有価証券報告書-第42期(令和1年6月1日-令和2年5月31日)

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2020/08/21 14:51
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当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 経営成績
当連結会計年度におけるわが国の経済環境は、政府による各種経済対策及び日本銀行による大規模な金融緩和策を背景に、企業収益の改善や個人消費が底堅く推移するなど緩やかに回復を続けてまいりました。一方で、米中間の貿易摩擦の影響に伴う海外経済動向の不確実性の高まりによる国内景気への影響が懸念されるなか、新型コロナウイルス感染症の拡大により日本経済への影響はもとより世界経済の急激な減速など、先行きに対する不透明感が強まっております。
当社グループは、事業の方向性を明確にし、戦略的投資を促進するため、不動産デベロップメント部門、不動産マネジメント部門及びエネルギーマネジメント部門の3部門からなる「不動産ソリューション事業」と課外活動ソリューション部門と人材ソリューション部門の2部門からなる「学生生活ソリューション事業」の2事業(セグメント)計5部門で事業展開を図っております。
当社グループの主要顧客層である大学生マーケットにおきましては、2019年春の大学入学者数は63.1万人、大学生総数291.8万人(文部科学省「学校基本調査」による)といずれも過去最高水準を維持しております。引き続き、少子化時代にあっても安定的に推移する大学生市場においては、さまざまなサービス分野において学生の多様化するライフスタイルとニーズに応える低廉で高品質なサービスが求められていると言えます。
また、新型コロナウイルス感染症の当社グループへの影響につきましては、現時点では不動産ソリューション事業については軽微ではあるものの、特に旅行分野である学生生活ソリューション事業の課外活動ソリューション部門については第4四半期の影響からも先行きに対する不透明感が強まっております。
当連結会計年度においては、主力事業である不動産ソリューション事業の景気動向の影響を比較的受けにくい不動産マネジメント部門は、ますます高まる学生の安心・快適な住居ニーズに支えられ順調に推移し、不動産デベロップメント部門においても、販売用不動産の売却が順調に進みました。
その結果、当連結会計年度の売上高は17,966,065千円(前年同期比3.2%増)、営業利益は2,261,761千円(同11.2%増)、経常利益は2,174,857千円(同13.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,200,281千円(同4.0%減)となりました。
① 売上高
当連結会計年度の売上高は17,966,065千円(前年同期比3.2%増)となりました。
セグメント別の業績を示すと次のとおりであります。
(不動産ソリューション事業)
首都圏における学生賃貸住宅市場は、首都圏進学志向と女子大生比率の高まり、セキュリティ意識の浸透などにより、より安全性・快適性が求められており、学生向け賃貸住宅の需要は今後もますます高まるものと予想されます。
不動産デベロップメント部門におきましては、この需要の高さを背景に金融機関等との連携によるコンサルティング営業を強化し、個人オーナーのみならず、企業に対してもCRE戦略に応える事業プランを積極的に提案、物件開発に努めました。特に食事付き寮タイプの学生向け賃貸住宅は、留学生確保を進める大学寮のニーズと相まって需要が高く開発を積極的に進めております。また、当社が不動産を仕入れ学生向け賃貸住宅を建設し、法人又は個人投資家等へ販売した後にサブリースで運営を受託する独自開発にも注力してまいりました。
当連結会計年度における物件開発については、自社保有物件(販売用不動産及び固定資産)においては、1件の開発、サブリース物件2件の取得及び1件の売却を行い、管理戸数は19棟1,113戸となりました。サブリース(転貸を目的とした当社による一括借上)物件においては、3件の開発を行い、上記の売却した1件及びサブリース物件からの取得2件を含め、管理戸数は179棟8,044戸となりました。管理受託においては、東京大学目白台インターナショナル・ビレッジ857戸の運営を開始いたしました。その結果、総管理戸数は208棟10,659戸(前期末比12.0%増)となりました。
一方、賃貸・管理業務を行う不動産マネジメント部門におきましては、インターネット情報提供の充実、大学との連携強化等により体制強化を継続し、安定した入居者確保を図りました。なお、サブリース物件及び自社保有物件につきましては、15年連続で4月入居率100.0%を達成しております。
その結果、不動産ソリューション事業の売上高は13,822,098千円(前年同期比7.6%増)となりました。また、部門別売上高は、不動産デベロップメント部門は1,981,778千円(同11.5%増)、不動産マネジメント部門は11,505,077千円(同7.5%増)、エネルギーマネジメント部門は335,242千円(同7.7%減)となりました。
なお、不動産デベロップメント部門における売上高の増加は、販売用不動産の売却件数が前期の2件から1件に減少したものの、売却した物件の規模が大きかったため売却額が増加したことによるものであります。
(学生生活ソリューション事業)
