有価証券報告書-第77期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/22 13:20
【資料】
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【項目】
167項目
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社および持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要ならびに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
(1) 経営成績
当連結会計年度の業績におきましては、半導体市場が活況であった前連結会計年度に比べ、米中貿易摩擦や韓国向け輸出管理の運用の見直しなどを背景に半導体液晶部門の輸出販売が減少したことにより、売上高は337億29百万円(前期比12.1%減)となりました。
利益面におきましては、主要原材料の無水フッ酸価格が中国市場の需給等の影響により、前連結会計年度に比べ低下したものの、売上高減少の影響により、営業利益は24億7百万円(同31.7%減)となりました。また、原材料購入における為替リスクのヘッジを目的として取り組んでいるデリバティブ取引について、前連結会計年度末に計上したデリバティブ評価益3億5百万円が、当連結会計年度末では3百万円と縮小したことにより、経常利益は23億7百万円(同39.4%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は19億24百万円(同18.2%減)となりました。
なお、新型コロナウイルス感染症の拡大について、当連結会計年度末現在の当社グループ各拠点における生産、販売体制に大きな影響はなく、当連結会計年度における業績への影響も軽微に留まっています。
当社グループは第2次中期経営計画を策定しており、売上高・営業利益を経営上の目標を達成するための客観的な指標として掲げています。当連結会計年度においては、高純度薬品事業について米中貿易摩擦や韓国向け輸出管理の運用の見直し等の影響により、半導体液晶部門の出荷量が減少し、電池部門においてもリチウムイオン二次電池用電解質の出荷量減少やリチウムイオン二次電池用添加剤の販売単価低下等の影響により、売上高が当初計画を下回りました。
経営成績に重要な影響を与える要因については、「2事業等のリスク」に記載しています法的規制リスクにおいて、韓国向け輸出管理の運用の見直しの影響により高純度薬品事業における半導体液晶部門の出荷量が減少し、当連結会計年度の売上高および利益が前年同期比で減少する結果となりました。このような事業環境の変化に対応し、以前より進めているアジア、北米、欧州など他地域への販売拡大への取り組みを一段と強化し、グローバルな面での供給体制・販売体制の改善を進め、事業リスクの軽減に努めてまいります。
セグメントごとの経営業績は、次のとおりです。
① 高純度薬品
高純度薬品事業につきましては、前連結会計年度と比較して米中貿易摩擦や韓国向け輸出管理の運用の見直しなどを背景に半導体液晶部門の輸出販売が減少し、また電池部門では、リチウムイオン二次電池用電解質の出荷量減少に加え、リチウムイオン二次電池用添加剤の販売価格が低下したことにより売上高が減少しました。一方で、歯磨き粉用途のフッ化スズや、原子力発電所向けの濃縮ホウ酸の出荷が増加するなど、その他分野において販売が拡大している製品があるものの、結果として売上高は290億58百万円(前期比14.0%減)となりました。
利益面では、主要原材料の無水フッ酸価格が前連結会計年度に比べ低下したものの、売上高減少の影響が大きく、営業利益は28億97百万円(同23.4%減)となりました。
なお、主要な部門別の売上高については次のとおりです。
[半導体液晶部門]
半導体用の高純度フッ化物について主に韓国向けの出荷量が減少した結果、売上高は156億87百万円(同21.9%減)となりました。
[電池部門]
リチウムイオン二次電池用電解質の出荷量減少およびリチウムイオン二次電池用添加剤の販売単価が低下した結果、売上高は25億76百万円(同29.0%減)となりました。
② 運輸
運輸事業につきましては、運送関連等の取扱量が前連結会計年度を上回った結果、売上高は44億29百万円(前期比1.1%増)となりました。
利益面では、韓国向けの取扱量減少および減価償却費の増加等により、営業利益は5億2百万円(同30.9%減)となりました。
③ メディカル
メディカル事業につきましては、がん治療法であるホウ素中性子捕捉療法(BNCT)用ホウ素薬剤について、切除不能な局所進行又は局所再発の頭頚部癌を効能・効果として製造販売承認を取得いたしました。費用面では、製造販売承認に伴う申請費用およびBNCTに係る研究開発費を計上した結果、営業損失は10億35百万円(前期は10億51百万円の営業損失)となりました。
④ その他
その他事業につきましては、保険代理業収入等が前連結会計年度を上回った結果、売上高は2億41百万円(前期比7.0%増)、営業利益は36百万円(同14.2%減)となりました。
生産、受注及び販売の実績は、次のとおりです。
① 生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2019年4月1日 至 2020年3月31日)
前年同期比(%)
高純度薬品(百万円)25,01278.0
運輸(百万円)--
