有価証券報告書-第203期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)
(1)経営成績等の状況の概要
①財政状態及び経営成績の状況
a.経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は,年度後半までは,設備投資の緩やかな増加や雇用・所得環境の改善に支えられ,総じて安定的に推移しました。世界経済については,全体としては緩やかな成長が続いたものの,中国や欧州の景気に減速傾向がみられたことに加え,米中貿易摩擦,英国のEU離脱問題,地政学的リスクの高まりなど,政治面においても不安定な状況が続きました。2020年1月以降は,世界的な新型コロナウイルス感染拡大により,製造業の一時的な操業停止や,人の往来制限による消費の落ち込みが生じ,国内及び世界各国の経済は急速に悪化し,極めて厳しい状況にあります。
このような事業環境下において,当社グループの当連結会計年度の受注高は前期比1.8%減の1兆3,739億円となりました。また,売上高についても前期比6.5%減の1兆3,865億円となりました。
損益面では,ボイラ・原動機の減収,民間向け航空エンジンの検査プロセスの厳格化に伴う減収やプログラム費用の追加負担の影響に加え,車両過給機で主に欧州での販売台数が減少したことなどにより,営業利益は,216億円減益の607億円となりました。経常利益は,当社の関連会社であるジャパン マリンユナイテッド株式会社の業績悪化に伴う持分法投資損失の計上などにより減益幅が拡大し,334億円減益の322億円となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は,270億円減益の128億円となりました。
新型コロナウイルス感染拡大の収束が見通せない状況下において,当社グループでは,従業員と従業員の家族,ステークホルダーの皆さまの安全・健康を最優先にしつつ,在宅業務の徹底など,感染拡大防止策を講じた上で,事業活動を継続しております。一方で,このような厳しい環境下で,民間航空機エンジン事業において,旅客需要の急減やエアラインの経営状況の悪化の影響を受けるほか,車両過給機事業において,自動車需要の減少や,自動車会社の工場生産停止の影響を受けることなどが想定されます。また,他の事業においても,外出自粛などの感染拡大防止策の長期化により,進行中案件の建設工程での遅延が懸念されます。こうした新型コロナウイルス感染拡大の影響を最小限に抑えるべく,リスクマネジメントの強化や事業体質の転換など,経営環境の変化に柔軟に対応した施策を講じてまいります。
当連結会計年度の報告セグメント別の業績は以下のとおりとなりました。
(単位:億円)
⦅資源・エネルギー・環境⦆
パリ協定にて世界の平均気温上昇の上限や温室効果ガス排出量と吸収量のバランスについて長期目標が掲げられる中,気候変動への対策の動きや脱炭素への世の中の流れが想定以上に加速しています。それに伴い,社会やお客さまの抱える課題も地域ごと・発展段階ごとに多様化しており,再生エネルギーや分散型電源の普及とエネルギー安定供給のためのエネルギーマネジメントへの動きが加速してきました。
このような事業環境のもと,受注高は,プラントで減少したものの,ボイラで環境負荷低減技術を採用した海外向け大型案件を受注したことで,増加しました。
売上高は,ボイラで工事進捗遅れによる減収,プラントで前期に大型プロジェクトが進捗した反動で減収となりました。
営業利益は,ボイラでの減収の影響や原動機での工事下振れはあったものの,プラントでの前期の採算悪化が収束してきた影響により増益となりました。
⦅社会基盤・海洋⦆
国内においては,高速道路未整備区間やリニア中央新幹線などの発注により新設の需要が見込まれるものの,昨今の災害の激甚化や進行するインフラ老朽化から,強靭化・長寿命化のニーズが急速に高まっており,保全事業へのシフトが加速しています。また,管理者・技術者不足の対応策として規制改革も進んでおり,ICT/IoTの活用等による事業全体の効率化・省人化が求められています。海外においては,欧米やアジア・中東において,インフラ投資効率化や環境配慮の観点から,設計・建設から運営・維持管理までを包括したコンセッション事業が普及し,橋梁・トンネルが含まれる道路・鉄道建設プロジェクトが進展しております。
このような事業環境のもと,受注高は,橋梁・水門で海外向け大型案件を受注したことで,増加しました。
売上高は,シールドシステムで減収となったものの,橋梁・水門で増収となりました。
営業利益は,交通システムで増益となったものの,シールドシステムで減収により減益となりました。
⦅産業システム・汎用機械⦆
デジタル技術の伸長に伴う自動化の進展や,サプライチェーンのグローバル化といった産業システム全般の大きな変化は年々加速しています。一方で,自動車産業では中国に端を発した世界的な市況の低迷と,それに付随した関連部品産業の落ち込みから,当社の主力分野の車両過給機事業,熱・表面処理事業でも需要の低迷が見られました。加えて,新型コロナウイルス感染拡大による経済活動の停滞の長期化を受け,世界的な自動車需要の減少が想定される中,当社の自動車関連事業においても大きな影響を受ける懸念があります。事業活動への影響を最小化し,回復期に向けた早期立ち上げの準備を進めています。
このような事業環境のもと,受注高は,運搬機械は大型案件を受注したことで増加したものの,車両過給機や熱・表面処理が減少したことで,減少となりました。
売上高は,車両過給機,熱・表面処理で減収となったほか,小型原動機事業を譲渡した影響により,減収となりました。
営業利益は,車両過給機や熱・表面処理の減収の影響により減益となりました。
⦅航空・宇宙・防衛⦆
