有価証券報告書-第102期(2025/01/01-2025/12/31)
(業績等の概要)
(1)業績
当期における世界経済は、米国においては、個人消費が底堅く推移するとともに、企業の投資活動も堅調に推移し、欧州においても、個人消費に下支えされ、景気は緩やかな持ち直しが見られました。また、日本においては、雇用・所得環境の改善に伴い、個人消費の緩やかな回復が見られ、総じて底堅い経済成長が維持されました。
こうした状況のなか、アサヒグループは、『中長期経営方針』に基づき、事業ポートフォリオの強靭化やサステナビリティと経営の統合などのコア戦略を推進するとともに、資本効率の向上や資本コストの低減など、持続的な成長と企業価値向上を目指した取り組みを強化しました。また、プレミアム戦略やマルチビバレッジ戦略を推進するとともに、各地域に蓄積されたリソースやベストプラクティス、マネジメントの強みを共有することにより、各事業の総和を超える価値創出に取り組みました。
一方で、2025年9月29日に発生したサイバー攻撃により、日本における受注・出荷などのシステムが停止し、商品供給が制約を受けたことから、第4四半期は大幅な減収・減益となりました。なお、本システム障害の影響は日本で管理しているシステムに限られており、欧州及びアジアパシフィックの業績への影響はありません。
その結果、アサヒグループの売上収益は2兆8,946億7千6百万円(前期比1.5%減)となりました。また、利益については、事業利益※1は2,629億9千7百万円(前期比7.8%減)、営業利益は1,858億7千万円(前期比30.9%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益は1,215億7千4百万円(前期比36.7%減)、調整後親会社の所有者に帰属する当期利益※2は1,470億3千8百万円(前期比19.6%減)となりました。
なお、為替変動による影響を除くと、売上収益は前期比1.4%の減収、事業利益は前期比7.8%の減益となりました。※3
※1 事業利益とは、売上収益から売上原価並びに販売費及び一般管理費を控除した、恒常的な事業の業績を測る当社独自の利益指標です。
※2 調整後親会社の所有者に帰属する当期利益とは、親会社の所有者に帰属する当期利益から事業ポートフォリオ再構築及び減損損失など一時的な特殊要因を控除したものです。
※3 2025年の外貨金額を、2024年の為替レートで円換算して比較しています。
当年度の財政状態の状況は、連結総資産は前年度末と比較して6,250億8百万円増加し、6兆284億1千4百万円、負債は前年度末と比較して2,905億1千7百万円増加し、3兆198億7千万円となりました。また、資本は前年度末に比べ3,344億9千1百万円増加し、3兆85億4千3百万円となりました。
セグメントの業績は次の通りです。各セグメントの売上収益はセグメント間の内部売上収益を含んでおります。
アサヒグループの報告セグメントは、従来「日本」、「欧州」、「オセアニア」、「東南アジア」としていましたが、2025年度の中間連結会計期間より、「日本・東アジア」、「欧州」、「アジアパシフィック」に変更しています。以下の前期比較は前年度の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較しています。
事業セグメント別の実績
※1 為替一定とは、当年度の外貨金額を、前年度の為替レートで円換算したものです。
※2 営業利益における無形資産償却費は各事業に配賦しています。
[日本・東アジア]
日本・東アジアにおいては、各事業の主力ブランドの強化に加え、高付加価値商品の展開を中心とした新たな価値提案により、成長基盤の拡大に取り組みました。また、各事業の枠を超えたシナジー創出による収益性向上に加えて、人的資本の高度化、サステナビリティの取り組み推進などにより、持続的な成長に向けた経営基盤の強化を図りました。
日本の酒類事業では、ビール類において、『アサヒスーパードライ』の“辛口のうまさ”をより一層引き立てる「冷え」に注目した広告・販促活動の強化に取り組むなど、「スーパードライ」ブランドの価値向上を図りました。また、2025年4月の『アサヒ ザ・ビタリスト』の発売に加え、イタリアンプレミアムビール※1『ペローニ ナストロアズーロ』の缶商品を展開するなど、ビールカテゴリーの更なる強化を図りました。RTD※2においては、『未来のレモンサワー』を全国で数量限定発売するなど、新価値創造を推進しました。アルコールテイスト飲料においては、『アサヒゼロ』のクオリティアップに加え、炭酸水の「ウィルキンソン」ブランドから『ウィルキンソン タンサン タグソバー』を発売するなど、お酒を飲む人も飲まない人も共に楽しめる生活文化の創造を目指し、「スマートドリンキング」の推進に取り組みました。
日本の飲料事業では、「ワンダ」ブランドをフルリニューアルし、ブランドロゴの刷新や“はじまりのコーヒー”を新コンセプトに中味とパッケージを一新するとともに、PETボトルコーヒー『ワンダ クリアブラック』『ワンダ ロイヤルラテ』を発売し、コーヒーカテゴリーの強化を図りました。また、熱中症対策設計商品である『三ツ矢塩サイダー』『カルピスウォーター ひんやりライチ』『しみわたるカルピス りんご&洋梨』を発売するなど、商品ラインアップの拡充を図りました。
日本の食品事業では、「ミンティア」ブランドにおいて、ご当地で果実を食べているような特別感を楽しめる『ミンティア あまおう苺』の発売や、大粒タイプの「ブリーズ」シリーズから『ミンティアブリーズ レモンライムドレス』のリニューアル発売などにより、同ブランドで過去最高の年間売上を達成しました。また、和光堂ブランドから、離乳食を卒業した1歳半頃からの子どもに向けた幼児食「ぱくぱくプレキッズ」シリーズを全国発売するなど、多様化するニーズへの対応に取り組みました。
東アジアでは、中国を中心に『Asahi Super Dry』などのグローバルブランドの拡販に取り組み、プレゼンスの拡大を図りました。
以上の結果、売上収益は、価格改定効果などはありましたが、サイバー攻撃によるシステム障害の影響や外食事業からの撤退影響などにより、1兆3,271億9千1百万円(前期比3.7%減)となりました。
事業利益は、各種コストの効率化などに取り組みましたが、システム障害の影響や原材料関連費用の増加などにより、1,116億2千3百万円(前期比16.1%減)となりました。
