有価証券報告書-第44期(2023/04/01-2024/03/31)

【提出】
2024/06/26 10:33
【資料】
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【項目】
125項目
(1)経営成績等の状況の概要
当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。なお、当連結会計年度は連結初年度に当たるため、前年度との比較は行っておりません。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度(2023年4月1日~2024年3月31日)におけるわが国の経済は、新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行によって経済活動の正常化が進み、所得環境が改善する中で、一部の産業で足踏みもみられるものの、緩やかな回復基調を示しました。中でも、当社主要顧客である大手製造業の景況感は、価格転嫁の進展や資源高の一服から収益環境が改善し、回復基調が鮮明となっております。
このような環境のもと、依然としてマーケット全体の慢性的人材不足感は強まっており、当社主力のエンジニア派遣サービスへの需要はコロナ以前同様の高い水準に回復しました。前連結会計年度から引き続き、派遣エンジニア求人広告の掲載内容の見直しや当社社員によるエンジニア社員紹介制度(リファラル採用制度)、退職者のカムバック採用制度等の施策を講じた結果、派遣エンジニアの採用数は前期比223名増加の970名となりました。
理工系学生のための就職支援サービスである「コグナビ 新卒」に関しては、当サービスを利用した学生の内定受諾数が増加したことにより、売上高は前期と比べて大きく上回りました。
利益面においても、派遣エンジニアの稼働者数が順調に増加したこと、人手不足、インフレ影響により派遣単価が上昇したこと、及び経費を戦略的に見直したことにより、前期と比較し、大きく上昇しました。
以上の結果、当連結会計年度の売上高は31,279百万円、営業利益は3,029百万円、経常利益は3,017百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は2,039百万円となりました。
なお、当社はエンジニア派遣・紹介事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
(資産)
当連結会計年度末における流動資産は、15,117百万円となりました。その主な内訳は、現金及び預金が11,006百万円、売掛金が3,959百万円であります。固定資産は2,800百万円となりました。その主な内訳は、ソフトウエアが1,087百万円、繰延税金資産が782百万円であります。
この結果、総資産は17,918百万円となりました。
(負債)
当連結会計年度末における流動負債は、4,618百万円となりました。その主な内訳は、賞与引当金が1,726百万円、未払法人税等が796百万円であります。固定負債は、9百万円となりました。その主な内訳は、リース債務が6百万円であります。
この結果、負債合計は4,628百万円となりました。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は、13,289百万円となりました。その主な内訳は、利益剰余金が13,242百万円であります。
この結果、自己資本比率は72.4%となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、9,904百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は3,299百万円となりました。
これは主に、税金等調整前当期純利益を3,016百万円計上したことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果支出した資金は1,078百万円となりました。
これは主に、定期預金の預入による支出1,060百万円や有形及び無形固定資産の取得による支出209百万円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果支出した資金は2,771百万円となりました。
これは主に、短期借入金の返済による支出2,000百万円や配当金の支払額1,290百万円によるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社は、エンジニア派遣を中心とするサービスを提供しているため、該当事項はありません。
b.受注実績
当社は、エンジニア派遣を中心とするサービスを提供しているため、該当事項はありません。
c.販売実績
当社はエンジニア派遣・紹介事業の単一セグメントでありますが、エンジニア派遣とその他の二つのサービスがあります。当連結会計年度における販売実績は、次のとおりであります。
名称当連結会計年度
(自 2023年4月1日
至 2024年3月31日)
販売高(百万円)前年同期比(%)
エンジニア派遣サービス30,920-
その他358-
合 計31,279-

(注)主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、販売実績の総販売実績に対する割合が10%以上の販売先がないため、省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
②経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績等の分析
当社の当連結会計年度の経営環境としては、新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行によって経済活動の正常化が進み、所得環境が改善する中で、一部の産業で足踏みもみられるものの、緩やかな回復基調を示しました。このような環境のもと、我が国が現在直面している構造的なエンジニア不足の環境において、AIを駆使した当社独自のスキルマッチング技術「コグナビ」各サービスの浸透と拡充に取り組んでおります。
