有価証券報告書-第69期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)

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2019/06/21 11:04
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(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、企業収益や雇用・所得環境の改善を背景に、景気は緩やかな回復基調で推移いたしました。一方で、米中間の貿易摩擦の激化、英国のEU離脱問題、中国経済の減速による世界経済の不確実性や原材料価格の高騰など依然先行き不透明な状況が続いております。
このような状況のもと、当社グループは中期経営計画「総・想・創」(そう・そう・そう)(2019年3月期~2021年3月期)に基づき、「収益力の強化」「成長力の推進」「株主価値向上」を基本方針とし、「ナカバヤシからの6つの約束」を目標として掲げ、その達成に向けた諸施策を実施してまいりました。
当連結会計年度において、受注部門では前期TOBにより連結子会社となった国際チャート株式会社の業績は順調に推移し、今期フルに寄与いたしました。データプリントサービスをはじめ、シール印刷、ラベル紙、記録紙、検針紙等の事業分野のシェア拡大に注力いたしました。また、「こまったを良かったに」をスローガンに、ビジネスプロセスにおける様々な課題を解決すべく、顧客特性に応じた提案、サービスの強化に取り組みました。製品販売部門では、連結子会社のカグクロ株式会社が2019年1月にM&Aにより寝具(主にベッド)のネット通販を営む株式会社ビックスリーの議決権の100%を取得し連結子会社としました。オフィス家具に加えネット販売の商品の拡充により業容の拡大に取り組みました。また、メディア・広告媒体を通じて商品の認知度向上、筆記具などの新たなブランドの確立、北米・アジアでの販路拡大に努めました。
この結果、当社グループにおける当連結会計年度の売上高は、前年同期比7.5%増の640億54百万円となりました。利益面では原価率の上昇、販売費及び一般管理費の増加により、営業利益は20億89百万円(前年同期比19.5%減)、経常利益は24億66百万円(前年同期比16.7%減)となりました。
また、特別利益は投資有価証券売却益3億34百万円、匿名組合清算益64百万円など合計で4億22百万円を計上し、特別損失は本社建替関連費用93百万円、減損損失40百万円など合計で1億78百万円を計上いたしました。この結果、法人税等税負担調整後の親会社株主に帰属する当期純利益は15億66百万円(前年同期比6.2%減)となりました。
当社グループは市場環境の変化や顧客ニーズの多様性に対応しつつ、M&Aによりグループ会社が増加したことなどからグループ間の情報共有や意思決定のスピードアップを図るなど、経営の効率化、経営資源の最適配分に取り組んでおります。そのために当連結会計年度より従来の7つのセグメント(印刷製本関連事業、ステーショナリー関連事業、環境・オフィス関連事業、デジタルガジェット関連事業、ベビー・メディカル関連事業、発電関連事業、その他)を次の5つのセグメントに再編し、名称も変更いたしました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
なお、当連結会計年度より、報告セグメントとして記載する事業セグメントを変更しており、当連結会計年度の比較・分析は、変更後の区分に基づいております。
[ビジネスプロセスソリューション事業]
旧セグメントの「印刷製本関連事業」及び「その他」に含まれていたウーマンスタッフ株式会社が営む人材派遣業、日本通信紙株式会社が営むアウトソーシング事業を当セグメントに分類しております。
図書館ソリューション部門は公共図書館の指定管理やアウトソーシング事業の受託に注力し、図書製本の新規開拓、受注単価の改定に取り組みましたが、製本冊数の減少が続いており依然厳しい状況で推移いたしました。手帳部門は年玉手帳の受注冊数が若干減少しましたが、選別受注により採算性の向上に努めました。データプリントサービス部門は主に官公庁からのBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)業務の受注が順調に推移し売上高は増加いたしましたが、原価率の上昇等により採算性は低下いたしました。なお、シール印刷などを営む株式会社八光社の業績は順調に推移いたしました。
この結果、当事業の売上高は351億51百万円(前年同期比14.6%増)、営業利益は6億29百万円(前年同期比4.5%減)となりました。
[コンシューマーコミュニケーション事業]
旧セグメントの「ステーショナリー関連事業」、「デジタルガジェット関連事業」及び「ベビー・メディカル関連事業」のうちリーマン株式会社が営むチャイルドシート等のベビー関連事業を当セグメントに分類しております。
ノートは各種新柄を投入し拡販に努めるとともに、新CMの制作や劇場アニメとのコラボなど、商品の認知度向上に取り組みました。また、紙箱型収納用品「ライフスタイルツール」の新商品や高級筆記具ブランド「TACCIA」の万年筆、インクなどを発売し、商品の拡充を図りました。しかし、店頭市場の低迷によりアルバム、ステーショナリー関連商品、チャイルドシートなどの売上高は減少いたしました。一方、スマホ・タブレット関連商品やホームセキュリティ関連商品の売上高は堅調に推移いたしました。なお、今期より連結子会社となった株式会社ビックスリーの業績が第4四半期より寄与いたしました。
この結果、当事業の売上高は196億92百万円(前年同期比1.9%減)、営業利益は10億15百万円(前年同期比26.7%減)となりました。
[オフィスアプライアンス事業]
旧セグメントの「環境・オフィス関連事業」及び「ベビー・メディカル関連事業」のうちメディカル関連事業を当セグメントに分類しております。
