有価証券報告書-第82期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)

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2019/06/27 14:25
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(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
なお、「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」(企業会計基準第28号 平成30年2月16日)等を当連結会計年度の期首から適用しており、財政状態については遡及処理後の前連結会計年度末の数値で比較を行っております。
①経営成績の状況
当連結会計年度における我が国経済は、相次ぐ自然災害の影響はあったものの、堅調な企業業績を反映して設備投資が増加し、個人消費は雇用・所得環境の改善を背景に底堅く推移するなど、緩やかな回復基調が続きました。一方、通商問題の動向が世界経済に与える影響や、中国経済の先行き等が懸念され、今後も先行き不透明な状況が続くことが予想されます。
化学業界においては、石油化学製品の需要は国内では総じて堅調に推移しましたが、一方で、ナフサ価格の上昇による原料高や中国の景気減速等が企業業績の下押し要因となりました。今後についても、貿易摩擦に起因する世界経済の減速や海外の大型新設プラント稼働に伴う安価な石油化学製品の流入による競争激化などが懸念されます。
このような経営環境下、当社グループの当連結会計年度の売上高は、界面活性剤セグメントやスペシャリティーケミカルセグメントの電子情報材料関連等が好調に推移し、前期比2,532百万円、5.9%増収の45,294百万円となりました。
利益面は、増収による収益効果並びに東邦化学(上海)有限公司の赤字幅の縮小があったものの、原材料価格の上昇や経費増加の影響を補いきれず、当連結会計年度の営業利益は、前期比198百万円減益の2,200百万円となりました。経常利益は、為替差損益の影響や前期は受取技術料の一時収入があったこともあり、減益幅が更に拡大し、前期比543百万円減益の1,894百万円となりました。一方、親会社株主に帰属する当期純利益は、前期に計上した東邦化学(上海)有限公司に係る固定資産の減損が当期はなかったことや、過年度に税務上有税にて計上し、税効果会計上評価性引当額を計上していた同社に係る関係会社出資金評価損の一部(2,418百万円)が税務上損金算入されたことにより、法人税等の額が減少し、前期比910百万円増益の1,908百万円となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりです。
(界面活性剤)
香粧原料(注1)は、ヘアケア用基剤や新規開発のスキンケアポリマー等の化粧品用原料が伸長し、増収となりました。プラスチック用添加剤(注2)は、主力の帯電防止剤や乳化重合剤が共に低調で減収となりました。土木建築用薬剤は、国内外でコンクリート用関連薬剤が堅調に推移し増収となりました。紙パルプ用薬剤(注3)は、消泡剤等が伸長し増収となりました。農薬助剤は、乳剤用等の海外販売向けが低調で若干の減収となりました。繊維助剤は、紡糸油剤用等の海外販売向けや中国市場での販売が伸長し大幅な増収となりました。
その結果、当セグメント全体の売上高は、前期比1,378百万円、6.0%増収の24,398百万円となり、セグメント利益は、原材料高による利益率の低下を主因に前期比5百万円減益の1,403百万円となりました。
(注1)「トイレタリー用界面活性剤」は、呼称を「香粧原料」と変更いたしました。
(注2)「プラスチック用界面活性剤」は、呼称を「プラスチック用添加剤」と変更いたしました。
(注3)「紙パルプ用界面活性剤」は、呼称を「紙パルプ用薬剤」と変更いたしました。
(樹脂)
石油樹脂は、大口ユーザー向け販売の需要回復により大幅な増収となりました。合成樹脂は、トナーバインダー用原料等の落ち込みを主因に減収となりました。樹脂エマルションは、金属表面処理剤等が振るわず、減収となりました。
その結果、当セグメント全体の売上高は、前期比366百万円、12.4%増収の3,327百万円となり、セグメント利益は、前期比29百万円増益の74百万円となりました。
(化成品)
合成ゴム・ABS樹脂用ロジン系乳化重合剤は、中国市場での販売減を主因に減収となりました。石油添加剤は、脱ロウ助剤の需要回復や潤滑油用添加剤の海外向け販売増により、増収となりました。金属加工油剤は、水溶性切削油剤の大口ユーザー向け販売が伸長し増収となりました。
その結果、当セグメント全体の売上高は、前期比26百万円、0.4%減収の6,068百万円となり、セグメント利益は、前期比40百万円増益の214百万円となりました。
