四半期報告書-第204期第2四半期(令和2年7月1日-令和2年9月30日)

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2020/11/12 14:26
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48項目
文中の将来に関する事項は,当四半期連結会計期間の末日現在において判断したものです。
(1)業績の状況
新型コロナウイルス感染拡大の影響
新型コロナウイルス感染拡大は,未だ収束の兆しが見えません。当社グループの民間向け航空エンジンにおいては,旅客需要の急激な減少やエアラインの経営状況悪化が続いており,エンジン及びスペアパーツの販売が大きく減少しています。国内線については,各国の経済活動の再開に伴い旅客需要は回復傾向となっていますが,国際線については,依然として,入国にあたって各種制約を伴うため,回復に向けた動きが見えていません。また,国際航空運送協会(IATA)の需要予測においては,2019年の水準への回復は2024年となっています。当社グループにおいては,事業パートナーから得た情報等も鑑み,足下では燃費性能の高い中小型の新製エンジン販売台数やスペアパーツ販売は底を打ち,緩やかな回復基調が見られるものの,全体として完全な回復には数年の期間を要すると見込んでおります。
車両過給機においては,中国では,経済活動の再開を受けて,自動車産業の低迷脱却の動きが進み,販売台数は増加に転じています。さらに,米国や欧州でも,感染の再拡大に伴う都市封鎖などの影響が懸念されるものの,5月中旬から自動車会社の工場稼働が再開されたことにより,販売台数は徐々に回復しています。
熱・表面処理においては,主に欧州の自動車関連需要の回復の遅れにより,自動車部品向けの受託加工サービス等の売上の減少が続いています。
このような状況を踏まえて,当社グループとしては,新型コロナウイルス感染拡大の影響への対策として,設備投資・研究開発費等の一時凍結・抑制や,総費用・固定費の圧縮,成長分野・ライフサイクル事業への機動的な人材リソースのシフトなどの取り組みを進めており,今後の事業環境や需要回復の状況に応じて柔軟に対応してまいります。加えて,資金需要に関しては,手元の現金及び現金同等物だけでなく,主要銀行とのコミットメントライン契約や当座貸越枠,コマーシャル・ペーパーなど多様な調達手段を準備することで,十分な手元流動性を確保した上で,保有資産の売却の検討も行なっています。
当期の業績
当第2四半期連結累計期間のわが国経済は,社会全体で新型コロナウイルス感染拡大の防止策を講じつつ,社会・経済活動を段階的に再開したことにより,生産や輸出関連を中心に持ち直しの動きがみられますが,企業の収益は大幅な減少が続いており,依然として極めて厳しい状況にあります。また,世界経済については,中国のみならず,米国や欧州でも景気は持ち直しの兆しがみられますが,今後の感染症の動向や金融資本市場の変動,米国の大統領選挙の結果の影響,さらに,長期化する米中の政治,経済の対立に加えて,地政学リスクなどにも引き続き注視する必要があります。
このような事業環境下において,当社グループの当第2四半期連結累計期間の業績は新型コロナウイルス感染拡大の影響を大きく受ける結果となりました。
受注高は前年同期比30.7%減の4,268億円となり,売上高についても,新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けた民間向け航空エンジンの大幅な減収に加え,「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等の早期適用(民間向け航空エンジンを中心に225億円の減収影響)により,前年同期比18.8%減の4,828億円となりました。
損益面では,営業損益は,資源・エネルギー・環境で,前年同期の採算性低下が概ね収束してきたことにより黒字に転換したことに加え,新型コロナウイルス感染拡大の影響による需要の急減に応じた生産体制の見直しやリソースのシフト,固定費の削減に取り組んできましたが,前述の民間向け航空エンジンの減収などの影響が大きく,166億円悪化し,61億円の損失となりました(前年同期105億円の黒字)。経常損益は,為替差損益の悪化などにより赤字幅が拡大し,100億円の損失となり,親会社株主に帰属する四半期純損益は,95億円の損失となりました。
なお、会計方針の変更として,「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日。以下「収益認識会計基準」という。)等を第1四半期連結会計期間の期首から適用しています。詳細については、「第4 経理の状況 1 四半期連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」をご参照ください。
また,当社グループは,資本市場における財務諸表の国際的な比較可能性の向上や会計方針の統一によるグループ経営管理の品質向上等を目的とし,2021年3月期通期より,国際財務報告基準(IFRS)を任意適用することといたします。
当第2四半期連結累計期間の報告セグメント別の状況は以下のとおりです。
(単位:億円)
報告セグメント受注高前第2四半期当第2四半期前年同期比
増減率
前第2
四半期
連結
累計期間
当第2
四半期
連結
累計期間
前年
同期比
増減率
(%)
連結累計期間連結累計期間
(2019.4~2019.9)(2020.4~2020.9)(%)
売上高営業
損益
売上高営業
損益
売上高営業
損益
資源・
エネルギー・
環境
1,6421,005△38.81,402△721,424411.6-
社会基盤・海洋6116567.46815165448△3.9△5.0
産業システム・
汎用機械
2,2661,593△29.71,857211,72720△7.0△5.2
航空・宇宙・防衛1,467865△41.01,876133968△155△48.3-
報告セグメント 計5,9894,122△31.25,8171334,776△44△17.9-
その他386377△2.333782482△26.6△72.0
調整額△215△231-△206△36△196△18--
合計6,1604,268△30.75,9491054,828△61△18.8-

