有価証券報告書-第207期(2023/04/01-2024/03/31)
(1)経営成績等の状況の概要
①財政状態及び経営成績の状況
a.経営成績の状況
当連結会計年度の世界経済は,欧州経済は金融引き締めやエネルギー情勢の影響等を受けて低迷,中国経済は不動産市場の停滞に伴い減速した一方で,米国経済は金融引き締めが維持された環境の中でも底堅い雇用・所得環境に支えられ堅調に推移しました。わが国経済については,雇用・所得環境が改善する中で,世界的なインフレの影響は受けつつも,景気は緩やかに回復しています。
当社グループは,第2四半期連結会計期間において,出荷済みのPW1100G-JMエンジンに関する追加検査プログラム及び海外連結子会社における訴訟の和解合意により多額の損失を計上しました。
出荷済みのPW1100G-JMエンジンに関する追加検査プログラムについては,地上駐機(※)に対する補償費用や追加整備費用等の発生が見込まれますが,当第4四半期連結会計期間においてその前提条件に変更はありません。現在,プログラムパートナーとともに整備能力増強を図り,地上駐機数の低減に向けた対応を進めています。お客さまであるエアラインへの負担軽減及び信頼回復に取り組んでまいります。
(※)地上駐機:エンジン追加検査のための計画外エンジン取り下ろしに起因して機体が運航不能となること。
また,原動機事業で発生したエンジンの試運転記録に係る不適切行為については,対象となる製品を納入したお客さまに真摯に対応するとともに,原因究明や再発防止策の策定などを進めてまいります。
当社グループの主力事業である民間向け航空エンジンは,旅客需要の回復に伴って,エンジン本体及びスペアパーツ販売が堅調に推移しています。また,防衛装備品については,防衛力の抜本的強化の政府方針のもと,防衛予算が大きく増加しており,受注が拡大しています。今後見込まれる民間向け航空エンジンや防衛装備品の需要拡大に応えていくため,増産に向けた能力増強を進めるとともに,世界トップレベルの生産効率実現への取組みを推進しています。
車両過給機においては,自動車市場全体の傾向として,半導体部品等の供給制約改善や中国の販売促進策の影響もあり生産台数は年初予想を大きく上回る結果となりました。電気自動車の普及は進みつつあるものの,そのスピードは未だ流動的です。市場の変化に対応しながらも,当社グループは確実に需要に応えるため,事業構造改革を含め供給体制の維持・整備を進めています。
また,カーボンソリューション事業では,省エネ法改正による脱炭素電源導入の促進や,海外での再エネ技術の需要が増加の傾向にあります。燃料転換をはじめとしたお客さまプラントの価値向上への貢献とともに,ライフサイクルビジネスの拡大を図っています。
このような事業環境下において,当社グループの当連結会計年度は,受注高については前年度比0.8%増の1兆3,768億円となったものの,売上収益については前述の出荷済みのPW1100G-JMエンジンに関する追加検査プログラムの影響などにより,2.2%減の1兆3,225億円となりました。
損益面では,営業損益は,為替円安の影響のほか,民間向け航空エンジンのスペアパーツ販売の増加,ライフサイクルビジネス等の拡大の効果はありましたが,前述の減収の影響に加えて,車両過給機の事業構造改革費用などもあり,1,521億円減益の701億円の損失となりました。親会社の所有者に帰属する当期損益は,682億円の損失です。
当連結会計年度の報告セグメント別の業績は以下のとおりとなりました。
(単位:億円)
(注)金額は単位未満を切捨て表示し,比率は四捨五入表示しています。
なお,参考情報として,前述の,第2四半期連結会計期間において計上した出荷済みのPW1100G-JMエンジンに関する追加検査プログラム及び海外連結子会社における訴訟の和解合意による損失の影響を除いた場合の報告セグメント別の業績は以下のとおりとなります。
(単位:億円)
(注)金額は単位未満を切捨て表示し,比率は四捨五入表示しています。
⦅資源・エネルギー・環境⦆
世界各国でカーボンニュートラルに向けた動きが加速しており,エネルギー分野における化石資源からの脱却だけでなく,鉄鋼や化学をはじめとした産業分野でも素材の脱化石資源化に向けた動きも広がっています。また,COP28ではこれまでの動きに加えて原子力利用の拡大が宣言されました。
このような事業環境のもと,受注高は,海外連結子会社における訴訟の和解合意による損失の影響のほか,前期の大型案件受注の反動により減少しました。
売上収益は,前述の海外連結子会社における訴訟の和解合意による損失や原子力での工事量減少の影響はありましたが,カーボンソリューションが堅調に拡大したことに加え,東南アジアの大型発電プロジェクトが順調に進捗したことにより増収となりました。
営業利益は,カーボンソリューションでのライフサイクルビジネスや東南アジアの大型発電プロジェクトの増収影響はありましたが,海外連結子会社における訴訟の和解合意による損失により減益となりました。
⦅社会基盤⦆
国内においては,インフラ老朽化や気候変動による自然災害の激甚化の対策として国土強靭化計画の施策が実施されており,流域治水や道路ネットワーク機能強化,老朽化橋梁の維持,修繕の推進,さらに予防保全型インフラメンテナンスへの転換に向けた取り組みが進められています。一方,建設分野における人手不足が常態化する中,2024年4月から建設業においても時間外労働の上限規制が適用されたため,これまで以上に省人化・自動化及びDXを推進し,生産性を向上させていく必要があります。
このような事業環境のもと,受注高は,橋梁・水門等で増加しました。
売上収益は,概ね横ばいとなりました。
営業利益は,橋梁・水門での原価先行算入により減益となりました。
⦅産業システム・汎用機械⦆
