有価証券報告書-第83期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の概要は次のとおりであります。
①経営成績の状況
当連結会計年度における我が国経済は、上半期は個人消費や企業の設備投資が堅調に推移し、緩やかな回復が続きました。しかし、下半期は外需の低迷などを背景に製造業の生産活動に足踏みがみられ、景気の停滞感が強まりました。更に2020年に入ると、新型コロナウイルスが中国で猛威を振るった後、世界中に拡大し、景気を大幅に下押しする厳しい状況となっています。
化学業界におきましても、海外経済の減速による全般的な需要の鈍化や、米国で生産が本格化したシェールガス由来の安価な製品の市場への流入によって、世界的な需給バランスが悪化する厳しい環境となりました。加えて新型コロナウイルスの感染拡大後は需要が一段と減退し、そのマイナス影響は当面続くものと見込まれます。
このような経営環境下、当社グループの当連結会計年度の売上高は、中国の景気減速等によって製品需要が総じて弱含みで推移したことや、原材料価格の低下に伴う売価の低下により、前期比3,139百万円、6.9%減収の42,155百万円となりました。
利益面は、減収の影響を原材料価格の低下でカバーしたものの、減価償却費や人件費等の固定費負担の増加を補うには至らず、当連結会計年度の営業利益は前期比194百万円減益の2,006百万円、経常利益は前期比214百万円減益の1,679百万円となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、非連結子会社の旭東産業㈱を清算したことによる子会社清算益等の計上があった一方、前期あった関係会社出資金評価損の税務上の損金算入による法人税等の額の減少がなかったため、前期比529百万円減益の1,378百万円となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりです。
(金額:百万円、率:%)
(界面活性剤)
香粧原料は、ヘアケア用向け基剤が増加したものの、洗剤用向けの一般洗浄剤が大口ユーザーからの一時的な需要減少により大幅に落ち込み減収となりました。プラスチック用添加剤は、主力の帯電防止剤が、主用途のOPPフィルム用の需要減の影響で振るわず、減収となりました。土木建築用薬剤は、生コンクリート市場の低迷に伴いコンクリート用関連薬剤が振るわず減収となりました。一方、農薬助剤は、海外向け販売が第2四半期以降回復し増収に転じ、繊維助剤は中国での販売が引き続き堅調で増収となりました。紙パルプ用薬剤は、紙・板紙の国内需要減少に伴い脱墨剤や消泡剤が低調で減収となりました。
その結果、当セグメント全体の売上高は、前期比1,216百万円、5.0%減収の23,181百万円となり、セグメント利益は、前期比146百万円減益の1,257百万円となりました。
(樹脂)
石油樹脂は、アスファルト関連向けが落ち込み、減収となりました。合成樹脂は、冷蔵機器用断熱ウレタンフォーム原液が大口ユーザーの環境対応型製品への処方変更等に伴う売上数量減少により振るわず、減収となりました。樹脂エマルションは、金属表面処理剤が自動車や電気機器の市況低迷を背景に低調にとどまり、減収となりました。
その結果、当セグメント全体の売上高は、前期比267百万円、8.0%減収の3,060百万円となり、セグメント利益は、原材料安による利益率の改善を主因に前期比54百万円増益の129百万円となりました。
(化成品)
合成ゴム・ABS樹脂用ロジン系乳化重合剤は、国内外の自動車関連需要の冷え込みや海外での価格競争激化に加え、原材料価格低下による売価下落の影響もあり、大幅な減収となりました。金属加工油剤は、大口ユーザー向け販売が大幅に落ち込み減収となりました。石油添加剤は、海外向け販売が振るわず減収となりました。
その結果、当セグメント全体の売上高は、前期比1,008百万円、16.6%減収の5,059百万円となり、セグメント利益は、前期比78百万円減益の136百万円となりました。
(スペシャリティーケミカル)
溶剤は、世界の自動車需要の冷え込み等に伴い、ブレーキ液基剤をはじめ、大半の用途の製品が低調で減収となりました。電子情報産業用の微細加工用樹脂は、期初には大幅な伸長を見込んでいたものの、半導体市況の回復が鈍く、若干の増収にとどまりました。アクリレートは、昨年度後半に中国市場で電子材料関連向け需要が急減した影響が残り、緩やかな回復の動きは見られるものの、大幅な減収となりました。
その結果、当セグメント全体の売上高は、前期比616百万円、5.4%減収の10,767百万円となり、セグメント利益は、中国市場でのアクリレートの採算改善により前期比49百万円増益の392百万円となりました。
なお、上記の各セグメント利益の前期比の数値は、(セグメント情報等)「報告セグメントごとの売上高、利益又は損失、資産、負債その他の項目の金額に関する情報」の表における「報告セグメント」の比較情報です。
加えて、報告セグメントに含まれないその他の事業セグメント(環境調査測定・分析及び物流倉庫業務等)の営業損失が1百万円、各セグメントに帰属しない調整額(棚卸資産の調整額等)が91百万円(前期は130百万円)あります。
②財政状態の状況
当連結会計年度末の総資産は、53,298百万円と前期末比891百万円の増加となりました。その内訳は、流動資産が1,063百万円減少の29,543百万円、固定資産が1,955百万円増加の23,755百万円です。
流動資産の主な増減要因は、現金及び預金が737百万円の増加、受取手形及び売掛金が1,380百万円の減少、還付法人税等の減少を主因とするその他(流動資産)が435百万円の減少です。