⦅資源・エネルギー・環境⦆
受注高は,ボイラで前年同期に大型工事を受注した反動により減少しました。
売上高は,ボイラで増収となりました。
営業損益は,ボイラの増収による増益に加えて,前年同期の原動機,ボイラ,プラントでの採算性低下の収束により,黒字に転換しました。
⦅社会基盤・海洋⦆
受注高は,交通システムで減少したものの,橋梁・水門,都市開発で増加しました。
売上高は,都市開発で増収となったものの,橋梁・水門で前年同期に大型案件を引き渡した影響で減収となりました。
営業利益は,都市開発で増収による増益があったものの,橋梁・水門は減収に伴い減益となりました。
⦅産業システム・汎用機械⦆
受注高は,前年同期に大型案件の受注があった運搬機械に加えて,車両過給機や熱・表面処理で減少しました。
売上高は,運搬機械で増収となったものの,車両過給機,熱・表面処理で減収となりました。
営業利益は,運搬機械で増収により増益,熱・表面処理で減収により減益となりました。なお,車両過給機は減収となったものの,固定費削減効果で前年同期並みとなりました。
⦅航空・宇宙・防衛⦆
受注高は,民間向け航空エンジンで減少しました。
売上高は,新型コロナウイルス感染拡大の影響による旅客需要の減少に加えて,収益認識会計基準の適用により,民間向け航空エンジンで大幅減収となりました。
営業利益は,固定費の削減等に取り組んだものの,減収により,営業赤字となりました。なお,第1四半期連結会計期間に対しては,民間向け航空エンジンで,足下の緩やかな回復基調を受けて,初期負担の重い新製エンジンの販売台数が増加したことなどにより,赤字幅が拡大しています。
(2)財政状態の分析
当第2四半期連結会計期間末における総資産は,1兆6,664億円となり,前連結会計年度末と比較して743億円減少しました。主な減少項目は現金及び預金で609億円,受取手形,売掛金及び契約資産で296億円,主な増加項目は,原材料及び貯蔵品で140億円です。
負債は1兆2,962億円となり,前連結会計年度末と比較して907億円減少しました。主な減少項目は,短期借入金で638億円,支払手形及び買掛金で492億円,主な増加項目は,長期借入金で472億円です。
純資産は3,701億円となり,前連結会計年度末と比較して163億円増加しました。これには会計方針の変更による期首利益剰余金の増加274億円,親会社株主に帰属する四半期純損失95億円,剰余金の配当による減少29億円が含まれています。
以上の結果,自己資本比率は,前連結会計年度末の18.7%から20.5%となりました。
(3)キャッシュ・フローの状況
当第2四半期連結会計期間末における現金及び現金同等物(以下,「資金」という。)の残高は,前連結会計年度末と比較して606億円減少し,848億円となりました。
当第2四半期連結累計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動に使用された資金は557億円(前年同期は328億円の使用)となりました。これは主に,税金等調整前四半期純損失84億円,たな卸資産の増加440億円などの運転資金の増加によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動に使用された資金は269億円(前年同期は396億円の使用)となりました。これは主に,有形及び無形固定資産の取得による支出328億円などによるものです。なお,有形及び無形固定資産の取得による支出には設備未払金の減少(前連結会計年度に竣工した鶴ヶ島工場建屋の支払等)による支出166億円が含まれています。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によって得られた資金は209億円(前年同期は416億円の獲得)となりました。これは主に,長期借入れによる収入629億円,社債の発行による収入300億円,短期借入金の減少599億円などによるものです。
(4)資本の財源及び資金の流動性についての分析
当第2四半期連結会計期間末の有利子負債残高はリース債務を含めて5,217億円となり,前連結会計年度末と比較して335億円増加しました。
これは,主として事業活動による運転資金の増加をコマーシャル・ペーパーや外部借入で調達したことや社債を発行したことによるものです。
当第2四半期連結会計期間末の現金及び現金同等物については,前連結会計年度末と比較して606億円減少し,848億円となりました。前連結会計年度末に新型コロナウイルス感染拡大に伴う金融市場の混乱リスク等に備えて資金を確保していましたが,金融市場が比較的安定しているため,事業活動による運転資金の支出に充てたこと等によるものです。
また,資金の流動性については,主要銀行との間で当座貸越枠を増額したことに加え,コミットメントライン契約やコマーシャル・ペーパーなど多様な調達手段を保有しており,上記現金及び現金同等物と合わせて引き続き十分な流動性を確保しています。
(5)研究開発活動
当第2四半期連結累計期間における,グループ全体の研究開発活動の金額は110億円です。なお,当第2四半期連結累計期間において,当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
(6)生産,受注及び販売の実績
a.生産実績
当第2四半期連結累計期間における生産実績をセグメントごとに示すと,次のとおりです。
セグメントの名称金額(百万円)前期比(%)
資源・エネルギー・環境147,343△14.6
社会基盤・海洋72,4464.7
産業システム・汎用機械167,027△12.3
航空・宇宙・防衛132,156△19.0
報告セグメント 計518,972△12.8
その他16,326△36.9
合計535,298△13.8