※1 イタリアを起源とするプレミアムビールブランドのこと。
※2 RTD:Ready To Drinkの略。購入後、そのまま飲用可能な缶チューハイなどを指します。
[欧州]
欧州においては、主要国におけるプレミアムビールやビールテイスト飲料の強化に加えて、世界的なパートナーシップなどを活用した『Asahi Super Dry』と『Peroni Nastro Azzurro』の拡大展開により、グローバルブランドの認知度向上を図りました。また、サステナビリティの取り組みやDXを推進することにより、成長基盤を更に強化しました。
欧州の主要地域では、チェコの『Pilsner Urquell』において、同国の国立劇場との協賛や大阪・関西万博のチェコパビリオンでの販売によりブランド露出を拡大したほか、イタリアの『Raffo』では店舗の販売活動を強化しました。また、ポーランドの『Lech』においては新たなフレーバービールを展開し、消費者の多様なニーズに対応する施策を推進したほか、『Zubr』では、絶滅危惧種を支援するキャンペーンを積極的に展開するなど、各国におけるブランド価値向上に注力しました。さらに、ビールテイスト飲料において、チェコの『Birell』やルーマニアの『Ursus Cooler』などでフレーバー展開を強化したほか、ポーランドの『Tyskie 0.0%』では、スポーツ選手を起用した広告活動を実施するなど、需要の高まりを背景に新たな飲用機会の創出に取り組みました。
グローバルブランドの拡大展開では、『Asahi Super Dry』において、「City Football Group」と「Rugby World Cup」とのパートナーシップを活かしたマーケティング活動に取り組みました。また、新たに、イングランドプレミアリーグの「Arsenal」と公式ビールパートナー契約を締結するなど、更なる認知度向上に向けた取り組みを強化しました。『Peroni Nastro Azzurro』においては、F1チーム「Scuderia Ferrari」とのパートナーシップを活用し、ビールテイスト飲料『Peroni Nastro Azzurro 0.0%』で新たな広告活動と消費者参加型のキャンペーンを開始するなど、グローバルでのブランド認知度の向上に努めました。
以上の結果、売上収益は、天候不順の影響などにより販売数量が減少しましたが、各国のプレミアムビールやグローバルブランドなどが堅調に推移したことや、為替変動の影響により、7,681億9千2百万円(前期比0.7%増)となりました。
事業利益は、販売数量の減少や人件費の増加などによる影響を受けましたが、売上単価の向上による効果や各種コストの効率化を推進したことなどにより、1,130億8千1百万円(前期比8.1%増)となりました。
なお、為替変動による影響を除くと、売上収益は前期比2.5%の減収、事業利益は前期比3.6%の増益となりました。
[アジアパシフィック]
アジアパシフィックにおいては、ビールの主力ブランドを中心とした商品ポートフォリオの強化に加え、高付加価値なRTDの展開などによるプレミアム化を推進しました。また、飲料事業における成長領域への参入など、酒類と飲料事業の強みを活かしたマルチビバレッジ戦略を推進しました。さらに、DXの加速やサプライチェーンの効率化による収益構造改革や、サステナビリティを重視した新価値提案などにより、事業基盤を一層強化しました。
オセアニアの酒類事業では、消費者嗜好の多様化や健康志向の高まりを背景に需要が拡大しているコンテンポラリー・ビール※において、アルコール分2.0%の『Great Northern Light』を発売したことや、「Australian Football League」のシーズンに合わせて『Carlton Dry 3.5%』の販促活動を強化しました。また、『Peroni Nastro Azzurro』やクラフトビール『Balter』による全豪オープンテニストーナメントとのパートナーシップを活用したマーケティングを展開しました。RTDにおいては、『Hard Rated Alcoholic Orange』を発売したことにより商品ポートフォリオを拡充し、プレミアムスピリッツにおいては、「Never Never」ブランドより豪州産原材料を使用したウォッカ商品を発売するなど、新たな飲用機会の創出を図りました。
オセアニアの飲料事業では、「Schweppes」ブランドにおいて豪州の国立美術館とのパートナーシップを活用したマーケティング活動を強化したほか、『SOLO Energy』をはじめとするエナジードリンクを発売するなど、新たな成長機会の創出に取り組みました。
東南アジアでは、マレーシアを中心に「CALPIS」ブランドの新フレーバーを発売したほか、春節と連動した販促活動を展開し、ブランド力の強化を図りました。また、「WONDA」ブランドでは地元の人気キャラクターとコラボレーション商品を発売し、「Goodday」ブランドでは子どもの挑戦する力を育むキャンペーンを積極的に展開したことで、地域の特性や幅広い年齢層に合わせた価値提案を行いました。
以上の結果、売上収益は、各国の主力ブランドが堅調に推移したことや、価格改定の効果などにより、7,831億9千6百万円(前期比0.1%増)となりました。
事業利益は、売上単価の向上や各種コストの効率化を図りましたが、物流費や人件費などの増加に加えて、為替変動の影響により、1,074億5千万円(前期比1.4%減)となりました。
なお、為替変動による影響を除くと、売上収益は前期比3.7%の増収、事業利益は前期比2.2%の増益となりました。
※ 苦味などを抑えた飲みやすいビールのこと。
[その他]
その他については、売上収益は266億5千3百万円(前期比0.7%増)、事業利益は41億7千4百万円(前期比0.1%減)となりました。
(2)キャッシュ・フローの状況
当年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前利益が1,792億8千1百万円となりましたが、法人所得税等の支払による減少があった一方で、減価償却費等の非キャッシュ項目による増加により、1,048億1千6百万円(前期比:2,989億6百万円の収入減)の収入となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出などにより、2,004億6千8百万円(前期比:818億2百万円の支出増)の支出となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、社債の償還による支出があった一方で、短期借入金の増加などがあり、1,259億3千9百万円(前期:2,727億8千4百万円の支出)の収入となりました。