固定資産の主な増減要因は、有形固定資産が2,152百万円の増加、無形固定資産が275百万円の増加、投資その他の資産が473百万円の減少です。
一方、負債合計は39,718百万円と前期末比400百万円の増加となりました。主な増減要因は、支払手形及び買掛金が1,659百万円の減少、未払法人税等が253百万円の増加、未払金と設備関係支払手形の増加を主因とするその他(流動負債)が831百万円の減少、長期借入金が1,575百万円の増加、リース債務(固定負債)が976百万円の増加、退職給付に係る負債が355百万円の増加、長期未払金の減少を主因とするその他(固定負債)が126百万円の減少です。
純資産は、13,580百万円と前期末比491百万円の増加となりました。主な増減要因は、利益剰余金が、配当金の支払いと親会社株主に帰属する当期純利益との差額の1,122百万円の増加、その他の包括利益累計額が628百万円の減少です。
その結果、自己資本比率は25.3%となりました。
③キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物は、営業活動により4,059百万円の増加、投資活動により4,067百万円の減少、財務活動により819百万円の増加となり、その結果、前連結会計年度末に比べ737百万円増加し、当連結会計年度末には8,805百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
営業活動によるキャッシュ・フローは4,059百万円の収入(前期比2,061百万円の収入増)となりました。収入の主な要因は、税金等調整前当期純利益1,817百万円、減価償却費1,904百万円、退職給付に係る負債の増加額208百万円、売上債権の減少額1,320百万円、為替差損154百万円、法人税等の還付額304百万円等であり、支出の主な要因は、子会社清算益128百万円、仕入債務の減少額1,622百万円等であります。
投資活動によるキャッシュ・フローは4,067百万円の支出(前期比1,200百万円の支出増)となりました。収入の主な要因は、投資有価証券の売却による収入147百万円、子会社の清算による収入137百万円等であり、支出の主な要因は、有形固定資産の取得による支出3,881百万円、無形固定資産の取得による支出317百万円、投資有価証券の取得による支出108百万円等であります。
財務活動によるキャッシュ・フローは819百万円の収入(前期比560百万円の収入増)となりました。収入の主な要因は、長期借入金の純増額1,812百万円等であり、支出の主な要因は、短期借入金の純減額281百万円、リース債務の返済による支出447百万円、配当金の支払額255百万円等であります。
④生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)金額は製造原価によっており、消費税等は含まれておりません。
b.受注実績
受注生産は、行っておりません。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)1 上記金額には、消費税等は含まれておりません。
2 主要な相手先別の販売実績は、総販売実績に対する割合が10%未満のため、記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
①当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討
(当社グループの当連結会計年度の経営成績等の状況について)
売上高は、中国の景気減速等によって製品需要が総じて弱含みで推移したことや、原材料価格の低下に伴う売価の低下により、前期比3,139百万円、6.9%減収の42,155百万円となりました。
セグメント別の売上構成は、界面活性剤55.0%(前期は53.9%)、樹脂7.3%(同7.3%)、化成品12.0%(同13.4%)、スペシャリティーケミカル25.5%(同25.1%)、その他0.2%(同0.3%)となっております。
売上総利益は、原材料価格の低下により売上総利益率が17.5%と前期比1.2%上昇したものの、減収の影響により、前期比11百万円減益の7,360百万円となりました。
販売費及び一般管理費は、人件費や公租公課等の増加を主因に3.5%増加しました。その結果、営業利益は194百万円減益の2,006百万円となりました。
営業外損益は、326百万円のマイナス(前期は306百万円のマイナス)となり、その結果、経常利益は、前期比214百万円減益の1,679百万円となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、非連結子会社の旭東産業㈱を清算したことによる子会社清算益等の計上があった一方、前期あった関係会社出資金評価損の税務上の損金算入による法人税等の額の減少が当期はなかったため、前期比529百万円減益の1,378百万円となりました。
(当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因について)
外部要因として、お取引先の業界の景況と原材料価格の動向、内部要因として東邦化学(上海)有限公司の業績の動向が挙げられます。
当社のお取引先は、幅広い業界に亘っており、各業界の景況並びにそこでのお取引先の業績の状況が販売実績に影響します。当連結会計年度は、米中貿易摩擦に伴う海外経済の減速や2020年年初からの新型コロナウイルス感染拡大の影響により、多くの業界で需給関係が悪化し、売上高は大幅に減少しました。
原材料価格の動向につきましては、当社グループの主要原料は、原油(ナフサ)由来のものが多く、原油価格(ナフサ価格)の動向に大きく左右されますが、当連結会計年度は原油価格が2019年3月期と比較して低い水準で推移した結果、売上原価は大幅に減少し、売上総利益は小幅な減少にとどまりました。
