有価証券報告書-第44期(令和1年7月1日-令和2年6月30日)
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末(2020年6月30日)現在において判断したものであります。
(1) 経営成績
当社グループは、5か年の中期経営計画「『ASAHI Road to 1000』~Only One技術で強固なグローバルニッチ No.1を目指す~」に基づき、連結売上高1,000億円達成に向けた事業ポートフォリオの構築として、「グローバル市場の戦略的な開拓と患部・治療領域の拡大」を推進することで、これまでの基本戦略の集大成を図り、既存事業の収益基盤を強化しております。また、将来に向けた成長への投資を継続することにより「グローバルニッチ市場における新規事業の創出」を実現し、グローバルニッチ市場における当社のプレゼンスの強化と企業価値の一層の向上を目指します。また、その成長戦略を支えるためのビジネス基盤として、「グローバル展開に最適な研究開発・生産体制の構築」を進めるとともに「持続的成長に向けた経営基盤の確立」を図ってまいります。本計画では、連結売上高1,000億円に至るマイルストーンとして、2023年6月期に連結売上高800億円を達成することを目標とし、当該時点での営業利益率は25%を目途としております。
その実現に向けた施策として、当連結会計年度では、新製品としてニッケルチタンハイブリッドのPTCAガイドワイヤー「MINAMO(ミナモ)」や脳血管系バルーン付ガイディングカテーテル「Branchor(ブランカー)」の販売を開始いたしました。また、販売・マーケティング活動強化のために、フランスにおける直接販売の段階的開始や、ドイツ・韓国の直接販売化の決定、EU現地法人・ロシア現地法人の設立、ドイツ法人の設立決定、中国市場での朝日英達科貿(北京)有限公司/広州事務所の開設などを実施いたしました。また、コーポレート・ガバナンス体制の強化の一環として、既存の報酬諮問委員会の機能に指名に関する機能を加えた、指名・報酬諮問委員会の設置を行っております。
今後におきましても、中期経営計画に基づく成長戦略を着実に進めていくことにより、企業価値の拡大を目指してまいります。
なお現在、新型コロナウイルス感染症の影響により、グローバル規模で血管内カテーテル治療の症例数が減少傾向にあり、市場規模が一時的に縮小しております。当社主力製品のPTCAガイドワイヤーが使用されるPCI治療は、2020年1~2月におきましては、中国市場など限定的な地域のみ減少しておりましたが、3月以降におきましては、それに加えて日本・米国・欧州中近東・アジア市場など、グローバル規模で症例数が減少いたしました。一部の地域においては、症例数が回復している傾向が見受けられますが、未だ不透明な状況が続いております。
そのような状況の中、当社グループの当連結会計年度における売上高は、新型コロナウイルス感染症の影響が生じる以前はメディカル事業の海外向け売上高が好調であることを中心に順調に推移していたものの、下半期からの新型コロナウイルス感染症の影響による市場規模の縮小や、円高の為替動向、医療償還価格の下落などの外部環境を受け、565億46百万円(前年同期比1.2%減) となりました。
売上総利益は、新型コロナウイルス感染症による売上高の減少を主な要因として、380億38百万円(同4.2%減)となりました。
営業利益は、直接販売化推進など販売・マーケティングの強化に伴う営業関係費用や、開発強化のための研究開発費、組織体制強化のための人件費の増加などにより、124億45百万円(同18.0%減)となりました。
経常利益は、為替差損が減少したものの、123億10百万円(同17.0%減)となりました。
親会社株主に帰属する当期純利益は、特別利益として新社屋に関する補助金収入の増加やRetroVascular, Inc.(現、ASAHI Medical Technologies,Inc.)株式の取得に伴う段階取得に係る差益の減少、特別損失として直接販売化に伴う営業補償金の増加などがあり、91億78百万円(同18.3%減)となりました。
なお、当連結会計年度における外国為替レート実績は、下記となります。
1米ドル=108.19円(前年同期111.15円、比2.7%減)
1ユーロ=119.62円(前年同期126.81円、比5.7%減)
1中国元=15.38円(前年同期16.28円、比5.5%減)
1タイバーツ=3.49円(前年同期3.45円、比1.2%増)
セグメントごとの経営業績は、次のとおりであります。
(メディカル事業)
メディカル事業は、海外市場を中心に順調に推移しておりましたが、下半期以降の新型コロナウイルス感染症による症例数減少や、為替動向、償還価格の下落などの影響により、売上高はやや減少いたしました。国内市場においては、2020年4月以降より、新型コロナウイルス感染症による症例数の減少や、消費税増税に伴う医療償還価格の下落が生じ、売上高は減少いたしました。海外市場においては、為替影響に加えて、下半期において中国を皮切りに全地域において新型コロナウイルス感染症の影響を受けて症例数が減少したものの、通期では、循環器系領域のPTCAガイドワイヤーが米国を中心に全地域にて数量が増加したことや、脳血管系のガイドワイヤーが中国で増加したことなどから、売上高は増加いたしました。
以上の結果、売上高は478億55百万円(前年同期比0.7%減)となりました。
また、セグメント利益は、売上高の減少や、セグメント間取引仕入の増加、営業関係費用及び研究開発費などの販売費及び一般管理費の増加により126億8百万円(同19.9%減)となりました。