これまでの当社の民間航空機エンジン事業は,世界の航空機需要の成長の中で,小型から大型までの幅広いクラスのエンジン開発・量産に参画し,独自技術・ものづくり力の高度化により事業拡大を図ってきました。また,不適切検査が発生した民間航空機エンジン整備事業においては,再発防止策を確実に進め,強靭な品質保証体制の再構築に取り組んでいます。一方で,今般の世界的な新型コロナウイルス感染拡大は,国際的な航空輸送需要の急減とエアラインの業績・財政状態の悪化をもたらしており,回復にも一定の期間を要することが想定されます。このためエンジン及びスペアパーツの販売減少が見込まれ,当社の事業への大きな影響も避けられない状況にある中,需要変化に応じた生産体制の見直しやリソースのシフトを進めていきます。また,当社のエンジンは,比較的新しいタイプの航空機に搭載されており,燃費をはじめ運用コストにおける優位性から優先的に運用が再開され,アフターマーケットでの収益の早期回復が期待されます。旅客需要の回復期におけるお客さまの航空機運航再開を万全の態勢で支えるべく,アフターマーケット分野での対応強化に最優先で取り組んでいきます。加えて,その先に見込まれる市場の成長軌道への回復に向けた準備を進めるとともに,航空業界の一員として,高効率・低燃費の新型エンジン開発などを通じた環境負荷低減への取り組みに貢献してまいります。
このような事業環境のもと,受注高は,防衛省向け航空エンジン,民間向け航空エンジン,ロケットシステム・宇宙利用で減少しました。
売上高は,防衛省向け航空エンジンで減収となりました。
営業利益は,民間向け航空エンジンで,新型エンジンのコストダウン活動の成果は表れてきているものの,整備事業の検査プロセス厳格化による影響や,プログラム費用の追加負担の影響等により,減益となりました。
なお,文中の将来に関する事項は,当連結会計年度末現在において判断したものです。
b.資産及び負債,純資産の状況
当連結会計年度末における総資産は1兆7,407億円となり,前連結会計年度末と比較して762億円増加しました。主な増加項目は,現金及び預金で522億円,受取手形及び売掛金で261億円,出資金などの投資その他の資産その他で186億円,主な減少項目は,投資有価証券で544億円です。
負債は1兆3,870億円となり,前連結会計年度末と比較して1,041億円増加しました。主な増加項目は,短期借入金で738億円,コマーシャル・ペーパーで560億円,主な減少項目は,支払手形及び買掛金で274億円です。また,有利子負債残高はリース債務を含めて4,881億円となり,前連結会計年度末と比較して1,330億円増加しました。
純資産は3,537億円となり,前連結会計年度末と比較して279億円減少しました。これには,自己株式の取得による減少148億円,剰余金の配当による減少108億円,親会社株主に帰属する当期純利益128億円が含まれています。
以上の結果,1株当たり純資産額は,前連結会計年度末と比較して67円16銭減少して,2,195円96銭となり,自己資本比率は,前連結会計年度末の21.0%から18.7%となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下,「資金」という。)の残高は,前連結会計年度末と比較して528億円増加し,1,454億円となりました。これは主に,新型コロナウイルス感染拡大の影響に対応するため十分な流動性を確保したことによります。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によって得られた資金は145億円(前連結会計年度は464億円の獲得)となりました。これは,売上債権の増加や仕入債務の減少などがある一方で,減価償却費や持分法による投資損失など資金流出を伴わない費用の影響を除いた利益の獲得などによって資金が増加したものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動に使用された資金は758億円(前連結会計年度は792億円の使用)となりました。これは主に,有形及び無形固定資産の取得による支出663億円,有価証券及び投資有価証券の取得による支出231億円などによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によって得られた資金は1,152億円(前連結会計年度は164億円の獲得)となりました。これは主に,短期借入金の増加840億円,コマーシャル・ペーパーの増加560億円などで,新型コロナウイルス感染拡大による経営環境悪化に備えたことによるものです。
(注)この項に記載の金額は単位未満を切捨て表示し,比率は四捨五入表示しています。
③生産,受注及び販売の状況
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと,次のとおりです。
(注)1 金額は販売価格によっており,セグメント間の取引を相殺消去しています。
2 上記の金額には,消費税等は含まれていません。
3 金額及び比率は単位未満を四捨五入表示しています。
b.受注状況
当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと,次のとおりです。
(注)1 各セグメントの受注高は,セグメント間の取引を含んでおり,調整額でセグメント間取引の合計額を消去しています。
2 各セグメントの受注残高は,セグメント間の取引を相殺消去しています。
3 上記の金額には,消費税等は含まれていません。
4 金額及び比率は単位未満を四捨五入表示しています。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと,次のとおりです。
(注)1 販売実績は売上高をもって示します。
2 金額はセグメント間の取引を含んでおり,調整額でセグメント間取引の合計額を消去しています。
3 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は次のとおりです。
4 上記の金額には,消費税等は含まれていません。
5 金額及び比率は単位未満を四捨五入表示しています。
(2)経営者による財政状態,経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は,わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されています。連結財務諸表の作成にあたり,連結貸借対照表上の資産,負債の計上額,及び連結損益計算書上の収益,費用の計上額に影響を与える判断,見積りを行なう必要があります。当社グループの重要な会計方針のうち,判断,見積りを行なう割合が高いものは,貸倒引当金,受注工事損失引当金などの各引当金の計上,退職給付債務の算定,繰延税金資産の回収可能性の判断などがあります。これらの判断,見積りについては合理的な方法により算定していますが,見積り特有の不確実性が存在するため,将来において認識される業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。これらのうち,重要なものについては,第2「事業の状況」の2「事業等のリスク」に記載しています。