産業界全体における資材価格と人件費の高騰は常態化しつつあり,半導体市場や中国の景気減速は2024年度後半に回復を見込んでいるとはいえ,市況は依然として不透明な状況です。その一方で,産業界におけるカーボンニュートラルへのニーズの高まり,先進国における労働生産人口減少による人手不足,さらには経済安全保障を念頭に置いた国際サプライチェーンの変化などが,産業分野の中長期トレンドとして捉えられています。
このような事業環境のもと,受注高は,車両過給機等で増加しました。
売上収益は,為替が円安で推移した影響もあり,車両過給機や回転機械などで増収となりました。
営業利益は,販管費の増加等に加えて,車両過給機において事業構造改革費用を計上したなどにより減益となりました。
⦅航空・宇宙・防衛⦆
民間向け航空エンジン事業では世界の旅客需要は回復から成長軌道に入りつつあり,アフターマーケットでの収益も拡大を継続しています。また,防衛予算の増額,宇宙産業の市場拡大の流れを受け,防衛・宇宙事業においても,新たな価値創造を図り,競争力向上を目指していきます。一方で,サプライチェーンの混乱や物価高騰は継続しており,将来の事業環境は依然として不透明なところもあるため,変化に打ち勝つ事業体質構築に向け,デジタル基盤の活用等による生産効率改革,業務構造改革をさらに推進し,成長を加速していきます。
このような事業環境のもと,受注高は,出荷済みのPW1100G-JMエンジンに関する追加検査プログラムの影響はあったものの,防衛事業の需要拡大もあり増加しました。
売上収益は,民間向け航空エンジンでのエンジン本体・スペアパーツの販売増加や,防衛事業の需要拡大がありましたが,出荷済みのPW1100G-JMエンジンに関する追加検査プログラムの影響で減収となりました。
営業利益は,防衛事業で受注拡大に伴う増益したものの,民間向け航空エンジンでの出荷済みのPW1100G-JMエンジンに関する追加検査プログラムの影響で減益となりました。
なお,文中の将来に関する事項は,当連結会計年度末現在において判断したものです。
b.資産及び負債,資本の状況
当連結会計年度末における総資産は2兆978億円となり,前連結会計年度末と比較して1,558億円増加しました。主な増加項目は,営業債権及びその他の債権で742億円,棚卸資産で477億円です。
負債は1兆6,955億円となり,前連結会計年度末と比較して2,098億円増加しました。主な増加項目は,返金負債で1,540億円であり,主に出荷済みのPW1100G-JMエンジンに関する追加検査プログラムによる影響で増加したものです。有利子負債残高はリース負債を含めて5,743億円となり,前連結会計年度末と比較して548億円増加しました。継続して資金流動性の確保の取り組みを進めています。
資本は4,022億円となり,前連結会計年度末と比較して539億円減少しました。これには,親会社の所有者に帰属する当期損失682億円が含まれています。
以上の結果,親会社所有者帰属持分比率は,前連結会計年度末の22.2%から17.9%となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下,「資金」という)の残高は,前連結会計年度末と比較して140億円増加し,1,388億円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは621億円の収入超過(前連結会計年度は541億円の収入超過)となりました。これは,成長事業である民間向け航空エンジン事業において,サプライチェーンの不安定な状態が続く中,増産に向けて運転資本が増加した一方で,PW1100G-JMエンジンに関する追加検査プログラムによるキャッシュへの影響が翌連結会計年度以降となったことや,収益の拡大も進んだことから,資金が増加したためです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは516億円の支出超過(前連結会計年度は523億円の支出超過)となりました。これは,固定資産の譲渡による収入があった一方で,設備投資を進めたことにより支出が増加したためです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは25億円の支出超過(前連結会計年度は240億円の支出超過)となりました。これは,借入による収入増があったものの,配当金の支払や金融負債の返済による支出があったためです。
(注)この項に記載の金額は単位未満を切捨て表示し,比率は四捨五入表示しています。
③生産,受注及び販売の状況
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと,次のとおりです。
(注)1. 金額は販売価格によっており,セグメント間の取引を相殺消去しています。
2. 金額及び比率は単位未満を四捨五入表示しています。
b.受注状況
当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと,次のとおりです。
(注)1. 各セグメントの受注高は,セグメント間の取引を含んでおり,調整額でセグメント間取引の合計額を消去しています。
2. 各セグメントの受注残高は,セグメント間の取引を相殺消去しています。
3. 金額及び比率は単位未満を四捨五入表示しています。
4. 航空・宇宙・防衛事業では,出荷済みのPW1100G-JMエンジンに関する追加検査プログラムの影響による
受注高の減少を含んでいます。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと,次のとおりです。
(注)1. 販売実績は売上収益をもって示します。
2. 金額はセグメント間の取引を含んでおり,調整額でセグメント間取引の合計額を消去しています。