(デバイス事業)
デバイス事業は、医療部材の売上高が増加したものの、産業部材の売上高が低迷し、減少いたしました。 医療部材については、国内・海外市場ともに、新規分野への試作取引が増加するなどし、売上高は増加いたしました。産業部材については、国内市場のOA機器関係取引が増加したものの、新型コロナウイルス感染症の影響などからも、海外市場の自動車、建築、レジャー関係の取引が大きく減少し、売上高が減少いたしました。
以上の結果、売上高は86億90百万円(前年同期比3.4%減)となりました。
また、セグメント利益は、セグメント間取引売上の増加により、32億78百万円(同13.6%増)となりました。
生産、受注及び販売の実績は、次のとりであります。
① 生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 金額は販売価格によっております。
3 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
② 受注実績
当社グループの製品は、見込み生産を主体としているため、受注状況の記載を省略しております。
③ 販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2) 財政状態
当連結会計年度末の資産につきましては、総資産額が937億29百万円となり、前連結会計年度末に比べ93億70百万円増加しております。主な要因は、商品及び製品が7億37百万円、仕掛品が21億5百万円、原材料及び貯蔵品が5億89百万円、建物及び構築物(純額)が12億1百万円、機械装置及び運搬具(純額)が21億9百万円それぞれ増加したことによるものであります。
負債につきましては、負債合計額が217億54百万円となり、前連結会計年度末に比べ28億45百万円増加しております。主な要因は、未払金が5億95百万円減少した一方、電子記録債務が2億46百万円、長期借入金が20億63百万円、未払法人税等が4億63百万円それぞれ増加したことによるものであります。
純資産につきましては、純資産合計額が719億75百万円となり、前連結会計年度末に比べ65億24百万円増加しております。主な要因は、利益剰余金が63億31百万円増加したことによるものであります。
(3) キャッシュ・フロー
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、185億54百万円(前年同期比1.2%減)となっております。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により得られた資金は、111億66百万円(前年同期比5億53百万円減)となりました。これは主に、たな卸資産が36億89百万円増加したこと及び法人税等の支払額が30億95百万円であったものの、税金等調整前当期純利益が126億58百万円、減価償却費が41億98百万円となり、また、売上債権が13億65百万円減少したことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により使用した資金は、103億89百万円(前年同期比4億59百万円減)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出が89億20百万円、無形固定資産の取得による支出が8億1百万円、投資有価証券の取得による支出が6億45百万円であったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により使用した資金は、8億50百万円(前年同期は2億67百万円の収入)となりました。これは主に、長期借入金による収入が36億43百万円あったものの、長期借入金の返済による支出が20億40百万円、配当金の支払額が28億11百万円あったことによるものであります。
(4) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載のとおりであります。これらの見積りについては、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、見積りには不確実性が伴い、実際の結果と異なる場合があります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
(繰延税金資産の回収可能性)
当社グループは、繰延税金資産について、将来の利益計画に基づいた課税所得が十分に確保できることや、スケジューリングの結果に基づき回収可能性があると判断した将来減算一時差異について繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じ課税所得が減少した場合、繰延税金資産及び法人税等調整額の金額に影響を与える可能性があります。
(固定資産の減損処理)
当社グループは、固定資産の減損に係る回収可能性の評価にあたり、継続的に損益の把握を実施している単位ごとに資産のグルーピングを行い、収益性が著しく低下した資産グループについては、回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上することとしております。回収可能価額の算定にあたっては、外部の情報源に基づく情報等を含む決算時点で入手可能な情報や資料に基づき合理的に判断しております。
当該見積り及び当該仮定について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において減損損失が発生する可能性があります。
