有価証券報告書-第70期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、雇用・所得環境の改善を背景に景気は緩やかな回復基調で推移しておりましたが、米中貿易摩擦や英国のEU離脱などの影響による世界経済の不確実性に加え、期末にかけては新型コロナウイルス感染拡大による経済活動の停滞など先行きは一層不透明な状況となっております。
このような状況のもと、当社グループは中期経営計画「総・想・創」(そう・そう・そう)(2019年3月期~2021年3月期)に基づき、「収益力の強化」「成長力の推進」「株主価値向上」を基本方針とし、「ナカバヤシからの6つの約束」を目標として掲げ、その達成に向けた諸施策を実施してまいりました。
当連結会計年度において、受注部門では「こまったを良かったに」をスローガンに、ビジネスプロセスにおける様々な課題を解決すべく顧客特性に応じた提案、サービスの強化に取り組んだ結果、データプリントサービスをはじめとしたBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)部門が順調に推移いたしました。また2019年10月1日に製造子会社の兵庫ナカバヤシ株式会社を当社に吸収合併し一層の効率化を図り採算性の向上に取り組みました。製品販売部門では、前期M&Aにより連結子会社となった、寝具(主にベッド)のネット通販を営む株式会社ビックスリーの業績がフルに寄与いたしました。オフィス家具に加えネット販売の商品の拡充により業容の拡大に取り組みました。またメディア、広告媒体、各種イベント等を通じての発信力を強化し、商品の認知度向上、新たなブランドの確立に努めました。
この結果、当社グループにおける当連結会計年度の売上高は、前年同期比2.0%増の653億9百万円となりました。利益面では販売費及び一般管理費が増加しましたが、原価率の低下により、営業利益は23億46百万円(前年同期比12.3%増)、経常利益は27億36百万円(前年同期比10.9%増)となりました。
また、特別利益は投資有価証券売却益98百万円など合計で1億18百万円を計上し、特別損失は減損損失1億69百万円、関係会社株式評価損1億22百万円など合計で3億36百万円を計上いたしました。この結果、法人税等税負担調整後の親会社株主に帰属する当期純利益は15億61百万円(前年同期比0.3%減)となりました。
なお、新型コロナウイルス感染拡大により期末にかけて新規顧客の開拓、海外販路の拡大、新製品のPRや販売などの営業活動において制約を受けるなど影響を受けました。このような状況は今後とも一定期間続くものと想定しておりますが、感染が収束した後は、営業活動も正常化し感染拡大前の状況に戻ると考えております。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
[ビジネスプロセスソリューション事業]
BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)業務は官公庁や民間企業からの受注が順調に推移し、シール印刷、ラベル紙などの売上高も増加いたしました。連結子会社の日本通信紙株式会社は2019年12月に印西BPOセンター(同社柏IPセンターを移転)を新設し、主に資格検定試験や大学入試関連の管理運営、自治体向け各種通知物の管理・発送、コールセンターの設置・運営などの受託強化を図りました。図書館ソリューション業務は引き続き公共図書館の指定管理、アウトソーシング業務、書籍移動などの受注拡大に努めました。法人向け手帳は年玉手帳の廃止や減少が進んでおり、受注冊数は減少いたしました。なお、新しい取り組みとして「脱プラ」対策を検討している企業向けに紙ストローなど環境関連製品の生産、販売を開始いたしました。
この結果、当事業の売上高は361億24百万円(前年同期比2.8%増)、営業利益は11億10百万円(前年同期比76.2%増)となりました。
[コンシューマーコミュニケーション事業]
ノートはロジカルノートの新CMや劇場アニメとのタイアップにより認知度向上に努めるとともに、新デザインを投入するなど拡販を図りました。アルバムは画像専用ストレージアプリ「Fueru アルバム」の機能、サービスを順次拡充しており、ユーザーの拡大に努めました。また旅行ガイドブック「ことりっぷ」とコラボしたステーショナリーや高級筆記具ブランド「TACCIA」からは「浮世絵インク」8色を新発売いたしました。さらにプラスチック使用量を約30%削減したペンスタンドなどの「エシカル商品」の開発、販売も開始いたしました。アルバム、ステーショナリー関連商品の売上高は店頭市場の低迷により減少いたしましたが、PC関連商品やセキュリティ関連商品は堅調に推移いたしました。