東邦化学(上海)有限公司につきましては、当連結会計年度は繊維助剤や土木建築用薬剤が増収となりましたが、一方で中国のスマートフォン市場の低迷によってアクリレートが減収となり、売上高は概ね前期並みにとどまりました。利益面については、原材料価格の低下により利益率が改善し、会社設立来初の通期での営業利益黒字化を達成しましたが、経常利益は為替差損の発生により遺憾ながら黒字化は果たせませんでした。
(当社グループの資本の財源及び資金の流動性について)
当社グループの事業運営に必要な資本の財源及び流動性については、自己資金のほか借入金等の有利子負債を活用し、全体のバランスをみながら安定的に確保することを基本方針としております。このうち有利子負債の調達に関しましては、短期運転資金については、短期借入金、受取手形割引等により、設備投資資金や長期運転資金については、長期借入金や社債及びリースにより、資金調達をしております。
今後の重要な資本的支出の予定は、後記23頁「設備の新設、除去等の計画」に記載のとおりですが、その資金調達に関しましても、上記方針に則り調達を実施する予定です。
なお、当連結会計年度末における有利子負債の残高は21,243百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は8,805百万円となっております。
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、営業活動によるキャッシュ・フローは4,059百万円のプラスとなりましたが、一方で、投資活動によるキャッシュ・フローが、設備投資の増加により4,067百万円のマイナスとなりましたので、フリーキャッシュ・フロー(営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローの合計)は7百万円のマイナスと、2期連続のマイナスとなりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入による収入増により819百万円のプラスとなりました。その結果、現金及び現金同等物は737百万円の増加となっております。
(参考)キャッシュ・フロー関連指標の推移
(注1)
・自己資本比率:自己資本÷総資産
・時価ベース自己資本比率:株式時価総額÷総資産
・キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債÷キャッシュ・フロー
・インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー÷支払利息
(注2)
・各指標は、連結ベースの財務数値より算出しております。
・株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。
・キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローを利用しております。
・有利子負債は連結貸借対照表に計上されている社債・借入金の合計額を対象としております。
・支払利息は連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。
(経営方針・経営戦略・経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等について)
当社グループは、2020年3月期を初年度とする「新三ヵ年中期経営計画」(以下「新中計」という)において、売上高、営業利益、売上高営業利益率、純資産額、自己資本比率、自己資本利益率(ROE)、1株当たり配当額の7つの指標を数値目標としております。
各指標の2019年3月期及び2020年3月期の実績、2021年3月期予想(但し、売上高、営業利益、売上高営業利益、1株当たり配当額のみ)、2022年3月期の目標値(新中計で掲げた目標値)は下記のとおりです。
当連結会計年度は「(1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおり、前期比減収減益となり、売上高営業利益率は人件費や減価償却費等の固定費の増加を主因として低下いたしました。純資産額は前期比491百万円増加し、自己資本比率はやや改善しましたが、2022年3月期の目標数値を達成するためには十分な進捗とは言えません。ROEは親会社株主に帰属する当期純利益が前期比減益となったことに伴って低下しましたが、10%以上の水準は確保しました。1株当たり配当額は、株主の皆さまへの収益還元の強化を進めるべく、15円といたしました。2021年3月期は新型コロナウイルスによる世界経済への悪影響がより深刻度を増すものとみられ、極めて厳しい環境下にありますが、その影響が2021年3月期までにとどまれば、2022年3月期には業績を新中計の軌道に戻し、少なくとも単年度の収益性の指標となる数値目標の達成に向けて、新中計に掲げた最重要課題及びその他重要課題に取り組んでまいります。
②重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。
連結財務諸表の作成に際し、当連結会計年度末日における報告数値に影響を与える見積りは、過去の実績や当社グループを取り巻く環境等に応じて合理的と考えられる方法により計上しておりますが、見積り特有の不確実性があるために、実際の結果は異なる場合があります。
当社は、特に以下の会計上の見積りが当社の財務諸表に重要な影響を与えるものと考えております。
