有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2021/01/15 15:00
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【項目】
123項目
(1)経営成績等の状況の概要
当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次の通りであります。
①財政状態の状況
第10期事業年度(自 2019年3月1日 至 2020年2月29日)
(資産)
当事業年度末における資産合計は、前事業年度末と比較して31,684千円減少し、504,512千円となりました。これは、流動資産が56,694千円減少したこと、固定資産が25,009千円増加したことによるものであります。流動資産の減少は、主に業務拡大により売掛金が17,027千円増加した一方で、現金及び預金が73,641千円減少したことによるものであります。固定資産の増加は、主に既存サービスの改良完了及び公開によりソフトウエアが37,563千円増加したことによるものであります。
(負債)
当事業年度末における負債合計は、前事業年度末と比較して108,120千円増加し、218,222千円となりました。これは、主に固定負債が87,440千円増加したことによるものであります。固定負債の増加は、借入により長期借入金が87,440千円増加したことによるものであります。
(純資産)
当事業年度末における純資産合計は、前事業年度末と比較して139,804千円減少し、286,290千円となりました。これは主に、欠損填補を目的とした減資により資本金が151,937千円、資本剰余金が575,842千円減少したこと、利益剰余金が585,775千円増加したことによるものであります。なお、利益剰余金の内訳は欠損填補による繰越利益剰余金の増加が727,779千円、当期純損失が142,004円であります。
第11期第3四半期累計期間(自 2020年3月1日 至 2020年11月30日)
(資産)
当第3四半期会計期間末における資産合計は、前事業年度末と比較して20,086千円増加し、524,599千円となりました。これは、流動資産が25,171千円減少したこと、固定資産が45,257千円増加したことによるものであります。流動資産の減少は、業務拡大により売掛金が25,544千円増加した一方で、主に人件費や収益獲得を目的とした広告宣伝費の投資に伴い現金及び預金が41,368千円減少したこと、その他流動資産が9,547千円減少したことによるものであります。固定資産の増加は、主に既存サービスの改良制作に伴いソフトウエア仮勘定が54,726千円増加した一方で、減価償却によりソフトウエアが9,390千円減少したことによるものであります。
(負債)
当第3四半期会計期間末における負債合計は、前事業年度末と比較して16,935千円減少し、201,286千円となりました。これは、流動負債が8,514千円増加したこと、固定負債が25,450千円減少したことによるものであります。流動負債の増加は、主に借入金の返済に伴い1年内返済予定の長期借入金が17,510千円減少した一方で、人員数の増加に伴い賞与引当金が9,418千円増加したこと、未払法人税等が3,599千円増加したこと、その他流動負債に含まれる未払消費税等が13,909千円増加したことによるものであります。固定負債の減少は、借入金の返済に伴い長期借入金が25,450千円減少したことによるものであります。
(純資産)
当第3四半期会計期間末における純資産合計は、前事業年度末と比較して37,022千円増加し、323,312千円となりました。これは、四半期純利益の計上により利益剰余金が37,022千円増加したことによるものであります。
②経営成績の状況
第10期事業年度(自 2019年3月1日 至 2020年2月29日)
当事業年度におけるわが国経済は、政府による雇用・所得環境の改善が続く中で、景気は緩やかな回復基調で推移しましたが、米中貿易摩擦の長期化や英国のEU離脱問題などによる海外経済の不確実性が増しており、また、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大が世界経済に及ぼす影響が懸念されるなど、今後の動向は依然として不透明な状況が続いております。
このような経営状況のもとで、当社が属するAIを用いたDX市場は、企業のビジネス活動のデジタル化やそれに伴うアナリティクスおよびAI活用の取り組みの一層の広がりを受け、拡大を見せております。当社は「AIアナリスト」シリーズを軸として、DX市場の成長を追い風に、順調な事業拡大を進めてきました。
