多様化が一段と進行しました。さらに、生成AIの急速な普及に伴い、AIを悪用した攻撃や、AI利用に起因する情報漏洩リスクへの対応も重要課題として認識されるようになっております。このような環境下において、企業・官公庁・教育機関・家庭など、ICT機器を業務・学習・生活のあらゆる場面で活用する社会全体でセキュリティ意識が一段と高まり、対策製品・サービスへの需要は継続的に拡大しました。今後も、サイバーセキュリティ政策の強化、DXの進展、クラウド利用の拡大を背景に、この流れは中長期的に継続するものと見込んでおります。
当社グループは、中期経営計画(2025年3月期~2027年3月期)に基づき、「セキュリティ事業の成長」「公共市場シェア拡大」「新施策実行のための人材投資」の3領域を重点テーマとして、各種施策を推進してまいりました。当連結会計年度は、当該中期経営計画の2年目として、既存主力製品の伸長に加え、次世代製品の市場定着、公共・教育分野におけるシェア拡大、ならびに今後の成長に向けた開発・営業体制の強化に取り組みました。
企業向け市場においては、「i-FILTER」が、クラウド型のWebアクセスセキュリティ対策ニーズを着実に取り込み、堅調に推移しました。また、「m-FILTER」は、偽装メールならびに添付ファイルやURLを悪用した脅威への対策ニーズを捉え、他製品やオプション製品との組み合わせによる提案を強化したことで、高い成長を継続しました。加えて、新製品「Z-FILTER」については、2025年11月の正式販売開始以降、順調に案件の積み上げが進み、当社が強みとする「ホワイト運用」の価値をゼロトラストセキュリティ領域へ拡張する製品として、今後の成長ドライバー育成に向けた成果が得られました。
公共向け市場においては、「GIGAスクール構想 第2期」案件への対応を重点施策として、継続的な製品機能強化と個別案件管理の徹底により、契約獲得を推進し、「GIGAスクール構想 第1期」と比較して、高い獲得率と案件単価向上の両立を実現しました。「i-FILTER」は、「GIGAスクール構想 第2期」で求められる利用状況の可視化機能等への対応を進め、教育現場のニーズに即した製品価値の向上を図ったことで、競争優位性をさらに高めました。一方、当該案件はクラウドサービス系製品を中心とした受注構成であるため、契約高は大きく伸長したものの、収益認識の影響により、当連結会計年度における売上高の伸びは限定的となりました。また、当該案件の契約高が大幅に伸長したことに伴い、現預金及び前受金が増加し、総資産が拡大した結果、自己資本比率は低下しております。
さらに、当社が提唱する「ホワイト運用」は、2026年3月末時点で約1,500万人規模のユーザー基盤へ拡大しており、安全な通信や挙動のみを許可する独自モデルへの評価が、企業・官公庁・教育機関を中心に広がっております。今後は、当該独自モデルの適用領域を家庭向け市場にも拡大し、安全なインターネット利用環境の実現を目指してまいります。
費用面では、中期経営計画の方針に沿った人材投資を実施したことにより、売上原価、販売費及び一般管理費は前期比で増加しました。一方で、AIの業務活用を含む業務高度化・効率化を通じて、生産性向上とコストコントロールを進め、成長投資と収益性の両立に努めました。その結果、増収効果に加え、適切な費用管理を実現したことで、各利益は堅調に推移しました。
以上の結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
a.財政状態
(資産)
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べて5,237百万円増加し、27,865百万円となりました。これは主として、現金及び預金が5,131百万円増加したことによるものであります。
(負債)
当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べて4,148百万円増加し、9,410百万円となりました。これは主として、前受金が3,717百万円、未払法人税等が424百万円それぞれ増加したことによるものであります。
(純資産)
当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べて1,088百万円増加し、18,454百万円となりました。これは主として、親会社株主に帰属する当期純利益の計上による利益剰余金の増加が、配当金の支払い及び自己株式の取得による減少を上回ったことによるものであります。
b.経営成績
当連結会計年度における契約高は16,604百万円(前期比57.1%増)、売上高は10,835百万円(同8.5%増)、営業利益は4,791百万円(同5.1%増)、経常利益は4,840百万円(同6.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は3,427百万円(同7.7%増)となりました。
