有価証券報告書-第87期(2023/04/01-2024/03/31)

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2024/06/27 14:03
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(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の概要は次のとおりであります。
① 経営成績の状況
当連結会計年度における我が国経済は、新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行し、社会経済活動の正常化が進んだことから、緩やかな回復基調が続きました。しかしながら、世界的な金融引き締めや物価上昇による消費意欲の冷え込み、中国経済の停滞、ロシア・ウクライナ問題の長期化や中東情勢の緊迫化などにより、世界経済は厳しい状況となりました。
化学業界におきましては、世界的な需要の鈍化、とりわけ中国の景気低迷による需給関係の悪化がマイナス要因となり、厳しい状況が続きました。
このような経営環境下、当社グループの当連結会計年度の売上高は、海外の自動車関連や電子情報材料関連をはじめとする需要の低迷や、原料不足による石油樹脂の減産、香粧原料の大口ユーザー向け販売の減少等により、前期比4,764百万円、8.6%減収の50,596百万円となりました。
損益面につきましては、営業利益は771百万円となり、前期比大幅減益(44.3%減益)となりました。上期は、売上高の減少による収益へのマイナス影響が大きく、加えて人件費・設備費等の固定費の増加や2023年2月26日に発覚した当社サーバーへの不正アクセスに係る対応費用及び情報セキュリティ強化対策費用の発生もあり、上期の営業利益は256百万円にとどまりました。下期においても、主原料の値上がりや当社連結子会社東邦化学(上海)有限公司での安全規制対応工事の実施といったマイナス要因がありましたが、一方、製品価格の値上げや生産性改善等の採算改善への取り組みを進めたことや、第4四半期には電子情報産業用微細加工用樹脂等で売上高が前年同期を上回るなど製品需要にやや回復の兆しが見えはじめたことから、下期の営業利益は上期対比では改善し、514百万円となりました。また、経常利益は、前期比435百万円減益の743百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比430百万円減益の546百万円となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりです。
(金額:百万円、率:%)
セグメント売上高営業利益又は営業損失(△)
2023年
3月期
2024年
3月期
2023年
3月期
2024年
3月期
増減率利益率利益率
界面活性剤30,06227,574△8.37742.64271.6
樹脂4,9573,964△20.0△8△0.200.0
化成品6,9345,935△14.41341.990.2
スペシャリティーケミカル13,27212,997△2.14183.14073.1
報告セグメント小計55,22650,471△8.61,319844
その他247243△1.6218.562.8
調整額△112△11844△80
合計55,36150,596△8.61,3842.57711.5


(界面活性剤)
香粧原料は、一般洗浄剤の大口ユーザー向け販売の減少により25億円弱の大幅な減収となりました。プラスチック用添加剤は、上期において帯電防止剤等の販売が振るわず、下期の売上高は前年同期並みに回復したものの、通期では減収となりました。土木建築用薬剤は、下期においてコンクリート用関連薬剤の販売が振るわず減収となりました。農薬助剤は、国内外ともに主に上期の販売が低調で減収となりました。繊維助剤は、中国での販売がやや回復し増収となりました。紙パルプ用薬剤は、販売数量は減少したものの、製品売価の上昇により増収となりました。
その結果、当セグメント全体の売上高は、前期比2,487百万円、8.3%減収の27,574百万円となり、セグメント利益は、前期比346百万円減益の427百万円となりました。
(樹脂)
石油樹脂は、原料不足による大幅な減産の影響で、特に上期は前年同期比5割超の大幅減収となりましたが、下期は上期に比べると状況が改善し、通期では前期比3割強の減収となりました。合成樹脂は、上期において自動車部品向け等の販売が減少し、下期は前年同期比増収となったものの、通期では減収となりました。樹脂エマルションは、ガラス繊維用薬剤等の販売伸長により増収となりました。アクリレートは、中国における電子情報材料関連の需要の落ち込みを主因に、上期は前年同期比4割超の大幅減収となり、下期は上期対比では販売は回復したものの、通期でも3割近い減収となりました。