この結果、当事業の売上高は201億29百万円(前年同期比2.2%増)、営業利益は8億73百万円(前年同期比13.9%減)となりました。
[オフィスアプライアンス事業]
シュレッダは官公庁、大手民間企業などを中心に引き続き受注獲得に努めるとともに、メンテナンス契約や機密文書回収ボックスの販売に注力いたしました。また静かな環境で使用できるノイズレスタイプのパーソナルシュレッダを新発売いたしました。金融機関などの支店統廃合や窓口業務の縮小などの影響もあり、買い替え需要も低調で売上高は減少いたしました。オフィス家具は木製家具が低迷したものの、商品の拡充や提案営業の強化により売上高は堅調に推移いたしました。また病院向けカルテワゴンなどのメディカル商品の販売も堅調に推移いたしました。
この結果、当事業の売上高は74億23百万円(前年同期比0.9%減)、営業利益は4億49百万円(前年同期比3.8%減)となりました。
[エネルギー事業]
太陽光発電は概ね計画通り稼働いたしましたが、連結子会社の松江バイオマス発電株式会社が営む木質バイオマス発電については、設備の一部故障により稼働が一時停止したことが影響して売上高、営業利益は減少いたしました。
この結果、当事業の売上高は15億2百万円(前年同期比6.5%減)、営業利益は1億75百万円(前年同期比26.0%減)となりました。
[その他]
野菜プラント事業及びにんにくファーム事業等であり、売上高は1億29百万円(前年同期比15.1%増)、営業損失は64百万円(前年同期営業損失26百万円)となりました。
財政状態の分析は、次のとおりであります。
[資産]
流動資産は、前連結会計年度末に比べて21百万円減少し、270億12百万円となりました。これは現金及び預金が5億47百万円、電子記録債権(流動資産の「その他」)が72百万円、仕掛品が62百万円それぞれ増加しましたが、受取手形及び売掛金が6億82百万円、未収入金(流動資産の「その他」)が25百万円それぞれ減少したことなどによります。
固定資産は、前連結会計年度末に比べて5億63百万円増加し、287億70百万円となりました。これは投資有価証券が5億65百万円減少しましたが、建物及び構築物が10億85百万円増加したことなどによります。
この結果、総資産は前連結会計年度末に比べて5億42百万円増加し、557億82百万円となりました。
[負債]
流動負債は、前連結会計年度末に比べて10億27百万円減少し、175億31百万円となりました。これは短期借入金が5億7百万円、未払金が3億78百万円、支払手形及び買掛金が1億23百万円それぞれ減少したことなどによります。
固定負債は、前連結会計年度末に比べて7億80百万円増加し、121億44百万円となりました。これは繰延税金負債が51百万円、長期リース債務(固定負債の「その他」)が32百万円それぞれ減少しましたが、長期借入金が8億81百万円増加したことなどによります。
[純資産]
純資産合計は、前連結会計年度末に比べて7億89百万円増加し、261億6百万円となりました。これはその他有価証券評価差額金が2億66百万円減少しましたが、利益剰余金が9億95百万円増加したことなどによります。
この結果、自己資本比率は43.2%となり、前連結会計年度末に比べて0.8ポイント上昇いたしました。
② キャッシュ・フローの状況
(1)キャッシュ・フロー及び流動性の状況
営業活動によるキャッシュ・フローは、38億78百万円の収入(前年同期比12億46百万円収入増)となりました。主な内訳として、収入については、税金等調整前当期純利益25億18百万円、減価償却費16億17百万円、売上債権の減少額5億96百万円であり、支出については、法人税等の支払額9億円、仕入債務の減少額1億30百万円、投資有価証券売却益98百万円、退職給付に係る負債の減少額89百万円等であります。
投資活動によるキャッシュ・フローは、30億63百万円の支出(前年同期比11億38百万円支出増)となりました。主な内訳として、収入については、投資有価証券の売却による収入1億61百万円、支出については、有形固定資産の取得による支出30億84百万円、無形固定資産の取得による支出95百万円、投資有価証券の取得による支出51百万円等であります。
財務活動によるキャッシュ・フローは、2億66百万円の支出(前年同期比9億73百万円の支出減)となりました。主な内訳は、長期借入れによる収入42億30百万円、長期借入金の返済による支出31億55百万円、短期借入金の減少額7億円等であります。
この結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は前連結会計年度末より5億47百万円増加し、68億6百万円となりました。
(2)キャッシュ・フローの配分と資本政策