(スペシャリティーケミカル)
溶剤は、電子材料用やブレーキ液基剤等が伸長し増収となりました。電子情報産業用の微細加工用樹脂は、半導体関連向けが引き続き堅調に推移し大幅な増収となりました。アクリレートは、中国市場での電子情報材料関連向けの販売が第4四半期に入り需要が落ち込み、減収となりました。
その結果、当セグメント全体の売上高は、前期比812百万円、7.7%増収の11,383百万円となり、セグメント利益は、溶剤分野での原材料高による利益率の悪化を主因に前期比37百万円減益の342百万円となりました。
なお、上記の各セグメント利益の前期比の数値は、(セグメント情報等)「報告セグメントごとの売上高、利益又は損失、資産、負債その他の項目の金額に関する情報」の表における「報告セグメント」の比較情報です。
その他に、各セグメントに帰属しない調整額(棚卸資産の調整額等)が130百万円(前期は329百万円)あります。
②財政状態の状況
当連結会計年度末の総資産は、52,407百万円と前期末比2,592百万円の増加となりました。その内訳は、流動資産が730百万円増加の30,607百万円、固定資産が1,861百万円増加の21,799百万円です。
流動資産の主な増減要因は、現金及び預金が721百万円の減少、受取手形及び売掛金が1,053百万円の増加、原材料及び貯蔵品が247百万円の増加、還付法人税等の増加を主因とするその他(流動資産)が228百万円の増加です。
固定資産の主な増減要因は、有形固定資産が1,722百万円の増加、投資その他の資産が124百万円の増加です。
一方、負債合計は39,317百万円と前期末比1,116百万円の増加となりました。主な増減要因は、支払手形及び買掛金が271百万円の増加、短期借入金が961百万円の減少、未払法人税等が533百万円の減少、未払金と設備関係支払手形の増加を主因とするその他(流動負債)が879百万円の増加、長期借入金が1,714百万円の増加、厚生年金基金解散損失引当金が457百万円の減少です。
純資産は、13,089百万円と前期末比1,476百万円の増加となりました。主な増減要因は、利益剰余金が、配当金の支払いと親会社株主に帰属する当期純利益との差額の1,694百万円の増加、その他の包括利益累計額が215百万円の減少です。
その結果、自己資本比率は24.8%となりました。
③キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物は、営業活動により1,998百万円の増加、投資活動により2,867百万円の減少、財務活動により258百万円の増加となり、その結果、前連結会計年度末に比べ721百万円減少し、当連結会計年度末には8,068百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
営業活動によるキャッシュ・フローは1,998百万円の収入(前期比2,006百万円の収入減)となりました。収入の主な要因は、税金等調整前当期純利益1,852百万円、減価償却費1,857百万円、退職給付に係る負債の増加額224百万円、仕入債務の増加額350百万円等であり、支出の主な要因は、売上債権の増加額1,186百万円、たな卸資産の増加額265百万円、法人税等の支払額1,016百万円等であります。
投資活動によるキャッシュ・フローは2,867百万円の支出(前期比1,798百万円の支出増)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出2,770百万円等によるものであります。
財務活動によるキャッシュ・フローは258百万円の収入(前期は1,005百万円の支出)となりました。収入の主な要因は、長期借入金の純増額1,655百万円等であり、支出の主な要因は、短期借入金の純減額770百万円、リース債務の返済による支出396百万円、配当金の支払額213百万円等であります。
④生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称金額(百万円)前年同期比(%)
界面活性剤18,6716.0
樹脂2,51810.1
化成品5,261△3.1
スペシャリティーケミカル9,3104.5
その他51541.2
合計36,2764.8

(注)金額は製造原価によっており、消費税等は含まれておりません。
b.受注実績
受注生産は、行っておりません。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称金額(百万円)前年同期比(%)
界面活性剤24,3986.0
樹脂3,32712.4
化成品6,068△0.4
スペシャリティーケミカル11,3837.7
その他1161.6
合計45,2945.9

(注)1 上記金額には、消費税等は含まれておりません。