3. 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は次のとおりです。
4. 金額及び比率は単位未満を四捨五入表示しています。
(2)経営者による財政状態,経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は,IFRSに準拠して作成されています。連結財務諸表の作成に当たり,見積りが必要となる事項については,合理的な基準に基づき,会計上の見積りを行なっています。
詳細については,第5「経理の状況」1連結財務諸表等(1)連結財務諸表注記「3.重要性のある会計方針」,及び注記「4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載しています。
②経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループ及びセグメントごとの経営成績の状況は(1)経営成績等の状況の概要の①財政状態及び経営成績の状況に記載のとおりです。
当社グループは,2023年度を初年度とする3か年の中期経営計画「グループ経営方針2023」に基づく取り組みを進めています。劇的な環境変化へ対応し,持続的な高成長を実現する事業へ変革するため,成長をけん引する航空エンジン・ロケット分野の成長事業と,将来の事業の柱として期待されるクリーンエネルギー分野の育成事業へ,経営資源を大胆にシフトし,重点的に投資を実行していきます。
成長事業である航空エンジン・ロケット分野では,今後確実に世界の航空機需要の伸びが予想される中で,民間向け航空エンジンにおける小型~大型・超大型クラスのベストセラーエンジンの開発・量産事業に参画しており,新製エンジンやアフターマーケットの需要拡大に応えていきます。また,成長が見込まれる防衛関連事業や宇宙関連事業の拡大を目指し,生産能力の強化や必要な技術開発を進めていきます。当連結会計年度においては,出荷済みのPW1100G-JMエンジンに関する追加検査プログラムによる損失を計上しましたが,民間向け航空エンジン事業は成長局面へ移行し,かつ防衛・宇宙/民間MRO(Maintenance Repair and Overhaul)も堅調に拡大しました。
育成事業であるクリーンエネルギー分野については,当社グループの技術力を活かしながら,燃料アンモニアに関する製造から貯蔵・輸送及び利活用に至るまでのバリューチェーンの構築を進め,カーボンフリーな世界の実現に貢献していきます。当連結会計年度においては,JERA碧南火力発電所にて世界初の燃料アンモニア20%転換の実証試験を開始するなど,燃料アンモニアバリューチェーン事業の開発が順調に進捗しました。
中核事業である資源・エネルギー・環境,社会基盤,産業システム・汎用機械の各分野では,引き続きライフサイクルビジネスの拡大に注力するとともに,事業ポートフォリオの変革を通して継続的な成長シナリオを描き,投資に必要なキャッシュを創出していきます。当連結会計年度においては,ライフサイクルビジネスの売上・受注が順調に拡大しました。
2023年度は,PW1100G-JMエンジンに関する追加検査プログラムの影響等の特別要因もあり,多額の損失計上があったものの,一過性の特別要因による損失を除くベースでは営業利益率は7%となり,「グループ経営方針2023」初年度として順調に利益の積み上げが進みました。
2025年度の経営目標達成につながる収益性を確保していく一方で,特別要因により毀損した財務基盤の改善が必要な状況となっています。利益を稼ぐ力に対し,資本効率性に課題があることから,CCC改善に向けた運転資本の削減や,ROICのハードルレートとなる資本コストが適正な水準となるよう意識しつつ負債・資本のバランスをコントロールすることなどを通じて,バランスシートの管理強化を推進しています。
これらの取組みにおいて,資本コストの的確な把握,及びその内容や市場の評価を踏まえた分析・評価をさらに踏み込んで行なうことで,より一層,資本収益性・効率性向上につながる経営を進めていきます。
(注)各指標の算出方法は次のとおりです。
・ROIC :(1-法定実効税率)×(営業利益+受取利息+受取配当金)
÷(親会社の所有者に帰属する持分+有利子負債の金額)
・CCC :運転資本÷売上収益×365日
・運転資本:営業債権+契約資産+棚卸資産+前払金-契約負債-営業債務-返金負債
・2023年度及び2024年度の括弧内の数字は,出荷済みのPW1100G-JMエンジンに関する追加検査
プログラム及び海外連結子会社における訴訟の和解合意による損失の影響を除いたものです。
③キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a.財務戦略の基本的な考え方
当社グループは,事業基盤の強化やキャッシュ創出力向上の取組みを通じて得られた自己資金を原資として,財務基盤の拡充と株主還元のバランスを取りながら,事業変革のための投資を進めていくことを財務戦略の基本方針としています。
2023年度のキャッシュ・フローは,営業活動によるキャッシュ・フローが621億円の収入となり,投資活動によるキャッシュ・フローは516億円の支出となりました。合計したフリー・キャッシュ・フローは104億円となり,前連結会計年度に対して86億円増加しました。
引き続き当社グループは,「グループ経営方針2023」で掲げる収益性・キャッシュ創出力を重視した経営施策を着実に実行し,成長・育成事業への最適な資金配分により,持続的な高成長を実現する企業体質への変革を実現し,企業価値向上へつなげていきます。
出荷済みのPW1100G-JMエンジンに関する追加検査プログラムに係る支出が来期以降に発生することや,稼ぐ力がキャッシュ・フローに結び付いていないことから,営業キャッシュ・フローの強化は喫緊の課題です。運転資本の圧縮を進め,キャッシュ・フロー改善につなげていきます。