当社は「AIアナリスト・シリーズ」を軸とするアナリティクスソフトウェアやソリューションを、顧客に継続的かつ複合的に提供することで、顧客のDX実現を支援しております。そうした取り組みにより、当社は1顧客から得る売上高である1社あたりの理論LTV(顧客生涯価値、1社あたりの12ヵ月平均初期売上+1社あたり平均リカーリングレベニュー/社数ベースの12ヶ月平均解約率)の拡大を推進してきました。
当事業年度においては、市場拡大をもとにさらなる事業拡大を進めることで企業価値を向上すべく、自社ケイパビリティの強化を進めてきました。
「AIアナリスト」および「AIアナリスト・シリーズ」を主体としたプロダクト事業では、DX市場において広がるニーズに応えるべく「AIアナリスト」の機能強化や新規機能の開発および「AIアナリスト」シリーズである「AIアナリストSEO」の拡販や「AIアナリストAD」の新規投入(2019年5月)を行いました。また、将来にわたって事業を加速するプロフェッショナル人材の獲得など、積極的な先行投資を行ってまいりました。
また、コンサルティングなどのインキュベーション事業では、アカデミアおよびビジネスの両分野で先端をいく人材を顧問として迎えた社内研究所「WACUL テクノロジー&マーケティングラボ」を通じて、DXの実現に向けたノウハウの高度化を目指しています。当事業年度では、大企業向けにPoC(新規アイディアの検証・実証)およびコンサルティングを提供することで、新たな知見の獲得を進め、それらをソリューションに落とし込む形で、顧客のWebサイトに類似したWebサイトとの比較から顧客が自社のWebサイトの現状を把握するサービスであるベンチマーキングや、類似したWebサイトにおいて改善効果が高かった改善手法を顧客に提案するサービスであるベストプラクティスをオプションとして2019年8月から拡販するなど、新規事業の立ち上げおよびサービスラインナップの拡張を実現しました。
さらに、AIによるデータ分析と改善提案という当社コア・コンピタンスを最大限レバレッジすべく、株式会社リコーや株式会社電通デジタル、ランサーズ株式会社の子会社であるシクロマーケティング株式会社と協業を行うなど、パートナー企業との連携によるサービス拡張にも注力してまいりました。
また、パートナー企業との連携にとどまらず、展示会やセミナーなど、デジタルに閉じないリアルのチャネルでこれまでリーチできなかった顧客の新規獲得にも力を入れており、2019年10月18日には「AIアナリスト」の登録サイト数が30,000サイトを突破し、月間40億セッション以上のビッグデータを保有するに至りました。こうして得られたビッグデータをもとに新たなベストプラクティスの発見を行い、それらを研究所からレポートとしてまとめて発表することで、さらなる新規顧客獲得および自社ブランディングに活かすという好循環を生んでいます。
この結果、当事業年度の経営成績は以下の通りとなりました。なお、当社はDX事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。
(売上高)
売上高は485,984千円(前年同期比31.0%増)となりました。これは、1顧客から得る売上高である1社あたり理論LTV(顧客生涯価値、1社あたりの12ヵ月平均初期売上+1社あたり平均リカーリングレベニュー/社数ベースの12ヶ月平均解約率)の増加と顧客数の増加が主な要因となります。
LTV(顧客生涯価値)は、2019年2月には1,920千円だったものから2020年2月には2,480千円に増加しております。LTV(顧客生涯価値)増加の要因は、クロスセルへの取組み強化と解約率の低減になります。クロスセルは、2019年2月期に「AIアナリストAD」の販売を開始したことに加え、主に「AIアナリストSEO」の新規顧客に対する販売体制の強化、既存顧客に対する利用を促進する営業活動を行う等の取組みを行っております。解約率は、プロダクト開発による機能向上が功を奏したこと、カスタマーサクセスによるサポート強化を行った結果、低減しています。
顧客数の増加は、登録サイト数が2019年2月末時点で27,059サイトに対し、2020年2月末時点で31,480サイトまで増加したことが要因になります。
※ 登録サイト数とは、有料版/無料版を問わず、当社「AIアナリスト」にGoogleアナリティクスが連携された数を示しています。
(売上原価、売上総利益)
売上原価は56,262千円(前年同期比23.2%減)となりました。売上高の伸長と比較して売上原価が減少した理由は、「AIアナリスト」の安定稼働に伴う保守開発工数が減少したこと、売上原価の多くは通信費などのほぼ固定費で構成されることにより売上高の伸長に比例しないことによるものであります。
その結果、売上総利益は429,722千円(前年同期比44.4%増)、売上高総利益率は前会計年度80.3%から88.4%となりました。
(販売費及び一般管理費、営業損失)
