有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2020/02/05 15:00
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【項目】
122項目
(1)経営成績等の状況の概要
当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。
①財政状態及び経営成績の状況
第39期事業年度(自 2018年4月1日 至 2019年3月31日)
当事業年度におけるわが国経済は、多くの業種における人手不足、頻発する自然災害による輸出や個人消費の落ち込み、米中貿易摩擦など、先行き不透明な状況で推移いたしました。エンジニア派遣業界においては、製造業各社からの需要は継続して高いものの、人手不足に伴うエンジニアの確保が困難な状況は継続しております。
このような環境のもと、当社の稼働エンジニア数は前年度と比較して減少したものの、契約単価の上昇に伴って、業績は堅調に推移いたしました。また、これまでエンジニア派遣サービスで培ってきたAIによる人材マッチングシステムを基盤としスキルによるマッチングを行う機電系エンジニアに特化した正社員転職サイト「コグナビ 転職」を2018年7月よりサービス開始いたしました。
この結果、当事業年度における当社エンジニア派遣・紹介事業では、稼働エンジニア数の減少を契約単価の上昇が補い、売上高は34,591,165千円(前年同期比0.3%増)となりました。売上高は前年度比横ばいとなり、コグナビの開発に係る情報システム費の増額等により販売費及び一般管理費が増加しましたが、若年層の技術社員が増加したこと等で売上原価が減少したことにより、営業利益は6,423,325千円(同3.8%増)となりました。営業利益が増加したものの、営業外費用として上場関連費用を計上したこと等により、経常利益は6,341,824千円(同2.6%増)となりました。経常利益が増加したことに加え会員権売却及び保険解約などの特別利益を計上したことにより、当期純利益は4,232,682千円(同4.9%増)となりました。なお、当社はエンジニア派遣・紹介事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの業績の記載は行っておりません。
(資産)
当事業年度末における流動資産は14,168,500千円となり、前事業年度末に比べ1,842,984千円増加しました。これは、主に現金及び預金が2,179,475千円増加したことなどによるものであります。固定資産は3,716,175千円となり、前事業年度末に比べ75,889千円の減少となりました。これは、主にソフトウエアが682,554千円増加した一方、「無形固定資産」の「その他」に含まれるソフトウエア仮勘定が356,014千円、繰延税金資産が81,809千円減少したことなどによるものであります。
この結果、総資産は17,884,675千円となり、前事業年度末に比べ1,767,095千円増加しました。
(負債)
当事業年度末における流動負債は4,963,213千円となり、前事業年度末に比べ304,146千円減少しました。これは、主に未払金が29,078千円、未払法人税等が80,424千円それぞれ減少したことなどによるものであります。固定負債は8,356千円となり、前事業年度末に比べ31,225千円の減少となりました。これは、リース債務が31,225千円減少したことによるものであります。
この結果、負債合計は4,971,569千円となり、前事業年度末に比べ335,371千円減少しました。
(純資産)
当事業年度末における純資産は12,913,105千円となり、前事業年度末に比べ2,102,466千円増加しました。これは、当期純利益の計上により利益剰余金が4,232,682千円増加した一方、配当金の支払により利益剰余金が2,130,216千円減少したことによるものであります。
この結果、自己資本比率は72.2%(前事業年度は67.1%)となりました。
第40期第3四半期累計期間(自 2019年4月1日 至 2019年12月31日)
当第3四半期累計期間におけるわが国経済は、米中経済摩擦の影響で中国の景気停滞が顕著となり、輸出企業の業績が影響を受けるとともに、2019年10月の消費増税による消費の冷え込みも重なり、企業業績、個人消費とも低迷する状況で推移いたしました。エンジニア派遣業界においては、構造的な人材不足を背景に引き続きエンジニア人材への潜在的な需要はある一方で、景気の先行きが不透明であること等から足元の人員増強を中断する動きも見られ、さらに人材を供給する側でも派遣・紹介対象となるエンジニア人材の確保が容易でない状況が継続しております。
このような環境のもと、当社は前事業年度よりも人材募集費を増額してエンジニア採用の強化に取り組みましたが、前事業年度以降の戦略的施策(前事業年度におけるコグナビ転職への人材募集費への振り向け、コグナビ新卒立ち上げに伴う新卒採用の差し控え等)の影響から、当第3四半期会計期間末の技術社員数は、前事業年度末と比較して235名の減少となりました。
この結果、当第3四半期累計期間の売上高は、主に稼働エンジニア数の減少により24,362,849千円となりました。売上高が減少し、稼働人数の減少に伴い売上原価は減少したものの、人材募集費の増額や人員体制強化に伴う人件費の増額等で販売費及び一般管理費が増加したこと等により、営業利益は、3,642,466千円となりました。営業利益の減少に加え営業外費用として上場関連費用を計上したこと等により、経常利益は3,492,312千円となりました。さらに、「コグナビ 転職」及び「コグナビ 新卒」に係るソフトウエア等について減損損失655,906千円を計上したことにより、四半期純利益は1,949,462千円となりました。
なお、当社はエンジニア派遣・紹介事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
(資産)