b.資金調達の方針
当社グループの運転資金,投資向け資金等の必要資金の財源については,主として営業活動によるキャッシュ・フローで獲得した資金を財源とすることを原則としています。必要に応じて,短期的な資金については金利の上昇に留意しつつ銀行借入やコマーシャル・ペーパーなど,設備資金・投融資資金等の長期的な資金については,日銀の政策変更による本邦金利上昇を見据えながら既存借入金及び既発行債の償還時期等を総合的に勘案し,長期借入金や社債等によって調達しています。
外部からの資本・資金調達については,関連するリスクを適切にコントロールした上で,資本コストを最小化する調達を実現することを資金調達の基本方針としています。
また,当社グループ内部では,グループガバナンスの向上,資金効率の向上及び資本コストの低減を図り,企業価値向上に寄与するため,グループ一体となった資金調達・資金収支管理を実施しており,当社と国内子会社間,また海外の一部地域の関係会社間ではキャッシュ・マネジメント・システムによる資金融通を行ない,グループ内の流動性確保,資金効率向上に努めています。
c.資金需要,資金調達及び流動性の分析
当社グループの主な資金需要は,事業活動に必要な運転資金,成長事業創出のための研究開発費及び設備投資等です。
当連結会計年度末の有利子負債残高はリース負債を含めて5,743億円となり,前連結会計年度末に対して548億円増加しました。これは主として,事業活動による運転資金や投資活動のための資金の増加を外部借入で調達したことによるものです。
当連結会計年度末の現金及び現金同等物は1,388億円であり,前連結会計年度末と比較して140億円増加しています。手元資金の流動性については現金及び現金同等物に加え,主要銀行とのコミットメントライン契約や当座貸越枠,コマーシャル・ペーパーなど多様な調達手段を保有しています。また,機動的な資金調達手段を確保することを目的として,2023年11月に1,500億円のコミットメントライン契約を締結しています。上記現金及び現金同等物と合わせて引き続き十分な流動性を確保しています。
また,資金調達の多様性では,2023年9月に策定したサステナブル・ファイナンス・フレームワークを用いて,グリーン/トランジション・ファイナンスによる資金調達を促進しています。ESG経営を進める中で,ファイナンスを事業活動と一体ととらえ,自然と技術が調和する持続可能な社会の実現のために適切な資金調達と事業展開を行なっていきます。
(注)この項に記載の金額は単位未満を切捨て表示しています。
①財政状態及び経営成績の状況
a.経営成績の状況
当連結会計年度の世界経済は,欧州経済は金融引き締めやエネルギー情勢の影響等を受けて低迷,中国経済は不動産市場の停滞に伴い減速した一方で,米国経済は金融引き締めが維持された環境の中でも底堅い雇用・所得環境に支えられ堅調に推移しました。わが国経済については,雇用・所得環境が改善する中で,世界的なインフレの影響は受けつつも,景気は緩やかに回復しています。
当社グループは,第2四半期連結会計期間において,出荷済みのPW1100G-JMエンジンに関する追加検査プログラム及び海外連結子会社における訴訟の和解合意により多額の損失を計上しました。
出荷済みのPW1100G-JMエンジンに関する追加検査プログラムについては,地上駐機(※)に対する補償費用や追加整備費用等の発生が見込まれますが,当第4四半期連結会計期間においてその前提条件に変更はありません。現在,プログラムパートナーとともに整備能力増強を図り,地上駐機数の低減に向けた対応を進めています。お客さまであるエアラインへの負担軽減及び信頼回復に取り組んでまいります。
(※)地上駐機:エンジン追加検査のための計画外エンジン取り下ろしに起因して機体が運航不能となること。
また,原動機事業で発生したエンジンの試運転記録に係る不適切行為については,対象となる製品を納入したお客さまに真摯に対応するとともに,原因究明や再発防止策の策定などを進めてまいります。
当社グループの主力事業である民間向け航空エンジンは,旅客需要の回復に伴って,エンジン本体及びスペアパーツ販売が堅調に推移しています。また,防衛装備品については,防衛力の抜本的強化の政府方針のもと,防衛予算が大きく増加しており,受注が拡大しています。今後見込まれる民間向け航空エンジンや防衛装備品の需要拡大に応えていくため,増産に向けた能力増強を進めるとともに,世界トップレベルの生産効率実現への取組みを推進しています。
車両過給機においては,自動車市場全体の傾向として,半導体部品等の供給制約改善や中国の販売促進策の影響もあり生産台数は年初予想を大きく上回る結果となりました。電気自動車の普及は進みつつあるものの,そのスピードは未だ流動的です。市場の変化に対応しながらも,当社グループは確実に需要に応えるため,事業構造改革を含め供給体制の維持・整備を進めています。
また,カーボンソリューション事業では,省エネ法改正による脱炭素電源導入の促進や,海外での再エネ技術の需要が増加の傾向にあります。燃料転換をはじめとしたお客さまプラントの価値向上への貢献とともに,ライフサイクルビジネスの拡大を図っています。
このような事業環境下において,当社グループの当連結会計年度は,受注高については前年度比0.8%増の1兆3,768億円となったものの,売上収益については前述の出荷済みのPW1100G-JMエンジンに関する追加検査プログラムの影響などにより,2.2%減の1兆3,225億円となりました。
損益面では,営業損益は,為替円安の影響のほか,民間向け航空エンジンのスペアパーツ販売の増加,ライフサイクルビジネス等の拡大の効果はありましたが,前述の減収の影響に加えて,車両過給機の事業構造改革費用などもあり,1,521億円減益の701億円の損失となりました。親会社の所有者に帰属する当期損益は,682億円の損失です。
