有価証券報告書-第84期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の概要は次のとおりであります。
① 経営成績の状況
当連結会計年度における我が国経済は、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う国内外の経済活動の停滞により、第1四半期から景気が急速に悪化しました。その後は社会経済活動が徐々に再開し、持ち直しの動きが続いているものの、新型コロナウイルス感染症の収束は未だ見通せず、当面は、不透明で厳しい環境が続くと予想されます。
化学業界におきましても、第1四半期から自動車をはじめとする多くの産業分野で需要が減少し、事業環境は悪化しました。半導体関連材料など堅調な需要を維持している分野もありますが、コロナ禍以前の水準への需要回復にはなお時間を要する産業分野も多く、また、復調が期待された自動車生産においては半導体不足による減産の影響が懸念されます。加えて、中国経済の回復等により原料価格に上昇の動きがみられ、本格的な需要回復に先行して原料調達コストが増加することによる収益への悪影響が懸念されます。
このような厳しい経営環境下、当社グループにおいても自動車市場向け製品をはじめ、幅広い分野にわたって需要が落ち込みましたが、製品の販売状況は第1四半期を底に、その後は次第に回復し、下半期の売上高は前年同期を若干上回る水準まで回復しました。しかしながら、上半期が前年同期比10.0%の大幅な減収であったことから、当連結会計年度の売上高は、前期比1,505百万円、3.6%減収の40,649百万円となりました。
損益面につきましては、大幅な売上の減少による収益の悪化に加え、原材料価格の急落に伴って第1四半期に計上した在庫評価損(517百万円)及びたな卸資産の評価方法の変更に伴う損益へのマイナス影響(143百万円)もあり、当連結会計年度の営業利益は前期比619百万円減益の1,386百万円、経常利益は前期比254百万円減益の1,425百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比373百万円減益の1,005百万円となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりです。
(界面活性剤)
香粧原料は、インバウンド需要の急減や外出自粛等の影響により、スキンケア、サンケア製品向け基剤や美容室用ヘアケア製品向け基剤などが低調であった一方、一般洗浄剤は、家庭用台所洗剤向けが好調であったことや、前期にあった大口ユーザーからの洗濯洗剤向けの一時的な需要減少が今期はなかったことから販売が堅調で、全体としては僅かに増収となりました。プラスチック用添加剤は、主力の帯電防止剤や乳化重合剤が下期に持ち直したものの、農業フィルム用防曇剤等が落ち込み減収となりました。土木建築用薬剤は、生コンクリート市場の低迷に伴い、コンクリート用関連薬剤等が振るわず減収となりました。農薬助剤は、国内外ともに販売が好調で、大幅な増収となりました。繊維助剤は、中国での販売は堅調を維持したものの国内販売が振るわず減収となりました。紙パルプ用薬剤は、ペーパレス化の進展や広告チラシの減少等による紙需要の減少に伴い、消泡剤や脱墨剤が低調で減収となりました。
その結果、当セグメント全体の売上高は、前期比512百万円、2.2%減収の22,669百万円となり、セグメント利益は、前期比309百万円減益の948百万円となりました。なお、セグメント利益の中には在庫評価損299百万円が含まれております。
(樹脂)
石油樹脂は、大口ユーザーでの生産調整を主因に減収となりました。合成樹脂は、コロナ禍の影響により業務用冷蔵庫の需要が落ち込んだため、冷蔵機器用断熱ウレタンフォーム原液が不振であったことなどから減収となりました。樹脂エマルションは、飲食店をはじめとする店舗の休業が増えたことにより、業務用フロアーポリッシュ向けが低調で減収となりました。
その結果、当セグメント全体の売上高は、前期比382百万円、12.5%減収の2,678百万円となり、セグメント利益は、前期比105百万円減益の24百万円となりました。なお、セグメント利益の中には在庫評価損19百万円が含まれております。
(化成品)
合成ゴム・ABS樹脂用ロジン系乳化重合剤は、国内外ともに自動車関連需要が落ち込み、減収となりました。金属加工油剤は、水溶性切削油剤の大口ユーザー向け販売が低調で、減収となりました。石油添加剤は、脱蝋助剤等が国内外ともに不振で、大幅な減収となりました。
その結果、当セグメント全体の売上高は、前期比604百万円、11.9%減収の4,455百万円となり、セグメント利益は、前期比59百万円減益の76百万円となりました。なお、セグメント利益の中には在庫評価損52百万円が含まれております。
(スペシャリティーケミカル)
溶剤は、自動車生産の減少に伴うブレーキ液基剤の販売の落ち込みを主因に減収となりました。電子情報産業用の微細加工用樹脂は、テレワークの普及に伴う通信インフラの整備や5Gの商用化等により半導体関連の需要が拡大し、増収となりました。アクリレートは、国内において外出自粛等の影響でボディケア用品向けの需要が落ち込んだこと、また中国市場では新型コロナウイルスの影響で電子情報材料関連の需要が落ち込み、下期は回復に転じたものの、そのペースが鈍かったことから減収となりました。
その結果、当セグメント全体の売上高は、前期比2百万円、0.02%減収の10,765百万円となり、セグメント利益は、前期比71百万円減益の320百万円となりました。なお、セグメント利益の中には在庫評価損143百万円が含まれております。
なお、上記の各セグメント利益の前期比の数値は、(セグメント情報等)「報告セグメントごとの売上高、利益又は損失、資産、負債その他の項目の金額に関する情報」の表における「報告セグメント」の比較情報です。
