有価証券報告書-第67期(2023/04/01-2024/03/31)

【提出】
2024/06/27 15:00
【資料】
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【項目】
155項目
文中における将来に関する事項は、別段の記載のない限り当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの経営成績等の状況の概要は次のとおりであります。
①経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国の経済は、新型コロナウイルス感染症の5類感染症への移行に伴い経済活動の正常化が進みましたが、世界的な金融引き締めや継続的な物価上昇による景気への影響、中国経済の先行き懸念、地政学リスク等もあり、依然として不透明な状況が続きました。
当社グループの主要ユーザーである自動車関連企業では、半導体不足の緩和により自動車生産台数が回復したことに加えて、電動化領域を中心とした半導体・電子部品の需要が拡大する等引き続き堅調に推移いたしました。
このような環境のもと、当社グループは、お客様やパートナー様から選ばれる存在を目指し、新たな価値を創造、提供できる企業グループへの変革を加速させ、グローバルサプライチェーンの安定化やお客様、パートナー様との関係強化に努めました。
この結果、当連結会計年度の売上高は2,251億50百万円(前期比21.0%増)、営業利益は77億11百万円(前期比14.7%増)、経常利益は72億21百万円(前期比12.5%増)となり、売上高、営業利益、経常利益について過去最高を更新いたしました。また、前連結会計年度において特別利益に負ののれん発生益6億70百万円を計上した反動減もあり、親会社株主に帰属する当期純利益は44億21百万円(前期比10.0%減)となりました。
セグメントの業績は、次のとおりです。
(デバイス事業)
デバイス事業では、電子制御が進む自動車向けシステムLSIなどの半導体や電子部品の販売及び技術支援、組込システムのPoC(概念実証)開発支援や組込ソフトウェアを中心とした受託開発事業を行っております。
当連結会計年度におきましては、一時的な車両生産調整の影響がみられたものの、全体的には半導体不足の緩和や供給品の採用車種拡大などにより需要が好調に推移した結果、デバイス事業の売上高は1,961億26百万円(前期比23.4%増)、営業利益は56億70百万円(前期比26.3%増)となりました。
(ソリューション事業)
ソリューション事業では、IT機器、組込機器及び計測機器の販売や、ITプラットフォーム基盤及びIoTシステムの構築に加え、自動化・省力化に貢献する各種FA・特殊計測システムの設計・製造・販売及び産業用コンピュータの開発・製造・販売を行っております。
当連結会計年度におきましては、産業機器市場における受注調整の影響を受けつつも、ITプラットフォーム基盤やIT機器の更新、業務効率化を目的としたシステム構築、自動車の電動化領域を中心とした設備投資需要等を取り込んだ結果、ソリューション事業の売上高は290億23百万円(前期比7.4%増)、営業利益は20億40百万円(前期比8.7%減)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物は、前連結会計年度に比べ36億1百万円増加し145億22百万円となりました。
a.営業活動によるキャッシュ・フロー
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益が72億34百万円と前年同期と比べ1億23百万円(1.7%)の増益となったことやサプライチェーンの安定を目的とした在庫確保のための仕入債務の増加により、収入が51億34百万円(前年同期は130億20百万円の支出)となりました。
b.投資活動によるキャッシュ・フロー
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出が3億68百万円と前年同期と比べ2億38百万円(184.8%)の増加となりましたが、前年同期において萩原エンジニアリング株式会社を連結子会社化したことによる連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出が12億9百万円あったため、6億79百万円と前年同期と比べ支出が6億48百万円(48.8%)の減少となりました。
c.財務活動によるキャッシュ・フロー
財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の純減少額が12億5百万円と前年同期と比べ28億38百万円(70.2%)の減少となりましたが、長期借入による収入が26億50百万円と前年同期と比べ104億10百万円(△79.7%)の減少となったこと及び前年同期において社債の発行による収入が99億23百万円あったため、支出が11億85百万円(前年同期は164億21百万円の収入)となりました。
③生産、受注及び販売の状況
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメント別に示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称生産高(百万円)前期比(%)
デバイス事業2,803+5.5
ソリューション事業8,957+23.2
11,760+18.5

(注)金額は、販売価格によっております。
b.商品仕入実績
当連結会計年度における商品仕入実績をセグメント別に示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称仕入高(百万円)前期比(%)棚卸資産残高
(百万円)
前期比(%)
デバイス事業184,996+24.939,113+21.1
ソリューション事業21,496-1.35,559+8.5
206,279+21.644,673+19.4