当連結会計年度の報告セグメント別の業績は以下のとおりとなりました。
(単位:億円)
| 報告セグメント | 受注高 | 前連結会計年度 | 当連結会計年度 | 前年度比 | |||||
| 前連結 会計年度 | 当連結 会計年度 | 前年度比 増減率 (%) | (2022.4~2023.3) | (2023.4~2024.3) | 増減率(%) | ||||
| 売上収益 | 営業損益 | 売上収益 | 営業損益 | 売上収益 | 営業損益 | ||||
| 資源・ エネルギー・環境 | 3,934 | 3,101 | △21.2 | 3,713 | 262 | 4,049 | 177 | 9.0 | △32.6 |
| 社会基盤 | 1,340 | 1,593 | 18.9 | 1,710 | 170 | 1,709 | 150 | △0.0 | △11.8 |
| 産業システム・ 汎用機械 | 4,559 | 4,748 | 4.1 | 4,365 | 180 | 4,661 | 127 | 6.8 | △29.2 |
| 航空・宇宙・防衛 | 3,727 | 4,237 | 13.7 | 3,641 | 361 | 2,704 | △1,028 | △25.7 | - |
| 報告セグメント 計 | 13,562 | 13,681 | 0.9 | 13,431 | 975 | 13,125 | △573 | △2.3 | - |
| その他 | 539 | 584 | 8.4 | 542 | 13 | 560 | 44 | 3.3 | 235.0 |
| 調整額 | △440 | △496 | - | △444 | △168 | △460 | △172 | - | - |
| 合計 | 13,661 | 13,768 | 0.8 | 13,529 | 819 | 13,225 | △701 | △2.2 | - |
(注)金額は単位未満を切捨て表示し,比率は四捨五入表示しています。
なお,参考情報として,前述の,第2四半期連結会計期間において計上した出荷済みのPW1100G-JMエンジンに関する追加検査プログラム及び海外連結子会社における訴訟の和解合意による損失の影響を除いた場合の報告セグメント別の業績は以下のとおりとなります。
(単位:億円)
| 報告セグメント | 受注高 | 前連結会計年度 | 当連結会計年度 | 前年度比 | |||||
| 前連結 会計年度 | 当連結 会計年度 | 前年度比 増減率 (%) | (2022.4~2023.3) | (2023.4~2024.3) | 増減率(%) | ||||
| 売上収益 | 営業損益 | 売上収益 | 営業損益 | 売上収益 | 営業損益 | ||||
| 資源・ エネルギー・環境 | 3,934 | 3,248 | △17.4 | 3,713 | 262 | 4,196 | 324 | 13.0 | 23.4 |
| 社会基盤 | 1,340 | 1,593 | 18.9 | 1,710 | 170 | 1,709 | 150 | △0.0 | △11.8 |
| 産業システム・ 汎用機械 | 4,559 | 4,748 | 4.1 | 4,365 | 180 | 4,661 | 127 | 6.8 | △29.2 |
| 航空・宇宙・防衛 | 3,727 | 5,797 | 55.5 | 3,641 | 361 | 4,263 | 568 | 17.1 | 57.1 |
| 報告セグメント 計 | 13,562 | 15,387 | 13.5 | 13,431 | 975 | 14,831 | 1,170 | 10.4 | 20.0 |
| その他 | 539 | 584 | 8.4 | 542 | 13 | 560 | 44 | 3.3 | 235.0 |
| 調整額 | △440 | △496 | - | △444 | △168 | △460 | △172 | - | - |
| 合計 | 13,661 | 15,475 | 13.3 | 13,529 | 819 | 14,932 | 1,042 | 10.4 | 27.2 |
(注)金額は単位未満を切捨て表示し,比率は四捨五入表示しています。
⦅資源・エネルギー・環境⦆
世界各国でカーボンニュートラルに向けた動きが加速しており,エネルギー分野における化石資源からの脱却だけでなく,鉄鋼や化学をはじめとした産業分野でも素材の脱化石資源化に向けた動きも広がっています。また,COP28ではこれまでの動きに加えて原子力利用の拡大が宣言されました。
このような事業環境のもと,受注高は,海外連結子会社における訴訟の和解合意による損失の影響のほか,前期の大型案件受注の反動により減少しました。
売上収益は,前述の海外連結子会社における訴訟の和解合意による損失や原子力での工事量減少の影響はありましたが,カーボンソリューションが堅調に拡大したことに加え,東南アジアの大型発電プロジェクトが順調に進捗したことにより増収となりました。
営業利益は,カーボンソリューションでのライフサイクルビジネスや東南アジアの大型発電プロジェクトの増収影響はありましたが,海外連結子会社における訴訟の和解合意による損失により減益となりました。
⦅社会基盤⦆
国内においては,インフラ老朽化や気候変動による自然災害の激甚化の対策として国土強靭化計画の施策が実施されており,流域治水や道路ネットワーク機能強化,老朽化橋梁の維持,修繕の推進,さらに予防保全型インフラメンテナンスへの転換に向けた取り組みが進められています。一方,建設分野における人手不足が常態化する中,2024年4月から建設業においても時間外労働の上限規制が適用されたため,これまで以上に省人化・自動化及びDXを推進し,生産性を向上させていく必要があります。