シュレッダは引き続き官公庁、金融機関、民間企業など、大口ユーザーからの受注拡大に注力いたしましたが、買い替えニーズも低調で売上高は減少いたしました。オフィス家具はショールームや商品の拡充、価格改定などにより売上高は増加いたしましたが、輸入商品の価格や荷造運賃の上昇などにより採算性は低下いたしました。病院向けの点滴スタンドやカルテワゴンなどのメディカル商品の販売は堅調に推移いたしました。
この結果、当事業の売上高は74億91百万円(前年同期比3.3%増)、営業利益は4億67百万円(前年同期比15.4%減)となりました。
[エネルギー事業]
旧セグメントの「発電関連事業」を当セグメントに名称を変更しております。
太陽光発電及び連結子会社の松江バイオマス発電株式会社が営む木質バイオマス発電であり、概ね計画通り稼働いたしました。
この結果、当事業の売上高は16億7百万円(前年同期比4.9%増)、営業利益は2億37百万円(前年同期比18.8%増)となりました。
[その他]
旧セグメントの「その他」に含まれていた兵庫ナカバヤシ株式会社が営む野菜プラント事業及びにんにくファーム事業等を当セグメントに分類し、売上高は1億12百万円(前年同期比22.7%増)、営業損失は26百万円(前年同期営業損失38百万円)となりました。
財政状態の分析は、次のとおりであります。
なお、「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」(企業会計基準第28号 平成30年2月16日)等を当連結会計年度の期首から適用しており、財政状態の状況については、当該会計基準等を遡って適用した後の数値で前連結会計年度との比較・分析を行っております。
[資産]
流動資産は、前連結会計年度末に比べて2億94百万円減少し、270億33百万円となりました。これは商品及び製品が5億92百万円、電子記録債権(流動資産の「その他」)が2億18百万円、仕掛品が76百万円、前払費用(流動資産の「その他」)が41百万円それぞれ増加しましたが、受取手形及び売掛金が7億53百万円、現金及び預金が5億51百万円それぞれ減少したことなどによります。
固定資産は、前連結会計年度末に比べて1億40百万円増加し、282億6百万円となりました。これは投資有価証券が5億17百万円減少しましたが、建設仮勘定が6億6百万円、工具、器具及び備品(有形固定資産の「その他」)が1億10百万円それぞれ増加したことなどによります。
この結果、総資産は前連結会計年度末に比べて1億53百万円減少し、552億40百万円となりました。
[負債]
流動負債は、前連結会計年度末に比べて10億68百万円減少し、185億59百万円となりました。これは未払金が1億53百万円、仮受金(流動負債の「その他」)が65百万円、設備関係支払手形(流動負債の「その他」)が56百万円それぞれ増加しましたが、短期借入金が8億25百万円、支払手形及び買掛金が5億45百万円それぞれ減少したことなどによります。
固定負債は、前連結会計年度末に比べて2億75百万円増加し、113億63百万円となりました。これは長期未払金(固定負債の「その他」)が2億82百万円減少しましたが、長期借入金が4億24百万円、長期リース債務(固定負債の「その他」)が1億53百万円それぞれ増加したことなどによります。
[純資産]
純資産合計は、前連結会計年度末に比べて6億38百万円増加し、253億17百万円となりました。これはその他有価証券評価差額金が3億55百万円減少しましたが、利益剰余金が9億92百万円増加したことなどによります。
この結果、自己資本比率は42.4%となり、前連結会計年度末に比べて1.1ポイント上昇いたしました。
② キャッシュ・フローの状況
当社グループの資金状況は、営業活動によるキャッシュ・フローでは、 26億31百万円の収入があり、前連結会計年度より2億56百万円の収入減少となりました。仕入債務の減少額が5億28百万円となり、前連結会計年度に比べ5億28百万円減少したことが、収入減少の要因となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローでは、19億25百万円の支出があり、前連結会計年度より9億27百万円の支出増加となりました。有形固定資産の取得による支出が16億83百万円となり、前連結会計年度に比べ6億21百万円増加したことが、支出増加の要因となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローでは、 12億40百万円の支出があり、前連結会計年度より78百万円の支出増加となりました。長期借入れによる収入が35億42百万円となり、前連結会計年度に比べ8億81百万円減少したことが、支出増加の要因となりました。
これらの活動の結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は前連結会計年度末より5億35百万円減少し、62億58百万円となりました。
③ 生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称生産高(百万円)前年同期比(%)
ビジネスプロセスソリューション事業24,889112.6
コンシューマーコミュニケーション事業7,10991.2
オフィスアプライアンス事業2,768106.5
エネルギー事業1,607104.9
その他94106.9
合計36,467106.9

(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 金額は販売価格によっております。
3 上記金額には、消費税等は含まれておりません。
b. 受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
なお、受注生産を行っている事業はビジネスプロセスソリューション事業であり、主なものは図書製本、手帳及びデータプリントサービス等の紙製品であります。一方、コンシューマーコミュニケーション事業、オフィスアプライアンス事業、エネルギー事業及びその他は、見込み生産であり、受注生産の割合が僅少である事業、または、提供するサービスの性格上、受注実績の記載に馴染まない事業のため、記載は省略しております。