営業キャッシュ・フローの配分については財務基盤の確立を目指しつつ、企業価値向上に資する投資を積極的に行うとともに、株主還元に配慮した適正配分に努めてまいります。
事業への配分については紙器および紙製包材事業、BPO事業、環境配慮型製品や防災復興関連製品の開発など収益力の高い事業や成長力のある新規事業への投資を安定的かつ継続的に実施いたします。
株主還元については安定的な配当の維持並びに経営基盤の強化と今後の事業展開を勘案した上で、この両者をバランスよく回転させることを基本方針としております。連結配当性向30%~40%を維持してまいります。
(3)資金調達の方針
資金調達については、円滑な事業活動に必要なレベルの流動性の確保と財務の安全性維持を基本方針としており、主として銀行、生保からの短期及び長期借入金により資金調達を行っております。子会社については原則として外部からの資金調達を行わず、グループファイナンスを活用し、資金調達の一元化により資金の効率化及び流動性の確保を図っています。また事業展開に伴う資金需要に対する機動的な対応を図るため十分な現金同等物を保有しております。収益力の強化、CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)の短縮及び資産の効率化・有効活用に取り組み、有利子負債の圧縮を図ってまいります。
③ 生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 金額は販売価格によっております。
3 上記金額には、消費税等は含まれておりません。
b. 受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
なお、受注生産を行っている事業はビジネスプロセスソリューション事業であり、主なものは図書製本、法人向け手帳、データプリントサービス等であります。一方、コンシューマーコミュニケーション事業、オフィスアプライアンス事業、エネルギー事業及びその他は、見込み生産であり、受注生産の割合が僅少である事業、または、提供するサービスの性格上、受注実績の記載に馴染まない事業のため、記載は省略しております。
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 上記金額には、消費税等は含まれておりません。
c. 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 当連結会計年度における相手先別の販売実績は、総販売実績に対する割合が100分の10未満の相手先のみであるため、記載を省略しております。
3 上記金額には、消費税等は含まれておりません。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。連結財務諸表の作成にあたっては、会計上の見積りを行う必要があり、特に以下の事項は、経営者の会計上の見積りの判断が財政状態及び経営成績に重要な影響を及ぼすと考えております。
新型コロナウイルス感染症の影響により在宅勤務などの機会が定着し多様な働き方が進展することに伴い、オフィス用品などの需要は減少することが予想されますが、個人においては家庭での仕事環境の整備が必要になってくると思われます。また官公庁や民間企業ではアウトソーシングする業務が増え、学校教育や図書館などの再開によりステーショナリー製品や図書館業務の需要も改善されると思われます。
このように当社グループ事業への影響は、事業によってその影響や程度が異なるものの、概ね1年程度で回復すると見込んでおり、当社グループの業績への影響は限定的であるとの仮定のもと、以下の会計上の見積りを行っております。
なお、連結財務諸表作成時点において入手可能な情報に基づいた最善の見積りを行っているものの、新型コロナウイルス感染拡大による影響は不確定要素が多く、感染状況や経済環境への影響が変化した場合には、最善の見積りを行った結果としての見積もられた金額と事後的な結果との間に乖離が生じる可能性があります。
・固定資産の減損処理
当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定に当たっては慎重に検討しておりますが、事業計画や市場環境の変化により、その見積り額の前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、減損処理が必要となる可能性があります。
・繰延税金資産
繰延税金資産は入手可能な証拠に基づいて将来の回収可能性を十分に検討し回収可能な額を計上しております。繰延税金資産の全部又は一部を将来回収できないと判断した場合、当該判断を行った期間に繰延税金資産の調整額を費用として計上いたします。同様に計上金額の純額を上回る繰延税金資産を今後回収できると判断した場合、繰延税金資産への調整により当該判断を行った期間に利益を増加させることになります。