このような事業環境のもと,受注高は,橋梁・水門等で増加しました。
売上収益は,概ね横ばいとなりました。
営業利益は,橋梁・水門での原価先行算入により減益となりました。
⦅産業システム・汎用機械⦆
産業界全体における資材価格と人件費の高騰は常態化しつつあり,半導体市場や中国の景気減速は2024年度後半に回復を見込んでいるとはいえ,市況は依然として不透明な状況です。その一方で,産業界におけるカーボンニュートラルへのニーズの高まり,先進国における労働生産人口減少による人手不足,さらには経済安全保障を念頭に置いた国際サプライチェーンの変化などが,産業分野の中長期トレンドとして捉えられています。
このような事業環境のもと,受注高は,車両過給機等で増加しました。
売上収益は,為替が円安で推移した影響もあり,車両過給機や回転機械などで増収となりました。
営業利益は,販管費の増加等に加えて,車両過給機において事業構造改革費用を計上したなどにより減益となりました。
⦅航空・宇宙・防衛⦆
民間向け航空エンジン事業では世界の旅客需要は回復から成長軌道に入りつつあり,アフターマーケットでの収益も拡大を継続しています。また,防衛予算の増額,宇宙産業の市場拡大の流れを受け,防衛・宇宙事業においても,新たな価値創造を図り,競争力向上を目指していきます。一方で,サプライチェーンの混乱や物価高騰は継続しており,将来の事業環境は依然として不透明なところもあるため,変化に打ち勝つ事業体質構築に向け,デジタル基盤の活用等による生産効率改革,業務構造改革をさらに推進し,成長を加速していきます。
このような事業環境のもと,受注高は,出荷済みのPW1100G-JMエンジンに関する追加検査プログラムの影響はあったものの,防衛事業の需要拡大もあり増加しました。
売上収益は,民間向け航空エンジンでのエンジン本体・スペアパーツの販売増加や,防衛事業の需要拡大がありましたが,出荷済みのPW1100G-JMエンジンに関する追加検査プログラムの影響で減収となりました。
営業利益は,防衛事業で受注拡大に伴う増益したものの,民間向け航空エンジンでの出荷済みのPW1100G-JMエンジンに関する追加検査プログラムの影響で減益となりました。
なお,文中の将来に関する事項は,当連結会計年度末現在において判断したものです。
b.資産及び負債,資本の状況
当連結会計年度末における総資産は2兆978億円となり,前連結会計年度末と比較して1,558億円増加しました。主な増加項目は,営業債権及びその他の債権で742億円,棚卸資産で477億円です。
負債は1兆6,955億円となり,前連結会計年度末と比較して2,098億円増加しました。主な増加項目は,返金負債で1,540億円であり,主に出荷済みのPW1100G-JMエンジンに関する追加検査プログラムによる影響で増加したものです。有利子負債残高はリース負債を含めて5,743億円となり,前連結会計年度末と比較して548億円増加しました。継続して資金流動性の確保の取り組みを進めています。
資本は4,022億円となり,前連結会計年度末と比較して539億円減少しました。これには,親会社の所有者に帰属する当期損失682億円が含まれています。
以上の結果,親会社所有者帰属持分比率は,前連結会計年度末の22.2%から17.9%となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下,「資金」という)の残高は,前連結会計年度末と比較して140億円増加し,1,388億円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは621億円の収入超過(前連結会計年度は541億円の収入超過)となりました。これは,成長事業である民間向け航空エンジン事業において,サプライチェーンの不安定な状態が続く中,増産に向けて運転資本が増加した一方で,PW1100G-JMエンジンに関する追加検査プログラムによるキャッシュへの影響が翌連結会計年度以降となったことや,収益の拡大も進んだことから,資金が増加したためです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは516億円の支出超過(前連結会計年度は523億円の支出超過)となりました。これは,固定資産の譲渡による収入があった一方で,設備投資を進めたことにより支出が増加したためです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは25億円の支出超過(前連結会計年度は240億円の支出超過)となりました。これは,借入による収入増があったものの,配当金の支払や金融負債の返済による支出があったためです。
(注)この項に記載の金額は単位未満を切捨て表示し,比率は四捨五入表示しています。
③生産,受注及び販売の状況
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと,次のとおりです。
| セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前年度比(%) |
| 資源・エネルギー・環境 | 430,215 | 12.0 |
| 社会基盤 | 173,642 | 2.0 |
| 産業システム・汎用機械 | 462,044 | 6.5 |
| 航空・宇宙・防衛 | 478,294 | 29.6 |
| 報告セグメント 計 | 1,544,195 | 13.8 |
| その他 | 12,583 | △62.8 |
| 合計 | 1,556,778 | 11.9 |
(注)1. 金額は販売価格によっており,セグメント間の取引を相殺消去しています。
2. 金額及び比率は単位未満を四捨五入表示しています。
b.受注状況
当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと,次のとおりです。
