有価証券報告書-第21期(2024/01/01-2024/12/31)

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2025/03/28 11:09
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当事業年度(2024年1月1日から2024年12月31日まで)における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要及び経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討結果は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものです。
(1) 経営成績
当事業年度におけるわが国経済は、一部に足踏みがみられるものの、雇用・所得環境が改善する下で各種政策の効果もあり、緩やかに回復が続いております。一方で、欧米における高金利水準の継続や中国の不動産市場の停滞の継続に伴う影響など海外景気の下振れが、わが国の景気を下押しするリスクや、物価上昇、米国の今後の政策動向、中東地域をめぐる情勢、金融資本市場の変動などが懸念されています。
当社が属する建築・住宅業界においては、2022年6月に「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律」が公布され、さらに、同法の施行により、2024年4月から住宅・建築物を販売・賃貸する事業者に省エネ性能ラベルの表示が努力義務となりました。これにより、住まいやオフィスなどの購入者や借り手の間で省エネ性能や断熱性能への関心が高まり、結果として、省エネ性能や断熱性能が高い住宅・建築物の供給が促進されることが期待されています。
一方で、新設住宅着工戸数は弱含みの推移が続いており、住宅業界を取り巻く環境は厳しい状況にあります。しかしながら、企業の設備投資においては、半導体や自動車関連で大型の投資が進んでいるほか、投資計画も高い水準となっており、全国各地で大規模な製造設備、商業施設、及び高層マンション等の建設が活発に行われています。
また、1980~1990年代の建築ラッシュで建てられた建物が老朽化し、防水改修工事の需要が増加しています。約20~30年とされる防水層の寿命を超えた建物では、雨漏りや劣化が進行し、資産価値維持のため改修が必要です。法規制強化や地震対策、気候変動対応が需要を後押しし、高性能防水材や環境配慮型製品が普及し、また、老朽建物の増加により、今後も市場の成長が期待されます。
このような環境下で当社は、高い断熱性能と高気密性を実現する「アクアフォームシリーズ」、および超速硬化防水材「アクアハジクン」の商品力と全国施工ネットワークという強みを活用し、各部門において積極的な受注活動を展開してまいりました。
戸建部門では、各自治体が定める高気密性能を要件とした独自の住宅省エネ施策の広がりを好機と捉え、断熱施工に気密測定サービスを付加することで差別化を図り、施工棟数の増加を軸に市場シェア拡大に取り組みました。その結果、広域展開する大型ビルダーからの受注が拡大し、12月からは新規大口先の施工も始まりました。一方で、地域密着型工務店からの受注が伸び悩んだため、当社の施工棟数は前年比の99%程度にとどまりました。しかし、持ち家の新設住宅着工戸数が大幅に落ち込む中、健闘したと考えており、同部門の売上高は13,704百万円となりました。
建築物部門では、半導体工場やデータセンターといった製造設備に加え、商業施設や高層マンションなどの新設需要を順調に獲得しています。しかし、第2四半期累計期間中には、時間外労働の上限規制を含む「建設業の2024年問題」により、一部物件で他社事情による前工程作業の遅れや原材料不足が原因で工事に着手することができず、いわゆる手待ちが発生しました。この問題は第3四半期以降に順次解消されましたが、工事の遅れのすべてを取り戻すには至らず、同部門の売上高は9,499百万円となりました。
防水部門では、組織体制の強化を進めるとともに積極的な法人営業を行い、上場企業の施設の屋根改修工事や物流倉庫の駐車場防水などを手掛けました。その結果、非住宅分野の比率が高まり、売上高は719百万円となりました。
また、原料販売は2,226百万円、その他部門である、副資材・機械・その他の売上高は4,115百万円となりました。
(単位:百万円、%)
第20期
2023年度
第21期
2024年度
増減額増減比
戸建部門13,79813,704△94△0.7
建築物部門8,2679,499+1,231+14.9
防水部門489719+230+47.1
原料販売1,9162,226+310+16.2
その他(商品販売)部門3,8694,115+245+6.3
売上高合計28,34130,265+1,923+6.8