エンジニア派遣サービス「コグナビ 派遣」は、顧客企業の需要に確実に応えるべく、稼働人員数の更なる増加に繋げるため、派遣エンジニアの採用強化に取り組んでおります。当連結会計年度末時点の稼働人員数は、前期と比べ297名増加し、4,224名となりました。
理工系学生のための就職支援サービスである「コグナビ新卒」は、機電系の新卒学生年間約4万人すべてがメーカーに就職し、エンジニアとして働ける世界を実現するため、元メーカーエンジニアの当社社員が講師となり、大学3年生を対象にエンジニアの魅力を伝える「エンジニア職セミナー」を機電系学科のある大学で実施しております。当期は2025年卒の理工系学生を対象としたセミナーを精力的に実施し、新規会員数の獲得に注力しております。当社はこのセミナーを実施することによって培われた大学とのつながりを活かし、「コグナビ新卒」を第2の収益の柱とすることを目指してまいります。こうした取組みにより、2024年卒会員数は2023年卒会員数と比較し1.6倍となり、当サービスを利用して企業に採用された2024年卒会員数は2023年卒会員数と比較し1.8倍増加しております。また、2025年卒登録会員数も順調に増加しており、約1.1万人に達しております。
経験者採用向けエンジニア紹介サービスである「コグナビ転職」は、「コグナビ新卒」でメーカーに就職したエンジニアが、やがて転職する際の受け皿となり、この流動機会を捕捉し、中長期には第3の収益の柱とすることを目指してまいります。全国各地の提携大学の現役教授等による企業研修を提供するサービス「コグナビ カレッジ」は、大学教授の保有スキルをデータベース化する事で、企業のリスキリング需要に沿った専門性の高い研修を実施しております。
また、2022年10月に設立した当社の連結子会社であるCognavi India Private Limitedは2023年6月22日、インド初のAIマッチング技術を駆使したジョブポータルサイト「Cognavi(コグナビ)」をオープンいたしました。大学や企業のニーズなど、インドの市場環境に合わせたビジネスモデルを現地スタッフが考案し、機電系学生のみならず、すべての学生を対象とした新卒採用メディアとしてビジネス展開を進めております。学生会員数や提供大学数、採用企業数を指標に事業を進めており、インドの新卒学生と企業を結ぶ就活インフラになることを目指しております。2024年1月には、大学及び企業と、初の有償契約を締結いたしました。
なお、当社グループはエンジニア派遣・紹介事業の単一セグメントであるため、セグメント毎の業績の記載を省略しております。
また、財政状態及びキャッシュ・フローの分析については、(1)「経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。
b.経営成績に重要な影響を与える要因について
前記 3「事業等のリスク」に記載のとおりであります。
c.資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社の運転資金・設備資金については、主に自己資金により充当しております。当連結会計年度末の現金及び現金同等物は9,904百万円となり、将来に対して十分な財源及び流動性を確保しております。
また、不測の事態に備えた資金の流動性を確保する手段として、取引金融機関との間でコミットメントライン契約を締結しております。
d.経営者の問題認識と今後の方針について
わが国の今後の経済状況は、雇用情勢の改善・人手不足の深刻化を背景に、高い賃上げ率が期待され、実質賃金の改善が進むと考えられます。また、業績改善により、企業の投資意欲の強さも維持され、設備投資は底堅く推移すると考えられます。しかしながら、人件費や物流コストの増加を背景とする物価上昇圧力の強い状態が継続する懸念も出ております。こうした中、日本国内では高齢化と人口減少を背景とした労働力人口の減少による人材不足に直面しており、エンジニア人材市場においても、構造的な人材不足が続いております。エンジニア人材の確保は、日本の製造業にとって引き続き大きな課題となります。
このような前提に基づき、2025年3月期の当社グループは、エンジニア派遣サービス「コグナビ 派遣」、理工系学生向けエンジニア就職支援サービス「コグナビ 新卒」及びインドにおける就職支援サイトの開発・運営の3つの分野に経営資源を集中してまいります。また、中長期的な企業価値の向上を図るため、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応をしており、企業価値(株価・時価総額)の向上を経営の重要課題と位置付けております。中期経営計画「cognavi Vision2026」最終年度の計画値(営業利益率11.3%、ROE20.0%)の達成と、注力事業への集中及び成長投資の実施、さらに株主還元策としての「安定配当」と「継続的な増配」を優先事項としております。
当社の主力であるエンジニア人材派遣サービス「コグナビ 派遣」は、派遣エンジニアの採用に引き続き注力することで稼働者数の増加につなげてまいります。また、派遣単価アップの実現により収益成長を目指します。理工系学生のための就職支援サービス「コグナビ 新卒」は、成約数増加に向け、求人掲載企業数を増やすべく、企業への営業活動に注力する方針です。なお、大学でのエンジニア職セミナーやオンライン就活セミナーの積極的な実施により、「コグナビ 新卒」会員数の更なる増加を目指してまいります。また、新しくサービスを開始したオンライン就活フェアサイト「CogFest(コグフェス)」を積極的に展開しております。
インドにおけるジョブポータルサイトの開発・運営を行うCognavi India Private Limitedでは、これまでトライアル利用であった大学及び企業から、2024年1月に初の有償契約を締結いたしました。今後も、有償契約を増加させ、インドでの事業展開を本格化してまいります。
なお、当社の中長期的経営課題とそれらへの取組状況につきましては「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しておりますので、ご参照ください。