なお、新型コロナウィルス感染症の影響に係る会計上の見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(追加情報)」及び「第5 経理の状況 2 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(追加情報)」に記載のとおりであります。
a.たな卸資産
当社グループは、たな卸資産の評価基準及び評価方法として総平均法に基づく原価法(収益性の低下による簿価切下げの方法)を採用しております。ただし、原材料の評価については移動平均法によっております。
当社グループの保有するたな卸資産は、経済環境の影響を受けて価格が大きく変動する傾向にあるため、市場価格が下落した場合には、たな卸資産の簿価を切り下げ、売上原価を増加させることになります。
b.投資有価証券
当社グループは、投資有価証券の期末における時価が、取得原価に比べ50%以上下落した場合には全て減損処理を行い、30~50%程度下落した場合には、当社グループの規定に基づき回復可能性を考慮して必要と認められた額について減損処理を行います。
将来の市況悪化又は投資先の業績不振により、現在の簿価に反映されていない損失又は簿価の回収不能額を生じた場合、評価損の計上が必要となる可能性があります。
c.貸倒引当金
当社グループは、債権の貸倒の損失に備えるため、貸倒引当金を計上しております。一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を検討し、回収不能見込額を計上しております。一般債権の貸倒実績率については、過去3期の貸倒実績に基づき算出しております。顧客の財政状態が悪化し、支払能力が低下した場合等、追加引当が必要となる可能性があります。
d.退職給付費用
当社グループは、退職給付費用及び債務について、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出しております。これらの前提条件には、割引率、将来の報酬水準、退職率及び死亡率などがあります。それぞれの前提条件は、現時点で十分に合理的と考えられる方法で計算されております。退職給付費用及び債務の計算に影響を与える最も重要な前提条件は、割引率です。当連結会計年度の退職給付費用の計算に適用した割引率は0.6%です。割引率は、現在利用可能かつ退職給付債務の満期までの期間において利用可能であると見込まれる高格付けの債券の利回りなどを考慮して決定しています。
なお、一部の連結子会社は、退職給付債務の算定にあたり簡便法を採用しております。
退職給付費用及び債務の計算の前提条件と実際の結果に差異が生じた場合や、前提条件自体が変更になった場合、退職給付債務及び将来の退職給付費用に影響を及ぼす可能性があります。
e.繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産について回収可能性を十分に検討し、回収可能と判断した額を計上しております。回収可能性の判断においては、将来の税金負担額を軽減する効果を有すると考えられる範囲で繰延税金資産を計上しています。
将来の課税所得見込額は、その時の業績等により変動するため、課税所得の見積りに影響を与える要因が発生した場合は、繰延税金資産の回収可能性の評価を見直す可能性があります。また、税制や税率が変更された場合、繰延税金資産の回収可能性の評価に影響が及ぶ可能性があります。
f.固定資産の減損
当社グループは、固定資産のうち、収益性の低下等により投資額の回収が見込めなくなった資産又は資産グループについて、帳簿価格を回収可能価額まで減損し、当該減少額を減損損失として計上することとしております。減損損失を判定するにあたりましては、販売・生産拠点を基礎としてグルーピングを行い、減損の兆候を判定しております。
減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定に当たっては慎重に検討しておりますが、経営環境の変化による収益性の変動等により、想定していた投資回収が見込めなくなり、減損の必要性を認識した場合、減損処理を実施し、減損損失が発生する可能性があります。
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の概要は次のとおりであります。
①経営成績の状況
当連結会計年度における我が国経済は、上半期は個人消費や企業の設備投資が堅調に推移し、緩やかな回復が続きました。しかし、下半期は外需の低迷などを背景に製造業の生産活動に足踏みがみられ、景気の停滞感が強まりました。更に2020年に入ると、新型コロナウイルスが中国で猛威を振るった後、世界中に拡大し、景気を大幅に下押しする厳しい状況となっています。
化学業界におきましても、海外経済の減速による全般的な需要の鈍化や、米国で生産が本格化したシェールガス由来の安価な製品の市場への流入によって、世界的な需給バランスが悪化する厳しい環境となりました。加えて新型コロナウイルスの感染拡大後は需要が一段と減退し、そのマイナス影響は当面続くものと見込まれます。
このような経営環境下、当社グループの当連結会計年度の売上高は、中国の景気減速等によって製品需要が総じて弱含みで推移したことや、原材料価格の低下に伴う売価の低下により、前期比3,139百万円、6.9%減収の42,155百万円となりました。
利益面は、減収の影響を原材料価格の低下でカバーしたものの、減価償却費や人件費等の固定費負担の増加を補うには至らず、当連結会計年度の営業利益は前期比194百万円減益の2,006百万円、経常利益は前期比214百万円減益の1,679百万円となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、非連結子会社の旭東産業㈱を清算したことによる子会社清算益等の計上があった一方、前期あった関係会社出資金評価損の税務上の損金算入による法人税等の額の減少がなかったため、前期比529百万円減益の1,378百万円となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりです。
