有価証券報告書-第21期(2025/04/01-2026/03/31)
当連結会計年度における当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」といいます。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。なお、文中における将来に関する事項は、当社グループが当連結会計年度末現在において判断したものです。
(1) 経営成績等の状況の概要
① 経営成績
ⅰ 業績全般
当連結会計年度(2025年4月1日~2026年3月31日:以下同じ)における世界経済は、米国の通商政策の影響が世界各地域に広がりを見せるも、米国の底堅い個人消費やAI関連需要に伴う設備投資、日本の雇用・所得環境の改善による個人消費の持ち直しや堅調な企業収益を背景とした設備投資に加え、中国の景気刺激策、欧州の堅調な雇用環境を背景とした安定的な個人消費に支えられ総じて底堅い経済成長を維持しました。2026年3月以降は中東を中心とした地政学リスクの高まりを受け一部原燃料価格が高騰するなど、先行き不透明な状況が継続しています。
このような状況下、当社グループの売上収益は、2,436億円減(△6.2%)の3兆7,040億円となりました。利益面では、コア営業利益は同38億円減(△1.7%)の2,250億円、営業利益は同1,115億円減(△78.8%)の301億円、税引前利益は同985億円減(△99.3%)の7億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は同332億円減(△73.7%)の118億円となりました。
なお、当社の連結子会社であった田辺三菱製薬㈱(現 田辺ファーマ㈱)の全株式の譲渡に伴い、同社及びその子会社等の事業を非継続事業に分類しており、当連結会計年度及び前連結会計年度の売上収益、コア営業利益、営業利益及び税引前利益は、非継続事業を除いた継続事業の金額を表示しております。
(注)1 当社グループは、IFRS(国際会計基準)に基づいて、連結財務諸表を作成しております。
2 コア営業利益は、営業利益から非経常的な要因により発生した損益(事業撤退や縮小から生じる損失等)を除いて算出しております。
3 それぞれ、2024年4月~2025年3月、2025年4月~2026年3月の概算平均値です。
ⅱ 各セグメントの業績
各セグメントにおける売上収益及びコア営業利益の状況は、以下のとおりです。
なお、当社グループは当連結会計年度の期首より報告セグメントを変更しております。詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 4.事業セグメント (1)報告セグメントの概要」に記載のとおりです。
(金額単位:億円)
(注) セグメント間の取引については、相殺消去しております。
<コア営業利益 増減要因>(金額単位:億円)
(注) その他には、在庫評価益の前連結会計年度(△72億円)と当連結会計年度(△40億円)の差額32億円、持分法投資損益の前連結会計年度(81億円)と当連結会計年度(73億円)の差額△8億円が含まれております。

セグメント別の業績の概要の詳細は、以下のとおりです。
(ⅰ) スペシャリティマテリアルズセグメント
売上収益は前連結会計年度に比べ117億円減少し1兆596億円となり、コア営業利益は同84億円増加し323億円となりました。
アドバンストフィルムズ&ポリマーズサブセグメントにおいては、販売価格の維持・向上があったものの、ジェイフィルム株式会社の株式譲渡及びトリアセテート繊維等の事業譲渡に加え、ディスプレイ用途において前期の旺盛な需要の反動減に伴う顧客在庫調整等の影響により、売上収益は減少しました。
アドバンストソリューションズサブセグメントにおいては、各種製品の販売価格の維持・向上があったものの、一部子会社の株式譲渡、EV用途の欧米における需要減退による販売数量の減少や、国内を中心とした住宅・建設資材の販売数量の減少等により、売上収益は減少しました。
アドバンストコンポジット&シェイプスサブセグメントにおいては、炭素繊維事業における汎用焼成ラインの一部休止に伴う販売数量の減少等があったものの、高機能エンジニアリングプラスチックにおいて半導体製造装置用途を中心に需要が増加したことに加え、炭素繊維コンポジットパーツの増販や、為替影響等により、売上収益は増加しました。
当セグメントのコア営業利益は、英国におけるソアノール関連固定資産の減損損失の計上や、インフレ等に伴うコスト増加等あったものの、前期に計上したジェレスト社の生産設備・無形資産の減損損失影響の解消に加え、半導体関連事業などで総じて販売価格が向上したこと等による売買差の改善、高機能エンジニアリングプラスチックの半導体製造装置用途を中心とした需要の増加や炭素繊維コンポジットパーツ等の増販、各事業の生産拠点の見直し等による合理化効果等により、増加しました。
(ⅱ) MMA&デリバティブズセグメント
売上収益は前連結会計年度に比べ657億円減少し3,519億円となり、コア営業利益は同372億円減少し15億円の損失となりました。
MMAサブセグメントにおいては、 MMAモノマー等の市況の下落を主要因として売上収益は減少しました。
コーティング&アディティブスサブセグメントにおいては、販売価格の維持・向上があったものの、塗料・接着剤・インキ・添加剤用途等の需要が減退したことによる販売数量の減少により、売上収益は減少しました。
当セグメントのコア営業利益は、 MMAモノマー等の市況の下落による売買差の悪化や、総じて需要が減退したことに伴う販売数量の減少等により、減少しました。
(ⅲ) ベーシックマテリアルズ&ポリマーズセグメント
売上収益は前連結会計年度に比べ1,959億円減少し7,907億円となり、コア営業利益は同104億円増加し42億円の損失となりました。
マテリアルズ&ポリマーズサブセグメントにおいては、高純度テレフタル酸事業における特定子会社の株式譲渡の影響に加え、原料価格の下落に伴い販売価格が低下したことや、ポリオレフィン等の販売数量の減少、為替影響等により、売上収益は減少しました。
炭素サブセグメントにおいては、コークス事業における特定子会社の株式譲渡の影響やコークス生産能力縮小に伴う販売数量の減少、原料価格の下落及び需要の低迷に伴うコークスの販売価格低下等により、売上収益は減少しました。
当セグメントのコア営業利益は、マテリアルズ&ポリマーズにおいて在庫評価損益が悪化したことやインフレ等に伴うコスト増加、酸化エチレン及びエチレングリコール類製造設備における減損損失の計上等があったものの、ポリオレフィン等における原料と製品の価格差の拡大に加え、炭素事業における在庫評価損益の改善や、同事業の構造改革による売買差改善、コスト削減等により、改善しました。