加えて、報告セグメントに含まれないその他の事業セグメント(環境調査測定・分析及び物流倉庫業務等)の営業損失が1百万円、各セグメントに帰属しない調整額(棚卸資産の調整額等)が18百万円(前期は91百万円)あります。
② 財政状態の状況
当連結会計年度末の総資産は、58,416百万円と前期末比5,117百万円の増加となりました。その内訳は、流動資産が1,382百万円増加の30,926百万円、固定資産が3,735百万円増加の27,490百万円です。
流動資産の主な増減要因は、現金及び預金が283百万円の増加、受取手形及び売掛金が925百万円の増加、商品及び製品が277百万円の減少、その他(流動資産)が仮払消費税や前渡金の増加を主因に384百万円の増加です。
固定資産の主な増減要因は、有形固定資産が2,919百万円の増加、投資その他の資産が762百万円の増加です。
一方、負債合計は43,295百万円と前期末比3,576百万円の増加となりました。主な増減要因は、流動負債で、支払手形及び買掛金が191百万円の増加、1年内償還予定の社債が1,620百万円の減少、短期借入金が612百万円の増加、その他(流動負債)が設備関係支払手形と未払金の増加を主因に1,816百万円の増加、固定負債で、社債が500百万円の増加、長期借入金が1,972百万円の増加、退職給付に係る負債が199百万円の増加です。
純資産は、15,121百万円と前期末比1,540百万円の増加となりました。主な増減要因は、利益剰余金が、配当金の支払いと親会社株主に帰属する当期純利益との差額の685百万円の増加、その他の包括利益累計額が、その他有価証券評価差額金の増加を主因に849百万円の増加です。
その結果、自己資本比率は25.8%となりました。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物は、営業活動により2,464百万円の増加、投資活動により3,306百万円の減少、財務活動により1,120百万円の増加となり、その結果、前連結会計年度末に比べ283百万円増加し、当連結会計年度末には9,089百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
営業活動によるキャッシュ・フローは2,464百万円の収入(前期比1,595百万円の収入減)となりました。収入の主な要因は、税金等調整前当期純利益1,369百万円、減価償却費2,143百万円、退職給付に係る負債の増加額253百万円、たな卸資産の減少額223百万円、仕入債務の増加額176百万円等であり、支出の主な要因は、売上債権の増加額900百万円、法人税等の支払額413百万円等であります。
投資活動によるキャッシュ・フローは3,306百万円の支出(前期比761百万円の支出減)となりました。支出の主な要因は、有形固定資産の取得による支出3,138百万円、無形固定資産の取得による支出165百万円等であります。
財務活動によるキャッシュ・フローは1,120百万円の収入(前期比301百万円の収入増)となりました。収入の主な要因は、短期借入金の純増額233百万円、長期借入金の純増額2,339百万円、セール・アンド・リースバックによる収入328百万円等であり、支出の主な要因は、社債の純減額1,123百万円、リース債務の返済による支出335百万円、配当金の支払額319百万円等であります。
④ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 金額は製造原価によっており、消費税等は含まれておりません。
b.受注実績
受注生産は、行っておりません。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 上記金額には、消費税等は含まれておりません。
2 主要な相手先別の販売実績は、総販売実績に対する割合が10%未満のため、記載を省略しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討
(当社グループの当連結会計年度の経営成績等の状況について)
売上高は、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、自動車市場向け製品をはじめ、幅広い分野にわたって需要が落ち込み、前期比1,505百万円、3.6%減収の40,649百万円となりました。
セグメント別の売上構成は、界面活性剤55.7%(前期は55.0%)、樹脂6.6%(同7.3%)、化成品11.0%(同12.0%)、スペシャリティーケミカル26.5%(同25.5%)、その他0.2%(同0.2%)となっております。
売上総利益は、減収の影響に加え、人件費や減価償却費等が増加したことや、在庫評価損及びたな卸資産の評価方法の変更に伴う損益へのマイナス影響もあり、前期比714百万円減益の6,646百万円となりました。
販売費及び一般管理費は、旅費や交際費等の減少を主因に1.8%減少しました。その結果、営業利益は619百万円減益の1,386百万円となりました。
営業外損益は38百万円のプラス(前期は326百万円のマイナス)となり、その結果、経常利益は前期比254百万円減益の1,425百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比373百万円減益の1,005百万円となりました。
(当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因について)
外部要因として、お取引先の業界の景況と原材料価格の動向、内部要因として東邦化学(上海)有限公司の業績の動向が挙げられます。
当社のお取引先は、幅広い業界に亘っており、各業界の景況並びにそこでのお取引先の業績の状況が販売実績に影響します。当連結会計年度は、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、多くの業界で需給関係が悪化し、売上高は大幅に減少しました。