(金額:百万円、率:%)
セグメント | 売上高 | 営業利益又は営業損失(△) | ||||||
2019年 | 2020年 | 2019年 | 2020年 | |||||
3月期 | 3月期 | 増減率 | 3月期 | 利益率 | 3月期 | 利益率 | ||
界面活性剤 | 24,398 | 23,181 | △5.0 | 1,403 | 5.8 | 1,257 | 5.4 | |
樹脂 | 3,327 | 3,060 | △8.0 | 74 | 2.2 | 129 | 4.2 | |
化成品 | 6,068 | 5,059 | △16.6 | 214 | 3.5 | 136 | 2.7 | |
スペシャリティーケミカル | 11,383 | 10,767 | △5.4 | 342 | 3.0 | 392 | 3.6 | |
報告セグメント小計 | 45,178 | 42,069 | △6.9 | 2,036 | - | 1,915 | - | |
その他 | 335 | 293 | △12.4 | 33 | 10.0 | △1 | △0.5 | |
調整額 | △219 | △207 | - | 130 | - | 91 | - | |
合計 | 45,294 | 42,155 | △6.9 | 2,200 | 4.9 | 2,006 | 4.8 |
(界面活性剤)
香粧原料は、ヘアケア用向け基剤が増加したものの、洗剤用向けの一般洗浄剤が大口ユーザーからの一時的な需要減少により大幅に落ち込み減収となりました。プラスチック用添加剤は、主力の帯電防止剤が、主用途のOPPフィルム用の需要減の影響で振るわず、減収となりました。土木建築用薬剤は、生コンクリート市場の低迷に伴いコンクリート用関連薬剤が振るわず減収となりました。一方、農薬助剤は、海外向け販売が第2四半期以降回復し増収に転じ、繊維助剤は中国での販売が引き続き堅調で増収となりました。紙パルプ用薬剤は、紙・板紙の国内需要減少に伴い脱墨剤や消泡剤が低調で減収となりました。
その結果、当セグメント全体の売上高は、前期比1,216百万円、5.0%減収の23,181百万円となり、セグメント利益は、前期比146百万円減益の1,257百万円となりました。
(樹脂)
石油樹脂は、アスファルト関連向けが落ち込み、減収となりました。合成樹脂は、冷蔵機器用断熱ウレタンフォーム原液が大口ユーザーの環境対応型製品への処方変更等に伴う売上数量減少により振るわず、減収となりました。樹脂エマルションは、金属表面処理剤が自動車や電気機器の市況低迷を背景に低調にとどまり、減収となりました。
その結果、当セグメント全体の売上高は、前期比267百万円、8.0%減収の3,060百万円となり、セグメント利益は、原材料安による利益率の改善を主因に前期比54百万円増益の129百万円となりました。
(化成品)
合成ゴム・ABS樹脂用ロジン系乳化重合剤は、国内外の自動車関連需要の冷え込みや海外での価格競争激化に加え、原材料価格低下による売価下落の影響もあり、大幅な減収となりました。金属加工油剤は、大口ユーザー向け販売が大幅に落ち込み減収となりました。石油添加剤は、海外向け販売が振るわず減収となりました。
その結果、当セグメント全体の売上高は、前期比1,008百万円、16.6%減収の5,059百万円となり、セグメント利益は、前期比78百万円減益の136百万円となりました。
(スペシャリティーケミカル)
溶剤は、世界の自動車需要の冷え込み等に伴い、ブレーキ液基剤をはじめ、大半の用途の製品が低調で減収となりました。電子情報産業用の微細加工用樹脂は、期初には大幅な伸長を見込んでいたものの、半導体市況の回復が鈍く、若干の増収にとどまりました。アクリレートは、昨年度後半に中国市場で電子材料関連向け需要が急減した影響が残り、緩やかな回復の動きは見られるものの、大幅な減収となりました。
その結果、当セグメント全体の売上高は、前期比616百万円、5.4%減収の10,767百万円となり、セグメント利益は、中国市場でのアクリレートの採算改善により前期比49百万円増益の392百万円となりました。
なお、上記の各セグメント利益の前期比の数値は、(セグメント情報等)「報告セグメントごとの売上高、利益又は損失、資産、負債その他の項目の金額に関する情報」の表における「報告セグメント」の比較情報です。
加えて、報告セグメントに含まれないその他の事業セグメント(環境調査測定・分析及び物流倉庫業務等)の営業損失が1百万円、各セグメントに帰属しない調整額(棚卸資産の調整額等)が91百万円(前期は130百万円)あります。
②財政状態の状況
当連結会計年度末の総資産は、53,298百万円と前期末比891百万円の増加となりました。その内訳は、流動資産が1,063百万円減少の29,543百万円、固定資産が1,955百万円増加の23,755百万円です。
流動資産の主な増減要因は、現金及び預金が737百万円の増加、受取手形及び売掛金が1,380百万円の減少、還付法人税等の減少を主因とするその他(流動資産)が435百万円の減少です。
固定資産の主な増減要因は、有形固定資産が2,152百万円の増加、無形固定資産が275百万円の増加、投資その他の資産が473百万円の減少です。
一方、負債合計は39,718百万円と前期末比400百万円の増加となりました。主な増減要因は、支払手形及び買掛金が1,659百万円の減少、未払法人税等が253百万円の増加、未払金と設備関係支払手形の増加を主因とするその他(流動負債)が831百万円の減少、長期借入金が1,575百万円の増加、リース債務(固定負債)が976百万円の増加、退職給付に係る負債が355百万円の増加、長期未払金の減少を主因とするその他(固定負債)が126百万円の減少です。
