有価証券報告書-第121期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/23 14:00
【資料】
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【項目】
158項目
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における日本経済は、2019年10月の消費増税による個人消費の落ち込みに加え、設備投資や住宅着工も低調に推移し、下期以降は急速に停滞感を強める状況で推移しました。
世界経済においては、2019年中は各地域で米中貿易摩擦の影響が続き、2020年に入ってからは新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大による経済活動の停滞も加わり、大きく減速しております。
鉄鋼業においては、日本国内市場では、建築・自動車・家電などの堅調な需要を受け、概ね底堅く推移しました。海外鉄鋼市場は、中国で景気が減速傾向であるにもかかわらず粗鋼生産が再び増加傾向にあるなど、先行きは不透明な状況となっています。
このような環境のなか、当社グループの当連結会計年度の経営成績は、売上高154,066百万円(前期比13,352百万円減)、営業利益5,489百万円(同390百万円減)、経常利益7,425百万円(同2,403百万円減)、親会社株主に帰属する当期純利益3,862百万円(同2,392百万円減)となりました。
当連結会計年度末の総資産は、売上の減少に伴う営業債権の減少や金融商品市場の悪化に伴う投資有価証券等の評価額減少などにより前連結会計年度末より8,339百万円減少し201,125百万円となりました。負債は、支払手形及び買掛金等の減少などにより前連結会計年度末より7,959百万円減少し33,834百万円となりました。純資産は、利益剰余金等の増加、その他有価証券評価差額金等の減少により前連結会計年度末より380百万円減少し167,291百万円となりました。
なお、2020年初旬の中国武漢市での流行に端を発した新型コロナウイルス感染症は、その後世界的な大流行に至り、日本を含む感染拡大国における拡大防止措置等の影響から世界的マクロ経済に大きな減速が発生しております。当社グループの海外連結子会社はいずれも12月期決算であることから、新型コロナウイルス感染症拡大による当連結会計年度の業績への影響はございません。当社を含む日本国内のグループ会社は3月期決算であり、2月から3月にかけて新型コロナウイルス感染症拡大により事業活動に一定の影響を受けた可能性がありますが、影響の程度は軽微であると考えられます。一方で世界経済の先行きに対する懸念が急速に広がり金融商品市場が悪化したことから、保有しております金融商品の評価に影響が及びました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
鋼板関連事業
売上高は142,418百万円(前年同期比12,704百万円減)、営業利益は5,898百万円(前年同期比153百万円減)であります。
ロール事業
売上高は2,833百万円(前年同期比667百万円減)、営業損失は311百万円(前年同期は77百万円の営業損失)であります。
グレーチング事業
売上高は3,481百万円(前年同期比72百万円減)、営業利益は80百万円(前年同期比3百万円減)であります。
不動産事業
売上高は1,205百万円(前年同期比22百万円増)、営業利益は847百万円(前年同期比17百万円増)であります。
その他事業
売上高は4,127百万円(前年同期比69百万円増)、営業利益は186百万円(前年同期比58百万円減)であります。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末の現金及び現金同等物期末残高は、前連結会計年度末に比べ2,341百万円増加し、34,658百万円となりました。これは主に、営業活動によるキャッシュ・フローにおける資金の増加によるものです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動による資金の増加は5,927百万円(前年同期比2,345百万円減)となりました。当期営業利益5,489百万円が主な要因であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動による資金の支出は1,407百万円(前年は資金の増加1,232百万円)となりました。これは主に、投資有価証券の取得売却差額と固定資産の取得によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動による資金の支出は2,265百万円(前年は資金の支出3,979百万円)となりました。これは主に、配当金の支払額等によるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2019年4月1日
至 2020年3月31日)
前年同期比(%)
鋼板関連事業(百万円)137,812△1.1
ロール事業(百万円)2,794△19.6
グレーチング事業(百万円)3,5403.6
不動産事業(百万円)--
報告セグメント計(百万円)144,147△1.5
その他(百万円)31536.9
合計(百万円)144,463△1.4

(注)1.金額は販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。
2.上記金額には、消費税等は含まれておりません。
b.受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称受注高(百万円)前年同期比(%)受注残高
(百万円)
前年同期比(%)
鋼板関連事業142,076△8.217,580△1.9
ロール事業2,000△41.11,451△36.5
グレーチング事業3,416△5.8194△25.1
不動産事業1,2051.9--
報告セグメント計148,698△8.819,226△6.1
その他3,932△6.7310△38.6
合計152,630△8.719,536△6.8

(注)上記金額には、消費税等は含まれておりません。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2019年4月1日
至 2020年3月31日)
前年同期比(%)
鋼板関連事業(百万円)142,418△8.2
ロール事業(百万円)2,833△19.1
グレーチング事業(百万円)3,481△2.0
不動産事業(百万円)1,2051.9
報告セグメント計(百万円)149,939△8.2
その他(百万円)4,1271.7
合計(百万円)154,066△8.0

(注)1.セグメント間取引については相殺消去しております。
2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先前連結会計年度
(自 2018年4月1日
至 2019年3月31日)
当連結会計年度
(自 2019年4月1日
至 2020年3月31日)
金額(百万円)割合(%)金額(百万円)割合(%)
㈱佐渡島33,83020.234,34822.3

