有価証券報告書-第40期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/25 15:32
【資料】
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【項目】
110項目
(1)経営成績等の状況の概要
当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。
①財政状態及び経営成績の状況
当事業年度におけるわが国経済は、有効求人倍率が高止まりし雇用環境は良好に推移したものの、消費税率引き上げに伴う個人消費の落ち込み、米中貿易摩擦の継続による中国経済の減速の影響などにより低調に推移いたしました。さらに、新型コロナウイルスの感染が世界的に拡大し、国内における感染拡大防止のための外出自粛がいつまで続くか見通せないなど、わが国経済の先行きは不透明な状況が継続しております。エンジニア派遣業界においては、製造業各社からの需要は継続しているものの、人手不足に伴うエンジニアの確保が困難な状況が継続いたしました。
このような環境のもと、当社の主なサービスであるエンジニア派遣においては、当社の稼働エンジニア数は前年度と比較して減少したことから売上高は前期に比べ減少いたしました。また、新たな「エンジニア紹介、その他」サービスである「コグナビ 転職」「コグナビ 新卒」などの認知向上を目指した広告宣伝を強化するため販売費及び一般管理費が増加したことや、株式上場に係る費用の支出などにより営業利益、経常利益が減少いたしました。
さらに、「コグナビ 転職」及び「コグナビ 新卒」に係るソフトウエア等について、減損損失655,906千円を計上したことにより当期純利益も減少いたしました。
この結果、当事業年度における当社エンジニア派遣・紹介事業の売上高は32,115,367千円(前年同期比7.2%減)、営業利益は4,079,123千円(同36.5%減)、経常利益は3,753,893千円(同40.8%減)、当期純利益は2,135,183千円(同49.6%減)となりました。なお、当社はエンジニア派遣・紹介事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの業績の記載は行っておりません。
(資産)
当事業年度末における流動資産は13,616,293千円となり、前事業年度末に比べ552,206千円減少いたしました。これは、主に現金及び預金が361,184千円減少したことによるものであります。固定資産は3,442,785千円となり、前事業年度末に比べ273,390千円の減少となりました。これは、主にソフトウエアが541,801千円減少したことによるものであります。
この結果、総資産は17,059,078千円となり、前事業年度末に比べ825,596千円減少いたしました。
(負債)
当事業年度末における流動負債は4,216,700千円となり、前事業年度末に比べ746,512千円減少いたしました。これは、主に未払法人税等が896,870千円減少したことによるものであります。当事業年度末における固定負債はなくなり、前事業年度末に比べ8,356千円の減少となりました。これは、リース債務が8,356千円減少したことによるものであります。
この結果、負債合計は4,216,700千円となり、前事業年度末に比べ754,869千円減少いたしました。
(純資産)
当事業年度末における純資産は12,842,378千円となり、前事業年度末に比べ70,727千円減少しました。これは、利益剰余金が101,542千円減少したことによるものであります。
この結果、自己資本比率は75.3%(前事業年度末は72.2%)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前事業年度末に比べ361,184千円減少し9,348,575千円となりました。
当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は2,893,728千円(前年同期は5,133,990千円の獲得)となりました。
これは主に、税引前当期純利益3,097,986千円の計上によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は895,139千円(前年同期は683,271千円の使用)となりました。
これは主に、有形及び無形固定資産の取得による支出899,137千円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は2,359,773千円(前年同期は2,271,243千円の使用)となりました。
これは主に、配当金の支払額2,236,726千円によるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社は、エンジニア派遣を中心とするサービスを提供しているため、該当事項はありません。
b.受注実績
当社は、エンジニア派遣を中心とするサービスを提供しているため、該当事項はありません。
c.販売実績
当社はエンジニア派遣・紹介事業の単一セグメントでありますが、エンジニア派遣とエンジニア紹介・その他の2つのサービスがあります。当事業年度における販売実績は、次のとおりです。
名称当事業年度
(自 2019年4月1日
至 2020年3月31日)
販売高(千円)前年同期比(%)
エンジニア派遣31,990,45992.7
エンジニア紹介・その他124,908142.1
合 計32,115,36792.8

(注)1.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、販売実績の総販
売実績に対する割合が10%以上の販売先がないため、省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。その作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
なお、新型コロナウイルス感染症拡大の影響に関しましては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 追加情報」に記載のとおりであります。
②経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績等の分析