純資産は、13,580百万円と前期末比491百万円の増加となりました。主な増減要因は、利益剰余金が、配当金の支払いと親会社株主に帰属する当期純利益との差額の1,122百万円の増加、その他の包括利益累計額が628百万円の減少です。
その結果、自己資本比率は25.3%となりました。
③キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物は、営業活動により4,059百万円の増加、投資活動により4,067百万円の減少、財務活動により819百万円の増加となり、その結果、前連結会計年度末に比べ737百万円増加し、当連結会計年度末には8,805百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
営業活動によるキャッシュ・フローは4,059百万円の収入(前期比2,061百万円の収入増)となりました。収入の主な要因は、税金等調整前当期純利益1,817百万円、減価償却費1,904百万円、退職給付に係る負債の増加額208百万円、売上債権の減少額1,320百万円、為替差損154百万円、法人税等の還付額304百万円等であり、支出の主な要因は、子会社清算益128百万円、仕入債務の減少額1,622百万円等であります。
投資活動によるキャッシュ・フローは4,067百万円の支出(前期比1,200百万円の支出増)となりました。収入の主な要因は、投資有価証券の売却による収入147百万円、子会社の清算による収入137百万円等であり、支出の主な要因は、有形固定資産の取得による支出3,881百万円、無形固定資産の取得による支出317百万円、投資有価証券の取得による支出108百万円等であります。
財務活動によるキャッシュ・フローは819百万円の収入(前期比560百万円の収入増)となりました。収入の主な要因は、長期借入金の純増額1,812百万円等であり、支出の主な要因は、短期借入金の純減額281百万円、リース債務の返済による支出447百万円、配当金の支払額255百万円等であります。
④生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前年同期比(%) |
界面活性剤 | 17,886 | △4.2 |
樹脂 | 2,426 | △3.6 |
化成品 | 4,308 | △18.1 |
スペシャリティーケミカル | 8,834 | △5.1 |
その他 | 20 | △96.1 |
合計 | 33,476 | △7.7 |
(注)金額は製造原価によっており、消費税等は含まれておりません。
b.受注実績
受注生産は、行っておりません。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前年同期比(%) |
界面活性剤 | 23,181 | △5.0 |
樹脂 | 3,060 | △8.0 |
化成品 | 5,059 | △16.6 |
スペシャリティーケミカル | 10,767 | △5.4 |
その他 | 86 | △25.5 |
合計 | 42,155 | △6.9 |
(注)1 上記金額には、消費税等は含まれておりません。
2 主要な相手先別の販売実績は、総販売実績に対する割合が10%未満のため、記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
①当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討
(当社グループの当連結会計年度の経営成績等の状況について)
売上高は、中国の景気減速等によって製品需要が総じて弱含みで推移したことや、原材料価格の低下に伴う売価の低下により、前期比3,139百万円、6.9%減収の42,155百万円となりました。
セグメント別の売上構成は、界面活性剤55.0%(前期は53.9%)、樹脂7.3%(同7.3%)、化成品12.0%(同13.4%)、スペシャリティーケミカル25.5%(同25.1%)、その他0.2%(同0.3%)となっております。
売上総利益は、原材料価格の低下により売上総利益率が17.5%と前期比1.2%上昇したものの、減収の影響により、前期比11百万円減益の7,360百万円となりました。
販売費及び一般管理費は、人件費や公租公課等の増加を主因に3.5%増加しました。その結果、営業利益は194百万円減益の2,006百万円となりました。
営業外損益は、326百万円のマイナス(前期は306百万円のマイナス)となり、その結果、経常利益は、前期比214百万円減益の1,679百万円となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、非連結子会社の旭東産業㈱を清算したことによる子会社清算益等の計上があった一方、前期あった関係会社出資金評価損の税務上の損金算入による法人税等の額の減少が当期はなかったため、前期比529百万円減益の1,378百万円となりました。
(当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因について)
外部要因として、お取引先の業界の景況と原材料価格の動向、内部要因として東邦化学(上海)有限公司の業績の動向が挙げられます。
当社のお取引先は、幅広い業界に亘っており、各業界の景況並びにそこでのお取引先の業績の状況が販売実績に影響します。当連結会計年度は、米中貿易摩擦に伴う海外経済の減速や2020年年初からの新型コロナウイルス感染拡大の影響により、多くの業界で需給関係が悪化し、売上高は大幅に減少しました。