・退職給付費用
確定給付費用及び確定給付制度債務は、割引率、退職率及び死亡率など年金数理計算上の基礎率に基づき見積もっております。数理計算上の基礎率や計算方法は適切であると考えておりますが、基礎率の変動が確定給付費用及び確定給付制度債務に重要な影響を及ぼします。
なお当社及び一部の連結子会社の割引率は高格付けの社債の利回りに基づき決定しております。
・有価証券及び金融商品
流動資産及び投資その他の資産に計上している有価証券は、当社の保有目的に基づき売買目的有価証券、満期保有目的の債券、子会社・関連会社株式及びその他有価証券に分類し会計処理をしております。市場性のある有価証券については市場価格を、市場性のない有価証券については1株当たり純資産額などを考慮した価格を公正価値として評価しており、公正価値の評価は合理的であると判断しております。
② 当連結会計年度の経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
15ページ 3[経営者による財政状態、経営成績及びキャシュ・フローの状況の分析]
(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況をご参照ください。
③ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
15ページ 3[経営者による財政状態、経営成績及びキャシュ・フローの状況の分析]
(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況をご参照ください。
④ 経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況
当社グループは2019年3月期から2021年3月期までの中期経営計画「総・想・創」(そう・そう・そう)に基づき、「収益力の強化」「成長力の推進」「株主価値向上」を基本方針とした諸施策を実施しております。「収益力の強化」につきましては、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)の受注強化を図るとともに、環境関連製品や災害復興関連製品など付加価値の高い製品の開発に取り組みました。またアニメ映画とのタイアップなど各種媒体を通じて当社グループ及び製品の認知度向上に努めました。また連結子会社の兵庫ナカバヤシ株式会社を吸収合併することにより生産面での採算性の向上に取り組みました。「成長力の推進」につきましては、シール・ラベル事業などの成長分野の事業が拡大いたしました。また寝具(主にベッド)のネット通販などの新事業も堅調に推移いたしました。「株主価値向上」につきましては、成長分野の事業への積極的な投資を実施するとともに、配当性向も30%以上を維持いたしました。
2020年3月期の連結目標数値の達成状況につきましては、売上高は目標650億円に対して653億9百万円(達成率100.5%)、経常利益は目標36億円に対して27億36百万円(達成率76.0%)、経常利益率は目標5.5%に対して4.2%(達成率76.4%)、ROEは目標8.2%に対して6.6%(達成率80.5%)となりました。
売上高につきましてはBPOの受注が順調に推移したことによりビジネスプロセスソリューション事業で9億72百万円増加、また連結子会社の株式会社ビックスリーがフルに寄与したためコンシューマコミュニケーション事業で4億37百万円増加したことにより全体では前期比2.0%の増収となり、目標数値も達成いたしました。利益面につきましては、エネルギー事業においてバイオマス発電の設備の一部故障のため稼働が一時停止したことにより原価率が予想以上に上昇したこと、またコンシューマコミュニケーション事業においては人件費や荷造運賃などの販売費及び一般管理費が予想以上に増加したこと、さらににんにく栽培などの農業事業の採算が予想を下回ったことなどから全体の経常利益、経常利益率及びROEは目標数値を下回りました。
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、雇用・所得環境の改善を背景に景気は緩やかな回復基調で推移しておりましたが、米中貿易摩擦や英国のEU離脱などの影響による世界経済の不確実性に加え、期末にかけては新型コロナウイルス感染拡大による経済活動の停滞など先行きは一層不透明な状況となっております。
このような状況のもと、当社グループは中期経営計画「総・想・創」(そう・そう・そう)(2019年3月期~2021年3月期)に基づき、「収益力の強化」「成長力の推進」「株主価値向上」を基本方針とし、「ナカバヤシからの6つの約束」を目標として掲げ、その達成に向けた諸施策を実施してまいりました。
