有価証券報告書-第81期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)

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2018/06/28 13:59
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(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①経営成績の状況
当連結会計年度における我が国経済は、海外経済の緩やかな回復を受けて輸出が増加基調を維持、また国内では、堅調な企業業績を反映して設備投資が増加、個人消費も雇用・所得環境の改善を背景に底堅く推移するなど、外需・内需共に緩やかな回復が続きました。
化学業界においても、石油化学製品の需要が国内外で堅調に推移し、国内エチレンプラントでは高稼働が続くなど、良好な環境が続きました。しかし、一方で、原油価格が第2四半期を底に上昇に転じつつあり、今後の原材料価格への影響が懸念されるところです。
このような経営環境下、当社グループの当連結会計年度の売上高は、界面活性剤セグメントのトイレタリー用界面活性剤分野や、スペシャリティーケミカルセグメントの電子材料関連分野等、幅広い分野で販売が増加し、前期比42億12百万円、10.9%増収の427億62百万円となりました。
利益面は、原材料価格の上昇に伴う原料コストの増加や、東邦化学(上海)有限公司における営業損益黒字化の遅れの影響がありましたが、増収による収益効果がこれをカバーし、当連結会計年度の営業利益は、前期比1億84百万円増益の23億98百万円となりました。経常利益は、東邦化学(上海)有限公司での為替差損の前期比縮小等による営業外損益の改善により更に増益幅が拡大し、前期比8億79百万円増益の24億37百万円となりました。しかし、親会社株主に帰属する当期純利益は、当連結会計年度も東邦化学(上海)有限公司に係る多額の固定資産の減損を特別損失に計上した影響により、前期比6億79百万円増益の9億97百万円に止まりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりです。
(界面活性剤)
トイレタリー用界面活性剤は、大口ユーザー向けの一般洗浄剤が伸長し大幅な増収となりました。プラスチック用界面活性剤は、主力の帯電防止剤や乳化重合剤が堅調に推移し増収となりました。土木建築用薬剤は、コンクリート用関連薬剤の国内外での販売増加により増収となりました。紙パルプ用界面活性剤は、消泡剤等の需要回復により増収となりました。繊維助剤は、中国市場でのガラス繊維向けの販売が増加し増収となりました。農薬助剤は、海外向けの販売が伸び悩み微増に止まりました。
その結果、当セグメント全体の売上高は、前期比25億74百万円、12.6%増収の230億20百万円となり、セグメント利益は、前期比68百万円増益の14億9百万円となりました。
(樹脂)
合成樹脂は、断熱フォーム用ウレタン樹脂やトナー用原料等の販売増加により増収となりました。樹脂エマルションは、フロアーポリッシュ用は苦戦したものの、金属表面処理剤等が堅調に推移し増収となりました。石油樹脂は、前期の原料不足による減産の影響で第2四半期まで落ち込んでいた大口ユーザー向け販売が第3四半期に入り回復基調に転じた結果、若干の増収となりました。
その結果、当セグメント全体の売上高は、前期比1億11百万円、3.9%増収の29億61百万円となり、セグメント利益は、前期比6百万円減益の45百万円となりました。
(化成品)
合成ゴム・ABS樹脂用ロジン系乳化重合剤は、海外販売が低調で減収となりました。石油添加剤は、潤滑油添加剤等の海外販売が伸長し増収となりました。金属加工油剤は、大口ユーザー向け水溶性切削油剤の販売増を主因に大幅な増収となりました。
その結果、当セグメント全体の売上高は、前期比1億10百万円、1.8%増収の60億95百万円となりました。一方、セグメント利益は、ロジン系乳化重合剤の販売落ち込みが影響し、前期比1億44百万円減益の1億74百万円となりました。
(スペシャリティーケミカル)
溶剤は、一般溶剤での需要回復やブレーキ液基剤等が伸長し、増収となりました。電子・情報産業用の微細加工用樹脂は、半導体関連向けが好調で増収となりました。アクリレートは、電子情報材料関連の中国市場での販売が伸長し大幅な増収となりました。
その結果、当セグメント全体の売上高は、前期比13億95百万円、15.2%増収の105億70百万円となりました。一方、セグメント利益は、中国での原料高騰によるアクリレートの採算悪化の影響で、前期比1億7百万円減益の3億79百万円となりました。