2 主要な相手先別の販売実績は、総販売実績に対する割合が10%未満のため、記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。
a.たな卸資産
当社グループは、たな卸資産の評価基準及び評価方法として総平均法に基づく原価法(収益性の低下による簿価切下げの方法)を採用しております。ただし、原材料の評価については移動平均法によっております。
b.投資有価証券
当社グループは、投資有価証券の期末における時価が、取得原価に比べ50%以上下落した場合には全て減損処理を行い、30~50%程度下落した場合には、当社グループの規定に基づき回復可能性を考慮して必要と認められた額について減損処理を行います。
c.貸倒引当金
当社グループは、債権の貸倒の損失に備えるため、貸倒引当金を計上しております。顧客の財政状態が悪化し、支払能力が低下した場合等、追加引当が必要となる可能性があります。
d.退職給付費用
当社グループは、退職給付費用及び債務について、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出しております。これらの前提条件には、割引率、将来の報酬水準、退職率及び死亡率などがあります。それぞれの前提条件は、現時点で十分に合理的と考えられる方法で計算されております。
なお、一部の連結子会社は、退職給付債務の算定にあたり簡便法を採用しております。
e.繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産について将来減算一時差異について回収可能性を十分に検討し、回収可能と判断した額を計上しております。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
(当社グループの当連結会計年度の経営成績等の状況について)
売上高は、製品需要が総じて堅調に推移し、前期比5.9%増収の45,294百万円となりました。
セグメント別の売上構成は、界面活性剤53.9%(前期は53.8%)、樹脂7.3%(同6.9%)、化成品13.4%(同14.3%)、スペシャリティーケミカル25.1%(同24.7%)、その他0.3%(同0.3%)となっております。
損益面につきましては、原材料価格値上りによる原料コストの増加と人件費や燃料費等の経費増加の影響で売上原価率が上昇し、売上総利益は前期比21百万円減益の7,371百万円となりました。売上総利益率は16.3%と前期比1.0%低下しました。
販売費及び一般管理費は、人件費や運賃、倉敷料等の増加を主因に3.5%増加しました。その結果、営業利益は、198百万円減益の2,200百万円となりました。
営業外損益は、306百万円のマイナス(前期は38百万円のプラス)でした。支払利息等の金融費用は前期比57百万円減少となりましたが、前期は、受取技術料の一時収入(190百万円)や為替差益(34百万円)の発生があったのに対し、当期は為替差損(185百万円)などが発生したためです。その結果、経常利益は、前期比543百万円減益の1,894百万円となりました。一方、親会社株主に帰属する当期純利益は、前期に計上した東邦化学(上海)有限公司に係る固定資産の減損が当期はなかったことや、過年度に税務上有税にて計上し、税効果会計上評価性引当額を計上していた同社に係る関係会社出資金評価損の一部(2,418百万円)が税務上損金算入されたことにより、法人税等の額が減少し、前期比910百万円増益の1,908百万円となりました。
(当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因について)
外部要因として、お取引先の業界の景況と原材料価格の動向、内部要因として、東邦化学(上海)有限公司の業績の動向が挙げられます。
当社のお取引先は、幅広い業界に亘っており、各業界の景況並びにそこでのお取引先の業績の状況が販売実績に影響します。当連結会計年度は、国内の底堅い景況を背景に、売上高は総じて堅調に推移し、特に主要セグメントである界面活性剤や電子情報材料関連のスペシャリティーケミカルにおいて販売が伸長し、増収となりました。
原材料価格の動向につきましては、当社グループの主要原料は、原油(ナフサ)由来のものが多く、原油価格(ナフサ価格)の動向に大きく左右されますが、当連結会計年度は、原油価格が上半期から徐々に上昇し、第4四半期に入り一時下落局面があったものの、前期水準を上回り利益の下押し要因となりました。
東邦化学(上海)有限公司につきましては、当連結会計年度の売上高は、中国内向け販売の増加や日本向け販売の増加等により増収基調が続き、業績も徐々に改善し下期には営業損益の黒字化を実現できたものの、期初に計画した通期での営業損益、経常損益の黒字化は達成できませんでした。
(当社グループの資本の財源及び資金の流動性について)