販売費及び一般管理費は570,701千円(前年同期比57.4%増)となりました。これは、従業員の増加に伴う人件費が増えたこと、更なる収益獲得を目的として広告宣伝費が増えたことによるものであります。
その結果、営業損失は140,979千円(前事業年度は営業損失64,976千円)となりました。
(営業外損益、経常損失)
営業外収益は6千円、営業外費用は742千円となりました。
その結果、経常損失は141,715千円(前事業年度は経常損失67,456千円)となりました。
(特別損益、税引前当期純損失)
特別損益は計上しておりません。
その結果、税引前当期純損失は141,715千円(前事業年度は経常損失67,456千円)となりました。
(法人税等、当期純損失)
法人税等は289千円(前年同期比87.4%減)となりました。
その結果、当期純損失は142,004千円(前事業年度は当期純損失69,746千円)となりました。
第11期第3四半期累計期間(自 2020年3月1日 至 2020年11月30日)
当第3四半期累計期間におけるわが国経済は、新型コロナウイルスの感染拡大の懸念が台頭するなか、対面によるマーケティング及びセールスの活動が制約され、多くの企業が新しい社会への対応を迫られています。当社ではその変化に各企業が対応できるよう、マーケティング及びセールスのDX(デジタルトランスフォーメーション)の実現の支援を進めております。
当社では、企業のDXの実現性を高めるために、「AIアナリスト」や「AIアナリストSEO」「AIアナリストAD」などを含む「AIアナリスト・シリーズ」を組み合わせ、顧客にワンストップで課題解決のためのソリューションを展開して参りました。また、DX実現に向けて情報を求める企業に向けて、DX実現の手法に関する調査・提言等を書籍の出版や大手メディアへの寄稿、自社主催の大型オンラインイベントなど多面的に発信するなど、積極的な営業・マーケティング活動を行いました。
また、「DXコンサルティング」は、コロナ禍により、デジタルトランスフォーメーションを本格的に取り組みたいという企業に対して戦略立案フェーズから支援を行う案件が増加しました。
当第3四半期累計期間には、マーケティング及びセールスの領域のバリューチェーンにおいて、当社プロダクト「AIアナリスト」のもつWebサイト内のデータに加え、その前段階となる集客領域であるWeb広告データの保有・分析を強化しております。そのひとつとして「AIアナリスト」は、Googleの検索連動型広告等の出稿が行える「Google広告」やGoogle、Yahoo! JAPAN、Facebook等のWeb広告媒体向けの出稿を横断的に管理できるツール「Shirofune」との連携を開始しました。また、「Go To トラベル事業」への対応などからより一層DXの推進の必要性が高まった観光業向けに、ポストコロナと観光業におけるDXを見据え、株式会社JTBコミュニケーションデザインと当社の共同開発で、「AIアナリスト」の分析内容などを観光業に特化したものに変更した「AIアナリスト forツーリズム」を提供開始しました。
また、ビッグデータを分析するにあたり、より「AIアナリスト」からの改善施策提案の質向上のために行う、類似ページをグルーピングする機能について、その設定を人にかわりAIを活用して自動で行う機能の実装を行いました。
この結果、当第3四半期累計期間の経営成績は以下の通りとなりました。
なお、当社はDX事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。
(売上高)
売上高は497,834千円となりました。これは、1顧客から得る売上高である1社あたり理論LTV(顧客生涯価値、1社あたりの12ヵ月平均初期売上+1社あたり平均リカーリングレベニュー/社数ベースの12ヶ月平均解約率)の増加と顧客数の増加が主な要因となります。
LTV(顧客生涯価値)は、2020年2月には2,480千円だったものが2020年11月には3,254千円まで増加しております。LTV(顧客生涯価値)増加の要因は、クロスセルへの取り組み強化と解約率の低減になります。クロスセルは、主に「AIアナリストAD」、「AIアナリストSEO」の新規顧客に対する販売体制の強化、既存顧客に対する利用を促進する営業活動を行う等の取組みを行っております。解約率は、プロダクト開発による機能向上が功を奏したこと、顧客のニーズに合わせたプラン提供への取り組みの結果、低減しています。
顧客数の増加は、登録サイト数が2020年2月末時点で31,480サイトに対し、2020年11月末時点で34,134サイトまで増加したことが要因になります。
※ 登録サイト数とは、有料版/無料版を問わず、当社「AIアナリスト」にGoogleアナリティクスが連携された数を示しています。
(売上原価、売上総利益)
売上原価は66,885千円となりました。
その結果、売上総利益は430,949千円、売上高総利益率は前会計年度88.4%から86.6%となりました。