その結果、当セグメント全体の売上高は、前期比992百万円、20.0%減収の3,964百万円となり、セグメント利益は、0百万円(前期は8百万円の損失)となりました。
(化成品)
合成ゴム・ABS樹脂用ロジン系乳化重合剤は、海外の自動車関連需要の落ち込みの影響があり、加えてロジンの相場価格下落に伴う製品単価の値下がりもあり、上期は前年同期比4割超の減収となりましたが、下期には販売数量が前年同期に近い水準まで回復し、通期では前期比3割弱の減収となりました。金属加工油剤は、上期において水溶性切削油剤等の販売数量が減少したものの、下期の販売数量は前年同期並みに回復し、製品売価の上昇により増収となりました。石油添加剤は、上期において国内外ともに販売が低調で、下期は前年同期比増収となったものの、通期では減収となりました。
その結果、当セグメント全体の売上高は、前期比998百万円、14.4%減収の5,935百万円となり、セグメント利益は、前期比125百万円減益の9百万円となりました。
(スペシャリティーケミカル)
溶剤は、ブレーキ液基剤や液晶関連等の需要回復により増収となりました。電子情報産業用の微細加工用樹脂は、特に第2四半期から第3四半期にかけて半導体不況によるマイナス影響が大きく、第4四半期は前年同期比増収と回復の兆しが見えたものの、通期では減収となりました。
その結果、当セグメント全体の売上高は、前期比275百万円、2.1%減収の12,997百万円となり、セグメント利益は、前期比10百万円減益の407百万円となりました。
なお、上記の各セグメント利益の前期比の数値は、(セグメント情報等)「報告セグメントごとの売上高、利益又は損失、資産、負債その他の項目の金額に関する情報及び収益の分解情報」の表における「報告セグメント」の比較情報です。
加えて、報告セグメントに含まれないその他の事業セグメント(環境調査測定・分析業務等)の営業利益が6百万円、各セグメントに帰属しない調整額(棚卸資産の調整額等)が△80百万円(前期は44百万円)あります。
② 財政状態の状況
当連結会計年度末の総資産は、69,936百万円と前期比1,985百万円の増加となりました。その内訳は、流動資産が1,157百万円増加の38,126百万円、固定資産が827百万円増加の31,810百万円です。
流動資産の主な増減要因は、現金及び預金が675百万円の増加、受取手形が382百万円の増加、商品及び製品が106百万円の増加、原材料及び貯蔵品が137百万円の減少、その他(流動資産)が未収入金の増加を主因に193百万円の増加です。
固定資産の主な増減要因は、有形固定資産が126百万円の増加、無形固定資産が75百万円の減少、投資その他の資産が777百万円の増加です。
一方、負債合計は50,776百万円と前期末比590百万円の増加となりました。主な増減要因は、流動負債で、支払手形及び買掛金が643百万円の減少、1年内償還予定の社債が500百万円の減少、未払法人税等が169百万円の減少、その他(流動負債)が未払消費税等や設備関係支払手形の増加を主因に932百万円の増加、固定負債で、社債が300百万円の減少、長期借入金が273百万円の増加、リース債務が758百万円の増加、退職給付に係る負債が170百万円の増加です。
純資産は、19,160百万円と前期末比1,395百万円の増加となりました。主な増減要因は、利益剰余金が、配当金の支払いと親会社株主に帰属する当期純利益との差額の231百万円の増加、その他の包括利益累計額が、その他有価証券評価差額金と為替換算調整勘定の増加を主因に1,164百万円の増加です。
その結果、自己資本比率は27.3%となりました。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物は、営業活動により3,402百万円の増加、投資活動により1,928百万円の減少、財務活動により900百万円の減少となり、その結果、前連結会計年度末に比べ675百万円増加し、当連結会計年度末には6,558百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
営業活動によるキャッシュ・フローは3,402百万円の収入(前期比1,702百万円の収入増)となりました。収入の主な要因は、税金等調整前当期純利益722百万円、減価償却費2,954百万円、退職給付に係る負債の増加額143百万円、棚卸資産の減少額114百万円等であり、支出の主な要因は、売上債権の増加額177百万円、仕入債務の減少額758百万円、法人税等の支払額396百万円等であります。
投資活動によるキャッシュ・フローは1,928百万円の支出(前期比2,663百万円の支出減)となりました。支出の主な要因は、有形固定資産の取得による支出1,914百万円等であります。