当第3四半期会計期間末における流動資産は、13,185,187千円となり、前事業年度末に比べ983,312千円減少しました。これは、主に現金及び預金が891,186千円減少したことによるものであります。固定資産は2,930,181千円となり、前事業年度末に比べ785,994千円減少となりました。これは、主に無形固定資産が729,154千円減少したことによるものであります。
この結果、総資産は16,115,368千円となり、前事業年度末に比べ1,769,306千円減少しました。
(負債)
当第3四半期会計期間末における流動負債は、3,488,648千円となり、前事業年度末に比べ1,474,564千円減少しました。これは、主に未払法人税等が1,095,458千円減少したことによるものであります。固定負債は879千円となり、前事業年度末と比べ7,477千円減少しました。これは、リース債務が7,477千円減少したことによるものであります。
この結果、負債合計は3,489,527千円となり、前事業年度末に比べ1,482,042千円減少しました。
(純資産)
当第3四半期会計期間末における純資産合計は、12,625,841千円となり、前事業年度末に比べ287,264千円減少しました。これは、四半期純利益の計上により利益剰余金が1,949,462千円増加した一方、配当金の支払により利益剰余金が2,236,726千円減少したことによるものであります。
この結果、自己資本比率は78.3%(前事業年度末は72.2%)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
第39期事業年度(自 2018年4月1日 至 2019年3月31日)
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前事業年度末に比べ2,179,475千円増加し9,709,760千円となりました。
なお、当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は5,133,990千円(前年同期は2,510,186千円の獲得)となりました。
これは、主に法人税等の支払額2,217,991千円があった一方で、税引前当期純利益6,446,869千円の計上によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は683,271千円(前年同期は1,133,594千円の使用)となりました。
これは、主に保険積立金の解約による収入374,235千円があった一方で、有形及び無形固定資産の取得による支出977,848千円があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は2,271,243千円(前年同期は1,862,858千円の使用)となりました。
これは、主に配当金の支払額2,130,216千円によるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社は、エンジニア派遣を中心とするサービスを提供しているため、該当事項はありません。
b.受注実績
当社は、エンジニア派遣を中心とするサービスを提供しているため、該当事項はありません。
c.販売実績
当社はエンジニア派遣・紹介事業の単一セグメントでありますが、エンジニア派遣とエンジニア紹介・その他の2つのサービスがあります。第39期事業年度及び第40期第3四半期累計期間における販売実績は、次のとおりです。
名称第39期事業年度
(自 2018年4月1日
至 2019年3月31日)
第40期第3四半期累計期間
(自 2019年4月1日
至 2019年12月31日)
販売高(千円)前年同期比(%)販売高(千円)
エンジニア派遣34,503,300100.324,268,014
エンジニア紹介・その他87,865110.894,835
合 計34,591,165100.324,362,849

(注)1.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、販売実績の総販売実績に対する割合が10%以上の販売先がないため、省略しております。
3.「コグナビ 派遣」の売上は「エンジニア派遣」の販売高に、「コグナビ 転職」、「コグナビ 新卒」の売上は「エンジニア紹介・その他」の販売高に含まれます。
4.「コグナビ カレッジ」における収益は上記金額には含まず、営業外収益として計上しております。
5.当社技術社員の転籍による売上は、「エンジニア紹介・その他」の販売高に含まれます。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。その作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
②経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績等の分析
第39期事業年度(自 2018年4月1日 至 2019年3月31日)
当社の当事業年度の経営環境は、当社の顧客である製造業大手企業からの需要は継続して高いものの、人手不足に伴うエンジニアの確保が困難な状況は継続しております。このような環境のもと、当社の稼働エンジニア数は2018年4月1日時点の4,791名から2019年3月末日までに304名の減少となりました。一方、エンジニアの時間当たり単価は同時点で3,628円(同58円増)と堅調に推移したため、売上高は34,591,165千円(前年同期比0.3%増)、営業利益は6,423,325千円(同3.8%増)、経常利益は6,341,824千円(同2.6%増)、当期純利益は4,232,682千円(同4.9%増)と前年度比増益となりました。なお、当社はエンジニア派遣・紹介事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの業績の記載は行っておりません。
また、財政状態及びキャッシュ・フローの分析については、「(1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。