(ⅳ) 産業ガスセグメント
売上収益は前連結会計年度に比べ514億円増加し1兆3,525億円となり、コア営業利益は同146億円増加し2,007億円となりました。
総じて国内外の需要が軟調に推移したことによる減販があったものの、為替の影響、及び各地域で推進する価格マネジメントの効果に加え、ヨーロッパにおけるプラントエンジニアリング会社やオーストラリア及びニュージーランドにおける産業ガス事業等を買収の上、連結した影響により売上収益は増加しました。
当セグメントのコア営業利益は、米国における電力単価等の上昇や欧米を中心とした数量差の悪化はあったものの、価格マネジメント及びコスト削減の効果により増加しました。
(ⅴ) その他
売上収益は前連結会計年度に比べ217億円減少し1,493億円となり、コア営業利益は同15億円増加し135億円となりました。
なお、当社グループの生産品目は広範囲かつ多種多様であり、また、受注生産形態をとらない製品も多く、セグメント毎に生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。
また、主な販売先別の販売実績及び総販売額実績に対する割合については、当該割合が100分の10未満であるため、記載を省略しております。
② キャッシュ・フロー
(金額単位:億円)
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、法人税等の支払いもありましたが、税引前利益や減価償却費等により、4,363億円の収入(前連結会計年度比1,165億円の収入の減少)となりました。
連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産及び無形資産の取得があったものの、田辺三菱製薬㈱(現 田辺ファーマ㈱)等の子会社の売却による収入5,175億円等により、1,245億円の収入(同3,999億円の収入の増加)となり、フリー・キャッシュ・フロー(営業活動及び投資活動によるキャッシュ・フロー)は、5,608億円の収入(同2,834億円の収入の増加)となりました。
当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは、有利子負債の返済による支出2,507億円や配当金の支払い673億円、自己株式の取得500億円等により、3,752億円の支出(同1,285億円の支出の増加)となりました。
これらの結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物残高は、前連結会計年度末と比べて2,010億円増加し、5,271億円となりました。
③ 財政状態
(金額単位:億円)
(注) ネットD/Eレシオ=ネット有利子負債(*1)/親会社の所有者に帰属する持分
(*1)ネット有利子負債=有利子負債-(現金及び現金同等物+手元資金運用額(*2))
(*2)手元資金運用額は、当社グループが余剰資金の運用目的で保有する現金同等物以外の
譲渡性預金・有価証券等です。
当連結会計年度末の資産合計は、円安の進行に伴う在外連結子会社の資産の円貨換算額の増加や、田辺三菱製薬㈱(現 田辺ファーマ㈱)の譲渡対価の入金による手元資金の増加もありましたが、田辺三菱製薬㈱(現 田辺ファーマ㈱)の譲渡に伴う資産の減少等により、前連結会計年度末に比べ180億円減少し、5兆8,766億円となりました。
当連結会計年度末の負債合計は、社債及び借入金の減少等により、前連結会計年度末に比べ1,481億円減少し、3兆4,619億円となりました。
なお、当連結会計年度末のリース負債を含む有利子負債は、前連結会計年度末に比べ1,566億円減少し、2兆219億円となりました。
当連結会計年度末の資本合計は、配当や自己株式の取得による減少等もありましたが、在外営業活動体の換算差額の増加や、非支配持分の当期利益の計上もあり、前連結会計年度末に比べ1,301億円増加し、2兆4,147億円となりました。
これらの結果、当連結会計年度末の親会社所有者帰属持分比率は、前連結会計年度末と比べて0.5ポイント増加し、30.0%となりました。なお、ネットD/Eレシオは、前連結会計年度末と比べて0.23減少し、0.83となりました。
(2) 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
① 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
「中期経営計画2029」で設定した財務目標に対する達成・進捗状況については、以下のとおりです。
売上収益・コア営業利益推移

注1)当社の連結子会社であった田辺三菱製薬㈱(現 田辺ファーマ㈱)の全株式及び関連資産を吸収分割により譲渡する契約の定時株主総会(2025年6月25日)での承認に伴い、同社及びその子会社等の事業を2025年7月1日付で譲渡いたしました。同社及びその子会社等の事業を非継続事業に分類しており、売上収益、コア営業利益は、非継続事業を除いた継続事業の金額を表示しております。
収益性・安定性指標推移

注1)EPSは継続事業に係る1株当たり利益を表示しています。田辺三菱製㈱(現 田辺ファーマ㈱)及びその子会社等の事業を非継続事業に分類しており、FY24、FY25について非継続事業に係る利益は除いております。
注2)ROEについては、FY29目標を開示しておりません。
各種指標の算定式
2026年3月期の事業環境は、スペシャリティマテリアルズは概ね堅調に推移したものの、MMAやマテリアルズ&ポリマーズにおいては引き続き軟調な状況が継続し、3月以降は中東を中心とした地政学リスクの高まりを受けて、先行き不透明な状況が継続しています。
ケミカルズ事業のコア営業利益は、243億円の黒字となりました。スペシャリティマテリアルズにおける売買差・数量差を中心とした収益の伸長に加え、コークス事業の構造改革による売買差改善やコスト削減効果を積み上げました。一方でMMAモノマーの市況悪化に加え、英国ソアノール関連固定資産の減損損失の計上が大きく影響し、前期比43%の減益となりました。産業ガスは堅調であったこともあり、グループ全体では前期比2%の減益にとどまりました。
② 経営環境と今後の見通し
当社グループを取り巻く世界経済は、AI関連需要に伴う設備投資や各国の経済対策による下支えがあるものの、中東を中心とした地政学リスクの高まりを受け一部原燃料価格が高騰するなど先行き不透明な状況が継続しており、下振れリスクに十分留意する必要があります。