なお、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う会計上の見積りにつきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表注記事項(追加情報)」に記載のとおりであります。
(5)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末(2020年6月30日)現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
(a) 今後の見通し
新型コロナウイルス感染症の影響を受け、血管内カテーテル治療件数がグローバル規模にて減少傾向にあり、2021年6月期の売上高においても、マイナス影響を受けることが想定されております。なお、この症例数の減少の背景には、血管内カテーテル治療のうち、緊急性が高い症例のみ治療を行い、待機が可能な症例については治療が延期されることから、一時的に症例数が減少している事情があります。よって、新型コロナウイルス感染症の影響が収まれば、この延期された待機症例の大半が治療されることが予想され、当社の中長期的な成長性に大きな影響は無いものと推測しております。つきましては、このような状況下においても、当社グループは、現在の中期経営計画と基本方針(「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」参照)については変更せず、現行通りの計画と方針に沿って事業を行ってまいる所存であります。
2021年6月期における業績予想は、2020年6月期に引続き、新型コロナウイルス感染症によりマイナス影響を受けることが想定され、以下のとおりを見込んでおります。新型コロナウイルス感染症に伴う血管内カテーテル治療の症例数の減少については、上半期を中心に影響が継続するものの、なだらかに回復に向かい、下半期への影響は限定的になることを想定しております。症例数の動向については、仮定に基づいており、新型コロナウイルス感染症の第2波や、待機症例の治療件数などの動向によって、大きく変化する可能性があります。
(単位:百万円)
<売上高>(メディカル事業)
メディカル事業では、新型コロナウイルス感染症による症例数の影響、医療償還価格の下落、為替動向などによる減収の影響があるものの、特に海外市場を中心に売上高は増加する見込みであります。
国内市場では、新型コロナウイルス感染症による症例数減少の影響に加え、医療償還価格の価格改定(2021年4月)が実施される予定であり、厳しい環境となります。循環器系領域においてPTCAガイドワイヤーや貫通カテーテルなどを中心に、数量が引続き増加する見込みですが、医療償還価格下落の影響を受けて売上高は減少する見込みであります。また、非循環器系領域においては、医療償還価格下落の影響を受けるものの、脳血管系などの製品群が伸長する見込みなどから、売上高は増加する見込みであります。
海外市場では、新型コロナウイルス感染症による症例数の影響と為替動向による減収影響があるものの、全地域において、循環器系領域及び非循環器系領域共に、増加する見込みであります。循環器系領域においては、PTCAガイドワイヤーや貫通カテーテルが、米国・中国・欧州中近東などにて引続き市場シェア拡大により、増加することを見込んでおります。米国市場のPTCAガイドワイヤーについては、2018年7月より直接販売化へと販売戦略の変更を行っており、この体制の変更を活かして、引続きさらなる市場シェアの拡大を目指してまいります。また、中国市場においては、販売代理店制を活用し、引続きさらなる市場シェアの拡大を目指してまいります。欧州中近東市場においては、2021年1月よりドイツにおいて直接販売を開始する予定であり、フランス直接販売化とともにさらなる拡大を目指してまいります。非循環器系領域においては、脳・末梢・腹部血管系製品群の全てにおいて、増加することを見込んでおります。
なお、血管内カテーテル治療の症例数は足元で回復傾向にありますが、新型コロナウイルス感染症の症例数は収束しておらず、営業活動について大幅な制限が生じております。当社グループにおきましても、営業活動のIT化などを進めてまいる所存ですが、病院側の制約や環境変化によっては、今後、売上高の動向に影響が生じる可能性があります。
(デバイス事業)
デバイス事業では、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、医療部材・産業部材ともに、売上高は減少する見込みであります。 医療部材については、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた取引先の動向に比例し、国内の内視鏡関連部材や、米国向けの腹部血管系カテーテル部材が減少し、売上高が減少する見込みであります。 産業部材については、新型コロナウイルス感染症の影響に伴う景気悪化の影響を受け、国内外の自動車市場や、米国のレジャー市場向けの取引が減少するなどし、売上高が減少する見込みであります。
<売上総利益>売上総利益は、増収に比例して、増加する予定であります。売上総利益率については、新型コロナウイルス感染症に伴う売上高の減少や為替動向、医療償還価格の下落、設備投資増加による減価償却費の増加などにより、低下する見込みであります。
<販売費及び一般管理費>販売費及び一般管理費は、将来の成長性を持続し、さらに伸張させるための先行的な費用について、引続き積極的に費用投下してまいる所存であります。主には、研究開発費が増加することや、日本・欧州・韓国市場における販売・マーケティングや直接販売化の準備など営業強化のために費用が増加すること、将来の成長性を持続させるためのシステム関係や特許関係費の諸費用が増加することなどが見込まれております。
