有価証券報告書-第75期(2024/04/01-2025/03/31)

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2025/06/20 16:03
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(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、雇用・所得環境の改善やインバウンド需要の拡大などを背景に概ね緩やかな回復基調となりました。しかしながら、関税を巡る保護主義的な動きや地政学リスクの高まりなど世界情勢の不確実性などから、景気の先行きは依然として不透明な状況にあります。食品流通業界では、物価上昇による消費者の節約志向が強まるなか、物流費や光熱費、人件費等のコスト上昇が継続しており、厳しい経営環境が続いております。
こうした環境下、当社グループは2030年度をゴールとする中長期的な経営ビジョンに「地域のスペシャルパートナー」を掲げ、当社グループの独自機能の提供とステークホルダーとの協業を通じて、日本全国の地域における食品流通の問題・課題を共に解決し、共に成長することを目指しております。2025年度を目標年度とする「中期経営計画2025」は、経営ビジョンの達成に向け、当社グループが「ユニークな存在」から「スペシャルな存在」へと進化するためのステップとして位置付け、3つの事業領域(信州、顧客、産地)において「必要とされる存在」になることを到達すべきステージとし、企業価値の向上を目指しております。
当期は中期経営計画の2年目として、「信州」「顧客」「産地」の3領域別方針と、「エンゲージメント経営」「業務構造改革」「サステナブル経営」の重点施策に取り組んでまいりました。
(経営戦略の進捗状況)
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<領域別方針>①「信州」
2025年度を目途とする子会社㈱丸水長野県水との経営統合によるグループ再編を進めております。その一環として、畜産事業において、今年4月1日付で㈱丸水長野県水の畜産事業部を吸収分割し、当社が同事業部の販売事業を、畜産品製造・加工会社の大信畜産工業㈱が同事業部の製造・加工事業およびそれに付随する販売事業を承継いたしました。
また、業務用マーケットに対する営業体制や物流機能など、機能とリソースを集約することで信州域内における総合力の強化を進めております。
②「顧客」
当社グループの強みであります品揃え機能、商品開発機能、物流機能を活かせる信州外近隣エリアにおいて、アライアンスによる販売面や物流面での協業体制を構築しながら、首都圏エリアの深耕化など、戦略的に販売マーケット拡大を進めております。
③「産地」
国内養殖魚の事業領域を従来のトレードモデル(集荷・販売)から、利益獲得が見込める生産・加工分野へ拡大することで構造的な収益力強化を目指しております。この養殖魚事業の利益構造の変化への抜本的な対応策として、㈱ダイニチの株式を取得し、昨年11月1日に子会社化いたしました。同社との事業シナジーの創出により「協業型」の国内養殖ビジネスモデルを強化し、国産養殖魚の流通に革新をもたらすことを目指しております。
<重点施策>①「エンゲージメント経営」
社員一人ひとりの力を最大限発揮するための環境整備と組織風土改革を推進しております。具体的には、全従業員に向けた動画による社長メッセージの配信や、役員と社員との座談会実施、各階層別の研修メニューの充実と実施、働きやすい職場づくりに向けた人事諸制度の見直しなどを進めております。
②「業務構造改革」
業務プロセスの標準化や効率化による生産性向上を目指し、昨年7月に新基幹システム「M-BASE」の運用を開始しました。稼働直後に顕在化した問題・課題への対応で、一過性ながら事業推進に影響を及ぼしましたが、商圏の棄損は回避でき、現在はシステムのさらなる運用改善と、導入目的であります業務の標準化と効率化に向け、全社を挙げて取り組んでおります。また、RPA(Robotic Process Automation)や生成AIを活用しながら仕事のやり方を抜本的に見直し、業務の生産性向上に取り組んでいます。
③「サステナブル経営」
節電対策や太陽光パネル設置など事業価値向上に向けた普遍的な取り組みと、小学校での食育活動やブルーカーボン事業への参画などの社会・環境価値向上に向けた当社グループ独自の取り組みを両輪で推進しております。また、昨年1月に発生した能登半島地震の復興支援の一環としまして、㈱スギヨ(本社:石川県七尾市)が製造する「ビタミンちくわ」の昨年6月1日からの販売再開に合わせ、石川県食品協会が実施している「食べて復興支援 がんばろう!能登」と連動した販促企画「ビタミンちくわ復活祭」を企画・運営し、ご賛同いただいたメーカー様と長野県全域の小売業様にご協力いただきながら、メディアと連携したプロモーションを展開いたしました。