以上の結果、当年度末では、前年度末と比較して現金及び現金同等物の残高は724億1千8百万円増加し、1,563億8千万円となりました。
(生産、受注及び販売の状況)
(1)生産実績
当年度におけるセグメントごとの生産実績は以下の通りであります。
(注)1 金額は、販売価額によっております。
2 IFRS会計基準に基づく金額を記載しております。
3 日本・東アジアの生産高には、外部への製造委託を含めております。
(2)受注実績
当社グループでは受注生産はほとんど行っておりません。
(3)販売実績
当年度におけるセグメントごとの販売実績は以下の通りであります。
(注)1 調整額はセグメント間取引であります。
2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、外部顧客への売上収益のうち、総販売高の10%以上を占める相手先がないため、記載を省略しております。
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
当年度の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析は以下の通りであります。
(1)重要性がある会計方針及び見積り
当社の連結財務諸表は、IFRS会計基準に準拠して作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要となる事項につきましては、合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。
詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 5 重要な会計上の見積り及び判断」に記載しております。
(2)当年度の経営成績の分析
① 売上収益
アサヒグループの当年度の売上収益は、前期比1.5%減、447億4千6百万円減収の2兆8,946億7千6百万円となりました。日本・東アジアにおいては、価格改定効果などはありましたが、サイバー攻撃によるシステム障害の影響や外食事業からの撤退影響などにより、1兆3,271億9千1百万円(前期比3.7%減)となりました。欧州においては、天候不順の影響などにより販売数量が減少しましたが、各国のプレミアムビールやグローバルブランドなどが堅調に推移したことや、為替変動の影響により、7,681億9千2百万円(前期比0.7%増)となりました。アジアパシフィックにおいては、各国の主力ブランドが堅調に推移したことや、価格改定の効果などにより、7,831億9千6百万円(前期比0.1%増)となりました。その他においては、前期比0.7%増の266億5千3百万円となりました。
② 事業利益
当年度の事業利益は、前期比7.8%減、221億2千4百万円減益の2,629億9千7百万円となりました。日本・東アジアにおいては、各種コストの効率化などに取り組みましたが、システム障害の影響や原材料関連費用の増加などにより、1,116億2千3百万円(前期比16.1%減)となりました。欧州においては、販売数量の減少や人件費の増加などによる影響を受けましたが、売上単価の向上による効果や各種コストの効率化を推進したことなどにより、1,130億8千1百万円(前期比8.1%増)となりました。アジアパシフィックにおいては、売上単価の向上や各種コストの効率化を図りましたが、物流費や人件費などの増加に加えて、為替変動の影響により、1,074億5千万円(前期比1.4%減)となりました。その他においては、前期比0.1%減の41億7千4百万円となりました。
③ 営業利益
営業利益は、事業利益の減益などにより、前期比30.9%減、831億8千2百万円減益の1,858億7千万円となりました。
④ 税引前利益
当年度の税引前利益は、営業利益の減益に加え、金融収益が前期比20.7%増、37億5千6百万円増加の219億3千3百万円となったことや、金融費用が前期比37.2%増、77億3千5百万円増加の285億2千2百万円となったことなどにより、前期比32.9%減、877億9百万円減益の1,792億8千1百万円となりました。
⑤ 親会社の所有者に帰属する当期利益
親会社の所有者に帰属する当期利益は、税引前利益の減益などにより、前期比36.7%減、705億6百万円減益の1,215億7千4百万円となりました。
また、基本的1株当たり利益は81.29円(前期126.66円)となり、親会社所有者帰属持分比率は49.8%(前期49.4%)となりました。
また、事業ポートフォリオ再構築など一時的な特殊要因を除いた親会社の所有者に帰属する当期利益を算出に用いた調整後基本的1株当たり利益は98.31円(前期120.65円)となりました。
なお、当社は、2024年10月1日付で普通株式1株につき3株の割合で株式分割を行っております。前年度の期首に当該株式分割が行われたと仮定して、基本的1株当たり利益及び調整後基本的1株当たり利益を算定しております。
(3)財政状態の分析
① 総資産
当年度の連結総資産は、為替相場の変動によるのれん及び無形資産を含む外貨建資産の増加等により、総資産は前年度末と比較して6,250億8百万円増加し、6兆284億1千4百万円となりました。
② 負債
負債は、社債及び借入金の増加等により、前年度末と比較して2,905億1千7百万円増加し、3兆198億7千万円となりました。
③ 資本
資本は、前年度末に比べ3,344億9千1百万円増加し、3兆85億4千3百万円となりました。これは、配当金支出により利益剰余金が減少したものの、親会社の所有者に帰属する当期利益の計上により利益剰余金が増加したこと及び為替相場の変動により在外営業活動体の換算差額が増加したこと等によるものです。
この結果、親会社所有者帰属持分比率は49.8%となりました。
また、事業ポートフォリオ再構築や為替変動など一時的な特殊要因を除いた「親会社の所有者に帰属する当期利益」及び「親会社の所有者に帰属する持分合計」を算出に用いた調整後親会社所有者帰属持分当期利益率は8.4%(前期10.7%)となりました。
