有価証券報告書-第17期(令和2年1月1日-令和2年12月31日)
(1) 経営成績等の状況の概要
当事業年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、依然として厳しい状況にあります。当社の属する戸建住宅市場は、消費増税後の反動減及び新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、弱含みで推移しました。新設住宅着工総計は2019年7月から2020年12月まで18か月連続、前年度同月比を割り込みました。当事業年度(2020年1月~12月)における新設住宅着工総計は、815千戸、前年対比で9.9%減となりました。このような状況の下、当社経営理念「人と地球に優しい住環境を創ることで社会に貢献」に基づき持続的な事業の成長と企業価値向上に向け、各部門において収益拡大に取組んで参りました。
厳しい市場環境の下、戸建部門の売上高は12,448百万円と前年同期比で6.0%減に留り、かつ、当社が属する建築物市場においては、断熱・耐火工事等の多工事化の取組みにより、建築物部門の売上高は4,848百万円と前年同期比で17.0%増となりました。さらに、その他部門では、原料販売・機械・空調システム等の拡販などにも取組み、売上高は4,575百万と前年同期比で15.0%増となりました。
これらの結果、当事業年度の売上高は21,872百万円と前年同期比で2.4%増となりました。利益面では営業利益は1,896百万円と前年同期比で0.7%減、経常利益は1,911百万円と前年同期比で0.1%増、当期純利益につきましては1,342百万円と前年同期比で5.3%増となりました。
(2) 財政状態の状況の概要
当事業年度末における総資産は16,021百万円(前事業年度末比4.2%増)となり、前事業年度末に比べ642百万円の増加となりました。当事業年度末における負債合計は8,383百万円(前事業年度末比1.8%減)となり、前事業年度末に比べ152百万円の減少となりました。当事業年度における純資産は7,638百万円となり、前事業年度より795百万円の増加となりました。この増加の主な要因は、当期純利益による利益剰余金が1,342百万円増加したことに対し、配当により利益剰余金が549百万円減少したとによるものであります。
(3) キャッシュ・フローの状況の概要
当事業年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前事業年度末に比べ、226百万円減少し、1,651百万円(前年同期1,878百万円)となりました。当事業年度における各キャッシュ・フローはそれぞれ、営業活動によるキャッシュ・フローは694百万円の収入(前事業年度は1,657百万円の収入)、投資活動によるキャッシュ・フローは609百万円の支出(前事業年度は769百万円の支出)、財務活動によるキャッシュ・フローは311百万円の支出(前事業年度は902百万円の支出)となりました。
(生産、受注及び販売の状況)
(1) 生産実績
当社の主たる事業である断熱材の施工販売は、受注を契機として施工を行い、かつ主力の戸建住宅分野では施工期間が原則1日間と短期であることから、生産実績と販売実績とは近似しており、記載を省略しております。
(2) 受注実績
当社の主たる事業である断熱材の施工販売は、そのほとんどにおいて、受注から施工実施、販売までの期間が短期であることから、受注実績と販売実績とは近似しており、記載を省略しております。
(3) 販売実績
当社は、単一セグメントでの事業を行っておりますが、当事業年度(自 2020年1月1日 至 2020年12月31日)における販売実績を品目別及び地域別に示すと、次のとおりであります。
品目別販売実績
品目 | 当事業年度 (自 2020年1月1日 至 2020年12月31日) | |
販売高(千円) | 前年同期比(%) | |
戸建住宅向け断熱材 | 12,448,084 | 94.0 |
建築物向け断熱材 | 4,848,391 | 117.0 |
商品販売 | 4,575,743 | 115.0 |
合計 | 21,872,218 | 102.4 |
地域別販売実績
地域 | 当事業年度 (自 2020年1月1日 至 2020年12月31日) | |
販売高(千円) | 前年同期比(%) | |
北海道・東北ブロック | 2,614,370 | 115.6 |
関東ブロック | 4,420,753 | 104.2 |
北信越ブロック | 2,368,947 | 95.2 |
中部ブロック | 2,762,528 | 99.2 |
関西ブロック | 2,753,181 | 100.4 |
中国四国ブロック | 1,851,097 | 103.4 |
九州ブロック | 3,667,789 | 101.9 |
営業本部 | 1,433,553 | 98.3 |
合計 | 21,872,218 | 102.4 |
(注)当事業年度より北関東・南関東ブロックを統合し、北信越ブロックを設置しました。関東・中部・北信越の各ブロックを比較するため、前年同期比は当期のブロックにさかのぼって再集計し、比較しています。
(注)主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先 | 前事業年度 (自 2019年1月1日 至 2019年12月31日) | 当事業年度 (自 2020年1月1日 至 2020年12月31日) | ||
金額(千円) | 割合(%) | 金額(千円) | 割合(%) | |
伊藤忠建材㈱ | 1,954,759 | 9.1 | 2,448,684 | 11.2 |
SMB建材㈱ | 2,526,494 | 11.8 | 1,848,604 | 8.5 |
1.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
文中における将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1) 重要な会計方針及び見積り