原材料価格の動向につきましては、当社グループの主要原料は、原油(ナフサ)由来のものが多く、原油価格(ナフサ価格)の動向に大きく左右されますが、当連結会計年度は原油価格が2019年3月期と比較して低い水準で推移した結果、売上原価は大幅に減少し、売上総利益は小幅な減少にとどまりました。
東邦化学(上海)有限公司につきましては、当連結会計年度は繊維助剤や土木建築用薬剤が増収となりましたが、一方で中国のスマートフォン市場の低迷によってアクリレートが減収となり、売上高は概ね前期並みにとどまりました。利益面については、原材料価格の低下により利益率が改善し、会社設立来初の通期での営業利益黒字化を達成しましたが、経常利益は為替差損の発生により遺憾ながら黒字化は果たせませんでした。
(当社グループの資本の財源及び資金の流動性について)
当社グループの事業運営に必要な資本の財源及び流動性については、自己資金のほか借入金等の有利子負債を活用し、全体のバランスをみながら安定的に確保することを基本方針としております。このうち有利子負債の調達に関しましては、短期運転資金については、短期借入金、受取手形割引等により、設備投資資金や長期運転資金については、長期借入金や社債及びリースにより、資金調達をしております。
今後の重要な資本的支出の予定は、後記23頁「設備の新設、除去等の計画」に記載のとおりですが、その資金調達に関しましても、上記方針に則り調達を実施する予定です。
なお、当連結会計年度末における有利子負債の残高は21,243百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は8,805百万円となっております。
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、営業活動によるキャッシュ・フローは4,059百万円のプラスとなりましたが、一方で、投資活動によるキャッシュ・フローが、設備投資の増加により4,067百万円のマイナスとなりましたので、フリーキャッシュ・フロー(営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローの合計)は7百万円のマイナスと、2期連続のマイナスとなりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入による収入増により819百万円のプラスとなりました。その結果、現金及び現金同等物は737百万円の増加となっております。
(参考)キャッシュ・フロー関連指標の推移
2017年 3月期 | 2018年 3月期 | 2019年 3月期 | 2020年 3月期 | ||
自己資本比率 | (%) | 21.8 | 23.2 | 24.8 | 25.3 |
時価ベースの 自己資本比率 | (%) | 13.7 | 26.5 | 15.3 | 19.1 |
キャッシュ・フロー 対有利子負債比率 | (年) | 7.0 | 4.7 | 9.9 | 5.2 |
インタレスト・ カバレッジ・レシオ | (倍) | 10.7 | 15.2 | 8.9 | 17.6 |
(注1)
・自己資本比率:自己資本÷総資産
・時価ベース自己資本比率:株式時価総額÷総資産
・キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債÷キャッシュ・フロー
・インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー÷支払利息
(注2)
・各指標は、連結ベースの財務数値より算出しております。
・株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。
・キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローを利用しております。
・有利子負債は連結貸借対照表に計上されている社債・借入金の合計額を対象としております。
・支払利息は連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。
(経営方針・経営戦略・経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等について)
当社グループは、2020年3月期を初年度とする「新三ヵ年中期経営計画」(以下「新中計」という)において、売上高、営業利益、売上高営業利益率、純資産額、自己資本比率、自己資本利益率(ROE)、1株当たり配当額の7つの指標を数値目標としております。
各指標の2019年3月期及び2020年3月期の実績、2021年3月期予想(但し、売上高、営業利益、売上高営業利益、1株当たり配当額のみ)、2022年3月期の目標値(新中計で掲げた目標値)は下記のとおりです。
2019年 3月期 (実績) | 2020年 3月期 (実績) | 2021年 3月期 (予想) | 2022年 3月期 (計画) | ||
売上高 | (百万円) | 45,294 | 42,155 | 40,500 | 51,000 |
営業利益 | (百万円) | 2,200 | 2,006 | 1,950 | 3,000 |
売上高営業利益率 | (%) | 4.9 | 4.8 | 4.8 | 5.9 |
純資産額 | (百万円) | 13,089 | 13,580 | - | 17,000 |
自己資本比率 | (%) | 24.8 | 25.3 | - | 27.0 |
ROE | (%) | 15.5 | 10.4 | - | 10.0以上 |
1株当たり配当額 | (円) | 12 | 15 | 15 | 20 |