当連結会計年度において、受注部門では「こまったを良かったに」をスローガンに、ビジネスプロセスにおける様々な課題を解決すべく顧客特性に応じた提案、サービスの強化に取り組んだ結果、データプリントサービスをはじめとしたBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)部門が順調に推移いたしました。また2019年10月1日に製造子会社の兵庫ナカバヤシ株式会社を当社に吸収合併し一層の効率化を図り採算性の向上に取り組みました。製品販売部門では、前期M&Aにより連結子会社となった、寝具(主にベッド)のネット通販を営む株式会社ビックスリーの業績がフルに寄与いたしました。オフィス家具に加えネット販売の商品の拡充により業容の拡大に取り組みました。またメディア、広告媒体、各種イベント等を通じての発信力を強化し、商品の認知度向上、新たなブランドの確立に努めました。
この結果、当社グループにおける当連結会計年度の売上高は、前年同期比2.0%増の653億9百万円となりました。利益面では販売費及び一般管理費が増加しましたが、原価率の低下により、営業利益は23億46百万円(前年同期比12.3%増)、経常利益は27億36百万円(前年同期比10.9%増)となりました。
また、特別利益は投資有価証券売却益98百万円など合計で1億18百万円を計上し、特別損失は減損損失1億69百万円、関係会社株式評価損1億22百万円など合計で3億36百万円を計上いたしました。この結果、法人税等税負担調整後の親会社株主に帰属する当期純利益は15億61百万円(前年同期比0.3%減)となりました。
なお、新型コロナウイルス感染拡大により期末にかけて新規顧客の開拓、海外販路の拡大、新製品のPRや販売などの営業活動において制約を受けるなど影響を受けました。このような状況は今後とも一定期間続くものと想定しておりますが、感染が収束した後は、営業活動も正常化し感染拡大前の状況に戻ると考えております。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
[ビジネスプロセスソリューション事業]
BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)業務は官公庁や民間企業からの受注が順調に推移し、シール印刷、ラベル紙などの売上高も増加いたしました。連結子会社の日本通信紙株式会社は2019年12月に印西BPOセンター(同社柏IPセンターを移転)を新設し、主に資格検定試験や大学入試関連の管理運営、自治体向け各種通知物の管理・発送、コールセンターの設置・運営などの受託強化を図りました。図書館ソリューション業務は引き続き公共図書館の指定管理、アウトソーシング業務、書籍移動などの受注拡大に努めました。法人向け手帳は年玉手帳の廃止や減少が進んでおり、受注冊数は減少いたしました。なお、新しい取り組みとして「脱プラ」対策を検討している企業向けに紙ストローなど環境関連製品の生産、販売を開始いたしました。
この結果、当事業の売上高は361億24百万円(前年同期比2.8%増)、営業利益は11億10百万円(前年同期比76.2%増)となりました。
[コンシューマーコミュニケーション事業]
ノートはロジカルノートの新CMや劇場アニメとのタイアップにより認知度向上に努めるとともに、新デザインを投入するなど拡販を図りました。アルバムは画像専用ストレージアプリ「Fueru アルバム」の機能、サービスを順次拡充しており、ユーザーの拡大に努めました。また旅行ガイドブック「ことりっぷ」とコラボしたステーショナリーや高級筆記具ブランド「TACCIA」からは「浮世絵インク」8色を新発売いたしました。さらにプラスチック使用量を約30%削減したペンスタンドなどの「エシカル商品」の開発、販売も開始いたしました。アルバム、ステーショナリー関連商品の売上高は店頭市場の低迷により減少いたしましたが、PC関連商品やセキュリティ関連商品は堅調に推移いたしました。
この結果、当事業の売上高は201億29百万円(前年同期比2.2%増)、営業利益は8億73百万円(前年同期比13.9%減)となりました。
[オフィスアプライアンス事業]
シュレッダは官公庁、大手民間企業などを中心に引き続き受注獲得に努めるとともに、メンテナンス契約や機密文書回収ボックスの販売に注力いたしました。また静かな環境で使用できるノイズレスタイプのパーソナルシュレッダを新発売いたしました。金融機関などの支店統廃合や窓口業務の縮小などの影響もあり、買い替え需要も低調で売上高は減少いたしました。オフィス家具は木製家具が低迷したものの、商品の拡充や提案営業の強化により売上高は堅調に推移いたしました。また病院向けカルテワゴンなどのメディカル商品の販売も堅調に推移いたしました。