なお,新型コロナウイルス感染拡大により,当社グループの事業は大きな影響を受ける懸念があります。特に民間航空機エンジン事業においては,エンジン及びスペアパーツの販売減少が見込まれ,回復には一定の期間を要することが想定されます。また,車両過給機事業においては,世界的な自動車需要減少に伴う車両過給機の販売減少が見込まれます。加えて,サプライチェーンが各国にまたがっていることによる生産停止・操業低下の可能性があります。その他の事業においても,工事進捗への影響及び需要減少のリスクが長期に及ぶことが想定されます。
これらの状況を踏まえ,当連結会計年度においては,2020年度の課税所得への影響を見積もり,繰延税金資産の算定を行なっています。
②経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループ及びセグメントごとの経営成績の状況は(1)経営成績等の状況の概要の①財政状態及び経営成績の状況に記載のとおりです。
「グループ経営方針2019」の最終年度の経営目標達成に向けて,初年度である2019年度(2020年3月期)の業績目標を設定し,施策を実行してまいりました。
2019年度においては,ライフサイクル視点でのアフターマーケット展開において,お客さまのオペレーションの把握による生産効率化やO&Mによるソリューション提案等の取り組みを進め,一定の成果を創出することができました。引き続き「グループ経営方針2019」の3つの変革の取り組みを加速していきます。
一方で,プロジェクトの下振れ防止活動については,全社レベルのモニタリングの継続・強化,有識者によるリスクレビューを徹底したことにより大規模な下振れに歯止めがかかったものの,複数の中小規模案件においてコストの増加要因が発見されました。さらに,車両過給機においては,中国経済の減速や新排ガス規制導入の影響を受け,販売台数が減少しました。
その結果,2019年度(2020年3月期)の実績は業績目標に対して未達となり,ROIC 5.7%,営業利益率4.4%,CCCは120日となりました。特にCCCについては,大きく悪化している状況にあり,ROICに資する適切な設備投資・投融資に絞り込むことや,運転資本の効率化よるキャッシュ・フローの改善が課題となっています。
また,今回の新型コロナウイルス感染拡大により,これまでの価値観が変化し,社会や生活者の行動が変容することで,企業の事業基盤の再構築,デジタル化の進展等がより一層加速していくことが想定されます。「グループ経営方針2019」で定めた目指す姿について,「アフターコロナ」の新たな常態に対応する持続可能な企業の在り方を再確認し,事業の方向性の見極めと構造改革及びポートフォリオマネジメントを推進します。
(注)各指標の算出方法は次のとおりです。
・ROIC:(1-「法定実効税率」)×(「営業利益」+「受取利息」+「受取配当金」)
÷(「株主資本合計」+「その他の包括利益累計額合計」+有利子負債の金額)
・CCC:(売上債権+たな卸資産-仕入債務)÷売上高×365日
なお,セグメントごとの業績目標(営業利益,営業利益率)の達成状況と今後の課題については以下のとおりです。
⦅資源・エネルギー・環境⦆
北米で遂行中のプロセスプラント案件での追加費用計上は収束してきたものの,中小規模案件での業績下振れが発生したこともあり,業績目標に対し大幅な未達となりました。
この事業領域では,引き続き徹底したプロジェクト管理を大型案件だけでなく中小規模案件においても強化して下振れを防止するとともに,キャッシュ・フローの改善に向けた業務プロセスの改革や,収益事業(改造・更新,部品販売,O&M事業等)へのリソースシフトを加速してまいります。また,全体最適のエネルギーミックスの実現に向け,新たな技術(アンモニア,CCUS(※)等)をはじめとする各種技術提案を国内外で展開していきます。
※Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage:二酸化炭素を分離・回収し,有効利用又は地下へ貯留する技術。
⦅社会基盤・海洋⦆
橋梁・水門で工場・現場の生産リードタイム短縮が進んだことや,共同調達によるコスト削減効果等の貢献もあり,業績目標どおりの営業利益率を達成しました。
この事業領域では,成果が出つつある生産プロセス改革について更なる水平展開を図るとともに,最新のICT技術の活用や高度化技術の採用等による大幅な工事リードタイムの改善,生産性向上への取り組みの検討を進め,社会インフラにおける事後保全の包括対応や予防保全等のライフサイクル型事業の強化をグローバルに進めてまいります。
⦅産業システム・汎用機械⦆
主に車両過給機や熱・表面処理における中国向けの販売減少や,新型コロナウイルス感染拡大の影響等により,業績目標に対し大幅な未達となりました。
この事業領域では,加速的に進展するデジタル技術と豊富な納入実績,お客さまとの密接な関係性を活用して,お客さまのオペレーションを深く理解し,運用の最適化の検討を進めるとともに,お客さま視点の価値提案によるサービス提供や海外市場への展開を加速することにより,ライフサイクル事業への変革を図ってまいります。また,新型コロナウイルスの感染拡大に伴い,世界的な自動車需要の減少が想定される中,当社グループの自動車関連の事業活動への影響を最小化し,需要回復期に向けた早期立ち上げの準備を進めています。
⦅航空・宇宙・防衛⦆
民間航空機エンジン整備事業の検査プロセス厳格化による操業減少の影響があったものの,初期負担の大きい新型エンジンの販売減少と売上情報入手早期化による補用部品の販売増加の影響などにより,業績目標を達成いたしました。
この事業領域では,品質問題への対応を最優先とした上で,着実な競争力強化へ向けた取り組みを継続してまいります。また,新型コロナウイルスの感染拡大に伴い,世界的な旅客需要の急激な減少が進む中,需要回復期におけるお客さまの運航再開を支えるべく,アフターマーケット分野への対応強化を最優先に取り組んでいきます。加えて,先進IoT/ICT技術を活用した整備事業の高度化,バリューチェーン全体にわたり高い価値を提供するための素形材事業の拡大に向けた準備を加速します。
③キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a.財務戦略の基本的な考え方
当社グループは,事業基盤の強化やキャッシュ・フロー創出力向上の取組みを通じて得られた自己資金を原資として,財務基盤の拡充と株主還元のバランスを取りながら,事業変革のための投資を進めていくことを財務戦略の基本方針としています。
「グループ経営方針2019」では,経営目標のROIC 10%以上とCCC80日以内の達成を通じて,2019年度からの3年間で事業変革のための投資を中心とした総額4,200億円の投資を進めていく方針を定め,併せて,連結配当性向30%程度を目安とする新たな配当政策を策定しました。
2019年度は,運転資本の増加により営業キャッシュ・フローが145億円と低水準に留まった一方で,事業変革のための投資を中心に投資キャッシュ・フローが営業キャッシュ・フローを大きく上回る758億円の支出となり,キャッシュ・フローの改善が課題となりました。
更には,新型コロナウイルス感染拡大の影響により,2020年度の営業キャッシュ・フローの悪化が懸念されることに加え,「グループ経営方針2019」で定めた事業の方向性についても,「アフターコロナ」の新たな常態の下でのあり方を再点検する必要が生じています。
このような状況の中で当社グループは,投資の一時凍結・抑制を含めた徹底的なキャッシュ・フローの改善とアセットマネジメントの実行により,堅固な財務基盤と十分な手元流動性を確保した上で,「アフターコロナ」を見据えた成長有望分野への投資原資を捻出していく考えです。
b.資金需要の分析
当連結会計年度は,新型コロナウイルス感染拡大を受けた手元流動性を確保するための資金確保,及び民間航空エンジンの新拠点立ち上げに伴う設備投資支出増加等の資金需要に対して,借入金を始めとする有利子負債により賄っております。この結果,当連結会計年度末の有利子負債残高はリース債務を含めて4,881億円となり,前連結会計年度末に対して1,330億円増加しています。
c.資金調達の方針と流動性の分析
当社グループの運転資金,投資向け資金等の必要資金の財源については,主として営業キャッシュ・フローで獲得した資金を財源とすることを原則としていますが,必要に応じて,短期的な資金については銀行借入やコマーシャル・ペーパーなど,設備資金・投融資資金等の長期的な資金については,金融市場動向や既存借入金及び既発行債の償還時期等を総合的に勘案し,長期借入金や社債等によって調達しています。
外部からの資本・資金調達については,関連するリスクを適切にコントロールした上で,資本コストを最小化する調達を実現することを資金調達の基本方針としています。
また,当社グループ内部では,グループガバナンスの向上,資金効率の向上及び資本コストの低減を図り,企業価値向上に寄与するため,グループ一体となった資金調達・資金収支管理を実施しており,当社と国内子会社間,また海外の一部地域の関係会社間ではキャッシュ・マネジメント・システムによる資金融通を行ない,グループ内の流動性確保,資金効率向上に努めています。
当連結会計年度末の現金及び現金同等物は1,455億円であり,前連結会計年度末と比較して529億円増加しています。手元資金の流動性については現金及び現金同等物に加え,主要銀行とのコミットメントライン契約や当座貸越枠,コマーシャル・ペーパーなど多様な調達手段とあわせて,今後も十分な水準を確保していきます。
(注)この項に記載の金額は単位未満を切捨て表示しています。
①財政状態及び経営成績の状況
a.経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は,年度後半までは,設備投資の緩やかな増加や雇用・所得環境の改善に支えられ,総じて安定的に推移しました。世界経済については,全体としては緩やかな成長が続いたものの,中国や欧州の景気に減速傾向がみられたことに加え,米中貿易摩擦,英国のEU離脱問題,地政学的リスクの高まりなど,政治面においても不安定な状況が続きました。2020年1月以降は,世界的な新型コロナウイルス感染拡大により,製造業の一時的な操業停止や,人の往来制限による消費の落ち込みが生じ,国内及び世界各国の経済は急速に悪化し,極めて厳しい状況にあります。
このような事業環境下において,当社グループの当連結会計年度の受注高は前期比1.8%減の1兆3,739億円となりました。また,売上高についても前期比6.5%減の1兆3,865億円となりました。
損益面では,ボイラ・原動機の減収,民間向け航空エンジンの検査プロセスの厳格化に伴う減収やプログラム費用の追加負担の影響に加え,車両過給機で主に欧州での販売台数が減少したことなどにより,営業利益は,216億円減益の607億円となりました。経常利益は,当社の関連会社であるジャパン マリンユナイテッド株式会社の業績悪化に伴う持分法投資損失の計上などにより減益幅が拡大し,334億円減益の322億円となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は,270億円減益の128億円となりました。
新型コロナウイルス感染拡大の収束が見通せない状況下において,当社グループでは,従業員と従業員の家族,ステークホルダーの皆さまの安全・健康を最優先にしつつ,在宅業務の徹底など,感染拡大防止策を講じた上で,事業活動を継続しております。一方で,このような厳しい環境下で,民間航空機エンジン事業において,旅客需要の急減やエアラインの経営状況の悪化の影響を受けるほか,車両過給機事業において,自動車需要の減少や,自動車会社の工場生産停止の影響を受けることなどが想定されます。また,他の事業においても,外出自粛などの感染拡大防止策の長期化により,進行中案件の建設工程での遅延が懸念されます。こうした新型コロナウイルス感染拡大の影響を最小限に抑えるべく,リスクマネジメントの強化や事業体質の転換など,経営環境の変化に柔軟に対応した施策を講じてまいります。
当連結会計年度の報告セグメント別の業績は以下のとおりとなりました。
(単位:億円)