3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による当該経営成績等の状況に関する分析・検討内容
当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
<売上高>日本国内では各事業において販売価格の改善または維持に努めたものの特に下期において全体としての販売数量は減少しました。また、台湾の子会社であるSYSCO社では米国の保護主義的政策の影響などから主に北米向けの輸出販売が大幅な減少となりました。これらにより連結売上高は減収となりました。
<営業利益>日本国内においては、販売数量の減少に加え在庫評価による利益押し上げ効果の縮小などから減益となりました。海外子会社においてはいずれも厳しい事業環境ではありましたが、3社合計では小幅ながら改善しております。連結営業利益は減益となりました。
<経常利益>営業外収益における投資有価証券売却益の計上減に加え、営業外費用における運用商品の損失計上などから、営業利益と比べ減益幅が増加しております。
<親会社株主に帰属する当期純利益>金融商品市場の悪化により保有している金融商品の評価損を計上したことなどから連結当期純利益の減益幅は経常利益と比べ増加しておりますが、連結当期純利益における減益要因として非支配株主比率の高い京葉鉄鋼埠頭株式会社およびSYSCO社の影響が大きいことから、親会社株主に帰属する当期純利益では連結当期純利益と比べ減益幅は縮小しております。
当社グループの資本政策の基本方針については、持続的な成長のための積極的投資と株主への最大限の利益還元に必要な資金の確保、並びに強固な財務基盤の維持を目指し、安定的な営業キャッシュ・フローの創出に努めております。
当連結会計年度末時点で外部からの資金調達を必要とする重要な資本的支出の予定はありませんが、当面の運転資金及び設備投資資金については、主として自己資金から充当し、必要に応じて金融機関からの借入により調達していく方針です。
経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等については、2017年3月に策定・開示しております「淀川製鋼グループ中期経営計画2019」において、「既存事業における市況や為替などの事業環境に左右されず、連結経常利益100億円を安定して計上すること」としております。
当連結会計年度におきましては、原材料やエネルギーなどのコスト負担増、主に海外市場における各地域での保護主義的政策の影響など厳しい経営環境の中、当社グループの強みである機動力を発揮し企業努力を重ねましたが、目標を上回る連結経常利益を計上することができませんでした。
セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
鋼板関連事業
鋼板業務は、日本におけるひも付き(特定需要家向け)では、価格是正ならびに付加価値の高いカラー鋼板の拡販に注力しましたが、下期を中心に市況が停滞し安価輸入材の影響を受けたことなどから建材向けめっき鋼板の販売数量が減少し減収となりました。店売り(一般流通向け)では、下期は販売量が減少しましたが通期では販売量がやや増加し若干の増収となりました。海外では、SYSCO社は主に北米向け輸出の大幅な減少により減収となりました。中国の子会社であるYSS社は、採算重視の販売活動に努めたことから販売量は減少し減収となりましたが、採算の良いカラー鋼板の販売数量が増加したことなどから損益は改善しました。タイの子会社であるPPT社は、厳しい事業環境が続いておりますが、高付加価値品の販売量増加などから売上高は概ね同水準ながら損益は改善しました。
建材業務は、建材商品では採算重視の選別受注によるヨドルーフの販売数量減などから減収となりました。エクステリア商品では物置の販売数量はやや減少しましたが、ガレージの販売が好調に推移したことに加え販売価格改定の効果もあり増収となりました。工事については大型物件の増加から増収となりました。
以上から、鋼板関連事業としては減収・減益となりました。
ロール事業
2018年度に発覚した品質不適切問題の影響などから出荷量が減少し、減収・減益となりました。
グレーチング事業
民間案件は堅調に推移したものの、公共事業案件の減少などから僅かながら減収・減益となりました。
不動産事業
賃貸ビルの入居賃料の増加などから増収・増益となりました。
その他事業
エンジニアリング事業の売上は増加しましたが、運輸・倉庫業の荷扱量減少に伴う採算悪化があり、増収・減益となりました。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの当連結年度のキャッシュ・フローは、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社グループは、資本政策の基本方針のなかで、「グローバルな経済の変動に経営環境が大きな影響を受けるなかで、企業理念に基づく経営戦略を着実に実現し、持続的な成長のための積極的投資と株主への最大限の利益還元を両立させるために、強固な財務基盤を維持する」こととしており、営業活動によるキャッシュ・フローを安定的に獲得すべく事業活動に取り組んでおります。
「淀川製鋼グループ中期経営計画2019」の対象期間である3年度(2018年3月期から2020年3月期)累計での連結キャッシュ・フローの状況としては、営業活動によるキャッシュ・フロー累計額は約16,133百万円の資金の増加、投資活動によるキャッシュ・フロー累計額は9,201百万円の資金の減少、財務活動によるキャッシュ・フロー累計額は11,533百万円の資金の減少、現金及び現金同等物に係る換算差額の累計額は213百万円の資金の増加となり、現金及び現金同等物の残高は累計で4,388百万円減少しました。
当該期間中の固定資産の取得・売却等による資金の減少は10,192百万円、配当金の支払(非支配株主への支払含む)による資金の減少は8,998百万円、自己株式の取得・売却による資金の減少は1,229百万円であります。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たりましては、過去の実績や状況に応じて合理的と考えられる様々な要因に基づき、見積り及び判断を行っております。
なお、新型コロナウイルス感染症により今後の当社グループの経営環境に影響が及ぶ可能性がありますが、当連結会計年度の会計上の見積への影響は限定的であります。