この結果、当事業の売上高は74億23百万円(前年同期比0.9%減)、営業利益は4億49百万円(前年同期比3.8%減)となりました。
[エネルギー事業]
太陽光発電は概ね計画通り稼働いたしましたが、連結子会社の松江バイオマス発電株式会社が営む木質バイオマス発電については、設備の一部故障により稼働が一時停止したことが影響して売上高、営業利益は減少いたしました。
この結果、当事業の売上高は15億2百万円(前年同期比6.5%減)、営業利益は1億75百万円(前年同期比26.0%減)となりました。
[その他]
野菜プラント事業及びにんにくファーム事業等であり、売上高は1億29百万円(前年同期比15.1%増)、営業損失は64百万円(前年同期営業損失26百万円)となりました。
財政状態の分析は、次のとおりであります。
[資産]
流動資産は、前連結会計年度末に比べて21百万円減少し、270億12百万円となりました。これは現金及び預金が5億47百万円、電子記録債権(流動資産の「その他」)が72百万円、仕掛品が62百万円それぞれ増加しましたが、受取手形及び売掛金が6億82百万円、未収入金(流動資産の「その他」)が25百万円それぞれ減少したことなどによります。
固定資産は、前連結会計年度末に比べて5億63百万円増加し、287億70百万円となりました。これは投資有価証券が5億65百万円減少しましたが、建物及び構築物が10億85百万円増加したことなどによります。
この結果、総資産は前連結会計年度末に比べて5億42百万円増加し、557億82百万円となりました。
[負債]
流動負債は、前連結会計年度末に比べて10億27百万円減少し、175億31百万円となりました。これは短期借入金が5億7百万円、未払金が3億78百万円、支払手形及び買掛金が1億23百万円それぞれ減少したことなどによります。
固定負債は、前連結会計年度末に比べて7億80百万円増加し、121億44百万円となりました。これは繰延税金負債が51百万円、長期リース債務(固定負債の「その他」)が32百万円それぞれ減少しましたが、長期借入金が8億81百万円増加したことなどによります。
[純資産]
純資産合計は、前連結会計年度末に比べて7億89百万円増加し、261億6百万円となりました。これはその他有価証券評価差額金が2億66百万円減少しましたが、利益剰余金が9億95百万円増加したことなどによります。
この結果、自己資本比率は43.2%となり、前連結会計年度末に比べて0.8ポイント上昇いたしました。
② キャッシュ・フローの状況
(1)キャッシュ・フロー及び流動性の状況
営業活動によるキャッシュ・フローは、38億78百万円の収入(前年同期比12億46百万円収入増)となりました。主な内訳として、収入については、税金等調整前当期純利益25億18百万円、減価償却費16億17百万円、売上債権の減少額5億96百万円であり、支出については、法人税等の支払額9億円、仕入債務の減少額1億30百万円、投資有価証券売却益98百万円、退職給付に係る負債の減少額89百万円等であります。
投資活動によるキャッシュ・フローは、30億63百万円の支出(前年同期比11億38百万円支出増)となりました。主な内訳として、収入については、投資有価証券の売却による収入1億61百万円、支出については、有形固定資産の取得による支出30億84百万円、無形固定資産の取得による支出95百万円、投資有価証券の取得による支出51百万円等であります。
財務活動によるキャッシュ・フローは、2億66百万円の支出(前年同期比9億73百万円の支出減)となりました。主な内訳は、長期借入れによる収入42億30百万円、長期借入金の返済による支出31億55百万円、短期借入金の減少額7億円等であります。
この結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は前連結会計年度末より5億47百万円増加し、68億6百万円となりました。
(2)キャッシュ・フローの配分と資本政策
営業キャッシュ・フローの配分については財務基盤の確立を目指しつつ、企業価値向上に資する投資を積極的に行うとともに、株主還元に配慮した適正配分に努めてまいります。
事業への配分については紙器および紙製包材事業、BPO事業、環境配慮型製品や防災復興関連製品の開発など収益力の高い事業や成長力のある新規事業への投資を安定的かつ継続的に実施いたします。
株主還元については安定的な配当の維持並びに経営基盤の強化と今後の事業展開を勘案した上で、この両者をバランスよく回転させることを基本方針としております。連結配当性向30%~40%を維持してまいります。
(3)資金調達の方針