| セグメントの名称 | 受注高 (百万円) | 前年度比(%) | 期末受注残高 (百万円) | 前年度末比(%) |
| 資源・エネルギー・環境 | 310,182 | △21.2 | 483,425 | △14.5 |
| 社会基盤 | 159,396 | 18.9 | 210,234 | △3.7 |
| 産業システム・汎用機械 | 474,805 | 4.1 | 205,432 | 2.2 |
| 航空・宇宙・防衛 | 423,729 | 13.7 | 450,974 | 53.7 |
| 報告セグメント 計 | 1,368,112 | 0.9 | 1,350,065 | 5.6 |
| その他 | 58,453 | 8.4 | 22,320 | 6.9 |
| 調整額 | △49,695 | - | - | - |
| 合計 | 1,376,870 | 0.8 | 1,372,385 | 5.6 |
(注)1. 各セグメントの受注高は,セグメント間の取引を含んでおり,調整額でセグメント間取引の合計額を消去しています。
2. 各セグメントの受注残高は,セグメント間の取引を相殺消去しています。
3. 金額及び比率は単位未満を四捨五入表示しています。
4. 航空・宇宙・防衛事業では,出荷済みのPW1100G-JMエンジンに関する追加検査プログラムの影響による
受注高の減少を含んでいます。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと,次のとおりです。
| セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前年度比(%) |
| 資源・エネルギー・環境 | 404,955 | 9.0 |
| 社会基盤 | 170,971 | 0.0 |
| 産業システム・汎用機械 | 466,196 | 6.8 |
| 航空・宇宙・防衛 | 270,402 | △25.7 |
| 報告セグメント 計 | 1,312,524 | △2.3 |
| その他 | 56,084 | 3.3 |
| 調整額 | △46,017 | - |
| 合計 | 1,322,591 | △2.2 |
(注)1. 販売実績は売上収益をもって示します。
2. 金額はセグメント間の取引を含んでおり,調整額でセグメント間取引の合計額を消去しています。
3. 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は次のとおりです。
| 相手先 | 前連結会計年度 | 当連結会計年度 | ||
| 金額(百万円) | 割合(%) | 金額(百万円) | 割合(%) | |
| 一般財団法人 日本航空機エンジン協会 | 157,344 | 11.6 | 34,331 | 2.6 |
4. 金額及び比率は単位未満を四捨五入表示しています。
(2)経営者による財政状態,経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は,IFRSに準拠して作成されています。連結財務諸表の作成に当たり,見積りが必要となる事項については,合理的な基準に基づき,会計上の見積りを行なっています。
詳細については,第5「経理の状況」1連結財務諸表等(1)連結財務諸表注記「3.重要性のある会計方針」,及び注記「4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載しています。
②経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループ及びセグメントごとの経営成績の状況は(1)経営成績等の状況の概要の①財政状態及び経営成績の状況に記載のとおりです。
当社グループは,2023年度を初年度とする3か年の中期経営計画「グループ経営方針2023」に基づく取り組みを進めています。劇的な環境変化へ対応し,持続的な高成長を実現する事業へ変革するため,成長をけん引する航空エンジン・ロケット分野の成長事業と,将来の事業の柱として期待されるクリーンエネルギー分野の育成事業へ,経営資源を大胆にシフトし,重点的に投資を実行していきます。
成長事業である航空エンジン・ロケット分野では,今後確実に世界の航空機需要の伸びが予想される中で,民間向け航空エンジンにおける小型~大型・超大型クラスのベストセラーエンジンの開発・量産事業に参画しており,新製エンジンやアフターマーケットの需要拡大に応えていきます。また,成長が見込まれる防衛関連事業や宇宙関連事業の拡大を目指し,生産能力の強化や必要な技術開発を進めていきます。当連結会計年度においては,出荷済みのPW1100G-JMエンジンに関する追加検査プログラムによる損失を計上しましたが,民間向け航空エンジン事業は成長局面へ移行し,かつ防衛・宇宙/民間MRO(Maintenance Repair and Overhaul)も堅調に拡大しました。
育成事業であるクリーンエネルギー分野については,当社グループの技術力を活かしながら,燃料アンモニアに関する製造から貯蔵・輸送及び利活用に至るまでのバリューチェーンの構築を進め,カーボンフリーな世界の実現に貢献していきます。当連結会計年度においては,JERA碧南火力発電所にて世界初の燃料アンモニア20%転換の実証試験を開始するなど,燃料アンモニアバリューチェーン事業の開発が順調に進捗しました。
中核事業である資源・エネルギー・環境,社会基盤,産業システム・汎用機械の各分野では,引き続きライフサイクルビジネスの拡大に注力するとともに,事業ポートフォリオの変革を通して継続的な成長シナリオを描き,投資に必要なキャッシュを創出していきます。当連結会計年度においては,ライフサイクルビジネスの売上・受注が順調に拡大しました。
