有価証券報告書-第23期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

【提出】
2021/06/28 14:20
【資料】
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【項目】
125項目
(1) 財政状態の状況
① 資産
当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末に比べ153,566千円減少し、7,907,443千円となりました。このうち、流動資産は162,225千円減少し、2,787,378千円となり、非流動資産は8,659千円増加し、5,120,065千円となりました。これらの主な要因は、流動資産においては、営業債権及びその他の債権86,516千円及び現金及び現金同等物25,894千円並びに棚卸資産20,619千円の減少になります。非流動資産においては、有形固定資産(主に使用権資産)901,575千円の減少に対し、その他の金融資産(主に関連会社株式)780,372千円の増加及びのれん124,686千円の増加によります。
② 負債
当連結会計年度末における負債合計は、前連結会計年度末に比べ1,003,317千円減少し、2,186,157千円となりました。このうち、流動負債は94,986千円減少し、1,213,385千円となり、非流動負債は908,331千円減少し、972,773千円となりました。これらの主な要因は、未払法人所得税等67,604千円、繰延税金負債58,566千円、その他の流動負債43,972千円の増加に対し、その他の金融負債(主にリース負債)1,042,088千円及び借入金142,800千円の減少になります。
③ 資本
当連結会計年度末における資本合計は、前連結会計年度末に比べ849,751千円増加し、5,721,286千円となりました。この主な要因は、資本剰余金22,475千円の減少に対し、非支配持分26,444千円及び利益剰余金728,478千円の増加になります。
(2) 経営成績の状況
当連結会計年度(2020年4月~2021年3月)における当社グループの業績は、世界的な新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けながらも増収および上場来最高の利益(営業利益、税引前利益、当期利益)となりました。
売上収益は、欧米で展開しているデザインサービスBU(ビジネスユニット)が、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け前年同期比で大幅な減収となったものの、「ASTERIA Warp」(アステリア ワープ)を主力製品とするエンタープライズBUが伸張したことから、全体では前年同期比で100.4%となりました。
利益は、日本国内市場でのソフトウェア製品の売上増と、海外におけるThis Place社(100%子会社)の構造改革が奏功して黒字化したこと、Asteria Vision Fund-1(AVF-1)を通じた企業投資の未実現評価益を計上したことに加え、新型コロナウイルス感染拡大の影響による旅費交通費等の経費削減が寄与し、営業利益は819,757千円(前年同期は営業損失262,052千円)、税引前利益1,025,645千円(前年同期は税引前損失158,748千円)となり、親会社の所有者に帰属する当期利益は807,348千円(前年同期は親会社の所有者に帰属する当期損失175,525千円)となりました。
※当連結会計年度の営業利益には、AVF-1を通じたFVTPL(国際会計基準(IFRS-9)によるFair Value Through Profit or Loss)企業投資の未実現評価益247,211千円が含まれております。
≪当社グループの取り組み≫
当社グループでは、前期第4四半期に始まった世界的な新型コロナウイルスの感染拡大防止に向けて積極的な対応を継続しております。全ての子会社において、各国の感染状況に合わせ全社的なテレワークへ移行し、事業のスムーズな遂行と社員の感染予防を両立しています。
また、当社の製品/サービスにおいても、全てのイベント/セミナーをオンライン化して顧客企業の感染拡大防止に努めるとともに、個別の製品/サービスにおいて、以下のような迅速な取り組みを実施しました。
・ ASTERIA Warp:テレワークを支える各種※クラウドサービスとの連携を実現するウェビナーの実施
・ Handbook:業務のペーパーレス化支援やリモート合宿支援に向けた製品提供と事例の公開
・ Platio:モバイルを活用した「新しい生活様式」アプリの提供と現場におけるDX事例の公開
・ Gravio:画像認識技術やCO2センサーを活用した「3密回避」ソリューションの提供と事例の公開
・ Blockchain:「出席型」バーチャル株主総会の実施とサービスとしての提供
・ This Place:小売業Eコマースに対する新型コロナウイルス対応のホワイトペーパーの提供