連結経営成績の概況
(単位:百万円)
| 2025年3月期 | 2026年3月期 | 増減額 | 増減率 (%) | |
| 契約高 | 10,570 | 16,604 | +6,033 | +57.1 |
| 売上高 | 9,982 | 10,835 | +852 | +8.5 |
| 営業利益 | 4,558 | 4,791 | +232 | +5.1 |
| 経常利益 | 4,562 | 4,840 | +278 | +6.1 |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 3,183 | 3,427 | +244 | +7.7 |
各市場の業績は次のとおりです。
企業向け市場
企業向け市場では、「i-FILTER」が、クラウド型のWebアクセスセキュリティ対策ニーズを着実に取り込み、「AIチャットフィルター」などの機能を通じて、生成AI利用状況の可視化と安全な運用管理を両立する製品として競争力を高め、堅調に推移しました。
「m-FILTER」は、表示名や送信元の偽装を伴う攻撃メール、ならびに添付ファイルやURLを悪用した脅威への対策ニーズを捉え、「f-FILTER」や「Anti-Virus & Sandbox」との組み合わせによる提案を強化したことで、高い成長を継続しました。
また、新製品「Z-FILTER」を当初計画どおり2025年11月4日に販売開始しました。「Z-FILTER」は、「ホワイト運用」を中核に、認証からアクセス制御までを同一基盤で提供する国産のゼロトラストセキュリティソリューションです。販売開始以降、順調に案件の積み上げが進んでおり、次期における収益化を見込める状況となっております。今後は、顧客環境への適合性向上及び顧客運用負荷のさらなる軽減に向けた機能強化を継続するとともに、販売代理店との協業を加速し、中長期的な収益基盤の柱として確立していく方針です。
以上の結果、企業向け市場の契約高は5,564百万円(前期比10.9%増)、売上高は5,176百万円(同8.2%増)となりました。
公共向け市場
公共向け市場では、重点施策である「GIGAスクール構想 第2期」案件において、継続的な製品機能強化と個別案件管理の徹底により、「GIGAスクール構想 第1期」と比較して、高い獲得率と案件単価向上の両立を実現しました。加えて、「i-FILTER@Cloud GIGAスクール版」では、デジタル教科書の利用状況可視化機能および見守りログのダッシュボード機能を新たに搭載するとともに、ISMAP(政府情報システムのためのセキュリティ評価制度(Information system Security Management and Assessment Program)登録を取得し、教育・公共分野における競争力強化を進めました。さらに、「GIGAスクール構想」案件で培った知見を生かし、教育分野における新たな取組として、児童向けWeb学習システム「D教室」の提供を開始するなど、教育領域への展開を進めました。
また、「次世代校務DX」案件においても、「GIGAスクール構想」で築いた顧客基盤を活用した営業活動が奏功し、事業は堅調に拡大しました。これらの結果、「i-FILTER」の契約高は、前期比147.2%増と大幅な増収となりました。
なお、「GIGAスクール構想 第2期」案件は、クラウドサービス系製品を中心とした受注構成となっているため、会計基準上の収益認識の影響を受け、契約高が前述のとおり大幅に成長した一方で、当連結会計年度における売上高の伸びは二桁成長にとどまりました。※
しかしながら、クラウドサービス系製品の受注残高の積み上がりは、収益モデルが「一時的なライセンス売上」から「継続的なサービス収益」へ着実に移行していることを示しており、次期以降の安定的かつ持続的な成長につながるものと見込んでおります。
以上の結果、公共向け市場の契約高は10,639百万円(前期比106.7%増)、売上高は5,256百万円(同9.8%増)となりました。
※オンプレミス型のライセンス販売系製品については、出荷時に契約金額の大部分を一括で売上計上しております。一方、「GIGAスクール構想」や「次世代校務DX」案件で受注の多いクラウドサービス系製品は、サービス提供期間に応じて月次で按分し、段階的に売上高を計上する会計基準となっております。
家庭向け市場
家庭向け市場では、MVNO商流の拡大および複数年パッケージ製品の販促強化により、新規案件の獲得が進みました。