当連結会計年度は「(1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおり、前期比減収減益となり、売上高営業利益率は人件費や減価償却費等の固定費の増加を主因として低下いたしました。純資産額は前期比491百万円増加し、自己資本比率はやや改善しましたが、2022年3月期の目標数値を達成するためには十分な進捗とは言えません。ROEは親会社株主に帰属する当期純利益が前期比減益となったことに伴って低下しましたが、10%以上の水準は確保しました。1株当たり配当額は、株主の皆さまへの収益還元の強化を進めるべく、15円といたしました。2021年3月期は新型コロナウイルスによる世界経済への悪影響がより深刻度を増すものとみられ、極めて厳しい環境下にありますが、その影響が2021年3月期までにとどまれば、2022年3月期には業績を新中計の軌道に戻し、少なくとも単年度の収益性の指標となる数値目標の達成に向けて、新中計に掲げた最重要課題及びその他重要課題に取り組んでまいります。
②重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。
連結財務諸表の作成に際し、当連結会計年度末日における報告数値に影響を与える見積りは、過去の実績や当社グループを取り巻く環境等に応じて合理的と考えられる方法により計上しておりますが、見積り特有の不確実性があるために、実際の結果は異なる場合があります。
当社は、特に以下の会計上の見積りが当社の財務諸表に重要な影響を与えるものと考えております。
なお、新型コロナウィルス感染症の影響に係る会計上の見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(追加情報)」及び「第5 経理の状況 2 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(追加情報)」に記載のとおりであります。
a.たな卸資産
当社グループは、たな卸資産の評価基準及び評価方法として総平均法に基づく原価法(収益性の低下による簿価切下げの方法)を採用しております。ただし、原材料の評価については移動平均法によっております。
当社グループの保有するたな卸資産は、経済環境の影響を受けて価格が大きく変動する傾向にあるため、市場価格が下落した場合には、たな卸資産の簿価を切り下げ、売上原価を増加させることになります。
b.投資有価証券
当社グループは、投資有価証券の期末における時価が、取得原価に比べ50%以上下落した場合には全て減損処理を行い、30~50%程度下落した場合には、当社グループの規定に基づき回復可能性を考慮して必要と認められた額について減損処理を行います。
将来の市況悪化又は投資先の業績不振により、現在の簿価に反映されていない損失又は簿価の回収不能額を生じた場合、評価損の計上が必要となる可能性があります。
c.貸倒引当金
当社グループは、債権の貸倒の損失に備えるため、貸倒引当金を計上しております。一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を検討し、回収不能見込額を計上しております。一般債権の貸倒実績率については、過去3期の貸倒実績に基づき算出しております。顧客の財政状態が悪化し、支払能力が低下した場合等、追加引当が必要となる可能性があります。
d.退職給付費用
当社グループは、退職給付費用及び債務について、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出しております。これらの前提条件には、割引率、将来の報酬水準、退職率及び死亡率などがあります。それぞれの前提条件は、現時点で十分に合理的と考えられる方法で計算されております。退職給付費用及び債務の計算に影響を与える最も重要な前提条件は、割引率です。当連結会計年度の退職給付費用の計算に適用した割引率は0.6%です。割引率は、現在利用可能かつ退職給付債務の満期までの期間において利用可能であると見込まれる高格付けの債券の利回りなどを考慮して決定しています。
なお、一部の連結子会社は、退職給付債務の算定にあたり簡便法を採用しております。
退職給付費用及び債務の計算の前提条件と実際の結果に差異が生じた場合や、前提条件自体が変更になった場合、退職給付債務及び将来の退職給付費用に影響を及ぼす可能性があります。
e.繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産について回収可能性を十分に検討し、回収可能と判断した額を計上しております。回収可能性の判断においては、将来の税金負担額を軽減する効果を有すると考えられる範囲で繰延税金資産を計上しています。
将来の課税所得見込額は、その時の業績等により変動するため、課税所得の見積りに影響を与える要因が発生した場合は、繰延税金資産の回収可能性の評価を見直す可能性があります。また、税制や税率が変更された場合、繰延税金資産の回収可能性の評価に影響が及ぶ可能性があります。
f.固定資産の減損
当社グループは、固定資産のうち、収益性の低下等により投資額の回収が見込めなくなった資産又は資産グループについて、帳簿価格を回収可能価額まで減損し、当該減少額を減損損失として計上することとしております。減損損失を判定するにあたりましては、販売・生産拠点を基礎としてグルーピングを行い、減損の兆候を判定しております。
減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定に当たっては慎重に検討しておりますが、経営環境の変化による収益性の変動等により、想定していた投資回収が見込めなくなり、減損の必要性を認識した場合、減損処理を実施し、減損損失が発生する可能性があります。