今後、当社グループにおいては、「ニューノーマル」時代において大きく成長すると考えられるC.A.R.(クラウド(Cloud)、自動化(Automation)、遠隔化(Remote))の領域に集中した投資を行い、世界的な新型コロナウイルス感染拡大の影響による厳しい経済状況の中でも成長を目指します。
≪ソフトウェア事業セグメント≫
ソフトウェア事業セグメントは3つのビジネスユニットで構成され、それぞれの売上状況は以下の通りです。
① エンタープライズ
本ビジネスユニットは、データ連携ミドルウェア製品「ASTERIA Warp」とAI搭載IoT統合エッジウェア製品「Gravio」を展開しています。
「ASTERIA Warp」は、特定業務のデータ連携に特化したサブスクリプション版「Core」の販売が80%の増収(前期比)を記録し、全体を牽引しました。年度初めよりオンラインにシフトした積極的な営業活動の展開により、顧客管理システムやアプリ開発ツールなどとの新たな連携ニーズも捕捉しています。2020年12月に開始した「地方自治体のDX推進に向けたキャンペーン」では、導入実績がある都道府県や政令指定都市に加えて、中小規模の地方自治体からも新たな引き合いを獲得しました。 AI搭載IoT統合エッジウェア「Gravio」は、新型コロナウイルス感染防止のための労働環境の変化や「3密回避」に対応するデバイスやソフトウェアへのニーズが旺盛で、前期比で約10倍の増収を記録しました。Gravioの各種センサーを用いて生産工程の遠隔管理や自動化(無人化)、CO2濃度から人の密状態を自動検知・警告するソリューションなどでの採用が拡大しました。
このような活動の結果、本ビジネスユニットの売上収益は前連結会計年度比109.8%となりました。
② ネットサービス
本ビジネスユニットは、モバイル向けコンテンツ管理システムサービス「Handbook」とモバイルアプリ制作プラットフォームサービス「Platio」を展開しています。
現場のDX推進やノーコード開発ツールなどが注目されるなか、「Platio」は自社業務にマッチするモバイルアプリを「3日で作成」できるツールとしてテレビCMを含めた積極的なプロモーションを実施した結果、前期比で約3倍の増収を記録しました。また、「Platio」の販売パートナー数は前期末から2倍以上となり、首都圏に加えて地方企業での採用も増加するなど顧客構成の多様化が進みました。
売上の大半を占める「Handbook」は、新型コロナウイルスの影響で対面営業シーンでのニーズが減少した一方で、業務のペーパーレス化などのニーズが拡がり既存顧客での利用拡大で堅調に推移しました。
このような活動の結果、本ビジネスユニットの売上収益は前連結会計年度比105.8%となりました。
③ デザイン
本ビジネスユニットは、顧客企業のブランディング戦略のコンサルティング、ウェブやモバイルアプリのデザインに関するコンサルティング、開発支援等を提供しています。
新型コロナウイルスによる影響で観光関連産業および小売業における顧客プロジェクトの見直しが発生しました。しかし、米国および英国における新規顧客開拓で収益を確保し、新型コロナウイルス感染拡大による各国のロックダウン等の影響を最小限にとどめました。
このような活動の結果、本ビジネスユニットの売上収益は前連結会計年度比75.2%となりました。
④ その他
ブロックチェーン技術コンサルティング、「SnapCal」、「lino」等のサービスによって構成されております。
ブロックチェーン技術コンサルティングは、明治安田生命保険相互会社および中部電力株式会社からの受注により、前期比で増収となりました。また2021年3月に「バーチャルオンリー型」の株主総会運営に関するセミナーを開催し、ブロックチェーン議決権投票システムの新規顧客獲得に向けた活動も引き続き強化しています。
このような活動の結果、その他売上収益は前連結会計年度比160.1%となりました。
≪投資事業セグメント≫
投資事業セグメントは、2019年に開始したAVF-1を通じた企業投資事業です。AVF-1は「4D戦略」(Data, Device, Decentralized, Design)に基づく投資を実施しており、その業績は、国際会計基準(IFRS-9)によりFVTPLとして投資先の評価額の増減を計上しています。
主に、AVF-1の投資先Gorilla Technology(台湾)の事業の進捗および市場評価などにより、同社に対する投資の評価額が247,211千円増加しました。
また、当連結会計年度における、セグメント状況は下記のとおりとなります。
① 報告セグメントの概要
当社グループの報告セグメントは、当企業集団の構成単位のうち分離された財務情報が入手可能であり、取締役会が、経営資源の配分の決定及び業績を評価するために、定期的に検討を行う対象となっているものです。
当社グループは、本連結会計期間より新たに投資事業を開始したことから、「ソフトウェア事業」および「投資事業」の2つを報告セグメントとし、2つの事業を基礎として組織が構成されております。
