有価証券報告書-第78期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

【提出】
2021/06/25 13:30
【資料】
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【項目】
157項目
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社および持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要ならびに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
(1) 経営成績
当連結会計年度の業績におきましては、半導体液晶部門および原子力関連施設で使用される濃縮ホウ素(ボロン10)の販売増加が寄与したものの、表面処理部門および代替フロン部門の出荷量が減少したことにより、売上高は328億93百万円(前期比2.5%減)となりました。
利益面におきましては、高純度薬品事業では、主要原材料の無水フッ酸価格が、中国市場の需給等の影響により前連結会計年度に比べ低下したことに加え、原子力関連施設で使用される濃縮ホウ素(ボロン10)の販売増加等が利益の増加に寄与しました。メディカル事業では、がん治療法であるホウ素中性子捕捉療法(BNCT)用ホウ素薬剤について、頭頸部癌における販売を開始し売上高を計上するとともに、経費の節減に努めたことにより販売費及び一般管理費が減少し、営業損失が縮小しました。その結果、営業利益は40億81百万円(同69.5%増)、経常利益は40億20百万円(同74.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は29億59百万円(同53.8%増)となりました。
なお、新型コロナウイルス感染症の拡大について、現時点で当社グループ各拠点における生産、販売体制に大きな影響はなく、当連結会計年度における業績への影響も軽微に留まっています。
当社グループは第2次中期経営計画を策定しており、売上高・営業利益を経営上の目標を達成するための客観的な指標として掲げています。売上高について、高純度薬品事業の半導体液晶部門において2020年3月期に韓国向け輸出管理の運用が見直された影響により、韓国向けの出荷量が減少し、当初計画を下回る水準で推移しています。そうした状況を勘案した結果、中期経営計画の最終年度となる2022年3月期の売上高の数値目標を修正いたしました。
経営成績に重要な影響を与える要因については、「2事業等のリスク」に記載しています法的規制リスクにおいて、2020年3月期に韓国向け輸出管理の運用が見直された影響により、高純度薬品事業における半導体液晶部門の韓国向けの出荷量が減少しました。このような事業環境の変化に対応し、国内向けをはじめアジア、北米、欧州など他地域への販売拡大への取り組みを一段と強化し、グローバルな視点で供給体制・販売体制の改善を進めることにより、事業リスクの軽減に努めています。
セグメントごとの経営業績は、次のとおりです。
① 高純度薬品
高純度薬品事業につきましては、韓国向け輸出販売が減少したものの、国内向けおよび台湾をはじめとする韓国以外の地域への販売が増加しました。また、原子力関連施設で使用される濃縮ホウ素(ボロン10)の出荷が主に国内の特定重大事故等対処設備の水源用途で増加しました。一方で表面処理部門および代替フロン部門の出荷量が減少したことにより、売上高は284億4百万円(前期比2.2%減)となりました。
利益面では、原子力関連施設で使用される濃縮ホウ素(ボロン10)の販売増加に加え、半導体液晶部門における国内外向けの出荷量増加および主要原材料である無水フッ酸の価格低下等の要因により、営業利益は42億1百万円(同45.0%増)となりました。
なお、主要な部門の売上高については次のとおりです。
[半導体液晶部門]
国内向けにおいては、当社の主要販売先であるメモリメーカーを中心に投資活動が継続され、高稼働率を維
持したことから出荷量が増加しました。海外向けにおいては、韓国向け輸出管理の運用の見直しの影響により
韓国向けの出荷量は減少したものの、世界的に旺盛な半導体需要を受け、台湾をはじめとする韓国を除く地域
への輸出販売が増加した結果、売上高は162億83百万円(同3.8%増)となりました。
② 運輸
運輸事業につきましては、運送関連等の取扱量が前連結会計年度を下回った結果、売上高は40億69百万円(前期比8.1%減)となりました。
利益面では、前連結会計年度に比べ軽油価格が低下したこと、また、減価償却費が減少したことにより、営業利益は5億93百万円(同18.3%増)となりました。
③ メディカル
メディカル事業につきましては、がん治療法であるホウ素中性子捕捉療法(BNCT)用ホウ素薬剤について、頭頸部癌における販売を開始し売上高を計上するとともに、経費の節減に努めたことにより販売費及び一般管理費が減少した結果、売上高は2億5百万円(前期は計上なし)、営業損失が6億44百万円(前期は10億35百万円の営業損失)となりました。
④ その他
その他事業につきましては、保険代理業収入等が前期を下回った結果、売上高は2億13百万円(前期比11.8%減)、営業利益は26百万円(同25.7%減)となりました。
生産、受注及び販売の実績は、次のとおりです。
① 生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2020年4月1日 至 2021年3月31日)
前年同期比(%)
高純度薬品(百万円)24,20196.8
運輸(百万円)--
メディカル(百万円)683-
報告セグメント計(百万円)24,88499.5
その他(百万円)--
合計(百万円)24,88499.5

(注) 1.金額は販売価格によっています。
2.上記の金額には、消費税等は含まれていません。
② 商品仕入実績
当連結会計年度の商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2020年4月1日 至 2021年3月31日)
前年同期比(%)
高純度薬品(百万円)42769.7
運輸(百万円)756.0
メディカル(百万円)--
報告セグメント計(百万円)43469.4
その他(百万円)5566.3
合計(百万円)49069.0