セグメントの名称受注高(百万円)前年同期比(%)受注残高(百万円)前年同期比(%)
ビジネスプロセスソリューション
事業
35,891104.92,915109.3

(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 上記金額には、消費税等は含まれておりません。
c. 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称販売高(百万円)前年同期比(%)
ビジネスプロセスソリューション事業35,151114.6
コンシューマーコミュニケーション事業19,69298.1
オフィスアプライアンス事業7,491103.3
エネルギー事業1,607104.9
その他112122.7
合計64,054107.5

(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 当連結会計年度における相手先別の販売実績は、総販売実績に対する割合が100分の10未満の相手先のみであるため、記載を省略しております。
3 上記金額には、消費税等は含まれておりません。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。これらの連結財務諸表の作成にあたって、当社経営陣は、特に以下の重要な会計方針が当社の重要な判断と見積りに大きな影響を及ぼすと考えております。
・営業債権
営業債権は、貸借対照表日以前の売上から生じた債務者に対する正当な債権であり、貸借対照表日後に出荷したもの、委託又は試用販売のために出荷したもの等に係る債権は含めておりません。また、貸借対照表日後に発生すると予想される貸倒損失に対して適正な引当金を計上しております。しかし顧客の財務状態が悪化し、その支払能力が低下した場合、追加引当が必要となる可能性があります。
・棚卸資産
棚卸資産は、正味売却価額が帳簿価額よりも低下しているときには、帳簿価額を正味売却価額まで切下げております。貸借対照表日現在の棚卸資産で、貸借対照表計上額に比べ現在までにその時価が著しく下落しているものはありません。実際の将来需要又は市場状況が当社グループ経営陣の見積りより悪化した場合、追加の評価減が必要となる可能性があります。
・繰延税金資産
繰延税金資産に関して将来の回収可能性を十分に検討し回収可能な額を計上しております。繰延税金資産の全部又は一部を将来回収できないと判断した場合、当該判断を行った期間に繰延税金資産の調整額を費用として計上します。同様に計上金額の純額を上回る繰延税金資産を今後回収できると判断した場合、繰延税金資産への調整により当該判断を行った期間に利益を増加させることになります。
・退職給付費用
退職給付費用及び債務は、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されております。数理計算上の基礎率や計算方法は、当社の状況から見て適切なものであると考えておりますが、割引率の低下や運用利回りの悪化は当社グループの退職給付費用に対して悪影響を及ぼします。
・有価証券及び金融商品
流動資産及び投資その他の資産に計上している有価証券は、当社の保有目的に基づき売買目的有価証券、満期保有目的の債券、子会社・関連会社株式及びその他有価証券に適切に分類し、会計処理しております。
また、金融商品の時価の算定方法及び重要な仮定は、合理的であると判断しております。
・無形固定資産
無形固定資産として計上している社内利用のソフトウエア費用は、将来の収益獲得又は費用削減が確実なものであると判断しております。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
12ページ 3[経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析] (1)経営成績等の状況の概要をご参照ください。
③ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループでは、生産性向上を図るために機械設備等の継続的な投資が必要となります。その資金につきましては、借入金及び自己資金で賄っております。収益力の強化、キャッシュ・コンバージョン・サイクルの短縮及び資産の効率化・有効活用に取り組み、有利子負債の圧縮を図ってまいります。
④ 経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況
当社グループは2019年3月期から2021年3月期までの中期経営計画「総・想・創」(そう・そう・そう)に基づき、「収益力の強化」「成長力の推進」「株主価値の向上」を基本方針とした諸施策を実施しております。「収益力の強化」につきましては、データプリントサービスなどのアウトソーシング事業の受託強化、筆記具・インクなどの新たなブランドの確立、ライフスタイルツールなど高付加価値商品の開発に取り組みました。また自動化推進室を設置し生産の効率化を図るとともに、グループ会社間での生産協力や共同配送などコストの低減に取り組みました。「成長力の推進」につきましては、M&Aにより寝具(主にベッド)のネット通販を営む株式会社ビックスリーを連結子会社として、商品及び販路の拡大を図りました。また近年新規参入したシール・ラベル事業の拡大、にんにくなどの農業分野も進展いたしました。「株主価値の向上」につきましては、自己株式の購入など機動的な資本政策を実施するとともに配当性向30%以上を維持いたしました。また積極的なIR活動もあり個人株主の増加につながりました。
2019年3月期の目標数値(連結)の達成状況につきましては、売上高は目標635億円に対して640億円(達成率100.9%)、経常利益は31億70百万円の目標に対して24億66百万円(達成率77.8%)、経常利益率5.0%の目標に対して3.9%(達成率78.0%)、ROEは7.7%の目標に対して6.8%(達成率88.3%)となりました。売上高は目標数値を達成いたしましたが、利益面は材料費の高騰や人件費、荷造運賃などが予想以上に上昇し目標数値を下回りしました。