原材料価格の動向につきましては、当社グループの主要原料は、原油(ナフサ)由来のものが多く、原油価格(ナフサ価格)の動向に大きく左右されます。当連結会計年度は原油価格が期初に急落したことから、第1四半期に在庫評価損517百万円を計上しました。
東邦化学(上海)有限公司につきましては、当連結会計年度は繊維助剤や紙パルプ助剤等が増収となりましたが、一方でアクリレートは新型コロナウイルスの影響によって需要が落ち込み、また、親会社向けに販売している溶剤の生産を減らしたこともあり、売上高は前期比1.0%の減収となりました。利益面については、第2期増産設備の稼働に伴う減価償却費の増加により、営業利益は前期比減益となったものの黒字は確保し、経常利益は為替差益の発生もあって創業来初の黒字化を果たしました。
(当社グループの資本の財源及び資金の流動性について)
当社グループの事業運営に必要な資本の財源及び流動性については、自己資金のほか借入金等の有利子負債を活用し、全体のバランスをみながら安定的に確保することを基本方針としております。このうち有利子負債の調達に関しましては、短期運転資金については、短期借入金、受取手形割引等により、設備投資資金や長期運転資金については、長期借入金や社債及びリースにより、資金調達をしております。
今後の重要な資本的支出の予定は、後記23頁「設備の新設、除去等の計画」に記載のとおりですが、その資金調達に関しましても、上記方針に則り調達を実施する予定です。
なお、当連結会計年度末における借入金・社債・リース債務を含む有利子負債の残高は24,587百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は9,089百万円となっております。
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、営業活動によるキャッシュ・フローは2,464百万円のプラスとなりましたが、一方で、投資活動によるキャッシュ・フローが3,306百万円のマイナスとなりましたので、フリーキャッシュ・フロー(営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローの合計)は842百万円のマイナスと、3期連続のマイナスとなりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入による収入増により1,120百万円のプラスとなりました。その結果、現金及び現金同等物は283百万円の増加となっております。
(参考)キャッシュ・フロー関連指標の推移
(注1)
・自己資本比率:自己資本÷総資産
・時価ベース自己資本比率:株式時価総額÷総資産
・キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債÷キャッシュ・フロー
・インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー÷支払利息
(注2)
・各指標は、連結ベースの財務数値より算出しております。
・株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。
・キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローを利用しております。
・有利子負債は連結貸借対照表に計上されている社債・借入金の合計額を対象としております。
・支払利息は連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。
(経営方針・経営戦略・経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等について)
当社グループは、2020年3月期を初年度とする「新三ヵ年中期経営計画」(以下「新中計」という)において、売上高、営業利益、売上高営業利益率、純資産額、自己資本比率、自己資本利益率(ROE)、1株当たり配当額の7つの指標を数値目標としております。
各指標の2022年3月期の目標値(新中計で掲げた目標値)、2020年3月期及び2021年3月期の実績は下記のとおりです。
当連結会計年度は「(1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおり、前期比減収減益となりました。売上高が前期比3.6%の減収となった一方で、人件費や減価償却費等の固定費が増加し、加えて在庫評価損及びたな卸資産の評価方法の変更に伴う損益へのマイナス影響もあり、営業利益は前期比30.9%の大幅な減益となったことから、売上高営業利益率は低下いたしました。純資産額は前期比1,540百万円増加し、自己資本比率はやや改善しましたが、2022年3月期の目標数値を達成するためには十分な進捗とは言えません。ROEは親会社株主に帰属する当期純利益が前期比減益となったことに伴って低下し、目標数値である10%を下回りました。1株当たり配当額は、業績が減収減益であったものの、株主の皆さまへの収益還元を重視し、前期と同じ15円といたしました。
2022年3月期は、2021年3月期と比較すると幅広い分野で需要の回復が見込まれるものの、本格的な需要回復に先行して原料調達コストが増加することによる収益への悪影響が懸念されます。また、2021年4月30日に東邦化学(上海)有限公司が行政処分を受け、同日より同社における生産活動を停止していることもあり、新中計に掲げた2022年3月期の数値目標の達成は困難な状況にありますが、少しでもこの数値目標に近づけるよう、そして1年でも早くこの水準に達するよう、引き続き新中計に掲げた最重要課題及びその他重要課題に取り組んでまいります。
② 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。
連結財務諸表の作成に際し、当連結会計年度末日における報告数値に影響を与える見積りは、過去の実績や当社グループを取り巻く環境等に応じて合理的と考えられる方法により計上しておりますが、見積り特有の不確実性があるために、実際の結果は異なる場合があります。