(注) 1.金額は仕入価格によっています。
2.上記の金額には、消費税等は含まれていません。
③ 受注状況
主として見込み生産を行っているため、該当事項はありません。
④ 販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2020年4月1日 至 2021年3月31日)
前年同期比(%)
高純度薬品
表面処理(百万円)94762.2
代替フロン(百万円)4,09984.1
半導体液晶関連(百万円)16,283103.8
半導体装置関連(百万円)696155.9
電池(百万円)2,36491.8
反応触媒(百万円)85292.1
土壌改良剤(百万円)17586.9
その他(百万円)2,067112.7
小計(百万円)27,48597.9
商品(百万円)91893.0
合計(百万円)28,40497.8
運輸(百万円)4,06991.9
メディカル(百万円)205-
報告セグメント計(百万円)32,68097.6
その他(百万円)21388.2
合計(百万円)32,89397.5

(注) 1.セグメント間の取引については相殺消去しています。
2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりです。
相手先前連結会計年度
(自 2019年4月1日 至 2020年3月31日)
当連結会計年度
(自 2020年4月1日 至 2021年3月31日)
金額(百万円)割合(%)金額(百万円)割合(%)
丸善薬品産業株式会社3,63310.82,2436.8

3.上記の金額には、消費税等は含まれていません。
(2) 財政状態
当連結会計年度末の資産合計は、529億33百万円となり、前連結会計年度末に比べ2億82百万円減少しました。主な要因は、有形固定資産、無形固定資産、投資その他の資産が減少したことによるものです。
セグメントごとの資産は、次のとおりであります。
① 高純度薬品
高純度薬品事業につきましては、当連結会計年度末の総資産は、419億37百万円となり、前連結会計年度と比べ4億51百万円増加しました。主な要因は、増益に伴う営業活動によるキャッシュ・フローの収入が増加したことにより、現金及び預金が増加したことによるものです。
② 運輸
運輸事業につきましては、当連結会計年度末の総資産は、94億81百万円となり、前連結会計年度末と比べ5百万円増加しました。主な要因は、現金及び預金が増加したことによるものです。
③ メディカル
メディカル事業につきましては、当連結会計年度末の総資産は、15億85百万円となり、前連結会計年度末と比べ6億67百万円減少しました。主な要因は、現金及び預金が減少したことによるものです。
④ その他
その他事業につきましては、当連結会計年度末の総資産は、2億43百万円となり、前連結会計年度末と比べ5百万円増加しました。主な要因は、現金及び預金が増加したことによるものです。
当連結会計年度末の負債合計は、161億75百万円となり、前連結会計年度末に比べ23億11百万円減少しました。主な要因は、長期借入金が減少したことによるものです。
当連結会計年度末の純資産合計は、367億58百万円となり、前連結会計年度末に比べ20億29百万円増加しました。主な要因は、利益剰余金が増加したことによるものです。
(3) キャッシュ・フロー
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べて19億54百万円増加し、当連結会計年度末は152億45百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は73億52百万円(前期比23億15百万円収入増加)となりました。
主な内訳は、税金等調整前当期純利益39億66百万円、減価償却費30億39百万円、たな卸資産の減少6億15百万円、補助金の受領額65百万円、保険金の受取額30百万円、法人税等の支払額4億26百万円などです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、24億64百万円(同7億9百万円支出減少)となりました。
主な内訳は、有形固定資産の取得による支出23億91百万円などです。有形固定資産の取得による支出については、高純度薬品事業に係る半導体液晶部門の生産設備の更新、濃縮ホウ素の生産設備更新、また運輸事業における製品運搬用コンテナ等の購入等の設備投資を実施したことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果支出した資金は30億4百万円(同22億89百万円支出増加)となりました。
主な内訳は、長期借入金の返済による支出23億16百万円、自己株式の取得による支出2億67百万円、配当金の支払額5億85百万円などです。借入金については、適切な資金確保および健全な財務体質を維持することを目指し、成長維持に必要な設備投資・投融資資金の調達、適正な手元資金水準を鑑み、当連結会計年度においては、短期借入金と長期借入金合わせて23億16百万円の減少となりました。
(資本の財源及び資金の流動性に係る情報)
当社グループは事業活動を遂行するための適切な資金確保および健全な財務体質を維持することを目指し、安定的な資金調達手段の確保に努めています。成長を維持するために将来必要な運転資金および設備投資・投融資資金は、主として営業活動によるキャッシュ・フローと金融機関からの借入により調達しています。
資金の流動性については、事業規模に応じた適正な手元資金の水準を維持するとともに金融上のリスクに対応するため主要取引銀行とコミットメントライン契約を締結することにより手元流動性を確保しています。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は152億45百万円であり、金融機関との間で総額35億円のコミットメントライン契約を締結しています。本契約に基づくコミットメントラインに対し、当連結会計年度末の借入実行残高はありません。
(4) 連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しています。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益および費用の報告額に影響を及ぼす見積りおよび仮定を用いていますが、これらの見積りおよび仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積りおよび仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しています。
なお、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響に関する会計上の見積りおよび仮定については、連結財務諸表「注記事項(追加情報)」に記載のとおり、当社グループの主力事業である半導体液晶部門においては、半導体メーカーが投資活動を継続するなど、当感染症の収束時期が不透明な環境下においても旺盛な需要が継続しています。従って、新型コロナウイルス感染症が会計上の見積りに与える影響は限定的であると仮定し、繰延税金資産の回収可能性および固定資産の減損判定について、会計上の見積りを会計処理に反映しています。