(4)資本の財源及び資金の流動性についての分析
① キャッシュ・フロー分析
キャッシュ・フローの状況につきましては、「(業績等の概要) (2)キャッシュ・フローの状況」に記載の通りであります。
また、キャッシュ・フロー指標のトレンドは、以下の通りであります。
(注)親会社所有者帰属持分比率:親会社の所有者に帰属する持分/総資産
時価ベースの親会社所有者帰属持分比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
※ 各指標はいずれも連結ベースの財務数値により算出しております。
※ 株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。
※ キャッシュ・フローは営業キャッシュ・フローを使用しております。
② 資金の調達
アサヒグループの資金の源泉は、主として営業活動からのキャッシュ・フローと金融機関からの借入、社債の発行からなります。当社は経営方針として、有利子負債残高の圧縮を基本として掲げておりますが、「事業基盤強化・効率化を目指した設備投資」及び「M&Aを含む戦略的事業投資」については資金需要に応じて金融債務を柔軟に活用することとしております。一方、運転資金需要については、短期借入金及びコマーシャル・ペーパーでまかなうことを基本としております。
③ 資金の流動性
当社及び主要な連結子会社はCMS(キャッシュマネジメントシステム)を導入しており、各社における余剰資金を当社へ集中し、一元管理を行うことにより、資金効率の向上と金融費用の極小化を図っております。
(5)戦略的現状と見通し
2026年度は、引き続き地政学リスクが複雑化するとともに、インフレによる経済減速リスクなどがより一層懸念されます。そうした環境のなかで当社は、引き続き『中長期経営方針』に基づき、各地域におけるプレミアム戦略の推進やグローバルブランドの拡大展開に加えて、BAC※への投資強化などによる事業ポートフォリオの強靭化を推進します。また、サステナビリティや人的資本の高度化など持続的な成長基盤を強化するとともに、成長投資に加えて資本効率の向上や株主還元の充実にも資本を配分することで、中長期的な企業価値の向上を目指します。
さらに、今般のサイバー攻撃を踏まえ、本年2月に策定した再発防止策を着実に実行し、継続的な監視と改善を前提とした体制へ移行すると共に、万一の事態が発生した場合でも影響を最小限に抑える仕組みを強化していきます。安全性と信頼性を重視したシステム運用のもと、環境や脅威の変化に応じた継続的な取り組みを行い、技術面及びガバナンス面の双方から再発防止に取り組みます。
日本・東アジアにおいては、酒類、飲料、食品事業の主力ブランドの強化に加え、高付加価値商品の展開を中心とした新たな価値提案により、成長基盤の拡大に取り組みます。また、サイバー攻撃によるシステム障害の影響も踏まえ、既存領域における収益力の回復・強化と事業構造の見直しを進めるとともに、東アジア市場も含めた成長戦略の推進などにより持続的な利益成長を図ります。さらに、サプライチェーンの最適化、人的資本の高度化、リスクマネジメントの強化などを通じて、強靭な事業基盤の構築を進めます。
欧州においては、主要国でのプレミアムビールやビールテイスト飲料のマーケティングを強化することに加え、『Asahi Super Dry』と『Peroni Nastro Azzurro』のグローバル展開を加速し、周辺国や北米などの新市場での成長を推進します。また、容器などの資源循環への取り組みやデジタル技術を活用した業務高度化を継続し、持続的成長に向けた基盤を強化します。
アジアパシフィックにおいては、酒類事業ではビールやRTDの主力ブランドの優位性を高めることに加え、『Asahi Super Dry』を軸に各国への拡大展開を促進します。また、飲料事業では機能性を中心とした成長領域における新たな価値提案を推進します。さらに、サプライチェーンの最適化やDXの加速などの取り組みを強化するとともに、酒類と飲料の強みを活かしたマルチビバレッジ戦略の推進を通じて、事業基盤を一層強化します。
※ BAC:Beer Adjacent Categoriesの略。ノンアルコール飲料、RTD、成人向け清涼飲料など、ビール隣接カテゴリーを指します。
(6)経営者の問題認識と今後の方針について
経営者の問題認識と今後の方針につきましては、この文中に記載したほか、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の通りであります。
(7)経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「3 事業等のリスク」に記載の通りであります。
(1)業績
当期における世界経済は、米国においては、個人消費が底堅く推移するとともに、企業の投資活動も堅調に推移し、欧州においても、個人消費に下支えされ、景気は緩やかな持ち直しが見られました。また、日本においては、雇用・所得環境の改善に伴い、個人消費の緩やかな回復が見られ、総じて底堅い経済成長が維持されました。
こうした状況のなか、アサヒグループは、『中長期経営方針』に基づき、事業ポートフォリオの強靭化やサステナビリティと経営の統合などのコア戦略を推進するとともに、資本効率の向上や資本コストの低減など、持続的な成長と企業価値向上を目指した取り組みを強化しました。また、プレミアム戦略やマルチビバレッジ戦略を推進するとともに、各地域に蓄積されたリソースやベストプラクティス、マネジメントの強みを共有することにより、各事業の総和を超える価値創出に取り組みました。
一方で、2025年9月29日に発生したサイバー攻撃により、日本における受注・出荷などのシステムが停止し、商品供給が制約を受けたことから、第4四半期は大幅な減収・減益となりました。なお、本システム障害の影響は日本で管理しているシステムに限られており、欧州及びアジアパシフィックの業績への影響はありません。
その結果、アサヒグループの売上収益は2兆8,946億7千6百万円(前期比1.5%減)となりました。また、利益については、事業利益※1は2,629億9千7百万円(前期比7.8%減)、営業利益は1,858億7千万円(前期比30.9%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益は1,215億7千4百万円(前期比36.7%減)、調整後親会社の所有者に帰属する当期利益※2は1,470億3千8百万円(前期比19.6%減)となりました。