翌連結会計年度の連結業績予想につきましては、スペシャリティマテリアルズにおける各製品の増販及びコスト削減に加え、MMAモノマー市況の底打ち、反転等による増益を見込み、売上収益は3兆8,000億円、コア営業利益は3,050億円、営業利益は3,000億円、税引前利益は2,700億円、当期利益は2,000億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は1,270億円となる見込みです。
上記の見通しにおける主要指標の想定値は以下のとおりです。
(金額単位:億円)
(注)それぞれ、2025年4月~2026年3月、2026年4月~2027年3月の平均
(3) 資本の財源及び資金の流動性
① 財務方針
当社グループは、経営方針で定めた財務目標を達成すべく、2024年11月に発表した新しい経営方針「KAITEKI Vision 35」と「中期経営計画2029」に基づき、企業価値の向上をめざしております。ネットD/Eレシオ0.8倍程度が当社にとって適切な水準と考えております。資本コストを意識しながら適度に借入を活用し、負債と自己資本のバランスを整えることが、持続的な経営の基盤となると考えています。なお、「KAITEKI Vision 35」及び「中期経営計画2029」の詳細については「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)対処すべき課題」をご参照ください。
② 企業価値の向上
当社グループでは、企業価値向上に向けて、管理指標にROICを用い、全社を挙げて資本効率の改善に取り組んでおります。
ROICの向上に向けては、利益の極大化のため、売上総利益の改善余地がある取引先と交渉しマージンを拡大する努力を続けるとともに、間接部門の合理化を通じて固定費の圧縮を図り、損益水準を恒常的に引き上げることに努めていきます。また、投下資本の極小化のため、運転資金の改善にも取り組んでおり、データに基づく精緻な分析を通じて改善項目や課題を特定し、具体的なアクションを設定・実行・モニタリングすることで、着実なROICの改善を実現します。
「中期経営計画2029」の最終年である2029年度には想定資本コストを超える7%をめざします。
③ 資金調達及び資金配分方針
当社グループは、運転資金及び設備資金については、内部資金に加え借入金、社債等による調達を実施しているほか、複数の金融機関とのコミットメント・ラインの設定に加え複数の金融機関との間のアンコミットメントベースの当座借越契約、コマーシャル・ペーパー発行枠及び国内社債発行登録枠等の確保により資金調達手段の多様化を図り、十分な流動性の確保を行っております。
資金については、安定的な株主還元・財政基盤の確立と積極的な成長投資を両立させるため、株主還元・負債返済に約25%、設備投資・投融資に約75%を目安として配分する方針です。
(4) 重要な会計上の見積り
連結財務諸表の作成にあたっては、過去の実績や状況に応じ合理的だと考えられる様々な要因に基づき、見積り及び判断を行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるために、これらの見積りと異なる場合があります。見積り及びその基礎となる仮定は、継続して見直されます。会計上の見積りの変更による影響は、その見積りが変更された会計期間及び影響を受ける将来の会計期間において認識されます。
当社グループの連結財務諸表に重要な影響を与える可能性のある会計上の判断、見積り及び仮定に関する主な情報は、以下のとおりです。
① 非金融資産の減損
ⅰ 当連結会計年度の連結財務諸表に計上した金額
当社グループは、連結財政状態計算書に、有形固定資産2,096,630百万円、のれん891,032百万円、無形資産377,656百万円を計上しております。
なお、当連結会計年度において減損損失を98,458百万円計上し、連結損益計算書の「その他の営業費用」に含めております。減損損失の詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 17.減損損失」をご参照ください。
ⅱ 連結財務諸表利用者の理解に資するその他の情報
(ⅰ)算出方法
当社グループは有形固定資産、のれん及び無形資産について、減損の兆候がある場合、及び資産に年次の減損テストが必要な場合、その資産の使用価値や処分費用控除後の公正価値の算定を行っております。
使用価値の算定にあたっては、貨幣の時間価値及びその資産に特有のリスクについて現在の市場の評価を反映した税引前の割引率を用いて、見積将来キャッシュ・フローの割引現在価値を計算しております。なお、将来キャッシュ・フローの見積りにあたって利用する事業計画は原則として5年を限度とし、事業計画の予測の期間を超えた後の将来キャッシュ・フローは個別の事情に応じた5年を超える期間の長期平均成長率をもとに算定しております。
(ⅱ)主要な仮定
使用価値の算定における主要な仮定は、原則として5年を限度とする事業計画における将来キャッシュ・フローの見積り、割引率及び5年を超える期間の長期成長率です。
将来キャッシュ・フローの見積額は主として、売上収益の予測及び市場の成長率に影響を受けます。
(ⅲ)翌連結会計年度の連結財務諸表に与える影響
主要な仮定について、経営者は妥当と判断しておりますが、将来の不確実な経済条件の変動の結果によって影響を受ける可能性があり、前提とした状況が変化すれば回収可能価額の算定結果が異なる可能性があります。
② 繰延税金資産の回収可能性
ⅰ 当連結会計年度の連結財務諸表に計上した金額
繰延税金資産(純額) 88,293百万円
ⅱ 連結財務諸表利用者の理解に資するその他の情報
(ⅰ)算出方法
当社グループでは、将来減算一時差異及び税務上の繰越欠損金に対して、予定される繰延税金負債の取崩、予測される将来課税所得及びタックス・プランニングを考慮し、繰延税金資産を計上しております。詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要性のある会計方針 (6) 法人所得税」をご参照ください。
(ⅱ)主要な仮定
将来課税所得の基礎となる将来の事業計画における主要な仮定は売上収益の予測です。
(ⅲ)翌連結会計年度の連結財務諸表に与える影響
認識された繰延税金資産については、過去の課税所得水準及び将来減算一時差異と繰越欠損金の解消が予測される期間における将来課税所得の予測に基づき、回収される可能性が高いと考えております。将来課税所得の予測及び主要な仮定について、経営者は妥当と判断しておりますが、将来の不確実な経済条件の変動の結果によって影響を受ける可能性があり、前提とした状況が変化すれば繰延税金資産の回収可能性の評価の算定結果が異なる可能性があります。
③ 確定給付制度債務の測定
ⅰ 当連結会計年度の連結財務諸表に計上した金額
退職給付に係る負債 95,383百万円
ⅱ 連結財務諸表利用者の理解に資するその他の情報