当社は、特に以下の会計上の見積りが当社の財務諸表に重要な影響を与えるものと考えております。
なお、新型コロナウィルス感染症の影響に係る会計上の見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(追加情報)」及び「第5 経理の状況 2 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(追加情報)」に記載のとおりであります。
a.たな卸資産
当社グループは、たな卸資産の評価基準及び評価方法として移動平均法に基づく原価法(収益性の低下による簿価切下げの方法)を採用しております。
当社グループの保有するたな卸資産は、経済環境の影響を受けて価格が大きく変動する傾向にあるため、市場価格が下落した場合には、たな卸資産の簿価を切り下げ、売上原価を増加させることになります。
b.投資有価証券
当社グループは、投資有価証券の期末における時価が、取得原価に比べ50%以上下落した場合には全て減損処理を行い、30~50%程度下落した場合には、当社グループの規定に基づき回復可能性を考慮して必要と認められた額について減損処理を行います。
将来の市況悪化又は投資先の業績不振により、現在の簿価に反映されていない損失又は簿価の回収不能額が生じた場合、評価損の計上が必要となる可能性があります。
c.貸倒引当金
当社グループは、債権の貸倒の損失に備えるため、貸倒引当金を計上しております。一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を検討し、回収不能見込額を計上しております。一般債権の貸倒実績率については、過去3期の貸倒実績に基づき算出しております。顧客の財政状態が悪化し、支払能力が低下した場合等、追加引当が必要となる可能性があります。
d.退職給付費用
当社グループは、退職給付費用及び債務について、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出しております。これらの前提条件には、割引率、将来の報酬水準、退職率及び死亡率などがあります。それぞれの前提条件は、現時点で十分に合理的と考えられる方法で計算されております。退職給付費用及び債務の計算に影響を与える最も重要な前提条件は、割引率です。当連結会計年度の退職給付費用の計算に適用した割引率は0.6%です。割引率は、現在利用可能かつ退職給付債務の満期までの期間において利用可能であると見込まれる高格付けの債券の利回りなどを考慮して決定しています。
なお、一部の連結子会社は、退職給付債務の算定にあたり簡便法を採用しております。
退職給付費用及び債務の計算の前提条件と実際の結果に差異が生じた場合や、前提条件自体が変更になった場合、退職給付債務及び将来の退職給付費用に影響を及ぼす可能性があります。
e.繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産について回収可能性を十分に検討し、回収可能と判断した額を計上しております。回収可能性の判断においては、将来の税金負担額を軽減する効果を有すると考えられる範囲で繰延税金資産を計上しています。
将来の課税所得見込額は、その時の業績等により変動するため、課税所得の見積りに影響を与える要因が発生した場合は、繰延税金資産の回収可能性の評価を見直す可能性があります。また、税制や税率が変更された場合、繰延税金資産の回収可能性の評価に影響が及ぶ可能性があります。
f.固定資産の減損
当社グループは、固定資産のうち、収益性の低下等により投資額の回収が見込めなくなった資産又は資産グループについて、帳簿価格を回収可能価額まで減損し、当該減少額を減損損失として計上することとしております。減損損失を判定するにあたりましては、販売・生産拠点を基礎としてグルーピングを行い、減損の兆候を判定しております。
減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定に当たっては慎重に検討しておりますが、経営環境の変化による収益性の変動等により、想定していた投資回収が見込めなくなり、減損の必要性を認識した場合、減損処理を実施し、減損損失が発生する可能性があります。
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の概要は次のとおりであります。
① 経営成績の状況
当連結会計年度における我が国経済は、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う国内外の経済活動の停滞により、第1四半期から景気が急速に悪化しました。その後は社会経済活動が徐々に再開し、持ち直しの動きが続いているものの、新型コロナウイルス感染症の収束は未だ見通せず、当面は、不透明で厳しい環境が続くと予想されます。
化学業界におきましても、第1四半期から自動車をはじめとする多くの産業分野で需要が減少し、事業環境は悪化しました。半導体関連材料など堅調な需要を維持している分野もありますが、コロナ禍以前の水準への需要回復にはなお時間を要する産業分野も多く、また、復調が期待された自動車生産においては半導体不足による減産の影響が懸念されます。加えて、中国経済の回復等により原料価格に上昇の動きがみられ、本格的な需要回復に先行して原料調達コストが増加することによる収益への悪影響が懸念されます。
このような厳しい経営環境下、当社グループにおいても自動車市場向け製品をはじめ、幅広い分野にわたって需要が落ち込みましたが、製品の販売状況は第1四半期を底に、その後は次第に回復し、下半期の売上高は前年同期を若干上回る水準まで回復しました。しかしながら、上半期が前年同期比10.0%の大幅な減収であったことから、当連結会計年度の売上高は、前期比1,505百万円、3.6%減収の40,649百万円となりました。