一方、今後の家庭向け市場における収益の柱となる「ホワイト運用」機能を搭載した個人向け総合セキュリティ製品「i-フィルター 10」については、従来の子ども世代向け市場に加え、大人世代向け市場への展開を目的として、既存販売代理店やPCメーカーとの協業、新規販売代理店の開拓などを通じて販路拡大を進めましたが、当連結会計年度における収益化には至りませんでした。
以上の結果、家庭向け市場の契約高は400百万円(前期比1.9%減)、売上高は402百万円(同1.8%減)となりました。
当連結会計年度(2025年4月1日~2026年3月31日)の契約高
| 企業向け市場 | 公共向け市場 | 家庭向け市場 | 合計 | |
| 百万円 | 百万円 | 百万円 | 百万円 | |
| 2026年3月期 | 5,564 | 10,639 | 400 | 16,604 |
| 2025年3月期 | 5,016 | 5,146 | 408 | 10,570 |
(百万円未満切捨)
当連結会計年度(2025年4月1日~2026年3月31日)の売上高
| 企業向け市場 | 公共向け市場 | 家庭向け市場 | 合計 | |
| 百万円 | 百万円 | 百万円 | 百万円 | |
| 2026年3月期 | 5,176 | 5,256 | 402 | 10,835 |
| 2025年3月期 | 4,783 | 4,788 | 409 | 9,982 |
(百万円未満切捨)
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べて、5,131百万円増加し、23,083百万円となりました。各キャッシュ・フローの状況は以下のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益4,840百万円の計上及び売上債権の減少等により、8,381百万円の収入(前連結会計年度は2,817百万円の収入)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、無形固定資産の取得等により、1,161百万円の支出(前連結会計年度は1,107百万円の支出)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払及び自己株式の取得等により、2,095百万円の支出(前連結会計年度は2,096百万円の支出)となりました。
③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
| 当連結会計年度 (自 2025年4月1日 至 2026年3月31日) | 前年同期比(%) | |
| 企業向け市場 (百万円) | 4,576 | 107.2 |
| 公共向け市場 (百万円) | 5,222 | 110.4 |
| 家庭向け市場 (百万円) | 401 | 97.3 |
| 合 計 (百万円) | 10,200 | 108.4 |
(注) 1 金額は販売価格によっております。
2 当社グループは、セキュリティ事業のみの単一セグメントであるため、セグメントに係る記載は省略しております。
b.受注実績
当社グループは受注生産を行っておりませんので、該当事項はありません。
c.販売実績
| 当連結会計年度 (自 2025年4月1日 至 2026年3月31日) | 前年同期比(%) | |
| 企業向け市場 (百万円) | 5,176 | 108.2 |
| 公共向け市場 (百万円) | 5,256 | 109.8 |
| 家庭向け市場 (百万円) | 402 | 98.2 |
| 合 計 (百万円) | 10,835 | 108.5 |
(注) 1 輸出販売高はありません。
2 当社グループは、セキュリティ事業のみの単一セグメントであるため、セグメントに係る記載は省略しております。
3 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
| 相手先 | 前連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2025年4月1日 至 2026年3月31日) | ||
| 金額(百万円) | 割合(%) | 金額(百万円) | 割合(%) | |
| ダイワボウ情報システム 株式会社 | 3,074 | 30.8 | 3,618 | 33.4 |
| SB C&S株式会社 | 1,887 | 18.9 | 1,942 | 17.9 |
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている企業会計の基準に基づいて作成されております。この連結財務諸表の作成に当たっては、当連結会計年度末における財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与えるような見積り、予測を必要としております。当社グループは、過去の実績値や状況を踏まえ合理的と判断される前提に基づき、継続的に見積り、予測を行っております。そのため実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の経営成績等は以下のとおりであります。