なお、為替変動による影響を除くと、売上収益は前期比1.4%の減収、事業利益は前期比7.8%の減益となりました。※3
※1 事業利益とは、売上収益から売上原価並びに販売費及び一般管理費を控除した、恒常的な事業の業績を測る当社独自の利益指標です。
※2 調整後親会社の所有者に帰属する当期利益とは、親会社の所有者に帰属する当期利益から事業ポートフォリオ再構築及び減損損失など一時的な特殊要因を控除したものです。
※3 2025年の外貨金額を、2024年の為替レートで円換算して比較しています。
| アサヒグループの実績 (単位:百万円) |
| 実績 | 前期比 | |
| 売上収益 | 2,894,676 | △1.5% |
| 事業利益 | 262,997 | △7.8% |
| 営業利益 | 185,870 | △30.9% |
| 親会社の所有者に 帰属する当期利益 | 121,574 | △36.7% |
| 調整後親会社の所有者 に帰属する当期利益 | 147,038 | △19.6% |
当年度の財政状態の状況は、連結総資産は前年度末と比較して6,250億8百万円増加し、6兆284億1千4百万円、負債は前年度末と比較して2,905億1千7百万円増加し、3兆198億7千万円となりました。また、資本は前年度末に比べ3,344億9千1百万円増加し、3兆85億4千3百万円となりました。
セグメントの業績は次の通りです。各セグメントの売上収益はセグメント間の内部売上収益を含んでおります。
アサヒグループの報告セグメントは、従来「日本」、「欧州」、「オセアニア」、「東南アジア」としていましたが、2025年度の中間連結会計期間より、「日本・東アジア」、「欧州」、「アジアパシフィック」に変更しています。以下の前期比較は前年度の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較しています。
事業セグメント別の実績
| (単位:百万円) |
| 売上収益 | 前期比 | 事業利益 | 前期比 | 売上収益 事業利益率 | 営業利益 | 前期比 | |||
| 為替一定 | 為替一定 | ||||||||
| 日本・東アジア | 1,327,191 | △3.7% | △3.7% | 111,623 | △16.1% | △16.1% | 8.4% | 62,584 | △53.1% |
| 欧州 | 768,192 | 0.7% | △2.5% | 113,081 | 8.1% | 3.6% | 14.7% | 79,386 | 12.1% |
| アジアパシフィック | 783,196 | 0.1% | 3.7% | 107,450 | △1.4% | 2.2% | 13.7% | 63,214 | △22.2% |
| その他 | 26,653 | 0.7% | 4.5% | 4,174 | △0.1% | 4.7% | 15.7% | 4,277 | 11.3% |
| 調整額計 | △10,556 | - | - | △33,058 | - | - | - | △23,592 | - |
| 無形資産 償却費 | - | - | - | △40,273 | - | - | - | - | - |
| 合計 | 2,894,676 | △1.5% | △1.4% | 262,997 | △7.8% | △7.8% | 9.1% | 185,870 | △30.9% |
※1 為替一定とは、当年度の外貨金額を、前年度の為替レートで円換算したものです。
※2 営業利益における無形資産償却費は各事業に配賦しています。
[日本・東アジア]
日本・東アジアにおいては、各事業の主力ブランドの強化に加え、高付加価値商品の展開を中心とした新たな価値提案により、成長基盤の拡大に取り組みました。また、各事業の枠を超えたシナジー創出による収益性向上に加えて、人的資本の高度化、サステナビリティの取り組み推進などにより、持続的な成長に向けた経営基盤の強化を図りました。
日本の酒類事業では、ビール類において、『アサヒスーパードライ』の“辛口のうまさ”をより一層引き立てる「冷え」に注目した広告・販促活動の強化に取り組むなど、「スーパードライ」ブランドの価値向上を図りました。また、2025年4月の『アサヒ ザ・ビタリスト』の発売に加え、イタリアンプレミアムビール※1『ペローニ ナストロアズーロ』の缶商品を展開するなど、ビールカテゴリーの更なる強化を図りました。RTD※2においては、『未来のレモンサワー』を全国で数量限定発売するなど、新価値創造を推進しました。アルコールテイスト飲料においては、『アサヒゼロ』のクオリティアップに加え、炭酸水の「ウィルキンソン」ブランドから『ウィルキンソン タンサン タグソバー』を発売するなど、お酒を飲む人も飲まない人も共に楽しめる生活文化の創造を目指し、「スマートドリンキング」の推進に取り組みました。
日本の飲料事業では、「ワンダ」ブランドをフルリニューアルし、ブランドロゴの刷新や“はじまりのコーヒー”を新コンセプトに中味とパッケージを一新するとともに、PETボトルコーヒー『ワンダ クリアブラック』『ワンダ ロイヤルラテ』を発売し、コーヒーカテゴリーの強化を図りました。また、熱中症対策設計商品である『三ツ矢塩サイダー』『カルピスウォーター ひんやりライチ』『しみわたるカルピス りんご&洋梨』を発売するなど、商品ラインアップの拡充を図りました。
日本の食品事業では、「ミンティア」ブランドにおいて、ご当地で果実を食べているような特別感を楽しめる『ミンティア あまおう苺』の発売や、大粒タイプの「ブリーズ」シリーズから『ミンティアブリーズ レモンライムドレス』のリニューアル発売などにより、同ブランドで過去最高の年間売上を達成しました。また、和光堂ブランドから、離乳食を卒業した1歳半頃からの子どもに向けた幼児食「ぱくぱくプレキッズ」シリーズを全国発売するなど、多様化するニーズへの対応に取り組みました。
東アジアでは、中国を中心に『Asahi Super Dry』などのグローバルブランドの拡販に取り組み、プレゼンスの拡大を図りました。