損益面につきましては、大幅な売上の減少による収益の悪化に加え、原材料価格の急落に伴って第1四半期に計上した在庫評価損(517百万円)及びたな卸資産の評価方法の変更に伴う損益へのマイナス影響(143百万円)もあり、当連結会計年度の営業利益は前期比619百万円減益の1,386百万円、経常利益は前期比254百万円減益の1,425百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比373百万円減益の1,005百万円となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりです。
(金額:百万円、率:%) | ||||||||
セグメント | 売上高 | 営業利益又は営業損失(△) | ||||||
2020年 3月期 | 2021年 3月期 | 2020年 3月期 | 2021年 3月期 | |||||
増減率 | 利益率 | 利益率 | ||||||
界面活性剤 | 23,181 | 22,669 | △2.2 | 1,257 | 5.4 | 948 | 4.2 | |
樹脂 | 3,060 | 2,678 | △12.5 | 129 | 4.2 | 24 | 0.9 | |
化成品 | 5,059 | 4,455 | △11.9 | 136 | 2.7 | 76 | 1.7 | |
スペシャリティーケミカル | 10,767 | 10,765 | △0.02 | 392 | 3.6 | 320 | 3.0 | |
報告セグメント小計 | 42,069 | 40,568 | △3.6 | 1,915 | ― | 1,369 | ― | |
その他 | 293 | 233 | △20.4 | △1 | △0.5 | △1 | △0.7 | |
調整額 | △207 | △152 | ― | 91 | ― | 18 | ― | |
合計 | 42,155 | 40,649 | △3.6 | 2,006 | 4.8 | 1,386 | 3.4 |
(界面活性剤)
香粧原料は、インバウンド需要の急減や外出自粛等の影響により、スキンケア、サンケア製品向け基剤や美容室用ヘアケア製品向け基剤などが低調であった一方、一般洗浄剤は、家庭用台所洗剤向けが好調であったことや、前期にあった大口ユーザーからの洗濯洗剤向けの一時的な需要減少が今期はなかったことから販売が堅調で、全体としては僅かに増収となりました。プラスチック用添加剤は、主力の帯電防止剤や乳化重合剤が下期に持ち直したものの、農業フィルム用防曇剤等が落ち込み減収となりました。土木建築用薬剤は、生コンクリート市場の低迷に伴い、コンクリート用関連薬剤等が振るわず減収となりました。農薬助剤は、国内外ともに販売が好調で、大幅な増収となりました。繊維助剤は、中国での販売は堅調を維持したものの国内販売が振るわず減収となりました。紙パルプ用薬剤は、ペーパレス化の進展や広告チラシの減少等による紙需要の減少に伴い、消泡剤や脱墨剤が低調で減収となりました。
その結果、当セグメント全体の売上高は、前期比512百万円、2.2%減収の22,669百万円となり、セグメント利益は、前期比309百万円減益の948百万円となりました。なお、セグメント利益の中には在庫評価損299百万円が含まれております。
(樹脂)
石油樹脂は、大口ユーザーでの生産調整を主因に減収となりました。合成樹脂は、コロナ禍の影響により業務用冷蔵庫の需要が落ち込んだため、冷蔵機器用断熱ウレタンフォーム原液が不振であったことなどから減収となりました。樹脂エマルションは、飲食店をはじめとする店舗の休業が増えたことにより、業務用フロアーポリッシュ向けが低調で減収となりました。
その結果、当セグメント全体の売上高は、前期比382百万円、12.5%減収の2,678百万円となり、セグメント利益は、前期比105百万円減益の24百万円となりました。なお、セグメント利益の中には在庫評価損19百万円が含まれております。
(化成品)
合成ゴム・ABS樹脂用ロジン系乳化重合剤は、国内外ともに自動車関連需要が落ち込み、減収となりました。金属加工油剤は、水溶性切削油剤の大口ユーザー向け販売が低調で、減収となりました。石油添加剤は、脱蝋助剤等が国内外ともに不振で、大幅な減収となりました。
その結果、当セグメント全体の売上高は、前期比604百万円、11.9%減収の4,455百万円となり、セグメント利益は、前期比59百万円減益の76百万円となりました。なお、セグメント利益の中には在庫評価損52百万円が含まれております。
(スペシャリティーケミカル)
溶剤は、自動車生産の減少に伴うブレーキ液基剤の販売の落ち込みを主因に減収となりました。電子情報産業用の微細加工用樹脂は、テレワークの普及に伴う通信インフラの整備や5Gの商用化等により半導体関連の需要が拡大し、増収となりました。アクリレートは、国内において外出自粛等の影響でボディケア用品向けの需要が落ち込んだこと、また中国市場では新型コロナウイルスの影響で電子情報材料関連の需要が落ち込み、下期は回復に転じたものの、そのペースが鈍かったことから減収となりました。
その結果、当セグメント全体の売上高は、前期比2百万円、0.02%減収の10,765百万円となり、セグメント利益は、前期比71百万円減益の320百万円となりました。なお、セグメント利益の中には在庫評価損143百万円が含まれております。
なお、上記の各セグメント利益の前期比の数値は、(セグメント情報等)「報告セグメントごとの売上高、利益又は損失、資産、負債その他の項目の金額に関する情報」の表における「報告セグメント」の比較情報です。
加えて、報告セグメントに含まれないその他の事業セグメント(環境調査測定・分析及び物流倉庫業務等)の営業損失が1百万円、各セグメントに帰属しない調整額(棚卸資産の調整額等)が18百万円(前期は91百万円)あります。
② 財政状態の状況
当連結会計年度末の総資産は、58,416百万円と前期末比5,117百万円の増加となりました。その内訳は、流動資産が1,382百万円増加の30,926百万円、固定資産が3,735百万円増加の27,490百万円です。