なお、上記の各セグメント利益の前期比の数値は、(セグメント情報等)「報告セグメントごとの売上高、利益又は損失、資産、負債その他の項目の金額に関する情報」の表における「報告セグメント」の比較情報です。
その他に、各セグメントに帰属しない調整額(棚卸資産の調整額等)が3億29百万円(前期は△41百万円)あります。
②財政状態の状況
当連結会計年度末の総資産は、498億15百万円と前期末比31億27百万円の増加となりました。その内訳は、流動資産が36億64百万円増加の300億80百万円、固定資産が5億37百万円減少の197億35百万円です。
流動資産の主な増減要因は、現金及び預金が19億59百万円の増加、受取手形及び売掛金が9億99百万円の増加、商品及び製品が8億円の増加です。
固定資産の主な増減は、有形固定資産が9億58百万円の減少、投資その他の資産が4億32百万円の増加です。
一方、負債合計は382億2百万円と前期末比17億75百万円の増加となりました。主な増減要因は、支払手形及び買掛金が16億16百万円の増加、短期借入金が3億88百万円の増加、設備関係支払手形の増加を主因とするその他(流動負債)が5億89百万円の増加、社債(1年内償還予定の社債を含む)が13億円の減少、長期借入金が5億21百万円の増加です。
純資産は、116億13百万円と前期末比13億52百万円の増加となりました。主な増減要因は、利益剰余金が、配当金の支払いと親会社株主に帰属する当期純利益との差額の8億69百万円の増加、その他の包括利益累計額が4億85百万円の増加です。
その結果、自己資本比率は23.2%となりました。
③キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物は、営業活動により40億4百万円の増加、投資活動により10億68百万円の減少、財務活動により10億5百万円の減少となり、その結果、前連結会計年度末に比べ19億59百万円増加し、当連結会計年度末には87億89百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
営業活動によるキャッシュ・フローは40億4百万円の収入(前期比12億39百万円の収入増)となりました。収入の主な要因は、税金等調整前当期純利益17億41百万円、減価償却費18億63百万円、減損損失6億93百万円、退職給付に係る負債の増加額2億69百万円、仕入債務の増加額15億88百万円、未収入金の減少を主因とするその他(営業活動によるキャッシュ・フロー)7億21百万円等であり、支出の主な要因は、売上債権の増加額9億50百万円、たな卸資産の増加額10億14百万円、法人税等の支払額7億83百万円等であります。
投資活動によるキャッシュ・フローは10億68百万円の支出(前期比6億1百万円の支出増)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出10億33百万円等によるものであります。
財務活動によるキャッシュ・フローは10億5百万円の支出(前期比2億55百万円の支出増)となりました。収入の主な要因は、短期借入金の純増額1億35百万円、長期借入金の純増額7億17百万円等であり、支出の主な要因は、社債の純減額13億26百万円、リース債務の返済による支出3億99百万円、配当金の支払額1億27百万円等であります。
④生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称金額(百万円)前年同期比(%)
界面活性剤17,61816.0
樹脂2,28610.1
化成品5,4318.5
スペシャリティーケミカル8,90815.5
その他365△0.7
合計34,60914.0

(注)金額は製造原価によっており、消費税等は含まれておりません。
b.受注実績
受注生産は、行っておりません。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称金額(百万円)前年同期比(%)
界面活性剤23,02012.6
樹脂2,9613.9
化成品6,0951.8
スペシャリティーケミカル10,57015.2
その他11423.0
合計42,76210.9

(注)1 上記金額には、消費税等は含まれておりません。
2 主要な相手先別の販売実績は、総販売実績に対する割合が10%未満のため、記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。
a.たな卸資産
当社グループは、たな卸資産の評価基準及び評価方法として総平均法に基づく原価法(収益性の低下による簿価切下げの方法)を採用しております。ただし、原材料の評価については移動平均法によっております。