以上の結果、売上収益は、価格改定効果などはありましたが、サイバー攻撃によるシステム障害の影響や外食事業からの撤退影響などにより、1兆3,271億9千1百万円(前期比3.7%減)となりました。
事業利益は、各種コストの効率化などに取り組みましたが、システム障害の影響や原材料関連費用の増加などにより、1,116億2千3百万円(前期比16.1%減)となりました。
※1 イタリアを起源とするプレミアムビールブランドのこと。
※2 RTD:Ready To Drinkの略。購入後、そのまま飲用可能な缶チューハイなどを指します。
[欧州]
欧州においては、主要国におけるプレミアムビールやビールテイスト飲料の強化に加えて、世界的なパートナーシップなどを活用した『Asahi Super Dry』と『Peroni Nastro Azzurro』の拡大展開により、グローバルブランドの認知度向上を図りました。また、サステナビリティの取り組みやDXを推進することにより、成長基盤を更に強化しました。
欧州の主要地域では、チェコの『Pilsner Urquell』において、同国の国立劇場との協賛や大阪・関西万博のチェコパビリオンでの販売によりブランド露出を拡大したほか、イタリアの『Raffo』では店舗の販売活動を強化しました。また、ポーランドの『Lech』においては新たなフレーバービールを展開し、消費者の多様なニーズに対応する施策を推進したほか、『Zubr』では、絶滅危惧種を支援するキャンペーンを積極的に展開するなど、各国におけるブランド価値向上に注力しました。さらに、ビールテイスト飲料において、チェコの『Birell』やルーマニアの『Ursus Cooler』などでフレーバー展開を強化したほか、ポーランドの『Tyskie 0.0%』では、スポーツ選手を起用した広告活動を実施するなど、需要の高まりを背景に新たな飲用機会の創出に取り組みました。
グローバルブランドの拡大展開では、『Asahi Super Dry』において、「City Football Group」と「Rugby World Cup」とのパートナーシップを活かしたマーケティング活動に取り組みました。また、新たに、イングランドプレミアリーグの「Arsenal」と公式ビールパートナー契約を締結するなど、更なる認知度向上に向けた取り組みを強化しました。『Peroni Nastro Azzurro』においては、F1チーム「Scuderia Ferrari」とのパートナーシップを活用し、ビールテイスト飲料『Peroni Nastro Azzurro 0.0%』で新たな広告活動と消費者参加型のキャンペーンを開始するなど、グローバルでのブランド認知度の向上に努めました。
以上の結果、売上収益は、天候不順の影響などにより販売数量が減少しましたが、各国のプレミアムビールやグローバルブランドなどが堅調に推移したことや、為替変動の影響により、7,681億9千2百万円(前期比0.7%増)となりました。
事業利益は、販売数量の減少や人件費の増加などによる影響を受けましたが、売上単価の向上による効果や各種コストの効率化を推進したことなどにより、1,130億8千1百万円(前期比8.1%増)となりました。
なお、為替変動による影響を除くと、売上収益は前期比2.5%の減収、事業利益は前期比3.6%の増益となりました。
[アジアパシフィック]
アジアパシフィックにおいては、ビールの主力ブランドを中心とした商品ポートフォリオの強化に加え、高付加価値なRTDの展開などによるプレミアム化を推進しました。また、飲料事業における成長領域への参入など、酒類と飲料事業の強みを活かしたマルチビバレッジ戦略を推進しました。さらに、DXの加速やサプライチェーンの効率化による収益構造改革や、サステナビリティを重視した新価値提案などにより、事業基盤を一層強化しました。
オセアニアの酒類事業では、消費者嗜好の多様化や健康志向の高まりを背景に需要が拡大しているコンテンポラリー・ビール※において、アルコール分2.0%の『Great Northern Light』を発売したことや、「Australian Football League」のシーズンに合わせて『Carlton Dry 3.5%』の販促活動を強化しました。また、『Peroni Nastro Azzurro』やクラフトビール『Balter』による全豪オープンテニストーナメントとのパートナーシップを活用したマーケティングを展開しました。RTDにおいては、『Hard Rated Alcoholic Orange』を発売したことにより商品ポートフォリオを拡充し、プレミアムスピリッツにおいては、「Never Never」ブランドより豪州産原材料を使用したウォッカ商品を発売するなど、新たな飲用機会の創出を図りました。
オセアニアの飲料事業では、「Schweppes」ブランドにおいて豪州の国立美術館とのパートナーシップを活用したマーケティング活動を強化したほか、『SOLO Energy』をはじめとするエナジードリンクを発売するなど、新たな成長機会の創出に取り組みました。
東南アジアでは、マレーシアを中心に「CALPIS」ブランドの新フレーバーを発売したほか、春節と連動した販促活動を展開し、ブランド力の強化を図りました。また、「WONDA」ブランドでは地元の人気キャラクターとコラボレーション商品を発売し、「Goodday」ブランドでは子どもの挑戦する力を育むキャンペーンを積極的に展開したことで、地域の特性や幅広い年齢層に合わせた価値提案を行いました。
以上の結果、売上収益は、各国の主力ブランドが堅調に推移したことや、価格改定の効果などにより、7,831億9千6百万円(前期比0.1%増)となりました。
事業利益は、売上単価の向上や各種コストの効率化を図りましたが、物流費や人件費などの増加に加えて、為替変動の影響により、1,074億5千万円(前期比1.4%減)となりました。
なお、為替変動による影響を除くと、売上収益は前期比3.7%の増収、事業利益は前期比2.2%の増益となりました。
※ 苦味などを抑えた飲みやすいビールのこと。
[その他]
その他については、売上収益は266億5千3百万円(前期比0.7%増)、事業利益は41億7千4百万円(前期比0.1%減)となりました。
(2)キャッシュ・フローの状況