(注)金額は、仕入価格によっております。
c.受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメント別に示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称受注高(百万円)前期比(%)受注残高(百万円)前期比(%)
デバイス事業203,879+24.129,402+35.8
ソリューション事業30,011-0.610,572+0.4
233,891+20.339,974+24.2

d.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメント別に示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称販売高(百万円)前期比(%)
デバイス事業196,126+23.4
ソリューション事業29,023+7.4
225,150+21.0

(注)1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績に対する割合
相手先前連結会計年度当連結会計年度
販売高(百万円)割合(%)販売高(百万円)割合(%)
株式会社デンソー86,71946.6107,80247.9

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
①経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.売上高
当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度に比べ391億49百万円増加し2,251億50百万円となりました。
新型コロナウイルス感染症の5類感染症への移行に伴い経済活動の正常化が進み、当社グループの主要ユーザーである自動車関連企業では、半導体不足の緩和により自動車生産台数が回復したことに加えて、電動化領域を中心に半導体・電子部品の需要が拡大し堅調に推移しました。
このような環境のもと当社グループでは、成長市場に向け技術力を活かした顧客視点での提案活動を継続してきたことに加え、自動車関連の顧客の好調な生産と設備投資需要に支えられ、過去最高の売上高となりました。
(デバイス事業)
デバイス事業におきましては、当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度に比べ371億51百万円増加し、1,961億26百万円となりました。
当連結会計年度において、当社グループの主要ユーザーである自動車関連企業では一時的な生産調整の局面がありましたが、半導体不足の緩和により自動車の世界生産台数が前期と比較して増加したことで生産活動が活発になったことに加えて、採用品の新規立ち上げや車種展開による増加もあり、売上高は大きく増加いたしました。
今後も顧客及び仕入先との綿密な情報共有によりサプライチェーンの維持に注力するとともに、半導体や電子部品の供給及び受託ビジネスによる基盤事業の規模拡大とあわせ、車載・電装領域の知見を活かした高品質な技術サポートにより顧客の課題に寄り添うサービス提案や提供領域の拡大を図ることで、事業の成長を目指してまいります。
(ソリューション事業)
ソリューション事業におきましては、当連結会計年度の売上高は前連結会計年度に比べ19億97百万円増加し、290億23百万円となりました。
当連結会計年度において、中国市況の影響等による産業機器市場の受注調整の影響を受けた組込領域の売上が伸び悩んだものの、自動車の電動化領域を中心とした設備投資需要や自動化や効率化を目的としたIT投資需要を取り込んだFA領域・IT領域の売上が好調だったことで売上は増加いたしました。
今後は、データ収集やデータ価値化などデータプラットフォーム事業を第4の柱として拡大し、既存のIT、組込、FAの3事業の強みを活かした融合ビジネスを確立することで、新たな市場と高付加価値事業のさらなる拡大に挑戦し、事業の成長を目指してまいります。
b.売上原価、販売費及び一般管理費、営業利益
当連結会計年度の売上原価は、前連結会計年度に比べ373億59百万円増加し2,051億46百万円となりました。これはデバイス事業及びソリューション事業において売上高の増加に伴い売上原価が増加したことによるものです。
また、当連結会計年度の販売費及び一般管理費は、前連結会計年度に比べ8億3百万円増加し122億92百万円となりました。
半導体製品を中心とした商品の輸送方法の見直しの取り組み等により輸送コストを低い水準に抑制することができましたが、IT・DXの推進に伴うシステム関連費用の増加や、業容拡大による人員増加により人件費が増加しました。
この結果、営業利益は前連結会計年度に比べ9億86百万円増加し77億11百万円となりました。
c.営業外収益、営業外費用、経常利益
営業外収益は、受取補償金が30百万円減少したこと等により、前連結会計年度に比べ75百万円減少し89百万円となりました。
営業外費用は、為替の変動が当社グループの外貨建て取引に対し有利な状況であったため為替差損が94百万円減少しましたが、機動的かつ安定的な資金調達枠確保のため支払手数料が1億98百万円増加したこと等により、前連結会計年度に比べ1億6百万円増加し5億79百万円となりました。
この結果、経常利益は前連結会計年度に比べ8億4百万円増加し72億21百万円となりました。
d.特別利益
特別利益は、前連結会計年度において萩原エンジニアリング株式会社を連結子会社化した際に負ののれん発生益を計上したことや、当連結会計年度において輸送事故による補償金の受取が発生したこと等により、前連結会計年度に比べ5億32百万円減少し1億70百万円となりました。
e.特別損失
特別損失は、輸送事故による損失が発生したこと等により、前連結会計年度に比べ1億48百万円増加し1億57百万円となりました。
f.親会社株主に帰属する当期純利益
税金等調整前当期純利益は、前連結会計年度に比べ1億23百万円増加し72億34百万円となりました。
税効果会計適用後の法人税等負担額は、主に課税所得の増加の影響によって前連結会計年度に比べ6億10百万円増加し27億66百万円となりました。
この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度に比べ4億91百万円減少し44億21百万円となりました。
②財政状態の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.資産
資産合計は、前連結会計年度末に比べて131億28百万円増加し1,197億6百万円となりました。
流動資産は、前連結会計年度末に比べて122億74百万円増加し1,115億72百万円となりました。これは主に、売上債権回転率の改善への取り組み等により電子記録債権が35億97百万円減少した一方で、自動車関連企業の需要拡大等により、商品及び製品が70億35百万円増加したこと等によるものであります。また、売上高の増加に伴い売掛金が32億89百万円増加しております。
固定資産は、前連結会計年度末に比べて8億54百万円増加し81億34百万円となりました。
b.負債
負債合計は、前連結会計年度末に比べて62億99百万円増加し693億45百万円となりました。
流動負債は、前連結会計年度末に比べて73億36百万円増加し451億11百万円となりました。これは主に、短期借入金が12億5百万円減少した一方で支払手形及び買掛金が72億87百万円、電子記録債務が8億6百万円、契約負債が1億76百万円、未払法人税等が1億98百万円増加したこと等によるものであります。
固定負債は、前連結会計年度末に比べて10億37百万円減少し242億34百万円となりました。これは主に、長期借入金が12億52百万円減少したこと等によるものであります。
c.純資産
純資産合計は、前連結会計年度末に比べて68億29百万円増加し503億61百万円となりました。これは主に、新株予約権の行使により資本金及び資本剰余金がそれぞれ17億38百万円増加したことによるものであります。
この結果、自己資本比率は40.3%(前連結会計年度末は38.8%)となりました。
③資本の財源及び資金の流動性
a.当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析
当連結会計年度のキャッシュ・フロー状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
b.財務政策
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、商品の仕入のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用によるものであります。投資活動に関する資金需要としては、業容拡大に伴う事業所設備や社内システム等の設備投資等であります。
必要な資金については、内部資金のほか、調達コストと財務体質とのバランスを勘案しながら、借入金、売掛債権の流動化による調達に加え、資本増強等を組み合わせて調達しております。
また、不測の事態に備え、機動的かつ安定的な資金調達枠の確保のため、取引金融機関とコミットメントライン契約を締結しております。
株主還元につきましては、財務の健全性等を総合的に勘案しながら、業績に裏付けられた成果の配分を基本方針として実施しており、連結配当性向30%~40%を目途としております。
④経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の達成状況
経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標である中期経営計画の目標値の達成状況は以下のとおりであります。
2022年3月期
(実績)
2023年3月期
(実績)
2024年3月期
(実績)
2024年3月期
(目標値)
売上高1,584億円1,860億円2,251億円2,275億円
営業利益43億円67億円77億円83.5億円
ROE8.0%12.5%9.9%10.0%以上