a.経営成績等の状況
(売上高)
当連結会計年度の売上高は10,835百万円となり、前連結会計年度と比較し852百万円増加(前期比8.5%増)となりました。
これは主に、企業向け市場において、「i-FILTER」がクラウド型のWebアクセスセキュリティ対策ニーズを取り込み堅調に推移したことに加え、「m-FILTER」が偽装メールや添付ファイル、URLを悪用した脅威への対策ニーズを捉え、関連製品との組み合わせ提案を強化したことによるものであります。また、公共向け市場においては、「GIGAスクール構想 第2期」案件への対応や「次世代校務DX」案件の拡大が寄与しました。なお、「GIGAスクール構想 第2期」案件は、クラウドサービス系製品を中心とした受注構成となっているため、契約高の増加に対して、当連結会計年度における売上高への反映は一部にとどまりました。
(売上原価、売上総利益)
当連結会計年度の売上原価は3,334百万円となり、前連結会計年度と比較し386百万円の増加(前期比13.1%増)となりました。また、売上総利益は7,500百万円となり、前連結会計年度と比較し466百万円増加(前期比6.6%増)となりました。
当連結会計年度は、中期経営計画の方針に沿った開発人材への投資強化に伴う労務費の増加、クラウドサービス系製品の利用者数増加に伴う通信費の増加、減価償却費の増加等により売上原価は増加いたしましたが、企業向け市場及び公共向け市場における売上高の増加により、売上総利益は増加いたしました。
(販売費及び一般管理費、営業利益)
当連結会計年度の販売費及び一般管理費は2,708百万円となり、前連結会計年度と比較し234百万円の増加(前期比9.5%増)となりました。また、営業利益は4,791百万円となり、前連結会計年度と比較し232百万円の増加(前期比5.1%増)となりました。
当連結会計年度は、人材投資の強化に伴う人件費の増加等により販売費及び一般管理費は増加したものの、売上高の増加に加え、AIの業務活用を含む業務の高度化・効率化を推進し、計画に対して適切なコスト構造を実現したことにより、営業利益は増加いたしました。
(経常利益)
当連結会計年度は、受取利息36百万円等を営業外収益に計上したことにより、経常利益は4,840百万円(前期比6.1%増)となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は、3,427百万円(前期比7.7%増)となりました。
b. 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標についての分析
当連結会計年度における客観的な指標は以下のとおりであります。
契約高成長率と売上高成長率が乖離する理由は、主に従来からの主要製品であるライセンス販売系製品は出荷時に契約高の大部分を一括で売上計上するのに対し、クラウドサービス系製品は、サービス提供期間を通じて月額按分で売上計上するためであります。
| 前連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2025年4月1日 至 2026年3月31日) | |
| 契約高成長率 (%) | △2.5 | 57.1 |
| 売上高成長率 (%) | △13.3 | 8.5 |
| 営業利益率 (%) | 45.7 | 44.2 |
| 自己資本当期純利益率(ROE) (%) | 19.1 | 19.2 |
c. 資本の財源及び資金の流動性についての分析
資本政策につきましては、企業価値の持続的な向上を目指し、成長分野に対して迅速に投資可能な水準の内部留保の充実と株主の皆様への利益還元を総合的に勘案し、実施していくことを基本方針としております。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は23,083百万円となっているのに対して、有利子負債残高はございません。
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、高付加価値なソリューションを提供するために必要な優秀人材の確保と育成に関する人件費等であります。内部留保については人材の確保と育成に対して優先的に充当し、既存事業の安定的・継続的な成長を持続するとともに、新しいニーズの発掘に積極的に取り組んでまいります。
d.経営成績に重要な影響を与える要因について
「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。