<営業外損益・特別損益>営業外損益及び特別損益におきましては、影響額の大きな取引などは、現在のところ見込んでおりません。
なお、本業績予想における外国為替レートは、1米ドル=106.00円、1ユーロ=123.00円、1中国元=15.00円、1タイバーツ=3.45円を前提としております。
(b) 経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループを取り巻く事業環境に関連して経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
(c) 当社グループの資本の財源及び資金の流動性についての分析
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(3)キャッシュ・フロー」に記載のとおりであります。
また、資本の財源及び資金の流動性について、運転資金及び設備資金は、自己資金によりまかなっております。
(参考)キャッシュ・フロー指標のトレンド
(注) 1 自己資本比率:自己資本/総資産
2 時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
3 キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー
4 インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い
5 各指標は、連結ベースの財務数値より計算しております。
6 営業キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末(2020年6月30日)現在において判断したものであります。
(1) 経営成績
当社グループは、5か年の中期経営計画「『ASAHI Road to 1000』~Only One技術で強固なグローバルニッチ No.1を目指す~」に基づき、連結売上高1,000億円達成に向けた事業ポートフォリオの構築として、「グローバル市場の戦略的な開拓と患部・治療領域の拡大」を推進することで、これまでの基本戦略の集大成を図り、既存事業の収益基盤を強化しております。また、将来に向けた成長への投資を継続することにより「グローバルニッチ市場における新規事業の創出」を実現し、グローバルニッチ市場における当社のプレゼンスの強化と企業価値の一層の向上を目指します。また、その成長戦略を支えるためのビジネス基盤として、「グローバル展開に最適な研究開発・生産体制の構築」を進めるとともに「持続的成長に向けた経営基盤の確立」を図ってまいります。本計画では、連結売上高1,000億円に至るマイルストーンとして、2023年6月期に連結売上高800億円を達成することを目標とし、当該時点での営業利益率は25%を目途としております。
その実現に向けた施策として、当連結会計年度では、新製品としてニッケルチタンハイブリッドのPTCAガイドワイヤー「MINAMO(ミナモ)」や脳血管系バルーン付ガイディングカテーテル「Branchor(ブランカー)」の販売を開始いたしました。また、販売・マーケティング活動強化のために、フランスにおける直接販売の段階的開始や、ドイツ・韓国の直接販売化の決定、EU現地法人・ロシア現地法人の設立、ドイツ法人の設立決定、中国市場での朝日英達科貿(北京)有限公司/広州事務所の開設などを実施いたしました。また、コーポレート・ガバナンス体制の強化の一環として、既存の報酬諮問委員会の機能に指名に関する機能を加えた、指名・報酬諮問委員会の設置を行っております。
今後におきましても、中期経営計画に基づく成長戦略を着実に進めていくことにより、企業価値の拡大を目指してまいります。
なお現在、新型コロナウイルス感染症の影響により、グローバル規模で血管内カテーテル治療の症例数が減少傾向にあり、市場規模が一時的に縮小しております。当社主力製品のPTCAガイドワイヤーが使用されるPCI治療は、2020年1~2月におきましては、中国市場など限定的な地域のみ減少しておりましたが、3月以降におきましては、それに加えて日本・米国・欧州中近東・アジア市場など、グローバル規模で症例数が減少いたしました。一部の地域においては、症例数が回復している傾向が見受けられますが、未だ不透明な状況が続いております。
そのような状況の中、当社グループの当連結会計年度における売上高は、新型コロナウイルス感染症の影響が生じる以前はメディカル事業の海外向け売上高が好調であることを中心に順調に推移していたものの、下半期からの新型コロナウイルス感染症の影響による市場規模の縮小や、円高の為替動向、医療償還価格の下落などの外部環境を受け、565億46百万円(前年同期比1.2%減) となりました。
売上総利益は、新型コロナウイルス感染症による売上高の減少を主な要因として、380億38百万円(同4.2%減)となりました。
営業利益は、直接販売化推進など販売・マーケティングの強化に伴う営業関係費用や、開発強化のための研究開発費、組織体制強化のための人件費の増加などにより、124億45百万円(同18.0%減)となりました。
経常利益は、為替差損が減少したものの、123億10百万円(同17.0%減)となりました。
親会社株主に帰属する当期純利益は、特別利益として新社屋に関する補助金収入の増加やRetroVascular, Inc.(現、ASAHI Medical Technologies,Inc.)株式の取得に伴う段階取得に係る差益の減少、特別損失として直接販売化に伴う営業補償金の増加などがあり、91億78百万円(同18.3%減)となりました。