この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
a.財政状態
(資産合計)
当連結会計年度末における総資産は770億87百万円となり、前連結会計年度末と比較して97億76百万円の増加となりました。主な要因は、商品及び製品が33億87百万円、のれんが67億55百万円増加したことによります。
(負債合計)
負債は532億円となり、前連結会計年度末と比較して120億82百万円の増加となりました。主な要因は、支払手形及び買掛金が57億円減少し、短期借入金(1年以内返済予定の長期借入金含む)が58億65百万円、長期借入金が122億98百万円の増加したことによります。
(純資産合計)
純資産合計は238億87百万円となり、前連結会計年度末と比較して23億5百万円の減少となりました。主な要因は、自己株式を26億77百万円取得したことによります。
以上の結果、自己資本比率は30.2%となりました。
b.経営成績
(売上高)
当連結会計年度の業績につきましては、売上高は第3四半期連結会計期間より㈱ダイニチ及びその子会社6社を連結の範囲に加えたことや、商品の値上げに伴う販売単価の上昇もあり2,691億41百万円(前期比5.6%増)となりました。2024年5月10日に開示しております連結業績予想における売上高目標2,550億円に対しては5.5%上回りました。
(利益面)
売上高の増加に伴い売上総利益が増加したものの、物流関連コストの上昇、新基幹システムの稼働に伴う減価償却費の増加と稼働直後における一過性の経費増等により収益を圧迫したことから、営業利益は10億27百万円(前期比43.8%減)、経常利益は17億27百万円(同27.1%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は5億40百万円(前期比65.2%減)となりました。
連結業績予想に対しては、営業利益目標21億円に対して51.1%下回り、経常利益目標26億円に対して33.6%下回り、親会社株主に帰属する当期純利益目標16億円に対して66.2%下回りました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
※ 各セグメントの売上高については、セグメント間の内部売上高を除いて記載しております。
※ 「注記事項(セグメント情報等)」に記載のとおり、報告セグメントの区分を変更しておりますので、下記の前期比には、前期の数値を変更後の報告セグメントの区分に組み替えた数値の比較となっております。
また、当連結会計年度で連結の範囲に加えた㈱ダイニチ及びその子会社6社を報告セグメント「水産事業」に
含めております。
(水産事業)
水産事業を取り巻く環境は、国内天然魚の水揚げ量の不安定化と、世界的な魚食需要の増加などにより水産物全般の相場高と、タイトな需給構造が継続しており、安定的な商品供給の維持・拡大が求められております。
このような環境下、水産部門では国内養殖魚の安定供給と販売拡大に向け、昨年11月に㈱ダイニチを子会社化するなど、川上領域への戦略投資による養殖事業体制の強化を推進しております。また、産地駐在による商品調達力の強化を進めております。デイリー部門では顧客との協働による商品開発など商品の差別化戦略の推進や、アライアンス戦略による販売エリアの拡大を図っております。フードサービス部門では、業務用マーケットに対する水産及び畜産原料の惣菜商品の強化を進めております。
業績につきましては、売上高は㈱ダイニチの子会社化に加え、相場高による販売単価の上昇もあり1,665億60百万円(前期比10.5%増)となりました。利益面につきましては、新基幹システム稼働直後における一過性の経費増等の影響がありましたが、売上高の増加による売上総利益の増加等により、営業利益は6億5百万円(同11.5%増)となりました。
財政状態につきましては、セグメント資産は491億61百万円となり、前連結会計年度末に比べ158億62百万円の増加となりました。セグメント負債は319億28百万円となり、前連結会計年度末に比べ109億51百万円の増加となりました。
(一般食品事業)
一般食品事業を取り巻く環境は、原材料価格の高騰に伴う商品の値上げが続き、消費者の生活防衛意識が強まることで買上点数の減少と低価格志向が継続しており、さらなる収益力の向上が課題となっております。
このような環境下、信州域内における卸売機能強化と自社開発商品の販路拡大に取り組み、より強固な事業構造の構築を進めております。また、物流費等のコスト上昇に対し、構内物流業務の改善等で販管費の低減に取り組んでおります。
業績につきましては、売上高は消費者の節約志向の影響で販売数量が伸び悩んだことから281億27百万円(前期比2.0%減)となりました。利益面につきましては、価格改定対応の遅れなどによる売上総利益の減少と、新基幹システム稼働直後における一過性の経費増等の影響もあり、3億64百万円の営業損失(前期は1億75百万円の営業損失)となりました。