| 報告セグメント | 受注高 | 前連結会計年度 | 当連結会計年度 | 前期比 | |||||
| 前連結 会計年度 | 当連結 会計年度 | 前期比 増減率 (%) | (2018.4~2019.3) | (2019.4~2020.3) | 増減率(%) | ||||
| 売上高 | 営業 損益 | 売上高 | 営業 損益 | 売上高 | 営業 損益 | ||||
| 資源・ エネルギー・ 環境 | 2,855 | 3,169 | 11.0 | 3,770 | 33 | 3,277 | 47 | △13.1 | 41.3 |
| 社会基盤・海洋 | 1,244 | 1,969 | 58.2 | 1,431 | 142 | 1,528 | 134 | 6.7 | △5.2 |
| 産業システム・ 汎用機械 | 4,589 | 4,201 | △8.5 | 4,410 | 231 | 4,064 | 114 | △7.8 | △50.5 |
| 航空・宇宙・防衛 | 4,943 | 4,201 | △15.0 | 4,922 | 464 | 4,808 | 403 | △2.3 | △13.1 |
| 報告セグメント 計 | 13,632 | 13,541 | △0.7 | 14,535 | 871 | 13,679 | 700 | △5.9 | △19.7 |
| その他 | 814 | 688 | △15.5 | 793 | 23 | 703 | 35 | △11.3 | 50.7 |
| 調整額 | △454 | △490 | - | △494 | △70 | △517 | △127 | - | - |
| 合計 | 13,992 | 13,739 | △1.8 | 14,834 | 824 | 13,865 | 607 | △6.5 | △26.3 |
⦅資源・エネルギー・環境⦆
パリ協定にて世界の平均気温上昇の上限や温室効果ガス排出量と吸収量のバランスについて長期目標が掲げられる中,気候変動への対策の動きや脱炭素への世の中の流れが想定以上に加速しています。それに伴い,社会やお客さまの抱える課題も地域ごと・発展段階ごとに多様化しており,再生エネルギーや分散型電源の普及とエネルギー安定供給のためのエネルギーマネジメントへの動きが加速してきました。
このような事業環境のもと,受注高は,プラントで減少したものの,ボイラで環境負荷低減技術を採用した海外向け大型案件を受注したことで,増加しました。
売上高は,ボイラで工事進捗遅れによる減収,プラントで前期に大型プロジェクトが進捗した反動で減収となりました。
営業利益は,ボイラでの減収の影響や原動機での工事下振れはあったものの,プラントでの前期の採算悪化が収束してきた影響により増益となりました。
⦅社会基盤・海洋⦆
国内においては,高速道路未整備区間やリニア中央新幹線などの発注により新設の需要が見込まれるものの,昨今の災害の激甚化や進行するインフラ老朽化から,強靭化・長寿命化のニーズが急速に高まっており,保全事業へのシフトが加速しています。また,管理者・技術者不足の対応策として規制改革も進んでおり,ICT/IoTの活用等による事業全体の効率化・省人化が求められています。海外においては,欧米やアジア・中東において,インフラ投資効率化や環境配慮の観点から,設計・建設から運営・維持管理までを包括したコンセッション事業が普及し,橋梁・トンネルが含まれる道路・鉄道建設プロジェクトが進展しております。
このような事業環境のもと,受注高は,橋梁・水門で海外向け大型案件を受注したことで,増加しました。
売上高は,シールドシステムで減収となったものの,橋梁・水門で増収となりました。
営業利益は,交通システムで増益となったものの,シールドシステムで減収により減益となりました。
⦅産業システム・汎用機械⦆
デジタル技術の伸長に伴う自動化の進展や,サプライチェーンのグローバル化といった産業システム全般の大きな変化は年々加速しています。一方で,自動車産業では中国に端を発した世界的な市況の低迷と,それに付随した関連部品産業の落ち込みから,当社の主力分野の車両過給機事業,熱・表面処理事業でも需要の低迷が見られました。加えて,新型コロナウイルス感染拡大による経済活動の停滞の長期化を受け,世界的な自動車需要の減少が想定される中,当社の自動車関連事業においても大きな影響を受ける懸念があります。事業活動への影響を最小化し,回復期に向けた早期立ち上げの準備を進めています。
このような事業環境のもと,受注高は,運搬機械は大型案件を受注したことで増加したものの,車両過給機や熱・表面処理が減少したことで,減少となりました。
売上高は,車両過給機,熱・表面処理で減収となったほか,小型原動機事業を譲渡した影響により,減収となりました。
営業利益は,車両過給機や熱・表面処理の減収の影響により減益となりました。
⦅航空・宇宙・防衛⦆
これまでの当社の民間航空機エンジン事業は,世界の航空機需要の成長の中で,小型から大型までの幅広いクラスのエンジン開発・量産に参画し,独自技術・ものづくり力の高度化により事業拡大を図ってきました。また,不適切検査が発生した民間航空機エンジン整備事業においては,再発防止策を確実に進め,強靭な品質保証体制の再構築に取り組んでいます。一方で,今般の世界的な新型コロナウイルス感染拡大は,国際的な航空輸送需要の急減とエアラインの業績・財政状態の悪化をもたらしており,回復にも一定の期間を要することが想定されます。このためエンジン及びスペアパーツの販売減少が見込まれ,当社の事業への大きな影響も避けられない状況にある中,需要変化に応じた生産体制の見直しやリソースのシフトを進めていきます。また,当社のエンジンは,比較的新しいタイプの航空機に搭載されており,燃費をはじめ運用コストにおける優位性から優先的に運用が再開され,アフターマーケットでの収益の早期回復が期待されます。旅客需要の回復期におけるお客さまの航空機運航再開を万全の態勢で支えるべく,アフターマーケット分野での対応強化に最優先で取り組んでいきます。加えて,その先に見込まれる市場の成長軌道への回復に向けた準備を進めるとともに,航空業界の一員として,高効率・低燃費の新型エンジン開発などを通じた環境負荷低減への取り組みに貢献してまいります。
このような事業環境のもと,受注高は,防衛省向け航空エンジン,民間向け航空エンジン,ロケットシステム・宇宙利用で減少しました。