なお、当連結会計年度における外国為替レート実績は、下記となります。
1米ドル=108.19円(前年同期111.15円、比2.7%減)
1ユーロ=119.62円(前年同期126.81円、比5.7%減)
1中国元=15.38円(前年同期16.28円、比5.5%減)
1タイバーツ=3.49円(前年同期3.45円、比1.2%増)
セグメントごとの経営業績は、次のとおりであります。
(メディカル事業)
メディカル事業は、海外市場を中心に順調に推移しておりましたが、下半期以降の新型コロナウイルス感染症による症例数減少や、為替動向、償還価格の下落などの影響により、売上高はやや減少いたしました。国内市場においては、2020年4月以降より、新型コロナウイルス感染症による症例数の減少や、消費税増税に伴う医療償還価格の下落が生じ、売上高は減少いたしました。海外市場においては、為替影響に加えて、下半期において中国を皮切りに全地域において新型コロナウイルス感染症の影響を受けて症例数が減少したものの、通期では、循環器系領域のPTCAガイドワイヤーが米国を中心に全地域にて数量が増加したことや、脳血管系のガイドワイヤーが中国で増加したことなどから、売上高は増加いたしました。
以上の結果、売上高は478億55百万円(前年同期比0.7%減)となりました。
また、セグメント利益は、売上高の減少や、セグメント間取引仕入の増加、営業関係費用及び研究開発費などの販売費及び一般管理費の増加により126億8百万円(同19.9%減)となりました。
(デバイス事業)
デバイス事業は、医療部材の売上高が増加したものの、産業部材の売上高が低迷し、減少いたしました。 医療部材については、国内・海外市場ともに、新規分野への試作取引が増加するなどし、売上高は増加いたしました。産業部材については、国内市場のOA機器関係取引が増加したものの、新型コロナウイルス感染症の影響などからも、海外市場の自動車、建築、レジャー関係の取引が大きく減少し、売上高が減少いたしました。
以上の結果、売上高は86億90百万円(前年同期比3.4%減)となりました。
また、セグメント利益は、セグメント間取引売上の増加により、32億78百万円(同13.6%増)となりました。
生産、受注及び販売の実績は、次のとりであります。
① 生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 金額(千円) | 前年同期比(%) |
メディカル事業 | 49,052,607 | 2.6 |
デバイス事業 | 10,986,277 | 5.7 |
合計 | 60,038,884 | 3.2 |
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 金額は販売価格によっております。
3 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
② 受注実績
当社グループの製品は、見込み生産を主体としているため、受注状況の記載を省略しております。
③ 販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 金額(千円) | 前年同期比(%) |
メディカル事業 | 47,855,346 | △0.7 |
デバイス事業 | 8,690,877 | △3.4 |
合計 | 56,546,224 | △1.2 |
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2) 財政状態
当連結会計年度末の資産につきましては、総資産額が937億29百万円となり、前連結会計年度末に比べ93億70百万円増加しております。主な要因は、商品及び製品が7億37百万円、仕掛品が21億5百万円、原材料及び貯蔵品が5億89百万円、建物及び構築物(純額)が12億1百万円、機械装置及び運搬具(純額)が21億9百万円それぞれ増加したことによるものであります。
負債につきましては、負債合計額が217億54百万円となり、前連結会計年度末に比べ28億45百万円増加しております。主な要因は、未払金が5億95百万円減少した一方、電子記録債務が2億46百万円、長期借入金が20億63百万円、未払法人税等が4億63百万円それぞれ増加したことによるものであります。
純資産につきましては、純資産合計額が719億75百万円となり、前連結会計年度末に比べ65億24百万円増加しております。主な要因は、利益剰余金が63億31百万円増加したことによるものであります。
(3) キャッシュ・フロー
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、185億54百万円(前年同期比1.2%減)となっております。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により得られた資金は、111億66百万円(前年同期比5億53百万円減)となりました。これは主に、たな卸資産が36億89百万円増加したこと及び法人税等の支払額が30億95百万円であったものの、税金等調整前当期純利益が126億58百万円、減価償却費が41億98百万円となり、また、売上債権が13億65百万円減少したことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により使用した資金は、103億89百万円(前年同期比4億59百万円減)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出が89億20百万円、無形固定資産の取得による支出が8億1百万円、投資有価証券の取得による支出が6億45百万円であったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により使用した資金は、8億50百万円(前年同期は2億67百万円の収入)となりました。これは主に、長期借入金による収入が36億43百万円あったものの、長期借入金の返済による支出が20億40百万円、配当金の支払額が28億11百万円あったことによるものであります。