当社グループの事業運営に必要な資本の財源及び流動性については、自己資金のほか借入金等の有利子負債を活用し、全体のバランスをみながら安定的に確保することを基本方針としております。このうち有利子負債の調達に関しましては、短期運転資金については、短期借入金、受取手形割引等により、設備投資資金や長期運転資金については、長期借入金や社債及びリースにより、資金調達をしております。
今後の重要な資本的支出の予定は、後記21頁「設備の新設、除却等の計画」に記載のとおりですが、その資金の調達に関しましても、上記方針に則り調達を実施する予定です。
なお、当連結会計年度末における借入金・社債・リース債務を含む有利子負債の残高は20,686百万円となっております。また、当連結会計年度末における、現金及び現金同等物の残高は8,068百万円となっております。
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、営業活動によるキャッシュ・フローは、1,998百万円のプラスとなりましたが、一方で、投資活動によるキャッシュ・フローが、設備投資の増加により、2,867百万円のマイナスとなりましたので、フリーキャッシュ・フロー(営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローの合計)は、868百万円のマイナスと5期振りのマイナスとなりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入による収入増により258百万円のプラスとなりました。その結果、現金及び現金同等物は721百万円の減少となっております。
(経営方針・経営戦略・経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等について)
当社グループは、前記1(2)で記載の通り、2019年度を初年度とする新三ヵ年中期経営計画を策定いたしました。計画においては、経営上の目標の達成状況を判断する指標として、最終年度(2021年度)に達成すべき数値目標(連結)を、以下の通り設定しております。
①売上高 51,000百万円 ②営業利益 3,000百万円 ③売上高営業利益率 5.9% ④純資産額 17,000百万円⑤自己資本比率 27.0% ⑥ROE 10.0%以上 ⑦一株当たり配当額20円
(セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容について)
―セグメント別の売上高とセグメント利益の数値については前記3(1)をご参照下さい―
界面活性剤
界面活性剤は、売上高に占める構成比率は最大のセグメントであります。当期は、主要分野である香粧原料が、ヘアケア用基剤やスキンケアポリマー等の化粧品用原料等の販売増加を主因に増収となりましたが、化粧品用向けについては今後ますます成長が期待できる分野として注力をしてまいります。土木建築用薬剤は、従来のコンクリート関連薬剤に加え新建材ボード用の混和剤が伸長した他、中国市場での販売拡大も寄与し増収となりました。その他、繊維助剤は、中国市場でガラス繊維用などが引き続き順調に伸長しております。紙パルプ用薬剤は、サイズ剤は低調でしたが、消泡剤や脱墨剤が伸長し増収となりました。一方、プラスチック用添加剤は主力の帯電防止剤や自動車、家電関連の乳化重合剤が、共に主要ユーザー向けの販売が低調で減収となっております。
樹脂
石油樹脂は、前期低調だった大口ユーザー向けの販売が回復し大幅な増収となりました。合成樹脂は、トナーバインダー用原料が不振だった他、主力の冷蔵機器用などの断熱ウレタンフォーム薬剤も伸び悩みました。樹脂エマルションは、金属表面処理剤が落ち込み、フロアーポリッシュ用も苦戦しました。
化成品
合成ゴム・ABS樹脂用ロジン系乳化重合剤は、中国市場での厳しい事業環境を反映し販売が低調で、数量、金額ともに減少となりました。一方、金属加工油剤は、大口ユーザー向けの切削油剤の販売が前期から引き続き堅調に推移し増収となりました。石油添加剤も、前期落ち込んだ国内ユーザー向けの脱ロウ助剤の販売が回復、また海外向けも東南アジア等への輸出増加により増収となりました。
スペシャリティーケミカル
スペシャリティーケミカルは、界面活性剤セグメントにつぐ売上規模で、電子情報材料関連を中心に業容が拡大しており、今後も最も高い成長が期待できるセグメントであると認識しております。
なかでも主要分野である電子情報産業用の微細加工用樹脂は、半導体業界の好況を背景に大型の新規開発品の販売寄与もあって堅調に推移しました。同分野については今後も旺盛な需要増が予想されるため、これにしっかりと応えて行ける増産体制の確立が今後の課題となります。一方、東邦化学(上海)有限公司の主要生産品目である電子情報材料関連のアクリレートは、第3四半期までは増収基調でしたが、第4四半期に入り需要が落ち込み、今後の需要動向に留意しております。溶剤は、IT関連事業向け特殊溶剤やブレーキ液基剤等を中心に増収となりましたが、採算面では原材料高の影響を大きく受け苦戦いたしました。