2021年4月22日に公表した中期経営計画の目標値(売上高1,700億円、営業利益50億円、ROE8.0%)は2023年3月期に達成いたしました。2023年11月10日に公表した新たな目標値(売上高2,275億円、営業利益83.5億円、ROE10.0%以上)については、中国市況等の外部環境の変化により未達となっております。
⑤重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。その作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績等を勘案し、合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」にて記載しておりますが、連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
a.収益の認識基準
当社グループの売上高は、履行義務を充足した時点で収益を認識しております。また、保守等のサービス業務のうち履行義務が一定期間にわたり充足されるものについては、サービス提供期間にわたり定額でまたは進捗度に応じて収益を認識しております。
b.棚卸資産の評価基準
当社グループは、将来における需要や市場状況等に基づき、正味売却価額が帳簿価額を下回る場合には収益性の低下があるものとし売価評価減を、棚卸資産の保有日数に応じて一定金額まで帳簿価額を切り下げる滞留評価減や将来の販売可能性の見積りに基づく個別評価減を計上しております。
c.繰延税金資産の回収可能性の評価
当社グループは、繰延税金資産について、将来の回収可能性を十分に検討し、回収可能な額を計上しておりますが、繰延税金資産は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積り額が減少した場合には繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。
d.固定資産の減損処理
当社グループは、固定資産のうち減損の兆候が見られる資産又は資産グループについて、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上します。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定に当たっては慎重に検討しておりますが、事業計画や市場環境の変化により、その見積り額の前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、減損処理が必要となる可能性があります。
e.貸倒引当金の計上基準
当社グループは、債権の貸倒による損失に備えるため、回収不能見込額を貸倒引当金として計上しております。将来、顧客の財務状況等が悪化し支払能力が低下した場合には、引当金の追加計上又は貸倒損失が発生する可能性があります。