(注)1 金額は販売価格によっており,セグメント間の取引を相殺消去しています。
2 上記の金額には,消費税等は含まれていません。
3 金額及び比率は単位未満を四捨五入表示しています。
b.受注状況
当第2四半期連結累計期間における受注状況をセグメントごとに示すと,次のとおりです。
セグメントの名称受注高
(百万円)
前期比(%)期末受注残高
(百万円)
前期末比(%)
資源・エネルギー・環境100,551△38.8482,994△7.3
社会基盤・海洋65,6817.4226,610△1.3
産業システム・汎用機械159,397△29.7167,311△12.3
航空・宇宙・防衛86,575△41.0216,094△56.2
報告セグメント 計412,204△31.21,093,009△23.9
その他37,781△2.337,56941.2
調整額△23,168---
合計426,817△30.71,130,578△22.7

(注)1 各セグメントの受注高は,セグメント間の取引を含んでおり,調整額でセグメント間取引の合計額を消去しています。
2 各セグメントの受注残高は,セグメント間の取引を相殺消去しています。
3 上記の金額には,消費税等は含まれていません。
4 金額及び比率は単位未満を四捨五入表示しています。
5 航空・宇宙・防衛は2021年3月期通期の国際財務報告基準(IFRS)適用を見据え,民間向け航空エンジンの受注高・受注残高の算定方法を,残存履行義務をより適切に表す受注高・受注残高の認識方法へ変更しています。2020年3月期末の航空・宇宙・防衛の受注残高493,668百万円は,この変更を適用すると,224,633百万円となり,これに対する当第2四半期連結累計会計期間の期末受注残高216,094百万円は,3.8%減少となります。
c.販売実績
当第2四半期連結累計期間における販売実績をセグメントごとに示すと,次のとおりです。
セグメントの名称金額(百万円)前期比(%)
資源・エネルギー・環境142,4951.6
社会基盤・海洋65,475△3.9
産業システム・汎用機械172,745△7.0
航空・宇宙・防衛96,898△48.3
報告セグメント 計477,613△17.9
その他24,808△26.6
調整額△19,614-
合計482,807△18.8