b.投資有価証券
当社グループは、投資有価証券の期末における時価が、取得原価に比べ50%以上下落した場合には全て減損処理を行い、30~50%程度下落した場合には、当社グループの規定に基づき回復可能性を考慮して必要と認められた額について減損処理を行います。
c.貸倒引当金
当社グループは、債権の貸倒の損失に備えるため、貸倒引当金を計上しております。顧客の財政状態が悪化し、支払能力が低下した場合等、追加引当が必要となる可能性があります。
d.退職給付費用
当社グループは、退職給付費用及び債務について、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出しております。これらの前提条件には、割引率、将来の報酬水準、退職率及び死亡率などがあります。それぞれの前提条件は、現時点で十分に合理的と考えられる方法で計算されております。
なお、一部の連結子会社は、退職給付債務の算定にあたり簡便法を採用しております。
e.繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産について将来減算一時差異について回収可能性を十分に検討し、回収可能と判断した額を計上しております。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
(当社グループの当連結会計年度の経営成績等の状況について)
売上高は製品需要が総じて堅調に推移し、全セグメントにおいて増収となり、前期比10.9%増収の427億62百万円となりました。
セグメント別の売上構成は、界面活性剤53.8%(前期は53.0%)、樹脂6.9%(同7.4%)、化成品14.3%(同15.5%)、スペシャリティ-ケミカル24.7%(同23.8%)、その他0.3%(同0.2%)となっております。
利益面につきましては、国内外の原材料価格の値上りによる原料コスト増加の影響で売上原価率が上昇し、売上総利益率は17.3%と前期比1.1%低下しましたが、増収効果による利益増加がこれを上回り、売上総利益は前期比2億85百万円増益の73億93百万円となりました。販売費及び一般管理費は49憶94百万円と前期比1億円の増加となりましたが、対売上高比率は11.7%と前期比1.0%低下しました。その結果、営業利益は1億84百万円増益の23億98百万円となりました。
経常利益は、為替差損の前期比大幅な縮小や受取技術料等の寄与もあって、更に増益幅が拡大し前期比8億79百万円増益の24億37百万円となりました。しかし、親会社株主に帰属する当期純利益は、遺憾ながら前期に続き多額の固定資産の減損損失を計上したため、前期比6億79百万円の増益ながら9億97百万円に止まりました。
(当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因について)
外部要因として、お取引先の業界の景況と原材料価格の動向、内部要因として、東邦化学(上海)有限公司の業績の動向が挙げられます。
当社のお取引先は、幅広い業界に亘っており、各業界の景況並びにそこでのお取引先の状況が販売実績に影響します。当連結会計年度は、国内の底堅い景況を背景に、売上高は総じて堅調に推移し、特に主要セグメントである界面活性剤や電子情報材料関連のスペシャリティーケミカルにおいて製品需要が堅調で大幅な増加となりました。
原材料価格の動向につきましては、当社グループの主要原料は、原油(ナフサ)由来のものが多く、原油価格(ナフサ価格)の動向に大きく左右されます。当連結会計年度は、原油価格が上半期は値を下げたものの、下半期に入り徐々に値上りし利益率の低下要因となりましたが、全体としては比較的落ち着いたレンジでの動きとなりました。
東邦化学(上海)有限公司につきましては、当連結会計年度の売上高は、電子情報材料関連のアクリレートの増加や日本向けの販売支援等もあって前期比大幅に伸長し、工場の稼働率も上がってまいりましたが、厳しい原料高の事業環境から営業損益の改善が遅れ、黒字化を達成できませんでした。同社の黒字化につきましては、引き続き次期の最重要課題との認識で取り組んでまいります。
(当社グループの資本の財源及び資金の流動性について)
当社グループの事業運営に必要な資本の財源及び流動性については、自己資金のほか借入金等の有利子負債を活用し、全体のバランスをみながら安定的に確保することを基本方針としております。このうち有利子負債の調達に関しましては、短期運転資金については、短期借入金、受取手形割引等により、設備投資資金や長期運転資金については、長期借入金や社債及びリースにより、資金調達をしております。