資金調達については、円滑な事業活動に必要なレベルの流動性の確保と財務の安全性維持を基本方針としており、主として銀行、生保からの短期及び長期借入金により資金調達を行っております。子会社については原則として外部からの資金調達を行わず、グループファイナンスを活用し、資金調達の一元化により資金の効率化及び流動性の確保を図っています。また事業展開に伴う資金需要に対する機動的な対応を図るため十分な現金同等物を保有しております。収益力の強化、CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)の短縮及び資産の効率化・有効活用に取り組み、有利子負債の圧縮を図ってまいります。
③ 生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 生産高(百万円) | 前年同期比(%) |
ビジネスプロセスソリューション事業 | 24,415 | 98.1 |
コンシューマーコミュニケーション事業 | 6,754 | 95.0 |
オフィスアプライアンス事業 | 2,405 | 86.9 |
エネルギー事業 | 1,502 | 93.5 |
その他 | 131 | 139.5 |
合計 | 35,208 | 96.5 |
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 金額は販売価格によっております。
3 上記金額には、消費税等は含まれておりません。
b. 受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
なお、受注生産を行っている事業はビジネスプロセスソリューション事業であり、主なものは図書製本、法人向け手帳、データプリントサービス等であります。一方、コンシューマーコミュニケーション事業、オフィスアプライアンス事業、エネルギー事業及びその他は、見込み生産であり、受注生産の割合が僅少である事業、または、提供するサービスの性格上、受注実績の記載に馴染まない事業のため、記載は省略しております。
セグメントの名称 | 受注高(百万円) | 前年同期比(%) | 受注残高(百万円) | 前年同期比(%) |
ビジネスプロセスソリューション 事業 | 37,375 | 104.1 | 3,767 | 129.2 |
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 上記金額には、消費税等は含まれておりません。
c. 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 販売高(百万円) | 前年同期比(%) |
ビジネスプロセスソリューション事業 | 36,124 | 102.8 |
コンシューマーコミュニケーション事業 | 20,129 | 102.2 |
オフィスアプライアンス事業 | 7,423 | 99.1 |
エネルギー事業 | 1,502 | 93.5 |
その他 | 129 | 115.1 |
合計 | 65,309 | 102.0 |
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 当連結会計年度における相手先別の販売実績は、総販売実績に対する割合が100分の10未満の相手先のみであるため、記載を省略しております。
3 上記金額には、消費税等は含まれておりません。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。連結財務諸表の作成にあたっては、会計上の見積りを行う必要があり、特に以下の事項は、経営者の会計上の見積りの判断が財政状態及び経営成績に重要な影響を及ぼすと考えております。
新型コロナウイルス感染症の影響により在宅勤務などの機会が定着し多様な働き方が進展することに伴い、オフィス用品などの需要は減少することが予想されますが、個人においては家庭での仕事環境の整備が必要になってくると思われます。また官公庁や民間企業ではアウトソーシングする業務が増え、学校教育や図書館などの再開によりステーショナリー製品や図書館業務の需要も改善されると思われます。
このように当社グループ事業への影響は、事業によってその影響や程度が異なるものの、概ね1年程度で回復すると見込んでおり、当社グループの業績への影響は限定的であるとの仮定のもと、以下の会計上の見積りを行っております。
なお、連結財務諸表作成時点において入手可能な情報に基づいた最善の見積りを行っているものの、新型コロナウイルス感染拡大による影響は不確定要素が多く、感染状況や経済環境への影響が変化した場合には、最善の見積りを行った結果としての見積もられた金額と事後的な結果との間に乖離が生じる可能性があります。
・固定資産の減損処理