「ソフトウェア事業」には、「エンタープライズ」、「ネットサービス」、「デザインサービス」の3つのビジネスユニットで構成されています。
「投資事業」は、米国に拠点を置く100%子会社Asteria Vision Fund Inc.が管理する投資で構成されています。
② 報告セグメントごとの売上収益、利益又は損失、及び資産の金額に関する情報
前連結会計年度(自 2019年4月1日 至 2020年3月31日)
報告セグメント調整額
(注)1
連結
ソフトウェア事業投資事業
千円千円千円千円千円
売上収益
外部収益2,676,744-2,676,744-2,676,744
セグメント間収益6545,65145,716△45,716-
合計2,676,80945,6512,722,460△45,7162,676,744
セグメント利益(△損失)(注)2149,724△7,600142,123△53142,070
その他の収益及び費用△404,122
金融収益157,544
金融費用59,724
持分法による投資損益5,484
税引前損失(△)△158,748
その他の項目
減価償却費及び償却費326,426138326,564-326,564
減損損失350,037-350,037-350,037

(注)1.「調整額」は、主としてセグメント間取引消去額を表示しております。
2.セグメント利益は、売上収益から売上原価及び販売費及び一般管理費を控除しております。
当連結会計年度(自 2020年4月1日 至 2021年3月31日)
報告セグメント調整額
(注)1
連結
ソフトウェア事業投資事業
千円千円千円千円千円
売上収益
外部収益2,688,371-2,688,371-2,688,371
セグメント間収益6425,46725,531△25,531-
合計2,688,43425,4672,713,901△25,5312,688,371
セグメント利益(△損失)(注)2524,485226,906751,391356751,747
その他の収益及び費用(注)268,010
金融収益220,413
金融費用13,737
持分法による投資損益(△損失)△788
税引前利益(△損失)1,025,645
その他の項目
減価償却費及び償却費195,794226196,021-196,021

(注)1.「調整額」は、主としてセグメント間取引消去額を表示しております。
2.セグメント利益は、売上収益から売上原価及び販売費及び一般管理費を控除しておりますが、その他の収益及び費用のうち、Asteria Vision Fund Ⅰ,L.P.で保有する純損益を通じて公正価値で測定する金融資産に関する評価損益(注記No.26 参照)は投資事業のセグメント利益に振り替えております。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループが重視している経営指標は、従業員一人当たり売上収益、売上総利益率および営業利益率です。それぞれの指標の今期の実績は以下のとおりです。当期においては、売上収益においては新型コロナウイルスの影響もありデザインサービスユニットが低下したものの、売上総利益率及び営業利益は日本国内市場でのソフトウェア製品の売上増と、海外におけるThis Place社(100%子会社)の構造改革が奏功して黒字化したこと、新型コロナウイルス感染拡大の影響による旅費交通費等の経費削減に加えAsteria Vision Fund Ⅰ,L.P.(AVF-1)を通じた企業投資の未実現評価益の計上が寄与し増加いたしました。
前期実績当期実績
従業員一人当たり売上収益24,785千円21,680千円
売上総利益率70.7%81.3%
営業利益率△9.8%30.5%

(4) キャッシュ・フローの状況
① 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末より25,895千円減少し、2,451,427千円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの増減要因は以下のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、獲得した資金は775,955千円となりました。主に税引前利益1,025,645千円の獲得、減価償却及び償却費196,021千円の発生、金融収益220,413千円の発生によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、使用した資金は598,745千円となりました。主に投資の取得による支出568,990千円によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、使用した資金は357,740千円となりました。主に長期借入金の返済による支出142,800千円及びリース負債の返済による支出136,916千円並びに配当金の支払額66,914千円によるものです。