学生等を中心顧客とし、合宿・研修関連を主な事業とする課外活動ソリューション部門は、大学別・種目別マーケティングの推進により、新規顧客の開拓、リピーター化の促進に取り組み、当社グループの学生顧客ネットワークを活かした収益基盤の強化に努めてまいりました。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の影響により、第4四半期の旅行分野の売上高が前年同期比92.5%減と大きく減少いたしました。
一方、学生生活の「出口」となる就職分野を担う人材ソリューション部門は、連結子会社の株式会社ワークス・ジャパンが提供する、中核商品である企業人事部向け「若年層人材ソリューション」コンサルティング等のサービス提供のうち、セミナー等を提供する採用イベント・キャリア支援業務が台風や新型コロナウイルス感染症の影響等により減少したものの、採用業務を一元的に管理するシステムを提供する採用業務支援システムが順調に推移いたしました。
その結果、学生生活ソリューション事業の売上高は4,143,966千円(前年同期比9.3%減)となりました。また、部門別売上高は、課外活動ソリューション部門は1,545,349千円(同20.2%減)、人材ソリューション部門は2,598,617千円(同1.3%減)となりました。
② 営業利益
当連結会計年度の不動産ソリューション事業の売上総利益は3,798,677千円(前年同期比8.8%増)、セグメント利益(営業利益)は2,548,690千円(同13.0%増)となりました。また、学生生活ソリューション事業の売上総利益は2,150,091千円(同5.2%減)、セグメント利益(営業利益)は517,519千円(同7.2%減)となりました。
その結果、各セグメントに配分していない全社費用804,447千円(同3.1%増)を調整し、全社の当連結会計年度の営業利益は2,261,761千円(同11.2%増)となりました。
③ 経常利益
当連結会計年度の営業外損益はマイナス86,904千円(前期はマイナス108,509千円)となり、その結果、当連結会計年度の経常利益は2,174,857千円(前年同期比13.0%増)となりました。
④ 親会社株主に帰属する当期純利益
当連結会計年度の特別利益に投資有価証券売却益12,000千円、事業譲渡益17,033千円、特別損失に固定資産除却損3,253千円、過年度消費税等452,809千円、法人税等に519,882千円及び非支配株主に帰属する当期純利益27,663千円を計上したことにより、親会社株主に帰属する当期純利益は1,200,281千円(前年同期比4.0%減)となりました。
その結果、1株当たり当期純利益は66円68銭となりました。
(2) 財政状態
当連結会計年度の資産合計は27,134,135千円となり前連結会計年度に比べ1,441,091千円増加いたしました。この増加の主な要因は、販売用不動産が2,439,379千円の増加(固定資産からの振替263,029千円含む)、繰延税金資産が286,010千円の増加、差入保証金が97,799千円の増加、現金及び預金が414,616千円の減少、流動資産その他が294,876千円の減少、機械装置及び運搬具が113,830千円の減少、土地が262,442千円の減少(固定資産への振替)及びリース資産(純額)が277,108千円減少したことによるものであります。なお、当連結会計年度において、リース資産として所有していた建物をリース期間満了後に販売用不動産として購入(取得)したため、当該建物に対応する有形固定資産の保有目的を販売用へ変更し、土地262,442千円及び有形固定資産その他(工具、器具及び備品)586千円を販売用不動産に振替えております。
負債合計は17,567,768千円となり前連結会計年度に比べ731,308千円増加いたしました。この増加の主な要因は、未払金が388,339千円の増加、未払法人税等が44,343千円の増加、長期借入金(1年内返済予定分を含む)が1,030,323千円の増加、短期借入金が100,000千円の減少、1年内償還予定の社債が53,900千円の減少、流動負債その他が273,325千円の減少及びリース債務(1年内返済予定分を含む)が292,194千円減少したことによるものであります。なお、当連結会計年度の未払金には、東京国税局(麹町税務署長)からの更正処分による過年度消費税等452,809千円が含まれております。
また、純資産合計は9,566,366千円となり前連結会計年度に比べ709,783千円増加いたしました。この増加の主な要因は、親会社株主に帰属する当期純利益1,200,281千円、前期の剰余金処分による配当金359,998千円、中間配当金143,999千円、その他有価証券評価差額金△14,163千円及び非支配株主持分27,663千円を計上したことによるものであります。
その結果、1株当たり純資産額は523円71銭となり前連結会計年度に比べ37円90銭増加いたしました。また、自己資本比率は前連結会計年度の34.0%から34.7%となりました。
(3) キャッシュ・フロー