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたっては、重要な会計方針等に基づき、資産・負債の評価及び収益・費用の認識に影響を与える見積り及び判断を行っております。これらの見積り及び判断に関しましては、継続して評価を行っておりますが、見積り特有の不確実性のため、実際の結果は見積りと異なる可能性があります。
財務諸表作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
・繰延税金資産の回収可能性
繰延税金資産の回収可能性は、将来の税金負担額を軽減する効果を有するかどうかで判断しております。当該判断は、収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得の十分性、タックス・プランニングに基づく一時差異等加減算課税所得の十分性及び将来加算一時差異の十分性のいずれかを満たしているかどうかにより判断しております。
収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得の十分性を判断するにあたっては、一時差異等の解消見込年度及び繰戻・繰越期間における課税所得を見積っております。課税所得は、予算の前提となった数値を、経営環境等の外部要因に関する情報や当社が用いている内部の情報と整合的に修正し見積っております。
当該見積り及び当該仮定について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌事業年度以降の財務諸表において認識する繰延税金資産及び法人税等調整額の金額に重要な影響を与える可能性があります。
(2) 当事業年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
①売上高
売上高は、21,872百万円(前事業年度と比べ505百万円、前年同期比2.4%増)となりました。これは、戸建住宅向け断熱材の施工販売が12,448百万円(前年同期比6.0%減)、建築物向け断熱材の施工販売が4,848百万円(前年同期比17.0%増)、商品販売が4,575百万円(前年同期比15.0%増)となったことによるものです。戸建住宅部門は、消費増税後の反動減及び新型コロナウイルス感染症拡大の影響で住宅着工戸数が前年比で9.9%減少したものの、当社の主力商品である「アクアフォーム®」の商品力と認知度の向上で前年比で6.0%減に留ったものであります。建築物部門は、断熱・耐火工事等の多工事化の取組みにより大幅に増収となったものであります。商品販売は原料販売・機械・空調システム等の拡販などにも取組んだことから増収となったものであります。
②売上原価
売上原価は16,562百万円(前事業年度と比べ599百万円、前年同期比3.8%増)となりました。前事業年度と比べて将来の建築部門の規模拡大に備えた工務人員の増加に伴い、売上原価率が上昇しましたが、これは建築部門の好調に向けて施工体制を強化したことによるものです。売上総利益率は前事業年度の25.3%から24.3%に低下いたしました。
③販売費及び一般管理費
販売費及び一般管理費は、3,413百万円(前事業年度と比べ79百万円、前年同期比2.3%減)となりました。これは、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、採用の抑制による人件費の減少と展示会の出店自粛による広告宣伝費の減少によるものであります。販売費及び一般管理費の売上高に占める割合については15.6%となり、前事業年度と比べ0.8ポイント減少いたしました。
④営業外損益
営業外収益は、46百万円(前事業年度と比べ15百万円、前年同期比50.9%増)となり、営業外費用は、31百万円(前事業年度と比べ0百万円、前年同期比1.0%減)となりました。
⑤特別損益
特別利益は、4百万円(前事業年度と比べ2百万円、前年同期比111.5%増)となり、特別損失は11百万円(前事業年度と比べ9百万円、前年同期比298.4%増)となりました。
⑥法人税等合計
法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額を合わせた法人税等合計は562百万円(前事業年度と比べ71百万円、前年同期比11.2%減)と、前事業年度に比べ大幅に減少となりました。これは、所得拡大税制の適用により法人税等が前年より大幅に減少したことによります。以上の結果、当期純利益は1,342百万円(前事業年度と比べ67百万円、5.3%増)となりました。
⑦収益性
目標とする経営指標として収益性については、自己資本利益率(ROE)で15%、配当方針としては配当性向50%を設定しておりましたが、当事業年度において自己資本利益率(ROE)は18.5%、配当性向は48.1%となりました。この要因としては、自己資本純利益率(ROE)については、所得拡大税制の適用により当期純利益が想定以上の増益となったため目標を3.5%上回りました。配当性向については増益を見込んで増配としたものの、今後の設備投資計画を勘案し、内部留保の必要があると判断したことで50%に届かなかったものであります。
(3) 財政状態の分析
(総資産)
当事業年度末における総資産は16,021百万円(前事業年度末比4.2%増)となり、前事業年度末に比べ642百万円の増加となりました。
(流動資産)
当事業年度末における流動資産は11,469百万円(前事業年度末比2.1%増)となり、前事業年度末に比べ231百万円の増加となりました。この増加の主な要因は、売掛金が581百万円、商品が47百万円、未収入金が289百万円増加したことに対し、現金及び預金が226百万円、原材料及び貯蔵品が481百万円減少したことなどによるものであります。
(固定資産)
当事業年度末における固定資産は4,552百万円(前事業年度末比9.9%増)となり、前事業年度末に比べ、411百万円の増加となりました。この増加の主な要因は、秋田営業所開設用の土地取得37百万円、松本営業所開設用の土地取得66百万円、金沢営業所、神奈川営業所、青森営業所、秋田営業所、松本営業所の建物の建設486百万円、建物付属設備127百万円、構築物114百万円の増加に対し、建設仮勘定の建物等への振替による減少が220百万円、減価償却による資産の減少が186百万円、繰延税金資産の減少が33百万円あったことなどによるものであります。