財務活動によるキャッシュ・フローは900百万円の支出(前期は1,417百万円の収入)となりました。収入の主な要因は、長期借入金の純増額294百万円、セール・アンド・リースバックによる収入300百万円等であり、支出の主な要因は、社債の償還による支出800百万円、リース債務の返済による支出317百万円、配当金の支払額315百万円等であります。
④ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称金額(百万円)前年同期比(%)
界面活性剤21,138△11.8
樹脂3,475△21.8
化成品5,346△13.0
スペシャリティーケミカル11,787△6.0
その他63△14.6
合計41,811△11.4

(注) 金額は、製造原価によっております。
b.受注実績
受注生産は、行っておりません。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称金額(百万円)前年同期比(%)
界面活性剤27,574△8.3
樹脂3,964△20.0
化成品5,935△14.4
スペシャリティーケミカル12,997△2.1
その他125△7.3
合計50,596△8.6

(注) 主要な相手先別の販売実績は、総販売実績に対する割合が10%未満のため、記載を省略しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討
(当社グループの当連結会計年度の経営成績等の状況について)
売上高は、海外の自動車関連や電子情報材料関連をはじめとする需要の低迷や、原料不足による石油樹脂の減産、香粧原料の大口ユーザー向け販売の減少等により、前期比4,764百万円、8.6%減収の50,596百万円となりました。
セグメント別の売上構成は、界面活性剤54.5%(前期は54.3%)、樹脂7.8%(同9.0%)、化成品11.7%(同12.5%)、スペシャリティーケミカル25.7%(同24.0%)、その他0.2%(同0.2%)となっております。
売上総利益は、売上高総利益率が13.5%と前期比0.3%改善したものの、減収によるマイナス影響により、前期比456百万円減益の6,836百万円となりました。
販売費及び一般管理費は、2023年2月26日に発覚した当社サーバーへの不正アクセスに係る対応費用及び情報セキュリティ強化対策費用の発生等により156百万円増加しました。その結果、営業利益は前期比613百万円減益の771百万円となりました。
営業外損益は、支払利息等により27百万円のマイナス(前期は205百万円のマイナス)となり、その結果、経常利益は前期比435百万円減益の743百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比430百万円減益の546百万円となりました。
(当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因について)
外部要因として、お取引先の業界の景況と原材料価格の動向、内部要因として東邦化学(上海)有限公司の業績の動向が挙げられます。
当社のお取引先は、幅広い業界に亘っており、各業界の景況並びにそこでのお取引先の業績の状況が販売実績に影響します。当連結会計年度は、中国をはじめとする世界的な需要の鈍化により、海外の自動車関連や電子情報材料関連をはじめ多くの業界において販売は低調となりました。
東邦化学(上海)有限公司につきましては、当連結会計年度は、中国の景気低迷により需要が振るわなかったことに加え、安全規制対応工事のために生産設備の稼働を一時停止した影響が大きく、営業利益は赤字となりました。しかしながら、中国の景気低迷下、中国と日本との原料調達価格の差が拡大し、原料調達面で同社の優位性はより高まっております。同社は、大型の生産設備を有し生産性が高く、原料調達面の優位性も加わり、その利点を十分に活かすため、国内工場からの生産移管に注力しております。
その他、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性のあるリスクについては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりです。
(当社グループの資本の財源及び資金の流動性について)
当社グループの事業運営に必要な資本の財源及び流動性については、自己資金のほか借入金等の有利子負債を活用し、全体のバランスをみながら安定的に確保することを基本方針としております。このうち有利子負債の調達に関しましては、短期運転資金については、短期借入金、受取手形割引等により、設備投資資金や長期運転資金については、長期借入金や社債及びリースにより、資金調達をしております。
今後の重要な資本的支出の予定は、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除去等の計画」に記載のとおりですが、その資金調達に関しましても、上記方針に則り調達を実施する予定です。