この結果、当事業年度の売上高は、30,265百万円と前年同期比で6.8%の増収となりました。また、売上総利益は6,862百万円となり、売上総利益率は22.7%と前年同期比で1.8ポイント低下いたしました。主な要因は以下の通りです。戸建部門では、吹付ウレタン施工における寡占化を目指した市場シェア拡大施策を推進したため、同部門の売上総利益率は前年同期比で3.4ポイント低下しました。建築物部門では、コスト削減とキャッシュ・フローの改善を目的として、工事管理業務を徹底するとともに、適切な進捗管理を実施した結果、売上総利益率が前年同期比で0.8ポイント改善しました。
営業利益は2,575百万円、前年同期比で10.6%の減益となり、営業利益率は8.5%で、前年同期比で1.7ポイント低下しました。なお、販売費及び一般管理費は243百万円増加し、4,286百万円となり、主な内訳としては、施工体制の拡充をはじめとする今後の成長に必要不可欠な人的資本投資としての人件費の増加が167百万円、実習生関連費の増加が155百万円です。ただし、他の経費削減効果と相まって、販管費比率は14.2%となり、前年同期比で0.1ポイント改善しています。
経常利益は2,604百万円と前年同期比で10.7%の減益、当期純利益につきましては1,839百万円と前年同期比で8.2%の減益となりました。売上高は過去最高を更新しましたが、当事業年度は市場シェアの拡大を目指した取り組みや、施工体制強化のための採用増、物流拠点の設置など、いわゆる投資先行の年度となったため、利益の過去最高更新は翌年度以降になると見込んでいます。
(経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等)
当社は2024年2月14日に、2024年度から2026年度までの3ヶ年を対象とした中期経営計画「3 Pillars of Stability(安定した3本柱)」を策定し、目標とする経営指標としてサステナブル成長率10%、営業利益率10%、ROE20%、配当性向50%を掲げています。さらに、2025年12月期より、利益成長を通じてより安定的な配当(維持・増配)を実現するため、累進配当制度を導入しました。
また、同計画における2026年12月期の売上高目標は37,000百万円、経常利益目標は3,405百万円です。詳細につきましては、2025年2月7日に開示いたしました「中期経営計画の一部変更のお知らせ」でご確認ください。2024年12月期につきましては、ROEは18.5%、1株当たり当期純利益金額は58円55銭となりました。これに合わせ目標配当性向50%及び累進配当制度を踏まえ、1株当たり配当額は34円といたしました。
将来の見通しに関する記述は、現在入手可能な情報に基づく当社の経営陣の仮定及び判断に基づくものであり、既知または未知のリスク及び不確実性が内在しています。また、今後の当社の事業を取り巻く経営環境の変化、市場の動向、その他様々な要因により、これらの記述または仮定は、将来実現しない可能性があります。将来の見通しに影響を与えうる潜在的リスクや不確定要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載しております。なお、潜在的リスクや不確定要因はこれらのみに限定されるものではありませんのでご留意ください。
・業績目標
(単位:百万円)
2023年度12月期
実績
2024年度12月期
実績
2025年度12月期2026年度12月期
売上高28,34130,26534,36037,000
戸建部門13,79813,70414,43514,800
建築物部門8,2679,49911,88113,500
防水部門4897191,5002,000
原料販売1,9162,2262,3982,500
その他部門3,8694,1154,1454,200
営業利益2,8812,5753,0043,400
経常利益2,9172,6043,0623,405
当期純利益2,0041,8392,0672,298
1株当配当金(円)32.034.035.036.0