(4) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載のとおりであります。これらの見積りについては、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、見積りには不確実性が伴い、実際の結果と異なる場合があります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
(繰延税金資産の回収可能性)
当社グループは、繰延税金資産について、将来の利益計画に基づいた課税所得が十分に確保できることや、スケジューリングの結果に基づき回収可能性があると判断した将来減算一時差異について繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じ課税所得が減少した場合、繰延税金資産及び法人税等調整額の金額に影響を与える可能性があります。
(固定資産の減損処理)
当社グループは、固定資産の減損に係る回収可能性の評価にあたり、継続的に損益の把握を実施している単位ごとに資産のグルーピングを行い、収益性が著しく低下した資産グループについては、回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上することとしております。回収可能価額の算定にあたっては、外部の情報源に基づく情報等を含む決算時点で入手可能な情報や資料に基づき合理的に判断しております。
当該見積り及び当該仮定について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において減損損失が発生する可能性があります。
なお、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う会計上の見積りにつきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表注記事項(追加情報)」に記載のとおりであります。
(5)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末(2020年6月30日)現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
(a) 今後の見通し
新型コロナウイルス感染症の影響を受け、血管内カテーテル治療件数がグローバル規模にて減少傾向にあり、2021年6月期の売上高においても、マイナス影響を受けることが想定されております。なお、この症例数の減少の背景には、血管内カテーテル治療のうち、緊急性が高い症例のみ治療を行い、待機が可能な症例については治療が延期されることから、一時的に症例数が減少している事情があります。よって、新型コロナウイルス感染症の影響が収まれば、この延期された待機症例の大半が治療されることが予想され、当社の中長期的な成長性に大きな影響は無いものと推測しております。つきましては、このような状況下においても、当社グループは、現在の中期経営計画と基本方針(「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」参照)については変更せず、現行通りの計画と方針に沿って事業を行ってまいる所存であります。
2021年6月期における業績予想は、2020年6月期に引続き、新型コロナウイルス感染症によりマイナス影響を受けることが想定され、以下のとおりを見込んでおります。新型コロナウイルス感染症に伴う血管内カテーテル治療の症例数の減少については、上半期を中心に影響が継続するものの、なだらかに回復に向かい、下半期への影響は限定的になることを想定しております。症例数の動向については、仮定に基づいており、新型コロナウイルス感染症の第2波や、待機症例の治療件数などの動向によって、大きく変化する可能性があります。
(単位:百万円)
2020年6月期 | 2021年6月期 | 増減額 | 増減率 | |
売上高 | 56,546 | 60,542 | 3,996 | 7.1% |
営業利益 | 12,445 | 12,619 | 173 | 1.4% |
経常利益 | 12,310 | 12,496 | 185 | 1.5% |
親会社株主に帰属する当期純利益 | 9,178 | 9,193 | 14 | 0.2% |
<売上高>(メディカル事業)
メディカル事業では、新型コロナウイルス感染症による症例数の影響、医療償還価格の下落、為替動向などによる減収の影響があるものの、特に海外市場を中心に売上高は増加する見込みであります。
国内市場では、新型コロナウイルス感染症による症例数減少の影響に加え、医療償還価格の価格改定(2021年4月)が実施される予定であり、厳しい環境となります。循環器系領域においてPTCAガイドワイヤーや貫通カテーテルなどを中心に、数量が引続き増加する見込みですが、医療償還価格下落の影響を受けて売上高は減少する見込みであります。また、非循環器系領域においては、医療償還価格下落の影響を受けるものの、脳血管系などの製品群が伸長する見込みなどから、売上高は増加する見込みであります。