なお、当連結会計年度末における借入金・社債・リース債務を含む有利子負債の残高は30,265百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は6,558百万円となっております。
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、営業活動によるキャッシュ・フローが3,402百万円のプラスとなりました。一方で、投資活動によるキャッシュ・フローが1,928百万円のマイナスとなりましたので、フリーキャッシュ・フロー(営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローの合計)は1,474百万円のプラスと、6期ぶりのプラスとなりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、900百万円のマイナスとなりました。その結果、現金及び現金同等物は675百万円の増加となっております。
(参考)キャッシュ・フロー関連指標の推移
2021年
3月期
2022年
3月期
2023年
3月期
2024年
3月期
自己資本比率(%)25.825.326.027.3
時価ベースの
自己資本比率
(%)18.516.815.115.8
キャッシュ・フロー
対有利子負債比率
(年)9.216.98.3
インタレスト・
カバレッジ・レシオ
(倍)9.45.410.2

(注1)
・自己資本比率:自己資本÷総資産
・時価ベース自己資本比率:株式時価総額÷総資産
・キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債÷キャッシュ・フロー
・インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー÷支払利息
(注2)
・各指標は、連結ベースの財務数値より算出しております。
・株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。
・キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローを利用しております。
・有利子負債は連結貸借対照表に計上されている社債・借入金の合計額を対象としております。
・支払利息は連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。
(経営方針・経営戦略・経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等について)
当社グループは、2023年3月期を初年度とする「TOHO Step Up Plan 2024」(以下「中計」という。)において、売上高、営業利益、売上高営業利益率、純資産額、自己資本比率、自己資本利益率(ROE)、1株当たり配当額の7つの指標を数値目標としております。
各指標の2025年3月期の目標値(中計で掲げた目標値)と2024年3月期の実績は下記のとおりです。
2025年
3月期
(計画)
2024年
3月期
(実績)
売上高(百万円)60,00050,596
営業利益(百万円)3,000771
売上高営業利益率(%)5.01.5
純資産額(百万円)20,50019,160
自己資本比率(%)28.027.3
ROE(%)10.0以上3.0
1株当たり配当額(円)2017

当連結会計年度は「(1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおり、売上高は前期比8.6%の減収となり、営業利益は大幅減益(44.3%減益)となりました。その結果、売上高営業利益率は1.5%となり、前期比1.0%低下いたしました。純資産額は、利益剰余金の増加に加え、その他有価証券評価差額金や為替換算調整勘定が増加したことがプラス要因となり、前期末比1,395百万円増加いたしました。自己資本比率は、純資産額の増加により前期末比1.3%改善いたしました。ROEは、親会社株主に帰属する当期純利益が前期比減益となったことに伴って低下し、3.0%となりました。1株当たり配当額は、親会社株主に帰属する当期純利益が前期比減益であったものの、株主の皆さまへの収益還元を重視し、また、2025年3月期以降の業績回復を見込み、前期比2円増配の17円配当といたしました。