(2) 財政状態
(総資産) 当事業年度末における総資産は24,071百万円(前事業年度末比18.0%増)となり、前事業年度末に比べ3,679百万円の増加となりました。
(流動資産) 当事業年度末における流動資産は18,819百万円(前事業年度末比21.6%増)となり、前事業年度末に比べ3,346百万円の増加となりました。これは主として受取手形、売掛金及び契約資産1,719百万円、未収入金1,204百万円、前払費用が99百万円増加したことなどによるものであります。
(固定資産) 当事業年度末における固定資産は5,251百万円(前事業年度末比6.8%増)となり、前事業年度末に比べ332百万円の増加となりました。これは主として宮崎営業所完成により建物および構築物が163百万円増加、ソフトウェア取得により21百万円増加、従業員に対する譲渡制限付株式割り当てに伴う自己株式の処分により長期前払費用が319百万円増加、投資その他の資産のその他に含まれる保険積立金が96百万円増加、貸倒引当金が66百万円減少したことに対し、減価償却による資産の減少が239百万円、宮崎営業所完成により建設仮勘定が55百万円、繰延税金資産が39百万円減少したことなどによるものであります。
(負債合計) 当事業年度末における負債合計は13,525百万円(前事業年度末比22.0%増)となり、前事業年度末に比べ2,438百万円の増加となりました。
(流動負債) 当事業年度末における流動負債は13,415百万円(前事業年度末比22.8%増)となり、前事業年度末に比べ2,488百万円の増加となりました。これは主として短期借入金が2,100百万円、買掛金1,103万円増加したことに対し、未払金237百万円減少、未払消費税等419百万円減少、未払法人税等が232百万円の減少したことなどによるものであります。
(固定負債) 当事業年度末における固定負債は109百万円(前事業年度末比31.1%減)となり、前事業年度末に比べ49百万円の減少となりました。これは主としてその他に含まれる長期未払金が36百万円減少したことなどによるものであります。
(純資産) 当事業年度末における純資産は10,545百万円(前事業年度末比13.3%増)となり、前事業年度末に比べ1,241百万円の増加となりました。これは主として当期純利益が1,839百万円となったこと、従業員に対する譲渡制限付株式割り当てに伴う自己株式の処分により資本剰余金が102百万円増加及び自己株式が303百万円減少したことに対し、配当の支払いにより利益剰余金が1,005百万円減少したことなどによるものであります。
(3) キャッシュ・フロー
当事業年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前事業年度末に比べ、230百万円増加し、2,263百万円(前年同期2,033百万円)となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における営業活動による資金の減少は516百万円(前年同期は4,022百万円の増加)となりました。これは主に税引前当期純利益2,598百万円に加え、減価償却費239百万円、仕入債務の増加1,174百万円による資金の増加の一方、貸倒引当金の減少93百万円、売上債権の増加1,845百万円、未収入金の増加1,228百万円、未払消費税等の減少419百万円、法人税等の支払945百万円による資金の減少等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における投資活動による資金の減少は338百万円(前年同期は385百万円の減少)となりました。これは主に有形固定資産の取得182百万円、無形固定資産の取得26百万円、保険積立金の積立96百万円、関係会社貸付け41百万円等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における財務活動による資金の減少は1,084百万円(前年同期は4,280百万円の減少)となりました。これは主に短期借入金の純増加2,100百万円、配当金の支払いによる支出1,005百万円によるものであります。
(4) 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
現状における当社の資金需要の主なものは、運転資金、納税資金、固定資産への投資資金です。運転資金の主な内容は、ウレタン原料の製造及び仕入代金、認定施工店への外注費、副資材の仕入代金、販売費及び一般管理費等の営業費用です。販売費及び一般管理費の内訳は、人件費、旅費交通費、地代家賃等です。固定資産への投資資金の主な内容は、営業所建設の土地及び建物等の有形固定資産、ソフトウエア等の無形固定資産、並びに敷金及び保証金等の投資その他の資産への投資資金です。
資金調達については、主に銀行借入と内部留保資金により調達しております。今後、大きな資金需要が発生した場合には、増資等による資金調達の可能性もありますが、当面必要な運転資金、固定資産への投資資金については、銀行借入と内部留保資金及び営業活動によるキャッシュ・フローにより十分調達可能であると考えております。
(5) 重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。この財務諸表の作成に当たりましては、一定の会計基準の範囲内において、資産・負債及び収益・費用の金額に影響を与える見積りを必要としております。これらの見積りにつきましては、経営者が過去の実績や現在の取引状況ならびに入手可能な情報を総合的に勘案し、その時点で最も合理的と考えられる見積りや仮定を継続的に使用しておりますが、見積り及び仮定には不確実性が伴うため、実際の結果と異なる可能性があります。また、財務諸表の作成のための重要な会計方針等は「第5 経理の状況 1 財務諸表等(1)財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載されているとおりであります。
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
(1) 経営成績、(2) 財政状態、(3) キャッシュ・フローをご参照ください。
(生産、受注及び販売の状況)
(1) 生産実績
当社の主たる事業である断熱材の施工販売は、受注を契機として施工を行い、かつ主力の戸建住宅分野では施工期間が原則1日間と短期であることから、生産実績と販売実績とは近似しており、記載を省略しております。
(2) 受注実績
当事業年度における建築物分野の受注実績は以下のとおりであります。
セグメントの名称受注高(千円)前期比(%)受注残高(千円)前期比(%)
建築物向け断熱材9,533,305115.34,501,309107.3

(注)1. 戸建住宅分野において、受注から施工実施、販売までの期間が短期であることから、受注実績と販売実績とは近似しており、記載を省略しております。
2. 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(3) 販売実績
当社は、単一セグメントでの事業を行っておりますが、当事業年度(自 2024年1月1日 至 2024年12月31日)における販売実績を品目別及び地域別に示すと、次のとおりであります。
品目別販売実績
品目当事業年度
(自 2024年1月1日
至 2024年12月31日)
販売高(千円)前年同期比(%)
戸建住宅向け断熱材13,704,00699.3
建築物向け断熱材9,499,286114.9
戸建及び建築物向け防水材719,961147.1
原料販売2,226,989116.2
商品販売4,115,100106.3
合計30,265,345106.8

地域別販売実績
地域当事業年度
(自 2024年1月1日
至 2024年12月31日)
販売高(千円)前年同期比(%)
北海道・東北ブロック3,631,261103.0
関東ブロック8,169,581107.7
北信越ブロック2,909,63594.3
中部ブロック3,155,948115.1
関西ブロック4,670,660120.3
中国四国ブロック2,099,750101.4
九州ブロック5,000,431100.4
営業本部628,079133.5
合計30,265,345106.8


(注)主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先前事業年度
(自 2023年1月1日
至 2023年12月31日)
当事業年度
(自 2024年1月1日
至 2024年12月31日)
金額(千円)割合(%)金額(千円)割合(%)
伊藤忠建材㈱2,508,5858.92,672,8438.8

1.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。