当年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前利益が1,792億8千1百万円となりましたが、法人所得税等の支払による減少があった一方で、減価償却費等の非キャッシュ項目による増加により、1,048億1千6百万円(前期比:2,989億6百万円の収入減)の収入となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出などにより、2,004億6千8百万円(前期比:818億2百万円の支出増)の支出となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、社債の償還による支出があった一方で、短期借入金の増加などがあり、1,259億3千9百万円(前期:2,727億8千4百万円の支出)の収入となりました。
以上の結果、当年度末では、前年度末と比較して現金及び現金同等物の残高は724億1千8百万円増加し、1,563億8千万円となりました。
(生産、受注及び販売の状況)
(1)生産実績
当年度におけるセグメントごとの生産実績は以下の通りであります。
| セグメントの名称 | 金額 | 前期比 | |
| 日本・東アジア | 1,235,535 | 百万円 | △3.6% |
| 欧州 | 630,508 | 百万円 | 1.1% |
| アジアパシフィック | 674,361 | 百万円 | 3.5% |
(注)1 金額は、販売価額によっております。
2 IFRS会計基準に基づく金額を記載しております。
3 日本・東アジアの生産高には、外部への製造委託を含めております。
(2)受注実績
当社グループでは受注生産はほとんど行っておりません。
(3)販売実績
当年度におけるセグメントごとの販売実績は以下の通りであります。
| セグメントの名称 | 金額 | 前期比 | |
| 日本・東アジア | 1,327,191 | 百万円 | △3.7% |
| 欧州 | 768,192 | 百万円 | 0.7% |
| アジアパシフィック | 783,196 | 百万円 | 0.1% |
| その他 | 26,653 | 百万円 | 0.7% |
| 調整額 | △10,556 | 百万円 | - |
| 合計 | 2,894,676 | 百万円 | △1.5% |
(注)1 調整額はセグメント間取引であります。
2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、外部顧客への売上収益のうち、総販売高の10%以上を占める相手先がないため、記載を省略しております。
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
当年度の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析は以下の通りであります。
(1)重要性がある会計方針及び見積り
当社の連結財務諸表は、IFRS会計基準に準拠して作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要となる事項につきましては、合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。
詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 5 重要な会計上の見積り及び判断」に記載しております。
(2)当年度の経営成績の分析
① 売上収益
アサヒグループの当年度の売上収益は、前期比1.5%減、447億4千6百万円減収の2兆8,946億7千6百万円となりました。日本・東アジアにおいては、価格改定効果などはありましたが、サイバー攻撃によるシステム障害の影響や外食事業からの撤退影響などにより、1兆3,271億9千1百万円(前期比3.7%減)となりました。欧州においては、天候不順の影響などにより販売数量が減少しましたが、各国のプレミアムビールやグローバルブランドなどが堅調に推移したことや、為替変動の影響により、7,681億9千2百万円(前期比0.7%増)となりました。アジアパシフィックにおいては、各国の主力ブランドが堅調に推移したことや、価格改定の効果などにより、7,831億9千6百万円(前期比0.1%増)となりました。その他においては、前期比0.7%増の266億5千3百万円となりました。
② 事業利益
当年度の事業利益は、前期比7.8%減、221億2千4百万円減益の2,629億9千7百万円となりました。日本・東アジアにおいては、各種コストの効率化などに取り組みましたが、システム障害の影響や原材料関連費用の増加などにより、1,116億2千3百万円(前期比16.1%減)となりました。欧州においては、販売数量の減少や人件費の増加などによる影響を受けましたが、売上単価の向上による効果や各種コストの効率化を推進したことなどにより、1,130億8千1百万円(前期比8.1%増)となりました。アジアパシフィックにおいては、売上単価の向上や各種コストの効率化を図りましたが、物流費や人件費などの増加に加えて、為替変動の影響により、1,074億5千万円(前期比1.4%減)となりました。その他においては、前期比0.1%減の41億7千4百万円となりました。
③ 営業利益
営業利益は、事業利益の減益などにより、前期比30.9%減、831億8千2百万円減益の1,858億7千万円となりました。
④ 税引前利益
当年度の税引前利益は、営業利益の減益に加え、金融収益が前期比20.7%増、37億5千6百万円増加の219億3千3百万円となったことや、金融費用が前期比37.2%増、77億3千5百万円増加の285億2千2百万円となったことなどにより、前期比32.9%減、877億9百万円減益の1,792億8千1百万円となりました。
⑤ 親会社の所有者に帰属する当期利益
親会社の所有者に帰属する当期利益は、税引前利益の減益などにより、前期比36.7%減、705億6百万円減益の1,215億7千4百万円となりました。
また、基本的1株当たり利益は81.29円(前期126.66円)となり、親会社所有者帰属持分比率は49.8%(前期49.4%)となりました。
また、事業ポートフォリオ再構築など一時的な特殊要因を除いた親会社の所有者に帰属する当期利益を算出に用いた調整後基本的1株当たり利益は98.31円(前期120.65円)となりました。