確定給付制度に係る負債又は資産は、確定給付制度債務の現在価値から制度資産の公正価値を控除して算定しております。確定給付制度債務は年金数理計算により算定しており、その前提条件には割引率等の見積りが含まれております。主要な仮定について、経営者は妥当と判断しておりますが、将来の不確実な経済条件の変動の結果によって影響を受ける可能性があり、前提とした状況が変化すれば確定給付制度債務の評価額の算定結果が異なる可能性があります。
確定給付制度債務に係る詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 29.退職給付」をご参照ください。
④ リストラクチャリング引当金
ⅰ 当連結会計年度の連結財務諸表に計上した金額
リストラクチャリング引当金 71,295百万円
なお、上記の金額は、連結財政状態計算書の「引当金」に含めております。
ⅱ 連結財務諸表利用者の理解に資するその他の情報
当社グループは、リストラクチャリングに関する詳細な公式計画を有し、かつ、当該計画の実施を開始するか、又は当該計画が影響を受ける関係者に対して発表された時点で、当該計画に係る費用等を合理的に見積もり、リストラクチャリング引当金を認識しております。
主に、三菱ケミカル㈱において、コークス及び炭素材事業の撤退を決定したことに関連して、設備撤去費用及び特別退職金等を当該リストラクチャリングに関する計画に基づき計上しております。なお、リストラクチャリング引当金の主要な部分を占める設備撤去費用は、撤去対象資産の重量、面積、基数等に対して、それぞれの単位当たりの将来の撤去工事の単価を見積もり、それらを乗じて計算しております。主要な仮定について、経営者は妥当と判断しておりますが、将来の不確実な経済条件の変動の結果によって影響を受ける可能性があり、前提とした状況が変化すれば引当金の見積額の算定結果が異なる可能性があります。
リストラクチャリング引当金に係る詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 30.引当金」をご参照ください。
⑤ 金融商品の公正価値
ⅰ 当連結会計年度の連結財務諸表に計上した金額
公正価値ヒエラルキーがレベル3の株式及び出資金(売却目的で保有する資産を除く) 60,299百万円
なお、上記の金額は、連結財政状態計算書の「その他の金融資産」に含めております。
ⅱ 連結財務諸表利用者の理解に資するその他の情報
当社グループにおいて活発な市場における公表価格が入手できない非上場株式及び出資金の公正価値は、合理的に入手可能なインプットにより、類似企業比較法又はその他の適切な評価技法を用いて算定しております。選択された価値評価技法と主要な仮定について、経営者は妥当と判断しておりますが、将来の不確実な経済条件の変動の結果によって影響を受ける可能性があり、前提とした状況が変化すれば公正価値の評価額の算定結果が異なる可能性があります。
詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 37.金融商品 (8) 金融商品の公正価値」をご参照ください。
また、上記のほか、当連結会計年度において見積りを行う上での特に重要な仮定は以下のとおりです。
(中東情勢の影響に関する仮定)
中東情勢による当社グループへの影響は、その動向及び継続期間により異なります。早期に収束する場合には、原料価格上昇の影響について一定の価格転嫁等の対応により、影響は限定的であると想定しております。一方、長期化した場合には、原料供給の停滞により生産活動に支障が生じ、当社グループの財政状態及び経営成績に重要な影響を及ぼす可能性があります。なお、現時点では先行きは不透明であるものの、当該情勢の長期化を前提とした仮定は置いておりません。
(1) 経営成績等の状況の概要
① 経営成績
ⅰ 業績全般
当連結会計年度(2025年4月1日~2026年3月31日:以下同じ)における世界経済は、米国の通商政策の影響が世界各地域に広がりを見せるも、米国の底堅い個人消費やAI関連需要に伴う設備投資、日本の雇用・所得環境の改善による個人消費の持ち直しや堅調な企業収益を背景とした設備投資に加え、中国の景気刺激策、欧州の堅調な雇用環境を背景とした安定的な個人消費に支えられ総じて底堅い経済成長を維持しました。2026年3月以降は中東を中心とした地政学リスクの高まりを受け一部原燃料価格が高騰するなど、先行き不透明な状況が継続しています。
このような状況下、当社グループの売上収益は、2,436億円減(△6.2%)の3兆7,040億円となりました。利益面では、コア営業利益は同38億円減(△1.7%)の2,250億円、営業利益は同1,115億円減(△78.8%)の301億円、税引前利益は同985億円減(△99.3%)の7億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は同332億円減(△73.7%)の118億円となりました。
なお、当社の連結子会社であった田辺三菱製薬㈱(現 田辺ファーマ㈱)の全株式の譲渡に伴い、同社及びその子会社等の事業を非継続事業に分類しており、当連結会計年度及び前連結会計年度の売上収益、コア営業利益、営業利益及び税引前利益は、非継続事業を除いた継続事業の金額を表示しております。
| (金額単位:億円) | ||||||
| 前連結会計年度 自 2024年4月1日至 2025年3月31日 | 当連結会計年度 自 2025年4月1日至 2026年3月31日 | 増減額 | 増減率(%) | |||
| 売上収益 | 39,476 | 37,040 | △2,436 | △6.2 | ||
| コア営業利益 (注2) | 2,288 | 2,250 | △38 | △1.7 | ||
| 営業利益 | 1,416 | 301 | △1,115 | △78.8 | ||
| 税引前利益 | 992 | 7 | △985 | △99.3 | ||
| 当期利益 | 1,056 | 784 | △272 | △25.8 | ||
| 親会社の所有者に帰属する当期利益 | 450 | 118 | △332 | △73.7 | ||
| ナフサ (円/KL) (注3) | 75,600 | 65,200 | △10,400 | |||
| 為替 (円/$) (注3) | 152.6 | 151.1 | △1.5 | |||
(注)1 当社グループは、IFRS(国際会計基準)に基づいて、連結財務諸表を作成しております。
2 コア営業利益は、営業利益から非経常的な要因により発生した損益(事業撤退や縮小から生じる損失等)を除いて算出しております。
3 それぞれ、2024年4月~2025年3月、2025年4月~2026年3月の概算平均値です。