2025年3月期は、半導体不況の底打ち及び回復により、電子情報産業用の微細加工用樹脂の販売伸長が期待されます。また、その他の分野も全般的に、製品需要は緩やかに回復に向かうものと見られます。一方、海外メーカーとの競合等、厳しい環境は続くものと見られますが、2025年3月期は、2024年3月期に落ち込んだ業績を確実に2023年3月期以前の水準まで回復させることに全力を挙げてまいります。中計に掲げた数値目標の達成は難しい状況にありますが、業績改善に向けた足場を固めるため、引き続き中計に掲げた重要課題に全力で取り組んでまいります。(中計の重要課題は「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (5)対処すべき課題」に記載しております。)
② 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。
連結財務諸表の作成に際し、当連結会計年度末日における報告数値に影響を与える見積りは、過去の実績や当社グループを取り巻く環境等に応じて合理的と考えられる方法により計上しておりますが、見積り特有の不確実性があるために、実際の結果は異なる場合があります。
当社は、特に以下の会計上の見積りが当社の財務諸表に重要な影響を与えるものと考えております。
a.棚卸資産
当社グループは、棚卸資産の評価基準及び評価方法として移動平均法に基づく原価法(収益性の低下による簿価切下げの方法)を採用しております。
当社グループの保有する棚卸資産は、経済環境の影響を受けて価格が大きく変動する傾向にあるため、市場価格が下落した場合には、棚卸資産の簿価を切り下げ、売上原価を増加させることになります。
b.投資有価証券
当社グループは、投資有価証券の期末における時価が、取得原価に比べ50%以上下落した場合には全て減損処理を行い、30~50%程度下落した場合には、当社グループの規定に基づき回復可能性を考慮して必要と認められた額について減損処理を行います。
将来の市況悪化又は投資先の業績不振により、現在の簿価に反映されていない損失又は簿価の回収不能額が生じた場合、評価損の計上が必要となる可能性があります。
c.貸倒引当金
当社グループは、債権の貸倒の損失に備えるため、貸倒引当金を計上しております。一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を検討し、回収不能見込額を計上しております。一般債権の貸倒実績率については、過去3期の貸倒実績に基づき算出しております。顧客の財政状態が悪化し、支払能力が低下した場合等、追加引当が必要となる可能性があります。
d.退職給付費用
当社グループは、退職給付費用及び債務について、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出しております。これらの前提条件には、割引率、将来の報酬水準、退職率及び死亡率などがあります。それぞれの前提条件は、現時点で十分に合理的と考えられる方法で計算されております。退職給付費用及び債務の計算に影響を与える最も重要な前提条件は、割引率です。当連結会計年度の退職給付費用の計算に適用した割引率は0.6%です。割引率は、現在利用可能かつ退職給付債務の満期までの期間において利用可能であると見込まれる高格付けの債券の利回りなどを考慮して決定しています。
なお、一部の連結子会社は、退職給付債務の算定にあたり簡便法を採用しております。
退職給付費用及び債務の計算の前提条件と実際の結果に差異が生じた場合や、前提条件自体が変更になった場合、退職給付債務及び将来の退職給付費用に影響を及ぼす可能性があります。
e.繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産について回収可能性を十分に検討し、回収可能と判断した額を計上しております。回収可能性の判断においては、将来の収益力に基づく課税所得の見積りにより、当連結会計年度末における将来減算一時差異等のうち、将来の税金負担額を軽減することができる範囲内で繰延税金資産を計上しております。課税所得の見積りは、取締役会の承認を得た事業計画を基礎としております。
事業計画における主要な仮定は、原料価格、製品の販売数量及び販売価格であります。当該仮定に変動が生じ、課税所得の見積額が変動した場合は、繰延税金資産の回収可能性の評価を見直す可能性があります。また、税制や税率が変更された場合、繰延税金資産の回収可能性の評価に影響が及ぶ可能性があります。
f.固定資産の減損
当社グループは、固定資産のうち、収益性の低下等により投資額の回収が見込めなくなった資産又は資産グループについて、帳簿価格を回収可能価額まで減損し、当該減少額を減損損失として計上することとしております。減損損失を判定するに当たりましては、販売・生産拠点を基礎としてグルーピングを行い、減損の兆候を判定しております。
減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定に当たっては慎重に検討しておりますが、経営環境の変化による収益性の変動等により、想定していた投資回収が見込めなくなり、減損の必要性を認識した場合、減損処理を実施し、減損損失が発生する可能性があります。