なお、当社は、2024年10月1日付で普通株式1株につき3株の割合で株式分割を行っております。前年度の期首に当該株式分割が行われたと仮定して、基本的1株当たり利益及び調整後基本的1株当たり利益を算定しております。
(3)財政状態の分析
① 総資産
当年度の連結総資産は、為替相場の変動によるのれん及び無形資産を含む外貨建資産の増加等により、総資産は前年度末と比較して6,250億8百万円増加し、6兆284億1千4百万円となりました。
② 負債
負債は、社債及び借入金の増加等により、前年度末と比較して2,905億1千7百万円増加し、3兆198億7千万円となりました。
③ 資本
資本は、前年度末に比べ3,344億9千1百万円増加し、3兆85億4千3百万円となりました。これは、配当金支出により利益剰余金が減少したものの、親会社の所有者に帰属する当期利益の計上により利益剰余金が増加したこと及び為替相場の変動により在外営業活動体の換算差額が増加したこと等によるものです。
この結果、親会社所有者帰属持分比率は49.8%となりました。
また、事業ポートフォリオ再構築や為替変動など一時的な特殊要因を除いた「親会社の所有者に帰属する当期利益」及び「親会社の所有者に帰属する持分合計」を算出に用いた調整後親会社所有者帰属持分当期利益率は8.4%(前期10.7%)となりました。
(4)資本の財源及び資金の流動性についての分析
① キャッシュ・フロー分析
キャッシュ・フローの状況につきましては、「(業績等の概要) (2)キャッシュ・フローの状況」に記載の通りであります。
また、キャッシュ・フロー指標のトレンドは、以下の通りであります。
| 前年度 | 当年度 | |
| 親会社所有者帰属持分比率(%) | 49.4 | 49.8 |
| 時価ベースの親会社所有者帰属 持分比率(%) | 46.1 | 39.8 |
| キャッシュ・フロー対有利子 負債比率(年) | 3.5 | 17.2 |
| インタレスト・カバレッジ・ レシオ(倍) | 25.7 | 4.8 |
(注)親会社所有者帰属持分比率:親会社の所有者に帰属する持分/総資産
時価ベースの親会社所有者帰属持分比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
※ 各指標はいずれも連結ベースの財務数値により算出しております。
※ 株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。
※ キャッシュ・フローは営業キャッシュ・フローを使用しております。
② 資金の調達
アサヒグループの資金の源泉は、主として営業活動からのキャッシュ・フローと金融機関からの借入、社債の発行からなります。当社は経営方針として、有利子負債残高の圧縮を基本として掲げておりますが、「事業基盤強化・効率化を目指した設備投資」及び「M&Aを含む戦略的事業投資」については資金需要に応じて金融債務を柔軟に活用することとしております。一方、運転資金需要については、短期借入金及びコマーシャル・ペーパーでまかなうことを基本としております。
③ 資金の流動性
当社及び主要な連結子会社はCMS(キャッシュマネジメントシステム)を導入しており、各社における余剰資金を当社へ集中し、一元管理を行うことにより、資金効率の向上と金融費用の極小化を図っております。
(5)戦略的現状と見通し
2026年度は、引き続き地政学リスクが複雑化するとともに、インフレによる経済減速リスクなどがより一層懸念されます。そうした環境のなかで当社は、引き続き『中長期経営方針』に基づき、各地域におけるプレミアム戦略の推進やグローバルブランドの拡大展開に加えて、BAC※への投資強化などによる事業ポートフォリオの強靭化を推進します。また、サステナビリティや人的資本の高度化など持続的な成長基盤を強化するとともに、成長投資に加えて資本効率の向上や株主還元の充実にも資本を配分することで、中長期的な企業価値の向上を目指します。
さらに、今般のサイバー攻撃を踏まえ、本年2月に策定した再発防止策を着実に実行し、継続的な監視と改善を前提とした体制へ移行すると共に、万一の事態が発生した場合でも影響を最小限に抑える仕組みを強化していきます。安全性と信頼性を重視したシステム運用のもと、環境や脅威の変化に応じた継続的な取り組みを行い、技術面及びガバナンス面の双方から再発防止に取り組みます。
日本・東アジアにおいては、酒類、飲料、食品事業の主力ブランドの強化に加え、高付加価値商品の展開を中心とした新たな価値提案により、成長基盤の拡大に取り組みます。また、サイバー攻撃によるシステム障害の影響も踏まえ、既存領域における収益力の回復・強化と事業構造の見直しを進めるとともに、東アジア市場も含めた成長戦略の推進などにより持続的な利益成長を図ります。さらに、サプライチェーンの最適化、人的資本の高度化、リスクマネジメントの強化などを通じて、強靭な事業基盤の構築を進めます。
欧州においては、主要国でのプレミアムビールやビールテイスト飲料のマーケティングを強化することに加え、『Asahi Super Dry』と『Peroni Nastro Azzurro』のグローバル展開を加速し、周辺国や北米などの新市場での成長を推進します。また、容器などの資源循環への取り組みやデジタル技術を活用した業務高度化を継続し、持続的成長に向けた基盤を強化します。
アジアパシフィックにおいては、酒類事業ではビールやRTDの主力ブランドの優位性を高めることに加え、『Asahi Super Dry』を軸に各国への拡大展開を促進します。また、飲料事業では機能性を中心とした成長領域における新たな価値提案を推進します。さらに、サプライチェーンの最適化やDXの加速などの取り組みを強化するとともに、酒類と飲料の強みを活かしたマルチビバレッジ戦略の推進を通じて、事業基盤を一層強化します。
※ BAC:Beer Adjacent Categoriesの略。ノンアルコール飲料、RTD、成人向け清涼飲料など、ビール隣接カテゴリーを指します。
(6)経営者の問題認識と今後の方針について
経営者の問題認識と今後の方針につきましては、この文中に記載したほか、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の通りであります。
(7)経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「3 事業等のリスク」に記載の通りであります。