ⅱ 各セグメントの業績
各セグメントにおける売上収益及びコア営業利益の状況は、以下のとおりです。
なお、当社グループは当連結会計年度の期首より報告セグメントを変更しております。詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 4.事業セグメント (1)報告セグメントの概要」に記載のとおりです。
(金額単位:億円)
| セグメント | 前連結会計年度 | 当連結会計年度 | 増減額 | |||
| 売上収益 | コア営業利益 | 売上収益 | コア営業利益 | 売上収益 | コア営業利益 | |
| スペシャリティマテリアルズ | 10,713 | 239 | 10,596 | 323 | △117 | 84 |
| MMA& デリバティブズ | 4,176 | 357 | 3,519 | △15 | △657 | △372 |
| ベーシック マテリアルズ&ポリマーズ | 9,866 | △146 | 7,907 | △42 | △1,959 | 104 |
| 産業ガス | 13,011 | 1,861 | 13,525 | 2,007 | 514 | 146 |
| その他 | 1,710 | 119 | 1,493 | 135 | △217 | 15 |
| 調整額 | - | △142 | - | △158 | - | △17 |
| 合計 | 39,476 | 2,288 | 37,040 | 2,250 | △2,436 | △38 |
(注) セグメント間の取引については、相殺消去しております。
<コア営業利益 増減要因>(金額単位:億円)
| 前連結 会計年度 | 当連結 会計年度 | 増減 | |||||||||
| 売買差 | 数量差 | コスト 削減 | その他 (注) | ||||||||
| 全社 | 2,288 | 2,250 | △38 | △266 | 41 | 622 | △435 | ||||
| スペシャリティマテリアルズ | 239 | 323 | 84 | 81 | 155 | 138 | △290 | ||||
| MMA&デリバティブズ | 357 | △15 | △372 | △403 | △34 | 5 | 60 | ||||
| ベーシック マテリアルズ&ポリマーズ | △146 | △42 | 104 | 114 | 9 | 71 | △90 | ||||
| 産業ガス | 1,861 | 2,007 | 146 | △96 | △80 | 335 | △13 | ||||
| その他 ・調整額 | △23 | △23 | 0 | 38 | △9 | 73 | △102 | ||||
(注) その他には、在庫評価益の前連結会計年度(△72億円)と当連結会計年度(△40億円)の差額32億円、持分法投資損益の前連結会計年度(81億円)と当連結会計年度(73億円)の差額△8億円が含まれております。
| 為替影響 | 35 | 35 | - | - | - | ||||||
| 内、換算差 | 50 | ||||||||||

| セグメント | 前連結会計年度から当連結会計年度への主なコア営業利益の増減要因 |
| スペシャリティマテリアルズ | 売買差:販売価格の維持・向上により各種製品の売買差が改善したことにより増益。 数量差:精密洗浄サービスを中心とした半導体関連、半導体製造装置向け高機能エンプラ及びロボタクシー向けを中心とした炭素繊維コンポジットパーツ等の増販により増益。 コスト削減:各事業の生産拠点の見直し等による合理化により増益。 その他:三菱ケミカル英国社のソアノール製造設備減損により減益。 |
| MMA&デリバティブズ | 売買差:MMAモノマー等の市況下落による売買差悪化により減益。 |
| ベーシック マテリアルズ&ポリマーズ | 売買差:ポリオレフィンにおいて原料と製品の価格差が拡大したこと及びコークス事業の構造改革による売買差改善により増益。 コスト削減:コークス事業構造改革により増益。 その他:酸化エチレン・エチレングリコール類製造設備減損等により減益。 |
| 産業ガス | コスト削減:DX活用、プラント操業最適化などの生産性向上活動により増益。 |
セグメント別の業績の概要の詳細は、以下のとおりです。
(ⅰ) スペシャリティマテリアルズセグメント
売上収益は前連結会計年度に比べ117億円減少し1兆596億円となり、コア営業利益は同84億円増加し323億円となりました。
アドバンストフィルムズ&ポリマーズサブセグメントにおいては、販売価格の維持・向上があったものの、ジェイフィルム株式会社の株式譲渡及びトリアセテート繊維等の事業譲渡に加え、ディスプレイ用途において前期の旺盛な需要の反動減に伴う顧客在庫調整等の影響により、売上収益は減少しました。
アドバンストソリューションズサブセグメントにおいては、各種製品の販売価格の維持・向上があったものの、一部子会社の株式譲渡、EV用途の欧米における需要減退による販売数量の減少や、国内を中心とした住宅・建設資材の販売数量の減少等により、売上収益は減少しました。
アドバンストコンポジット&シェイプスサブセグメントにおいては、炭素繊維事業における汎用焼成ラインの一部休止に伴う販売数量の減少等があったものの、高機能エンジニアリングプラスチックにおいて半導体製造装置用途を中心に需要が増加したことに加え、炭素繊維コンポジットパーツの増販や、為替影響等により、売上収益は増加しました。
当セグメントのコア営業利益は、英国におけるソアノール関連固定資産の減損損失の計上や、インフレ等に伴うコスト増加等あったものの、前期に計上したジェレスト社の生産設備・無形資産の減損損失影響の解消に加え、半導体関連事業などで総じて販売価格が向上したこと等による売買差の改善、高機能エンジニアリングプラスチックの半導体製造装置用途を中心とした需要の増加や炭素繊維コンポジットパーツ等の増販、各事業の生産拠点の見直し等による合理化効果等により、増加しました。
(ⅱ) MMA&デリバティブズセグメント
売上収益は前連結会計年度に比べ657億円減少し3,519億円となり、コア営業利益は同372億円減少し15億円の損失となりました。
MMAサブセグメントにおいては、 MMAモノマー等の市況の下落を主要因として売上収益は減少しました。
コーティング&アディティブスサブセグメントにおいては、販売価格の維持・向上があったものの、塗料・接着剤・インキ・添加剤用途等の需要が減退したことによる販売数量の減少により、売上収益は減少しました。
当セグメントのコア営業利益は、 MMAモノマー等の市況の下落による売買差の悪化や、総じて需要が減退したことに伴う販売数量の減少等により、減少しました。
(ⅲ) ベーシックマテリアルズ&ポリマーズセグメント