売上高は,防衛省向け航空エンジンで減収となりました。
営業利益は,民間向け航空エンジンで,新型エンジンのコストダウン活動の成果は表れてきているものの,整備事業の検査プロセス厳格化による影響や,プログラム費用の追加負担の影響等により,減益となりました。
なお,文中の将来に関する事項は,当連結会計年度末現在において判断したものです。
b.資産及び負債,純資産の状況
当連結会計年度末における総資産は1兆7,407億円となり,前連結会計年度末と比較して762億円増加しました。主な増加項目は,現金及び預金で522億円,受取手形及び売掛金で261億円,出資金などの投資その他の資産その他で186億円,主な減少項目は,投資有価証券で544億円です。
負債は1兆3,870億円となり,前連結会計年度末と比較して1,041億円増加しました。主な増加項目は,短期借入金で738億円,コマーシャル・ペーパーで560億円,主な減少項目は,支払手形及び買掛金で274億円です。また,有利子負債残高はリース債務を含めて4,881億円となり,前連結会計年度末と比較して1,330億円増加しました。
純資産は3,537億円となり,前連結会計年度末と比較して279億円減少しました。これには,自己株式の取得による減少148億円,剰余金の配当による減少108億円,親会社株主に帰属する当期純利益128億円が含まれています。
以上の結果,1株当たり純資産額は,前連結会計年度末と比較して67円16銭減少して,2,195円96銭となり,自己資本比率は,前連結会計年度末の21.0%から18.7%となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下,「資金」という。)の残高は,前連結会計年度末と比較して528億円増加し,1,454億円となりました。これは主に,新型コロナウイルス感染拡大の影響に対応するため十分な流動性を確保したことによります。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によって得られた資金は145億円(前連結会計年度は464億円の獲得)となりました。これは,売上債権の増加や仕入債務の減少などがある一方で,減価償却費や持分法による投資損失など資金流出を伴わない費用の影響を除いた利益の獲得などによって資金が増加したものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動に使用された資金は758億円(前連結会計年度は792億円の使用)となりました。これは主に,有形及び無形固定資産の取得による支出663億円,有価証券及び投資有価証券の取得による支出231億円などによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によって得られた資金は1,152億円(前連結会計年度は164億円の獲得)となりました。これは主に,短期借入金の増加840億円,コマーシャル・ペーパーの増加560億円などで,新型コロナウイルス感染拡大による経営環境悪化に備えたことによるものです。
(注)この項に記載の金額は単位未満を切捨て表示し,比率は四捨五入表示しています。
③生産,受注及び販売の状況
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと,次のとおりです。
| セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前期比(%) |
| 資源・エネルギー・環境 | 367,795 | △2.0 |
| 社会基盤・海洋 | 147,414 | 9.1 |
| 産業システム・汎用機械 | 406,296 | △8.0 |
| 航空・宇宙・防衛 | 344,510 | △19.2 |
| 報告セグメント 計 | 1,266,015 | △8.2 |
| その他 | 42,576 | △29.0 |
| 合計 | 1,308,591 | △9.0 |
(注)1 金額は販売価格によっており,セグメント間の取引を相殺消去しています。
2 上記の金額には,消費税等は含まれていません。
3 金額及び比率は単位未満を四捨五入表示しています。
b.受注状況
当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと,次のとおりです。
| セグメントの名称 | 受注高 (百万円) | 前期比(%) | 期末受注残高 (百万円) | 前期末比(%) |
| 資源・エネルギー・環境 | 316,970 | 11.0 | 521,293 | △0.4 |
| 社会基盤・海洋 | 196,925 | 58.2 | 229,644 | 19.8 |
| 産業システム・汎用機械 | 420,153 | △8.5 | 190,806 | 5.8 |
| 航空・宇宙・防衛 | 420,111 | △15.0 | 493,668 | △12.3 |
| 報告セグメント 計 | 1,354,159 | △0.7 | 1,435,411 | △1.5 |
| その他 | 68,844 | △15.5 | 26,605 | 30.1 |
| 調整額 | △49,008 | - | - | - |
| 合計 | 1,373,995 | △1.8 | 1,462,016 | △1.1 |
(注)1 各セグメントの受注高は,セグメント間の取引を含んでおり,調整額でセグメント間取引の合計額を消去しています。
2 各セグメントの受注残高は,セグメント間の取引を相殺消去しています。
3 上記の金額には,消費税等は含まれていません。
4 金額及び比率は単位未満を四捨五入表示しています。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと,次のとおりです。
| セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前期比(%) |
| 資源・エネルギー・環境 | 327,751 | △13.1 |
| 社会基盤・海洋 | 152,815 | 6.7 |
| 産業システム・汎用機械 | 406,470 | △7.8 |
| 航空・宇宙・防衛 | 480,875 | △2.3 |
| 報告セグメント 計 | 1,367,911 | △5.9 |