当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定に当たっては慎重に検討しておりますが、事業計画や市場環境の変化により、その見積り額の前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、減損処理が必要となる可能性があります。
・繰延税金資産
繰延税金資産は入手可能な証拠に基づいて将来の回収可能性を十分に検討し回収可能な額を計上しております。繰延税金資産の全部又は一部を将来回収できないと判断した場合、当該判断を行った期間に繰延税金資産の調整額を費用として計上いたします。同様に計上金額の純額を上回る繰延税金資産を今後回収できると判断した場合、繰延税金資産への調整により当該判断を行った期間に利益を増加させることになります。
・退職給付費用
確定給付費用及び確定給付制度債務は、割引率、退職率及び死亡率など年金数理計算上の基礎率に基づき見積もっております。数理計算上の基礎率や計算方法は適切であると考えておりますが、基礎率の変動が確定給付費用及び確定給付制度債務に重要な影響を及ぼします。
なお当社及び一部の連結子会社の割引率は高格付けの社債の利回りに基づき決定しております。
・有価証券及び金融商品
流動資産及び投資その他の資産に計上している有価証券は、当社の保有目的に基づき売買目的有価証券、満期保有目的の債券、子会社・関連会社株式及びその他有価証券に分類し会計処理をしております。市場性のある有価証券については市場価格を、市場性のない有価証券については1株当たり純資産額などを考慮した価格を公正価値として評価しており、公正価値の評価は合理的であると判断しております。
② 当連結会計年度の経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
15ページ 3[経営者による財政状態、経営成績及びキャシュ・フローの状況の分析]
(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況をご参照ください。
③ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
15ページ 3[経営者による財政状態、経営成績及びキャシュ・フローの状況の分析]
(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況をご参照ください。
④ 経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況
当社グループは2019年3月期から2021年3月期までの中期経営計画「総・想・創」(そう・そう・そう)に基づき、「収益力の強化」「成長力の推進」「株主価値向上」を基本方針とした諸施策を実施しております。「収益力の強化」につきましては、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)の受注強化を図るとともに、環境関連製品や災害復興関連製品など付加価値の高い製品の開発に取り組みました。またアニメ映画とのタイアップなど各種媒体を通じて当社グループ及び製品の認知度向上に努めました。また連結子会社の兵庫ナカバヤシ株式会社を吸収合併することにより生産面での採算性の向上に取り組みました。「成長力の推進」につきましては、シール・ラベル事業などの成長分野の事業が拡大いたしました。また寝具(主にベッド)のネット通販などの新事業も堅調に推移いたしました。「株主価値向上」につきましては、成長分野の事業への積極的な投資を実施するとともに、配当性向も30%以上を維持いたしました。
2020年3月期の連結目標数値の達成状況につきましては、売上高は目標650億円に対して653億9百万円(達成率100.5%)、経常利益は目標36億円に対して27億36百万円(達成率76.0%)、経常利益率は目標5.5%に対して4.2%(達成率76.4%)、ROEは目標8.2%に対して6.6%(達成率80.5%)となりました。
売上高につきましてはBPOの受注が順調に推移したことによりビジネスプロセスソリューション事業で9億72百万円増加、また連結子会社の株式会社ビックスリーがフルに寄与したためコンシューマコミュニケーション事業で4億37百万円増加したことにより全体では前期比2.0%の増収となり、目標数値も達成いたしました。利益面につきましては、エネルギー事業においてバイオマス発電の設備の一部故障のため稼働が一時停止したことにより原価率が予想以上に上昇したこと、またコンシューマコミュニケーション事業においては人件費や荷造運賃などの販売費及び一般管理費が予想以上に増加したこと、さらににんにく栽培などの農業事業の採算が予想を下回ったことなどから全体の経常利益、経常利益率及びROEは目標数値を下回りました。