海外市場では、新型コロナウイルス感染症による症例数の影響と為替動向による減収影響があるものの、全地域において、循環器系領域及び非循環器系領域共に、増加する見込みであります。循環器系領域においては、PTCAガイドワイヤーや貫通カテーテルが、米国・中国・欧州中近東などにて引続き市場シェア拡大により、増加することを見込んでおります。米国市場のPTCAガイドワイヤーについては、2018年7月より直接販売化へと販売戦略の変更を行っており、この体制の変更を活かして、引続きさらなる市場シェアの拡大を目指してまいります。また、中国市場においては、販売代理店制を活用し、引続きさらなる市場シェアの拡大を目指してまいります。欧州中近東市場においては、2021年1月よりドイツにおいて直接販売を開始する予定であり、フランス直接販売化とともにさらなる拡大を目指してまいります。非循環器系領域においては、脳・末梢・腹部血管系製品群の全てにおいて、増加することを見込んでおります。
なお、血管内カテーテル治療の症例数は足元で回復傾向にありますが、新型コロナウイルス感染症の症例数は収束しておらず、営業活動について大幅な制限が生じております。当社グループにおきましても、営業活動のIT化などを進めてまいる所存ですが、病院側の制約や環境変化によっては、今後、売上高の動向に影響が生じる可能性があります。
(デバイス事業)
デバイス事業では、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、医療部材・産業部材ともに、売上高は減少する見込みであります。 医療部材については、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた取引先の動向に比例し、国内の内視鏡関連部材や、米国向けの腹部血管系カテーテル部材が減少し、売上高が減少する見込みであります。 産業部材については、新型コロナウイルス感染症の影響に伴う景気悪化の影響を受け、国内外の自動車市場や、米国のレジャー市場向けの取引が減少するなどし、売上高が減少する見込みであります。
<売上総利益>売上総利益は、増収に比例して、増加する予定であります。売上総利益率については、新型コロナウイルス感染症に伴う売上高の減少や為替動向、医療償還価格の下落、設備投資増加による減価償却費の増加などにより、低下する見込みであります。
<販売費及び一般管理費>販売費及び一般管理費は、将来の成長性を持続し、さらに伸張させるための先行的な費用について、引続き積極的に費用投下してまいる所存であります。主には、研究開発費が増加することや、日本・欧州・韓国市場における販売・マーケティングや直接販売化の準備など営業強化のために費用が増加すること、将来の成長性を持続させるためのシステム関係や特許関係費の諸費用が増加することなどが見込まれております。
<営業外損益・特別損益>営業外損益及び特別損益におきましては、影響額の大きな取引などは、現在のところ見込んでおりません。
なお、本業績予想における外国為替レートは、1米ドル=106.00円、1ユーロ=123.00円、1中国元=15.00円、1タイバーツ=3.45円を前提としております。
(b) 経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループを取り巻く事業環境に関連して経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
(c) 当社グループの資本の財源及び資金の流動性についての分析
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(3)キャッシュ・フロー」に記載のとおりであります。
また、資本の財源及び資金の流動性について、運転資金及び設備資金は、自己資金によりまかなっております。
(参考)キャッシュ・フロー指標のトレンド
回次 | 第40期 | 第41期 | 第42期 | 第43期 | 第44期 |
決算年月 | 2016年6月 | 2017年6月 | 2018年6月 | 2019年6月 | 2020年6月 |
自己資本比率(%) | 64.1 | 70.6 | 74.3 | 77.6 | 76.8 |
時価ベースの自己資本比率(%) | 625.6 | 521.0 | 745.5 | 818.8 | 852.0 |
キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年) | 1.1 | 0.8 | 0.6 | 0.6 | 0.8 |
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍) | 284.2 | 236.4 | 232.5 | 195.3 | 134.0 |
(注) 1 自己資本比率:自己資本/総資産
2 時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
3 キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー
4 インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い
5 各指標は、連結ベースの財務数値より計算しております。
6 営業キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。