当連結会計年度末における連結ベースでの現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ414,616千円減少し5,972,773千円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により使用した資金は495,277千円(前年同期は使用した資金は376,391千円)となりました。これは主に税金等調整前当期純利益1,747,827千円、非資金項目である減価償却費606,176千円、たな卸資産の増加による支出2,185,499千円、仕入債務の増加による支出63,154千円、その他の資産の増加による支出152,991千円、法人税等の支払による支出 758,995千円、その他の負債の増加による収入155,114千円及び未払消費税等の増加による収入157,191千円によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により使用した資金は231,682千円(前年同期は使用した資金は199,675千円)となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出49,299千円、無形固定資産の取得による支出215,206千円、投資有価証券の売却による収入18,000千円及び貸付金の回収による収入11,642千円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により得られた資金は312,343千円(前年同期は得られた資金は885,514千円)となりました。これは主に長期借入金の純増額による収入1,030,323千円、短期借入金の純減額による支出100,000千円及び配当金の支払による支出502,525千円によるものであります。
(4) 生産、受注及び販売の実績
① 生産実績
該当事項はありません。
② 受注実績
該当事項はありません。
③ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称(部門)販売高(千円)前年同期比(%)
不動産ソリューション事業(不動産デベロップメント部門)1,981,77811.5
(不動産マネジメント部門)11,505,0777.5
(エネルギーマネジメント部門)335,242△7.7
小計13,822,0987.6
学生生活ソリューション事業(課外活動ソリューション部門)1,545,349△20.2
(人材ソリューション部門)2,598,617△1.3
小計4,143,966△9.3
合計17,966,0653.2

(注) 1 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合
相手先前連結会計年度当連結会計年度
金額(千円)割合(%)金額(千円)割合(%)
小田急不動産株式会社--1,934,02710.8

上記は不動産デベロップメント部門における販売用不動産の売却によるものであります。
(5) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
① 財政状態及び経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
中期経営計画の最終年度である当連結会計年度の経営成績等は、特別損失の計上により親会社株主に帰属する当期純利益は計画未達だったものの、主力事業である不動産ソリューション事業において、販売用不動産の売却が順調に進み、また、管理戸数も順調に増加し入居者を安定して確保できたことにより、経常利益については初年度、第2年度に続き計画を上回り中期経営計画を達成することができました。
② 経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載しております。また、現時点では学生生活ソリューション事業において、少なからず新型コロナウイルス感染症の影響を受けることが見込まれるため、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題 ②学生生活ソリューション事業」に記載の課題に対応してまいります。また、他のリスクについても引き続き、リスク管理委員会や事業現場等との連携を強化し、それらの状況等が発生しうる可能性がある場合には、即座に対応できる体制を整えてまいります。
③ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社は、不動産ソリューション事業における学生向け賃貸住宅開発において、建設用地としての土地の取得及び学生向け賃貸住宅の建設を行っており、資金については主に金融機関からの借入により調達しております。そのため、2017年12月26日付で株式会社みずほ銀行をアレンジャーとする総額100億円のタームアウトオプション付コミットメントライン契約を締結しております。また、2020年3月31日付でサブリース物件オーナー様の物件売却ニーズに応えるための中長期的な資金の確保を目的として、株式会社みずほ銀行をアレンジャーとするシンジケート方式による総額70億円のコミットメントライン契約を締結しております。
これらにより安定的かつ長期的な資金が確保できているため、当面の間は経済・金融情勢にとらわれない形で、自社開発物件の開発が可能となっております。
また、手元流動性資金(現預金残高)も一定額を保持する方針でありますので、資金の流動性は十分に確保できていると考えております。
④ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者による会計方針の選択及び適用を行い、決算日における資産、負債及び収益・費用の金額に影響を与える見積りを必要とします。
経営者はこれらの見積りについて、過去の実績等を勘案し、合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しております。