今後の重要な資本的支出の予定は、後記「第3設備の状況 3設備の新設、除却等の計画 (1)重要な設備の新設等」に記載のとおりですが、その資金の調達に関しましても、上記方針に則り調達を実施する予定です。
なお、当連結会計年度末における借入金・社債・リース債務を含む有利子負債の残高は202億20百万円となっております。また、当連結会計年度末における、現金及び現金同等物の残高は87億89百万円となっております。
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、営業活動によるキャッシュ・フローが40億4百万円のプラスとなり、一方で、投資活動によるキャッシュ・フローが大型の設備投資等がなく10億68百万円のマイナスに止まりましたので、フリーキャッシュ・フロー(営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローの合計)は、29億35百万円のプラスとなりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、有利子負債の減少等で10億5百万円のマイナスとなりました。その結果、現金及び現金同等物は19億59百万円増加し資金の流動性は向上しました。
(経営方針・経営戦略・経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等について)
当社グループは、第7次中期経営計画において、最終年度(平成31年3月期)の連結売上高480億円、連結経常利益25億円を目標としており、この達成を目指してまいります。
また、経営上の達成状況を判断するための経営比率の目標は特に公表しておりませんが、自己資本利益率(ROE)や売上高営業利益率及び自己資本比率などの経営比率に留意しております。当連結会計年度は、自己資本利益率が9.2%(前連結会計年度3.2%)、売上高営業利益率が5.6%(同5.7%)となりました。また、自己資本比率は、当連結会計年度末23.2%と前期比1.4%改善いたしましたが、まだ低位の水準にあり、更なる引き上げに注力してまいります。
(セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容について)
界面活性剤
界面活性剤は、売上高に占める構成比率が53.8%と最大のセグメントであります。当期は、最大の分野であるトイレタリー用界面活性剤が大口ユーザー向けの販売増を主因に大幅な増収となったほか、主要分野である土木建築用薬剤が新規開発品の販売への寄与及び中国市場での拡販、並びにプラスチック用界面活性剤が主力の帯電防止剤等の伸長により増収となりました。また、前期低調であった紙パルプ用界面活性剤も消泡剤等の需要が回復し増収となるなど、総じて製品需要が堅調に推移した結果、セグメント全体の売上高は前期比12.6%の増収となりました。
セグメント利益は、原油価格の上昇に伴う主要原材料価格の値上りにより、利益率は低下したものの、増収効果により増益となりました。
樹脂
石油樹脂は、前期の原料不足による減産の影響で第2四半期まで低調に推移しましたが、その後需要が回復し若干の増収となりました。合成樹脂、樹脂エマルションはともに増収となり、セグメント全体の売上高は前期比3.9%の増収となりました。
セグメント利益は、石油樹脂の原料値上りに伴う採算の低下を主因に若干の減益となりました。
化成品
合成ゴム・ABS樹脂用ロジン系乳化重合剤は、海外販売向けが低調で数量、金額ともに減少となりましたが、一方で金属加工油剤は大口ユーザー向けの販売増により大幅な増収、石油添加剤も輸出の増加で増収となり、セグメント全体の売上高は前期比1.8%と若干の増収となりました。
セグメント利益は、合成ゴム・ABS樹脂用ロジン系乳化重合剤の販売の落ち込みと利益率の低下による影響を主因に大幅な減益となりました。
スペシャリティーケミカル
スペシャリティーケミカルは、界面活性剤セグメントに次ぐセグメントとして、電子情報材料関連製品を中心に業容が着実に拡大しており、今後も更なる成長が期待できると認識しております。
なかでも主要分野である電子・情報産業用の微細加工用樹脂は、半導体業界の好況を背景に大型の新規開発品の販売への寄与も相俟って堅調に推移しました。また、東邦化学(上海)有限公司の主要生産品目である電子情報材料関連のアクリレートも現地での販売が大幅に増加しました。溶剤は、IT関連事業向け特殊溶剤はやや低調だったものの、一般向け溶剤やブレーキ液基剤等が伸長し増収となりました。
その結果、セグメント全体の売上高は前期比15.2%の増収となりました。
しかし、セグメント利益は、アクリレートの原料高騰による採算の悪化と溶剤での主原料価格の値上りによる利益率の低下の影響により減益となりました。