| その他 | 70,354 | △11.3 |
| 調整額 | △51,762 | - |
| 合計 | 1,386,503 | △6.5 |
(注)1 販売実績は売上高をもって示します。
2 金額はセグメント間の取引を含んでおり,調整額でセグメント間取引の合計額を消去しています。
3 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は次のとおりです。
| 相手先 | 前連結会計年度 | 当連結会計年度 | ||
| 金額(百万円) | 割合(%) | 金額(百万円) | 割合(%) | |
| 一般財団法人 日本航空機エンジン協会 | 205,100 | 13.8 | 258,058 | 18.6 |
4 上記の金額には,消費税等は含まれていません。
5 金額及び比率は単位未満を四捨五入表示しています。
(2)経営者による財政状態,経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は,わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されています。連結財務諸表の作成にあたり,連結貸借対照表上の資産,負債の計上額,及び連結損益計算書上の収益,費用の計上額に影響を与える判断,見積りを行なう必要があります。当社グループの重要な会計方針のうち,判断,見積りを行なう割合が高いものは,貸倒引当金,受注工事損失引当金などの各引当金の計上,退職給付債務の算定,繰延税金資産の回収可能性の判断などがあります。これらの判断,見積りについては合理的な方法により算定していますが,見積り特有の不確実性が存在するため,将来において認識される業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。これらのうち,重要なものについては,第2「事業の状況」の2「事業等のリスク」に記載しています。
なお,新型コロナウイルス感染拡大により,当社グループの事業は大きな影響を受ける懸念があります。特に民間航空機エンジン事業においては,エンジン及びスペアパーツの販売減少が見込まれ,回復には一定の期間を要することが想定されます。また,車両過給機事業においては,世界的な自動車需要減少に伴う車両過給機の販売減少が見込まれます。加えて,サプライチェーンが各国にまたがっていることによる生産停止・操業低下の可能性があります。その他の事業においても,工事進捗への影響及び需要減少のリスクが長期に及ぶことが想定されます。
これらの状況を踏まえ,当連結会計年度においては,2020年度の課税所得への影響を見積もり,繰延税金資産の算定を行なっています。
②経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループ及びセグメントごとの経営成績の状況は(1)経営成績等の状況の概要の①財政状態及び経営成績の状況に記載のとおりです。
「グループ経営方針2019」の最終年度の経営目標達成に向けて,初年度である2019年度(2020年3月期)の業績目標を設定し,施策を実行してまいりました。
2019年度においては,ライフサイクル視点でのアフターマーケット展開において,お客さまのオペレーションの把握による生産効率化やO&Mによるソリューション提案等の取り組みを進め,一定の成果を創出することができました。引き続き「グループ経営方針2019」の3つの変革の取り組みを加速していきます。
一方で,プロジェクトの下振れ防止活動については,全社レベルのモニタリングの継続・強化,有識者によるリスクレビューを徹底したことにより大規模な下振れに歯止めがかかったものの,複数の中小規模案件においてコストの増加要因が発見されました。さらに,車両過給機においては,中国経済の減速や新排ガス規制導入の影響を受け,販売台数が減少しました。
その結果,2019年度(2020年3月期)の実績は業績目標に対して未達となり,ROIC 5.7%,営業利益率4.4%,CCCは120日となりました。特にCCCについては,大きく悪化している状況にあり,ROICに資する適切な設備投資・投融資に絞り込むことや,運転資本の効率化よるキャッシュ・フローの改善が課題となっています。
また,今回の新型コロナウイルス感染拡大により,これまでの価値観が変化し,社会や生活者の行動が変容することで,企業の事業基盤の再構築,デジタル化の進展等がより一層加速していくことが想定されます。「グループ経営方針2019」で定めた目指す姿について,「アフターコロナ」の新たな常態に対応する持続可能な企業の在り方を再確認し,事業の方向性の見極めと構造改革及びポートフォリオマネジメントを推進します。
| 2019年度 (2020年3月期) 業績目標 | 2019年度 (2020年3月期) 実績 | 「グループ 経営方針2019」 2021年度 経営目標 | |
| ROIC | 8.0% | 5.7% | 10%以上 |
| 営業利益率 | 5.7% | 4.4% | 8% |
| CCC | 97日 | 120日 | 80日 |
(注)各指標の算出方法は次のとおりです。
・ROIC:(1-「法定実効税率」)×(「営業利益」+「受取利息」+「受取配当金」)
÷(「株主資本合計」+「その他の包括利益累計額合計」+有利子負債の金額)
・CCC:(売上債権+たな卸資産-仕入債務)÷売上高×365日
なお,セグメントごとの業績目標(営業利益,営業利益率)の達成状況と今後の課題については以下のとおりです。
| 報告セグメント | 2019年度(2020年3月期) | |||
| 業績目標 | 実績 | |||
| 営業利益 (億円) | 営業利益率 (%) | 営業利益 (億円) | 営業利益率 (%) | |
| 資源・エネルギー・環境 | 180 | 5.5 | 47 | 1.4 |
| 社会基盤・海洋 | 150 | 8.8 | 134 | 8.8 |
| 産業システム・汎用機械 | 250 | 5.6 | 114 | 2.8 |
| 航空・宇宙・防衛 | 330 | 7.2 | 403 | 8.4 |
⦅資源・エネルギー・環境⦆
北米で遂行中のプロセスプラント案件での追加費用計上は収束してきたものの,中小規模案件での業績下振れが発生したこともあり,業績目標に対し大幅な未達となりました。