流動資産の主な増減要因は、現金及び預金が283百万円の増加、受取手形及び売掛金が925百万円の増加、商品及び製品が277百万円の減少、その他(流動資産)が仮払消費税や前渡金の増加を主因に384百万円の増加です。
固定資産の主な増減要因は、有形固定資産が2,919百万円の増加、投資その他の資産が762百万円の増加です。
一方、負債合計は43,295百万円と前期末比3,576百万円の増加となりました。主な増減要因は、流動負債で、支払手形及び買掛金が191百万円の増加、1年内償還予定の社債が1,620百万円の減少、短期借入金が612百万円の増加、その他(流動負債)が設備関係支払手形と未払金の増加を主因に1,816百万円の増加、固定負債で、社債が500百万円の増加、長期借入金が1,972百万円の増加、退職給付に係る負債が199百万円の増加です。
純資産は、15,121百万円と前期末比1,540百万円の増加となりました。主な増減要因は、利益剰余金が、配当金の支払いと親会社株主に帰属する当期純利益との差額の685百万円の増加、その他の包括利益累計額が、その他有価証券評価差額金の増加を主因に849百万円の増加です。
その結果、自己資本比率は25.8%となりました。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物は、営業活動により2,464百万円の増加、投資活動により3,306百万円の減少、財務活動により1,120百万円の増加となり、その結果、前連結会計年度末に比べ283百万円増加し、当連結会計年度末には9,089百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
営業活動によるキャッシュ・フローは2,464百万円の収入(前期比1,595百万円の収入減)となりました。収入の主な要因は、税金等調整前当期純利益1,369百万円、減価償却費2,143百万円、退職給付に係る負債の増加額253百万円、たな卸資産の減少額223百万円、仕入債務の増加額176百万円等であり、支出の主な要因は、売上債権の増加額900百万円、法人税等の支払額413百万円等であります。
投資活動によるキャッシュ・フローは3,306百万円の支出(前期比761百万円の支出減)となりました。支出の主な要因は、有形固定資産の取得による支出3,138百万円、無形固定資産の取得による支出165百万円等であります。
財務活動によるキャッシュ・フローは1,120百万円の収入(前期比301百万円の収入増)となりました。収入の主な要因は、短期借入金の純増額233百万円、長期借入金の純増額2,339百万円、セール・アンド・リースバックによる収入328百万円等であり、支出の主な要因は、社債の純減額1,123百万円、リース債務の返済による支出335百万円、配当金の支払額319百万円等であります。
④ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前年同期比(%) |
界面活性剤 | 16,902 | △5.5 |
樹脂 | 2,146 | △11.5 |
化成品 | 3,915 | △9.1 |
スペシャリティーケミカル | 9,150 | 3.6 |
その他 | 32 | 62.0 |
合計 | 32,147 | △4.0 |
(注) 金額は製造原価によっており、消費税等は含まれておりません。
b.受注実績
受注生産は、行っておりません。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前年同期比(%) |
界面活性剤 | 22,669 | △2.2 |
樹脂 | 2,678 | △12.5 |
化成品 | 4,455 | △11.9 |
スペシャリティーケミカル | 10,765 | △0.0 |
その他 | 81 | △5.7 |
合計 | 40,649 | △3.6 |
(注) 1 上記金額には、消費税等は含まれておりません。
2 主要な相手先別の販売実績は、総販売実績に対する割合が10%未満のため、記載を省略しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討
(当社グループの当連結会計年度の経営成績等の状況について)
売上高は、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、自動車市場向け製品をはじめ、幅広い分野にわたって需要が落ち込み、前期比1,505百万円、3.6%減収の40,649百万円となりました。
セグメント別の売上構成は、界面活性剤55.7%(前期は55.0%)、樹脂6.6%(同7.3%)、化成品11.0%(同12.0%)、スペシャリティーケミカル26.5%(同25.5%)、その他0.2%(同0.2%)となっております。
売上総利益は、減収の影響に加え、人件費や減価償却費等が増加したことや、在庫評価損及びたな卸資産の評価方法の変更に伴う損益へのマイナス影響もあり、前期比714百万円減益の6,646百万円となりました。
販売費及び一般管理費は、旅費や交際費等の減少を主因に1.8%減少しました。その結果、営業利益は619百万円減益の1,386百万円となりました。
営業外損益は38百万円のプラス(前期は326百万円のマイナス)となり、その結果、経常利益は前期比254百万円減益の1,425百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比373百万円減益の1,005百万円となりました。
(当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因について)
外部要因として、お取引先の業界の景況と原材料価格の動向、内部要因として東邦化学(上海)有限公司の業績の動向が挙げられます。