当社の当事業年度の経営環境としては、構造的なエンジニア人材不足を背景として当社の顧客である製造業大手企業からの人材需要が強い一方で当社にとってもエンジニア人材の確保が容易ではない状況が継続いたしました。2020年1月以降は、新型コロナウイルスの感染が世界的に拡がり、日本国内においてもいわゆる3密の回避が最優先となるなど、経済活動に影響が表れ始める状況となりました。
このような環境のもと、当社は、2019年7月に「コグナビ 新卒」を、2019年10月に「コグナビ タレントマネジメント」を、それぞれ立ち上げました。これらの立ち上げを以て、エンジニア人材の全ての流動パターンを捕捉できる5種類の「コグナビ」サービス(コグナビ 派遣、コグナビ 転職、コグナビ 新卒、コグナビ カレッジ、コグナビ タレントマネジメント)全てが出揃いました。
一方、当社は2018年「コグナビ 転職」立ち上げに際してエンジニア派遣サービス人材募集費の一部を「コグナビ 転職」に振り向けました。さらに、当事業年度に入って米中貿易摩擦を背景とした顧客企業の景況感の悪化が、当社在籍技術社員稼働率の低下として表れるようになりました。これらの事象を主な要因として、当社が目標の達成状況を判断する指標として重視している2020年3月末時点の稼働技術社員数は4,284名(前年度末比341名減少)となりました。一方、稼働技術社員の時間当たり契約単価は同時点で3,639円(同53円増)と堅調に推移いたしました。
他方、当事業年度において当社は将来へ向けた戦略的打ち手に経費を投下いたしました。エンジニア派遣サービスにおける稼働技術社員数の増加を目指した人材募集費の積み増し、「コグナビ」ブランド認知度向上を目指したテレビCMの制作費の投下、株式上場関連費用の投下などです。また、当社は、当事業年度において、エンジニア紹介サービスにおける「コグナビ 転職」及び「コグナビ 新卒」に係るソフトウエア等について減損損失655,906千円を計上いたしました。
これらの要因により、事業の成長性を評価する客観的な指標である「売上高」及び「営業利益」は前年度に比べ減少いたしました。
以上の結果、当事業年度の売上高は32,115,367千円(前年同期比7.2%減)、営業利益は4,079,123千円(同36.5%減)、経常利益は3,753,893千円(同40.8%減)、当期純利益は2,135,183千円(同49.6%減)と前年同期比減益となりました。なお、当社はエンジニア派遣・紹介事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの業績の記載は行っておりません。
また、財政状態及びキャッシュ・フローの分析については、(1)「経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。
b.経営成績に重要な影響を与える要因について
前記 2「事業等のリスク」に記載のとおりであります。
c.資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社の運転資金・設備資金については、主に自己資金により充当しております。当事業年度末の現金及び現金同等物は9,348,575千円となり、将来に対して十分な財源及び流動性を確保しております。
また、不測の事態に備えた資金の流動性を確保する手段として、取引金融機関との間でコミットメントライン契約を締結しております。
今後の重要な資本的支出としては、第3「設備の状況」3「設備の新設、除却等の計画」に記載のとおり、基幹系情報システム(ERP)等の、ソフトウエア開発投資を予定しており、その調達源については、自己資金を予定しております。
d.経営者の問題認識と今後の方針について
当社が既に直面している短期的経営課題として、新型コロナウイルス感染拡大を契機とした外出自粛の段階的解除への対応が挙げられます。いわゆる「ウィズ・コロナ」状況において感染防止と経済活動の両立が必要となっており、当社にとっても在宅勤務や時差通勤など新しい働き方に対応する執務体制を早期に確立することが重要かつ喫緊の経営課題となると認識しております。
当社は、これまで追求してきた当社ビジョンの具現化、即ち「エンジニア人材流動プラットフォームの構築」と「テクノロジーによる求職人材・求人企業マッチング自動化・無人化の実現」がそのまま「ウィズ・コロナ」状況への対応方針にもなると考えております。当社の「コグナビ」サービスの重要な特徴の一つとしてスキルツリーとテクニカルツリーを介して求職人材と求人企業を直接結び付けるダイレクトマッチング機能が挙げられますが、この機能を活用することによって求人企業の担当者は在宅での候補者の書類選考や潜在能力検討を行うことが可能です。また、求職人材はこの機能を活用すれば自宅にいながらにして自らのスキルを生かせる候補企業を見つけることが可能です。
また当社は、従来よりICTの活用による顧客企業宛営業プロセスやエンジニア人材採用プロセスの効率化に取り組んでまいりました。例えば、以前より電子メールを活用した営業活動に注力しており、また2019年秋にオンライン訪問システムを導入いたしました。最近では、新型コロナウイルス感染防止の観点から、顧客企業への営業活動、エンジニア人材との面接、社内会議などにオンラインシステムを活用しております。
従って、当社はこれまで推進してきた経営戦略を堅持することで「ウィズ・コロナ」状況に対応する方針です。一方で、当事業年度の売上高・利益が前事業年度比減少した主な要因(上述 a.「経営成績等の分析」ご参照)に対して、当社は既に戦略的打ち手を実行し始めました。エンジニア派遣サービス稼働技術社員数の増加については、まず新型コロナウイルス感染拡大の影響で増加した待機技術社員の稼働に優先して取り組み、待機者数が減少したところから技術社員の新規採用に着手する方針です。また、計画どおり2020年春より「コグナビ」ブランド認知度向上を目指したテレビCMの放映を開始いたしました。今後は、テレビCMで向上した認知度を生かして「コグナビ」各サービスの本格展開を図る計画です。さらに、2021年3月期中に「コグナビ 転職 IT」サービスを立ち上げてIT系人材セグメントに本格参入する方針です。
なお、当社の中長期的経営課題とそれらへの取組状況につきましては 1「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しておりますので、ご参照ください。