2023年度は,PW1100G-JMエンジンに関する追加検査プログラムの影響等の特別要因もあり,多額の損失計上があったものの,一過性の特別要因による損失を除くベースでは営業利益率は7%となり,「グループ経営方針2023」初年度として順調に利益の積み上げが進みました。
2025年度の経営目標達成につながる収益性を確保していく一方で,特別要因により毀損した財務基盤の改善が必要な状況となっています。利益を稼ぐ力に対し,資本効率性に課題があることから,CCC改善に向けた運転資本の削減や,ROICのハードルレートとなる資本コストが適正な水準となるよう意識しつつ負債・資本のバランスをコントロールすることなどを通じて,バランスシートの管理強化を推進しています。
これらの取組みにおいて,資本コストの的確な把握,及びその内容や市場の評価を踏まえた分析・評価をさらに踏み込んで行なうことで,より一層,資本収益性・効率性向上につながる経営を進めていきます。
| 2023年度 (2024年3月期)実績 | 2024年度 (2025年3月期)見通し | グループ経営方針2023 2025年度経営目標 | |
| ROIC | △4.9% | 8.3% | 8%以上 |
| 営業利益率 | △5.3% (7.0%) | 6.9% | 7.5% |
| CCC | 107日 (132日) | 110日 (129日) | 100日 |
(注)各指標の算出方法は次のとおりです。
・ROIC :(1-法定実効税率)×(営業利益+受取利息+受取配当金)
÷(親会社の所有者に帰属する持分+有利子負債の金額)
・CCC :運転資本÷売上収益×365日
・運転資本:営業債権+契約資産+棚卸資産+前払金-契約負債-営業債務-返金負債
・2023年度及び2024年度の括弧内の数字は,出荷済みのPW1100G-JMエンジンに関する追加検査
プログラム及び海外連結子会社における訴訟の和解合意による損失の影響を除いたものです。
③キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a.財務戦略の基本的な考え方
当社グループは,事業基盤の強化やキャッシュ創出力向上の取組みを通じて得られた自己資金を原資として,財務基盤の拡充と株主還元のバランスを取りながら,事業変革のための投資を進めていくことを財務戦略の基本方針としています。
2023年度のキャッシュ・フローは,営業活動によるキャッシュ・フローが621億円の収入となり,投資活動によるキャッシュ・フローは516億円の支出となりました。合計したフリー・キャッシュ・フローは104億円となり,前連結会計年度に対して86億円増加しました。
引き続き当社グループは,「グループ経営方針2023」で掲げる収益性・キャッシュ創出力を重視した経営施策を着実に実行し,成長・育成事業への最適な資金配分により,持続的な高成長を実現する企業体質への変革を実現し,企業価値向上へつなげていきます。
出荷済みのPW1100G-JMエンジンに関する追加検査プログラムに係る支出が来期以降に発生することや,稼ぐ力がキャッシュ・フローに結び付いていないことから,営業キャッシュ・フローの強化は喫緊の課題です。運転資本の圧縮を進め,キャッシュ・フロー改善につなげていきます。
b.資金調達の方針
当社グループの運転資金,投資向け資金等の必要資金の財源については,主として営業活動によるキャッシュ・フローで獲得した資金を財源とすることを原則としています。必要に応じて,短期的な資金については金利の上昇に留意しつつ銀行借入やコマーシャル・ペーパーなど,設備資金・投融資資金等の長期的な資金については,日銀の政策変更による本邦金利上昇を見据えながら既存借入金及び既発行債の償還時期等を総合的に勘案し,長期借入金や社債等によって調達しています。
外部からの資本・資金調達については,関連するリスクを適切にコントロールした上で,資本コストを最小化する調達を実現することを資金調達の基本方針としています。
また,当社グループ内部では,グループガバナンスの向上,資金効率の向上及び資本コストの低減を図り,企業価値向上に寄与するため,グループ一体となった資金調達・資金収支管理を実施しており,当社と国内子会社間,また海外の一部地域の関係会社間ではキャッシュ・マネジメント・システムによる資金融通を行ない,グループ内の流動性確保,資金効率向上に努めています。
c.資金需要,資金調達及び流動性の分析
当社グループの主な資金需要は,事業活動に必要な運転資金,成長事業創出のための研究開発費及び設備投資等です。
当連結会計年度末の有利子負債残高はリース負債を含めて5,743億円となり,前連結会計年度末に対して548億円増加しました。これは主として,事業活動による運転資金や投資活動のための資金の増加を外部借入で調達したことによるものです。
当連結会計年度末の現金及び現金同等物は1,388億円であり,前連結会計年度末と比較して140億円増加しています。手元資金の流動性については現金及び現金同等物に加え,主要銀行とのコミットメントライン契約や当座貸越枠,コマーシャル・ペーパーなど多様な調達手段を保有しています。また,機動的な資金調達手段を確保することを目的として,2023年11月に1,500億円のコミットメントライン契約を締結しています。上記現金及び現金同等物と合わせて引き続き十分な流動性を確保しています。
また,資金調達の多様性では,2023年9月に策定したサステナブル・ファイナンス・フレームワークを用いて,グリーン/トランジション・ファイナンスによる資金調達を促進しています。ESG経営を進める中で,ファイナンスを事業活動と一体ととらえ,自然と技術が調和する持続可能な社会の実現のために適切な資金調達と事業展開を行なっていきます。
(注)この項に記載の金額は単位未満を切捨て表示しています。