有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2019/05/16 15:00
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【項目】
99項目
(1)経営成績等の状況の概要
当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①経営成績の分析
第11期連結会計年度(自 2017年6月1日 至 2018年5月31日)
当連結会計年度において、当社グループは人材採用や広告宣伝活動を積極的に行い、継続的な事業成長を実現いたしました。法人向けクラウド名刺管理サービスを提供するSansan事業では受注が好調に推移し、契約件数及び契約当たり売上高の拡大が成長に寄与いたしました。個人向け名刺アプリを提供するEight事業では、マネタイズの本格化に向けて、各種施策に取り組んでまいりました。
また、当社グループの事業基盤となる名刺データ入力につきましては、データ統括部門「DSOC (Data Strategy & Operation Center)」において、技術開発を通じた継続的な入力単価の低減に取り組んでおります。加えて、「Sansan」導入企業に対して、「名刺情報を用いて自分や同僚の強みをキーワードで可視化する」といった複数の新機能のβ版を「Sansan Labs」と総称して提供を開始いたしました。更に、集積された名刺のデータから新たな価値を導くことを目的とした外部の研究者とのコラボレーションの場として「Sansan Data Discovery」を立ち上げ、新サービス提供のための研究に取り組みました。
その他、2017年7月には4,221,797千円の資金調達(第三者割当増資)を実施いたしました。また、コーポレートロゴを2017年8月に変更し、当社ブランドの更なるプレゼンス向上に努めてまいりました。
この結果、当連結会計年度の売上高は7,324,098千円(前期比51.3%増)、売上総利益は5,888,577千円(前期比54.5%増)、売上総利益率は80.4%(前期比1.6ポイント増)となりました。また、営業損失3,061,454千円(前期は778,045千円の営業損失)、経常損失3,077,015千円(前期は780,055千円の経常損失)、親会社株主に帰属する当期純損失3,085,890千円(前期は790,126千円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。
なお、営業損益以下の段階損益においては、現在は成長に向けた先行的な投資を行っているフェーズにあるため、Sansan事業ではセグメント利益を計上しているものの、当該セグメント利益以上にEight事業においてセグメント損失を計上しており、この結果、連結業績においては営業損失、経常損失、親会社株主に帰属する当期純損失を計上しております。
セグメント別の業績は以下のとおりであります。
(ⅰ)Sansan事業
2017年9月に第5弾となるテレビコマーシャルの放映を開始し、2018年3月には約3,000名が参加したプライベートカンファレンス『Sansan Innovation Project 働き方2020』を開催する等、幅広いマーケティング活動を展開いたしました。また、顧客企業の全社員によるサービス利用(全社利用)を前提としたライセンス契約を主軸に据えた営業活動及び各施策の効果により、大手金融機関や大企業からの受注獲得が進みました。更に、2018年2月には「Sansan Customer Intelligence」という、企業内に散在する顧客データを当社グループがこれまでに培った名寄せの技術等を用いて、整理、統合する付加サービスを開始し、サービスメニューの拡充を図りました。2018年5月末時点の契約件数は5,147件(前期末は4,541件)、12か月平均の月次解約率は0.76%(前期末は0.91%)となりました。
以上の結果、当連結会計年度の売上高は7,044,797千円(前期比51.1%増)、セグメント利益は1,437,577千円(前期比49.7%増)となりました。
(ⅱ)Eight事業
初のテレビコマーシャルの放映を含む広告キャンペーンを展開し、ビジネスネットワークとしての価値をより強く訴求してまいりました。同時に、マネタイズを加速すべく企業向けサービスの開発にも注力し、企業の情報発信を可能にする「企業ページ」サービスの開始や採用活動を支援する採用関連サービスの提供、更に、「Eight」における名刺共有を法人内で可能にする「Eight 企業向けプレミアム」の開始・機能拡張等を行いました。当連結会計年度末のユーザー数は、前期と比較して45万人増加し、214万人となりました。
以上の結果、当連結会計年度の売上高は279,301千円(前期比58.8%増)、セグメント損失は2,964,347千円(前期は783,025千円のセグメント損失)となりました。なお、新規ユーザーの獲得及び利用の促進が、将来的な収益化やプラットフォームとしての価値提供にとって不可欠であることから、先行的な開発投資等を行っており、セグメント損失を計上しております。