メディカル(百万円)--
報告セグメント計(百万円)25,01278.0
その他(百万円)--
合計(百万円)25,01278.0

(注) 1.金額は販売価格によっています。
2.上記の金額には、消費税等は含まれていません。
② 商品仕入実績
当連結会計年度の商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2019年4月1日 至 2020年3月31日)
前年同期比(%)
高純度薬品(百万円)61254.4
運輸(百万円)13271.5
メディカル(百万円)--
報告セグメント計(百万円)62655.4
その他(百万円)84122.2
合計(百万円)71059.2

(注) 1.金額は仕入価格によっています。
2.上記の金額には、消費税等は含まれていません。
③ 受注状況
主として見込み生産を行っているため、該当事項はありません。
④ 販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2019年4月1日 至 2020年3月31日)
前年同期比(%)
高純度薬品
表面処理(百万円)1,52573.3
代替フロン(百万円)4,872134.6
半導体液晶関連(百万円)15,68778.1
半導体装置関連(百万円)44670.5
電池(百万円)2,57671.0
反応触媒(百万円)925102.3
土壌改良剤(百万円)201114.3
その他(百万円)1,835104.1
小計(百万円)28,06985.3
商品(百万円)988112.7
合計(百万円)29,05886.0
運輸(百万円)4,429101.1
メディカル(百万円)--
報告セグメント計(百万円)33,48887.8
その他(百万円)241107.0
合計(百万円)33,72987.9

(注) 1.セグメント間の取引については相殺消去しています。
2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりです。
相手先前連結会計年度
(自 2018年4月1日 至 2019年3月31日)
当連結会計年度
(自 2019年4月1日 至 2020年3月31日)
金額(百万円)割合(%)金額(百万円)割合(%)
丸善薬品産業株式会社8,51222.23,63310.8
三菱ケミカル株式会社3,7819.92,7188.1

3.上記の金額には、消費税等は含まれていません。
(2) 財政状態
当連結会計年度末の総資産合計は532億16百万円となり、前連結会計年度末に比べ22億38百万円減少しました。主な要因は、現金及び預金、受取手形及び売掛金が減少したことによるものです。
セグメントごとの資産は、次のとおりであります。
① 高純度薬品
高純度薬品事業につきましては、当連結会計年度末の総資産は、414億86百万円となり、前連結会計年度と比べ15億14百万円減少しました。主な要因は、減益に伴う営業活動によるキャッシュ・フローの収入減少および法人税等の支払額が増加したことにより、現金及び預金が減少したことによるものです。
② 運輸
運輸部門につきましては、当連結会計年度末の総資産は、94億76百万円となり、前連結会計年度末と比べ2億24百万円増加しました。主な要因は、現金及び預金が増加したことによるものです。
③ メディカル
メディカル部門につきましては、当連結会計年度末の総資産は、22億52百万円となり、前連結会計年度末と比べ10億34百万円減少しました。主な要因は、現金及び預金が減少したことによるものです。
④ その他
その他事業につきましては、当連結会計年度末の総資産は、2億37百万円となり、前連結会計年度末と比べ30百万円増加しました。主な要因は、現金及び預金が増加したことによるものです。
当連結会計年度末の負債合計は、184億87百万円となり、前連結会計年度末に比べ30億48百万円減少しました。主な要因は、税金等調整前当期純利益減少に伴う未払法人税等の減少および支払手形及び買掛金が減少したことによるものです。
当連結会計年度末の純資産合計は、347億29百万円となり、前連結会計年度末に比べ8億10百万円増加しました。主な要因は、利益剰余金が増加したことによるものです。
(3) キャッシュ・フロー
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という)は、前連結会計年度末に比べて11億33百万円増加し、当連結会計年度末は132億91百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は50億36百万円(前期比23億9百万円収入減少)となりました。
主な内訳は、税金等調整前当期純利益22億40百万円、減価償却費32億36百万円、売上債権の減少14億90百万円、仕入債務の減少8億24百万円、未払消費税等の減少1億66百万円、法人税等の支払額18億23百万円などです。売上債権および仕入債務の減少の主な要因については、「3経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1)経営成績 セグメント別経営業績 ①高純度薬品」に記載のとおりです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、31億73百万円(同3億58百万円支出減少)となりました。