売上収益は前連結会計年度に比べ1,959億円減少し7,907億円となり、コア営業利益は同104億円増加し42億円の損失となりました。
マテリアルズ&ポリマーズサブセグメントにおいては、高純度テレフタル酸事業における特定子会社の株式譲渡の影響に加え、原料価格の下落に伴い販売価格が低下したことや、ポリオレフィン等の販売数量の減少、為替影響等により、売上収益は減少しました。
炭素サブセグメントにおいては、コークス事業における特定子会社の株式譲渡の影響やコークス生産能力縮小に伴う販売数量の減少、原料価格の下落及び需要の低迷に伴うコークスの販売価格低下等により、売上収益は減少しました。
当セグメントのコア営業利益は、マテリアルズ&ポリマーズにおいて在庫評価損益が悪化したことやインフレ等に伴うコスト増加、酸化エチレン及びエチレングリコール類製造設備における減損損失の計上等があったものの、ポリオレフィン等における原料と製品の価格差の拡大に加え、炭素事業における在庫評価損益の改善や、同事業の構造改革による売買差改善、コスト削減等により、改善しました。
(ⅳ) 産業ガスセグメント
売上収益は前連結会計年度に比べ514億円増加し1兆3,525億円となり、コア営業利益は同146億円増加し2,007億円となりました。
総じて国内外の需要が軟調に推移したことによる減販があったものの、為替の影響、及び各地域で推進する価格マネジメントの効果に加え、ヨーロッパにおけるプラントエンジニアリング会社やオーストラリア及びニュージーランドにおける産業ガス事業等を買収の上、連結した影響により売上収益は増加しました。
当セグメントのコア営業利益は、米国における電力単価等の上昇や欧米を中心とした数量差の悪化はあったものの、価格マネジメント及びコスト削減の効果により増加しました。
(ⅴ) その他
売上収益は前連結会計年度に比べ217億円減少し1,493億円となり、コア営業利益は同15億円増加し135億円となりました。
なお、当社グループの生産品目は広範囲かつ多種多様であり、また、受注生産形態をとらない製品も多く、セグメント毎に生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。
また、主な販売先別の販売実績及び総販売額実績に対する割合については、当該割合が100分の10未満であるため、記載を省略しております。
② キャッシュ・フロー
(金額単位:億円)
| 前連結会計年度 | 当連結会計年度 | |
| 営業活動によるキャッシュ・フロー | 5,528 | 4,363 |
| 投資活動によるキャッシュ・フロー | △2,754 | 1,245 |
| フリー・キャッシュ・フロー | 2,774 | 5,608 |
| 財務活動によるキャッシュ・フロー | △2,467 | △3,752 |
| 為替換算差等 | 5 | 154 |
| 現金及び現金同等物の期末残高 | 3,261 | 5,271 |
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、法人税等の支払いもありましたが、税引前利益や減価償却費等により、4,363億円の収入(前連結会計年度比1,165億円の収入の減少)となりました。
連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産及び無形資産の取得があったものの、田辺三菱製薬㈱(現 田辺ファーマ㈱)等の子会社の売却による収入5,175億円等により、1,245億円の収入(同3,999億円の収入の増加)となり、フリー・キャッシュ・フロー(営業活動及び投資活動によるキャッシュ・フロー)は、5,608億円の収入(同2,834億円の収入の増加)となりました。
当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは、有利子負債の返済による支出2,507億円や配当金の支払い673億円、自己株式の取得500億円等により、3,752億円の支出(同1,285億円の支出の増加)となりました。
これらの結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物残高は、前連結会計年度末と比べて2,010億円増加し、5,271億円となりました。
③ 財政状態
(金額単位:億円)
| 前連結会計年度 | 当連結会計年度 | ||
| 資産 | 58,946 | 58,766 | |
| 負債 | 36,100 | 34,619 | |
| (内、有利子負債) | 21,785 | 20,219 | |
| 資本 | 22,846 | 24,147 | |
| 親会社所有者帰属持分比率(%) | 29.5 | 30.0 | |
| ネットD/Eレシオ (注) | 1.06 | 0.83 | |
(注) ネットD/Eレシオ=ネット有利子負債(*1)/親会社の所有者に帰属する持分
(*1)ネット有利子負債=有利子負債-(現金及び現金同等物+手元資金運用額(*2))
(*2)手元資金運用額は、当社グループが余剰資金の運用目的で保有する現金同等物以外の
譲渡性預金・有価証券等です。
当連結会計年度末の資産合計は、円安の進行に伴う在外連結子会社の資産の円貨換算額の増加や、田辺三菱製薬㈱(現 田辺ファーマ㈱)の譲渡対価の入金による手元資金の増加もありましたが、田辺三菱製薬㈱(現 田辺ファーマ㈱)の譲渡に伴う資産の減少等により、前連結会計年度末に比べ180億円減少し、5兆8,766億円となりました。
当連結会計年度末の負債合計は、社債及び借入金の減少等により、前連結会計年度末に比べ1,481億円減少し、3兆4,619億円となりました。
なお、当連結会計年度末のリース負債を含む有利子負債は、前連結会計年度末に比べ1,566億円減少し、2兆219億円となりました。
当連結会計年度末の資本合計は、配当や自己株式の取得による減少等もありましたが、在外営業活動体の換算差額の増加や、非支配持分の当期利益の計上もあり、前連結会計年度末に比べ1,301億円増加し、2兆4,147億円となりました。
これらの結果、当連結会計年度末の親会社所有者帰属持分比率は、前連結会計年度末と比べて0.5ポイント増加し、30.0%となりました。なお、ネットD/Eレシオは、前連結会計年度末と比べて0.23減少し、0.83となりました。
(2) 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
① 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
「中期経営計画2029」で設定した財務目標に対する達成・進捗状況については、以下のとおりです。
売上収益・コア営業利益推移