第12期第3四半期連結累計期間(自 2018年6月1日 至 2019年2月28日)
当第3四半期連結累計期間において、継続的な事業成長の実現に向け、引き続き人材採用や広告宣伝活動等に積極的に取り組んでまいりました。また、当社グループの事業基盤となる名刺入力につきましては、技術開発を通じた自動化の推進等による効率化に継続的に取り組んでおり、更なる入力単価の低減を進めました。
この結果、Sansan事業及びEight事業ともに順調に進展し、当第3四半期連結累計期間における売上高は7,361,986千円、売上総利益は6,186,378千円、売上総利益率は84.0%となりました。一方、営業損益以下の段階損益においては、現在は成長に向けた先行的な投資を行っているフェーズにあるため、営業損失655,001千円、経常損失684,255千円、親会社株主に帰属する四半期純損失688,904千円を計上いたしました。
また、2018年12月には、事業展開の更なる加速を目的に、3,000,000千円の資金調達(第三者割当増資)を実施いたしました。
セグメント別の業績は以下のとおりであります。
(ⅰ)Sansan事業
法人向けクラウド名刺管理サービス「Sansan」における契約件数及び契約当たり売上高の更なる拡大に向け、テレビコマーシャルを中心とした広告宣伝活動をはじめ、営業人員の採用や営業体制の強化並びに製品力の向上等に引き続き取り組みました。この結果、業績は好調を維持し、当第3四半期連結会計期間末における「Sansan」の契約件数は5,738件、12か月平均での月次解約率は0.73%となりました。
以上の結果、当第3四半期連結累計期間における売上高は6,982,603千円、セグメント利益は1,969,968千円となりました。
(ⅱ)Eight事業
事業全体としての本格的なマネタイズ(収益化)を加速すべく、引き続き、企業向けサービスの展開を推進し、2019年1月には企業向け採用関連サービス「Eight Career Design」の提供を新たに開始いたしました。また、名刺アプリ「Eight」においては、ユーザーインターフェイス(UI)及びユーザーエクスペリエンス(UX)の改善等を目的に、新たなアップデート等を実施した結果、当第3四半期連結会計期間末の「Eight」ユーザー数は235万人となりました。
以上の結果、当第3四半期連結累計期間における売上高は379,383千円となりました。一方、現在は、将来的な収益化に向けた先行的な開発投資等を行っていることから、セグメント損失907,819千円を計上いたしました。
②財政状態の分析
第11期連結会計年度(自 2017年6月1日 至 2018年5月31日)
(資産)
当連結会計年度末における総資産は、5,299,026千円となり、前連結会計年度末に比べ1,809,506千円増加いたしました。これは主に、2017年7月に実施した資金調達(第三者割当増資)等による現金及び預金の増加1,541,607千円によるものであります。
(負債)
当連結会計年度末における負債は3,986,502千円となり、前連結会計年度末に比べて669,610千円増加いたしました。これは主に、顧客企業から契約期間分の料金を一括で受領すること等による前受金の増加697,744千円、未払金の増加333,695千円、短期借入金の減少283,284千円によるものであります。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産は1,312,523千円となり、前連結会計年度末に比べて1,139,896千円増加いたしました。これは主に2017年7月に実施した資金調達(第三者割当増資)等による資本金及び資本剰余金の増加4,221,797千円、親会社株主に帰属する当期純損失の計上による利益剰余金の減少3,085,890千円によるものであります。また、2017年8月15日開催の定時株主総会決議に基づき、累積損失の早期解消による今後の柔軟かつ機動的な資本政策を実現するために、資本剰余金667,864千円を減少し、利益剰余金に振り替えております。
第12期第3四半期連結累計期間(自 2018年6月1日 至 2019年2月28日)
(資産)
当第3四半期連結会計期間末における総資産は8,320,198千円となり、前連結会計年度末に比べ3,021,172千円増加いたしました。これは主に、2018年12月に実施した資金調達(第三者割当増資)等による現金及び預金の増加1,787,418千円によるものであります。
(負債)
当第3四半期連結会計期間末における負債合計は4,683,276千円となり、前連結会計年度末に比べ696,774千円増加いたしました。これは主に、顧客企業から契約期間分の料金を一括で受領すること等による前受金の増加253,045千円によるものであります。
(純資産)