財政状態につきましては、セグメント資産は91億70百万円となり、前連結会計年度末に比べ10億81百万円の減少となりました。セグメント負債は52億64百万円となり、前連結会計年度末に比べ11億54百万円の減少となりました。
(畜産事業)
畜産事業を取り巻く環境は、飼料価格の高騰に伴う国産の牛肉・豚肉の高値傾向と円安による輸入畜肉の仕入価格の高止まりが継続しております。
このような環境下、信州域内での販売シェア拡大と関東・東海・中京エリアへの販路拡大や製造・流通加工機能の強化に向けた食肉加工分野への重点投資を進めております。
業績につきましては、売上高は畜産物の高値傾向が継続し販売が鈍化したことから404億84百万円(前期比3.2%減)となりました。利益面につきましては、相場高に伴う収益の低下による売上総利益の減少と、新基幹システム稼働直後における一過性の経費増等の影響もあり、営業損失2億3百万円(前期は3億26百万円の営業利益)となりました。
財政状態につきましては、セグメント資産は73億3百万円となり、前連結会計年度末に比べ11億90百万円の減少となりました。セグメント負債は43億72百万円となり、前連結会計年度末に比べ14億85百万円の減少となりました。
(丸水長野県水グループ)
グループ内の経営資源の集約化による信州事業の再強化とグループ最適化の実現を目指し、2025年度を目途とする当社と㈱丸水長野県水との統合作業を進めております。
業績につきましては、売上高は329億16百万円(前期比1.4%増)となりました。営業利益は退職給付費用等の販売管理費の増加により、8億5百万円(同15.6%減)となりました。
財政状態につきましては、セグメント資産は69億24百万円となり、前連結会計年度末に比べ17億円の減少となりました。セグメント負債は39億59百万円となり、前連結会計年度末に比べ12億97百万円の減少となりました。
(その他(物流・冷蔵倉庫事業、OA機器・通信機器販売及び保険代理店事業))
子会社マルイチ・ロジスティクス・サービス㈱は、当社グループの物流業務・冷蔵倉庫事業の品質向上とローコスト体制の構築をグループ内の各事業と連携しながら推進しております。
業績につきましては、売上高は10億51百万円(前期比7.0%減)、営業利益は1億84百万円(同3.2%増)となりました。
財政状態につきましては、セグメント資産は16億16百万円となり、前連結会計年度末比32百万円の減少となりました。セグメント負債は5億65百万円となり、前連結会計年度末に比べ40百万円の減少となりました。
c.経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標
当社グループの経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、「1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載しております。また、売上高、営業利益及び経常利益については「b.経営成績」に記載しております。
ROEについては、親会社株主に帰属する当期純利益が5億40百万円(前期比65.2%減)となったため2.2%(前期は6.3%)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という)の残高は63億99百万円となり、前連結会計年度末と比較して23億3百万円の減少となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況と、それらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果減少した資金は31億83百万円となりました(前連結会計年度に増加した資金は31億42百万円)。これは主に、税金等調整前当期純利益が18億76百万円、減価償却費が12億51百万円となり、売上債権・棚卸資産・仕入債務からなる運転資金が41億81百万円減少し、法人税等の支払額が11億1百万円となったことによります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果減少した資金は105億75百万円となりました(前連結会計年度に減少した資金は12億73百万円)。これは主に、有形固定資産の取得による支出が6億76百万円、無形固定資産の取得による支出が2億31百万円、連結範囲変更を伴う子会社株式の取得による支出が100億11百万円となったことによります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果増加した資金は114億55百万円となりました(前連結会計年度に減少した資金は9億4百万円)。これは主に、短期借入金の純増加額が28億56百万円、長期借入金の借入による収入が127億60百万円、自己株式の取得により支出が26億77百万円となったことによります。
③生産、受注及び販売の実績
当社グループは、食品卸売事業の補完機能として製造加工業務を行っており、生産実績は仕入実績に含めて記載しております。なお、受注生産は行っておりません。