当社のお取引先は、幅広い業界に亘っており、各業界の景況並びにそこでのお取引先の業績の状況が販売実績に影響します。当連結会計年度は、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、多くの業界で需給関係が悪化し、売上高は大幅に減少しました。
原材料価格の動向につきましては、当社グループの主要原料は、原油(ナフサ)由来のものが多く、原油価格(ナフサ価格)の動向に大きく左右されます。当連結会計年度は原油価格が期初に急落したことから、第1四半期に在庫評価損517百万円を計上しました。
東邦化学(上海)有限公司につきましては、当連結会計年度は繊維助剤や紙パルプ助剤等が増収となりましたが、一方でアクリレートは新型コロナウイルスの影響によって需要が落ち込み、また、親会社向けに販売している溶剤の生産を減らしたこともあり、売上高は前期比1.0%の減収となりました。利益面については、第2期増産設備の稼働に伴う減価償却費の増加により、営業利益は前期比減益となったものの黒字は確保し、経常利益は為替差益の発生もあって創業来初の黒字化を果たしました。
(当社グループの資本の財源及び資金の流動性について)
当社グループの事業運営に必要な資本の財源及び流動性については、自己資金のほか借入金等の有利子負債を活用し、全体のバランスをみながら安定的に確保することを基本方針としております。このうち有利子負債の調達に関しましては、短期運転資金については、短期借入金、受取手形割引等により、設備投資資金や長期運転資金については、長期借入金や社債及びリースにより、資金調達をしております。
今後の重要な資本的支出の予定は、後記23頁「設備の新設、除去等の計画」に記載のとおりですが、その資金調達に関しましても、上記方針に則り調達を実施する予定です。
なお、当連結会計年度末における借入金・社債・リース債務を含む有利子負債の残高は24,587百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は9,089百万円となっております。
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、営業活動によるキャッシュ・フローは2,464百万円のプラスとなりましたが、一方で、投資活動によるキャッシュ・フローが3,306百万円のマイナスとなりましたので、フリーキャッシュ・フロー(営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローの合計)は842百万円のマイナスと、3期連続のマイナスとなりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入による収入増により1,120百万円のプラスとなりました。その結果、現金及び現金同等物は283百万円の増加となっております。
(参考)キャッシュ・フロー関連指標の推移
2018年 3月期 | 2019年 3月期 | 2020年 3月期 | 2021年 3月期 | ||
自己資本比率 | (%) | 23.2 | 24.8 | 25.3 | 25.8 |
時価ベースの 自己資本比率 | (%) | 26.5 | 15.3 | 19.1 | 18.5 |
キャッシュ・フロー 対有利子負債比率 | (年) | 4.7 | 9.9 | 5.2 | 9.2 |
インタレスト・ カバレッジ・レシオ | (倍) | 15.2 | 8.9 | 17.6 | 9.4 |
(注1)
・自己資本比率:自己資本÷総資産
・時価ベース自己資本比率:株式時価総額÷総資産
・キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債÷キャッシュ・フロー
・インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー÷支払利息
(注2)
・各指標は、連結ベースの財務数値より算出しております。
・株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。
・キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローを利用しております。
・有利子負債は連結貸借対照表に計上されている社債・借入金の合計額を対象としております。
・支払利息は連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。
(経営方針・経営戦略・経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等について)
当社グループは、2020年3月期を初年度とする「新三ヵ年中期経営計画」(以下「新中計」という)において、売上高、営業利益、売上高営業利益率、純資産額、自己資本比率、自己資本利益率(ROE)、1株当たり配当額の7つの指標を数値目標としております。
各指標の2022年3月期の目標値(新中計で掲げた目標値)、2020年3月期及び2021年3月期の実績は下記のとおりです。
2022年 3月期 (計画) | 2020年 3月期 (実績) | 2021年 3月期 (実績) | |||
売上高 | (百万円) | 51,000 | 42,155 | 40,649 | |
営業利益 | (百万円) | 3,000 | 2,006 | 1,386 | |
売上高営業利益率 | (%) | 5.9 | 4.8 | 3.4 | |
純資産額 | (百万円) | 17,000 | 13,580 | 15,121 | |
自己資本比率 | (%) | 27.0 | 25.3 | 25.8 | |
ROE | (%) | 10.0以上 | 10.4 | 7.0 | |
1株当たり配当額 | (円) | 20 | 15 | 15 |