(負債合計)
当事業年度末における負債合計は8,383百万円(前事業年度末比1.8%減)となり、前事業年度末に比べ152百万円の減少となりました。
(流動負債)
当事業年度末における流動負債は8,186百万円(前事業年度末比2.5%減)となり、前事業年度末に比べ206百万円の減少となりました。この減少の主な要因は、買掛金の225百万円の増加、短期借入金300百万円の増加に対し、返済による1年以内返済予定の長期借入金103百万円の減少、未払費用202百万円の減少、中間納付の増加による未払法人税等の480百万円の減少などによるものであります。
(固定負債)
当事業年度末における固定負債は197百万円(前事業年度末比37.3%増)となり、前事業年度末に比べ53百万円の増加となりました。この増加の主な要因は、長期借入金が66百万円増加したことなどによるものであります。
(純資産)
当事業年度における純資産は7,638百万円となり、前事業年度より795百万円の増加となりました。この増加の主な要因は、当期純利益による利益剰余金が1,342百万円増加したことに対し、配当により利益剰余金が549百万円減少したことによるものであります。
(4) キャッシュ・フローの状況
当事業年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前事業年度末に比べ、226百万円減少し、1,651百万円(前年同期1,878百万円)となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における営業活動による資金の増加は694百万円(前年同期は1,657百万円の増加)となりました。これは主に税引前当期純利益1,905百万円に加え、減価償却費186百万円、たな卸資産の減少426百万円、仕入債務の増加225百万円による資金の増加の一方、売上債権の増加586百万円、未収入金の増加289百万円、法人税等の支払988百万円による資金の減少等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における投資活動による資金の減少は609百万円(前年同期は769百万円の減少)となりました。これは主に有形固定資産の取得652百万円、無形固定資産の取得33百万円に対し、有形固定資産の売却41百万円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における財務活動による資金の減少は311百万円(前年同期は902百万円の減少)となりました。これは主に、配当金の支払いによる支出549百万円、長期借入金の返済による支出136百万円に対し、短期借入金の純増減額300百万円、長期借入金の収入100百万円などによるものであります。
(5) 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
現状における当社の資金需要の主なものは、運転資金、納税資金、固定資産への投資資金です。運転資金の主な内容は、ウレタン原料の製造及び仕入代金、認定施工店への外注費、副資材の仕入代金、販売費及び一般管理費等の営業費用です。販売費及び一般管理費の内訳は、人件費、広告宣伝費、販売手数料等です。固定資産への投資資金の主な内容は、ハブ拠点建設の土地及び建物等の有形固定資産、ソフトウエア等の無形固定資産、並びに敷金及び保証金等の投資その他の資産への投資資金です。
資金調達については、主に銀行借入と内部留保資金により調達しております。今後、大きな資金需要が発生した場合には、増資等による資金調達の可能性もありますが、当面必要な運転資金、固定資産への投資資金については、銀行借入と内部留保資金及び営業活動によるキャッシュ・フローにより十分調達可能であると考えております。
(6) 経営者の問題認識と今後の方針について
当社の経営陣は、現在の事業環境及び入手可能な情報に基づき、新型コロナウイルス感染拡大の防止策を講じつつ、最善の経営方針を立案するように努めております。現在の経営方針は以下のとおりであります。1.全社的取り組みについて
(1) 断熱工事について
当社の断熱工事については、元請会社と連携を図りながら、感染防止対策を徹底したうえで行ってまいります。今後も工務人員の安全や感染拡大防止の対策を徹底してまいります。
(2)業務執行・監督について
取締役会、社内の会議は、感染防止対策の観点から、電話会議システムまたはビデオ会議システムをフル運用して重要な業務の決定や業務執行の監督は平常通り行われています。
2.各部門の見通しについて
(1)戸建部門
戸建市場では、新型コロナウイルス感染症の影響により、弱含みが継続すると思われます。一方、コロナ禍、テレワークによって快適な住空間と住宅の省エネルギー化ニーズが高まっています。また、政府が掲げる「脱炭素」目標ではグリーン投資として、地方移住者のエコ住宅購入などに最大100万円分のポイントが付与されるなど、追加経済対策の効果が期待される中、積極的な受注拡大活動を展開し、増収を図る所存です。
(2)建築物部門
建築物市場では、新型コロナウイルス感染症の影響により、工事の遅延がありましたが、今期、遅延現場の工事が始まります。こうした状況の下、断熱・不燃・耐火、防水工事等の多工事化によって増収を図る所存です。
(3)原料調達について
ウレタン原料はこれまでも北米、中国、国内メーカーより分散調達をしており、サプライチェーンの寸断による、施工並びに原料販売への影響は発生しておりません。
(4)環境への取組み及び新規投資について
①ウレタン断熱材の再利用とCO2削減の更なる強化に向けた取り組みを進めるにあたり、仙台リサイクル工場のラインを拡張いたします。また、九州にリサイクル工場を新たに設置する予定であります。
②全国販売ネットワークと全国施工ネットワークを活用し、防水市場における競争力の向上と市場開発の推進に取り組みます。