(注)1 販売実績は売上高をもって示します。
2 金額はセグメント間の取引を含んでおり,調整額でセグメント間取引の合計額を消去しています。
3 上記の金額には,消費税等は含まれていません。
4 金額及び比率は単位未満を四捨五入表示しています。
(7)経営方針,経営戦略,対処すべき課題
当社グループは,2019年度を初年度とする中期経営計画「グループ経営方針2019」の下,社会とお客さまの課題に真正面から取り組み,新たな価値を創造する企業への変革を進めてきました。今回の新型コロナウイルス感染拡大は,社会・経済の変貌や価値観の変化を加速させており,当社グループを取り巻く環境も急激に変化しています。この環境変化のスピードに対応すべく,「グループ経営方針2019」で定めた基本コンセプトを継承しつつ,2022年度までの期間を環境変化に即した事業変革への準備・移行期間と位置づけ,「プロジェクトChange」という取り組みを始めます。
「プロジェクトChange」では,社会課題起点で事業を定義した上で,社会やお客さまへの提供価値向上に資する新たな中核事業を創出し,持続可能な事業ポートフォリオへの変革を推進させてまいります。具体的には,以下の取り組みを確実に実行してまいります。
① 成長軌道への回帰
・収益基盤のさらなる強化
・ライフサイクルビジネスの拡大
② 環境に打ち勝つ事業体質への変革
・事業ポートフォリオに沿った人材の流動化と最適配置
・多様な人材が活躍できる環境づくり
・リモートとオフィスを組み合わせた新たな働き方
③ 財務戦略
・キャッシュ創出力の強化
・事業ポートフォリオの転換を加速させるための資金の最適配分
・財務健全性の確保
④ 成長事業の創出
・成長事業(航空輸送システム,カーボンソリューション,保全・防災・減災)の再定義
経営目標
当社グループは,2019年度を初年度とする中期経営計画「グループ経営方針2019」において,2021年度の経営目標を定めておりましたが,新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて,この経営目標を見直すこととし,「プロジェクトChange」の取り組みを開始するにあたり,新たに,2022年度の経営目標(国際財務報告基準(IFRS)ベース)を次のとおり定めます。引き続き,投下資本収益性(ROIC)を高めるため,収益性(営業利益率)及びキャッシュ創出力(CCC)の一層の強化を目指してまいります。
財務目標(IFRS)2022年度
ROIC(税引後)10%以上
営業利益率8%以上
CCC80日

(注)各指標の算出方法は次のとおりです。
・ROIC:(1-法定実効税率)×(「営業利益」+「受取利息」+「受取配当金」)
÷(「親会社の所有者に帰属する持分合計」+有利子負債の金額)
・CCC :(売上債権+たな卸資産-仕入債務)÷売上収益×365日
(参考)売上収益:1兆4,000億円規模,投資水準(3年間):3,800億円
(注)数値表記について,億円表示は切捨て,その他は四捨五入で表示しています。
(8)設備の新設,除却等の計画
当社グループ(当社及び連結子会社)の当連結会計年度における設備投資計画については,新型コロナウイルス感染拡大の影響により,前事業年度の有価証券報告書提出日時点において未定としていましたが以下のとおり策定しています。2021年3月期通期より国際財務報告基準(以下,「IFRS」という。)を任意適用するため,計画金額はIFRSに基づいた数値となります。
新型コロナウイルス感染拡大の影響への対策として設備投資を一時凍結・抑制し,当連結会計年度の設備投資額は540億円を計画しています。なお,セグメントごとの内訳は次のとおりです。
a.新設・改修 (百万円)
セグメントの名称2020年度
計画金額
(IFRS)
設備の内容参考
(日本基準)
資源・エネルギー・環境4,100原動機生産設備,ボイラ生産設備等4,100
社会基盤・海洋8,000橋梁・水門生産設備,不動産賃貸物件整備等7,700
産業システム・汎用機械9,500車両過給機生産設備,熱・表面処理加工設備等9,500
航空・宇宙・防衛25,500PW1100Gなどの航空エンジン生産及び整備事業用設備,
ロケットシステム・宇宙利用関連生産設備等
21,700
報告セグメント計47,10043,000
その他(注3)6,9005,000
合 計54,00048,000

(注)1 金額には,消費税等は含まれていません。
2 投資予定に関する所要資金については,主として自己資金及び借入金等により充当する予定です。
3 その他には,各報告セグメントに帰属していない全社の設備投資額が含まれています。
4 2020年度計画金額(IFRS)には,IFRS第16号の使用権資産が含まれています。
b.売却・廃却
2020年9月30日現在における,当社グループの重要な設備に係る売却・廃却等の計画につきましては,「第2 事業の状況 2 経営者による財政状態,経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)業績の状況」に記載のとおり,保有資産の売却の検討を行なっています。