当連結会計年度は「(1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおり、前期比減収減益となりました。売上高が前期比3.6%の減収となった一方で、人件費や減価償却費等の固定費が増加し、加えて在庫評価損及びたな卸資産の評価方法の変更に伴う損益へのマイナス影響もあり、営業利益は前期比30.9%の大幅な減益となったことから、売上高営業利益率は低下いたしました。純資産額は前期比1,540百万円増加し、自己資本比率はやや改善しましたが、2022年3月期の目標数値を達成するためには十分な進捗とは言えません。ROEは親会社株主に帰属する当期純利益が前期比減益となったことに伴って低下し、目標数値である10%を下回りました。1株当たり配当額は、業績が減収減益であったものの、株主の皆さまへの収益還元を重視し、前期と同じ15円といたしました。
2022年3月期は、2021年3月期と比較すると幅広い分野で需要の回復が見込まれるものの、本格的な需要回復に先行して原料調達コストが増加することによる収益への悪影響が懸念されます。また、2021年4月30日に東邦化学(上海)有限公司が行政処分を受け、同日より同社における生産活動を停止していることもあり、新中計に掲げた2022年3月期の数値目標の達成は困難な状況にありますが、少しでもこの数値目標に近づけるよう、そして1年でも早くこの水準に達するよう、引き続き新中計に掲げた最重要課題及びその他重要課題に取り組んでまいります。
② 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。
連結財務諸表の作成に際し、当連結会計年度末日における報告数値に影響を与える見積りは、過去の実績や当社グループを取り巻く環境等に応じて合理的と考えられる方法により計上しておりますが、見積り特有の不確実性があるために、実際の結果は異なる場合があります。
当社は、特に以下の会計上の見積りが当社の財務諸表に重要な影響を与えるものと考えております。
なお、新型コロナウィルス感染症の影響に係る会計上の見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(追加情報)」及び「第5 経理の状況 2 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(追加情報)」に記載のとおりであります。
a.たな卸資産
当社グループは、たな卸資産の評価基準及び評価方法として移動平均法に基づく原価法(収益性の低下による簿価切下げの方法)を採用しております。
当社グループの保有するたな卸資産は、経済環境の影響を受けて価格が大きく変動する傾向にあるため、市場価格が下落した場合には、たな卸資産の簿価を切り下げ、売上原価を増加させることになります。
b.投資有価証券
当社グループは、投資有価証券の期末における時価が、取得原価に比べ50%以上下落した場合には全て減損処理を行い、30~50%程度下落した場合には、当社グループの規定に基づき回復可能性を考慮して必要と認められた額について減損処理を行います。
将来の市況悪化又は投資先の業績不振により、現在の簿価に反映されていない損失又は簿価の回収不能額が生じた場合、評価損の計上が必要となる可能性があります。
c.貸倒引当金
当社グループは、債権の貸倒の損失に備えるため、貸倒引当金を計上しております。一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を検討し、回収不能見込額を計上しております。一般債権の貸倒実績率については、過去3期の貸倒実績に基づき算出しております。顧客の財政状態が悪化し、支払能力が低下した場合等、追加引当が必要となる可能性があります。
d.退職給付費用
当社グループは、退職給付費用及び債務について、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出しております。これらの前提条件には、割引率、将来の報酬水準、退職率及び死亡率などがあります。それぞれの前提条件は、現時点で十分に合理的と考えられる方法で計算されております。退職給付費用及び債務の計算に影響を与える最も重要な前提条件は、割引率です。当連結会計年度の退職給付費用の計算に適用した割引率は0.6%です。割引率は、現在利用可能かつ退職給付債務の満期までの期間において利用可能であると見込まれる高格付けの債券の利回りなどを考慮して決定しています。
なお、一部の連結子会社は、退職給付債務の算定にあたり簡便法を採用しております。
退職給付費用及び債務の計算の前提条件と実際の結果に差異が生じた場合や、前提条件自体が変更になった場合、退職給付債務及び将来の退職給付費用に影響を及ぼす可能性があります。
e.繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産について回収可能性を十分に検討し、回収可能と判断した額を計上しております。回収可能性の判断においては、将来の税金負担額を軽減する効果を有すると考えられる範囲で繰延税金資産を計上しています。
将来の課税所得見込額は、その時の業績等により変動するため、課税所得の見積りに影響を与える要因が発生した場合は、繰延税金資産の回収可能性の評価を見直す可能性があります。また、税制や税率が変更された場合、繰延税金資産の回収可能性の評価に影響が及ぶ可能性があります。
f.固定資産の減損
当社グループは、固定資産のうち、収益性の低下等により投資額の回収が見込めなくなった資産又は資産グループについて、帳簿価格を回収可能価額まで減損し、当該減少額を減損損失として計上することとしております。減損損失を判定するにあたりましては、販売・生産拠点を基礎としてグルーピングを行い、減損の兆候を判定しております。
減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定に当たっては慎重に検討しておりますが、経営環境の変化による収益性の変動等により、想定していた投資回収が見込めなくなり、減損の必要性を認識した場合、減損処理を実施し、減損損失が発生する可能性があります。