注1)当社の連結子会社であった田辺三菱製薬㈱(現 田辺ファーマ㈱)の全株式及び関連資産を吸収分割により譲渡する契約の定時株主総会(2025年6月25日)での承認に伴い、同社及びその子会社等の事業を2025年7月1日付で譲渡いたしました。同社及びその子会社等の事業を非継続事業に分類しており、売上収益、コア営業利益は、非継続事業を除いた継続事業の金額を表示しております。
収益性・安定性指標推移

注1)EPSは継続事業に係る1株当たり利益を表示しています。田辺三菱製㈱(現 田辺ファーマ㈱)及びその子会社等の事業を非継続事業に分類しており、FY24、FY25について非継続事業に係る利益は除いております。
注2)ROEについては、FY29目標を開示しておりません。
各種指標の算定式
| 指標 | 算定式 |
| ROE | 親会社の所有者に帰属する当期利益/親会社の所有者に帰属する持分(期首・期末平均) |
| ROIC | NOPAT(*1)/投下資本(期首・期末平均)(*2) |
| (*1) NOPAT=(コア営業利益-コア営業利益に含まれる持分法による投資損益)× (1-税率)+コア営業利益に含まれる持分法による投資損益+受取配当金 | |
| (*2) 投下資本=資本合計+有利子負債 |
2026年3月期の事業環境は、スペシャリティマテリアルズは概ね堅調に推移したものの、MMAやマテリアルズ&ポリマーズにおいては引き続き軟調な状況が継続し、3月以降は中東を中心とした地政学リスクの高まりを受けて、先行き不透明な状況が継続しています。
ケミカルズ事業のコア営業利益は、243億円の黒字となりました。スペシャリティマテリアルズにおける売買差・数量差を中心とした収益の伸長に加え、コークス事業の構造改革による売買差改善やコスト削減効果を積み上げました。一方でMMAモノマーの市況悪化に加え、英国ソアノール関連固定資産の減損損失の計上が大きく影響し、前期比43%の減益となりました。産業ガスは堅調であったこともあり、グループ全体では前期比2%の減益にとどまりました。
② 経営環境と今後の見通し
当社グループを取り巻く世界経済は、AI関連需要に伴う設備投資や各国の経済対策による下支えがあるものの、中東を中心とした地政学リスクの高まりを受け一部原燃料価格が高騰するなど先行き不透明な状況が継続しており、下振れリスクに十分留意する必要があります。
翌連結会計年度の連結業績予想につきましては、スペシャリティマテリアルズにおける各製品の増販及びコスト削減に加え、MMAモノマー市況の底打ち、反転等による増益を見込み、売上収益は3兆8,000億円、コア営業利益は3,050億円、営業利益は3,000億円、税引前利益は2,700億円、当期利益は2,000億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は1,270億円となる見込みです。
上記の見通しにおける主要指標の想定値は以下のとおりです。
(金額単位:億円)
| 2026年3月期 | 2027年3月期 | |
| 設備投資額 | 3,088 | 3,391 |
| 減価償却費 | 2,678 | 2,794 |
| 研究開発費 | 587 | 562 |
| 為替(円/US$) (注1) | 151.1 | 150.0 |
| ナフサ価格(円/KL) (注2) | 65,200 | 63,000 |
(注)それぞれ、2025年4月~2026年3月、2026年4月~2027年3月の平均
(3) 資本の財源及び資金の流動性
① 財務方針
当社グループは、経営方針で定めた財務目標を達成すべく、2024年11月に発表した新しい経営方針「KAITEKI Vision 35」と「中期経営計画2029」に基づき、企業価値の向上をめざしております。ネットD/Eレシオ0.8倍程度が当社にとって適切な水準と考えております。資本コストを意識しながら適度に借入を活用し、負債と自己資本のバランスを整えることが、持続的な経営の基盤となると考えています。なお、「KAITEKI Vision 35」及び「中期経営計画2029」の詳細については「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)対処すべき課題」をご参照ください。
② 企業価値の向上
当社グループでは、企業価値向上に向けて、管理指標にROICを用い、全社を挙げて資本効率の改善に取り組んでおります。
ROICの向上に向けては、利益の極大化のため、売上総利益の改善余地がある取引先と交渉しマージンを拡大する努力を続けるとともに、間接部門の合理化を通じて固定費の圧縮を図り、損益水準を恒常的に引き上げることに努めていきます。また、投下資本の極小化のため、運転資金の改善にも取り組んでおり、データに基づく精緻な分析を通じて改善項目や課題を特定し、具体的なアクションを設定・実行・モニタリングすることで、着実なROICの改善を実現します。
「中期経営計画2029」の最終年である2029年度には想定資本コストを超える7%をめざします。
③ 資金調達及び資金配分方針
当社グループは、運転資金及び設備資金については、内部資金に加え借入金、社債等による調達を実施しているほか、複数の金融機関とのコミットメント・ラインの設定に加え複数の金融機関との間のアンコミットメントベースの当座借越契約、コマーシャル・ペーパー発行枠及び国内社債発行登録枠等の確保により資金調達手段の多様化を図り、十分な流動性の確保を行っております。
資金については、安定的な株主還元・財政基盤の確立と積極的な成長投資を両立させるため、株主還元・負債返済に約25%、設備投資・投融資に約75%を目安として配分する方針です。
(4) 重要な会計上の見積り
連結財務諸表の作成にあたっては、過去の実績や状況に応じ合理的だと考えられる様々な要因に基づき、見積り及び判断を行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるために、これらの見積りと異なる場合があります。見積り及びその基礎となる仮定は、継続して見直されます。会計上の見積りの変更による影響は、その見積りが変更された会計期間及び影響を受ける将来の会計期間において認識されます。
当社グループの連結財務諸表に重要な影響を与える可能性のある会計上の判断、見積り及び仮定に関する主な情報は、以下のとおりです。
① 非金融資産の減損
ⅰ 当連結会計年度の連結財務諸表に計上した金額
当社グループは、連結財政状態計算書に、有形固定資産2,096,630百万円、のれん891,032百万円、無形資産377,656百万円を計上しております。
なお、当連結会計年度において減損損失を98,458百万円計上し、連結損益計算書の「その他の営業費用」に含めております。減損損失の詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 17.減損損失」をご参照ください。