この事業領域では,引き続き徹底したプロジェクト管理を大型案件だけでなく中小規模案件においても強化して下振れを防止するとともに,キャッシュ・フローの改善に向けた業務プロセスの改革や,収益事業(改造・更新,部品販売,O&M事業等)へのリソースシフトを加速してまいります。また,全体最適のエネルギーミックスの実現に向け,新たな技術(アンモニア,CCUS(※)等)をはじめとする各種技術提案を国内外で展開していきます。
※Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage:二酸化炭素を分離・回収し,有効利用又は地下へ貯留する技術。
⦅社会基盤・海洋⦆
橋梁・水門で工場・現場の生産リードタイム短縮が進んだことや,共同調達によるコスト削減効果等の貢献もあり,業績目標どおりの営業利益率を達成しました。
この事業領域では,成果が出つつある生産プロセス改革について更なる水平展開を図るとともに,最新のICT技術の活用や高度化技術の採用等による大幅な工事リードタイムの改善,生産性向上への取り組みの検討を進め,社会インフラにおける事後保全の包括対応や予防保全等のライフサイクル型事業の強化をグローバルに進めてまいります。
⦅産業システム・汎用機械⦆
主に車両過給機や熱・表面処理における中国向けの販売減少や,新型コロナウイルス感染拡大の影響等により,業績目標に対し大幅な未達となりました。
この事業領域では,加速的に進展するデジタル技術と豊富な納入実績,お客さまとの密接な関係性を活用して,お客さまのオペレーションを深く理解し,運用の最適化の検討を進めるとともに,お客さま視点の価値提案によるサービス提供や海外市場への展開を加速することにより,ライフサイクル事業への変革を図ってまいります。また,新型コロナウイルスの感染拡大に伴い,世界的な自動車需要の減少が想定される中,当社グループの自動車関連の事業活動への影響を最小化し,需要回復期に向けた早期立ち上げの準備を進めています。
⦅航空・宇宙・防衛⦆
民間航空機エンジン整備事業の検査プロセス厳格化による操業減少の影響があったものの,初期負担の大きい新型エンジンの販売減少と売上情報入手早期化による補用部品の販売増加の影響などにより,業績目標を達成いたしました。
この事業領域では,品質問題への対応を最優先とした上で,着実な競争力強化へ向けた取り組みを継続してまいります。また,新型コロナウイルスの感染拡大に伴い,世界的な旅客需要の急激な減少が進む中,需要回復期におけるお客さまの運航再開を支えるべく,アフターマーケット分野への対応強化を最優先に取り組んでいきます。加えて,先進IoT/ICT技術を活用した整備事業の高度化,バリューチェーン全体にわたり高い価値を提供するための素形材事業の拡大に向けた準備を加速します。
③キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a.財務戦略の基本的な考え方
当社グループは,事業基盤の強化やキャッシュ・フロー創出力向上の取組みを通じて得られた自己資金を原資として,財務基盤の拡充と株主還元のバランスを取りながら,事業変革のための投資を進めていくことを財務戦略の基本方針としています。
「グループ経営方針2019」では,経営目標のROIC 10%以上とCCC80日以内の達成を通じて,2019年度からの3年間で事業変革のための投資を中心とした総額4,200億円の投資を進めていく方針を定め,併せて,連結配当性向30%程度を目安とする新たな配当政策を策定しました。
2019年度は,運転資本の増加により営業キャッシュ・フローが145億円と低水準に留まった一方で,事業変革のための投資を中心に投資キャッシュ・フローが営業キャッシュ・フローを大きく上回る758億円の支出となり,キャッシュ・フローの改善が課題となりました。
更には,新型コロナウイルス感染拡大の影響により,2020年度の営業キャッシュ・フローの悪化が懸念されることに加え,「グループ経営方針2019」で定めた事業の方向性についても,「アフターコロナ」の新たな常態の下でのあり方を再点検する必要が生じています。
このような状況の中で当社グループは,投資の一時凍結・抑制を含めた徹底的なキャッシュ・フローの改善とアセットマネジメントの実行により,堅固な財務基盤と十分な手元流動性を確保した上で,「アフターコロナ」を見据えた成長有望分野への投資原資を捻出していく考えです。
b.資金需要の分析
当連結会計年度は,新型コロナウイルス感染拡大を受けた手元流動性を確保するための資金確保,及び民間航空エンジンの新拠点立ち上げに伴う設備投資支出増加等の資金需要に対して,借入金を始めとする有利子負債により賄っております。この結果,当連結会計年度末の有利子負債残高はリース債務を含めて4,881億円となり,前連結会計年度末に対して1,330億円増加しています。
c.資金調達の方針と流動性の分析
当社グループの運転資金,投資向け資金等の必要資金の財源については,主として営業キャッシュ・フローで獲得した資金を財源とすることを原則としていますが,必要に応じて,短期的な資金については銀行借入やコマーシャル・ペーパーなど,設備資金・投融資資金等の長期的な資金については,金融市場動向や既存借入金及び既発行債の償還時期等を総合的に勘案し,長期借入金や社債等によって調達しています。
外部からの資本・資金調達については,関連するリスクを適切にコントロールした上で,資本コストを最小化する調達を実現することを資金調達の基本方針としています。
また,当社グループ内部では,グループガバナンスの向上,資金効率の向上及び資本コストの低減を図り,企業価値向上に寄与するため,グループ一体となった資金調達・資金収支管理を実施しており,当社と国内子会社間,また海外の一部地域の関係会社間ではキャッシュ・マネジメント・システムによる資金融通を行ない,グループ内の流動性確保,資金効率向上に努めています。
当連結会計年度末の現金及び現金同等物は1,455億円であり,前連結会計年度末と比較して529億円増加しています。手元資金の流動性については現金及び現金同等物に加え,主要銀行とのコミットメントライン契約や当座貸越枠,コマーシャル・ペーパーなど多様な調達手段とあわせて,今後も十分な水準を確保していきます。
(注)この項に記載の金額は単位未満を切捨て表示しています。