② 当社の資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループは、顧客からの注文に基づく受託開発ではなく、独自の製品を自ら企画開発して提供する事業形態であるために、市場やニーズの変化に先行して製品化を行っております。そのため、先端技術を習得した技術者の採用によって研究開発を推進することに加え、企業買収等によって時間と優秀な技術者を獲得することや、世界的な視野において当社の投資領域である「4D」(Data, Device, Decentralized, Design)に合致する企業への効率的な投資を行うために2020年3月期に金融機関から借入金10億円を調達し投資を行っており、当連結会計年度においても、事業からの利益を効率的な投資にあてております。
(5) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
IFRSに準拠した連結財務諸表の作成において、経営者は、会計方針の適用並びに資産、負債、収益及び費用の金額に影響を及ぼす判断、見積り及び仮定を行うことが要求されております。実際の業績は、これらの見積りとは異なる場合があります。
見積り及びその基礎となる仮定は継続して見直されます。会計上の見積りの見直しによる影響は、見積りを見直した会計期間及びそれ以降の将来の会計期間において認識されます。
経営者が行った連結財務諸表の金額に重要な影響を与える判断及び見積りは以下のとおりであります。
① 非金融資産の減損
当社グループは、有形固定資産、のれんを含む無形資産について、減損テストを実施しております。減損テストにおける回収可能額の算定においては、資産の耐用年数、将来キャッシュ・フロー、税引前割引率及び長期成長率等について一定の仮定を設定しております。これらの仮定は、経営者の最善の見積りと判断により決定しておりますが、将来の不確実な経営条件の変動の結果により影響を受ける可能性があり、見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表等において認識する金額に重要な影響を与える可能性があります。
② 公正価値で測定する金融商品の公正価値の決定方法
当社グループが保有する公正価値で測定する金融資産及び金融負債が、活発な市場における公表価格によって測定できない場合には、当該資産又は負債について直接に又は間接に観察可能な前述の公表価格以外のインプットを使用して算定された公正価値、もしくは観察不能なインプットを含む評価技法によって算定された公正価値を用いて評価しております。特に、観察不能なインプットを含む評価技法によって算定される公正価値は、適切な基礎率、仮定及び採用する計算モデルの選択など、当社グループの経営者による判断や仮定を前提としております。これらの見積り及び仮定は、前提とした状況の変化等により、金融商品の公正価値の算定に重要な影響を及ぼす可能性があるため、当社グループでは、当該見積りは重要なものであると判断しております。
③ 新型コロナウイルス感染症の感染拡大について
新型コロナウイルス感染症については、収束時期等についての統一的な見解は発表されておりません。そのため、感染拡大に伴う影響については、各地域におけるワクチン接種の広がり及び経済活動の再開に伴い、来期末に向けて徐々に収束していくものと仮定し、非金融資産(有形固定資産、のれん、無形資産等)の減損等に関する会計上の見積りを行っております。なお、新型コロナウイルス感染症の収束に向けた動きが上述の想定とは異なった場合には、翌連結会計年度の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(6) 生産、受注及び販売の実績
① 生産実績
事業の特性上、事業区分別の生産規模を金額あるいは数量で示すことはいたしておりません。
② 受注実績
事業の特性上、事業区分別の受注規模を金額あるいは数量で示すことはいたしておりません。
③ 販売実績
当連結会計年度の販売実績を売上区分ごとに示すと、次のとおりであります。なお、全てソフトウェア事業からになります。
売上区分当連結会計年度
(自 2020年4月1日
至 2021年3月31日)
前年同期比(%)
ライセンス(千円)577,742104.2
サポート(千円)984,089106.5
サービス(千円)1,126,54094.0
合計2,688,371100.4

(注)1.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
相手先前連結会計年度
(自 2019年4月1日
至 2020年3月31日)
当連結会計年度
(自 2020年4月1日
至 2021年3月31日)
金額(千円)割合(%)金額(千円)割合(%)
SCSK株式会社290,97410.87343,56112.78

(注)1.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。