(販売費及び一般管理費、営業利益)
販売費及び一般管理費は387,117千円となりました。これは、主に人件費や収益獲得を目的とした広告宣伝費によるものであります。
その結果、営業利益は43,832千円となりました。
(営業外損益、経常利益)
営業外収益は2,091千円、営業外費用は3,026千円となりました。営業外収益は事業継続緊急対策(テレワーク)助成金による収入があったこと、営業外費用は主に上場関連費用であります。
その結果、経常利益は42,897千円となりました。
(特別損益、税引前四半期純利益)
特別損益は計上しておりません。
その結果、税引前四半期純利益は42,897千円となりました。
(法人税等、四半期純利益)
法人税等は5,874千円となりました。
その結果、四半期純利益は37,022千円となりました。
③キャッシュ・フローの状況
第10期事業年度(自 2019年3月1日 至 2020年2月29日)
当事業年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前事業年度末に比べ83,641千円減少し、363,921千円となりました。当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果使用した資金は169,874千円(前事業年度は72,066千円の支出)となりました。これは主に、税引前当期純損失が141,715千円計上されたこと、売上の増加に伴い売上債権の増加額が17,027千円あったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は36,847千円(前事業年度は10,984千円の支出)となりました。これは主に、「AIアナリスト」のツール開発・拡張にかかる無形固定資産(ソフトウエア)の取得による支出が36,609千円あったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果獲得した資金は123,080千円(前事業年度は498,930千円の獲得)となりました。これは主に、資金調達をしたことにより長期借入れによる収入が150,000千円あった一方で、長期借入金の返済による支出が29,120千円あったことによるものであります。
④生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社が提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、記載を省略しております。
b.受注実績
当社が提供するサービスの性格上、受注実績の記載になじまないため、記載を省略しております。
c.販売実績
第10期事業年度及び第11期第3四半期累計期間の販売実績は次のとおりであります。
セグメントの名称第10期事業年度
(自2019年3月1日
至2020年2月29日)
第11期第3四半期累計期間
(自2020年3月1日
至2020年11月30日)
販売高(千円)前年同期比(%)販売高(千円)
DX事業485,984131.0497,834

(注)1.当社の事業セグメントは、DX事業の単一セグメントであります。
2.最近2事業年度及び第11期第3四半期累計期間の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、その割合が100分の10以上に該当する相手先がないため記載を省略しております。
3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたって、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額ならびに開示に影響を与える見積りを必要としております。これらの見積りについては過去の実績や現状等を勘案し、合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる可能性があります。
当社の財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載しております。
②経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態の状況 ②経営成績の分析 ③キャッシュ・フローの状況」をご参照下さい。
③資本の財源及び資金の流動性
当社の資金需要として主なものは、事業の拡大に伴う人件費、プロダクトの開発費、顧客獲得や認知度向上のための広告宣伝費等であります。財政状態等や資金使途を勘案しながら、必要な資金は自己資金、金融機関からの借入及びエクイティファイナンス等で資金調達していくことを基本方針としております。なお、これらの資金調達方法の優先順位等は、資金需要の額や用途に合わせて柔軟に検討を行う予定であります。