第40期第3四半期累計期間(自 2019年4月1日 至 2019年12月31日)
当社の第3四半期累計期間の経営環境は、構造的な人材不足を背景に引き続きエンジニア人材への潜在的な需要はある一方で景気の先行きが不透明であること等から、足元の人員増強を中断する動きも見られ、さらに人材を供給する側でも派遣・紹介対象となるエンジニア人材の確保が容易でない状況が継続しております。このような環境のもと、当社は前事業年度よりも人材募集費を増額してエンジニア採用の強化に取り組みましたが、前事業年度以降の戦略的施策(前事業年度におけるコグナビ転職への人材募集費への振り向け、コグナビ新卒立ち上げに伴う新卒採用の差し控え等)の影響から、当第3四半期会計期間末の技術社員数は、前事業年度末と比較して235名の減少となりました。
この結果、当第3四半期累計期間の業績は、主に稼働エンジニア数の減少により売上高は24,362,849千円となりました。売上高が減少し、稼働人数の減少に伴い売上原価は減少したものの、人材募集費の増額や人員体制強化に伴う人件費の増額等で販売費及び一般管理費が増加したことなどにより、営業利益は、3,642,466千円となりました。営業利益の減少に加え営業外費用として上場関連費用を計上したことなどにより経常利益は3,492,312千円となりました。さらに、「コグナビ 転職」及び「コグナビ 新卒」に係るソフトウエア等について減損損失655,906千円を計上したことにより、四半期純利益は1,949,462千円となりました。なお、当社はエンジニア派遣・紹介事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
なお、財政状態については、「(1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。
b.経営成績に重要な影響を与える要因について
前記「2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
c.資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社の運転資金・設備資金については、主に自己資金により充当しております。当事業年度末の現金及び現金同等物は9,709,760千円となり、将来に対して十分な財源及び流動性を確保しております。
今後の重要な資本的支出としては、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」に記載のとおり、顧客企業向けのエンジニア人材の評価・配置等に係るプラットフォームシステム「コグナビ タレントマネジメン
ト」等の、ソフトウエア開発投資を予定しており、その調達源については、自己資金を予定しております。
d.経営者の問題認識と今後の方針について
わが国の15~64才労働力人口5,985万人(出典:総務省統計局 2019年11月 労働力調査)のうち、機電系エンジニア人材は概ね64万人(出典:2015年国勢調査、当社が前記「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4)経営環境」に記載の条件で計算)という極めて限定的な市場環境となります。少子化に伴う就労人口の減少、学生の理系離れも加速する中、製造業におけるエンジニアの確保は年々困難となり、その分エンジニア派遣・紹介のニーズは高まっており、今後もこのマーケット環境は継続することが予想されます。
この環境下において事業を展開するにあたっては、(a)エンジニア人材の確保 (b)顧客企業情報の部署単位での獲得 (c)双方の適切なマッチング の3つを重要なポイントとして捉えております。
(a)エンジニア人材の確保
当社は、機電系エンジニア人材市場全体を網羅し、人工知能(AI)を活用したマッチング機能を有するプラットフォームサービス「コグナビ」を展開しております。従来の採用手法である、Web上の転職サイトに求人広告を掲載し、そこからの応募者を採用につなげる手法に加えて、転職メディアである「コグナビ 転職」、新卒採用メディアである「コグナビ 新卒」を自社運用しております。エンジニアやその予備軍となる理工系学生を会員化し、その保有スキルを把握することで、派遣社員・正社員・理工系学生と、全ての求職者に直接アクセスすることが可能です。
(b)顧客企業情報の部署単位での獲得
多くの求人案件を獲得するには、顧客企業の情報をより多く獲得し、その情報を最新の状況に維持管理する事が重要となります。当社では顧客ターゲットを製造業のうち、自動車、輸送用機械、産業用機械、精密機器、電気機器、家電、電子部品、情報通信の「主要8業種」に限定しております。設計機能と製造機能の棲み分けがなされていない、かつ採算性の見合わない可能性が高い中小零細企業を除くことで、収益性が高く、効率的なビジネス展開を実現しております。
また、当社は顧客を企業単位ではなく事業所、部署単位で捉えており、当社の営業エリア内の従業員数が100名以上の規模の約3,200事業所、約38,000部署をターゲットとし、求人ニーズの有無に関わらず、それぞれの業務内容、必要とされるスキル等を網羅したデータベースを構築、維持管理することで、潜在ニーズの把握を可能としています。
(c)双方の適切なマッチング
エンジニアと求人案件とのマッチングにあたり、当社では人工知能(AI)を使用した独自のマッチングシステム「コグナビ」を導入しております。当該システムでは、エンジニアのスキル、顧客企業の各部署における業務内容の双方を、ツリー構造で体系化、可視化しております。エンジニアのツリーを「スキルツリー」、顧客企業側のツリーを「テクニカルツリー」と称し、2つのツリーを重ね合わせるようにマッチングし、その結果をAIで分析し、数値化することで、客観的な意思決定を可能としております。
当該システムにより、エンジニア、求人企業のそれぞれに対して納得感の高いマッチングの提示を可能としております。またマッチングに係る属人的な対応を不要とし、採用スピードの短縮、業務の効率化を実現しております。