(1) 仕入実績 当連結会計年度の仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2024年4月1日
至 2025年3月31日)
前年同期比(%)
水産事業(百万円)155,214112.9
一般食品事業(百万円)25,70398.5
畜産事業(百万円)39,55099.4
丸水長野県水グループ(百万円)26,09892.3
報告セグメント計(百万円)246,567106.4
その他(百万円)5,011127.5
合計(百万円)251,578106.8

(2) 販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2024年4月1日
至 2025年3月31日)
前年同期比(%)
水産事業(百万円)166,560110.5
一般食品事業(百万円)28,12798.0
畜産事業(百万円)40,48496.8
丸水長野県水グループ(百万円)32,916101.4
報告セグメント計(百万円)268,090105.7
その他(百万円)1,05193.1
合計(百万円)269,141105.6

(注)1.販売実績に対して10%以上に該当する販売先はありません。
2.セグメント間の取引については相殺消去しております。
3.各事業の主な内容
水産事業…水産物、水産加工品、日配品及び冷凍食品の販売事業
一般食品事業…一般のドライ食品、一般加工食品及び菓子の販売事業
畜産事業…畜産物及び畜産加工品の販売事業
丸水長野県水グループ…長野県内エリアを中心とする食品卸売事業
その他…物流・冷蔵倉庫事業、OA機器・通信機器販売・保険の代理店事業
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容につきましては「(1) 経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載しております。
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては「3 事業等のリスク」に記載しております。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容及び資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、以下のとおりであります。
(資金需要)
当社グループの事業活動における資金需要の主なものは、商品・原材料の購入費、及び販売運賃・人件費等の営業費用によるものであります。なお、設備の新設等の計画に関する内容につきましては、「3 設備の新設、除却等の計画」に記載しております。
(財務政策)
当社グループでは、事業活動の維持拡大に必要な資金を安定的に確保するため、営業キャッシュ・フローで獲得した内部資金の活用及び金融機関からの借入等により資金調達を行っております。
長期借入金等の長期資金の調達については、事業計画に基づく資金需要、金利動向等の調達環境、既存借入金の償還時期等を考慮の上、調達規模、調達手段を適宜判断して実施していくこととしております。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されており、その作成過程においては経営者による会計上の見積り及び仮定を含んでおります。これらの見積り及び仮定は、過去の実績及び決算日において合理的であると考えられる様々な要因等を勘案した経営者の最善の判断に基づいております。しかし、その性質上、将来において、これらの見積り及び仮定とは異なる結果となる可能性があります。会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、当社グループの経営成績に重要な影響を与える項目は、以下のとおりです。
(のれんの評価)
㈱ダイニチの発行済全株式を取得し、連結子会社化したことにより生じたのれんは、被取得企業の今後の事業によって期待される将来の超過収益力として、企業結合日における当該株式の取得原価と純資産の差額から算出しております。当該のれんについては、取得原価のうち、のれんに配分された金額が相対的に多額であるため、減損の兆候が存在すると判断しましたが、割引前将来キャッシュ・フローがのれんを含む資産グループに係る固定資産の帳簿価額を上回っているため減損損失の認識は不要と判断しております。
将来キャッシュ・フローは取締役会によって承認された事業計画に基づいて見積っております。事業計画においては、国際的な養殖魚の需要見通しや我が国における魚の輸出量の成長率に関する見通しを踏まえた、水産養殖業における海外市場を中心とした販売量の増加に起因する売上高の成長率や、製造原価並びに販売費及び一般管理費に対する各種施策等を織り込んでおりますが、市場環境の変化等により、その見積り額の前提とした条件や家庭に変更が生じた場合、減損損失の認識が必要となる可能性があります。