ⅱ 連結財務諸表利用者の理解に資するその他の情報
(ⅰ)算出方法
当社グループは有形固定資産、のれん及び無形資産について、減損の兆候がある場合、及び資産に年次の減損テストが必要な場合、その資産の使用価値や処分費用控除後の公正価値の算定を行っております。
使用価値の算定にあたっては、貨幣の時間価値及びその資産に特有のリスクについて現在の市場の評価を反映した税引前の割引率を用いて、見積将来キャッシュ・フローの割引現在価値を計算しております。なお、将来キャッシュ・フローの見積りにあたって利用する事業計画は原則として5年を限度とし、事業計画の予測の期間を超えた後の将来キャッシュ・フローは個別の事情に応じた5年を超える期間の長期平均成長率をもとに算定しております。
(ⅱ)主要な仮定
使用価値の算定における主要な仮定は、原則として5年を限度とする事業計画における将来キャッシュ・フローの見積り、割引率及び5年を超える期間の長期成長率です。
将来キャッシュ・フローの見積額は主として、売上収益の予測及び市場の成長率に影響を受けます。
(ⅲ)翌連結会計年度の連結財務諸表に与える影響
主要な仮定について、経営者は妥当と判断しておりますが、将来の不確実な経済条件の変動の結果によって影響を受ける可能性があり、前提とした状況が変化すれば回収可能価額の算定結果が異なる可能性があります。
② 繰延税金資産の回収可能性
ⅰ 当連結会計年度の連結財務諸表に計上した金額
繰延税金資産(純額) 88,293百万円
ⅱ 連結財務諸表利用者の理解に資するその他の情報
(ⅰ)算出方法
当社グループでは、将来減算一時差異及び税務上の繰越欠損金に対して、予定される繰延税金負債の取崩、予測される将来課税所得及びタックス・プランニングを考慮し、繰延税金資産を計上しております。詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要性のある会計方針 (6) 法人所得税」をご参照ください。
(ⅱ)主要な仮定
将来課税所得の基礎となる将来の事業計画における主要な仮定は売上収益の予測です。
(ⅲ)翌連結会計年度の連結財務諸表に与える影響
認識された繰延税金資産については、過去の課税所得水準及び将来減算一時差異と繰越欠損金の解消が予測される期間における将来課税所得の予測に基づき、回収される可能性が高いと考えております。将来課税所得の予測及び主要な仮定について、経営者は妥当と判断しておりますが、将来の不確実な経済条件の変動の結果によって影響を受ける可能性があり、前提とした状況が変化すれば繰延税金資産の回収可能性の評価の算定結果が異なる可能性があります。
③ 確定給付制度債務の測定
ⅰ 当連結会計年度の連結財務諸表に計上した金額
退職給付に係る負債 95,383百万円
ⅱ 連結財務諸表利用者の理解に資するその他の情報
確定給付制度に係る負債又は資産は、確定給付制度債務の現在価値から制度資産の公正価値を控除して算定しております。確定給付制度債務は年金数理計算により算定しており、その前提条件には割引率等の見積りが含まれております。主要な仮定について、経営者は妥当と判断しておりますが、将来の不確実な経済条件の変動の結果によって影響を受ける可能性があり、前提とした状況が変化すれば確定給付制度債務の評価額の算定結果が異なる可能性があります。
確定給付制度債務に係る詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 29.退職給付」をご参照ください。
④ リストラクチャリング引当金
ⅰ 当連結会計年度の連結財務諸表に計上した金額
リストラクチャリング引当金 71,295百万円
なお、上記の金額は、連結財政状態計算書の「引当金」に含めております。
ⅱ 連結財務諸表利用者の理解に資するその他の情報
当社グループは、リストラクチャリングに関する詳細な公式計画を有し、かつ、当該計画の実施を開始するか、又は当該計画が影響を受ける関係者に対して発表された時点で、当該計画に係る費用等を合理的に見積もり、リストラクチャリング引当金を認識しております。
主に、三菱ケミカル㈱において、コークス及び炭素材事業の撤退を決定したことに関連して、設備撤去費用及び特別退職金等を当該リストラクチャリングに関する計画に基づき計上しております。なお、リストラクチャリング引当金の主要な部分を占める設備撤去費用は、撤去対象資産の重量、面積、基数等に対して、それぞれの単位当たりの将来の撤去工事の単価を見積もり、それらを乗じて計算しております。主要な仮定について、経営者は妥当と判断しておりますが、将来の不確実な経済条件の変動の結果によって影響を受ける可能性があり、前提とした状況が変化すれば引当金の見積額の算定結果が異なる可能性があります。
リストラクチャリング引当金に係る詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 30.引当金」をご参照ください。
⑤ 金融商品の公正価値
ⅰ 当連結会計年度の連結財務諸表に計上した金額
公正価値ヒエラルキーがレベル3の株式及び出資金(売却目的で保有する資産を除く) 60,299百万円
なお、上記の金額は、連結財政状態計算書の「その他の金融資産」に含めております。
ⅱ 連結財務諸表利用者の理解に資するその他の情報
当社グループにおいて活発な市場における公表価格が入手できない非上場株式及び出資金の公正価値は、合理的に入手可能なインプットにより、類似企業比較法又はその他の適切な評価技法を用いて算定しております。選択された価値評価技法と主要な仮定について、経営者は妥当と判断しておりますが、将来の不確実な経済条件の変動の結果によって影響を受ける可能性があり、前提とした状況が変化すれば公正価値の評価額の算定結果が異なる可能性があります。
詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 37.金融商品 (8) 金融商品の公正価値」をご参照ください。
また、上記のほか、当連結会計年度において見積りを行う上での特に重要な仮定は以下のとおりです。
(中東情勢の影響に関する仮定)
中東情勢による当社グループへの影響は、その動向及び継続期間により異なります。早期に収束する場合には、原料価格上昇の影響について一定の価格転嫁等の対応により、影響は限定的であると想定しております。一方、長期化した場合には、原料供給の停滞により生産活動に支障が生じ、当社グループの財政状態及び経営成績に重要な影響を及ぼす可能性があります。なお、現時点では先行きは不透明であるものの、当該情勢の長期化を前提とした仮定は置いておりません。