当第3四半期連結会計期間末における純資産は3,636,922千円となり、前連結会計年度末に比べ2,324,399千円増加いたしました。これは、主に2018年12月に実施した資金調達(第三者割当増資)による資本金及び資本剰余金の増加3,000,000千円、親会社株主に帰属する四半期純損失の計上による利益剰余金の減少688,904千円によるものであります。また、2018年8月21日開催の定時株主総会決議に基づき、累積損失の早期解消による今後の柔軟かつ機動的な資本政策を実現するために、資本金1,851,627千円及び資本剰余金1,443,034千円を減少し、利益剰余金に振り替えております。
③キャッシュ・フローの分析
第11期連結会計年度(自 2017年6月1日 至 2018年5月31日)
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は3,546,018千円となり、前連結会計年度末に比べて1,541,607千円増加いたしました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により使用した資金は1,609,791千円(前期は198,909千円の収入)となりました。これは、前受金の増加額697,744千円及び未払金の増加額333,545千円があったものの、税金等調整前当期純損失3,078,543千円を計上していることによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により使用した資金は679,187千円(前期は376,927千円の支出)となりました。これは、ソフトウエアの開発等を主とした無形固定資産の取得による支出408,415千円、オフィスの増床や拠点の拡大に伴う敷金の差入による支出199,182千円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により得られた資金は3,826,486千円(前期は151,801千円の収入)となりました。これは、主に株式の発行による収入4,206,961千円による資金増加要因が、短期借入金の純減額283,284千円等の資金減少要因を上回ったためであります。
④生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社グループは、提供するサービスについて生産に該当する事項がないため、生産実績に関する記載はしておりません。
b.受注実績
当社グループは、受注から役務提供の開始までの期間が短いため、受注実績に関する記載は省略しております。
c.販売実績
第11期連結会計年度及び第12期第3四半期連結累計期間の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称第11期連結会計年度
(自 2017年6月1日
至 2018年5月31日)
前年同期比(%)第12期第3四半期
連結累計期間
(自 2018年6月1日
至 2019年2月28日)
Sansan事業(千円)7,044,797151.16,982,603
Eight事業(千円)279,301158.8379,383
合計(千円)7,324,098151.37,361,986

(注)1.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、総販売実績に対する割合が10%以上の相手先がいないため記載を省略しております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、重要となる会計方針につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。当社グループは、過去の実績値や状況を踏まえ合理的と判断される前提に基づき、会計上の見積りを行っておりますが、見積りの不確実性により、実際の結果がこれら見積りと異なる可能性があります。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容については、「(1)経営成績等の状況の概要」に含めて記載しております。
③資本の財源及び資金の流動性
当社グループは、認知度の向上及びユーザー数の拡大をすべく、積極的に広告宣伝活動を実施してまいりましたが、今後も広告宣伝投資を継続して実施する方針であります。当社グループの資金需要の一定割合は広告宣伝投資であり、必要な資金は自己資金、金融機関からの借入及びエクイティファイナンス等で資金調達していくことを基本方針としております。なお、これらの資金調達方法の優先順位等に特段方針はなく、資金需要の額や使途に合わせて柔軟に検討を行う予定です。
④経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因については、「2 事業等のリスク」をご参照下さい。
⑤経営者の問題意識と今後の方針に関して
経営者の問題意識と今後の方針については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照下さい。