主な内訳は、定期預金の払戻による収入20億34百万円、有形固定資産の取得による支出45億47百万円、無形固定資産の取得による支出1億1百万円などです。有形固定資産の取得による支出については、前連結会計年度に引き続き高純度薬品事業に係る半導体液晶部門の生産設備の更新、リチウムイオン二次電池用添加剤の設備増強、また運輸事業における製品運搬用コンテナ等の購入等の設備投資を実施したことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果支出した資金は7億15百万円(同3億93百万円支出増加)となりました。
主な内訳は、長期借入れによる収入39億円、長期借入金の返済による支出39億66百万円、配当金の支払額6億10百万円などです。借入金については、適切な資金確保および健全な財務体質を維持することを目指し、成長維持に必要な設備投資・投融資資金の調達、適正な手元資金水準を鑑み、当連結会計年度においては、短期借入金と長期借入金合わせて76百万円の減少となりました。
(資本の財源及び資金の流動性に係る情報)
当社グループは事業活動を遂行するための適切な資金確保および健全な財務体質を維持することを目指し、安定的な資金調達手段の確保に努めています。成長を維持するために将来必要な運転資金および設備投資・投融資資金は、主として営業活動によるキャッシュ・フローと金融機関からの借入により調達しています。
資金の流動性については、事業規模に応じた適正な手元資金の水準を維持するとともに金融上のリスクに対応するため主要取引銀行とコミットメントライン契約を締結することにより手元流動性を確保しています。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は132億91百万円であり、金融機関との間で総額30億円のコミットメントライン契約を締結しています。本契約に基づくコミットメントラインに対し、当連結会計年度末の借入実行残高はありません。
(4) 連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しています。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益および費用の報告額に影響を及ぼす見積りおよび仮定を用いていますが、これらの見積りおよび仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積りおよび仮定のうち、重要なものは以下のとおりです。
なお、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響に関する会計上の見積りおよび仮定については、連結財務諸表「注記事項(追加情報)」に記載のとおり、当社グループの主力事業である半導体液晶部門では、在宅勤務の広がりに伴うデータセンター向けの半導体需要が増加を見せるなど、最終需要の落ち込みを補うような事業環境の変化も生じており、その影響は限定的であるとの前提の基、以下に記載の繰延税金資産の回収可能性および固定資産の減損の判定における会計上の見積りおよび仮定を決定しています。
① 繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産について、将来の回収可能性が低下した場合に評価性引当額を計上することとしています。評価性引当額の計上に関する必要性を評価するにあたっては、将来の課税所得および慎重かつ実現性の高い継続的な税務計画を検討しますが、繰延税金資産の一部または全部を将来回収できないと判断した場合、当該判断を行った期間に繰延税金資産の調整額を費用として計上します。同様に、計上金額の純額を上回る繰延税金資産を今後実現できると判断した場合は、当該判断を行った期間に繰延税金資産の調整額を収益として計上します。
② 投資の減損
当社グループは、取引関係維持のために取引先や金融機関の株式を保有しています。これらの株式には、価格変動性の高い公開会社の株式と、株価の決定が困難な非公開会社の株式が含まれています。公開会社の株式への投資の場合、期末における時価が帳簿価額に比べ50%以上下落した場合には全て減損処理を行い、30%以上50%未満下落した場合には、過去2年間にわたり時価が帳簿価額と比較し30%以上50%未満の下落となっている場合は減損処理を行っています。また、非公開会社の株式への投資の場合、実質価額(時価純資産価額)が帳簿価額と比較し50%以上低下した場合には全て減損処理を行っています。ただし、時価のない有価証券のうち、子会社・関連会社株式については、事業計画等により回復可能性が裏付けられる場合、減損処理を行わないこととしています。
将来の市況悪化または投資先の業績不振により、現在の帳簿価額に反映されていない損失または帳簿価額の回収不能が生じた場合、評価損の計上が必要となる場合があります。
③ 固定資産の減損
当社グループは、固定資産の減損に係る回収可能性の評価にあたり、主として事業別セグメントを基本単位として資産のグルーピングを行い、収益性が著しく低下した資産グループについて、固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上することとしています。回収可能価額の評価の前提条件には、投資期間を通じた将来の収益性の評価や資本コストなどが含まれますが、これらの前提条件は長期的な見積りに基づくため、将来の当該資産グループを取り巻く経営環境の変化による収益性の変動や市況の変動により、回収可能性を著しく低下させる変化が見込まれた場合、減損損失の計上が必要となる場合があります。